主文 被告人A及び被告人Bをいずれも懲役3年に,被告人C,被告人D及び被告人Eをいずれも懲役2年6月に,それぞれ処する。 この裁判確定の日から被告人A及び被告人Bに対しいずれも5年間,被告人C,被告人D及び被告人Eに対しいずれも4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,牛肉の販売業等を営むA株式会社及びB株式会社並びに両社の親会社であるハンナン株式会社の各代表取締役としてそれら会社の業務全般を統括掌理するもの,同Bは,ハンナン株式会社常務取締役として子会社の与信限度枠設定等の決裁業務等を行っていたもの,同Cは,A株式会社取締役,同Dは,A株式会社社員,同Eは,B株式会社常務取締役として,いずれもそれら会社での牛肉の売買等の業務に従事していたものであるが,大阪府堺市a町b丁c番地に事務所を置くD連合会専務理事及び同所に事務所を置くF連合会副会長としてD連合会及びE連合会の業務全般を統括するFら及びその配下の者であるGらと共謀の上,第1牛海綿状脳症が日本国内において発生したことにより,農畜産業振興事業団法に基づいて実施された牛肉在庫緊急保管対策事業を利用し,同事業において対象とされる牛肉は,いわゆる全頭検査が実施された平成13年10月18日より前にと畜解体処理された国産牛肉に限られていたにもかかわらず,同月18日以降にと畜解体処理された国産牛肉等につき,同月17日以前にと畜解体処理された国産牛肉であると偽るなどし,本件事業の実施主体であり,D連合会に同事業を委託したF連合会を介して,G事業団から,概算払いの方法により,不正に補助金の交付を受けようと企て,D連合会の業務に関し, 同年11月10日ころ,Gにおいて,D連合会事務所から東京都港区de丁目f番g号所在のF連合会事務所にいたF連合会 算払いの方法により,不正に補助金の交付を受けようと企て,D連合会の業務に関し, 同年11月10日ころ,Gにおいて,D連合会事務所から東京都港区de丁目f番g号所在のF連合会事務所にいたF連合会事業部長Hに対し,真実は, A株式会社及びB株式会社から購入した牛肉は,本件事業の対象とされない同年10月18日以降にと畜解体処理された牛肉等を含んでいたにもかかわらず,これらすべてが同事業の対象である国産牛箱詰部分肉であるかのように装い,上記対象外牛肉14万5920.6キログラムを含む74万8184.1キログラムの牛肉につき,本件事業の対象牛肉として株式会社JにおいてD連合会のために保管している旨の内容虚偽の在庫証明書,上記74万8184.1キログラムの牛肉につき1キログラム当たり707円を乗じて算出される補助金5億2896万6158円の交付を求める旨のD連合会会長I名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金交付申請書及び上記牛肉を含めた補助金総額19億2226万6683円の80パーセントの金額から既に概算払いを受けた金額を差し引いた4億2317万2926円につき概算払いを求める旨のI名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金概算払請求書をファックス送信するなどし,そのころこれらをF連合会事務所に到達させてHに閲読させるなどし,同人をして,上記牛肉のすべてが本件事業の対象牛肉であり,その申請が正当なものであると誤信させて,概算払請求等の手続を取ることを決意させ,同年11月12日ころ,同都港区hi丁目j番k号所在のG事業団事務所において,同人をして,G事業団食肉生産流通部審査役Jに対し,D連合会による保管牛肉の重量がこれまでの197万722.1キログラムから271万8906.2キログラムに増加し,それに伴ってG事業団からF連合 て,同人をして,G事業団食肉生産流通部審査役Jに対し,D連合会による保管牛肉の重量がこれまでの197万722.1キログラムから271万8906.2キログラムに増加し,それに伴ってG事業団からF連合会に交付される補助金額が13億9330万524円から19億2226万6683円に増加する旨のF連合会会長I名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金交付変更承認申請書及び上記補助金のうち4億2317万2926円につき概算払いを求める旨の同人名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金概算払請求書をそれぞれ提出させ,Jらを介し,G事業団理事長の権限に属する補助金交付に関する事務についての専決権者であるG事業団理事Kらをして,上記牛肉のすべてが本件事業の対象牛肉であって,これに対し 補助金の概算払いをすべき義務があるものと誤信させ,よって,同日ころ,同所において,同人をして,上記申請に係る補助金交付変更承認及び概算払いを決定させ,同月14日,同人らの指示を受けたG事業団職員をして,同都中央区lm丁目n番o号株式会社K銀行L支店におけるG事業団名義の普通預金口座から同支店におけるF連合会名義の普通預金口座に4億2317万2926円を振替入金させた上,同月15日,Iらの指示を受けたF連合会職員をして,同支店から大阪市浪速区p町q丁目r番s号株式会社M銀行N支店におけるD連合会名義の普通預金口座に同額を振込送金させ,もって偽りその他不正の手段により正当に受けるべき補助金額3億4064万236円と上記振込額との差額8253万2690円の交付を受けた 同年12月3日ころ,Gにおいて,D連合会事務所からF連合会事務所にいたHに対し,真実は,A株式会社及びB株式会社から購入した牛肉は,本件事業の対象とされない同年10月18日以降にと畜解体処理 同年12月3日ころ,Gにおいて,D連合会事務所からF連合会事務所にいたHに対し,真実は,A株式会社及びB株式会社から購入した牛肉は,本件事業の対象とされない同年10月18日以降にと畜解体処理された牛肉等であったにもかかわらず,これらすべてが同事業の対象である国産牛箱詰部分肉であるかのように装い,上記対象外牛肉11万68.1キログラムを含む56万9229.3キログラムの牛肉につき,本件事業の対象牛肉として株式会社J等においてD連合会のために保管している旨の内容虚偽の在庫証明書,上記56万9229.3キログラムの牛肉につき1キログラム当たり707円を乗じて算出される補助金4億244万5115円の交付を求める旨のI名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金交付申請書及び上記牛肉を含めた補助金総額23億2471万1798円の80パーセントの金額から既に概算払いを受けた金額を差し引いた3億2195万6092円につき概算払いを求める旨のI名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金概算払請求書をファックス送信するなどし,そのころこれらをF連合会事務所に到達させてHに閲読させるなどし,同人をして,上記牛肉のすべてが本件事業の対象牛肉であり,その申請が正当なものであると誤信させて,概算払請求等の手続を取るこ とを決意させ,同年12月4日ころ,G事業団事務所において,同人をして,Jに対し,D連合会による保管牛肉の重量がこれまでの271万8906.2キログラムから328万8135.5キログラムに増加し,それに伴ってG事業団からF連合会に交付される補助金額が19億2226万6683円から23億2471万1798円に増加する旨のI名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金交付変更承認申請書及び上記補助金のうち3億2195万6092 れる補助金額が19億2226万6683円から23億2471万1798円に増加する旨のI名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金交付変更承認申請書及び上記補助金のうち3億2195万6092円につき概算払いを求める旨の同人名義の平成13年度牛肉在庫緊急保管対策事業補助金概算払請求書をそれぞれ提出させ,Jらを介し,Kらをして,上記牛肉のすべてが本件事業の対象牛肉であって,これに対し補助金の概算払いをすべき義務があるものと誤信させ,よって,同日ころ,同所において,同人をして,上記申請に係る補助金交付変更承認及び概算払いを決定させ,同月6日,同人らの指示を受けたG事業団職員をして,上記G事業団名義の普通預金口座から上記F連合会名義の普通預金口座に3億2195万6092円を振替入金させた上,同月7日,Iらの指示を受けたF連合会職員をして,上記株式会社K銀行L支店から上記D連合会名義の普通預金口座に同額を振込送金させ,もって偽りその他不正の手段により正当に受けるべき補助金額2億5970万1575円と上記振込額との差額6225万4517円の交付を受けた第2上記牛肉在庫緊急保管対策事業を利用し,同事業において対象とされる牛肉は,いわゆる全頭検査が実施された平成13年10月18日より前にと畜解体処理された国産牛肉に限られていたにもかかわらず,同月18日以降にと畜解体処理された国産牛肉等につき,同月17日以前にと畜解体処理された国産牛肉であると偽るなどし,E連合会の上部団体で同事業の実施主体であるF連合会から,上記牛肉の買上げ代金名下に金員を詐取するとともに,同事業についてその経費を補助するG事業団からF連合会に不正に補助金を交付させ,F連合会から経費等名下にこれを詐取しようと企て,同年11月末ころ,E連合会事務局長Lにおいて,F連合会事務所 ともに,同事業についてその経費を補助するG事業団からF連合会に不正に補助金を交付させ,F連合会から経費等名下にこれを詐取しようと企て,同年11月末ころ,E連合会事務局長Lにおいて,F連合会事務所にいたHに対し,電話で,真実は,その 買上げ申込みの対象として,上記対象外牛肉等を含んでいたにもかかわらず,申込みに係る牛肉すべてが本件事業の対象である国産牛箱詰部分肉であるかのように装い,上記対象外牛肉等を含む牛肉の買上げ方を申込んだ上,同年12月初旬ころ,Lらにおいて,大阪府堺市t町u番地のv所在のQ郵便局から,上記対象外牛肉17万8303.7キログラムを含む合計57万2851キログラムの牛肉を本件事業の対象牛肉として株式会社JにおいてF連合会のために保管している旨の内容虚偽の在庫証明書等をF連合会事務所にあてて郵送するとともに,これをE連合会事務所からファックス送信し,上記牛肉につき,1キログラム当たり1114円として代金合計6億3815万6013円での買上げ方を申込み,そのころこれらをF連合会事務所に到達させてHに閲読させるなどし,同人らを介し,Iをして上記買上げ申込みに係る牛肉すべてが本件事業の対象である国産牛箱詰部分肉である旨誤信させてそれら牛肉の買上げを決定させるとともに,同事業による保管のための補助金の交付を受けてその一部をE連合会に交付することを決意させ,よって,そのころ,同人らをして,上記買上げ牛肉に対応する補助金の交付申請手続をさせ,G事業団から上記F連合会名義の普通預金口座に補助金13億3582万7564円を振替入金させた上,同月14日ころ,上記同様の郵送の方法により,上記牛肉についての売買契約書及び買上申請書等を郵送し,そのころこれらをF連合会事務所に到達させてHに閲読させるなどし,同人らを介し,Iをして上記対象 上,同月14日ころ,上記同様の郵送の方法により,上記牛肉についての売買契約書及び買上申請書等を郵送し,そのころこれらをF連合会事務所に到達させてHに閲読させるなどし,同人らを介し,Iをして上記対象外牛肉を含む牛肉についての代金支払義務があるものと誤信させ,よって,同月21日ころ,同人らの指示を受けたF連合会職員をして,東京都中央区wx丁目y番z号株式会社O銀行P支店から上記株式会社M銀行N支店のE連合会名義の普通預金口座に,上記牛肉の買上げ代金として,6億3815万6013円を振込送金させ,さらに,同14年5月14日ころ,Fにおいて,大阪府下からF連合会事務所に電話を掛け,Hに対し,F連合会が交付を受けた上記補助金のうちE連合会の保管する牛肉の重量に相当する冷凍保管経費等として,3億23 66万815円の支払いを求めた上,そのころ,Lらにおいて,上記同様の郵送の方法で,上記内容の請求書をF連合会事務所に郵送し,そのころこれをF連合会事務所に到達させてHに閲読させ,同人らを介し,Iをして上記金額の支払義務があるものと誤信させ,よって,同月22日ころ,同人らの指示を受けたF連合会職員をして,上記同様にE連合会の上記普通預金口座に,上記冷凍保管経費等として,3億2366万815円を振込送金させ,もっていずれも人を欺いて財物を交付させたものである。 (甲10号証の取扱いについて)弁護人は,甲10号証について,弁護人が検察官から受領した書面を基準にすれば,検察官は「Mの検察官調書謄本」を証拠請求しているところ,本件記録上は「Hの検察官調書謄本」が証拠として取り調べられたことになっている,しかし,弁護人としてはHの検察官調書謄本につき同意をしたことはないから,これを証拠とすることはできない旨主張するので,問題の性質にかんがみて,一言付言して 証拠として取り調べられたことになっている,しかし,弁護人としてはHの検察官調書謄本につき同意をしたことはないから,これを証拠とすることはできない旨主張するので,問題の性質にかんがみて,一言付言しておく。 