主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,4799万2542円及びこれに対する平成14年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 原告は,平成11年5月3日死亡したA(昭和58年10月14日生)の母であり,Aの相続人である。 後記の警察官らは,平成11年5月3日当時,いずれも愛知県B警察署(以下「B署」という。)に所属していた警察官である。 (2) 警察官らは,平成11年5月3日午後1時52分ころ,原動機付自転車(以下「本件バイク」という。)を運転していたC及びその後部座席に乗っていたAをパトカーで追跡中,名古屋市a区b町c丁目d番地のe所在の名鉄瀬戸線D駅構内踏切(以下「本件踏切」という。)内において,C及びAを尾張瀬戸行名鉄普通電車との衝突により死亡させた(以下「本件事故」という。)。 (3) 本件事故は,C及びAがヘルメットを着用しないで本件バイクで走行中,ひったくりの警戒のため,E駅のバスターミナル内で待機していたパトカー(以下「本件パトカー」という。)に乗車中の警察官2名が本件バイクを偶然発見し,制止しようとして追跡を開始したことに起因するものである。 本件バイクは遮断中の遮断機をくぐり抜け,名鉄線路上に入ったものであるが,C及びAの犯した違反はヘルメット不着用という軽微なものであり,警察官らは,C及びAが友人らに対して手を振っていたにすぎないのに,警察官に対して挑発的な態度をとったと誤解して感情的となり,執拗に過剰な追跡を行ったものである。 また,C及びAは逃走中,警察官からの追跡を免れるため,一方通行の道路を逆走したり,交差点で信号無視をしていたもので,このようなC及びAの精神状況からして,さらに追跡 過剰な追跡を行ったものである。 また,C及びAは逃走中,警察官からの追跡を免れるため,一方通行の道路を逆走したり,交差点で信号無視をしていたもので,このようなC及びAの精神状況からして,さらに追跡,威嚇して追いつめれば遮断中の踏切に入ることは予見できたにもかかわらず,警察官らは漫然とC及びAを本件踏切まで追い込んだもので,警察官らの追跡行為は不相当な追跡の継続,方法として違法である。 (4) 本件事故当時,B署の地域課長であったF課長は,Aらが警察官に対し挑発的態度をとったというのは警察官の誤解である旨述べた原告に対し,「どうしてそんな育て方をしたんだ。」と原告を責め,さらに平成11年11月3日ころには,原告に対し,「知ってますか,息子さんは童貞だったんですよ。」「ちんちん見て涙が出た。」「何のために生まれて来たのだろう。」等と述べ,A及び原告の名誉感情を著しく傷つけ,その人格権を侵害した。 (5) 損害① 本件事故による損害ア Aの逸失利益 4399万2524円平成12年賃金センサス男子全年齢平均560万6000円を基礎とし,生活費割合を0.5,中間利息の控除につきライプニッツ係数15.6948により算出した。 イ原告の慰謝料 3000万円Aは原告のたった一人の子であり,家族で一家の支柱に準ずる存在であった。 ウ弁護士費用 300万円原告は弁護士費用として300万円を支払う旨約した。 エ損益相殺 3000万円原告は,自動車損害賠償責任保険より3000万円の支払いを受けた。 ② F課長の発言による損害F課長の発言は,A及び原告の人格権を侵害するものであり,この侵害による慰謝料は100万円を下ることはない。 (6) よって,原告は被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償4799万2542円及びこれに対する不法行為の日の 権を侵害するものであり,この侵害による慰謝料は100万円を下ることはない。 (6) よって,原告は被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償4799万2542円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年5月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)は認める。 (2) 同(2)のうち,平成11年5月3日,本件バイクを運転するCとその後部に乗っていたAが,本件踏切において名鉄線普通電車に衝突して死亡したことは認めるが,本件事故と警察官らの追跡との間に因果関係があることは否認する。 (3) 同(3)のうち,C及びAがヘルメットを着用していなかったこと,C及びAが逃走中,一方通行の道路を逆走した上,交差点を信号無視して走行したこと,本件バイクが遮断中の遮断機をくぐり抜けて名鉄線路に入ったことは認める。その余は争う。 警察官らが行った追跡は適正かつ妥当な職務行為であり,本件事故の発生原因とは何ら関係がない。 (4) 同(4)のうち,F課長が本件事故当時B署の地域課長であったことは認めるが,その余は否認する。なお,平成11年11月3日は祝日であり,F課長は勤務していない。 (5) 同(5)①のうちエは認め,その余は知らない。 3 被告の主張(1)① 平成11年5月3日午後1時48分ころ,ひったくり警戒のため,本件パトカーに乗車してE駅北方方面を警ら中であったB署地域課のG巡査長及び同課のH巡査は,乗車用ヘルメットを着用しない15ないし18歳の男性二人(後に運転者がCであり,後部に乗車していたのはAであることが判明した。)が乗車する本件バイクを発見し,定員外乗車違反及び乗車用ヘルメット着用義務違反があると認め,本件バイクを停止させ道路交通法違反として検挙するた であり,後部に乗車していたのはAであることが判明した。)が乗車する本件バイクを発見し,定員外乗車違反及び乗車用ヘルメット着用義務違反があると認め,本件バイクを停止させ道路交通法違反として検挙するため,サイレンを鳴らし,赤色灯を点灯させて追跡(以下「第1次追跡」という。)を開始した。 本件バイクの後部に乗車していたAは,本件パトカーに向け左手で手招き行為を繰り返していた。G巡査長らは,第1次追跡中,本件バイク後部のナンバープレートが上方に折り曲げられ,ナンバーが確認できない状態であることを現認した。本件バイクが逃走中,環状線西行車線を右側通行で逆行して逃走を継続したため,G巡査長らは,これ以上追跡を継続することは危険であると判断し,追跡開始から約20秒後,サイレン,赤色灯を消して,いったん追跡を中止した。 ② 午後1時49分ころ,G巡査長らは,本件バイクが赤信号を無視して低速で左折し,環状線東行車線を東進したことを現認したため,サイレンを鳴らし赤色灯を点灯して,再度本件バイクの追跡(以下「第2次追跡」という。)を開始したが,右折に時間をとられて,本件バイクを見失ったため,上記信号無視の発見から約30秒後に,サイレン,赤色灯を消して,再度の追跡を中止した。 ③ その後,G巡査長らは本件バイクが再度赤信号を無視して右折したのを発見し,午後1時51分,サイレンを鳴らし,赤色灯を点灯して3度目の追跡(以下「第3次追跡」という。)を開始した。 Cは,本件バイクを低速で走行させ,繰り返し左右に揺らして蛇行運転をしたため,G巡査長らは拡声器で再三無謀運転を中止し,停車するよう呼びかけたが,本件バイクはこれを無視し,東進して逃走を続けた。 本件バイクが逃走した道路は幅員が狭く,民家や商店の外壁が道路境界まで迫っていた上に,道路上に電柱が設置されて,対面通行が 停車するよう呼びかけたが,本件バイクはこれを無視し,東進して逃走を続けた。 本件バイクが逃走した道路は幅員が狭く,民家や商店の外壁が道路境界まで迫っていた上に,道路上に電柱が設置されて,対面通行が困難であったため,本件パトカーは時速約25キロメートルに減速して追跡を継続したところ,当初約40メートルであった本件バイクとの間隔が次第に開いていった。G巡査長らは対向車を認め,本件パトカーを道路左端に一時停止させて対向車とすれ違ったところ,本件バイクを完全に見失ったため,サイレンを消して追跡を中止したが赤色灯は点灯したままであった。 上記信号無視から第3次追跡の中止までに要した時間は,約1分であった。 (2) 第3次追跡の中止は午後1時52分であり,本件事故が発生したのは午後1時54分であって,第3次追跡と本件事故発生までの間に約2分の間隔がある。また,本件バイクの逃走経路には,脇道も多く,本件バイクが逃走するために本件踏切を通過することや,警報が鳴り,遮断中の本件踏切に進入することを予見することは不可能であった。 したがって,本件パトカーの追跡と本件事故との間に相当因果関係はなく,被告に損害賠償責任はない。 (3) 本件パトカーによる第1次ないし第3次追跡は,いずれもC及びAの犯した道路交通法違反を検挙し,その継続を阻止するために行われたもので,これらの追跡が当該職務を遂行するうえで不必要であるとか,逃走車両の逃走態様及び道路の交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らして,追跡の開始,継続若しくは追跡の方法が不相当であるとはいえない。 (4) 月日は不明であるが,本件事故発生から3か月ほど経過した後,F課長が,電話してきた原告に対し,「気持ちはよくわかりますが,いつまでも自分を責めたり,人様を恨んでも仕方がない。早く いえない。 (4) 月日は不明であるが,本件事故発生から3か月ほど経過した後,F課長が,電話してきた原告に対し,「気持ちはよくわかりますが,いつまでも自分を責めたり,人様を恨んでも仕方がない。早く立ち直ってもらいたい。」と慰めの言葉をかけ,Aが若くして死んだことを嘆く原告に対し,「息子さんたちには私も合掌させて頂いた。そのとき,息子さんは余りに若く,童貞だと知って涙が出た。」などと慰めたところ,原告は感謝の言葉を述べていたのであって,その言動にAや原告の名誉感情を害するものはない。 また,名誉感情等の人格権は,その性質上,一身専属的な権利であり,その享有主体であるAの死亡により消滅するもので,死者の遺族や相続人に対し,死者が生前に享有していた人格権と同一内容の権利を認める規定もないから,F課長の言動により,Aや原告の人格権が侵害されたことを理由とする原告の請求は理由がない。 4 被告の主張に対する原告の反論(1) Aは,平成10年の2学期にI中学からJ中学に転校し,平成11年4月,K高校に入学した普通の子供であり,体も弱く先輩から脅されており,本件事故当日も自宅から無理矢理連れ去られた状態であって,そのようなAが警察に対する挑発的行為をするはずはない。 (2) 第3次追跡につき,本件バイクが時速35キロで走行していれば,本件事故発生の2分前に,時速25キロで走行していれば1分30秒前に,本件踏切に到着したはずである。そして本件バイクが,電車が通り過ぎるのを待っていたところ,本件パトカーが本件バイク到着から1分ないし30秒後に現場に到着したため,逃げ場を失ったCとAは,咄嗟に遮断機を押しのけ軌道敷内に入ってしまったものと考えられる。本件パトカーが追尾していなければ,C及びAは電車が通過してから,本件踏切を通り抜けることができ,本件事故が発 げ場を失ったCとAは,咄嗟に遮断機を押しのけ軌道敷内に入ってしまったものと考えられる。本件パトカーが追尾していなければ,C及びAは電車が通過してから,本件踏切を通り抜けることができ,本件事故が発生することはなかった。 平成11年5月12日付実況見分調書(甲5の5)によれば,名鉄電車の運転手は,警察官が本件踏切近くに立っているのを認めており,本件事故発生前に警察官が現場に到着していたことは明らかである。 (3) 本件事故の目撃者の位置からは,本件パトカーの停止位置を見通すことは不可能であったから,これを見通せるとした平成11年5月26日付実況見分調書は虚偽の申告をもとに作成されたものである。 第3 当裁判所の判断 1 本件事故について請求原因(1)及び同(2)のうち,平成11年5月3日,本件バイクを運転するCとその後部に乗っていたAが,本件踏切において,名鉄線普通電車に衝突して死亡したこと,同(3)のうち,C及びAがヘルメットを着用していなかったこと,C及びAが逃走中,一方通行の道路を逆走した上で,交差点を信号無視して走行したこと,本件バイクが遮断中の遮断機をくぐり抜けて名鉄線路に入ったことは当事者間に争いがなく,この事実と証拠(甲1ないし4,甲5の1ないし9,甲15,乙1,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故の発生に関し,以下の事実が認められる。 (1) Aは,昭和58年10月14日,原告の長男として出生し,本件事故が発生した平成11年5月3日当時,K高等学校1年に在学中であった。 (2) 平成11年5月3日午後1時半ころ,B署地域課パトカー乗務員であったG巡査長は,H巡査運転の本件パトカーに乗車して,当時E駅北方付近で多発していた原付を使用したひったくり事件の警戒に当たっていた。 (3) 同日午後1時48分ころ,G巡査長は,別紙「発 乗務員であったG巡査長は,H巡査運転の本件パトカーに乗車して,当時E駅北方付近で多発していた原付を使用したひったくり事件の警戒に当たっていた。 (3) 同日午後1時48分ころ,G巡査長は,別紙「発見・追跡状況図」記載の②(以下,同別紙中の地点につき,①等と表示する。)