主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告が原告に対して令和5年5月10日に行った停職3月(令和5年5月11日から同年8月10日まで)の懲戒処分が無効であることを確認する。 2 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和5年5月10日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、被告が運営するa大学文化学部の教授である原告が、被告から、論文の盗用を理由に令和5年5月10日に停職3か月の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)を受けたが、本件懲戒処分は無効であると主張して、被告に対し、本件懲戒処分が無効であることの確認を求めるとともに、不法行為に基づき、1100万円及びこれに対する本件懲戒処分の日である令和5 年5月10日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠(枝番のあるものは特記しない限り全枝番を含む。)等の掲記のない事実は当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認めることができる。) ⑴ 当事者ア被告は、a大学のほか、b大学を設置、運営する公立大学法人である。 イ原告は、a大学文化学部の教授であり、平成5年10月1日にa大学の前身であるc大学文学部の講師となり、助教授、准教授を経て、平成21年4月1日に教授となり、平成23年4月1日、大学の組織改編によりa大学の 教授となった者である。 ⑵ 論文ア dの論文e大学大学院国際言語文化研究科のdは、平成19年10月、学位(博士後期課程)申請論文として、現代日本語における文末詞を調査対象とし ある。 ⑵ 論文ア dの論文e大学大学院国際言語文化研究科のdは、平成19年10月、学位(博士後期課程)申請論文として、現代日本語における文末詞を調査対象とした「現代日本語の終助詞『よ』『ね』『よね』―意味論と語用論の接点 を求めて―」と題する論文(以下「d論文」という。)を執筆した。d論文はe大学附属図書館に保管されている。(甲7)イ原告の論文原告は、f市方言における文末詞を調査対象とした「f市方言文末詞『ヨ』『ネヤ』『ネー』『ヨネヤ』『ヨネー』の語用論的考察」と題する 論文(以下「原告論文」という。)を執筆し、同論文はa大学文化学部の学内誌である「a大学文化論叢(第10号記念号2022)」に掲載された(甲6)。 ⑶ 本件懲戒処分及び本件懲戒処分に至る経緯ア令和4年7月4日に、「通報・告発」と題する匿名文書(以下「本件通 報文書」という。)がa大学に送付された。本件通報文書には、原告論文がd論文の一部を流用・盗用しており、重大な特定不正行為(盗用)に該当するのではないかという旨が記載されていた。(甲8)イ予備調査会は、令和4年7月12日から同年8月9日まで本件通報文書について調査し、同日付けで、本件通報文書の指摘には合理性が認め られるとして本調査が必要であるとの結論を出した(甲10)。 ウ a大学の学長は、令和4年8月22日、不正防止委員会(以下「本件不正防止委員会」という。)に対し本調査(以下「本件本調査」という。)の開始を命じた(甲12)。 エ不正行為調査委員会(以下「本件不正行為調査委員会」という。)は、 令和4年9月5日から令和5年1月27日まで、本件本調査を行った(甲 12、乙4の1~5 じた(甲12)。 エ不正行為調査委員会(以下「本件不正行為調査委員会」という。)は、 令和4年9月5日から令和5年1月27日まで、本件本調査を行った(甲 12、乙4の1~5)。 オ本件不正防止委員会は、本件本調査の結果を受け、令和5年2月16日付けで、原告論文を「盗用」(a大学における研究活動の特定不正行為への対応等に関する規程(以下「本件特定不正行為規程」という。)2条2項3号)に該当すると認定した(甲12)。 カ a大学は、令和5年5月1日、原告論文が「盗用」にあたると認定したことを公表した(甲16)。 キ a大学の学長は、令和5年5月8日付けで、原告を対象者として、被告の理事長に懲戒の審査請求を行った(乙15)。 ク懲戒等審査委員会は、令和5年5月10日、原告に対して懲戒処分を行う こと、処分を停職3か月とすることなどを決定した(乙16)。 ケ被告は、令和5年5月10日、原告論文が本件特定不正行為規程の「盗用」(2条2項3号)に該当し、かかる「盗用」がy職員就業規則(以下「本件就業規則」という。)の「法令等の規定に違反した場合」(34条1号)及び「法人全体の秩序を乱し、又は信用を傷つけるような行為があった場合」 (34条3号)に該当するとして、原告に対し、停職3か月(停職期間:令和5年5月11日から同年8月10日まで)とする本件懲戒処分を行った(甲1、2)。 コ a大学は、令和5年5月11日、a大学の教授について、論文が「盗用」に当たると認定し、停職3か月の懲戒処分を行った旨を公表した(甲 3)。 ⑷ 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン文部科学大臣は、平成26年8月26日付けで、研究活動における不正行為への対応等に関す 戒処分を行った旨を公表した(甲 3)。 ⑷ 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン文部科学大臣は、平成26年8月26日付けで、研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(以下「本件ガイドライン」という。)を決定した。本件ガイドラインは、不正行為(特定不正行為)のうち「盗用」につ いて、「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文 又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること」としている。 (乙1)⑷ 各種規程の定めa大学における各種規程等には、概要以下の定めがある。 ア本件就業規則(甲4) ・第34条(懲戒)職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分をすることができる。 1号法令等の規定に違反した場合3号法人全体の秩序を乱し、又は信用を傷つけるような行為が あった場合・第35条(懲戒の種類)懲戒処分は、次のとおりとする。 3号停職イ y職員の懲戒等に関する規程(以下「本件懲戒等規程」という。)(甲 5)・第4条(行為の調査)1項 a大学及びb大学の学長は、所属する職員に懲戒事由に該当する行為があったと思われたときは、学内に懲戒調査委員会を設置し、事実関係の調査を行わせるものとする。 3項調査委員会は、速やかに事実確認及び当該教職員への事情聴取を行い、調査結果を学長に報告しなければならない。 ウ本件特定不正行為規程(甲9)・第2条(定義)1項この規程において「研究活動」とは、研究計画の立案及び実 事情聴取を行い、調査結果を学長に報告しなければならない。 ウ本件特定不正行為規程(甲9)・第2条(定義)1項この規程において「研究活動」とは、研究計画の立案及び実 施並びに成果の発表及び評価の過程における行為及びそれに付 随する全ての事項を含むものとする。 2項この規程において「特定不正行為」とは、次に掲げる行為をいう。(略)3号盗用(他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流 用することをいう。)・第11条(予備調査)1項不正防止委員会は、第9条による告発を受理した場合又は前条による調査の開始を命ぜられた場合は、速やかに予備調査を実施する。 2項不正防止委員長は、予備調査を実施するため、必要に応じ、研究者の中から調査員を指名し、予備調査会を設置することができる。 