本件記録及び審理の経過によれば,本件記録中の証拠等関係カードにおける甲10号証の供述者欄には,もともと「M」との記載があったものが「H」と訂正されて書記官の認印が押捺されていること,第1回公判期日の証拠調べ手続では甲10号証として「Hの検察官調書謄本」について要旨の告知がなされた上,取調済み書証として刑訴法310条所定の裁判所への提出手続がなされたことが明らかである。 このことを踏まえて考えると,上記の供述者欄の訂正について弁護人の了解のもとに行われたかどうかが問題であるが,本件にあってはこの点に関して特段の資料はないから,弁護人の了解はなかったものとして扱うべきものであり,そうすると,甲10号証とされるHの検察官調書(平成16年4月30日付,28丁で資料1ないし15添付のもの)は被告人側の同意がなかった疑いが残るものとして証拠能力がないものとして扱うのが相当ということになる。したがって,本件の事実認定に 際して甲10号証は除外し,使わないこととする。なお,このような証拠については手続を明確にする観点からは証拠排除をしておくことも考慮されるところであるが,第9回公判期日における裁判所からの証拠排除の申立てをするかどうかの釈明に対し,弁護人において排除の申立てをしない旨明言した経緯にもかんがみて,判決理由中で判断を示すこととした。 (争点に対する判断)第1本件において,被告人5名はいずれも各公訴事実を認める旨述べているものの,弁護人は,とりわけ法的評価に関して,(1)判示第2については補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以 る判断)第1本件において,被告人5名はいずれも各公訴事実を認める旨述べているものの,弁護人は,とりわけ法的評価に関して,(1)判示第2については補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「適化法」という。)違反の罪が成立し,詐欺罪は成立しない,(2)判示第1及び第2いずれについても犯罪の成立範囲はいわゆる対象外牛肉に係る部分に限定されるべきである,(3)被告人らは各罪につき共謀共同正犯としての罪責を負わない,(4)本件で成立する各罪の罪数関係は全体が包括一罪であるなどと主張するので,その主要な点について判断を示す。 第2判示第2の行為につき成立する罪名について弁護人は,判示第2につき,詐欺罪は成立せず,適化法違反の罪が成立すると主張する。 判示第2の事実は,要するに,Fを中心として,A株式会社及びB株式会社からFのもとに売却された対象外牛肉に加えて,Fが買い集めていた対象外牛肉及び対象牛肉を併せた57万2851キログラムの牛肉につき,そのすべてを対象牛肉だと偽って,E連合会からF連合会に買上申請及び冷凍保管経費等の交付申請をして,6億3815万円余りの買上げ代金及び3億2366万円余りの冷凍保管経費等を受領したというものである。そして,ここで各申請行為を行っているE連合会が緊急保管対策事業(以下「保管対策事業」という。)の実施主体ではないことから,適化法が適用される場合ではないことは明らかである。弁護人は,実質的には,F連合会から委託を受けていたもので あると主張するが,E連合会とF連合会は別個の法人格を有する団体であること,F連合会が傘下団体やその加盟業者から,その所有している買上条件を満たす牛肉を一時的に買い上げることになったが,E連合会はF連合会の傘下団体であり一買上申請業者であったこと,F連合会は,保管対策事 ,F連合会が傘下団体やその加盟業者から,その所有している買上条件を満たす牛肉を一時的に買い上げることになったが,E連合会はF連合会の傘下団体であり一買上申請業者であったこと,F連合会は,保管対策事業に関しD連合会を事業の委託先とする委託契約を結んでいるが,E連合会とは委託契約を結んでいないこと等に照らせば,保管対策事業の実施主体とはいえないことに疑問の余地はない。 そうすると,判示第2の罪については,詐欺罪が成立することになるが,弁護人は,保管経費等名下の3億2366万円余りについて,これは反対給付を伴わないものであるから,適化法上の間接補助金に該当するので,詐欺罪ではなく適化法違反となると主張するので,この点についてさらにみておく。 適化法にいう「間接補助金等」とは,国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金で,補助金等を直接又は間接にその財源の全部又は一部とし,かつ,当該補助金等の交付の目的に従って交付するものとされている(同法2条4項)ところ,牛肉在庫緊急保管対策事業実施要領及び牛肉在庫緊急保管対策事業助成実施要綱(以下「実施要綱」という。)等によると,補助対象経費は保管対象牛肉を買い上げて保管するのに必要な経費であり,G事業団が補助金を交付する相手方は,F連合会等事業実施主体とされた6団体であること,事業実施主体とその構成員等との間では,保管対策事業は保管対象牛肉の買い上げを内容とするものであることは明らかである。事業実施主体が買い上げた保管対象牛肉の所有権は事業実施主体に帰属するところ,事業実施主体から構成員等に対し,冷凍保管経費等として支払われる金員は,本来保管対象牛肉の所有権者である事業実施主体が行うべき対象牛肉の保管行為を,その構成員が代わって行うことに対する反対給付としての性格を有するものというべきであり 保管経費等として支払われる金員は,本来保管対象牛肉の所有権者である事業実施主体が行うべき対象牛肉の保管行為を,その構成員が代わって行うことに対する反対給付としての性格を有するものというべきであり,現に,本件事業実施主体たるF連合会とE連合会との間では,売買契約が締結され,買上げ代金の支払がなされ,保管対象牛肉の所有権はF連合会 に帰属しているのであるから,F連合会からE連合会に対して,冷凍保管経費等として支払われた金員が,間接補助金に該当しないことは明らかである。 さらに,弁護人は,買上げ代金名下の6億円余りに関し,F連合会がE連合会に対し6億円余りを支払った時点においては,E連合会は処分事業の事業実施主体となることが決まっていたのであるから,6億円余りは補助金と同様の色彩を帯びていたなどと主張するので,この点につき付言しておくと,F連合会がE連合会に対して支払った6億円余りは,F連合会が平成13年10月下旬ころから,買上資金を調達するために借入金総額の枠を拡張するために準備をし,同年12月21日に26億円を借り入れ,これをもとにE連合会に対して支払ったものであり,補助金とは全く無関係に買い上げているのであって,この点でも適化法違反の罪が成立する余地はない。