令和5年1月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第30204号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年10月31日判決 原告 A (以下「原告A」という。)原告 B (以下「原告B」という。)原告 C (以下「原告C」という。) 原告 D (以下「原告D」という。)上記4名訴訟代理人弁護士佐藤大和 舟橋和宏被告有限会社Sirene 同訴訟代理人弁護士島 昭宏 主文 1 被告は、原告Aに対し、3万6277円及びうち2万2277円に対する令和2年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1万4000円に対する令和3年12月31日から支払済みまで年3パーセントの割合によ る金員をそれぞれ支払え。 2 被告は、原告Bに対し、3万6277円及びうち2万2277円に対する令和2年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1万4000円に対する令和3年12月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員をそれぞれ支払え。 3 被告は、原告Cに対し、3万6277円及びうち2万2277円に対する令 和2年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1万4000円に対する令和3年12月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員をそれぞれ支払え。 4 被告は、原告Dに対し、3万6277円及びうち2万2277円に対する令和2年3月1日から支払 円に対する令和3年12月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員をそれぞれ支払え。 4 被告は、原告Dに対し、3万6277円及びうち2万2277円に対する令和2年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1万4000 円に対する令和3年12月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員をそれぞれ支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、これを30分し、その29を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 7 この判決は、第1項ないし第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、112万2277円及びうち110万円に対する令和元年12月19日から、うち2万2277円に対する同月1日からそれぞれ 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、112万2277円及びうち110万円に対する令和元年12月19日から、うち2万2277円に対する同月1日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、112万2277円及びうち110万円に対する令 和元年12月19日から、うち2万2277円に対する同月1日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Dに対し、112万2277円及びうち110万円に対する令和元年12月19日から、うち2万2277円に対する同月1日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、実演家グループのメンバーとして活動している原告らが、原告らとの間で当該グループに係る専属契約を締結していた被 よる金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、実演家グループのメンバーとして活動している原告らが、原告らとの間で当該グループに係る専属契約を締結していた被告に対し、被告が同社の管理・運営するウェブサイトにおいて当該グループ名並びに原告らの肖像及び芸名等を掲載しているとして、 (1) 肖像権等及びパブリシティ権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求(いずれも一部請求)として、原告ら一人当たり110万円(内訳は肖像権等侵害につき50万円、パブリシティ権侵害につき50万円及び弁護士費用相当額10万円)及び令和元年12月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下 「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(2) 原告らと被告との間の黙示の肖像等利用契約に基づく報酬支払請求として、原告ら一人当たり2万2277円及びこれに対する令和元年12月1日(黙示の肖像等利用契約に基づく利用行為終了日の翌日)から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払 をそれぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告らは、いずれも、実演家グループ「FESTVAINQUEUR」 (以下「本件グループ」という。)のメンバーであり、被告のマネジメントの下でアーティスト活動をしていた者である。 被告は、複数のアーティストが所属するマネジメント会社である。 (2) 原告らと被告との間の専属契約ア原告A及び原告Bは、訴外2名のメンバーとともに、平成22年8月1 日、被告との間で、本件グループに アーティストが所属するマネジメント会社である。 (2) 原告らと被告との間の専属契約ア原告A及び原告Bは、訴外2名のメンバーとともに、平成22年8月1 日、被告との間で、本件グループに係る専属契約を締結し(以下「本件専 属契約」という。)、被告のマネジメントを受けながらアーティスト活動をしていた。原告C及び原告Dは、平成24年7月、本件グループに加入した。 原告らと被告は、同月14日、本件専属契約を更新し、本件専属契約は、その後概ね1年ないし3年ごとに延長継続された。 この間、上記訴外2名のメンバーは、本件グループを脱退した。 イ原告らと被告は、平成30年1月1日、同日付け専属契約書及び同日付け覚書により、要旨、以下の約定で本件専属契約を更新した。 (ア) 原告らは、被告に専属する実演家として実演活動をし、被告は、原告らの実演のための交渉及びマネジメント等をする(専属契約書(甲4) 1条及び3条)。 (イ) 被告は、本件専属契約期間中、広告・宣伝及び販売促進のため、原告らの芸名、本名、写真、肖像、筆跡、経歴、音声等、その他の人格的権利を、被告の判断により自由に無償で利用開発することができる(専属契約書5条)。 (ウ) 被告は、原告らに対し、原告らの本件グループに係る実演活動に関し、報酬を支払う。実演活動のうち、ファンクラブ、ファンサイトヘの出演、名称、肖像等の使用については、被告が第三者から受け取る収入より、被告が支出した経費を差し引いた残額の35パーセントを報酬として支払う。(覚書(甲12)1条⑧) (エ) 被告は、原告らに対し、前記(ウ)第1文所定の報酬のロイヤリティアドバンス分として、毎月5日限り、一人当たり5万円を支払う(覚書3条)。 (オ) 被告は、原告らに対 12)1条⑧) (エ) 被告は、原告らに対し、前記(ウ)第1文所定の報酬のロイヤリティアドバンス分として、毎月5日限り、一人当たり5万円を支払う(覚書3条)。 (オ) 被告は、原告らに対し、前記(ウ)第1文所定の報酬につき、毎年6月及び12月の各末日において締め切り、当該締切日後60日以内に、毎月支払っているロイヤリティのアドバンスの差額分を支払う(覚書4条)。 ウ原告らは、被告に対し、平成31年4月9日又は10日付けの本件専属 契約に係る解除通知書を送付し、本件専属契約は、令和元年7月13日をもって終了した。 エ原告らは、本件専属契約終了後も、現在に至るまで、本件グループ名でアーティスト活動を行っている。 (3) 被告による本件グループ名並びに原告らの肖像及び芸名等(以下「原告ら の肖像等」という。)の利用被告は、以下のとおり、原告らの肖像等を利用した(以下、これらを総称して「本件利用行為」という。)。 ア被告の運営するウェブサイト(以下「本件被告サイト」という。)における利用 被告は、本件専属契約期間中、原告らの承諾を得た上で、本件被告サイトにおいて、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介する内容のウェブページを作成した上、別紙写真目録1ないし3記載(赤枠で囲んだもの)のとおり、原告らの肖像写真及び原告らの肖像をイラスト化した画像を掲載していた。 被告は、本件専属契約終了後も、令和元年11月30日まで、本件被告サイトにおいて、上記写真及び画像を掲載していた。 なお、本件被告サイトには、原告らの肖像、イラスト、グループ名及び芸名(図案化したロゴを含む。)を転写ないし記載したグッズを販売するウェブサイト(以下「本件グッズ販売サイト」という。)及び本件グループに 件被告サイトには、原告らの肖像、イラスト、グループ名及び芸名(図案化したロゴを含む。)を転写ないし記載したグッズを販売するウェブサイト(以下「本件グッズ販売サイト」という。)及び本件グループに 係るファンクラブ専用のウェブサイト(以下「本件ファンクラブサイト」といい、本件被告サイト及び本件グッズ販売サイトと併せて「本件各サイト」ということがある。)へのリンクが設けられていた。 イ本件グッズ販売サイトにおける利用被告は、本件専属契約期間中、原告らの承諾を得た上で、原告らの肖像 等を転写したグッズを製造し、株式会社SKIYAKI(以下「SKIY AKI」という。)に指示して、同社の運営する本件グッズ販売サイトにおいて、別紙写真目録4記載のとおり、原告らの肖像写真(同目録の赤枠で囲んだもの)及び当該グッズを撮影した写真を掲載するとともに、当該グッズを販売していた。 被告は、本件専属契約終了後も、令和3年12月31日まで、本件グッ ズ販売サイトにおいて、上記各写真を掲載するとともに、上記グッズを販売していた。 ウ本件ファンクラブサイトにおける利用被告は、本件専属契約期間中、原告らの承諾を得た上で、SKIYAKIに指示して、同社の運営する本件ファンクラブサイトにおいて、別紙写 真目録5記載のとおり、原告らの肖像写真及び本件グループ名が記載された画像や原告らを撮影した動画を掲載していた。本件ファンクラブサイトの閲覧を希望する者は、携帯電話会社等が提供する決済サービスを利用して、月額300円(消費税別途)の会費を支払う必要があった。 被告は、本件専属契約終了後も、令和元年11月30日までの間、本件 ファンクラブサイトにおいて、上記写真及び画像等を掲載していた。 (4) 被告がグッズ 税別途)の会費を支払う必要があった。 被告は、本件専属契約終了後も、令和元年11月30日までの間、本件 ファンクラブサイトにおいて、上記写真及び画像等を掲載していた。 (4) 被告がグッズ販売等に関連して受領した額ア本件グッズ販売サイトにおけるグッズ売上高は、本件専属契約終了後から令和元年11月30日までの間は9万5727円、同年12月1日から令和3年12月31日までの間は8万3742円であった(乙12、13)。 被告は、本件グッズ販売サイトにおけるグッズ販売に関し、本件専属契約終了後から令和元年11月30日までの間に7万6581円を、同年12月1日から令和3年12月31日までの間に6万6993円をそれぞれ受領した。 イ被告は、本件グループに係るファンクラブに関し、本件専属契約終了後 から令和元年11月30日までの間に17万8025円を受領した。 (5) 本件訴訟の経緯(当裁判所に顕著な事実)原告らは、令和元年11月9日、東京地方裁判所に対し、被告を相手方として、肖像権等侵害及びパブリシティ権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めて、本件訴訟を提起した。 原告らは、令和3年12月22日付け訴えの追加的変更申立書(2)によ り、原告らと被告との間の黙示の肖像等利用契約に基づく報酬支払請求を追加する旨の訴えの変更をし、同申立書は、同月13日、被告に送達された。 3 争点(1) 肖像権等侵害の成否(争点1)(2) パブリシティ権侵害の成否(争点2) アパブリシティ権の侵害の有無(争点2-1)イ原告らの肖像等の使用許諾の有無(争点2-2)(3) 故意又は過失の有無(争点3)(4) 損害の有無及びその額(争点4)(5) 本件利用行為に係る報酬支 権の侵害の有無(争点2-1)イ原告らの肖像等の使用許諾の有無(争点2-2)(3) 故意又は過失の有無(争点3)(4) 損害の有無及びその額(争点4)(5) 本件利用行為に係る報酬支払請求の当否(争点5) 4 当事者の主張(1) 争点1(肖像権等侵害の成否)について(原告らの主張)ア原告らは、人格権として、原告らの肖像及び氏名を無断で使用されない権利を有する。 しかし、被告は、本件専属契約終了後、原告らの肖像等を使用する権原がないにもかかわらず、原告らの肖像等を本件被告サイト等に掲載し、使用し続けていた。 本件において、①別紙写真目録1記載の冒頭の写真を除き、各写真は、原告ら各人が識別されるように撮影されたものであること、②原告らが撮 影を許諾した目的は、本件専属契約期間中に被告が原告らを広告宣伝して、 原告らのアーティストとしての価値を高め、その利益を原告らが享受するためであるところ、本件専属契約が終了している以上、その目的は失われていること、③被告が原告らの肖像等を利用する権原は、本件専属契約によって付与されていたところ、本件専属契約終了により当該権原は消滅していること、④本件専属契約終了の背景には、原告らと被告との間に回復 しがたい信頼関係の喪失があったこと、⑤原告らは、被告に対し、本件専属契約終了後に原告らの肖像等を使用することを一切許諾していないこと、⑥被告が原告らの肖像等を利用しているのは、それらが有する顧客吸引力により専ら被告の利益を実現するためであること、⑦原告らは、被告のマネジメントを離れ、本件グループとしてアーティスト活動を継続している こと、⑧一般に、契約終了後に、一方当事者の同意なく、従前の契約に基づいて、一方当事者に帰属する こと、⑦原告らは、被告のマネジメントを離れ、本件グループとしてアーティスト活動を継続している こと、⑧一般に、契約終了後に、一方当事者の同意なく、従前の契約に基づいて、一方当事者に帰属する権利を行使することを許容する社会通念ないし慣習はないことといった諸事情に照らし合わせると、被告による原告らの肖像等の利用が原告らの受忍限度を超えるものであることは明らかである。 イ被告は、原告らのソロ活動の告知や、ファンクラブ会員へのサービス提供等のため、原告らの肖像等を掲載する必要があり、社会的に許容される方法、態様等でその掲載がされたことは明らかであるから、被告の本件利用行為は不法行為を構成しないと主張する。 しかし、仮に被告が主張するような必要性があるとしても、そのことだ けで、本人の承諾を得ることなく、その肖像等を無断で使用したり、商業的に利用することができるとすれば、肖像権等が有する人格権としての側面ないし価値をいたずらに無視することとなり、不当な結果を招くことは明らかである。 ウ以上によれば、被告の本件利用行為が原告らの肖像権等を侵害するもの であることは明らかである。 (被告の主張)被告が本件各サイトに掲載していた原告らの肖像等及び原告らの肖像等が転写された商品は、本件専属契約期間中に原告らの承諾を得て撮影し、製造されたもので、それらを不特定多数人に向けて公表ないし利用することも当初から予定されていた。 また、本件グループのファンクラブに係る決済サービス事業者との関係で、ファンクラブ会員の会費決済手続終了などに時間を要するため、被告は、令和元年11月30日まで、本件各サイトを通じたサービスの提供を継続する必要があった。このほか、被告は、原告らのソロ活動の告知のため ファンクラブ会員の会費決済手続終了などに時間を要するため、被告は、令和元年11月30日まで、本件各サイトを通じたサービスの提供を継続する必要があった。このほか、被告は、原告らのソロ活動の告知のため、原告らの肖像等を本件各サイトに掲載する必要があった。