の交差点付近で,ヘルメットを着用しないC及びAが乗車した本件バイクが,⑬方向から③に向かって②の交差点を走行するのを発見し,本件パトカーの赤色灯を点灯し,サイレンを鳴らして本件バイクの追跡(第1次追跡)を開始した。 (4) 本件パトカーは,②の交差点を左折し,③方向に逃走した本件バイクを追跡し,拡声器で停止を命じたが,本件バイクはこれに応じることなく,減速と加速を繰り返して逃走し,④の交差点を左折し、北行きの一方通行路を逆行して走行した。このころ,G巡査長らは本件バイクのナンバープレートが折り曲げられており,ナンバーが確認できない状態であることを現認した。 G巡査長らは,④で本件バイクが逃走した道路の状況を確認し,対向車や歩行者がなく,⑤まで見通せる状況であったため,追跡を続行した。本件バイクは減速加速を繰り返し,Aは左手で手招き行為を繰り返すなど挑発的な態度であった。 本件バイクは,その後⑤の交差点を右折し,東行車線を西方に向かって右側通行をし,⑦の方向に逆行して逃走した。 G巡査長らは⑤で,本件バイクが逃走した⑦方向を確認したところ,赤信号で対向車もなかったことから,右折して追跡を続けた。 本件バイクは,⑦をUターンし,西行車線を東方に向かって右側通行をし,信号待ちをしていた車の間を抜けて逃走したが,G巡査長は,このまま追跡を続けるのは危険であると判断し,サイレン及び赤色灯を消して第1次追跡(この間約20秒)を中止した。 (5) 午後1時49分ころ,G巡査長らは,①から⑩に を抜けて逃走したが,G巡査長は,このまま追跡を続けるのは危険であると判断し,サイレン及び赤色灯を消して第1次追跡(この間約20秒)を中止した。 (5) 午後1時49分ころ,G巡査長らは,①から⑩に向かい低速で走行していた本件バイクが,⑩で信号無視をして⑪方向に向かったのを認め,本件パトカーの赤色灯を点灯し,サイレンを鳴らして赤信号の⑩の交差点を右折しようとした。 ところが,本件パトカーが右折を完了する間際に,東行車線を走行してきた車両と衝突しそうになったため,いったん停止した。本件パトカーが当該車両をやり過ごしてから右折を完了する間に,本件バイクは⑪を左折し,⑫方向に逃走してしまったため,G巡査長らはサイレン及び赤色灯を消して第2次追跡(この間約30秒)を中止した。なお,この第2次追跡中もAは手招き行為を繰り返していた。 その後,G巡査長はH巡査に代わって本件パトカーを運転し,⑫,⑬,⑭,⑮,①,②,⑬の順に本件パトカーを走行させ,さらに⑭の方向に進んだ。 (6) 本件パトカーが⑭に近づいたとき,G巡査長らは,⑮から⑭に向かって走行する本件バイクを発見した。本件バイクは⑭に近づき,2度目の信号無視をして⑯方向に逃走した。このときもAは手招き行為を繰り返しており,本件パトカーは午後1時51分,サイレンを鳴らし,赤色灯を点灯し,第3次追跡を開始した。 第3次追跡の際に,本件バイクが逃走した通称L通の⑯の東方は,両脇に商店や住宅が立ち並ぶ,狭い生活道路で歩行者や自転車の通行も多く,守山方面への抜け道でもあるため多くの車両が通行し,対向車があればすれ違うことも困難な道路であった。 本件パトカーは当初時速約35キロメートルで追跡したのに対し,本件バイクは時速約40キロメートルで逃走していたが,追跡速度が遅いことに気づいて低速で蛇行運転をするようになり も困難な道路であった。 本件パトカーは当初時速約35キロメートルで追跡したのに対し,本件バイクは時速約40キロメートルで逃走していたが,追跡速度が遅いことに気づいて低速で蛇行運転をするようになり,Aは両手を振る行為を繰り返した。 (7) 本件パトカーと本件バイクの間隔は約40メートルであり,G巡査長らは拡声器で再三無謀運転の中止を呼びかけたが,本件バイクはこれに従わず,⑯から⑰方向に逃走を続けた。上記L通は⑯の東側で道路が狭くなり,東にカーブしている上に両側に建物が建っていることから,G巡査長は本件パトカーの時速を約25キロメーターに減速したが,本件バイクは減速しなかったため,その間隔は次第に大きくなり,本件パトカーから本件バイクが見えなくなった。 本件パトカーが⑰に到着したとき,本件バイクは見えなかったが,G巡査長は,本件バイクが見通しのきかない方向である⑰の北側方向に逃走したものと判断して第3次追跡を続けた。 (8) 本件パトカーは⑰から⑱方向に向かったが,本件バイクを発見することができないうち,⑱の手前で対向車を発見した。G巡査長は対向車とすれ違う際に,接触する可能性が高いと判断し,本件パトカーを⑱で道路左端に停止させ,対向車に道を譲ったが,⑱からは,前方を見通すことができず,本件バイクを見失ったため,サイレンを消し,赤色灯は点灯したまま第3次追跡(この間約1分)を中止した。 (9) その後,本件パトカーは,当初の目的であったひったくりの警戒のため,M公園に向かうため,⑱から⑳を通って本件踏切に向かう途中,本件踏切で警報機が鳴っているのを聞いた。 本件パトカーが本件踏切に到着したとき,G巡査長は,本件踏切に設置されていた竹竿がなくなっているのに気がつき,本件踏切とその周囲を見たところ,本件踏切の遮断機から東側約10メートルの線路路盤 いた。 本件パトカーが本件踏切に到着したとき,G巡査長は,本件踏切に設置されていた竹竿がなくなっているのに気がつき,本件踏切とその周囲を見たところ,本件踏切の遮断機から東側約10メートルの線路路盤の北側に倒れている本件バイクと,その東側線路上に停止している電車を発見した。 なお,原告は,平成11年5月12日に行われた実況見分において,名鉄電車のN運転手が本件踏切付近に警察官が立っているのを認めており,本件事故発生当時,本件パトカーが現場に到着していたことは明らかであると主張するが,Nを立会人とする平成11年5月12日付実況見分調書(甲5の5)によれば,同日行われた実況見分は,本件踏切付近に警察官を立たせた上で,他の警察官が名鉄電車に同乗し,名鉄電車の運転席からの本件踏切付近の見通し状況を見分したもので,本件踏切付近で警察官を認めたとの同運転手の指示説明が,本件事故発生当時の状況を述べるものではなく,実況見分が行われた際の体験を述べたものであることは明らかである。 また,原告は,本件事故の発生した平成11年5月3日にNを立ち会わせて行われた実況見分調書(甲5の2)添付の写真中に警察官が写っていることを根拠に,本件事故以前に警察官が現場に到着したと供述するが,この写真は,実況見分時に警察官が現場にいたことを示すものにすぎず,実況見分調書の記載あるいは添付の写真から,本件事故発生以前に警察官が本件現場に到着していたとはいえず,この点に関する原告の主張は理由がないというべきである。 (10) M公園の南端<23>で,本件事故の発生を目撃したOは,本件事故発生直後,G巡査長に対し,「若い感じの男の子2人が乗ったオートバイが,遮断機が下りている踏切に,南側から入ろうとした。オートバイはそんなに速くなく,止まるか止まらないかという速度だった。オートバ 発生直後,G巡査長に対し,「若い感じの男の子2人が乗ったオートバイが,遮断機が下りている踏切に,南側から入ろうとした。オートバイはそんなに速くなく,止まるか止まらないかという速度だった。オートバイは電車が近づいているのに,そのまま遮断機をくぐるように突っ込んで踏切に入った。電車のかげで見えなくなったが,鈍いグシャッという音がして,オートバイが見えなくなったので衝突したと分かった。」旨,説明をした。 なお,原告は,現場の状況からして,本件事故の目撃者であるOの位置から,本件パトカーの停止位置は見通せないと主張する。 この原告の主張は,本件パトカーが,本件踏切付近の現在の停止線(本件踏切付近の倉庫の北端あたりに存在する。)から2.6メートル南側に停止していたことを前提とするものである(甲9の3,4及び添付の図面参照)。 しかしながら,本件踏切付近の停止線は,本件事故後行われた各種工事により変更されており(乙1中の写真によれば,現在の停止線を挟んで2本の停止線の痕跡が存在していることが認められる。),本件事故後作成された実況見分調書(甲5の1ないし3)中の現場見取図によれば,本件事故当時の停止線は現在の停止線より北側で,本件踏切付近に存在する倉庫北端を延長した線と遮断機との間に存在していたこと,目撃者であるOの位置から本件事故当時の停止線の2.6メートル南側に停止した本件パトカーを見通すことは可能であること(乙1)が認められ,目撃者の位置からの見通しに関する原告の主張は採用することができない。 2 本件事故に関する被告の責任の有無について(1) 被告は,追跡行為が中止されているとして,本件パトカーによる追跡行為と本件事故発生との間の因果関係を争うので,この点につき判断する。 本件パトカーが⑱でいったん停止し,その後追跡行為を断念したことは前記の は,追跡行為が中止されているとして,本件パトカーによる追跡行為と本件事故発生との間の因果関係を争うので,この点につき判断する。 