5項不正防止委員会は告発を受けた日又は調査を命じられた日から起算して原則30日以内に予備調査を終了し、当該調査 の結果を学長に報告する。 6項報告を受けた学長は、本調査を実施するか否かを速やかに決定(略)・第12条(本調査)1項前条の予備調査により本調査を行うことを決定した場合、 学長は、不正防止委員会に調査を命じるとともに、その旨を告発者及び調査対象者に通知し、研究資金提供機関等へ報告するものとする。 ・第13条(調査委員会)6項調査委員会は、本調査を実施するにあたり、調査対象者の 弁明を聴取しなければならない。 ・第14条(認定)1項調査 条(調査委員会)6項調査委員会は、本調査を実施するにあたり、調査対象者の 弁明を聴取しなければならない。 ・第14条(認定)1項調査委員会は、本調査を開始した日から起算して原則150日以内に調査した内容をまとめ、特定不正行為が行われたか否か、特定不正行為と認定された場合はその内容及び悪質性、特定不正行為に関与した者とその関与の度合い及び当該 研究活動における役割、その他必要な事項を認定する。 2項前項の認定に当たっては、調査対象者に対し、書面又は口頭による弁明の機会を付与しなければならない。 4項結果の報告を受けた学長は、対応を決定するとともに、その結果を告発者、調査対象者及びその所属機関の長(告発者及び 調査対象者が本学以外の所属である場合に限る。)に通知するとともに、理事長及び研究資金提供機関等へ報告するものとする。(略)・第15条(不服申立て)1項調査対象者は、前条の認定の結果及び第18条2項の認定 結果に不服がある場合は、調査結果通知日から起算して14日以内に不正防止委員会に対して書面により不服申立てを行うことができるものとする。ただし、当該期間内であっても、同一理由による不服申立てを繰り返して行うことはできない。 2項不正防止委員会は、前項の申立てを受理したときは、学長 にその内容を報告するとともに、調査委員会に対し再調査を実施するか否かの審査を指示するものとする。 5項調査委員会は審査の結果、再調査を実施するか否かを決定し不正防止委員会に報告し、不正防止委員長は不正防止委員会で審議の上学長に報告する。 ・第17条(認定後の措置) 委員会は審査の結果、再調査を実施するか否かを決定し不正防止委員会に報告し、不正防止委員長は不正防止委員会で審議の上学長に報告する。 ・第17条(認定後の措置) 2項特定不正行為が行われたと認定された場合、本学の教職員はy就業規則その他関係諸規定に従い(略)処分を課さなければならない。 2 争点⑴ 原告論文における盗用の有無(争点1) ⑵ 本件懲戒処分における手続違反の有無(争点2) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 原告論文における盗用の有無(争点1)(原告の主張)ア論文の「1.はじめに」では、先行研究に言及することが一般的であるか ら、d論文に記述されている内容が取り上げられていても問題はない。原告論文においては、言及あるいは引用する際に、脚注においてd論文を参照したことを明記しているから、盗用とされる問題ではない。 イ作例は、例えば、原告論文の55頁では、「d(2007:9-34)参照」として明示しているので盗用ではない。原告論文のような限られた紙数の中で はコンパクトに引用を示さなければならず、それを具体的に、逐一引用箇所を示すことになれば、紙数をはるかにオーバーすることになってしまう。また、同部分は先行研究の共通理解をも問えるところなので、上記のような引用で足りる。 ウ研究の過程では先行研究の上に新たな研究が積み上げられていくのであ り、似たテーマの研究を行っていれば当然同じような先行研究を参照することになる。また、原告論文はd論文とは異なる文献、新しい文献も参照している。このようなことは論文執筆においてよく見られることである。 エ原告論文の「1.はじめに」に盗用の有無に関する検証が集中しているが、オリジナリティを問 とは異なる文献、新しい文献も参照している。このようなことは論文執筆においてよく見られることである。 エ原告論文の「1.はじめに」に盗用の有無に関する検証が集中しているが、オリジナリティを問題にするのであれば原告論文の「本論」に相当する第2 節から第6節までを検証の対象とすべきであるにもかかわらず、本件不正 防止委員会の報告書ではその点に関してほとんど言及されていない。検証した結果、原告論文の中核部分に問題はなかったと判断されたものと思われる。そうであれば、d論文の執筆者に帰属すべきオリジナリティが、原告論文のオリジナリティであるかのような認識を閲読者に与えてしまうリスクはないということになる。 オ d論文のような博士論文は公開が前提であり、公開され閲覧可能な状態であれば、ほかの研究者に引用されることも織り込み済みである。一般的に、事前に論文の著者から了解を得ることはしない。これは研究者が論文を執筆する際の慣例となっている。 カ原告論文は、査読委員によって採用と認定された論文であり、第三者の目 を通して客観的判定により、評価を得ている。査読結果では、「採用」、「修正意見付き採用」となっており、個別の事項について細かいコメントは付されているが、原告論文の「1.はじめに」の内容に関する査読者からのコメントはない。このことは、専門家の目から見て、「1.はじめに」の節に研究倫理上不審な点がないことを意味している。 キ原告論文は、本文の後に括弧書き数字を記載し、後半の【注】においてその引用先を明示している。したがって適切な引用の表示である。本文ごとにその本文に続けて注意書きをする必要はない。実際、先行研究において、原告論文と同様の書き方をしている論文が複数存在する。 (被告の主張) ア 。したがって適切な引用の表示である。本文ごとにその本文に続けて注意書きをする必要はない。実際、先行研究において、原告論文と同様の書き方をしている論文が複数存在する。 (被告の主張) ア原告論文は、先行研究の考察を行い、その問題点を指摘するというd論文の論理展開の構成と同様の構成となっており、その論理展開の方法や表記方法について、適切な引用方法を講じていないため、d論文の考察が、あたかも原告論文の考察であるかのような誤解を与える表現となっている箇所が多数存在している。原告論文の「1.はじめに」の節についてd論文の流 用の状況は別紙1のとおりであり、原告論文の「3.文末詞『ネヤ』『ネー』 の機能」の節、「4.『ヨネヤ』『ヨネー』の機能」の節についてd論文の流用の状況は別紙2のとおりである。 イ研究者としては、ほかの論文等に挙げられた例文を引用する場合は、その出典を明示する必要があり、その出典の表示がなされていない場合は、「盗用」としての扱いを受けることになる。原告論文における盗用の特徴的な事 項は、原告論文が、d論文がほかの論文から引用した例文や自ら考案した例文に基づいた考察の結果として記述している部分を、d論文からの引用であることを表示することなく流用(盗用)している点にある。 ウ学術論文の執筆をするに当たって、ほかの研究者の考察の結果としての所見や例文を引用する場合に、出典の表示が必要とされる理由は、当該学術 論文に引用された考察や例文について、当該論文執筆者の考察、考案によるものであるとの誤解を生じることを防止するためであるが、原告の脚注の表示に関する主張を前提とするならば、原告論文に記載されている記述のうち、どの部分が原告論文執筆者の考察の結果であり、どの部分がほかの研究者の考察の結果 じることを防止するためであるが、原告の脚注の表示に関する主張を前提とするならば、原告論文に記載されている記述のうち、どの部分が原告論文執筆者の考察の結果であり、どの部分がほかの研究者の考察の結果であるかを推知することすら不可能になるのであって、 原告論文において、ほかの論文の引用が適切になされているとみることは不可能である。 