平成18(行コ)37 違法公金支出返還請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所平成12年(行ウ)第23号,差戻前の控訴審・東京高等裁判所平成15年(行コ)第101号,上告審・最高裁判所平成15年(行ヒ)第299号)

裁判年月日・裁判所
平成18年9月26日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文19,048 文字)

- 1 -主文 原判決のうち,静岡県の被控訴人静岡県元県議会議員会に対する補助金の支出に係る請求に関する部分(以下「差戻しに係る部分」という)中の被控訴人a,同b及び同静岡県元県議会議員会に関する部。 分を取り消す。 前項の取消しに係る部分のうち,静岡県が被控訴人静岡県元県議会議員会に対し平成11年6月23日にした150万円の補助金支出に係る請求に関する部分の訴えを却下する。 控訴人らの被控訴人a及び同bに対するその余の請求をいずれも棄却する。 4( )控訴人らの被控訴人静岡県元県議会議員会に対する主位的請求 を棄却する。 ( )ア被控訴人静岡県元県議会議員会は,静岡県に対して,300 万円を支払え。 イ被控訴人静岡県元県議会議員会は,静岡県に対して,241万1026円を支払え。 ウ控訴人らの被控訴人静岡県元県議会議員会に対するその余の予備的請求を棄却する。 控訴人らの被控訴人cに対する差戻しに係る部分についての控訴を棄却する。 控訴人らと被控訴人a及び同bとの間に生じた差戻しに係る部分についての訴訟費用は,第1審,差戻前の第2審,上告審及び差戻後の第2審を通じて,控訴人らの負担とし,控訴人らと被控訴人cとの間に生じた差戻しに係る部分についての差戻前の第2審,上告審及び差戻後の第2審の訴訟費用は,控訴人らの負担とし,控訴人らと被控訴人静岡県元県議会議員会との間で生じた差戻しに係る部分についての- 2 -訴訟費用は,第1審,差戻前の第2審,上告審及び差戻後の第2審を通じて,これを5分し,その4を被控訴人静岡県元県議会議員会の負担とし,その余を控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1差戻後の控訴の趣旨 原判決のうち,差戻しに係る部分を取り消す。 被控訴人a,同b及び同静岡県元県議会議員会 県元県議会議員会の負担とし,その余を控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1差戻後の控訴の趣旨 原判決のうち,差戻しに係る部分を取り消す。 被控訴人a,同b及び同静岡県元県議会議員会は,連帯して,静岡県に対して,450万円及びこれに対する平成12年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人a,同c及び同静岡県元県議会議員会は,連帯して,静岡県に対して,241万1026円及びこれに対する平成13年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 差戻しに係る部分についての訴訟費用は,第1審,差戻前の第2審,上告審及び差戻後の第2審を通じて,被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要 本件は,静岡県(以下「県」という)の住民である控訴人らが,①県が被。 控訴人静岡県元県議会議員会(以下「被控訴人元議員会」という)に対して。 した補助金(平成11年度450万円,平成12年度241万1026円。以下,それぞれ「平成11年度の補助金「平成12年度の補助金」といい,,」,合わせて「本件各補助金」という)の支出は公益上の必要性を欠き違法であ。 る,②被控訴人元議員会の視察に随行した県職員に対する給与(以下「本件随行職員給与」という)の支出は違法である,などと主張して,地方自治法。 (平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ)242条の2第1。 項4号に基づき,県に代位して,本件各補助金及び本件随行職員給与が支出された当時に県知事の職にあった被控訴人a,県議会事務局次長兼総務課長として本件各補助金の交付決定及び支出命令並びに本件随行職員給与に係る支出命- 3 -令を専決した被控訴人b(平成11年度分)及び被控訴人c(平成12年度。 分)並びに被控訴人元議員会に対し,不法行為に 本件各補助金の交付決定及び支出命令並びに本件随行職員給与に係る支出命- 3 -令を専決した被控訴人b(平成11年度分)及び被控訴人c(平成12年度。 分)並びに被控訴人元議員会に対し,不法行為に基づく損害賠償(被控訴人。 元議員会に対しては予備的に不当利得の返還)を求めた事案である。 原審が控訴人らの請求を棄却し,控訴人らの控訴に対して差戻前の控訴審も控訴を棄却したので,控訴人らが上告した。 上告審は「本件各補助金の支出に違法性はないとした原審の判断には,判,決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨は理由があり,原判決のうち本件各補助金の支出に係る請求に関する部分は破棄を免れない。そして,同請求に関し,被上告人a及び被上告人元議員会の故意又は過失並びに被上告人b及び被上告人cの故意又は重過失の有無を審理させるとともに,被上告人元議員会の故意又は過失が否定された場合の予備的請求の当否について審理させるため,本件を原審に差し戻すべきである。なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする」として,差戻前控訴審判決の。 うち本件各補助金の支出に係る請求に関する部分を差し戻した。 