本件パトカーが⑱でいったん停止し,その後追跡行為を断念したことは前記のとおりであるが,本件パトカーにより3回にわたって追跡されていたC及びAは,本件パトカーが第3次追跡を断念したことに気づかず,追跡が継続していると考え,これから逃れようとして警報機が鳴り,遮断機が下りている本件踏切に進入するという異常な行動に出たものと推認される。したがって,本訴請求との関係では,本件事故は,なお本件パトカーによる追跡行為が継続しているうちに発生したものと認めるのが相当である。 (2) ところで,およそ警察官は,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問し,また,現行犯人を現認した場合には速やかにその検挙又は逮捕に当たる職責を負うものであって(警察法2条,警察官職務執行法2条1項),右職責を遂行する目的のために被疑者を追跡することはもとよりなしうるところであるから,警察官がかかる目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に,逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合において,この追跡行為が違法であるというためには,追跡行為が当該職務目的を遂行するうえで不必要であるか,又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし,追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であったことを要する。 これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,C及びAは第1次追跡の際には,ヘルメット不着用及び定員外乗車の,第2次及び第3次追跡の際にはこれらに加えて信号無視の道路交通法違反を犯して 要する。 これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,C及びAは第1次追跡の際には,ヘルメット不着用及び定員外乗車の,第2次及び第3次追跡の際にはこれらに加えて信号無視の道路交通法違反を犯しており,G巡査長らにおいて,C及びAを道交法違反の現行犯人として検挙する必要があり,加えて本件バイクの車両番号の確認もできていなかったのであるから,警察官として本件バイクの追跡を開始し,これを継続する必要があったというべきで,本件パトカーが行った追跡行為が,上記職務目的を遂行する上で不必要なものとはいえない。 また,本件パトカーの追跡をうけていた本件バイクは,低速の蛇行運転を繰り返すなどしており,本件パトカーに追いつめられた状態にあったともいえず,⑱から<22>の本件踏切までの道路には数本の脇道があったから,本件バイクが脇道にそれることなく本件踏切に向かい,警報機が鳴り,遮断機が下りている本件踏切にあえて進入することを予測できたとは認めがたく,本件パトカーによる追跡が,その開始・継続若しくは方法において不相当なものであったとはいえず,追跡行為が違法であるとの原告の主張は理由がない。 よって,その余につき判断するまでもなく,原告の本件事故に基づく損害賠償請求は理由がないというべきである。 3 F課長の発言に基づく被告の責任の有無についてF課長が,被告が自認する,被告の主張(4)記載の発言以外に,原告主張のような発言をしたことを認めるに足る証拠は存在しない(原告本人の供述するF課長の発言状況はいかにも唐突で,それ自体合理性を欠くものであって採用することができない。)。 このF課長の発言のうち,Aに性的体験がなかったことをいう部分は,それ自体品位を欠くものである上に,本件事故で死亡したAの母である原告に対する発言として配慮を欠いたものというほかはないが い。)。 このF課長の発言のうち,Aに性的体験がなかったことをいう部分は,それ自体品位を欠くものである上に,本件事故で死亡したAの母である原告に対する発言として配慮を欠いたものというほかはないが,それ以上に,F課長の発言がAやその母である原告の人格権を侵害するものとはいえず,また,F課長のその余の発言も,Aや原告の人格権を侵害するものではなく,人格権の侵害を理由とする原告の請求も理由がないというべきである。 4 結論以上の次第で,原告の請求は理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判官丸地明子(別紙図面省略)
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