例えば、原告論文55頁の脚注⑵を見ると、文末の右上に小さく⑵の表示がなされており、特定の例文についての参照部分を指示する記載とみることが不可能である上、原告論文の74頁の文末の【注】の⑵で参照の対象と されているのは、d論文の9頁から34頁という広範囲に及ぶものであって、この表示と例文との関連性を認識することは不可能であり、適切な出典の表示があるとみることはできない。 エ原告論文の参考文献66件中37件がd論文と同一の参考文献となっているところ、このうち原告論文が引用・参照頁を記載しているもの25件の うち、22件がd論文と同じ引用・参照頁となっている。原告論文の内容は、 d論文のサマリーとしての性質が濃厚であって、原告論文は、d論文の参考文献の記載を引き写すことによって作成したと見ざるを得ない。 オ原告論文は、第1節の「はじめに」において、d論文と同様の構成の下に先行研究の内容を記述しているのであって、そこに記述されている内容は、d論文の第2章のサマリーと表現するしかないものであって、d論文の内 容と同一の点や類似する点が数多く存在し、適切な引用の表示がなされていないため、原告の考察の結果であるとの誤認を生じさせる箇所が多数にわたって存在しており、これが本件不正行為調査委員会が第1節の記述に重点を置いて指摘をした理由である。また、原告論文の第2節から第6節の記述に 原告の考察の結果であるとの誤認を生じさせる箇所が多数にわたって存在しており、これが本件不正行為調査委員会が第1節の記述に重点を置いて指摘をした理由である。また、原告論文の第2節から第6節の記述についても、d論文からの引用であることを表示することなく、d論文 の記述を流用している部分が相当数確認されている。 カ査読は、特定の学術誌に掲載するにふさわしいかどうかの判断をするために行うものであるが、原告論文を掲載した「a大学文化論叢」は学内誌であり、査読者に対しては、単純な誤字・脱字のチェック、明白な誤り、論文の意義・目的、論文の内容についての一般倫理上の問題の検討を要請した ものにすぎないのであって、特定不正行為をめぐる研究者としての倫理上の問題の有無の調査検討を依頼しているものではない。 キ学術研究の領域では、ほかの論文の記述や例文の出典の明示については、出典を参照した文章の末尾、引用の最後に出典を明示することが基本原則であって、これは、ほかの論文からの引用に係る記述であることを明確に表 示し、引用元で直接確認することを容易にするためである。原告論文は、引用した例文の末尾、最後に出典の表示、注番号の表示はなく、その近辺に出典の明示もなければ、出典に関する注番号の表示もない。 ⑵ 本件懲戒処分における手続違反の有無(争点2)(原告の主張) ア本件懲戒処分は、懲戒調査委員会(以下「本件懲戒調査委員会」という。) が本件懲戒処分を課すに当たって原告に弁明の機会を与えなかった点で違法である。 本件懲戒調査委員会は、令和5年4月24日、事実確認及び事情聴取をするため原告に出席を求めているところ、通知書では欠席に正当な理由がない場合には出席を拒否すると判断すると記載している。原告は、同日は、別 懲戒調査委員会は、令和5年4月24日、事実確認及び事情聴取をするため原告に出席を求めているところ、通知書では欠席に正当な理由がない場合には出席を拒否すると判断すると記載している。原告は、同日は、別 の用件が入っており、それ以外の日を指定することを求めており、正当な理由があった。本件懲戒調査委員会は別の日を指定し、そこで弁明の機会を与える義務があったにもかかわらず、弁明の機会を与えることなく本件懲戒処分を課した。 イ懲戒処分を課すに当たっては、その処分の手続の際に弁明の機会を与え ることが必要であり、不正行為調査委員会における弁明の機会とは別のものである。また、懲戒調査委員会において弁明の規定がないとしても、懲戒という死刑宣告に等しい処分を課すのであるから弁明の機会を与えることが必要である。 (被告の主張) ア本件懲戒等規程では、本件懲戒調査委員会は、事実確認及び対象となる教職員への事情聴取を行うこととされているが、一連の懲戒処分に関する手続において、懲戒処分の対象となる職員に弁明の機会を付与する旨の規定は設けられておらず、本件懲戒調査委員会の行う対象職員への事情聴取についても、口頭によるか、書面によるかの具体的な方法についての定めもな く、そもそも事情聴取のための手続であって、弁明の機会の付与として位置付けられる手続ではない。 イ本件不正行為調査委員会は、第3回調査委員会で原告に対するヒアリングを実施し、弁明の機会を付与するという取扱いをしており、また、令和5年1月6日には原告の追加質問に対する文書による回答の後、同月20日 に「弁明」と題する書面の提出を受けており、原告は本件不正行為調査委員 会、本件不正防止委員会の手続を通じて、十分に弁明の機会を付与されている。 ウ本件懲 回答の後、同月20日 に「弁明」と題する書面の提出を受けており、原告は本件不正行為調査委員 会、本件不正防止委員会の手続を通じて、十分に弁明の機会を付与されている。 ウ本件懲戒調査委員会は、原告に対する事実確認及び事情聴取として、文書による回答でも支障がないと考えている旨伝えたところ、原告は、文書による回答を送付しており、本件懲戒調査委員会は、原告の回答内容も踏まえて 調査結果の報告を行っている。また、本件懲戒調査委員会の事務局は、原告に文書回答を要請するに当たり、主張したことがあれば自由に記載するように伝え、回答書の提出があった際には追加資料の提出の意思を確認したものの、原告は、追加主張や資料の提出の意思はない旨回答していたものであるから、本件懲戒調査委員会は、特定不正行為の認定手続を経た後である という状況に相応する弁明の機会を付与している。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ⑴ 原告論文に係る査読原告論文について、a大学の査読委員2名による査読が行われている。査読者のうち1名は、形式面を指摘するほか、分析が必要と思われる点、dの研究方法を説明し、用語を説明する必要があると思われる点、連続した発話がないのであれば説明が必要ではないかなど、内容面についての指摘を行い、「修正 意見付き採用」とした。また、もう1名の査読委員は、分量が規程を超えているとの指摘のほか、形式面の指摘を行い、「採用」とした。なお、いずれの査読者も、原告論文の査読に当たって、d論文を入手していない。(甲22、23)⑵ 本件不正行為調査委員会とのやり取り ア本件不正行為調査委員会は、令和4年11月22日頃、原 ずれの査読者も、原告論文の査読に当たって、d論文を入手していない。(甲22、23)⑵ 本件不正行為調査委員会とのやり取り ア本件不正行為調査委員会は、令和4年11月22日頃、原告に対し、原告 論文とd論文の対照表を交付した(乙3の1)。 イ本件不正行為調査委員会は、令和4年11月29日、第3回調査委員会を開催し、同委員会に出席した原告から事情聴取を行った。本件不正行為調査委員会は、同日の事情聴取を踏まえて協議し、原告に対する追加質問を行うこととした。(乙4の3) ウ原告は、令和5年1月6日、本件不正行為調査委員会に対し、追加質問に対する回答書面を提出した(乙5)。 エ原告は、令和5年1月20日、本件不正行為調査委員会に対し、「弁明」と題する文書を提出した(甲11)。 ⑶ 「盗用」認定に対する不服申立て ア本件不正行為調査委員会は、令和5年2月14日付けで、原告論文が「盗用」に当たる旨の報告書を作成した(乙23)。 イ a大学は、令和5年2月17日付けで、原告に対し、本件不正行為調査委員会の報告書を添付して、本件不正行為調査委員会の審議の結果を通知した(乙6)。 ウ原告は、令和5年3月2日付けで、前記イの通知に対し、不服申立てを行った(甲13)。 エ本件不正行為調査委員会は、令和5年3月22日の第6回調査委員会において、前記ウの不服申立てについて再調査をしないこととした(乙8)。 オ a大学は、令和5年3月31日付けで、原告に対し、再調査を実施しない 旨を通知した(甲14)。 カ原告は、令和5年4月10日付けで、a大学に対し、再調査を実施しない理由・根拠の提示を要望するとともに、再度、本件不正防止委員会の「盗用」との認定の取消しを求める不服 を通知した(甲14)。 