前提事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1前提事実」に記載のとおり(原判決3頁1行目から9頁2行目まで)であるから,これを引用する。 ただし,原判決3頁9・10行目及び12・13行目の「議会事務局職員の給与,補助金(1000万円未満)の支出命令の専決権限」をいずれも「議会事務局職員の給与の支出命令,補助金(1000万円未満)の交付決定及び支出命令の専決権限」に改め,4頁1行目の「被告aは」の次に「専決権者被,告bをして」を加え,同頁4行目 権限」をいずれも「議会事務局職員の給与の支出命令,補助金(1000万円未満)の交付決定及び支出命令の専決権限」に改め,4頁1行目の「被告aは」の次に「専決権者被,告bをして」を加え,同頁4行目の「被告aは」の次に「専決権者被告cを,,して」を加え,同頁8行目,13行目及び8頁18行目の「専決権限者」を,いずれも「専決権者」に改め,9頁1行目の「却下ないし」を削る。 争点及びこれについての当事者双方の主張(ただし「本件各補助金支出の,- 4 -違法性」についてのみ)は,下記4及び5のとおり「本案前の主張(当審における新たな主張」及び「被控訴人らの責任」を掲げるほかは,原判決の「事)実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「2争点」の( )に記載のとおり (原判決9頁5行目から19頁8行目まで)であるから,これを引用する。 本案前の主張(当審における新たな主張)( )被控訴人a,同b及び同元議員会の本案前の主張 平成11年度の補助金は,平成11年6月23日,同年10月14日及び平成12年1月18日の3回に分けて各150万円ずつ合計450万円が支出された。控訴人らは,平成12年9月12日,県監査委員に対し,本件各補助金及び本件随行職員給与の支出について違法であるとして地方自治法2。 ,,42条1項に基づく住民監査請求をした県監査委員は同年11月22日控訴人らに対し,同監査請求を棄却する旨の通知を行った。 概算払による公金の支出についての監査請求は,当該公金の支出がされた日から1年を経過したときはこれをすることができないのであり,本件各補助金のうち平成11年6月23日に概算払として支出された150万円の補助金については,支出から1年という監査請求期間(地方自治法242条2項本文)を徒過して監査請求がされたもので のであり,本件各補助金のうち平成11年6月23日に概算払として支出された150万円の補助金については,支出から1年という監査請求期間(地方自治法242条2項本文)を徒過して監査請求がされたものであるから(なお,本件各補助金については,何人も閲覧可能な「静岡県議会の概要」などで知り得たし,控訴人dが元県議会議員であることからも,1年を経過して監査請求をしたことに同項ただし書の「正当理由」があるとはいえない,同部分に係る訴え。)は不適法である。 ( )控訴人らの反論 ア被控訴人a,同b及び同元議員会は,差戻後の控訴審に至って初めて,上記( )の主張をした。これは「当事者が重大な過失により時機に後れて ,提出した攻撃防御方法」であり「これにより訴訟の完結を遅延させるこ,ととなる」のは明らかであるから,却下されるべきである(民事訴訟法1- 5 -57条1項。 )イ平成11年6月23日の150万円の補助金支出に係る部分についての住民監査請求には,地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」がある。すなわち,本件で「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をも,って調査をすれば客観的にみて監査請求が可能な程度に当該行為の存在又は内容を知ることができたとき」とは,平成12年6月22日付けe新聞の記事が出て,控訴人らが調査した結果,断片的にも被控訴人元議員会の活動内容,会の組織と性格,補助金の交付目的等について知り得た平成12年7月20日であり,それから「相当な期間」である54日後の同年9月12日に監査請求をしたのである。したがって,平成11年6月23日の150万円の補助金支出に係る訴えも適法である。 被控訴人らの責任( )被控訴人aの不法行為責任 ア控訴人らの主張被控訴人aは,県知事として,予算執行の本来的権 ,平成11年6月23日の150万円の補助金支出に係る訴えも適法である。 被控訴人らの責任( )被控訴人aの不法行為責任 ア控訴人らの主張被控訴人aは,県知事として,予算執行の本来的権限を有し,かつ,支出執行専決者を指揮監督する義務を負っている。また,被控訴人aは,被控訴人元議員会の顧問として,被控訴人元議員会に対する補助金の支出や使途の実態について知っていたか知り得る立場にあっただけでなく,自らその総会に出席して本件各補助金の削減の議論に加わり,記者会見では被控訴人元議員会に対する援助の範囲が過度に拡大している旨の意見を述べるなどしていた。したがって,被控訴人aは,①(主位的に)本件各補助金が公益性のない違法な支出であること,又は本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超える違法な支出であること,を知っていたか知り得る立場にあったのであるから,本件各補助金の支出に関し,専決権者に対して専決による支出命令をしないように指揮監督すべき義務があったにもかかわらず,故意又は過失- 6 -によりこれを怠った不法行為により,②(予備的に)支出した本件各補助金がその交付目的に違背して不法に消費されたことを知っていたか知り得る立場にあったのであるから,支出した本件各補助金に関し,専決権者に対して補助金交付決定の取消決定(交付規則(静岡県補助金等交付規則)16条1項)及び返還請求(同17条1項)の専決を行うよう指揮監督すべき義務があったにもかかわらず,故意又は過失によりこれを怠った不法行為により,県に損害を与えた。