平成20(行ウ)3 路線廃止処分無効確認等請求事件(差戻前の上告審・最高裁第二小法廷平成18年(行ヒ)第137号等)

裁判年月日・裁判所
平成21年9月15日 鹿児島地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文19,692 文字)

- 1 -主文 原告の被告らに対する各請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 原告と被告(国分市長訴訟承継人)霧島市長との間において,訴訟承継前被告国分市長が,平成12年6月30日付国分市告示第○-○号をもってなしたα~β線の路線廃止処分のうち,別紙物件目録記載の各土地に係る路線廃止処分が無効であることを確認する。 被告P1株式会社は,原告に対し,別紙物件目録記載1ないし3の各土地を原告及びその来場者が通行することを妨げてはならない。 第2事案の概要【以下では「国分市」及び「国分市長」は後述する市町の廃置分合前のそれらを,指すこととし,被告霧島市長を「被告市長,被告P1株式会社を「被告会社」と」いう】。 本件は,国分市長が行ったα~β線(別紙図面1参照。以下「本件旧市道」という。なお,以下では別紙図面1記載の点aを「点a」と表記し,同図面記載の点b以下も同様とする)の路線廃止処分(以下「本件処分」という)。 。 について,原告が,①本件処分は道路法10条1項前段の要件を満たさない,②本件処分に係る国分市議会の議決は無効である,③本件処分手続が適正手続を保障した憲法31条に反する,④本件処分が権限の濫用に当たる旨それぞれ主張して,被告市長に対し,本件処分のうち,点aから点bを経由して点cに至る区間(以下「本件東西区間」という)に係る部分の無効確認を求めると。 ともに,被告会社に対し,本件処分のうち本件東西区間に係る部分が無効であることを前提として,本件東西区間のうち被告会社が閉鎖している部分(別紙物件目録記載1ないし3の各土地,以下「本件閉鎖道路」という)の通行妨。 - 2 -害排除を請求した事案である。 差戻し前の第1審は,訴訟承継前被告国分市長に対する訴え 会社が閉鎖している部分(別紙物件目録記載1ないし3の各土地,以下「本件閉鎖道路」という)の通行妨。 - 2 -害排除を請求した事案である。 差戻し前の第1審は,訴訟承継前被告国分市長に対する訴えについて原告の当事者適格を否定して訴えを却下し,被告会社に対する訴えを棄却したが,控訴審は原告の当事者適格を認めて本件を第1審へ差し戻した。これに対し,控訴審口頭弁論終結後に国分市長の地位を承継した被告市長及び被告会社は上告受理を申し立てたが,いずれも上告不受理決定がされた。 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)。 ⑴当事者ア原告は,ホテル業及び一般公衆浴場等を目的とする株式会社であり,肩書住所に本店を置き,同所においてP2及びP3(以下,併せて「本件温泉ホテル」という)を経営する者である。 。 ,,()そして本件温泉ホテルを訪れる顧客は本件閉鎖道路の閉鎖後記⑼,,までは本件東西区間を通行して同ホテルに至るのが一般的であり原告は事業者として本件東西区間を日常的に利用していた者であった。 イ被告市長は,平成17年11月7日,鹿児島県内の国分市等1市6町の合併(後記())によって誕生した霧島市の市長であり,同合併により訴 訟承継前被告国分市長(訴え提起時はP4,平成14年10月8日からP5)の地位を承継した者であるところ,国分市長は道路法10条1項前段及び同条2項の規定に基づき,国分市道について,路線の全部又は一部を廃止又は変更する処分権限を有していた行政庁である。 ウ被告会社は,特殊磁器の製造販売等を目的とする株式会社であり,肩書住所に本店を置き,別紙図面2のA及びBの部分に当たる敷地にある被告会社P6工場(以下「P6工場」という)において工場操業を行う者で。 告会社は,特殊磁器の製造販売等を目的とする株式会社であり,肩書住所に本店を置き,別紙図面2のA及びBの部分に当たる敷地にある被告会社P6工場(以下「P6工場」という)において工場操業を行う者で。 ある。 ⑵本件旧市道及びP6工場敷地について- 3 -ア本件旧市道は,別紙図面1に示した「起点」から「終点」至る路線である。 本件東西区間は,本件旧市道のうち,南北両側をP6工場敷地の上記A及びBの部分に挟まれ,東西方向に直線に走る幅員14メートルの道路であって,両側には歩道が設置され,アスファルト舗装が施されている。そして,別紙物件目録記載1ないし5の土地からなる本件東西区間のうち,別紙物件目録記載1ないし3の土地に当たる部分が本件閉鎖道路であり,現在,被告会社が所有し,被告会社関係者以外の人車の通行を禁止ないし阻止している(本件東西区間を拡大した図面が別紙図面3である。 。)イP6工場周辺の地理的状況は,別紙図面1及び別紙地図のとおりである(以下,点d及び点eを結ぶP6工場敷地北側の道路を「γ通り,点c」から点fを通り点gに至る区間を「δ道路」とそれぞれいう。 。)ウP6工場敷地の北側部分(別紙図面2のBの部分)の東に隣接する区域(別紙図面2のCの部分)は,被告会社の社員が居住している(この区域を「被告会社社宅区域」という。 。)⑶被告会社から国分市長に対する本件東西道路の敷地の譲渡申入れ本件東西区間とP6工場との上記のような関係から,被告会社は,国分市長に対し,遅くとも,平成12年5月ころまでに,本件閉鎖道路等の敷地の譲受けを打診するとともに,同月15日付けで,正式に同土地(分筆前)外につき,払下げの申請をした(甲26の2,乙イ12。 )⑷本件処分及び本件各新路線認定処分の計画国分市長は,被告会社の上記申請 譲受けを打診するとともに,同月15日付けで,正式に同土地(分筆前)外につき,払下げの申請をした(甲26の2,乙イ12。 )⑷本件処分及び本件各新路線認定処分の計画国分市長は,被告会社の上記申請に応じるべく,いったん,本件旧市道全線について,その路線廃止をする本件処分をした上で,そのうち,本件東西区間を除く区間については改めて本件旧市道の起点からP6工場西口本,,(件旧市道とP6工場の敷地西側線とが交差する地点)までの区間を別紙図面4のとおりε線,P6工場東口(本件旧市道とP6工場の敷地東側線とが交- 4 -差する地点)から本件旧市道の終点までの区間を別紙図面5のとおりζ~β線として,それぞれ新たに路線認定をすることとした(ε線とζ~β線に係る各路線認定処分を,併せて「本件各新路線認定処分」という。 。)⑸付近住民に対する国分市の路線廃止に関する説明国分市長が上記のとおり計画された本件処分及び本件各新路線認定処分をするため,所管の国分市土木課職員は,平成12年6月12日,P6工場東口の南側付近である同市η(現在の霧島市θ,以下「ζ地区」という)の。 住民らに対し,戸別訪問をして上記計画を記載した文書を配布するなどしてその旨を説明したが(乙イ6の1及び2,乙イ7,乙イ8,ηの北側に隣)接する同市ι,ηの西側に隣接する同市κ(現在の霧島市λ及び同市μ,以下それぞれ「β地区「κ地区」という)の住民ら(その中には原告も含」。 まれる)に対しては,上記説明をしなかった。また,別途の期日による説。 明会も開催しなかった。 ⑹本件処分及び本件各新路線認定処分についての国分市議会の議決国分市議会は平成12年6月20日の同議会平成12年第2回定例会以,(「」。),()下第2回定例会というにおいて本件旧 件処分及び本件各新路線認定処分についての国分市議会の議決国分市議会は平成12年6月20日の同議会平成12年第2回定例会以,(「」。),()下第2回定例会というにおいて本件旧市道の路線廃止本件処分及び別紙図面4及び別紙図面5のとおりの本件各新路線の認定(本件各新路線認定処分)について,これらを可決した(甲9。 )⑺本件処分及び本件各新路線認定処分国分市長は,平成12年6月30日付国分市告示第○-○号により,平成13年2月1日を効力発生日とする本件処分及び本件各新路線認定処分を行った。平成13年1月25日,本件東西区間について分筆が行われ,被告会社に対して譲渡される範囲が別紙物件目録記載1ないし3と確定された。そして,上記各処分の結果,本件東西区間は,同年2月1日をもって路線廃止となり,以後,現在に至るまで,同区間について新たな市道認定はされていない。 - 5 -⑻国分市と被告会社間の土地の交換契約国分市と被告会社は,平成12年12月19日,国分市議会がその旨の議決をすることを条件として,土地交換契約を締結した(乙イ13。この交)換契約の対象となった土地は,別紙図面6のとおり,国分市所有の本件閉鎖道路及び本件旧市道には含まれていなかった土地(1筆の土地の一部)並びに被告会社所有の工場用地(1筆の土地の一部)であり,被告会社から国分市に対して交換差金4533万9048円を支払うこととされた。そして,同月25日の国分市議会平成12年第4回定例会(以下「第4回定例会」と。),(,いうで同交換契約について国分市議会の議決が得られたため甲15甲16,被告会社は,平成13年2月20日,同交換差金を支払い,本件)閉鎖道路の所有権を取得した(同日所有権移転登記。甲4の1ないし3。 )⑼被告会社によ 国分市議会の議決が得られたため甲15甲16,被告会社は,平成13年2月20日,同交換差金を支払い,本件)閉鎖道路の所有権を取得した(同日所有権移転登記。甲4の1ないし3。 )⑼被告会社による本件閉鎖道路の閉鎖被告会社は,平成13年2月20日以降,本件閉鎖道路の東西両端付近にそれぞれ守衛所やゲートを設置するなどして被告会社関係者以外の人車の通行を禁止ないし阻止している。 ⑽国分市等市町合併鹿児島県知事は,平成17年3月9日,地方自治法7条1項に基づき,同年11月7日から国分市及び姶良郡ν等1市6町を廃するとともに,それらの区域をもって霧島市を設置する旨を定める処分をして,その旨を総務大臣に届け出,同大臣は,同年3月30日,同条6項(現7項)に基づき,総務省告示第380号をもって,同県知事から同届出があった旨及び同処分は同年11月7日からその効力を生ずるものとする旨の市町の廃置分合の告示をした。 本件の争点当審における争点は以下のとおりである。 ⑴被告市長に対する請求の関係- 6 -ア本件東西区間が「一般交通の用に供する必要がなくなった」と判断したことの違法性の有無イ市議会による議決の効力ウ適正手続違反(憲法31条等)の有無エ権限濫用の有無⑵被告会社に対する請求の関係ア人格権に基づく通行妨害排除請求の可否イ不法行為に基づく通行妨害排除請求の可否 争点に関する当事者の主張⑴争点⑴ア(本件東西区間が「一般交通の用に供する必要がなくなった」と判断したことの違法性の有無)について【原告の主張】本件処分は道路法10条1項の要件を満たしていない。路線廃止については「一般交通の用に供する必要がなくなったと認める場合」との要件が必,要である。すなわち,路線の廃止を行うことができるのは,当該路線の機能 道路法10条1項の要件を満たしていない。路線廃止については「一般交通の用に供する必要がなくなったと認める場合」との要件が必,要である。すなわち,路線の廃止を行うことができるのは,当該路線の機能,,が失われ当該道路を一般交通の用に供する必要がなくなった場合であってそのことは公物法一般理論からしても明らかである。しかるに,本件東西区間は決して路線の機能が失われていたものではなく,現実に一般交通の用に供されていた生きた道路であった。