カ原告は、令和5年4月10日付けで、a大学に対し、再調査を実施しない理由・根拠の提示を要望するとともに、再度、本件不正防止委員会の「盗用」との認定の取消しを求める不服申立てを行った(乙10の1・2)。 キ a大学は、令和5年4月21日付けで、原告に対し、前記カの不服申立て について対応しない旨を通知した(乙11)。 ⑷ 本件懲戒調査委員会による事実確認及び事情聴取ア本件懲戒調査委員会は、令和5年4月24日、原告に対し、事実確認及び事情聴取を行うことを通知し、同月25日から同月27日の4日間の候補日の中で出席可能な日の連絡を依頼するとともに、確認・聴取する事項を記載した質問事項を事前に交付した(甲15)。 イ原告は、令和5年4月24日、本件懲戒調査委員会の担当者に対し、「候補日として挙げられた(略)のそれぞれの時間帯は、公務およびその他の都合で、出席することが出来ませんので、ご了承ください。できれば、5月連休明けに再設定していただきますよう、お願いいたします」などと記載したメールを送信した(乙12の1)。 ウ本件懲戒調査委員会は、令和5年4月25日、原告に対し、「候補日として挙げておりました(略)につきましては、ご公務のため、調整困難とのこと承知しました。つきましては、当委員会で確認をさせていただきたい内容につきまして、添付資料の質問票のとおり送付いたしますので、5月1日(月)午前中までにメールにファイルを添付する形で回答いただきますよう、お 願いします。また、質問票への回答の他、申し述べたい事項があれば、作成の上添付していただいて結構ですので、その際には、質問回答票とともに、期日までにメールで送付してください。」などと記載したメールを送信した(乙 た、質問票への回答の他、申し述べたい事項があれば、作成の上添付していただいて結構ですので、その際には、質問回答票とともに、期日までにメールで送付してください。」などと記載したメールを送信した(乙12の2)。 エ原告は、令和5年4月26日、本件懲戒調査委員会の担当者に対し、再度 日程調整を要望した(乙12の3)。 オ本件懲戒調査委員会は、令和5年4月26日、原告に対し、「当委員会では、送付させていただいた質問内容につきましては、文書による回答でも支障がないものと考えておりますので、昨日お知らせしましたとおり、5月1日(月)午前中までに所定の方法で回答いただきますよう、お願いします。」 などと記載したメールを送信した(乙12の4)。 カ原告は、令和5年5月1日、本件懲戒調査委員会の担当者に対し、質問事項に対する回答を送信した(乙12の5、13)。 キ本件懲戒調査委員会は、令和5年5月1日、原告に対し、「形式的な確認ですが、いただいた回答資料以外に提出資料はございませんでしょうか? 念のための確認となります。」などと記載したメールを送信した(乙12の 6)。 ⑸ 本件懲戒調査委員会の報告書本件懲戒調査委員会は、令和5年5月8日、不正防止委員会の審議、認定に係る手続が適正に処理されていること、原告が過去に公金に係る非違行為で停職1年の懲戒処分を受けていること、dが原告に対して、d論文を自由に使 用してよいと了承した事実も著作権等の権利を行使しないことを伝えた事実もないことを確認したとする報告書を作成した(乙14)。 ⑹ 他大学における引用方法の解説ア g 大学の学生向けの教本には、引用には、直接引用と間接引用があること、直接引用には鍵括弧を用いる方法と段落引用の方法があること 書を作成した(乙14)。 ⑹ 他大学における引用方法の解説ア g 大学の学生向けの教本には、引用には、直接引用と間接引用があること、直接引用には鍵括弧を用いる方法と段落引用の方法があること、引用を正 しく行うためには、出典の明示とそれに対応する参考文献の表記が欠かせないことなどが記載されている(乙19)。 イ h大学のホームページには、学生向けの文章として、引用には、直接引用と間接引用があること、直接引用には鍵括弧に入れて引用する方法と段落を変えてある程度まとまった量の引用を行う場合があること、引用の出典 を明示する必要があること、出典を明示しないと剽窃とみなされてしまうこと、出典の明示とはレポートや論文の最後に参照した本を一覧にして掲載するだけでは不十分で、引用した箇所に出典を書かなければならないこと、レポートの最後に一覧表を載せるだけでは、レポートのどの部分を記述するために参照したのか分からないことなどが記載されている(乙20)。 2 争点1(原告論文における盗用の有無)について ⑴ 原告論文の「1.はじめに」のうち「よ」と「ね」に関する部分についてア原告論文には、「①『よ』と『ね』が表明する話し手の発話態度に関するもの」の中で、「同じ発話態度が、ある研究では『よ』、別の研究では『ね』の意味とされている。たとえば、佐久間(1983)では、『念押し』は『よ』によって表されているが、国立国語研究所(1951)では、『ね』の用法の一つ として認められている。」、「一つの終助詞に、相反する発話態度を認めている」、「『一方的な伝達か否か』という点で両極的である『主張』と『返答要求』を認めている」、「3)先行研究で分類されていない、例がある。 たとえば、『あー、またここでやられちゃったよー 態度を認めている」、「『一方的な伝達か否か』という点で両極的である『主張』と『返答要求』を認めている」、「3)先行研究で分類されていない、例がある。 たとえば、『あー、またここでやられちゃったよー。くそう』(中崎2002b):テレビアニメ『学校の怪談』の『よ』は、『主張』聞き手への『押し付け』、 『念押し』というよりも、話し手の『悔しさ』という緩マ徐マが表明されたものである。」との記載があるが(甲6[55、56頁])、そこには何ら脚注や引用の表示がない。他方、d論文を見ると、「2.2 『よ』と『ね』が表明する話し手の発話態度」において、「同じ発話態度が、ある研究では『よ』、別の研究では『ね』の意味とされている。例えば佐久間(1983)で は、『念押し』は『よ』によって表されるとされているが、国立国語研究所(1951)では『ね』の用法の一つとしても認められている」、「一つの終助詞に、相反する発話態度を認めるべきではない。例えば『主張』と『返答要求』は、聞き手に対して『一方的な伝達か否か』という点で両極的である」、「『あー、またここでやられちゃったよー↓。くそう』(中崎(2002b): テレビアニメ「学校の怪談」) この『よ』の使用例は、『主張』、聞き手への『押し付け』、『念押し』というより、話し手の『悔しい』という感情が表明されたものである」との記載がある(甲7[10、14、15頁])。 そうすると、両者を対比すると、項目名、例文、例文の考察において、原告論文はd論文とほぼ同一となっている。 イまた、原告論文には、「②『よ』と『ね』を「情報の帰属先という観点か ら捉えるもの」、「②は、いわゆる『なわ張り理論』である。」、「なわ張り理論では、『よ』が話し手帰属情報、『ね』が聞き手帰属情報をマ 文には、「②『よ』と『ね』を「情報の帰属先という観点か ら捉えるもの」、「②は、いわゆる『なわ張り理論』である。」、「なわ張り理論では、『よ』が話し手帰属情報、『ね』が聞き手帰属情報をマークするとされている。」、「益岡(1991)では、『よ』が認識や意向の不一致、『ね』が一致を表すとされている。このような両極的な意味を認めると、『よ』と『ね』の複合と考えられる『よね』が相反する意味の複合となり、 論理的に説明できない。」、「任意の『ね』を付加する動機として、神尾(1990)では『特に協応的態度を表したい』、神尾(1998)では『友好的な感じをもたせる』、益岡(1991)では、『聞き手との一体化』とするが、次のような例は説明できない。」、「(母親が『宿題、明日中に仕上げなさい』といった時の発話)子供がa.『わかった{φ/#ね}。b.『いやだ{φ/ね}。と 答えた場合である。共感的・友好的な態度を表すものであれば、b.よりもむしろa.