よって,被控訴人aは,県に対して,不法行為に基づき本件各補助金相当額691万1026円の損害賠償責任がある。 イ被控訴人aの反論県は,昭和54年3月に県議会議員の職にあった者 県に損害を与えた。よって,被控訴人aは,県に対して,不法行為に基づき本件各補助金相当額691万1026円の損害賠償責任がある。 イ被控訴人aの反論県は,昭和54年3月に県議会議員の職にあった者に対する礼遇について礼遇規程(静岡県議会議員の職にあった者の礼遇に関する規程)を制定しこれを受けて被控訴人元議員会の運営費を補助するための交付要綱静,(岡県元県議会議員会運営費補助金交付要綱)を定めた上,昭和54年度以降継続して被控訴人元議員会に対する補助金を交付してきた。本件各補助金も,一般予算に組み込まれて議会の議決を経た上,交付規則及び交付要綱に基づき,かつ,静岡県財務規則(昭和39年静岡県規則第13号。以下「財務規則」という)に従った手続により適式に交付・支出されたも。 のである。本件各補助金と同様の補助金は,平成12年度に全国の10都道県で交付されている(県議会事務局調べ。本件各補助金の支出につい)て,公益上の必要性の有無の判断は容易ではないのである(本件訴訟の差戻前の第1,2審と上告審とでも司法判断が分かれた。上記アの被控訴人aの記者会見での発言も,被控訴人元議員会が控訴人らの指摘を受けて平成12年度の補助金の対象のうち視察経費等について見直しをしたことについての評価として発言したものであり,補助金の支出が違法であることを認識しての発言ではない。また,本件各補助金の交付決定及び支出命。)- 7 -令は専決権者が行ったものであり,そのような専決事務については専決権者の判断を信頼することが許容されるべきである。これらの事実を踏まえると,被控訴人aが,専決権者の判断を信頼して格別の指揮監督をしなかったことをもって,故意又は過失によって専決権者の違法な財務会計上の行為を阻止しなかったとはいえず,不法行為は成立しない。 ( えると,被控訴人aが,専決権者の判断を信頼して格別の指揮監督をしなかったことをもって,故意又は過失によって専決権者の違法な財務会計上の行為を阻止しなかったとはいえず,不法行為は成立しない。 ( )被控訴人b及び同cの不法行為責任 ア控訴人らの主張被控訴人b及び同cは,被控訴人bにおいては平成11年度の,同cにおいては平成12年度のそれぞれ県議会事務局次長兼総務課長として,本件各補助金の支出命令並びに補助金交付決定の取消決定及び返還請求の専決権限を有していたところ,①(主位的に)本件各補助金が公益性のない違法な支出であること,又は本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超える違法な支出であること,を知っていたかほんの少し注意すれば知り得る立場にあったのであるから,本件各補助金の支出に関し専決による支出命令をしてはならない注意義務があったにもかかわらず,故意又は重過失により支出命令を発した不法行為により,②(予備的に)支出した本件各補助金がその交付目的に違背して不法に消費されたことを知っていたかほんの少し注意すれば知り得る立場にあったのであるから,支出した本件各補助金に関し,補助金交付決定の取消決定及び返還請求をすべき注意義務があったにもかかわらず,故意又は重過失によりこれを怠った不法行為により,県に損害を与えた。よって,被控訴人b及び同cは,県に対して,不法行為に基づき,被控訴人bにおいては平成11年度の補助金相当額450万円の,同cにおいては平成12年度の補助金相当額241万1026円の損害賠償責任がある。 イ被控訴人b及び同cの反論- 8 -被控訴人b及び同cは,本件各補助金の支出について,昭和54年以降継続して被控訴人元議員会に対する補助金の交付が行われてきたこと,補 損害賠償責任がある。 イ被控訴人b及び同cの反論- 8 -被控訴人b及び同cは,本件各補助金の支出について,昭和54年以降継続して被控訴人元議員会に対する補助金の交付が行われてきたこと,補助金交付の根拠が礼遇規程に明確に規定されていること等から,その専決権限に基づいて決裁したものであり,本件各補助金の支出当時,それが違法であるとの認識をし得るものではなく,本件各補助金の支出命令を決裁したことに故意又は重過失はないから不法行為は成立しない。 ( )被控訴人元議員会の不法行為責任(主位的) ア控訴人らの主張被控訴人元議員会は,本件各補助金が公益性のない違法な支出であること,又は本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超える違法な支出であること,を知っていたか知り得る立場にありながら,本件各補助金の交付を県に申請しこれを支出させて受領したのであるから,故意又は過失により違法な公金支出に加担し,県に損害を与えた。よって,被控訴人元議員会は,県に対して,不法行為に基づき本件各補助金相当額691万1026円の損害賠償責任がある。 イ被控訴人元議員会の反論被控訴人元議員会に対する本件各補助金は,公益活動としての事業を対象とするものであり,かつ,県議会での予算審議を経てその交付手続も適式である上,補助金対象事業も誠実に実施しているのであり,さらに他の多くの都道府県でも同様な補助金の交付が行われているのであるから,被控訴人元議員会は,本件各補助金の交付を受けるにつきそれが違法な補助金の支出であるとの認識をし得るものではなく,故意又は過失はないから不法行為は成立しない。 ( )被控訴人元議員会の不当利得返還義務(予備的) ア控訴人らの主張- 9 -被控訴人元議員会は,何ら法律上の原 の認識をし得るものではなく,故意又は過失はないから不法行為は成立しない。 ( )被控訴人元議員会の不当利得返還義務(予備的) ア控訴人らの主張- 9 -被控訴人元議員会は,何ら法律上の原因がないのに県に691万1026円の金員を支出させて受領し不当な利益を得たのであるから,不当利得の返還義務がある。 イ被控訴人元議員会の反論本件各補助金の支出が地方自治法232条の2に違反して違法であったとしても,県と被控訴人元議員会との間で成立した補助金交付の私法上の契約は有効であり,法律上の原因を欠くものではないから,被控訴人元議員会は,県に対して,不当利得に基づく本件各補助金相当額の返還義務はない。仮に,不当利得が成立するとしても,被控訴人元議員会は善意であるから,現存利益の範囲で利得を返還すればよく,利息まで返還する必要はない。 第3当裁判所の判断 本案前の主張(当審における新たな主張)に対する判断( )被控訴人a,同b及び同元議員会は「本件各補助金のうち平成11年6 ,月23日に概算払として支出された150万円の補助金については,支出から1年という監査請求期間(地方自治法242条2項)を徒過して住民監査請求がされたものであるから,同部分に係る訴えは不適法である」旨を主。 張して,同部分に係る訴えを却下するよう求めている。なお,この点,控訴人らは「被控訴人a,同b及び同元議員会の上記主張は時機に後れた攻撃,防御方法であり却下されるべきである」旨を主張するが,訴えが適法であ。 るか否かという訴訟要件の存否は,当事者の弁論主義に服さない職権調査事項であるので,以下,職権で判断する。 ( )①平成11年度の補助金は,平成11年6月23日,同年10月14日 及び平成12年1月18日の3回に分けて各150万円ずつ合計450 服さない職権調査事項であるので,以下,職権で判断する。 ( )①平成11年度の補助金は,平成11年6月23日,同年10月14日 及び平成12年1月18日の3回に分けて各150万円ずつ合計450万円が支出されたこと,②控訴人らは,平成12年9月12日,県監査委員に対し,本件各補助金及び本件随行職員給与の支出につき違法であるとして地- 10 -方自治法242条1項に基づく監査請求をしたこと,③県監査委員は,同年11月22日,控訴人らに対し,同監査請求を棄却する旨の通知を行ったこと,は前記第2の2の前提事実(引用に係る原判決の4頁イ,8頁()) のとおりである。また,弁論の全趣旨によれば,本件各補助金はいずれも概算払で支出されたことが認められる。 地方自治法242条2項本文により,概算払による公金の支出についての監査請求は,当該公金の支出がされた日から1年を経過したときは,これをすることができないものと解するのが相当であるから(最高裁第三小法廷平成7年2月21日判決・裁判集(民事)174号285頁参照,本件各補)助金のうち平成11年6月23日に概算払として支出された150万円の補助金については,支出から1年という監査請求期間を経過した平成12年9月12日に監査請求がされたことになり,同項ただし書の「正当理由」があるときでなければ同監査請求は不適法となる。 ( )そこで,平成11年6月23日に支出された補助金について,支出から 1年という監査請求期間を経過して監査請求がなされたことにつき「正当理由(地方自治法242条2項ただし書)があるか否かを判断する。 」 証拠 甲4の1~3によれば平成12年6月22日けe新聞には議(),,「員OB団体に補助金「都道県政令市10自治体が計2800万円「市」,」,民団 あるか否かを判断する。 」 証拠 甲4の1~3によれば平成12年6月22日けe新聞には議(),,「員OB団体に補助金「都道県政令市10自治体が計2800万円「市」,」,民団体返還求め監査請求へ」などの見出しのもと「県から被控訴人元議,員会に対し,平成11年度に450万円の補助金が支出された」旨の一覧。 表「被控訴人元議員会の事務局を兼ねる議会事務局総務課によると,被控,訴人元議員会には平成11年8月10日現在で,元議員104人が在籍。会費は年1人1万円で,平成11年の決算書では,歳入総額847万円のうち450万円が県の補助金だった」旨「被控訴人元議員会の18人は平成1。 ,,「」。 ,1年10月19日北海道へ3泊4日の視察研修に出かけたα湖遊覧β,γ館など14の視察先で,行政機関は北海道開発局のみ。各自5万50- 11 -00円の参加費を払ったが,旅費は1人19万1000円。差額の13万6000円は被控訴人元議員会の援助で,うち10万7000円が補助金だった。f会長は「県に視察の報告や提言はしていない。会報に掲載された視」察記は「元気な再会を喜び,話に花を咲かせ一路,α湖に向かう。紅葉の,美しさに見とれ,雄阿寒岳の眺めが素晴らしい」とつづっている。同会の事務局となっている議会事務局総務課は「引退しても,地域で力を持ってい,る。その活動に視察を生かしてもらっている」と説明。参加者の1人は「補助は功労に対するもの。問題はない」と言い切った。県は,平成12年度,補助額を10%カットの405万円にした。被控訴人元議員会側は被控訴人a知事を総会に呼び,削減理由の釈明を求めた」旨「元県議の控訴人d・。 ,g代表幹事は,補助金の性格を,一種の議会懐柔費と位置づけ「県が支給を続けるのは買収行 にした。被控訴人元議員会側は被控訴人a知事を総会に呼び,削減理由の釈明を求めた」旨「元県議の控訴人d・。 ,g代表幹事は,補助金の性格を,一種の議会懐柔費と位置づけ「県が支給を続けるのは買収行為だ」として,内容を精査した上で,返還を求めるとしている」旨「g」は近く,県に補助金返還を求める住民監査請求を行う方。 ,「針だ」旨,の記事が掲載された。 。 