すなわち,本件東西区間は,アスファルト舗装された立派なもので,その両側には歩道も設けられ,P6工場西口には信号機も設置されていたし,本件処分当時,本件東西区間には路線バスが通り,バスの停留所もあった。さらに,鹿児島空港発着のバスもP6工場西口まで来ていたし,P6工場西口付近にその停留所も設けられていた。そして,一般の住民の外,原告の従業員,出入り業者,原告の顧客や来場者等も本件東西区間を一般公衆用道路として常時利用していた。 また,道路法10条1項前段の規定に基づく市町村道の路線廃止処分につ- 7 -いて,総合的判断に基づく市町村長の裁量の余地があるとしても,それは決して自由裁量を許容するものではなく,合理的な裁量権の行使が要求されているというべきである。そして,後記争点( )イないしエの【原告の主張】 で指摘する諸事情を踏まえると,本件処分は,①本件東西区間において交通事故発生の蓋然性が高いとの重大な事実誤認に基づくものであること,②本件東西区間を被告会社に払い下げるとの動機・目的で遂行されたもので,法律の趣旨・目的と異なる目的や動機に基づいてなされた処分であること,③公道通行の自由という自由主義的経済社会の根幹をなす基本的人権を侵害するものであること,④本件旧市道を使用している地元住民への説明会を 趣旨・目的と異なる目的や動機に基づいてなされた処分であること,③公道通行の自由という自由主義的経済社会の根幹をなす基本的人権を侵害するものであること,④本件旧市道を使用している地元住民への説明会を開催せず,また,本件処分に反対することが明白な原告を戸別訪問による説明対象から意図的に外し,さらに,議会に対しては,あたかも本件処分に対して地元住民の反対がなかったかのような説明をしており,手続的コントロールを欠くものであること,⑤原告を含む地元住民の公道を通行する自由権を不当・安易に軽視し,被告会社の便益を過重に評価していることの諸点において,その裁量権の範囲を逸脱しているというべきである。 【被告市長の主張】「一般交通の用に供する必要がなくなつた」とは,誰もがその道路を利用しなくなったという意味ではない。市町村道は,道路交通を確保するため,市町村の費用負担で維持管理されているものであるが,特定の区間の市町村道について,これに接続し,あるいは近接する市町村道によって周辺の道路交通が確保されていること,その他地域の状況を総合的に判断して,当該区間を市町村の負担で維持管理する必要がないと判断される場合,当該道路を一般交通の用に供する必要がなくなった場合ということができる。 本件東西区間は,もともと内陸工業団地が造成された際,団地内の交通のため設置されたものであるが,他の一般公衆にも使用されるようになっていた。しかし,内陸工業団地のすべての土地を被告会社が取得し,P6工場敷- 8 -地内を本件東西区間が通過する形となったため,P6工場内の車両等の往来と一般車両,通行人の通行とが交錯が生じて,工場内の人や物の移動が効率的でなく,また,一般車両との事故発生のおそれもあるとして,被告会社から本件東西区間の払下げの申請がなされた。この申請を受けた国分 と一般車両,通行人の通行とが交錯が生じて,工場内の人や物の移動が効率的でなく,また,一般車両との事故発生のおそれもあるとして,被告会社から本件東西区間の払下げの申請がなされた。この申請を受けた国分市長は,上記のような本件東西区間の沿革とこれがP6工場内を通過しているという現状,想定される利用者は限られ,その利用形態も通過道路であること,通過に際しても,工場内の道路であることから工場内を移動する人や物との交錯が生じやすいこと,P6工場周辺の道路も市道として整備され,本件東西区間に係る市道がなくても周囲の地区への道路交通は確保されていることのほか,払下げを求める被告会社の事情,被告会社の国分市に対する貢献度,その事業活動円滑化への協力などを考慮し,本件東西区間に係る市道を市の負担で維持管理する必要はないと判断して,路線廃止を行ったものである。 なお,道路網をどのように整備し,交通の確保を図るかは,行政に対する様々な要請,目的をも考慮して決定されることであり,国分市長は,国分市に大きな経済的貢献をしている被告会社の生産活動上の便益を考慮することも,ひいてはこれが国分市ないし市民の経済的利益に寄与するものと判断したもので,この点を考慮したからといって,本件処分が法律の趣旨・目的と異なる目的・動機による処分であるということにはならない。また,事前の説明の範囲をζ地区にしたのは,地理的な位置関係から,ζ地区の居住者が本件東西区間の路線廃止による影響を受けると考えられたからであって,意図的に原告に路線廃止を隠して手続を行ったものではない。 ⑵争点⑴イ(市議会による議決の効力)について【原告の主張】国分市長は,平成12年6月開催の国分市議会で,路線廃止についてはあたかも最も利害関係を有する周辺住民には説明して理解を得られたかのような説明をして, 議会による議決の効力)について【原告の主張】国分市長は,平成12年6月開催の国分市議会で,路線廃止についてはあたかも最も利害関係を有する周辺住民には説明して理解を得られたかのような説明をして,実質的に国分市議会を欺いて議決を得た。したがって,国分- 9 -市議会の議決は無効である。 【被告市長の主張】原告の事実主張を否認し,法的主張を争う。国分市長は,上記国分市議会において,ζ地区住民に説明を行ったこと,ζ地区住民から問い合わせはあったが納得してもらったことを説明したもので,議会からは,それ以上の調査などの要請もなかった。 ⑶争点⑴ウ(適正手続違反の有無)について【原告の主張】原告が現在の場所で本件温泉ホテルを営業していること,本件東西区間がその正面の進入路に当たっていることは,被告市長のみならず,国分市の建設部長も他の吏員も熟知していた。にもかかわらず,被告市長は本件処分に反対することが予想される原告をあえて排除し,他の一部の周辺住民にのみ事前の説明を行った。