また,「市場隔離牛肉緊急処分事業実施要綱」が制定されたのは同年12月27日であり,それをもって処分事業への移行が確定したというべきであり,6億円余りを支払った時点において,E連合会が事業実施主体ではないことは明らかであって,弁護人の主張を採用することはできない。 以上の次第であって,判示第2の行為については詐欺罪が成立する。 第3適化法違反,詐欺罪の成立範囲について弁護人は,判示第1及び第2に関し,対象外牛肉部分のみについて,適化法違反,詐欺罪が成立する旨主張するので,各罪の成 第2の行為については詐欺罪が成立する。 第3適化法違反,詐欺罪の成立範囲について弁護人は,判示第1及び第2に関し,対象外牛肉部分のみについて,適化法違反,詐欺罪が成立する旨主張するので,各罪の成立範囲について検討する。 判示第1の1及び2の適化法違反の罪について適化法29条1項違反の罪は,偽りその他不正の手段を講じ,その結果補助金等の交付を受けることを処罰するものであり,その立法趣旨は予算の不当な支出による国庫の損失を防ごうとするものである。そして,本罪のごとき行政罰則は,行政目的を達するために行政法規に違反する行為を刑罰の対象とするものであり,このことからすれば,正当に受給し得べき金額以上の過大交付を受けた場合については,本来正当に受給し得る部分については国庫の損失もな いのであるから,両者が不可分であるなど特段の事情がない限り,その超過部分についてのみ補助金等不正受交付の罪が成立するものと解するのが相当である。 検察官は,本件実行行為は,D連合会保管分として,①対象外牛肉14万5920.6キログラムを含む74万8184.1キログラム(判示第1の1),②対象外牛肉11万68.1キログラムを含む56万9229.3キログラム(同第1の2)の牛肉をすべて対象牛肉であると偽ってG事業団に補助金の概算払いを請求し,G事業団はこれを各申請ごとに一括して支払ったのであるから不可分のものであると主張する。しかしながら,本件においては,どの部分が対象外牛肉であるかということは売上伝票や請求書,関係者の供述等から明らかとなっており,正当に受領すべきであった額は特定されているのであるから,正当な部分と不正な部分は可分であったというべきで,正当ならざる部分に係る補助金額のみにつき適化法違反の罪が成立する。 もっとも,本件では,実施要綱第4(3)で あった額は特定されているのであるから,正当な部分と不正な部分は可分であったというべきで,正当ならざる部分に係る補助金額のみにつき適化法違反の罪が成立する。 もっとも,本件では,実施要綱第4(3)で,「現品確認の結果,保管対象荷口の一部に保管対象牛肉でないものがあると認められるときは,その荷口の全てをこの事業の対象としないことがある。」とされていることから,すべての牛肉につき,保管対策事業に乗せられないものであったのではないかとの疑問が生じ得る。この点については,「荷口の全て」の意義の解釈問題でもあるところ,実施要綱は「対象としないことがある。」と規定し,対象としない旨断定的な定めはしていないこと,実施要綱は,行政目的を達するために作成されたものであって,本来刑罰法規の解釈の基準となるものではないこと等からすれば,これによって適化法違反の罪の成立範囲を拡大させることはできない。 罪となるべき事実として認定した正当に受けるべき補助金額の算定式は,以下のとおりである。 ・判示第1の1について(金額に関しては小数点以下は切り捨て)748184.1(㎏)-145920.6(㎏)=602263.5(㎏) 602263.5(㎏)×707=425800294(円)425800294×0.8=340640235(円)・判示第1の2について(金額に関しては小数点以下は切り捨て)569229.3(㎏)-110068.1(㎏)=459161.2(㎏)459161.2×707=324626968(円)324626968×0.8=259701574(円)なお,正当に受給すべき金額の認定が上記算定式のそれよりも1円高くなっているのは,小数点以下の切捨て処理の結果を踏まえて,被告人側に有利に認定したものである。 判示第2の詐欺罪について本件実行行為の内 当に受給すべき金額の認定が上記算定式のそれよりも1円高くなっているのは,小数点以下の切捨て処理の結果を踏まえて,被告人側に有利に認定したものである。 判示第2の詐欺罪について本件実行行為の内容は,E連合会保管分として,対象外牛肉17万8303. 7キログラムを含む57万2851キログラムをすべて対象牛肉と偽って,一括してF連合会に対して買い上げを求めた上,冷凍保管経費等の支払を請求し,F連合会は,売買代金及び冷凍保管経費を一括して支払ったこと,本件にあっては,そもそも対象外牛肉であることを見分けるのは困難である上,ラベルの貼替え等までされていること,売買代金及び冷凍保管経費等の支払について,F連合会は,一部でも対象外牛肉が混入していることに気づいていれば,その全額につき支払をしなかったであろうことが認められる。さらに,行為者側に対象外牛肉と対象牛肉を混和させて,売買代金等をより多く詐取しようという意思があったことまで認められるのである。 そうすると,対象外牛肉を含む牛肉の買上申請等とこれに対する金員の交付とは対応するものであり,F連合会において,全体につき買上申請等があったことから全額支払を決めているという関係が存しており,対象外牛肉が含まれていることが分かっていればその全額につき支払わなかったといえるから,対象牛肉の分も含めて全額につき詐欺罪が成立するものと解するのが相当である。 また,社会通念上許容される余地のない手段・方法で売買代金等を交付させて いるのであるから,その点からも全体として違法性を帯び,取得した全額について詐欺罪が成立することは明らかである。 第4共謀共同正犯の成否について 弁護人は,被告人らは,判示各事実について,共同正犯には該らず,従犯の成立に関しても疑問があるなどと主張するので,この点について検討す 立することは明らかである。 第4共謀共同正犯の成否について 弁護人は,被告人らは,判示各事実について,共同正犯には該らず,従犯の成立に関しても疑問があるなどと主張するので,この点について検討する。 関係証拠によると,以下の各事実が認められる。 (1)平成13年9月10日に牛海綿状脳症感染牛が確認されたことを発端に牛肉の需要が極端に低迷するなど,いわゆるBSE騒動が発生し,ハンナングループ各社においても牛肉の売上げが大幅に落ち込むなどし,A株式会社では9月22日にと畜を中止し,B株式会社でも同月21日にと畜を中止し,ハンナン畜産もと畜を中止した。