そうすると,どんなに遅くとも,同記事が掲載された平成12年6月22日には,住民が本件各補助金のうち平成11年6月23日に支出された補助金150万円について監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができたことは明らかである。そうとすれば,その82日後の平成12年9月12日にされた監査請求は相当期間内にされたものと認めることはできないから,平成11年6月23日に支出された補助金150万円について支出から1年という監査請求期間を経過して監査請求がされたことに「正当理由(地方自治法242条2項ただし書)があるとはい」えないというべきである(最高裁第一小法廷平成14年9月12日判決・民集56巻7号1481頁参照。 )( )よって,平成11年6月23日の150万円の補助金支出についての監 査請求は不適法であり,したがって,本件訴えのうち,平成11年6月23- 12 -日の150万円の補助金支出に係る訴えは,適法な監査請求を経ていないから不適法であり(地方自治法242条の2第1項,同部分に係る訴えは却)下すべきである。 本案についての判断( )認定事実 (,,,,,,) 証拠 甲1 乙1ないし3 丙1ないし911ないし13及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア被控訴人aは,平成5年8月から県知事の職 ,,,,,,) 証拠 甲1 乙1ないし3 丙1ないし911ないし13及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア被控訴人aは,平成5年8月から県知事の職にあり,被控訴人元議員会の顧問をしている者である。被控訴人bは,平成10年4月1日から平成12年3月31日まで議会事務局次長兼総務課長の職にあり,同総務課長として1000万円未満の補助金の交付決定及び支出命令の専決権限を有していた者である。被控訴人cは,同年4月1日から議会事務局次長兼総務課長の職にあり,上記と同じ専決権限を有している者である。 イ被控訴人元議員会は,昭和54年に設立された権利能力のない社団であり,県議会議員として在職したことがある者のうち会則の趣旨に賛同する者により組織されている。被控訴人元議員会の目的は,平成13年1月3「,,1日の会則改正前においては会員の親睦をはかり意見の交換等を通じ県政の発展に寄与すること」とされていたが,同改正後は「県政の発展及び県民の福祉増進を図ること」とされている。被控訴人元議員会は,平成11年度及び平成12年度の会員数が93名から102名であり,その会員から1人毎年1万円の会費を徴収している。 ウ被控訴人aから専決権限を与えられていた被控訴人bは,県の被控訴人元議員会に対する平成11年度の補助金の交付決定をして支出命令を発令し,同年度において450万円の補助金が支出された。また,被控訴人aから専決権限を与えられていた被控訴人cは,県の被控訴人元議員会に対する平成12年度の補助金の交付決定をして支出命令を発令し,同年度に- 13 -おいて241万1026円の補助金が支出された。 本件各補助金は,一般予算に組み込まれて議会の議決を経た上,交付規則及び交付要綱に基づき,かつ,財務規則に従 て支出命令を発令し,同年度に- 13 -おいて241万1026円の補助金が支出された。 本件各補助金は,一般予算に組み込まれて議会の議決を経た上,交付規則及び交付要綱に基づき,かつ,財務規則に従った手続により交付・支出されたものであった。なお,本件各補助金と同様の補助金は,平成12年度において全国の10都道県で交付されていたが,本件各補助金と同様の補助金の支出について「公益上必要がある場合(地方自治法232条の,」2)に当たらないとする定説はなかった。 エ県は,昭和54年3月に県議会議員の職にあった者に対する礼遇について礼遇規程を制定し,これを受けて被控訴人元議員会の運営費を補助するための交付要綱を定めた上,昭和54年度以降継続して被控訴人元議員会に対する補助金を交付してきた。平成11年度の補助金について適用され,「,,た交付要綱はその趣旨につき知事は県政貢献者の功労に報いるため県政の研究,意見交換等を通じ県政発展に寄与する静岡県元県議会議員会に対し,予算の範囲内において,補助金を交付するものとし,その交付に関しては,静岡県補助金等交付規則(昭和31年静岡県規則第47号)及びこの要綱の定めるところによる」と規定し,また,補助の対象につき。 「元議員会の運営事業に要する経費」と規定していた。交付要綱は,平成12年度の改正により,その趣旨につき「知事は,静岡県議会議員の職にあった者の礼遇に関する規程(昭和54年3月8日制定)に基づき,静岡県元県議会議員会に対し,予算の範囲内において,補助金を交付するものとし,その交付に関しては,静岡県補助金等交付規則(昭和31年静岡県規則第47号)及びこの要綱の定めるところによる」と,また,補助の。 対象につき「ア県政の発展に貢献する調査及び研修の実施並びに講演会及び県政懇談会の開催 静岡県補助金等交付規則(昭和31年静岡県規則第47号)及びこの要綱の定めるところによる」と,また,補助の。 対象につき「ア県政の発展に貢献する調査及び研修の実施並びに講演会及び県政懇談会の開催イ総会,幹事会及びその他の必要な会議の開催ウ会報及び参考資料の刊行及び配付エその他県政発展のための必要な事業」とそれぞれ改められ,同年度の補助金から改正後の規定が適用さ- 14 -れることになった。 オ被控訴人元議員会の県知事に対する平成11年度の補助金交付申請は,「」,県政の発展に寄与する諸事業の推進及び会員の親睦を事業の目的とし「総会及び役員会の開催「県内,県外視察研修「会報の発行「講演」,」,」,会の開催」及び「県政懇談会の開催」を事業の内容としてされたものであり,同年度の補助金の交付決定は,上記の事業を補助する目的でされたものである。