の方に『ね』が付き得るはずであるが、実際は、a.に『ね』は付加できない。」との記載があるが(甲6[56頁])、そこには何ら脚注や引用の表示がない。他方、d論文を見ると、「3.1 情報の帰属先-情報のなわ張り理論」、「益岡(1991)では、『よ』が認識や意向の不一致、『ね』 が一致を表すとされる。また、なわ張り理論では、『よ』が話し手帰属情報、『ね』が聞き手帰属情報をマークするとされる。このように、『よ』と『ね』は両極的な意味が認められている。しかし、それでは『よ』と『ね』の複合と考えられる『よね』が相反する意味の複合となり、『よね』の存在を論理的に認めにくくなる。」、「任意の『ね』を付加する動機として、『聞き手 との一体化」(益岡(1991))、『特に協応的態度を表したい』 る『よね』が相反する意味の複合となり、『よね』の存在を論理的に認めにくくなる。」、「任意の『ね』を付加する動機として、『聞き手 との一体化」(益岡(1991))、『特に協応的態度を表したい』(神尾(1990)、『友好的な感じをもたせる』(神尾(1998)といったことが挙げられているが、次のようにこれでは説明できない『ね』のデータがある。例えば、任意の『ね』が共感的・友好的な態度を表すのであれば、(25b)よりはむしろ(25a)に『ね』が付き得るはずだが、実際は(25a)に『ね』は付加できな い。」、「(25)a.母親『宿題、明日中に仕上げなさい』子供『わかった{φ /#ね}』(作例)b.母親『宿題、明日中に仕上げなさい』子供『いやだ{φ/ね}』(作例)」との記載がある(甲7[16、21、22頁])。 そうすると、両者を対比すると、項目名、考察、例文において、原告論文はd論文とほぼ同一となっている。 ウさらに、原告論文には、「③『よ』と『ね』を話し手の既得情報と聞き手 の既得情報の一致性」、「談話管理理論(田窪・金水2000)が指摘しているように、話し手が、聞き手が情報を持っていることを知っているだけでは、聞き手との情報の一致は認められない。そもそも発話するには、判断や認識の不一致が発話の前提にあり、一致していれば、伝達価値はないと考えられる。」との記載があるが(甲6[56頁])、そこには何ら脚注や引用の表 示がない。他方、d論文を見ると、「3.2 話し手の既得情報と聞き手の既得情報の一致性」、「しかし、談話管理理論(田窪・金水(2000)他)で指摘されたように、話し手が、聞き手が情報を持っていることを知っているだけでは聞き手との情報の一致は認められない。」、「そして、そもそも発話するには判断や認識 管理理論(田窪・金水(2000)他)で指摘されたように、話し手が、聞き手が情報を持っていることを知っているだけでは聞き手との情報の一致は認められない。」、「そして、そもそも発話するには判断や認識の不一致が発話の前提にあり、一致していれば伝達 価値はないと考えられる(田窪・金水(2000))。」との記載がある(甲7[19、22頁])。 そうすると、両者を対比すると、項目名、考察において、原告論文はd論文とほぼ同一となっている。 エ加えて、原告論文には、「④『よ』と『ね』を話し手の情報管理の観点か ら捉えるもの」、「聞き手に情報を求める場合であっても、『ね』が使えない例がある。たとえば、『私、ゆうべ、眼鏡、ここに置いた{よね/#ね}』のような場合である。引き込むために検索の余地があるものとして示すのだと考えても、このような例は説明できない。」、「聞き手との意見の対立が前提となっており、聞き手を引き込めない状況であることが明らかな場 合であっても『ね』は使える。このことから、聞き手を引き込む意図がある かどうかも『ね』の付加基準としては不十分である。」、「(AとBが言い合っている)A:これでいいですね?B:いやだめですね。」との記載があるが(甲6[56頁])、そこには何ら脚注や引用の表示がない。他方、d論文を見ると、「第4節情報管理の仕方で特定する研究」、「聞き手に情報を求める場合であっても、先の(43)(以下に(48)として再掲)のよう な『ね』が使えない例がある。聞き手を引き込むために検索の余地があるものとして示すものだと考えてもこのような例は説明できない。」、「(48)私、ゆうべ、眼鏡、ここに置いた{よね/#ね}(本章(43))」、「聞き手との意見の対立が前提となっており、聞き手を引き込めない のとして示すものだと考えてもこのような例は説明できない。」、「(48)私、ゆうべ、眼鏡、ここに置いた{よね/#ね}(本章(43))」、「聞き手との意見の対立が前提となっており、聞き手を引き込めない状況であることが明らかな場合であっても『ね』は使える((49)で、話し手Bは、聞 き手Aとは、対立的な意見を述べている)。このことからも、聞き手を引き込む意図があるかどうかも『ね』の付加基準としては不十分であることがわかる。」、「(49)(AとBの言い合い)A『これでいいですね?』B『いや、だめですね』A『十分じゃないですか』B『私としては、認められませんね』(加藤(2001))」との記載がある(甲7[23、31頁])。 そうすると、両者を対比すると、項目名、例文、考察において、原告論文はd論文とほぼ同一となっている。 オそして、原告論文には、「⑤『よ』と『ね』を対人的発話態度表明の標識として捉えるもの」、「伊豆原(2001:35)で、『ね』を選ばずに『よ』を選ぶのは、その発話の第一の目的が共感領域の形成ではなく、情報を伝え 『聞き手の注意を喚起し、状況に従った判断を促すことで伝達を保証しようとする』ことであるためとされる、と述べているが、次のような例は、説明できない。」、「A:消しゴム、貸して。B:いいよ。」、「これなどは、『共感的に伝達されている』と解釈できないわけではない。」、「『ね』も、発話内容や、拒絶するといった発話目的によっては、『共感的』とは言いが たい発話に使われることもある。次の例は、『突き放した』発話態度が表現 されている。」、「A:つべこべ言わずにオレの言った通りにしろ、この野郎!B:いやだね。やるもんか!」との記載があるが(甲6[56、57頁])、そこには何ら脚注や引用の表示が 態度が表現 されている。」、「A:つべこべ言わずにオレの言った通りにしろ、この野郎!B:いやだね。やるもんか!」との記載があるが(甲6[56、57頁])、そこには何ら脚注や引用の表示がない。他方、d論文を見ると、「第5節『よ』と『ね』を対人的発話態度の表明の標識として捉える研究」、「また伊豆原では、以下の例のように『ね』を選ばずに『よ』を選ぶのは、その発話の第 一の目的が共感領域の形成ではくママ、情報を伝え『聞き手の注意を喚起し、状況に従った判断を促すことで伝達を保証しようとする』ことであるためとされる(p.35)。」、「しかし、次の(55)のように発話内容が聞き手の先行発話に対する承諾である場合や、(56)のように発話内容が『私も同じ状況にいる』という内容である場合は、『よ』が使われていても『共感的に伝 達されている』と解釈できないわけではない。」、「(55)A『消しゴム、貸して』B『いいよ』」、「『ね』も、発話内容や、拒絶するといった発話目的によっては、『共感的』とは言いがたい発話に使われることもある。次の例は『共感的』というよりはむしろ『突き放した』発話態度が表現されている。」、「(57)X『つべこべ言わずにオレの言った通りにしろ、この野 郎!』Y『いやだね。やるもんか!』(本章(18b))」との記載がある(甲7[32ないし34頁])。 そうすると、両者を対比すると、項目名、例文、考察において、原告論文はd論文とほぼ同一となっている。 カ原告論文の論述内容は前記アないしオのとおりであるところ、その記載 に照らせば、原告論文を閲覧した者は、原告論文の「1.はじめに」では、「よ」と「ね」について、「①『よ』と『ね』が表明する話し手の発話態度に関するもの」ないし「⑤『よ』と『ね』を対人的 記載 に照らせば、原告論文を閲覧した者は、原告論文の「1.