被告人Aは,BSE騒動によって,ハンナングループ各社が牛肉の在庫を抱え,と畜を中止せざるを得ない厳しい状況に陥ったことから,①不要な在庫を持たないこと,②取引を慎重にせざるを得ないと想定される取引先に関し,今後の対応を明確にすることとの指示を出した。 (2)同年10月中旬以降,国が保管対策事業の実施方針を打ち出したところ,Fは,ハンナングループ等各業者から対象外牛肉を集めて保管対策事業に申請することによって自ら及びハンナングループに利益をもたらそうと考えるに至った。他方,被告人Aも保管対策事業が実施されることを聞き,ハンナングループ各社が保有する国産牛肉の在庫品を保管対策事業に乗せようと,同年10月26日には,各社に在庫牛肉の量を報告するようにRに指示をし,同月29日ころ,その結果の報告を受け,被告人Aは,各社の牛肉の在庫量を認識した。同じころ,被告人Aは,H株式会社がと畜量を増大させていることを認識していた。 (3)Fは,同月24日ころ,Nを通じて,ハンナングループ各社に,在庫の牛肉を株式会社に入庫するよう指示を出し,A株式会社の被告人C,同D及び B株式会社の同Eは,この指 ことを認識していた。 (3)Fは,同月24日ころ,Nを通じて,ハンナングループ各社に,在庫の牛肉を株式会社に入庫するよう指示を出し,A株式会社の被告人C,同D及び B株式会社の同Eは,この指示に従い,在庫の国産牛肉を保管対策事業に乗せることにした。その際,被告人らは,輸入牛肉もFに販売することとしたが,事前若しくは事後にFの了解を少なくとも黙示的に得た。 (4)被告人Dは,上記(3)の取引につき,同月30日付で,A株式会社のI連合会に対する取引予定額5000万円,与信限度枠1億円とする与信限度枠設定申請書を作成し,被告人B,同Aの決裁に上げた。被告人Eも,上記(3)の取引につき,同月31日付で,B株式会社からIに対する取引予定額1億2000万円,与信限度枠2億円とする与信限度枠設定申請書を作成し,被告人B,同Aの決裁に上げた。被告人Bは,同月31日に上記申請書2通に承認の決裁を行い,被告人Aは,同年11月2日に,同申請書2通に承認の決裁をした。被告人Bは,被告人Aが承認の決裁をしたことを知り,同C,同D,同Eも被告人Aらが承認の決裁をしたことを認識した。 (5)その後,被告人Aは,同年11月2日に,対象外牛肉を含む国産牛肉等の在庫調査を再び指示し,数日中にハンナングループ各社の在庫状況を把握するに至った。 (6)他方,Fは,Nを通じて,被告人C,同D及び同Eに全頭検査後の牛肉でもかまわないから,牛肉を送るよう指示し,同人らは同月9日から12月初旬にかけて,対象外牛肉を株式会社Jに搬入した。これらの取引に関する与信限度枠設定申請書に,被告人Aと同Bは,承認の決裁をした。 (7)各被告人は,同年10月末ころの時点において,保管対策事業の保管対象牛肉が,全頭検査前(同月17日以前)にと畜解体された国産牛肉に限られていたことを認識 被告人Aと同Bは,承認の決裁をした。 (7)各被告人は,同年10月末ころの時点において,保管対策事業の保管対象牛肉が,全頭検査前(同月17日以前)にと畜解体された国産牛肉に限られていたことを認識していた。 各被告人の主観面について上記2において検討したところに加えて,関係証拠を総合すると,少なくともFについては,適化法違反の罪(判示第1の1及び2)並びに詐欺罪(同第2)が成立するものと認められるが,各実行行為に対する被告人5名の認識等 についてみておく。 (1)被告人Aについて被告人Aは第2回公判において,自身の行った同年11月2日に与信申請書の決裁をした時点で,Fの保管対策事業に対象外牛肉を乗せるという意図(以下「犯行意図」という。)を察することができなかったともとれる供述をしているが,同人が,BSE騒動により牛肉の消費が低迷していることを認識し,牛肉の在庫量や与信管理につき注意するよう自ら指示を出していること,国が保管対策事業を実施することを知り,同年10月17日以前にと畜解体された牛肉に限られることなど保管対象牛肉がどのようなものであるかについても知っていたこと,同年11月2日の決裁の時点でB株式会社,A株式会社を含むハンナングループ各社の牛肉の在庫量を把握していたことなどの客観的状況等に徴すれば,Fらの犯行意図を察することができなかったという供述を信用することはできない。他方,被告人Aは,捜査段階及び第3回公判においては,同月2日の時点で対象外牛肉が入っていたことについて認識していた旨述べた上で,Fの犯行意図についても把握していた旨の供述をしているが,そのように感じた理由や認識するに至った理由について具体的に供述している上,上記の牛肉消費量の低迷,と畜再開等の客観的状況等と整合していることなどにも照らせば,後者 握していた旨の供述をしているが,そのように感じた理由や認識するに至った理由について具体的に供述している上,上記の牛肉消費量の低迷,と畜再開等の客観的状況等と整合していることなどにも照らせば,後者の供述に信用性が認められるというべきである。 したがって,被告人Aが同月2日に与信申請書の決裁をする段階においては,Fが対象外牛肉をA株式会社及びB株式会社から買い集め,保管対策事業に対する申請をし,補助金を不正に受給しようと意図していることを認識していたこと,被告人C,同D及び同EがFの犯行に加担する意思を有していたことについても認識していたというべきで,本件各犯行のいずれについても認識を有していたと認められる。 (2)被告人Bについて 被告人Bは,公判廷において,被告人Aと同様,与信限度枠設定申請書の記載をあまり意識していなかった旨供述し,Fらの犯行意図に対する認識を否定するような供述をしている。しかしながら,上記のとおり,BSE騒動により牛肉の消費が極端に低迷している状況からすれば,ハンナン株式会社常務取締役として子会社の与信限度枠設定等の決裁業務等を行い,また,30年もの間,信用組合に勤務し,そのうち融資業務等に長い間従事していた被告人Bが,新規の,しかも多額の与信限度枠が設定されている申請書の記載を意識しないということは極めて不自然であって信用できない。他方,捜査段階における与信限度枠設定申請書の記載を疑問に持ち,犯行意図を認識したという同被告人の供述は,具体的なものであるばかりでなく,不正行為をすることに対する葛藤等を述べる部分は迫真性に富んだものであり,さらに牛肉消費量の低迷等の客観的状況とも整合しており,信用し得るものである。 したがって,被告人Bも,同月2日に与信申請書の決裁をする際に,Fの犯行意図及び被告人Cや同 迫真性に富んだものであり,さらに牛肉消費量の低迷等の客観的状況とも整合しており,信用し得るものである。 