被控訴人元議員会の県知事に対する平成12年度の補助金交付申請は「県政の発展に寄与する諸事業の推進」を事業の目的とし,平成,11年度と同様のものを事業の内容としてされたものであり,平成12年,。 度の補助金の交付決定は上記の事業を補助する目的でされたものであるカ被控訴人元議員会は,本件各補助金を使用して次の活動をした。 (ア)総会平成11年度の総会を2回にわたり,それぞれ会員41名及び32名参加の下,ホテルhで開催し,費用として合計145万2374円を支払った。また,平成12年度の総会を2回にわたり,それぞれ会員32名及び31名参加の下,上記ホテル等で開催し,費用として合計89万5255円を支払った。これらの総会における議題は,前年度の事業報告及び歳入歳出決算,当該年度の事業計画及び歳入歳出予算,役員の選任等であり,総会の際には懇親会が行われている。 (イ)県外視察平成1 55円を支払った。これらの総会における議題は,前年度の事業報告及び歳入歳出決算,当該年度の事業計画及び歳入歳出予算,役員の選任等であり,総会の際には懇親会が行われている。 (イ)県外視察平成11年度の県外視察を,会員18名参加の下,3泊4日の日程で行い,δセンター,ε記念館,博物館β,γ館,ζ資料館,η工芸館,θ美術館,ι史料館,北海道開発庁,小樽市博物館及びκを訪問した。 なお,同視察に参加した会員から1人5万5000円の参加費が徴収された。 (ウ)県内視察- 15 -平成11年度の県内視察を,会員26名参加の下,1泊2日の日程で行い,λ学園,μ文学館,ν記念館,ξ博物館及びi株式会社湖西工場を訪問した。なお,同視察に参加した会員から1人1万5000円の参加費が徴収された。 (エ)講演会平成11年度の講演会を,会員32名参加の下,元在日外国特派員協会会長を講師に迎え「外国人記者からみた日本の政治」との演題で開,催した。平成12年度においては,会員29名参加の下,j取締役研究,「」,開発部長を講師に迎えIT革命が生活・仕事を変えるとの演題でまた,会員31名参加の下,k解説委員を講師に迎え「プーチン大統,領と今後の日ロ関係」との演題で,それぞれ講演会を開催した。 (オ)県政懇談会,,,平成11年度の県政懇談会を会員27名参加の下県副知事を迎え「快適空間しずおかの創造について」とのテーマで実施した。また,平成12年度の県政懇談会を,会員19名参加の下,県企画部空港建設局長を迎え「空港建設の現状について」とのテーマで実施した。 ,(カ)会報平成11年度において3回,平成12年度において2回,会報を発行した。 ( )本件各補助金の支出の違法性について 本件各補助金の支出が「公益上必要がある場合」に当 で実施した。 ,(カ)会報平成11年度において3回,平成12年度において2回,会報を発行した。 ( )本件各補助金の支出の違法性について 本件各補助金の支出が「公益上必要がある場合」に当たるか否かについて検討するに,上記( )の認定事実によれば,本件各補助金の対象となった事 業は,いずれも被控訴人元議員会の会員を対象とした内部的な行事等であって,住民の福祉に直接役立つものではなく,その事業それ自体に公益性を認めることはできない。また,上記認定事実によれば,本件各補助金の交付の趣旨は,県議会議員の職にあった者の功労に報いることと,その者らに引き- 16 -続き県政の発展に寄与してもらうことにあるということができるが,県議会議員の職にあった者も,その職を退いた後は,もはや県民を代表する立場にはないのであるから,上記の趣旨により被控訴人元議員会の内部的な事業に要する経費を補助するとしても,県議会議員の職にあった者に対する礼遇として社会通念上是認し得る限度を超えて補助金を交付することは許されないというべきである。ところが,本件各補助金の交付は,その金額が平成11年度が450万円,平成12年度が241万1026円であって,被控訴人元議員会の事業の内容や会員数に照らしても,県議会議員の職にあった者に対する礼遇として社会通念上是認し得る限度を超えるものといわざるを得ない。そうすると,本件各補助金の交付につき地方自治法232条の2の「公益上必要がある場合」に当たるものと認めた県としての判断は裁量権の範囲を逸脱したものであって,本件各補助金の支出は全体として違法というべきである。 ( )被控訴人らの責任について ア被控訴人aの不法行為責任について(ア)控訴人らは「被控訴人aは,①(主位的に)本件各補助金が公益,性のない違法 出は全体として違法というべきである。 ( )被控訴人らの責任について ア被控訴人aの不法行為責任について(ア)控訴人らは「被控訴人aは,①(主位的に)本件各補助金が公益,性のない違法な支出であること,又は本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超える違法,,な支出であることを知っていたか知り得る立場にあったのであるから本件各補助金の支出に関し,専決権者に対して専決による支出命令をしないように指揮監督すべき義務があったにもかかわらず,故意又は過失によりこれを怠った不法行為により,②(予備的に)支出した本件各補助金がその交付目的に違背して不法に消費されたことを知っていたか知り得る立場にあったのであるから,支出した本件各補助金に関し,専決権者に対して補助金交付決定の取消決定(交付規則16条1項)及び返還請求(同17条1項)の専決を行うよう指揮監督すべき義務があった- 17 -にもかかわらず,故意又は過失によりこれを怠った不法行為により,県に損害を与えた」旨を主張する。 。 (イ)普通地方公共団体の長が,法令上本来的に有する財務会計上の行為を行う権限に属する一定の範囲の行為を特定の補助職員に専決させるこ,,ととしその専決権者が財務会計上の行為を専決により処理した場合は普通地方公共団体の長は,専決権者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により専決権者が違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,当該地方公共団体に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うものと解される(最高裁第二小法廷平成3年12月20日判決・民集45巻9号1455頁参照。また,ある事項に関する法律解釈について異なる見解が対立し,)実務上の取扱いも分かれてい 損害賠償責任を負うものと解される(最高裁第二小法廷平成3年12月20日判決・民集45巻9号1455頁参照。また,ある事項に関する法律解釈について異なる見解が対立し,)実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して,,公務を執行したときは後にその執行が違法と判断されたからといって直ちに当該公務員に過失があったものとすることは相当ではないと解される(最高裁第一小法廷昭和46年6月24日判決・民集25巻4号574頁参照。 )(ウ)これを本件についてみると,前記( )の認定事実によれば,被控訴 人aは,県知事として法令上本来的に有する財務会計上の行為を行う権限のうち,1000万円未満の補助金の交付決定及び支出命令の専決権,,限を議会事務局総務課長に与え被控訴人bが平成11年度の補助金の同cが平成12年度の補助金の,各交付決定及び支出命令を専決したの,,,であり上記( )のとおりその支出は全体として違法であるが①県は 昭和54年3月に県議会議員の職にあった者に対する礼遇について礼遇規程を制定し,これを受けて被控訴人元議員会の運営費を補助するための交付要綱を定めた上,昭和54年度以降継続して被控訴人元議員会に- 18 -対する補助金を交付してきたこと,②本件各補助金も,一般予算に組,,,み込まれて議会の議決を経た上交付規則及び交付要綱に基づきかつ財務規則に従った手続により交付・支出されたこと,③本件各補助金と同様の補助金は,平成12年度において全国の10都道県で交付されていること,④本件各補助金と同様の補助金の支出について「公益上,必要がある場合」に当たらないとする定説はなかったこと,⑤本件各補助金の支出について,本件訴訟の差 おいて全国の10都道県で交付されていること,④本件各補助金と同様の補助金の支出について「公益上,必要がある場合」に当たらないとする定説はなかったこと,⑤本件各補助金の支出について,本件訴訟の差戻前の第1,2審は「公益上必,要がある場合」に当たると判断し,その上告審は「公益上必要がある,場合」に当たらないと判断したが,上告審も,およそ県議会議員の職にあった者に対する礼遇として被控訴人元議員会の内部的な事業に要する経費を補助すること自体が違法であるとしたのではなく「県議会議員,の職にあった者に対する礼遇として社会通念上是認し得る限度を超えて補助金を交付する」という点において違法であると判断したものであること,以上の点を考慮すると,被控訴人aにおいては,専決権者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反して故意又は過失により専決権者が違法行為をすることを阻止しなかったものとはいえず,不法行為は成立しないものというべきである。 イ被控訴人b及び同cの不法行為責任について控訴人らは「被控訴人b及び同cは,①(主位的に)本件各補助金が,違法な支出であること,又は本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超える違法な支出であること,を知っていたかほんの少し注意すれば知り得る立場にあったのであるから,本件各補助金の支出に関し専決による支出命令をしてはならない注意義務があったにもかかわらず,故意又は重過失により支出命令を発した不法行為により,②(予備的に)支出した本件各補助金がその交付目的に違背して不法に消費されたことを知っていたかほんの少し注意すれば知- 19 -り得る立場にあったのであるから,支出した本件各補助金に関し,補助金交付決定の取消決定及び返還請求をすべき の交付目的に違背して不法に消費されたことを知っていたかほんの少し注意すれば知- 19 -り得る立場にあったのであるから,支出した本件各補助金に関し,補助金交付決定の取消決定及び返還請求をすべき注意義務があったにもかかわらず,故意又は重過失によりこれを怠った不法行為により,県に損害を与えた」旨を主張する。 。 しかしながら,上記ア(ウ)の①ないし⑤の点を踏まえると,被控訴人b及び同cに上記の故意又は重過失があったとはいえず,不法行為は成立しない。 ウ被控訴人元議員会の不法行為責任(主位的)について控訴人らは「被控訴人元議員会は,本件各補助金が違法な支出である,ことを知っていたか知り得る立場にありながら,本件各補助金の交付を県に申請しこれを支出させて受領したのであるから,故意又は過失により違法な公金支出に加担し,県に損害を与えた」旨を主張する。 。 しかしながら,前記( )カの認定事実及び上記ア(ウ)の①ないし⑤の点 を踏まえると,被控訴人元議員会に上記の故意又は過失があったとはいえず,不法行為は成立しない。 エ被控訴人元議員会の不当利得返還責任(予備的)について(ア)本件各補助金の支出が全体として違法であることは,上記( )のと おりである。