はじめに」では、「よ」と「ね」について、「①『よ』と『ね』が表明する話し手の発話態度に関するもの」ないし「⑤『よ』と『ね』を対人的発話態度表明の標識として捉えるもの」の五つの観点から問題点が指摘できるとの考察及びその観点からの考察内容が原告の考察として論述されていると認識することとな る。しかし、前記アないしオのとおり、これらの五つの観点はいずれもd論 文で取り上げられている観点であること、考察の中で用いられている例文も同一内容であること、考察内容も同一内容であることなどからすれば、原告論文の「1.はじめに」で「よ」と「ね」について論じた部分は、原告独自の見解ではなく、d論文における考察内容を引用ないし要約したものであることが明らかである。ところが、原告論文では、d論文から引用ないし 要約した部分について、何ら脚注や引用の表示がないなど、直接引用(鍵括弧引用、段落引用)の方法がとられておらず、また、d論文以外の論文については記載があるものの(なお、これはd論文の記載の転記ともいうべきものである。)、d論文についての言及はなく、d論文について間接引用の方法もとられていない。その結果、原告論文を閲覧した者は、上記の観点、考 察等について、いずれも、原告独自の観点、考察等であると認識することとなるというほかない。そして、そのような認識を抱かせることとなるのは、適切な引用がなされていないためであることが明らかである。 そもそも、「はじめに」において先行研究に言及することがあるとしても、そこでは、先行研究に言及した上で当該論文の問題意識等について論述が なされ、当該論文の著者の考察が現れているはずであるから、原告論文がd論文を適切に引用している 言及することがあるとしても、そこでは、先行研究に言及した上で当該論文の問題意識等について論述が なされ、当該論文の著者の考察が現れているはずであるから、原告論文がd論文を適切に引用しているのであれば、d論文を引用あるいは参考にした上で、原告独自の考察が現れているはずである。ところが、原告論文の「1. はじめに」のうち「よ」と「ね」に関する部分についてd論文と対比すると、別紙3で着色した部分が同一文言となっているが(なお、明らかな誤変換に ついては着色したが、平仮名と漢字などの形式的な相違がある点については着色していない。)、かかる状況に照らせば、原告論文の「1.はじめに」の「よ」と「ね」に関する論述では、d論文と同一文言となっている部分を除外した場合には、原告独自の見解・考察等が全く見当たらないのであって、もはや、d論文を引き写したものであるというほかない。 キ原告は、原告論文の「1.はじめに」でd論文の内容が取り上げられてい るとしても、一般的に行われている先行研究への言及であり、脚注でd論文を参照したことを明記している(原告論文の文章末尾右肩に付された「⑵」ないし「⑸」の脚注を指しているものと解される。)旨主張する。 しかし、前記カで説示したとおり、論文の序論において先行研究の内容を取り上げて言及すること自体は一般的に行われている先行研究への言及で あるとしても、本件で問題となっているのは、適切な引用がなされているか否かである。そして、確かに、原告が指摘する原告論文末尾に記載された脚注を見ると、「⑵d(2007:9-34)参照」、「⑷d(2007:144-150)参照」という記載があることは認められるものの(甲6[74頁])、このような記載では、原告論文のどの部分がd論文のどの部分 ると、「⑵d(2007:9-34)参照」、「⑷d(2007:144-150)参照」という記載があることは認められるものの(甲6[74頁])、このような記載では、原告論文のどの部分がd論文のどの部分を引用したものか判別 することができないのであって、かかる記載が鍵括弧を用いた直接引用、段落引用を用いた直接引用に当たらないことはもとより、間接引用の方法に当たらないことも明らかである。また、d論文を参照したものであるならば、原告独自の考察が論述されているはずであるが、原告独自の考察が見当たらず、d論文を参照して自らの考察を論述したものといえないことも前記 カで説示したとおりである。 ⑵ 原告論文の「1.はじめに」のうち「よね」に関する部分について原告論文には、「1)伊豆原(1993・2003)では、『よね』も『ね』も『聞き手との認識の共有状態』を作り出しているとし、その違いを『聞き手の介在があるか否か』としている」、「『よね』は『聞き手の介在を経て聞き手との 共有状態を作り出す形式としている』、「『聞き手の確認を経ている』と解釈される発話でも、『(待っていた友達が教室に来たのを確認して)あっ、来た{ね/?よね}』のように、『よね』の許容度が下がる」との記載があるが(甲6[57頁])、そこには何ら脚注や引用の表示がない。他方、d論文を見ると、「伊豆原(1993,2003)は、『よね』も『ね』も、『聞き手との認識の共 有状態』を作り出すとしている。そして両者の違いは、『聞き手との認識の共 有状態』を作り出す際に『聞き手の確認を経る』という聞き手の介在があるか否かにあるとしている」、「『よね』のほうは、⑵のような例を挙げ、聞き手の介在を経て聞き手との認識の共有状態を作り出す形式であると説明される」 す際に『聞き手の確認を経る』という聞き手の介在があるか否かにあるとしている」、「『よね』のほうは、⑵のような例を挙げ、聞き手の介在を経て聞き手との認識の共有状態を作り出す形式であると説明される」、「『聞き手の確認を経ている』と解釈される発話であっても『よね』が使えない場合がある」、「⑶(待っていた人が来たのを見て)あっ、きました {ね/?よね}」との記載がある(甲7[145頁])。 そうすると、両者を対比すると、原告論文の「① 1)」(甲6[57頁])の部分はd論文を引用ないし要約したものといえる。 また、原告論文の「① 2)」(甲6[57頁])や「②『よね』が『話し手の思考・認識形成過程』という意味を含むものと捉えるもの」においても、 これまで説示してきたのと同様に、原告論文の記載はd論文を引用ないし要約したものといえる。 そして、原告論文の「1.はじめに」のうち「よね」に関する部分でも、直接引用(鍵括弧引用、段落引用)の方法がとられておらず、間接引用の方法もとられていないことからすれば、原告論文を閲覧した者は、「よね」の考察等 について、原告独自の考察等であると認識することとなること、その原因が適切な引用がなされていないことにあることについても、前記⑴で説示したのと同様である。 ⑶ 原告論文の「3.1.1.1『ネヤ』『ネー』が使えない場合」について原告論文は、「①話し手の記憶にある情報を発話開始部分で発話する場合」、 「◎情報が処理負担の少ない応答内容の場合」、「②聞き手の認識を変更させる意図がある発話の場合」、「③聞き手との共有が明らかな情報を述べて、聞き手の認識を変更させる場合」、「④『いい』という応答が承諾・断りを表す場合」という分類をした上で、平叙文において『ネヤ』『ネー』が 図がある発話の場合」、「③聞き手との共有が明らかな情報を述べて、聞き手の認識を変更させる場合」、「④『いい』という応答が承諾・断りを表す場合」という分類をした上で、平叙文において『ネヤ』『ネー』が使えない場合について、「『話題』の共有がなされていない状況で、『話し手情報』を発 話する場合(①)と話し手にとって当該の情報が確定的なものである(と聞き 手に示す)場合(②③④⑤)であることが分かる。したがって、『ネヤ』『ネー』は当該の情報を『閉じた』情報として提示する場合に使えない。」との考察をしている(甲6[59、60頁])。他方、d論文には、「⑴話し手の記憶にある情報を発話開始部分で発話する場合」、「⑵情報処理負担の少ない応答内容」、「⑶聞き手の認識を変更させる意図がある発話」、「⑷聞き手との共有 が明らかな情報を述べて、聞き手の認識を変更させる場合」、「⑸『いい』という応答が承諾・断りを表す場合」などの分類をした上で、「平叙文において『ね』が使えない場合を」、「『話題』の共有がなされていない状況で、『話し手情報』を発話する場合」、「話し手にとって当該の情報が確定的なものである(と聞き手に示す)場合」、「『ね』は当該の情報を『閉じた(clos ed)』情報として提示する場合に使えない。」