説明会を開催するのではなく,戸別訪問方式で住民の同意を得たというのは,説明会を開催した場合何らかの形でそれを公示しなければならず,それによって本件東西区間に係る路線の廃止に反対の声が上がるのを被告市長と被告会社が恐れたからである。かかる経過によりなされた本件処分は,何よりも地域住民の利益を擁護しなければならない被告市長が取るべき誠実公正な行政措置とは到底いい難く,憲法31条に違反し,原告の請願権(憲法16条)を侵害したものとして無効というべきである。 【被告市長の主張】原告の主張事実を否認し,法的主張を争う。 ⑷争点⑴エ(権限濫用の有無)について【原告の主張】被告市長は,原告を犠牲にして専ら被告会社の利益を図るために本件処分を行った。国分市は,被告会社の城下町と の主張事実を否認し,法的主張を争う。 ⑷争点⑴エ(権限濫用の有無)について【原告の主張】被告市長は,原告を犠牲にして専ら被告会社の利益を図るために本件処分を行った。国分市は,被告会社の城下町とも称せられるように,被告会社からの税収等の収入が大きな財源的原動力となっているうえ,雇用場所の提供- 10 -その他被告会社から受ける恩恵は極めて大きい。本件閉鎖道路に埋設されていたP7の電線等の移設工事費用約8000万円をすべて国分市が支出していたことがこれを裏付けている。したがって,本件処分は,公益性が全く欠,「」。 如しておりそれどころか交通渋滞の招来という反公益性を有しているしたがって,本件処分は,国分市長がその権限を濫用したものとして,無効である。 【被告市長の主張】被告市長が原告を犠牲にして専ら被告会社の利益を図るために本件処分を行ったとする原告の主張を否認し,法的主張は争う。 ⑸争点⑵ア(人格権に基づく通行妨害排除請求の可否)について【原告の主張】私人の日常生活上必須の道路利用は,単なる反射的利益にすぎないものではなく,公道通行の自由権として民法上保護されるべきである。原告は,本件閉鎖道路を通行するにつき,直接的な利害関係を有しているから,原告が本件閉鎖道路を通行することは,日常生活上必須の道路利用に該当する。したがって,原告は,本件閉鎖道路につき人格的通行権を有している。本件処分は無効な行政処分であり,本件閉鎖道路は依然として公道であるから,被告会社の本件閉鎖道路の閉鎖はかかる通行権の侵害である。よって,原告は被告会社に対し,人格権に基づく妨害排除請求として本件閉鎖道路の通行妨害の排除を求める。 【被告会社の主張】本件閉鎖道路を利用する者の大半はP6工場の業務関係者か,工場従業員であり,一般市民の徒歩によ 会社に対し,人格権に基づく妨害排除請求として本件閉鎖道路の通行妨害の排除を求める。 【被告会社の主張】本件閉鎖道路を利用する者の大半はP6工場の業務関係者か,工場従業員であり,一般市民の徒歩による利用はごくまれでしかなく,それもζ地区住民の一部がスーパーマーケット等の利用に際して使用していた程度であっ。 ,,たそのため国分市の住民に対する説明もζ地区住民に行われたのであり。 ,,原告に本件処分との利害関係はないのである本件閉鎖道路につき自動車- 11 -バイク等の利用はあったが,その利用の大半はP6工場の従業員及び関係者の業務上の者であった。このように,本件閉鎖道路はあたかもP6工場敷地内の道路のような状況であったのであり,このような状況下でP6工場に関係のない自動車の交通や,違法駐車がなされることによる危険性等もあり,本件閉鎖道路の閉鎖がなされたものである。その他,本件処分の有効性については,被告市長の主張を援用する。 ⑹争点⑵イ(不法行為に基づく通行妨害排除請求の可否)について【原告の主張】原告は私法上保護される公道交通の自由権を有している。被告会社は,本件処分が道路法10条1項の要件を欠くことを知りながら,原告の上記権利を侵害した。原告は被告会社の通行妨害により重大な被害,損害を被っている。被告会社の行為が不法行為に該当することは明白である。よって,原告は被告会社に対し,不法行為に基づく妨害排除請求として本件閉鎖道路の通行妨害の排除を求める。 【被告会社の主張】原告の主張事実を否認し,法的主張を争う。 第3争点に対する当裁判所の判断 争点( )アについて ( )道路法10条1項前段の意義について ア道路法10条1項前段は「都道府県知事または市町村長は,都道府県,道又は市町村道について,一 に対する当裁判所の判断 争点( )アについて ( )道路法10条1項前段の意義について ア道路法10条1項前段は「都道府県知事または市町村長は,都道府県,道又は市町村道について,一般交通の用に供する必要がなくなったと認める場合においては,当該路線の全部又は一部を廃止することができる」。 ,「,と規定しているところ道路法1条が道路法の目的についてこの法律は道路網の整備を図るため,道路に関して,路線の指定及び認定,管理,構造,保全,費用の負担区分等に関する事項を定め,もつて交通の発達に寄与し,公共の福祉を増進することを目的とする」と規定していること及。 - 12 -び道路法10条3項及び道路法施行規則1条2項は,路線の廃止について住民代表機関である市町村議会の事前の議決を要求するとともに,路線を廃止した場合において,その路線名,起点,終点,重要な経過地その他必要な事項を公示した上で,廃止に係る路線を明示した所定の図面を一般の縦覧に供することを求めていることからすると,道路法10条1項前段の規定は,市町村長をして,市町村道の具体的な利用状況を十分勘案させた上,当該市町村道を一般交通の用に供する必要がないか否かの判断を適正に行わせ,もって,当該市町村道について路線廃止処分をするか否かについての市町村長の合理的な裁量権の行使を要求しているものと解される。 