そして,県と被控訴人元議員会との間で成立した本件各補助金交付に関する私法上の契約を無効としなければ,地方自治法232条の2の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるから,上記の契約は無効であり,被控訴人元議員会は,本件各補助金相当額を不当利得として返還すべき義務を負うものと解される。 (イ)これに対し,被控訴人元議員会は「本件各補助金の支出が地方自,治法232条の2に違反して違法であったとしても,県と被控訴人元議員会との間で成立した補助金交付の私法上の契約は有効であり る。 (イ)これに対し,被控訴人元議員会は「本件各補助金の支出が地方自,治法232条の2に違反して違法であったとしても,県と被控訴人元議員会との間で成立した補助金交付の私法上の契約は有効であり,法律上の原因を欠くものではないから,被控訴人元議員会は,県に対して,不- 20 -。」。 当利得に基づく本件各補助金相当額の返還義務はない旨を主張するたしかに,普通地方公共団体の財務会計上の行為が地方自治法その他の行政法令上違法であると判断されても,そのことにより直ちに当該財務会計上の行為の私法上の効力が当然に無効になるものではなく(最高裁第三小法廷昭和62年5月19日判決・民集41巻4号687頁,最高裁第一小法廷平成16年1月15日判決・民集58巻1号156頁参照,このことは,普通地方公共団体の財務会計上の行為が補助金の交)付である場合の当該補助金の交付に関する私法上の契約(無償である贈与契約の一類型)についても一応は当てはまるものである。 しかしながら,上記( )の認定事実によれば,本件各補助金の交付の 趣旨は,県議会議員の職にあった者の県政への功労に報いることと,その者らに引き続き県政の発展に寄与してもらうことにあるのであり,本件各補助金の交付は,県民を代表して職務を遂行した県議会議員の職にあった者に対する県民全体からの礼遇を県が代表して行ったということができる。そうとすると,被控訴人元議員会及びその所属の会員としても,本件各補助金を受けた当時,仮に本件各補助金の対象となった被控訴人元議員会の事業それ自体に公益性を認めることができず,また,本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超えていて,本件各補助金の交付が全体として違法であるとされるような場合にまで,本件各補助金を手元にと ず,また,本件各補助金が県議会議員の職にあった者に対する礼遇としては社会通念上是認し得る限度を超えていて,本件各補助金の交付が全体として違法であるとされるような場合にまで,本件各補助金を手元にとどめ置きこれを県に返還しないなどということは潔しとしないものと考えていたと推認することができ,そして,県が県議会議員の職にあった者など県の関係者に対する礼遇として補助金を交付する場合には常にそれがいわゆるお手盛りとなって社会通念上是認し得る限度を超えて交付する危険性があるのであるから,もしその補助金の交付が違法であっても当該補助金の交付に関する私法上の契約は無効ではないとしてその返還を命じ得- 21 -ないとすれば,そのようなお手盛りを防止することはできなくなるのであり,ひいて,普通地方公共団体は補助金の交付を「公益上必要がある場合」に限り行うことができるとした地方自治法232条の2の規定の趣旨を没却する結果となるのである。したがって,県と被控訴人元議員会との間で成立した本件各補助金の交付に関する私法上の契約はこれを無効とすべき特段の事情があるものというべきであって,被控訴人元議員会は本件各補助金相当額を不当利得として県に返還すべき義務を負うものというべきである。 ,,(ウ)また前記( )カの認定事実及び前記ア(ウ)の①ないし⑤によれば 被控訴人元議員会は,本件各補助金の交付に法律上の原因がないこと,すなわち,本件各補助金の交付が全体として違法であることを知っていたものとは認められず,被控訴人元議員会は不当利得について善意であるといえるから,利益の存する限度において利得を返還すればよく,利息を付して返還すべき義務まではないと解するのが相当である。なお,本件における「利益の存する限度」とは,たとえ被控訴人元議員会が既に本件各補助 から,利益の存する限度において利得を返還すればよく,利息を付して返還すべき義務まではないと解するのが相当である。なお,本件における「利益の存する限度」とは,たとえ被控訴人元議員会が既に本件各補助金を全部使用しているとしても,それは被控訴人元議員会の運営上必要な経費として使用されたものであるから,本件各補助金相当額全額であると解するのが相当である。 よって,原判決のうち,差戻しに係る部分中の被控訴人a,同b及び同元議員会に関する部分を取り消し,その取消しに係る部分のうち,静岡県が被控訴人元議員会に対し平成11年6月23日にした150万円の補助金支出に係る請求に関する部分の訴えは不適法であるからこれを却下し,控訴人らの被控訴人a及び同bに対するその余の請求は理由がないから棄却し,控訴人らの被控訴人元議員会に対するその余の請求は,その主位的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)は理由がないから棄却し,その予備的請求(不当利得返還請求)のうち平成11年度の補助金の一部に相当する300万円及び平成12年度の- 22 -補助金の全部に相当する241万1026円の各支払を求める部分を認容し,控訴人らの被控訴人cに対する請求は理由がなく棄却すべきであるから,控訴,。 人らの被控訴人cに対する控訴を棄却することとして主文のとおり判決する東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官原田敏章裁判官氣賀澤耕一裁判官渡部勇次

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