そうすると、本件利用行 為は、原告らのアーティストとしての評価、名声、印象等を何ら毀損又は低下させるものではなく、社会的に許容されるものというべきである。 以上のとおり、被告の本件利用行為は、社会的に許容される方法、態様等によるものであるから、原告らの肖像権等を侵害しない。 (2) 争点2―1(パブリシティ権の侵害の有無)について (原告らの主張)前記(1)(原告らの主張)アのとおり、被告は、本件専属契約終了後、原告らの肖像等を使用する権原がないにもかかわらず、原告らの肖像等を本件各サイトに掲載し、使用し続けていた。 本件被告サイトは、原告らのアーティスト活動を紹介するだけでなく、本 件グッズ販売サイトや本件ファンクラブサイトに誘導して、グッズを購入してもらったり、ファンクラブに入会してもらったりするという目的も有するものであるから、本件被告サイトにおける原告らの肖像等の利用は、商品販売等の広告として使用されたものであって、専ら原告らの肖像等の有する顧客吸引力を利用することを目的とするものである。 また、被告が、本件グッズ販売サイトにおいて、原告らの肖像等が転写さ れたグッズを販売する行為は、原告らの肖像等を商品等の差別化を図る目的で利用しているといえるから、専ら原告らの肖像等の有する顧客吸引力を利用することを目的とするものである。 さらに、被告は、本件専属契約終了後も、原告らの肖像等を無断で本件ファンクラブサイトに掲載して収 ているといえるから、専ら原告らの肖像等の有する顧客吸引力を利用することを目的とするものである。 さらに、被告は、本件専属契約終了後も、原告らの肖像等を無断で本件ファンクラブサイトに掲載して収益を得ていたのであるから、被告が本件ファ ンクラブサイトに原告らの肖像等を掲載した行為は、原告らの肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものである。 以上によれば、被告が、本件各サイトに原告らの肖像等を掲載し、本件グッズ販売サイトにおいて原告らの肖像等が転写されたグッズを販売した行為は、原告らのパブリシティ権を侵害する。 (被告の主張)本件被告サイトにおける原告らの肖像等は、主に原告らのアーティスト活動を紹介する目的で使用されたものであって、専ら顧客吸引力を利用する目的のものではない。 (3) 争点2-2(原告らの肖像等の使用許諾の有無)について (被告の主張)仮に、被告による原告らの肖像等の使用が専ら顧客吸引力を利用するものであったとしても、その使用については、以下のとおり、原告らの許諾等が存在したものである。 ア被告が本件グッズ販売サイトにおいて販売しているグッズは、本件専属 契約期間中に、原告らの許諾を受けて製造されたものの在庫である。そして、当該許諾には、その後の本件専属契約の終了如何にかかわらず、許諾を受けて製造したグッズの全てを販売することについての許諾も含まれていた。原告らと被告との間で、本件専属契約期間中に販売できなかったグッズの在庫の処分について特段の合意がないことも、その証左である。 イ本件グループのファンクラブは本件専属契約に基づいて運営されていた ところ、原告らと被告は、本件専属契約の合意解約に向けた協議の中で 意がないことも、その証左である。 イ本件グループのファンクラブは本件専属契約に基づいて運営されていた ところ、原告らと被告は、本件専属契約の合意解約に向けた協議の中で、本件専属契約終了後も、ファンクラブを円滑に閉鎖するために必要な期間については、被告がファンクラブの運営を継続すること、ひいては原告らの肖像等を使用することを明示又は黙示に合意していた。そして、前記(1)(被告の主張)において主張したとおり、ファンクラブ会員からの会費の 徴収を終了させる手続などに時間を要するため、被告は、令和元年11月30日まで本件各サイトを通じたサービスの提供を継続する必要があった。 (原告らの主張)ア被告は、本件グッズ販売サイトにおいて販売しているグッズについて、その製造に係る原告らの許諾には、本件専属契約が終了した後も在庫品の 全てを販売することについての許諾も含まれていたと主張する。しかし、本件専属契約の定めをそのように解することはできないから、被告は、本件専属契約期間中に限り、原告らのパブリシティ権を利用できるにとどまる。被告の主張が、本件専属契約期間中に製造したグッズについては、当該契約期間終了後であっても、被告がパブリシティ権の管理を継続できる というものであるとすれば、そのような取決めは、拘束条件付き取引に当たり、公序良俗に反するものとして無効である。 イまた、被告は、原告らとの間で、本件専属契約終了後も、ファンクラブを円滑に閉鎖するために必要な期間については、被告がファンクラブの運営を継続することを合意したと主張する。しかし、原告らは、被告に対し、 ファンクラブを閉鎖する旨のSNS上での告知を延期すると述べただけであり、このような事情をもって、その後のファンクラブの運営 を継続することを合意したと主張する。しかし、原告らは、被告に対し、 ファンクラブを閉鎖する旨のSNS上での告知を延期すると述べただけであり、このような事情をもって、その後のファンクラブの運営を被告が継続することを合意したということはできない。 (4) 争点3(故意又は過失の有無)について(原告らの主張) 本件専属契約の定めに照らせば、本件専属契約終了後に原告らの肖像等を 使用するためには、改めて原告らから許諾を得る必要があることは明らかである。 それにもかかわらず、被告は、本件各サイトから原告らの肖像等を容易に削除できたのにこれをしていなかったことや、原告らのアーティスト活動を妨害する通知を多くの関係者に発送していたことからすると、本件利用行為 の目的は原告らのアーティスト活動を妨害することにあったというべきである。 したがって、被告には、原告らの肖像権等及びパブリシティ権を侵害することについて故意がある。 (被告の主張) ア肖像権等侵害を理由とする不法行為について前記(1)(被告の主張)のとおり、被告による本件利用行為は、原告らの肖像権等を侵害しないから、この点についての故意又は過失の有無は問題とならない。 イパブリシティ権侵害を理由とする不法行為について 被告は、これまでの経緯や専属契約書の文言から、商品化についての原告らの許諾には、宣伝広告のための肖像使用も含まれると認識しており、従前のとおりの報酬を支払うことにより、原告らのグッズの販売を継続できると信じることについて相当な理由があったから、この点について被告には故意も過失もない。 (5) 争点4(損害の有無及びその額)について(原告らの主張)ア肖像権等侵害による損害 きると信じることについて相当な理由があったから、この点について被告には故意も過失もない。 (5) 争点4(損害の有無及びその額)について(原告らの主張)ア肖像権等侵害による損害原告らは、現在、自らマネジメント事務所を設立して、新たにウェブサイトを開設している。 にもかかわらず、本件各サイトにおいて、原告らの肖像等が多数使われ ていた上、仕事の依頼などについては被告への問合せを求める記載がされていたため、本件各サイトを見た原告らのファンは、原告らが活動を休止していると誤解し、原告らのライブ活動等の実演告知に気づかない可能性がある。また、業界関係者が本件各サイトを閲覧すると、原告らに仕事を依頼したい場合にどちらに連絡をすべきか困惑する等の事態を招く。 このように、本件利用行為は、原告らの肖像権等を侵害するとともに、原告らの名望の低下や実演機会の逸失にもつながっており、本件利用行為によって原告らは多大な精神的苦痛を受けた。この精神的苦痛に対する慰謝料は一人当たり50万円を下らない。 イパブリシティ権侵害による損害 (ア) 総論原告らは、パブリシティ権者として、被告に対し、著作権法114条2項の類推適用により、被告が得た利益相当額を損害として請求できる。 しかし、被告が得た利益相当額のみに基づいて算定された損害額は、原告らが受けたパブリシティ権侵害に係る損害を十分に賠償するものとは いえないから、損害額の算定に当たっては、被告が得た利益相当額に加え、原告らのパブリシティ権の価値を反映した肖像等使用料を考慮すべきである。 また、原告らは、著作権法114条3項の類推適用により、肖像等使用料相当額を最低限の賠償額として請求できる。 (イ) シティ権の価値を反映した肖像等使用料を考慮すべきである。 また、原告らは、著作権法114条3項の類推適用により、肖像等使用料相当額を最低限の賠償額として請求できる。 (イ) 本件被告サイトでの利用行為による損害原告らは、現在、第三者に対し、原告らの肖像等の使用を許諾する際の使用料を次のとおり定めている。 集合プロフィール写真 1か月7万円グループ名 1か月6万円 原告ら個人写真 1か月一人当たり2万5000円 原告メンバー個人名 1か月一人当たり2万2500円そして、本件専属契約が終了した日の翌日である令和元年7月14日から同年11月30日までは4か月17日である。 そうすると、原告らは同期間に対応する肖像等使用料相当額の賠償を請求することができ、その額は一人当たり36万5334円となる。 (ウ) 本件グッズ販売サイトでの利用行為による損害a 本件専属契約期間終了後から令和元年11月30日までのグッズ販売に係る損害等被告が同期間中のグッズ販売について受領した額は7万6581円であり、これはいわゆる限界利益である。 そして、原告らは、被告に対し、マネジメント業務の委託に対する対価として、被告が受領した金額の65パーセントに相当する報酬を支払っていたところ、被告は、本件専属契約終了後、原告らに対して、何らマネジメント業務をしていないから、被告がマネジメント業務の対価として65パーセントを得る正当な理由はない。 したがって、上記期間中のグッズ販売により被告に帰属した全額が原告らの損害額となり、その額は一人当たり1万9145円(1円未満切捨て)となる。 b 令和元年12年1日から令和3年 したがって、上記期間中のグッズ販売により被告に帰属した全額が原告らの損害額となり、その額は一人当たり1万9145円(1円未満切捨て)となる。 b 令和元年12年1日から令和3年12月31日までのグッズ販売に係る損害等 被告が同期間中のグッズ販売について受領した額は6万6993円で、これはいわゆる限界利益である。 そして、前記aと同様に、被告がマネジメント業務の対価として上記受領額の65パーセントを得る正当な理由はない。 したがって、上記期間中のグッズ販売により被告に帰属した全額が 原告らの損害額となり、その額は一人当たり1万6748円(1円未 満切捨て)となる。 c 原告らのパブリシティ権の価値を勘案した損害等(a) 実績から算定される損害額被告は、平成30年の1年間に、本件グッズ販売サイトにおいて原告らのパブリシティ権を利用した商品を販売することにより、4 3万5402円を得た。 本来、被告は、本件専属契約終了の日の翌日である令和元年7月14日から令和3年12月31日まで間、原告らのパブリシティ権を利用することにより、平成30年と同水準の利益を得られていたと考えられるところ、その利益の額は107万5979円となる。 したがって、被告によるグッズ販売における原告らのパブリシティ権の利用に係る損害額は、少なくとも一人当たり26万8994円(1円未満切捨て)を下回ることはない。 (b)使用料相当損害金前記(イ)と同様に、原告らの肖像等の使用を許諾する際の使用料を 前提にすると、令和元年7月14日から令和3年12月31日までは29か月18日であるから、原告らは同期間に対応する肖像等使用料相当額の賠償 同様に、原告らの肖像等の使用を許諾する際の使用料を 前提にすると、令和元年7月14日から令和3年12月31日までは29か月18日であるから、原告らは同期間に対応する肖像等使用料相当額の賠償を請求することができ、その額は一人当たり236万8000円となる。 d 原告らの知名度 原告らは、本件グループ名及び本件グループ名を図案化したロゴを約12年間以上にわたり使用している。また、本件グループの楽曲は、CDの売上順位を示すオリコンランキングで8位を獲得しているし、TBSテレビで放映された番組「アッコにおまかせ!」の平成28年4月度エンディングテーマに採用されたこともあり、本件グループは、 CD販売サイトにおいて、「全国的な認知を広め、今V系シーンで最も 注目されているバンドの一つ」と紹介されている。さらに、本件グループ名でリリースした楽曲は98曲以上、本件グループの単独公演は174回以上にのぼり、多くのメディアにも出演してきた。 このように、原告らの知名度は相当に高い。 e 合計額 前記aないしdの事情を総合考慮すると、本件グッズ販売サイトでの利用行為による原告らのパブリシティ権に係る損害は、原告ら一人当たり55万円は下らない。 (エ) 本件ファンクラブサイトでの利用行為による損害a 本件専属契約期間終了後から令和元年11月30日までのファンク ラブに係る損害等被告が同期間中のファンクラブに関して受領した額は17万8025円である。前記(ウ)aと同様に、被告がマネジメント業務の対価として上記受領額の65パーセントを得る正当な理由はないから、上記金額全額がファンクラブに関する原告らの損害額となり、その額は一人 当たり4万4506円(1円未満 被告がマネジメント業務の対価として上記受領額の65パーセントを得る正当な理由はないから、上記金額全額がファンクラブに関する原告らの損害額となり、その額は一人 当たり4万4506円(1円未満切捨て)となる。 b 原告らのパブリシティ権の価値を勘案した損害等(a) 使用料相当損害金前記(イ)と同様に、原告らの肖像等の使用を許諾する際の使用料を前提にすると、原告らは令和元年7月14日から同年11月30日 までの同期間に対応する肖像等使用料相当額の賠償を請求することができ、その額は一人当たり36万5334円となる。 (b) ファンクラブの会費収益に係る損害等被告が令和元年7月14日から同年11月30日までの期間のファンクラブの会費収益に関して受領した額は合計24万1233円 である。前記(ウ)aと同様に、被告がマネジメント業務の対価として 上記受領額の65パーセントを得る正当な理由はないから、同期間中のファンクラブの会費収益に関して被告に帰属した全額が原告らのパブリシティ権の価値を反映した損害額となり、その額は一人当たり6万0308円(1円未満切捨て)となる。 c 合計額 本件ファンクラブサイトでの利用行為による原告らのパブリシティ権に係る損害は、前記aに照らせば少なくとも原告ら一人当たり4万4506円以上となるところ、前記bの事情のほか原告らの知名度を勘案すると一人当たり20万円を下らない。 (オ) アドバンスについて 被告は、原告らに対し、本件専属契約に基づき、毎月一人当たり5万円のアドバンスを支払っていた。このアドバンスは、本件専属期間中における原告らの肖像等の利用に対する最低保障報酬であるから、損害額の算定に当たっ 告らに対し、本件専属契約に基づき、毎月一人当たり5万円のアドバンスを支払っていた。このアドバンスは、本件専属期間中における原告らの肖像等の利用に対する最低保障報酬であるから、損害額の算定に当たって考慮されるべきである。 (カ) 小括 本件各サイトでの利用行為による原告らのパブリシティ権侵害に係る損害額は前記(イ)ないし(オ)を総合的に考慮したものとなるから、原告ら一人当たりのパブリシティ権侵害に対する損害賠償額は、50万円を下らない。 ウ弁護士費用 被告による肖像権侵害を理由とする不法行為及びパブリシティ権侵害を理由とする不法行為と相当因果関係がある原告ら一人当たりの弁護士費用は、それぞれ5万円であり、合計10万円を下らない。 (被告の主張)ア肖像権等侵害による損害について 前記(1)(被告の主張)のとおり、原告らの肖像権等は侵害されていない から、この点について原告らに損害は生じない。 イパブリシティ権侵害による損害について(ア) 総論仮に、被告が本件専属契約終了後に本件各サイトにおいて原告らの肖像等を掲載したことが、原告らのパブリシティ権を侵害するものであっ たとしても、その損害額は原告らの報酬の額を超えない。 すなわち、原告らと被告との間では、本件専属契約において、原告らの肖像等を使用することに関し、パブリシティ権を含む原告らのあらゆる権利の使用を考慮した上で合理的な報酬額が合意されていたのであるから、パブリシティ権侵害を理由として、この合意に基づく報酬の額を 超える損害が生ずることはない。 (イ) 本件被告サイトでの利用行為による損害について原告らは、原告らの肖像等の使用許諾に係る使用料を定めていると主張す 、この合意に基づく報酬の額を 超える損害が生ずることはない。 (イ) 本件被告サイトでの利用行為による損害について原告らは、原告らの肖像等の使用許諾に係る使用料を定めていると主張するが、そのような定めがされた時期も具体的な実績も明らかでないから、損害額の算定に当たって考慮されるべきではない。 (ウ) 本件グッズ販売サイトでの利用行為による損害について音楽アーティストのグッズは、そのほとんどがライブ会場で購入され、インターネット販売サイトは補完的に利用されるにすぎない。実際、本件グループについても、本件グッズ販売サイトでのグッズの売上げは、ライブ会場等でのグッズの売上げの約2パーセントにすぎなかった。し たがって、本件グッズ販売サイトにおける原告らの肖像等の使用に関する使用料が、原告らの主張するような高額なものとなることはない。 また、被告は、原告らの活動のために環境を整えたり、内外のスタッフの人件費及び物品の制作費等を負担したりし、その結果得られた売上げ等から原告に約定の報酬を支払っていた。そして、本件専属契約が終 了した後も、こうした被告の業務及び負担を前提として、本件グループ に係るグッズ等の売上げが得られるのであるから、原告らが得られる報酬は、被告のマネジメント業務の対価を控除したものとなる。 原告らは、本件グループの知名度は相当に高いと主張するが、年間150回を超えるライブを行うバンドもあるから、本件グループの公演回数はわずかなものというべきであるし、ヴィジュアル系という極めて小 さな市場のみでの活動にとどまっていることからすると、本件グループの知名度は非常に小さいと評価せざるを得ない。 (エ) 本件ファンクラブサイトでの利用行為による損害について という極めて小 さな市場のみでの活動にとどまっていることからすると、本件グループの知名度は非常に小さいと評価せざるを得ない。 (エ) 本件ファンクラブサイトでの利用行為による損害について本件グループのファンクラブは、本件専属契約期間中に被告が立ち上げたものであり、本件ファンクラブサイトに掲載していた原告らの肖像 等も、全て本件専属契約期間中に公開したものである。したがって、本件専属契約終了後のファンクラブの会費収益は、被告のマネジメントによるものといえる。 (オ) 小括被告が本件専属契約終了後から令和3年12月31日までの間にグッ ズ販売に関して受領した額は14万3574円(令和元年12月1日以降に限れば6万6993円)であった。 したがって、仮に被告の本件利用行為が原告らのパブリシティ権を侵害するものであったとしても、原告らに生じた損害の額は、本件専属契約の定めにより算定される原告らの報酬額である一人当たり1万256 3円(令和元年12月1日以降のグッズ販売に限れば5862円)を超えない。 (6) 争点5(本件利用行為に係る報酬支払請求の当否)について(原告らの主張)ア仮に、原告らが、被告に対し、本件専属契約終了後から令和元年11月 30日までの間に本件利用行為を黙示的に許諾していたとすると、原告ら と被告は、その許諾と同時に、本件利用行為につき本件専属契約所定の報酬を支払う旨の黙示の合意をしていたというべきである。 イ被告が、本件専属契約終了から令和元年11月30日までの間に、グッズ販売に関連して受領した額は7万6581円であるから、これについての原告らの報酬は一人当たり6700円となる。 また、被告が、本件専属契約終了から令和元年11月30日ま 0日までの間に、グッズ販売に関連して受領した額は7万6581円であるから、これについての原告らの報酬は一人当たり6700円となる。 また、被告が、本件専属契約終了から令和元年11月30日までの間に、ファンクラブに関連して受領した額は17万8025円であるから、これについての原告らの報酬は一人当たり1万5577円となる。 ウしたがって、被告は、原告らに対し、グッズ販売に関する報酬として一人当たり6700円及びファンクラブに関する報酬として一人当たり1万 5577円並びにこれらに対する令和元年12月1日(黙示の利用許諾期間終期の翌日)からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 (被告の主張)ア被告が、原告らに対し、本件利用行為についての黙示の合意に基づき、 本件専属契約終了から令和元年11月30日までの間のグッズ販売に関し、原告ら一人当たり6700円、ファンクラブに関し、原告ら一人当たり1万5577円の各報酬を支払う義務があることは認める。 イもっとも、原告らと被告との間の本件利用行為に係る黙示の合意の内容も、本件専属契約の定めに従うべきであるところ、本件専属契約によれば、 同契約終了から令和元年11月30日までの間に発生した報酬の支払期限は、締切日である同年12月31日の60日後に当たる令和2年2月29日である。 したがって、本件利用行為に係る報酬の支払についての遅延損害金の始期は同年3月1日である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各サイトにおける原告らの肖像等の利用に係る原告らと被告との間のやりとりに関し、以下の事実を認めることができる。 (1) 原告らは、被 前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各サイトにおける原告らの肖像等の利用に係る原告らと被告との間のやりとりに関し、以下の事実を認めることができる。 (1) 原告らは、被告に対し、平成31年4月24日付けの書面により、令和元 年7月14日までに、被告が管理するウェブサイトを含む一切の媒体(本件ファンクラブサイトについても同様)から、原告らの肖像等を削除するよう求めた(甲8)。 (2) SKIYAKI担当者は、令和元年6月2日、原告Aに対し、本件グループのファンクラブは、キャリア公式課金(会員の会費等を当該会員が契約し ている携帯電話会社の電話料金等と合わせて支払う仕組み)を利用しているため、ウェブサイトを閉鎖するまでには次のようなスケジュールになるとの内容のメールを送信した(甲9)。 令和元年6月中各携帯電話会社に終了の旨を申請し受理される。 同年8月末課金の停止(現会員向けのウェブサイトの無料化) 同年9月末完全閉鎖(3) 被告は、原告らに対し、令和元年6月12日付けの書面により、①本件ファンクラブサイトの閉鎖スケジュールについて、同月中に各携帯電話会社に終了させる旨の申請をした場合の最速のスケジュールであると付記した上で、同年9月末をもって完全閉鎖となる予定であることを通知するともに、②原 告らは、同年6月14日に、同年7月13日をもってファンクラブを閉鎖する旨をSNS等により告知する予定とのことであるが、これを強行すれば多くの混乱を招き、関係者やファンに迷惑がかかることから、当該告知を延期するよう求めた(乙5)。 (4) 原告らは、被告に対し、令和元年6月14日付けの書面により、関係者や ファンたちのことを考え、同日に き、関係者やファンに迷惑がかかることから、当該告知を延期するよう求めた(乙5)。 (4) 原告らは、被告に対し、令和元年6月14日付けの書面により、関係者や ファンたちのことを考え、同日にSNS等で告知することを延期すると通知 した(乙6)。 (5) SKIYAKI担当者は、令和元年7月8日、被告担当者に対し、ファンクラブに係る決済サービス業者のうち1社について、ファンクラブ会員向けの会費決済サービスを終了させるまでに時間を要することが判明したため、ウェブサイトを閉鎖するまでのスケジュールを次のようにしたいとのメール を送信した(乙1)。 令和元年9月30日新規会員登録の受付停止同年10月31日会員サービスの課金停止同年11月1日から同月30日まで会員サービス無料開放期間同年12月1日以降会員サービスの提供終了 (6) 被告は、令和元年7月14日、本件被告サイトにおいて、「FESTVAINQUEUROfficialSiteならびに月額会員サービス終了に関するご案内」と題して、前記(5)のスケジュールとともに、同年12月1日以降、会員サービスの提供及び本件被告サイトにおける情報提供を終了する旨を掲載した(乙2)。 