イこの点,原告は「一般交通の用に供する必要がなくなつた」とは当該,路線の機能が失われた場合であると主張し,文献においても「路線の廃止を行うことができるのは,当該路線に係る道路の機能が失われて,当該道路を一般交通の用に供する必要がなくなった場合である」と指摘されて。 いる(甲18。仮に,道路法10条1項前段にいう「一般交通の用に供)する必要がなくなつた」の意義 る道路の機能が失われて,当該道路を一般交通の用に供する必要がなくなった場合である」と指摘されて。 いる(甲18。仮に,道路法10条1項前段にいう「一般交通の用に供)する必要がなくなつた」の意義が「当該路線の機能が失われた場合」に限定されるとすれば,当該市町村道について路線廃止処分をするか否かについての市町村長の合理的な裁量権の行使の余地があるとしても,それは,「当該路線に係る道路の機能が失われた」との事実評価の場面で裁量の余地があるにとどまり,当該路線が未だ一般の交通の用に供されており,その道路の機能が失われたと評価する余地がない場合にこれを廃止することは,当然に合理的な裁量の範囲を逸脱することになる。 ウしかしながら,道路法10条1項前段にいう「一般交通の用に供する必要がなくなつた」との文言の文理的な意味が当然に「当該路線の機能が失われた場合」に限定されるわけではなく,また「一般交通の用に供する,必要」という概念自体が規範的・評価的要素を含むものであることを考えると,道路法10条1項前段にいう「一般交通の用に供する必要がなくな- 13 -つた」の意義を「当該路線の機能が失われた場合」に限定するのは相当ではない。もちろん,未だ機能の失われていない路線の廃止が,現にこれを使用している住民に対して様々な影響を与えるものであることを考えると,このような路線の廃止は飽くまでも例外的なものでなければならないが,当該路線について客観的に一般交通の用に供するに適さない状況があ,,,りその一方において現に当該路線を使用している者の不利益についてこれを回避ないし緩和できる事情がある場合には,これらの事情を総合的,「」に考慮して当該路線について一般交通の用に供する必要がなくなつたと判断しても,合理的な裁量の範囲を逸脱するわ ついてこれを回避ないし緩和できる事情がある場合には,これらの事情を総合的,「」に考慮して当該路線について一般交通の用に供する必要がなくなつたと判断しても,合理的な裁量の範囲を逸脱するわけではないというべきであるし,原告のいう「公物法一般理論」も,そのような合理的な裁量を一切否定するものとは考えられない。 また,一定の範囲で「未だ機能の失われていない路線の廃止」が許容される以上,原告のいう「公道通行の自由」も絶対的なものではない。 ( )現在P6工場がある土地は,鹿児島県開発公社が「内陸工業団地」用地 として水田地帯に造成したもので,鹿児島県が企業誘致を行った。内陸工業団地は,もともと,中央を東西(幅員14メートル)南北(幅員12メートル)に走る道路によって4区画に分けられており,複数の企業の誘致が予定されていたが,被告会社のみが誘致に応じて進出したため,結局被告会社が全区画を取得した。そして,上記東西南北の道路は昭和49年9月に市道として認定されたが(昭和58年3月に名称変更,そのうち,南北の道路は),,平成2年3月に路線が廃止されて被告会社が払下げを受け本件処分当時は東西の道路(本件東西区間)のみが市道として存在していた(乙イ1ないし3,8。 )P6工場の敷地は,東西が約400メートル余,南北が約600メートル余で,面積としては25万平方メートルを超える広大なものであるが,本件処分当時,P6工場の敷地には,工場建物,変電所,事務棟,研究所,厚生- 14 -施設等が,ほぼその全域にわたって多数建築されていた。そして,本件東西),区間の南北もこれら工場建物等が建ち並び乙イ2乙イ8証人P8,(,,本件東西区間は,あたかもP6工場の敷地内通路のような状況となったが,一方において,一般の住民らも,本 件東西),区間の南北もこれら工場建物等が建ち並び乙イ2乙イ8証人P8,(,,本件東西区間は,あたかもP6工場の敷地内通路のような状況となったが,一方において,一般の住民らも,本件東西区間を一般公衆道路として利用しており,また,同区間内の点b付近には,被告会社正門前を起点とし鹿児島空港を終点とする路線バスの停留所があったため(甲10,甲27の2の別紙,乙イ5の3,証人P8,これら道路や停留所を利用する一般の住民ら)と,P6工場に勤務する多数の従業員(全従業員数は4000名を超える。 証人P8)及びP6工場内を移動する車両とが,本件東西区間において交錯する状況が生じていた(なお,国分市長は,本件処分に当たって本件東西区間の交通量調査等を行っていないが(証人P8,上記のような本件東西区)間の置かれた客観的状況を踏まえると,本件東西区間を一般の住民の交通とP6工場関係者の交通とが本件東西区間において交錯する状況が生じていたことは容易に推認される。 。)そして,本件東西区間が多数の従業員の勤務するP6工場敷地内にあること及び工場関係者は,本件東西区間を,東西方向のみならず,P6工場内の移動の必要性に応じて南北に横切る形で利用することになることを考えると,一般の住民の交通と工場間関係者の交通とが交錯することは,少なくとも交通事故発生の危険性を増大させる抽象的なおそれがあり,客観的に一般交通の用に供するに適さない状況があると評価し得るというべきである。また,本件処分当時に本件東西区間において未だ交通事故が発生していなかったことや一般車両,通行人の通行とP6工場内の車両等の往来の交錯について苦情があったわけでもないこと(証人P8)を考慮しても,本件東西区間における交通事故発生の危険性に上記のような特殊性があることは否定する 一般車両,通行人の通行とP6工場内の車両等の往来の交錯について苦情があったわけでもないこと(証人P8)を考慮しても,本件東西区間における交通事故発生の危険性に上記のような特殊性があることは否定することができないし,本件処分が重大な事実誤認に基づいてなされたものであるということもできない。 - 15 -,,( )P6工場の東側と西側の交通路は本件東西区間を利用する経路の外に P6工場北側にあり本件東西区間とほぼ平行に走るγ通りを利用する経路やδ道路を通る経路がある。γ通りとδ道路については,本件処分後,住民からの要望を受けて,γ通りについて道路水路側への歩道設置及び点eへの信号機の設置,δ道路について拡幅改良工事及びロードミラーの設置が,それぞれ実施された(乙イ10,乙イ16。 )そして,前記前提事実⑵イによると本件東西区間の路線廃止によりP6工場の東側と西側の交通路が3本から2本になるところ,その2本の交通路に係るγ通り及びδ道路については,本件処分に伴うP6工場周辺の道路整備が予定されて(甲9,上記のとおり実施されており,幅員や歩道設備等も)本件東西区間より明らかに劣るものではない(検証の結果。してみると,)P6工場周辺の交通は,本件東西区間に代えて道路整備がなされたルートを通ることで距離が長くなることはあるが,前記前提事実⑵イのP6工場周辺の地理的状況及び本件処分に伴うP6工場周辺の道路整備計画に照らせば,本件東西区間の路線廃止後も従前の道路交通が確保されるとの国分市長の判断には合理的根拠があるというべきである。 もっとも,国分市長は,本件処分に当たって本件東西区間の交通量調査等を行っていないため,本件処分当時において,上記道路整備により従前の道路交通が確保できると判断したことについての数値的裏付けはないというほ も,国分市長は,本件処分に当たって本件東西区間の交通量調査等を行っていないため,本件処分当時において,上記道路整備により従前の道路交通が確保できると判断したことについての数値的裏付けはないというほかないが,上記の諸事情に照らすと,交通量調査等に基づく数値的裏付けがないからといって,従前の道路交通が確保できるとした本件処分当時の国分市長の判断が合理性的根拠を欠くことになるわけではない。 また,前記⑵のとおり,点b付近には路線バスの停留所が存在したが,本件処分に先立ち,同路線バスを運行する会社等には本件処分についての通知を行うなどの対応がとられ,本件東西区間の廃止後も従前の道路交通を維持するための措置をとっていると認められる上,結果的にも,本件処分の後,- 16 -バスの路線に変更は生じず,現在でもP6工場の周囲に複数のバス停が存在している(証人P8,検証の結果。そうすると,公共交通機関による交通)の確保という観点においても,国分市長の上記判断を不合理ということはできない。 ( )市議会の議決について ア前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)付近住民への説明とその方法及び範囲前記前提事実⑶ないし⑸のとおり,本件処分及び本件各新路線認定処分を行うため,所管の国分市土木課職員はζ地区の住民らに対し,戸別訪問をして本件処分及び本件各新路線認定処分の計画を記載した文書を配布するなどしてその旨を説明した。 すなわち,本件温泉ホテル以北のβ地区やκ地区に居住する住民らにとっては,国分市中央部へ出るには,本件東西区間よりもγ通りを通る方が近く,便利であることから,本件東西区間を最も利用するのはζ地区の住民らであるとして,ζ地区の住民らが本件処分及び本件各新路線認定処分の計画の説明の対象とさ には,本件東西区間よりもγ通りを通る方が近く,便利であることから,本件東西区間を最も利用するのはζ地区の住民らであるとして,ζ地区の住民らが本件処分及び本件各新路線認定処分の計画の説明の対象とされたもので(なお,被告従業員の家族らが居住する被告会社社宅区域はそもそも説明は不要であると考えられた,この説明を行う区域については,当時の国分市助役,建設部長。)その他関係する課長,係長らによる協議で決定され,同決定については国分市長の決裁を経た。 また,付近住民に対する説明が,説明会ではなく各戸を訪問する方法により行われたのは,住民が説明会に出席できない場合を考慮したこと及び各戸訪問の方が確実に住民に説明を伝えることができ,理解してもらえると判断したことによる。 そして,平成12年6月12日,所管の国分市土木課職員6名が,η- 17 -の119戸を訪問して直接説明し,不在であった74戸については,説明文書を配布した。その結果,ζ地区の住民からは,道路の舗装,信号機や歩道の設置などの要望の外,本件処分により遠くなって困る旨の意見があったほか,本件東西区間の路線廃止に反対する趣旨の意見が,国分市役所へ直接伝えられたり匿名の電話により寄せられることがあったが,それぞれ国分市職員が説明を行うなどの対応を執った(甲9,乙イ8,証人P8。 )なお,本件処分及び本件各新路線認定処分に係る議決及び国分市との被告会社間の土地交換契約に係る国分市議会の議決がなされた後,平成13年1月19日には,上記議決に係る本件処分等の告知が国分市の市報により行われた(乙イ9,証人P8。 )(イ)本件処分及び本件各新路線認定処分並びに国分市と被告会社間の土地交換契約に関する全員協議会及び国分市議会の議決a付近住民への説明がなされた後,平成12年6月16日には本 9,証人P8。 )(イ)本件処分及び本件各新路線認定処分並びに国分市と被告会社間の土地交換契約に関する全員協議会及び国分市議会の議決a付近住民への説明がなされた後,平成12年6月16日には本件処分及び本件各新路線認定処分を議題とする国分市議会全員協議会(以下「全員協議会」という)が開催された。なお,全員協議会は,国。 分市議会議員及び国分市当局(国分市長以下幹部らを指すと思われる)から構成され,市政に関する重要事項について協議を行う会で。 