したがって,被告人Bも,同月2日に与信申請書の決裁をする際に,Fの犯行意図及び被告人Cや同Eらがその犯行に加担する意思を有していたことについて認識していたといえ,本件各犯行のいずれについても認識を有していたと認められる。 (3)被告人C,同D及び同Eについて被告人C及び同Dは,捜査段階及び公判廷において,いずれも,対象外牛肉を保管対策事業に乗せることを認識した上で与信限度枠設定申請書を作成し,また,Fらの指示のもと,対象外牛肉を保管対策事業に乗せることを認識しながら対象外牛肉を送っている旨一貫して供述しており,その信用性に疑問はない。したがって,両被告人は各実行行為に対する認識があったといえる。 被告人Eは,公判廷において,調整保管に乗せるための牛肉という認識も半分あった旨供述しているが,同公判廷で,保管対策事業でも調整保管でも, どちらに使われてもかまわないと思ったとも供述しているのであって,対象外牛肉を保管対策事業に乗せることを認識,認容していたことは明らかである。加えて,捜査段階においては,対象外牛肉を保管対策事業に乗せることを認識していたと供述していたところ,これは上記客観的状況にも整合しており信用できる。したがって,被告人Eが各実行行為に対する認識を有していたことは明らかである。 (4)以上の次第であって,被告人5名はいずれも,各実行行為に対する認識に欠けることはない。そして,Fは,本件各実行行為をさせるにあたり,Nを通じて被告人C,同D及び同Eに対象外牛肉でもよいから送るようにと指示しているところ,そのためには,取引の決裁が必要なこと,すなわち,被告人A及び同Bの承認が必要であることを知っていたところ,実際に 通じて被告人C,同D及び同Eに対象外牛肉でもよいから送るようにと指示しているところ,そのためには,取引の決裁が必要なこと,すなわち,被告人A及び同Bの承認が必要であることを知っていたところ,実際に牛肉が送られてきたことを把握したのであるから,F側も被告人5名の本件への各関与行為につき認識していたものと認められる。 そして,各被告人は,保管対策事業に対象外牛肉を乗せるため,Fに対して対象外牛肉を売却することを十分に認識した上で,反対の意思表示をすることもなく,被告人C,同D及び同Eにおいては,対象外牛肉を売却し,被告人A,同Bにおいては,与信限度枠設定申請に承認を与えることにより各取引を承認したのであるから,Fとの間で少なくとも黙示的な意思の連絡が存したものと認められる。 共謀共同正犯の成否本件において,被告人5名は,適化法違反の罪ないし詐欺罪の実行行為を担当していない(対象外牛肉を送ったこと,対象外牛肉を取引対象とすることの決裁が本件各罪の実行行為にあたると考えることはできない。)ことは証拠上明らかである。そこで前記2及び3の検討を前提に,被告人らについて共謀共同正犯の成否を検討する。 (1)被告人C及び同Dについて 被告人Cは,A株式会社の取締役として,また同Dは同社の社員として,BSE騒動により,市場における牛肉の需要がなくなったことで,A株式会社が厳しい局面を迎えていた中,本件各犯行を遂行するのに不可欠の行為である対象外牛肉をFの下へ搬出する行為を担っている。この点に関し,弁護人は,本件各犯行は内容虚偽の在庫証明書さえあれば足りたのであるから,牛肉が必要不可欠ではなかったなどと主張するけれども,Fは,現実にどんな牛肉でもいいから送るようにと指示を出し,現実に送られた牛肉の量を申請量若しくは買上量等として各犯行が実行 足りたのであるから,牛肉が必要不可欠ではなかったなどと主張するけれども,Fは,現実にどんな牛肉でもいいから送るようにと指示を出し,現実に送られた牛肉の量を申請量若しくは買上量等として各犯行が実行されているのであって,牛肉そのものの果たした役割は決定的に重要であり,牛肉を送る行為は本件各実行行為と密接に関連するものと評価すべきである。 さらに被告人Cは,本件犯行前に,自ら対象外牛肉である輸入牛肉を送るなどしていること,牛肉を送る際に,対象外牛肉であることが一見しただけではわからないよう,偽装工作をしていること,以上をA株式会社の利益のために行ったと認められることに,前記3の(3)及び(4)で認定した同被告人の主観的認識も総合すれば,同被告人が共謀共同正犯の罪責を負うことは明らかである。 また,被告人Dについても,牛肉を送る際には,対象外牛肉であることがわからないように偽装工作をしていること,Nに連絡をする際の窓口となっており,本件各犯行と密接に関連する事柄に関して主導的な役割を担っていたこと,これをA株式会社の利益のため行っていたことに前記3の(3)及び(4)で認定した同被告人の主観的認識も総合すれば,被告人Dも,共謀共同正犯の罪責を負う。 (2)被告人Eについて被告人Eは,B株式会社常務取締役であったところ,BSE騒動の影響でB株式会社の経営状況が悪化する中で本件各犯行の基礎となるFへの牛肉の搬出を担当している。しかも,同被告人も,牛肉を送る際には,対象外牛肉 であることがわからないように偽装工作をしていること,本件犯行前に自ら輸入牛肉を送り,その了解を得ようとF側に連絡をとっていること,B株式会社の利益のために行ったと認められることに前記3の(3)及び(4)で認定した同被告人の主観的認識も総合すれば,被告人Eも,共謀共同正 牛肉を送り,その了解を得ようとF側に連絡をとっていること,B株式会社の利益のために行ったと認められることに前記3の(3)及び(4)で認定した同被告人の主観的認識も総合すれば,被告人Eも,共謀共同正犯の罪責を負うことは明らかである。 (3)被告人Aについて被告人Aは,A株式会社及びB株式会社の各代表取締役であり,同被告人が,平成13年11月2日の与信限度枠設定申請について承認をしなければ,被告人C,同D及び同Eにおいて,本件に係る対象外牛肉をFに売却することは,会社の内部規律の観点からも実際上も困難であったと認められ,この意味で同被告人の本件各犯行への関与は枢要なものであったといえる。また,被告人Aは,ハンナン株式会社の代表取締役としてハンナングループ各社を統括する立場にあったところ,本件各犯行は,ハンナングループの利益のために敢行されたものであり,同被告人もそれを知悉した上で,これを容認したものと認められる。さらに,同被告人は,上記各会社の代表取締役として,会社をあげての不正行為を止めるべき法的義務を負う立場にあり,また,首謀者であるFの実弟であることからすれば,いかにFが強大な影響力を持っていたとしても,ハンナングループ内において,唯一その犯行を止め得る立場にあったものである。 以上の諸点に加えて,前記3の(1)及び(4)で述べたとおり,Fらとの間に本件各行為につき黙示的な意思の連絡があったことを含む被告人Aの主観面を併せ考えれば,同被告人にはFらとの間に共謀共同正犯が成立するものというべきである。 (4)被告人Bについて被告人Bは,ハンナン株式会社の常務取締役として子会社であるA株式会社及びB株式会社の与信限度枠設定等の決裁をしていたものであり,同被告 人は平成13年11月2日の与信限度枠設定申請に対する承認の可否につ ,ハンナン株式会社の常務取締役として子会社であるA株式会社及びB株式会社の与信限度枠設定等の決裁をしていたものであり,同被告 人は平成13年11月2日の与信限度枠設定申請に対する承認の可否につき実質的権限を有しており,また,同被告人は,被告人Aに対して,この決裁につき意見を述べ得る立場であって,被告人Bの意見は,被告人Aが最終的に決裁すべきか否かを決する重要な要素となるものであったことが認められ,本件各犯行の前提となる対象外牛肉の取引を止め得る立場にあった。 以上の諸点に加えて,前記3の(2)及び(4)で述べたとおり,Fらとの間に本件各行為につき黙示的な意思の連絡があったことを含む被告人Bの主観面を併せ考えれば,同被告人についてもFらとの間に共謀共同正犯が成立するものというべきである。 (5)以上のとおり,被告人5名についてはいずれも判示第1の1及び2並びに同第2の罪につき共謀共同正犯の成立が肯定される。 なお,弁護人は,適化法違反及び詐欺罪について,各被告人自らが搬出に関わるなどした対象外牛肉以外のものについては,何ら認識認容しているところがないのであるから,犯罪は成立しない旨主張する。しかしながら,本件補助金,売買代金及び冷凍保管経費等は,被告人らが搬入した対象外牛肉,その他の対象外牛肉及び対象牛肉全部について各申請行為があって,それにつきそれぞれ支払われたものである上,被告人らは,既に述べたとおり,本件各犯行につき,共謀を遂げ,共謀共同正犯の罪責を負うものであるから,判示事実全部につき責任を負うことに疑問の余地はない。 第5罪数評価について弁護人は,判示第1の1及び2並びに第2の各行為は,そのすべてを包括一罪として評価すべきであると主張する。 しかしながら,判示第1記載の各事実はそれぞれ適化法違反の罪が成立し,判示第2記 価について弁護人は,判示第1の1及び2並びに第2の各行為は,そのすべてを包括一罪として評価すべきであると主張する。 しかしながら,判示第1記載の各事実はそれぞれ適化法違反の罪が成立し,判示第2記載の事実については詐欺罪が成立することは前述したとおりである。 本件犯行は,いずれも実行行為に該る各申請行為に対してそれぞれ結果が生じており,また,各申請行為は,日時を同一とするものでもないから,本来的に 数罪と評価すべきものである。 この点,弁護人は,適化法違反の罪について,F連合会が保管対策事業に乗せることのできる牛肉の総重量が決まっていたことを根拠として,包括一罪である旨主張する。しかし,適化法違反の事実について,2回の申請行為はいずれも申請時点において保管対象牛肉を特定してその段階でなされたものであり,当初から申請すべき内容(重量等)が決まっていて,それを別個に申請したというものではない。そして,G事業団も,各申請時点で特定された牛肉に関して補助金の支払をしているのであるから,その都度,申請される肉の重量及びそれに対する交付金額が決定されたというべきである。また,牛肉の総重量が決まっていたといっても,それはあくまで目安の量であって,現実に決定していない以上,それをもって総重量が決まっていたという前提は首肯できない。 また,判示第1の各罪と判示第2の罪との関係については,罪名が異なる上,判示第1の各罪は国家的法益に対するものであるのに対し,判示第2の罪はF連合会に対する詐欺行為であって,保護法益も異なるのであるから,これを併合罪と評価すべきことに疑問の余地はない。 以上の次第であって,判示第1の1,同第1の2及び同第2の各事実は併合罪となる。 (法令の適用)被告人5名の判示第1の1及び2の各所為はいずれも刑法65条1項,60条,補助金 に疑問の余地はない。 以上の次第であって,判示第1の1,同第1の2及び同第2の各事実は併合罪となる。 (法令の適用)被告人5名の判示第1の1及び2の各所為はいずれも刑法65条1項,60条,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項,32条1項に,判示第2の所為はいずれも刑法60条,246条1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の各罪について,所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は被告人5名につきいずれも同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条によりいずれも最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人A及び同Bをいずれも懲役3年に,被告人C,同D及び同Eをいずれも懲役2年6月に,それぞれ処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から被 告人A及び被告人Bに対しいずれも5年間,被告人C,被告人D及び被告人Eに対しいずれも4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 (量刑の理由) 本件は,ハンナングループの関係者である被告人らが,その中心的人物であり,本件の首謀者であるFらと共謀の上,いわゆるBSE騒動によって牛肉の消費が極端に低迷して大きな打撃を受けた食肉業界を救済するために国が行った緊急保管対策事業を悪用して,同制度が対象とする牛肉は,全頭検査が実施された平成13年10月18日より前にと畜解体処理された国産牛肉に限られていたにもかかわらず,不正の利益を得ようと,対象外牛肉を補償対象牛肉として申請するなどし,G事業団からF連合会を通じて多額の補助金を得たという事案(判示第1の1及び2)並びに対象外牛肉を対象牛肉と偽ってF連合会から買上げ代金や冷凍保管経費等を詐取した事案(同第2)である。 牛海綿状脳症(狂牛病)の影響で,食肉業界そのものが打撃を受け,ハンナングループも 1及び2)並びに対象外牛肉を対象牛肉と偽ってF連合会から買上げ代金や冷凍保管経費等を詐取した事案(同第2)である。 牛海綿状脳症(狂牛病)の影響で,食肉業界そのものが打撃を受け,ハンナングループも,その影響で厳しい経営状況に追い込まれており,特に,不良在庫の処理等に窮していたことを背景に,本件犯行は,その打撃を和らげようという趣旨のもとに国が行ったBSE対策事業を悪用して国民の血税を不正に得たもので,企業が公正な経営を行うという取引市場の前提そのものを踏みにじる行為であるとともに,国民の信頼を裏切るものである。