2 争点1(肖像権等侵害の成否)について(1) 人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(氏名につき、最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁、 肖像につき、最高裁昭和40年(あ)第1187号同 利用されない権利を有すると解される(氏名につき、最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁、 肖像につき、最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁及び最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁、両者につき、最高裁平成21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁各参照)。そして,肖像等が有する精神的価値 を保護の対象とする肖像権及び氏名権は,上記の人格権に由来する権利の一 内容を構成するものということができる。 (2) 原告らは、①被告が利用した原告らの写真は、おおむね原告ら各人が識別されるように撮影されたものであること、②本件専属契約が終了している以上、原告らが撮影を許諾した目的は失われていること、③本件専属契約終了により被告が原告らの肖像を利用する権原は消滅していること、④本件専属 契約終了の背景に原告らと被告との間の信頼関係喪失があったこと、⑤原告らが被告に対して本件専属契約終了後の原告らの肖像等の使用を許諾していないこと、⑥被告による原告らの肖像等の利用が、それらの有する顧客吸引力により専ら被告の利益を実現するためであること、⑦原告らが被告のマネジメントを離れて本件グループとしてアーティスト活動を継続していること、 ⑧契約終了後に当該契約に基づいて一方当事者に帰属する権利の行使を許容する社会通念ないし慣習はないことといった事情を根拠に、被告による原告らの肖像等の利用が原告らの受忍限度を超えるものであると主張する。 しかし、原告らは、実演家グループである本件グループのメンバーとして、被告のマネジメントの下でアーテ た事情を根拠に、被告による原告らの肖像等の利用が原告らの受忍限度を超えるものであると主張する。 しかし、原告らは、実演家グループである本件グループのメンバーとして、被告のマネジメントの下でアーティスト活動をしていたところ(前提事実 (1))、本件各サイトに掲載されていた原告らの肖像等に係る写真及び画像は、本件専属契約期間中に、被告により、原告らの承諾を得て撮影及び作成され、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介する目的で掲載されていたものであるし、原告らの肖像等が転写されたグッズについても、同様に原告らの承諾を得て製造及び販売されてきたものである(前提事実(3))。また、本件 専属契約終了後の被告による原告らの肖像等の利用態様及び目的も、本件専属契約の終了前後で変容していたとの事情はうかがわれない。さらに、本件専属契約終了後においても、少なくともファンクラブが存続する限りは、その会費を支払った会員に対し、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介する記事を閲覧させるため、本件ファンクラブサイトのみならず、当該サイ トに導く機能を有する本件被告サイトにも原告らの肖像等を掲載する必要が あったといえる(前提事実(3)ア、前記1の認定事実(2))。加えて、被告が、本件グッズ販売サイトにおいて、原告らの肖像写真及び当該グッズを撮影した写真を掲載するとともに、当該グッズを販売していたことについても、被告が本件専属契約終了後に新たに本件グループに係るグッズを製造したと認めるに足りる証拠がないことからすると、原告らの肖像等の掲載は、在庫を 捌くための必要最低限度のものにとどまるといえる。 以上の事情を総合考慮すると、原告らの主張する上記事情が存在するとしても、被告が本件各サイトにおいて原告らの肖像等を掲載した の掲載は、在庫を 捌くための必要最低限度のものにとどまるといえる。 以上の事情を総合考慮すると、原告らの主張する上記事情が存在するとしても、被告が本件各サイトにおいて原告らの肖像等を掲載した行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えてその精神的価値を侵害するとはいえず、不法行為法上違法と評価すべきものとはいえいない。 (3) よって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの肖像権等侵害を理由とする請求は理由がない。 3 争点2-1(パブリシティ権の侵害の有無)について(1) 肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)は、肖像等 それ自体の商業的価値に基づくものであるから、肖像権及び氏名権と同様に、肖像等に係る人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべき である。そうすると、肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当 である(最高裁平成21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷 判決・民集66巻2号89頁参照)。 (2) これを本件についてみると、本件被告サイトは、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介す 1年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷 判決・民集66巻2号89頁参照)。 (2) これを本件についてみると、本件被告サイトは、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介することにとどまらず、その閲覧者を本件グッズ販売サイトや本件ファンクラブサイトに誘導して、グッズの購入及びファンクラブへの入会を促す役割も果たすものであるから(前提事実(3)ア)、本件被告サ イトにおける原告らの肖像等の利用は、商品販売等の広告として使用するものというべきである。 また、被告が、本件グッズ販売サイトにおいて、原告らの肖像等が転写されたグッズを販売する行為は、原告らの肖像等を商品等の差別化を図る目的で利用しているといえる。 さらに、本件ファンクラブサイトに原告らの肖像等に係る写真及び画像等を掲載することは、会費を支払ったファンクラブ会員に対する本件グループのメンバー及び活動内容等を紹介することを目的としてされるものであるから、原告らの肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものというべきである。 したがって、原告らの肖像等を、原告らの承諾なく、本件利用行為により利用することは、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものといえるから、原告らのパブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となる。 4 争点2-2(原告らの肖像等の使用許諾の有無)について (1) 被告は、本件グッズ販売サイトにおいて販売しているグッズは、本件専属契約期間中に、原告らの許諾を受けて製造されたものの在庫品であるところ、当該許諾には、その後の本件専属契約の終了如何にかかわらず、許諾を受けて製造したグッズの全てを販売することについての許諾も含まれていると主張する。 しかし、被告が、 の在庫品であるところ、当該許諾には、その後の本件専属契約の終了如何にかかわらず、許諾を受けて製造したグッズの全てを販売することについての許諾も含まれていると主張する。 しかし、被告が、原告らの芸名、写真、肖像等その他の人格的権利を自由 に無償で利用開発することができるのは、本件専属契約期間中とされていたものであり(前提事実(2)イ(イ))、原告らと被告の間において、本件専属契約の終了如何にかかわらず、原告らの許諾を受けて製造した商品の全てを販売することについても許諾がされていたと認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。 (2) 次に、被告は、原告らとの間で、本件専属契約終了後も、ファンクラブを円滑に閉鎖するために必要な期間については、被告が原告らの肖像等を使用することを明示又は黙示に合意し、これにより原告らの肖像等の使用につき許諾を得ていたと主張する。 そこで検討すると、①原告らは、ファンクラブを閉鎖するには、会費決済 サービスの終了手続の完了を待つ必要があるところ、この専ら手続的、技術的な理由から、数か月程度の時間を要することを認識していたこと(前記1の認定事実(2)及び(3))、②被告が、原告らに、令和元年6月12日付けの書面により、SNS等においてファンクラブを閉鎖する旨の告知を強行すると関係者やファンに迷惑がかかるため、当該告知を延期するよう求めたのに対 し、原告らは、被告に、関係者やファンたちのことを考え、SNS等での告知を延期すると通知したこと(前記1の認定事実(3)及び(4))、③同年7月14日以降、本件被告サイトにおいて、その後の具体的なスケジュールとともに、同年11月30日まで、会員向けサービスの提供及び本件被告サイトにお たこと(前記1の認定事実(3)及び(4))、③同年7月14日以降、本件被告サイトにおいて、その後の具体的なスケジュールとともに、同年11月30日まで、会員向けサービスの提供及び本件被告サイトにおける情報提供がされる旨が告知されていたのに(前記1の認定事実(6))、 原告らが、被告に対し、本件被告サイト及び本件ファンクラブサイトの閉鎖時期に関して特段の異議を述べていたと認めるに足りる証拠がないこと、④本件被告サイトは、本件ファンクラブサイトへ誘導する役割を有しており、また、本件グッズ販売サイトは、ファン向けにグッズを販売する目的も有していたと認められるから(前提事実(3)ア、弁論の全趣旨)、少なくともファ ンクラブが存続する限り、本件各サイトにおける原告らの肖像等の掲載を継 続する必要があったといえることを総合考慮すると、原告らは、被告に対し、ファンクラブの会員向けサービスが終了する同日までは、本件各サイトにおいて原告らの肖像等を掲載することを黙示に許諾していたと認めるのが相当である。 したがって、被告が、令和元年12月1日以降、本件グッズ販売サイトに おいて、原告らの肖像写真及び原告らの肖像等が転写されたグッズを撮影した写真を掲載するとともに、当該グッズを販売していた行為は、原告らのパブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法と評価すべきであるが、その余の本件利用行為については、原告らの黙示の許諾の範囲内といえるから、違法性を欠き、パブリシティ権侵害を理由とする不法行為は成立し ないというべきである。 5 争点3(故意又は過失の有無)について(1) 本件専属契約において、広告・宣伝及び販売促進のため、原告らの芸名、本名、写真、肖像、筆跡、経歴、音声等、その他の人格的権利を、被 うべきである。 5 争点3(故意又は過失の有無)について(1) 本件専属契約において、広告・宣伝及び販売促進のため、原告らの芸名、本名、写真、肖像、筆跡、経歴、音声等、その他の人格的権利を、被告の判断により自由に無償で利用開発することができるのは、本件専属契約期間中 とされているところ(前提事実(2)イ(イ))、被告がアーティストのマネジメント会社であって(前提事実(1))、アーティストが有するパブリシティ権の取扱いについても相応の注意をもって業務を行うべき立場にあることを考慮すると、ファンクラブの会員向けサービスが終了した令和元年12月1日以降も漫然と本件グッズ販売サイトにおいて、原告らの肖像写真及び原告らの肖 像等が転写されたグッズを撮影した写真を掲載したことには、少なくとも過失があるといわざるを得ない。 (2) 被告は、これまでの経緯や専属契約書の文言から、商品化についての原告らの許諾には、宣伝広告のための肖像使用も含まれると認識しており、従前のとおりの報酬を支払うことにより、原告らのグッズの販売を継続できると 信じることについて相当な理由があったから、故意も過失もないと主張する。 しかし、上記のとおり、本件専属契約においては、被告が、原告らの芸名、写真、肖像等その他の人格的権利を自由に無償で利用開発することができるのは、本件専属契約期間中である旨が明記されていたことに加え、被告が、アーティストのマネジメント会社として、アーティストが有するパブリシティ権の取扱いについても相応の注意をもって業務を行うべき立場にあったこ とを考慮すると、仮に被告が主張するように誤信していたとしても、そのことに相当な理由があるとはいえない。 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。 (3) べき立場にあったこ とを考慮すると、仮に被告が主張するように誤信していたとしても、そのことに相当な理由があるとはいえない。 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。 (3) 以上によれば、被告が、令和元年12月1日以降、本件グッズ販売サイトにおいて、原告らの肖像写真及び原告らの肖像等が転写されたグッズを撮影 した写真を掲載するとともに、当該グッズを販売していたことによる原告らのパブリシティ権侵害行為について、被告に過失が認められるというべきである。 6 争点4(損害の有無及びその額)について(1) 被告の前記3ないし5のパブリシティ権侵害行為によって原告らが被った 損害の額は、著作権法114条3項の類推適用により、原告らが被告に対し、原告らの肖像等の使用を許諾したとすれば、得られたであろう使用料相当額というべきである。そして、当該使用料相当額は、原告らと被告との間の従前の契約内容、同種の他の使用許諾契約の内容、原告らの名声の程度、原告らの肖像等の利用態様及び期間、被告が得た経済的利益の額とそれに対する 利用された肖像等の貢献の程度などを総合考慮して算定するのが相当である。 (2) これを本件についてみると、本件専属契約においては、被告は、原告らに対し、本件グループに係る名称、肖像等の使用について、被告が第三者から受け取る収入より、被告が支出した経費を差し引いた残額の35パーセントを報酬として支払う旨が定められていたこと(前提事実(2)イ(ウ))、グッズ販 売に関し、被告が令和元年12月1日から令和3年12月31日までの間に 受領した額(経費控除後)は6万6993円であったこと(前提事実(4)ア)が認められ、これらを前提として算定される原告らの報酬の額は、一人当たり58 ら令和3年12月31日までの間に 受領した額(経費控除後)は6万6993円であったこと(前提事実(4)ア)が認められ、これらを前提として算定される原告らの報酬の額は、一人当たり5862円(1円未満四捨五入)となる。 また、本件グッズ販売サイトにおいて、本件専属契約終了後から令和3年12月31日までの約2年以上にわたり、原告らの肖像写真及び原告らの肖 像等が転写されたグッズを撮影した写真が掲載されるとともに、当該グッズが販売されており、その期間は相当に長期なものと評価できるものの、当該期間中に本件グッズ販売サイトにおいて販売されたグッズの売上げは8万3742円にとどまる(前提事実(4)ア)。平成30年におけるライブ会場でのグッズの売上げが2234万0413円であったのに対し、本件グッズ販売 サイトでのグッズの売上げが54万7560円と前者の約2ないし3パーセントにとどまるものであったと認められること(弁論の全趣旨)も考慮すると、本件グループに係るグッズについては、本件グッズ販売サイトにおける原告らの肖像等の顧客吸引力及びグッズ販売の売上全体に対する貢献の程度は、わずかなものにとどまるといえる。 このほか、被告が、本件グッズ販売サイトにおける原告らの肖像等の利用により、上記以外の経済的利益を得ていたと認めるに足りる証拠はない。また、本件全証拠によっても、原告らが格別の知名度を有しているとまでは認め難い。 これらの事情に加え、本件が、将来における使用料について合意する場面 ではなく、原告らのパブリシティ権を侵害した被告に対し損害賠償を請求するに当たってその損害額を算定する場面であることを考慮すると、パブリシティ権侵害による損害の額は合計4万8000円(一人当たり1万2000円)と認めるのが相当で を侵害した被告に対し損害賠償を請求するに当たってその損害額を算定する場面であることを考慮すると、パブリシティ権侵害による損害の額は合計4万8000円(一人当たり1万2000円)と認めるのが相当である。 