などとの考察がなされている(甲7[49、52、56、57、59、60、61頁])。 そうすると、両者を対比すると、原告論文はd論文の引用ないし要約ともいうべきものであるが、原告論文において、直接引用(鍵括弧引用、段落引用)、間接引用の方法がとられていないことはもとより、原告論文の「3.1.1. 1『ネヤ』『ネー』が使えない場合」では、前記⑴⑵で説示した原告論文の「1. はじめに」とは異なり、原告が主張する脚注(文章末尾右肩 方法がとられていないことはもとより、原告論文の「3.1.1. 1『ネヤ』『ネー』が使えない場合」では、前記⑴⑵で説示した原告論文の「1. はじめに」とは異なり、原告が主張する脚注(文章末尾右肩に付された脚注)すら存在しないことからすれば、原告論文を閲覧した者は、上記の分類の観点や、考察について、原告独自の観点、考察であると認識することになるというほかない。 ⑷ 原告論文の「3.1.1.2『ネヤ』『ネー』が使える場合」について原告論文は、「②外界情報の一部である聞き手を『話題』として採り上げ、聞き手について、発話二マ次マに知覚したことを発話する場合」、「③外界情報の一部である聞き手を『話題』として採り上げ、話し手の記憶に格納されていた聞き手に関する事柄を発話する場合」、「④外界情報の一部である聞き手を『話 題』として採り上げ、第三者的情報を(それに対する聞き手の認識を問うかた ちで)発話する場合」、「⑤先行発話を『話題』として採り上げ、それについて言及する場合」などの分類をした上で、「『ネヤ』『ネー』が使用されるには、『話題』が話し手と聞き手にアクセス可能な状態にあることが必要であることが分かる。言い換えれば、『ネヤ』には、発話現場(談話場)でアクセス可能な『話題』に対して情報形成し、その『話題』に言及していることを示す 機能があることが確認できる。」、「発話現場(談話場)とは、図1に掲げた、Langacker(2000:262-263)が考案した、話し手と聞き手が共有している情報空間(CurrentDiscourseSpace=以下、CDS)のことであり、話し手の知識(ks)と聞き手の知識(kH)とが重なった、いわゆる『共有知識』とされるものの一部である」、「話題がCDS にあり urrentDiscourseSpace=以下、CDS)のことであり、話し手の知識(ks)と聞き手の知識(kH)とが重なった、いわゆる『共有知識』とされるものの一部である」、「話題がCDS にあり、それに言及するとき、『ネヤ』『ネー』が 付加される、言い換えると、図2のように、CDS にある『話題』(anchor)に新たな判断を追加する(increment)という情報処理操作を『ネヤ』『ネー』はマークする」などの考察をしている(甲6[60、61頁])。他方、d論文には、「1)外界情報の一つを『話題』として採り上げ、それに対して言及する。」、「2)外界情報の一部である聞き手を『話題』として採り上げ、聞 き手について、発話時に知覚したことを発話する。」、「3)外界情報の一部である聞き手を『話題』として採り上げ、話し手の記憶に格納されていた聞き手に関する事柄を発話する」、「4)外界情報の一部である聞き手を『話題』として採り上げ、第三者的情報を(それに対する聞き手の認識を問うかたちで)発話する。」、「5)先行発話を『話題』として採り上げ、それに対して言及 する。」とのパターンを示した上、「『ね』には、談話場でアクセス可能な『話題』に対して情報形成し、その『話題』に言及していることを示すという抽象的機能があることを確認した」、「『ね』が使用されるには、『話題』が話し手と聞き手にアクセス可能な状態にあることが必要である」、「発話現場(談話場)という、話し手と聞き手が共有している情報空間(CurrentDiscourse Space)であり、Ks とKH が重なった、いわゆる『共有知識』とされるものの 一部である(Langacker(2000,2001))」、「『話題』がCDS(CDS0 またはCDS-)にあり ce)であり、Ks とKH が重なった、いわゆる『共有知識』とされるものの 一部である(Langacker(2000,2001))」、「『話題』がCDS(CDS0 またはCDS-)にあり、それに言及するとき、『ね』が付く。言い換えると、CDS にある「話題」(下図のanchor)に、新たな判断を追加している(increment)という情報処理操作を『ね』はマークする」などと考察している(甲7[50、66、76、77、80、81頁])。 そうすると、両者を対比すると、原告論文はd論文の引用ないし要約ともいうべきものであるが、前記⑶同様、直接引用も間接引用もなされておらず、原告が主張する脚注すら存在しないことからすれば、原告論文を閲覧した者は、上記の分類の観点や、考察について、原告独自の観点、考察であると認識することになるというほかない。 ⑸ 原告論文の「3.1.2」以降について原告論文がd論文の引用ないし要約ともいうべきものであることは、前記⑴ないし⑷において認定説示してきたとおりであるところ、原告論文の「3.1.2」以降についてd論文と対比しても、別紙2において黄色に着色されているとおり、d論文の引用ないし要約ともいうべき部分が複数存 在することが認められるが(なお、黄色に着色されている部分以外でも、引用ないし要約と思われる部分がある。)、「d(2007:66-67)において、『ね』の付加により実現する3つの語用論的機能として、『ダイクシス的機能』『思考過程表示機能』『聞き手の介入促進機能』が生じるとした」として(甲6[62頁])、間接引用と評価し得る箇所があるほかは、直接引用(括 弧書引用、段落引用)も間接引用もなされておらず、原告が主張する脚注すら存在しないことからすれば、原告論文を た」として(甲6[62頁])、間接引用と評価し得る箇所があるほかは、直接引用(括 弧書引用、段落引用)も間接引用もなされておらず、原告が主張する脚注すら存在しないことからすれば、原告論文を閲覧した者は、原告論文の「3. 1.2」以降の複数の箇所における考察等について、原告独自の考察等であると認識することになるというほかない。 ⑹ 以上のとおり、原告論文は、その多くの部分がd論文の引用ないし要約 となっているというほかないところ、その結果、d論文の考察等が、原告 論文における原告独自の考察等であると認識させるものとなっており、原告論文は、適切な引用表示をすることなく先行論文であるd論文を流用しているから「盗用」に当たる。 ⑺ 原告は、①限られた紙数の中で逐一引用すれば紙数をはるかにオーバーすることとなり、作例は先行研究の共通理解をも問えるところなので、原告論 文程度の引用で足りる、②オリジナリティを問題にするのであれば原告論文の「本論」に相当する第2節から第6節までを検証の対象とすべきであるが、その点に関してほとんど言及されていないため、d論文の執筆者に帰属すべきオリジナリティが原告論文のオリジナリティであるかのような認識を閲読者に与えてしまうリスクはない、③公開され閲覧可能な論文は引用される ことが織り込み済みであり、事前に論文の著者から了解を得ることはない、④原告論文は、2名の査読委員による査読結果で「採用」、「修正意見付き採用」となっている、⑤先行研究において原告論文と同じ書き方をしている論文が複数存在する旨主張する。 しかし、①について、確かに、「a大学文化論叢」に掲載される論文につ いては、A4サイズ20枚を限度枚数とする紙数制限があることが認められる(甲29)。しかし 存在する旨主張する。 しかし、①について、確かに、「a大学文化論叢」に掲載される論文につ いては、A4サイズ20枚を限度枚数とする紙数制限があることが認められる(甲29)。しかし、紙数制限があるからといって適切な引用をしないことが許容されるものでないことはいうまでもない。 ②について、原告論文の「1.はじめに」の部分だけがd論文の盗用箇所というわけではなく、原告は、原告論文の「3.