被告人らは,Fの指示のもとに,対象外牛肉を対象牛肉として申請することを認識しながら,その前提として欠かすことのできない与信限度枠設定申請を承認し,あるいは,10月18日以降にと畜された対象外牛肉等を用意した上で送り続けるなどしており,高度に計画的な犯行である。そして,対象外牛肉を搬出する際には,そのことが発覚しないようにラベルを貼替えるなどしており,態様には巧妙かつ周到な面がある上,Fの犯行意図を組み入れた上で,一丸となってこれを遂行しており,まさに組織をあげて本件各犯行に及んだといえる。不正に得た金額も一連の犯行で総額約11億円にのぼり,被害金額も甚大である。本件犯行は,BSE対策事業を悪用して,ハ ンナングループの売上げを伸ばすとともに,補助金を不正に取得し,利得をも確保しようと,Fが首謀者となって行ったものであるが,その動機は利欲的なもので酌むべき点は全くないが,被告人らにおいても,Fの意図を了解した上で,企業利益の確保と自己保身のために本件各犯行に及んでおり,格別酌むべき事情は認められない。また,いずれも不正行為だと認識しながらも,Fの影響力をもってすれば表沙汰になることはないなどと考えてほとんど躊躇なく犯行に加担し 保身のために本件各犯行に及んでおり,格別酌むべき事情は認められない。また,いずれも不正行為だと認識しながらも,Fの影響力をもってすれば表沙汰になることはないなどと考えてほとんど躊躇なく犯行に加担しており,規範意識の欠落には深刻なものが感じられる。このようにみてくると,被告人らは,その立場,果たした役割等に応じて厳しくその責任を問われるべきである。 被告人Aは,本件各犯行に必要な与信限度枠設定申請を承認するという形で本件に関与しているところ,同被告人は,本件当時ハンナングループの最高責任者であって,会社ぐるみの不正行為を止め得る立場にあり,また,当然止めなければならない立場にあった。さらに,同被告人はFの実弟であり,現実的に本件犯行を止めることが唯一可能な立場にありながら,ほとんど躊躇なく不正行為を承認しているのであって,その責任は非常に重いといえる。 また,被告人Bは,ハンナン株式会社の常務取締役として,ハンナン株式会社の子会社から申請される取引口座設定・与信限度枠設定申請書の決裁権限を有しており,不正な取引を承認しないこと,また被告人Aに対して意見具申すべき立場にあり,被告人Aと同様,本件各犯行を現実的に止められる立場にあったといえる。それにも拘わらず,Fの指示であれば,不正行為であろうと指示に従おうと考えて,決裁印を押しており,法の遵守よりもFの指示に従うという法軽視の姿勢は厳しい非難に値する。 そうすると,本件は,被告人A及び同B,とりわけ被告人Aに対しては実刑をもって臨むことも考慮すべき事案である。 しかしながら,被告人Aにおいては,本件各犯行の責任をとるとしてハンナン株式会社をはじめとするハンナングループ各社の代表取締役を辞任し,同Bにお いてもハンナン株式会社の常務取締役を辞任した上で残務整理に当たるなど,それぞれ ,本件各犯行の責任をとるとしてハンナン株式会社をはじめとするハンナングループ各社の代表取締役を辞任し,同Bにお いてもハンナン株式会社の常務取締役を辞任した上で残務整理に当たるなど,それぞれに反省の態度を示していること,いずれも本件各犯行の直接的な行為は担っておらず,また積極的に意欲した上でこれに加担したものとまでは見受けられないこと,本件被害に関して総額で10億590万円余りの被害弁償がなされていること,本件犯行後,ハンナングループにおいて,コンプライアンス委員会を設けるなど再発防止の努力を始めていること,被告人Aにおいては古い罰金前科があるのみであり,同Bにおいては前科がないこと,公判廷において,被告人A及び同Bの妻がそれぞれ監督を約していることなど両被告人にとって有利な事情もあるので,これらを十分斟酌し,刑の執行を猶予することが相当であると判断した。 被告人C,同D及び同Eは,対象外牛肉の搬送を担っているところ,被告人らが牛肉を送らなければ,本件犯行は成り立たなかったことは明らかであって,その罪責はやはり重いというべきである。また,被告人C及び同Eにおいては,本件犯行前に,自らの考えで国の事業を悪用して対象外牛肉を混入することを決断しており,同Dにおいても,本件犯行を円滑に行うためにNと密に連絡をとるなど,いずれの被告人も法規範に対する意識は低いと言わざるを得ない。また,被告人Eにおいては,本件犯行の発覚を防ぐためにNに指示を仰ぎ,部下を巻き込んだラベル貼替え等の偽装工作をしており,同C及び同Dにおいても,平成13年11月中旬以降の牛肉については部下を巻き込んだラベル貼替え等の偽装工作を行っており,強く非難されるべきである。さらに,各被告人は,犯行後に証拠書類を隠滅しており,その点も軽視できない。以上からすると,上記被 以降の牛肉については部下を巻き込んだラベル貼替え等の偽装工作を行っており,強く非難されるべきである。さらに,各被告人は,犯行後に証拠書類を隠滅しており,その点も軽視できない。以上からすると,上記被告人3名の刑事責任も相当に重い。 しかし,他方,公判廷で,被告人Cにおいては,今後は職を辞してでも,犯罪への加担行為は行わない,迷惑をかけた人のためにも会社に残って尽力したい旨述べ,同Dにおいては,二度と犯罪をしない,従業員の意見が反映される会社になるよう力を注ぎたい旨述べ,同Eにおいては,不正の代償の大きさを痛感した, 今後二度と不正を行わない,会社の再建に尽力後には会社から退く決心をしている旨述べ,それぞれに反省を深め,立直りへの意欲を示していること,被告人らは,強い影響力を有するFの指示の下,本件犯行に加担したものであり,同人との関係では従属的な立場であったと評価できること,被告人らの行為は,Fに対して対象外牛肉を売却したというもので,申請行為そのものに関与したわけではないこと,与えた損害に前記のとおり被害弁償がなされていること,被告人3名には前科がないこと,いずれの被告人にも十分に監督を期待し得る家族がいることなどの酌むべき事情も少なからずあるので,これらの事情を総合考慮して主文掲記の刑に処するのが相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aにつき懲役5年,同Bにつき懲役4年,同C,同D及び同Eにつきいずれも懲役3年)平成17年5月11日大阪地方裁判所第1刑事部角田正紀裁判長裁判官柴山智裁判官柏原佐紀裁判官 原佐紀裁判官
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