あり,国分市では慣例的に本会議の前に国分市議会議長の招集により開催されていた。 全員協議会で国分市長及び国分市建設部長は,被告会社から,被告会社社員や製品が本件東西区間を横断しているため,被告会社の業務に支障を来し,また本件東西区間の利用者への危険もあるとして本件東西区間等の払下げの要請があったこと,被告会社は多額の固定資産税や法人税の支払等国分市に多大な貢献をしているため,その要請に応じることについて前向きに考えたいこと,国分市付近住民への説明- 18 -の経過やその際に訪問した住民からクレームがあり,それに対しては信号機設置の要望等に答えるとの回答により納得してもらったことを説明した(甲24,甲25,証人P8。 )bそして,同月6月20日に開かれた第2回定例会において,本件処分及び本件各新路線認定処分が議題とされた。この質疑においては,議員から被告会社が進出してきた経緯と本件処分及び本件各新路線認定処分が計画された経緯,付近住民への説明,本件閉鎖道路の閉鎖による出勤時間の混雑についての見解,周辺の駐車場の駐車台数,周辺道路の整備についての質問等がなされ,国分市建設部長がこれに回答した。ここで,国分市建設部長は,付近住民への説明について概ね前記aの全員協議会で国分市長及び自分が行 解,周辺の駐車場の駐車台数,周辺道路の整備についての質問等がなされ,国分市建設部長がこれに回答した。ここで,国分市建設部長は,付近住民への説明について概ね前記aの全員協議会で国分市長及び自分が行った説明と同様の回答をした上,δ道路の一部拡幅改良をするとともに,γ通りについて,歩道を当時の片側歩道から水路(P6工場敷地)側にも歩道を設置して両側歩道とすることを検討する旨説明した。なお,議員からは,β地区あるいはその周辺住民への説明の有無について質問がなされ,国分市建設部長は,一番利用する地域ということでζ地区住民への説明をしたもので,β地区住民には説明をしていない旨の回答をし,当該議員からはそれ以上の質問も要望もなかった。 ,()。 その上で上記議題の採決が行われ多数により可決された甲9イ以上の認定事実によれば,国分市建設部長は,本件処分や本件各新路線認定処分について住民への説明会を行っていないこと及び戸別訪問の方法による説明はζ地区の住民に対してのみ行ったことを明確に説明ないし回答しているのであるから,全員協議会や第2回定例会において行われた付近住民への説明についての国分市議会への説明の内容が事実に反するものであったとは認められない。 よって,国分市長が実質的に市議会を欺いて議決を得たとはいえない。 - 19 -( )住民への説明について 前記( )ア(ア)のとおり,国分市長は,本件東西区間の利用者が最も多い のはζ地区であるとして,本件処分についての説明を同地区の119戸に対,,して行い原告を含むβ地区やκ地区の住民らは説明の対象としなかったがこのような説明の対象地域を設定する場合に,その居住地区から市街地中心部への交通を基準とすることは一般的に合理性があるといえるし,また,前記前提事実⑵イのP6工場周辺の らは説明の対象としなかったがこのような説明の対象地域を設定する場合に,その居住地区から市街地中心部への交通を基準とすることは一般的に合理性があるといえるし,また,前記前提事実⑵イのP6工場周辺の地理的状況に照らし,β地区及びκ地区の住民が国分市中央部に出る場合には,本件東西区間よりもγ通りを通る方が近く,便利であるとした判断にも合理的な根拠があるというべきである。したがって,本件東西区間を最も利用するのがζ地区の住民であるとして,本件処分及び本件各新路線認定処分の説明の対象を同地区住民とした国分市長の判断には合理的根拠があるといえるのに対し,国分市長が,本件処分へ反対することが予想される原告をあえて説明の対象から除外したとする原告の主張を裏付ける証拠はない。 よって,本件処分についての説明をζ地区の住民らにだけ行ったことにより,本件処分が憲法31条に反することになるとはいえない。また,上記説明対象の設定に合理的根拠がある以上,原告に対して説明がなかったからといって,原告の請願権を侵害したとも認めることはできない。 ( )被告会社への払下げについて ア前記前提事実,前記( )の認定事実及び掲記の証拠によれば,以下の事 実が認められる。 前記前提事実⑻のとおり,平成12年12月19日に,国分市と被告会社との間で,国分市がその旨の議決をすることを条件として,本件閉鎖道路に係る土地交換契約が締結されたところ,同年12月25日に行われた第4回定例会で,同土地交換契約が議題とされた。 第4回定例会における質疑で,議員から交換差金の算定根拠,本件処分- 20 -の市民への告知,本件東西区間に埋設されている電線等の内容及び埋設電線等変更の費用の負担について質問がなされた。これに対し,交換差金の算定根拠については国分市総務企画部長及び国分市 分- 20 -の市民への告知,本件東西区間に埋設されている電線等の内容及び埋設電線等変更の費用の負担について質問がなされた。これに対し,交換差金の算定根拠については国分市総務企画部長及び国分市長からの回答があり,本件処分の市民への告知については,建設部長から同年12月27日に本件旧市道の起点及び終点に本件処分の予告の看板を設置した上,平成13年1月中旬発行予定の市報に本件処分の告知を掲載しPRに努めるとの説明がなされた。また,P7の電線等の移設工事費用に関しては,国分市建設部長において,上記工事費用の負担につき被告会社との協議中であると回答したが,国分市長は,本件処分が,雇用機会増大,地域経済の浮揚,税収等の面での被告会社の国分市への貢献を考慮してなされるものであることに照らして,できればその費用全部を市で負担したい旨答弁し,上記議題は異議なく可決された(甲16,甲25,乙イ8,証人P8。 )イ原告は,本件処分は,国分市長が原告の利益を犠牲にして専ら被告会社の利益を図る目的で行ったもので,公益性が全く欠如しているばかりか,交通渋滞の招来という反公益性を有しているから,国分市長がその権限を濫用したものであると主張する。 この点,確かに,本件処分は,本件東西区間を被告会社に払い下げるためになされたものであるが,そもそも,路線廃止処分を含む道路行政は,当該地方自治体の財政,経済,雇用等その他の行政事項との関係を考慮しながら実施されるべきものであるから,上記のような道路行政以外の行政上の要請を考慮して本件処分をしたことや,国分市が本件東西区間に埋設されていた電線等の移設費用を負担したことは,国分市長の政治的責任の問題にはなり得るとしても,それ自体が直ちに本件処分の法的な無効原因になるものではなく,結局のところ,本件東西区間について客 に埋設されていた電線等の移設費用を負担したことは,国分市長の政治的責任の問題にはなり得るとしても,それ自体が直ちに本件処分の法的な無効原因になるものではなく,結局のところ,本件東西区間について客観的に一般交通の用に供するに適さない状況があり,一方,現に本件東西区間を使用しているものの不利益を回避ないし緩和できる事情があるとした国分市長- 21 -の判断が合理的裁量の範囲内にあったか否か,あるいは,市議会や付近住民への説明は適切であったか否かの問題に帰着するというべきである。また,証拠上,本件処分により交通渋滞が発生ないし悪化した事実は認められず,本件処分が交通渋滞の招来という反公益性を有しているとはいえない。 ( )上記( )ないし( )において述べたところを総合すると,本件東西区間に 「」,ついて一般交通の用に供する必要がなくなったとした国分市長の判断が直ちに合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえないし,少なくとも,これについて重大かつ明白な違法性は認められないというべきである。 争点⑴イについて上記1( )で述べたとおりであり,平成12年6月20日に,道路法10条 3項,8条に基づき本件処分及び本件新路線認定処分に係る議案を可決した国分市議会の議決は有効に成立している。 争点⑴ウについて上記1( )で述べたとおりであり,本件処分について適正手続違反は認めら れない。 争点⑴エについて上記1( )で述べたとおりであり,本件処分について国分市長がその権限を 濫用した事実は認められない。 本件処分の効力について(争点( )の小括) 上記1ないし4において検討したところによれば,本件処分は,市議会の議決という手続的要件(道路法10条3項,同法8条2項)を充足していることはもとより「一 処分の効力について(争点( )の小括) 上記1ないし4において検討したところによれば,本件処分は,市議会の議決という手続的要件(道路法10条3項,同法8条2項)を充足していることはもとより「一般交通の用に供する必要がなくなった」という路線廃止処分,の実体的要件(同法10条1項前段)の判断においても,重大かつ明白な違法性は認められない。さらに,適正手続違反ないし権利濫用という一般的な法原則に照らしても,これを無効とする根拠はない。 - 22 -したがって,本件処分は,本件東西区間の路線を廃止した点を含め,有効な行政処分であるから,原告の被告市長に対する本件処分の無効確認請求は理由がない。 争点⑵ア(人格権に基づく通行妨害排除請求)及びイ(不法行為に基づく通行妨害排除請求)について上記5で述べたとおり,本件処分は,本件東西区間の路線を廃止した点も含めて有効な行政処分であるから,本件東西区間の一部である本件閉鎖道路は道路法上の道路ではなく,当然に一般公衆の通行に供されるものではない。そして,前記前提事実( )のとおり,平成13年2月20日以降,本件閉鎖道路は 被告会社の所有に属するのであるから,同日以降において被告会社が本件閉鎖道路の被告会社関係者以外の人車の通行を禁止ないし阻止したとしても,被告会社以外の一般公衆は,原則として,被告会社に対し,上記禁止ないし阻止行為の排除を求める権利ないし利益を有しない。 もっとも,生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであるから,外部との交通について本件閉鎖道路以外の代替手段を欠く場合においては,なお,被告会社に対して,本件閉鎖道路の通行を妨害しないよう求める権利を認める余地があるといえるが,前記前提事実⑵イのP6工場周辺の地理的状況その他本件で認定した一切の事実によっ く場合においては,なお,被告会社に対して,本件閉鎖道路の通行を妨害しないよう求める権利を認める余地があるといえるが,前記前提事実⑵イのP6工場周辺の地理的状況その他本件で認定した一切の事実によっても,そのような事情は認められない。 したがって,被告会社に対して本件閉鎖道路を原告及びその来場者が通行することを妨害しないことを求める原告の請求には理由がない。 なお,不法行為の効果は損害賠償請求権の発生にとどまるのが原則であり,妨害排除請求権のような原状回復請求権が発生するのは,名誉毀損のように特に規定がある場合(民法723条)に限られるというべきであるから,不法行為に基づく妨害排除請求は,この点においても理由がない。 結語- 23 -よって,被告らに対する本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 鹿児島地方裁判所民事第1部裁判長裁判官山之内紀行裁判官安川秀方裁判官秋本昌彦は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官山之内紀行

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