文末詞『ネヤ』『ネー』の機能」、 「4.『ヨネヤ』『ヨネー』の機能」についても、本文中で個別にd論文を引用していることを明示したり、脚注を付してd論文の該当頁数を摘示することなく、d論文の記載と全く同じあるいはおおむね同じ論述をしている箇所が多数見受けられることは既に認定説示したとおりである。 ③について、原告は、原告論文を執筆する際にdにd論文に言及することの 承諾を取っていないところ(認定事実⑸)、確かに、公開されている先行論文 について言及する際に、個別に先行論文の著者に承諾を取ることは多くないものと思われることからすれば、先行論文の著者の明示の承諾がないとしても、そのことをもって、直ちに、盗用に当たることになるものではない。しかし、先行論文の著者に明示の承諾を取らなくても「盗用」とならないのは、自己の論文において、先行論文の論述と自己の論述とを明確に区別し、先行論文 を引用している部分については引用であることを適切に表示し、自己の考察を読んだ者が、先行論文の著者の考察と自己の考察とを明確に区別することが可能となっていることが当然の前提である。そして、本件において、原告が適切な引用を行っていないことは前記⑴で認定説示したとおりである。 ④について、確かに、原告論文については、2名の査 とが可能となっていることが当然の前提である。そして、本件において、原告が適切な引用を行っていないことは前記⑴で認定説示したとおりである。 ④について、確かに、原告論文については、2名の査読委員による査読を経 た上で「a大学文化論叢」に掲載されており、2名の査読委員は原告論文がd論文の盗用であることあるいは適切な引用をしていないことの指摘は行っていない(認定事実⑴)。しかし、査読委員が原告論文と専門分野を同じくする研究者であるかは不明であるほか(なお、査読委員のうち1名は形式的な指摘のみを行っており、内容については言及していない(甲23)。)、査読委 員もあらゆる論文を把握しているものではないことからすれば(実際、査読委員は、原告論文の査読に当たってd論文を参照していない。)、査読委員の査読を経て掲載されているとしても、そのことをもって、「盗用」でないことの証左であるということはできない。 ⑤について、原告が、原告論文と同様の書き方をしている論文として指摘す る論文を見ても、「日本語の終助詞の機能-『よ』『ね』『な』を中心として-」では、「終助詞『よ』『ね』については、(金水1993b)で述べられている」、「以上が(金水1993b)に述べられている終助詞『よ』の用法であるが」、「次に、終助詞『ね』について、(金水1993b)には以下の三種類の用法が述べられている」などと記載されており(甲41)、かかる記載に照らせば、先 行論文の著者である金水の考察である部分を本文中において個別に明示して いると評価できるのであって、原告論文とは明らかに異なる。 また、「文末助詞『ね』『よ』の談話構成機能」では、「神尾昭雄(1990)は、『ね』の機能を⑴のように定義づけている。」と記載した上 いると評価できるのであって、原告論文とは明らかに異なる。 また、「文末助詞『ね』『よ』の談話構成機能」では、「神尾昭雄(1990)は、『ね』の機能を⑴のように定義づけている。」と記載した上で段落引用をしたり、「片桐恭弘(1995)は、『ね』や『よ』が会話でのみ用いられる点に着目して、その機能を分析した。片桐(1995)は(略)それを(12)のように定義 した」と記載した上で段落引用をするなどしており(甲42)、かかる記載に照らせば、先行論文の著者の論文から引用した部分を明示していると評価できるのであって、やはり原告論文とは明らかに異なる。 さらに、その点をさて措き、仮に、原告論文と同じ書き方をしている論文が複数存在するとしても、それは適切な引用を行っていない論文が複数存在す るということにすぎず、原告が適切な引用を行わないことを許容する根拠となるものではない。 したがって、原告の主張は採用できない。 3 争点2(本件懲戒処分における手続違反の有無)について⑴ 原告は、本件懲戒調査委員会が本件懲戒処分を課す際に原告に弁明の機 会を付与しなかったことが違法である旨主張する。 確かに、懲戒処分を行う際には、処分対象者から直接弁明を聴取することとした方が多くの情報を入手することができ、その結果、適正な処分に資することもあるといえる。しかし、懲戒処分の際に、処分対象者から弁明を聴取することを義務付けた法令上の根拠はなく、被告の各種規程を見ても、懲戒 処分を課す際に、本件懲戒調査委員会が、被処分者に対し、弁明の機会を付与することを義務付けた手続規定は見当たらない。 以上からすると、本件懲戒調査委員会は、懲戒処分を行うに際し、処分対象者である原告に弁明の機会を付与しなければならない手続上の義務を負 弁明の機会を付与することを義務付けた手続規定は見当たらない。 以上からすると、本件懲戒調査委員会は、懲戒処分を行うに際し、処分対象者である原告に弁明の機会を付与しなければならない手続上の義務を負っていたということはできないから、原告の主張は、独自の見解にすぎず、採用の 限りでない。 ⑵ また、その点をさて措くとしても、本件懲戒調査委員会は、原告との間で事実確認及び事情聴取の日程調整を行い(認定事実⑷ア)、原告が打診を受けた日程では困難である旨の回答をしたため、原告に対し、同委員会で原告に確認したい事項を記載した質問票を送付し、令和5年5月1日までに質問票への回答を求めるとともに、質問票への回答のほかに原告が申し 述べたい事項があれば作成の上添付して構わない旨も伝え(認定事実⑷イ、ウ)、原告は、本件懲戒調査委員会に対し、質問票への回答を送付している(認定事実⑷カ)。そして、同質問票及び回答においては、本件不正行為調査委員会における原告の回答(乙5)等にも言及されているところ(乙13)、原告は、同回答において、本件論文が盗用に当たらないことについて の主張を行っている。以上からすれば、原告は、本件懲戒調査委員会に対し、本件論文が盗用に当たらないことや、各種規程に基づく通知を受けていることなどについて、自らの見解を主張することができているから、書面による方法で弁明の機会が付与されていたと評価することもできる。 ⑶ したがって、本件懲戒処分に手続違反があるとは認められない。 4 小括原告論文がd論文を「盗用」したものであることは、前記2認定説示のとおりである。そして、ほかの研究者の論文の内容を適切な表示なく流用することは、ほかの研究者の業績とこれを流用した研究者による研究成果との区別を不可 を「盗用」したものであることは、前記2認定説示のとおりである。そして、ほかの研究者の論文の内容を適切な表示なく流用することは、ほかの研究者の業績とこれを流用した研究者による研究成果との区別を不可能ないし著しく困難なものとし、流用した研究者による研究成果ではないも のまで同人の研究成果であるかのような外観を作出する行為であるが、そのような行為が行われれば、ほかの研究者の業績を奪うこととなったり、流用した研究者の研究実績でないにもかかわらず、同人の研究実績として不当に評価されることとなったりするものである。このように「盗用」が研究分野において許されない行為であることはいうまでもなく、ガイドラインが設けられ(乙1)、学 生に対しても注意喚起が行われていること(乙19、20)もその現れであると いえる。それにもかかわらず、原告は、適切な引用を行わず、「盗用」に該当する行為を行ったものであるばかりか、自らの行為が「盗用」に当たることを認めていない。 以上のような事情に照らせば、停職3か月とした本件懲戒処分は、被告の裁量の範囲内の処分として、相当なものということができる。 5 結論以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 高知地方裁判所民事部(裁判長裁判官佐々木隆憲、裁判官鈴木美香、裁判官野澤尚純)
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