また、被告によるパブリシティ権侵害を理由とする不法行為と相当因果関 係がある弁護士費用は合計8000円(一人当たり2000円)と認められ る。 (3) 被告によるパブリシティ権侵害行為は、令和元年12月1日から令和3年12月31日まで本件グッズ販売サイトにおいて原告らの肖像写真及び原告らの肖像等が転写されたグッズを撮影した写真を掲載するとともに当該グッズを販売していたという継続的不法行為であって、前記(2)において説示した 損害額も、当該全期間にわたって当該掲載及び販売行為がされたことを前提として算定されたものであることに照らすと、遅延損害金の起算日を継続的不法行為の終了時である同日とし、その利率を年3パーセントとするのが相当である。 (4)ア原告らは、パブリシティ権者として、著作権法114条2項を類推適用 し、被告が得た利益相当額を損害として請求できると主張する。 前記3(1)のとおり、パブリシティ権は、肖像等の有する顧客吸引力を排他的に利用する権利であるから、パブリシティ権者は,肖像等が付された商品等を市場において独占的に販売することができる。このパブリシティ権者の市場における上記商品等に対する地位は,著作権者の市場における 著作物に対する地位と共通するといえる。そうすると、被告による原告らのパブリシティ権を侵害する行為がなかったならば、原告らが利益を得られたであろうという事情が存在する場合には、原告らの損害額を算定するに当たり、著作権法114条2項を類推適用することができる 原告らのパブリシティ権を侵害する行為がなかったならば、原告らが利益を得られたであろうという事情が存在する場合には、原告らの損害額を算定するに当たり、著作権法114条2項を類推適用することができると解される。 本件において、被告が原告らのパブリシティ権を侵害して得た利益は、 原告らの肖像等を転写したグッズの販売によってもたらされたものであるところ、原告らが他に原告らの肖像等を利用したグッズを市場において販売していたと認めるに足りる証拠はなく、本件全証拠によっても、被告による上記グッズの販売がなかったならば、原告らが利益を得られたであろうという事情を認めることはできない。 したがって、被告による原告らのパブリシティ権を侵害する行為がなか ったならば、原告らが利益を得られたであろうという事情が存在すると認めることはできないから、原告らの損害額の算定に当たり、著作権法114条2項を類推適用する基礎を欠くといわざるを得ない。 イまた、原告らは、第三者に対して原告らの肖像等の使用を許諾する際の使用料を定めており、当該使用料の水準を損害額算定の際に考慮すべきで あると主張するが、実際にこの定めに基づいて許諾がされた例があると認めるに足りる証拠はないから、そのような事情を考慮することはできない。 ウさらに、原告らは、被告は、本件専属契約終了後、原告らに対して、何らマネジメント業務をしていないから、被告がマネジメント業務の対価として65パーセントを得る正当な理由はなく、被告がグッズ販売に関して 受領した額が原告らに対する報酬額に当たると主張する。 しかし、パブリシティ権侵害による損害額の算定に当たって原告らと被告との間の従前の契約内容を斟酌するのは、両者の自由意思に基づいて合意された 受領した額が原告らに対する報酬額に当たると主張する。 しかし、パブリシティ権侵害による損害額の算定に当たって原告らと被告との間の従前の契約内容を斟酌するのは、両者の自由意思に基づいて合意された使用料が、原告らと被告のそれぞれの利益状況、原告らのパブリシティ権が有する経済的価値などを反映した合理的な水準となっている可 能性が高いと解されることによるものであるから、本件専属契約終了後に被告が本件グループに係るマネジメント業務を行っているか否かによって左右されるものとはいえない。 エ原告らは、本件専属契約所定のアドバンスが最低報酬額であると主張するが、本件全証拠によっても、当該アドバンスがそのような性格のもので あると認めることはできない。仮に原告らの主張を前提としても、上記アドバンスは、ライブ及びテレビ出演なども含めた様々な活動により得られるであろう収入を前提として定められたものと考えられるから(甲12・第1条)、最も収入を得られると思われるライブ及びテレビ出演がなく、収入全体に占める割合が小さい本件グッズ販売サイトにおける利用行為のみ がされている場合であっても、必ずアドバンスとして定められた額を最低 報酬額として斟酌しなければならないものということはできない。 オしたがって、原告らの前記各主張はいずれも採用することができない。 7 争点5(本件利用行為に係る報酬支払請求の当否)について(1) 前記4において説示したとおり、原告らは、被告に対し、ファンクラブ会員向けサービスが終了する令和元年11月30日までは、本件各サイトにお いて原告らの肖像等を掲載することを黙示に許諾していたと認めるのが相当である。 この事実関係を前提とすると、被告が、原告らに対し、本件利用行為についての黙示 月30日までは、本件各サイトにお いて原告らの肖像等を掲載することを黙示に許諾していたと認めるのが相当である。 この事実関係を前提とすると、被告が、原告らに対し、本件利用行為についての黙示の合意に基づき、本件専属契約終了から令和元年11月30日までの間のグッズ販売に関して原告ら一人当たり6700円及び同期間のファ ンクラブに関して原告ら一人当たり1万5577円の各報酬を支払う義務があることは、当事者間に争いがないというべきである。 (2) そして、黙示の合意に基づく報酬支払債務については、債務者は、①確定期限があるときは、その期限の到来した時から、②不確定期限があるときは、債務者がその期限の到来したことを知った時から、③期限の定めがないとき は、履行の請求を受けた時から、それぞれ遅滞の責任を負う(改正前民法412条)。 原告は、黙示の利用許諾期間の終期をもって、被告が報酬支払債務について遅滞に陥ったと主張するが、原告らと被告との間で、その日を支払期限にする旨の黙示の合意が成立していたとか、原告がその日に被告に対し履行の 請求をしたと認めるに足りる証拠はない。 この点、前提事実(5)のとおり、原告らと被告との間の黙示の肖像等利用契約に基づく報酬支払請求を追加する旨の訴えの変更に係る申立書が被告に送達されたのは令和3年12月13日であるところ、被告は、本件専属契約終了から令和元年11月30日までの間に発生した報酬の支払期限は令和2年 2月29日であると主張しているから、これを前提とすると、同契約終了後 から令和元年11月30日までの間の本件利用行為に係る報酬の支払についての遅延損害金の始期は令和2年3月1日とするのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告らの被告に対する請求は、原告 から令和元年11月30日までの間の本件利用行為に係る報酬の支払についての遅延損害金の始期は令和2年3月1日とするのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告らの被告に対する請求は、原告らそれぞれにつき、パブリシティ権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償として、損害金1万4 000円及びこれに対する令和3年12月31日(最終の不法行為の日)から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金並びに本件利用行為に係る黙示の合意に基づく報酬支払請求として、報酬金2万2277円及びこれに対する令和2年3月1日(被告が自認する支払期限の翌日)から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度 で理由があるからこの限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 バヒスバラン薫
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