主文 一本件各訴えをいずれも却下する。 二訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第一請求被告らは、連帯して、千葉県に対し、金二億九四五八万円及びこれに対する被告神鋼電機は平成八年三月二四日から、被告日新電機は同月二五日から、その余の被告らは同月二六日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二事案の概要一千葉県は、被告日本下水道事業団(以下「被告事業団」という。)に下水道施設各種の建設工事を委託しているところ、被告三菱電機は、被告事業団から随意契約の方式により江戸川第二終末処理場電気設備工事その一六ないし一九を受注した。本件は、千葉県の住民である原告らが、被告三菱電機の右工事受注は、被告事業団を除くその余の被告ら(以下「被告会社ら」という。)の談合(受注調整)と、これに対する被告事業団の加功の結果であり、千葉県は、談合がなければ形成されたであろう請負代金額と実際の請負代金額との差額に相当する損害を被っており、被告らに対し、その共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているが、千葉県知事は右損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、怠る事実に係る相手方である被告らに対し、千葉県に代位して損害賠償請求をした事案である。 二前提となる事実当事者間に争いがないか、証拠により認められる事実は次のとおりである。 1 当事者(一) 原告らはいずれも千葉県の住民である(弁論の全趣旨)。 (二) 被告事業団は、日本下水道事業団法(昭和四七年法律第四一号)に基づいて設立された、「地方公共団体等の要請に基づき下水道の根幹的施設の建設及び維持管理を行う」こと等を目的とする法人であり、被告会社らは、いずれも電気設備工事の請負等の事業を営む株式会社である(原 づいて設立された、「地方公共団体等の要請に基づき下水道の根幹的施設の建設及び維持管理を行う」こと等を目的とする法人であり、被告会社らは、いずれも電気設備工事の請負等の事業を営む株式会社である(原告らと被告三菱電機との間では甲一一、弁論の全趣旨により認められ、その余の被告らとの間では争いがない。)。 2 被告事業団による建設工事の受託とその処理について(甲四、五、一一、戊六)被告事業団の業務については、日本下水道事業団法及び日本下水道事業団業務方法書、同会計規定等により定められているが、これによれば、被告事業団が地方公共団体から下水道施設の建設等を受託しようとするときは、委託地方公共団体との間で委託協定を結び、目的、委託業務の内容・範囲、業務の開始及び完了時期、費用の額及び受領方法等について定めるが、この委託協定は、数年次にわたる建設工事の全体について受託する趣旨を明らかにし、予定概算事業費、完成予定年度、委託の範囲その他工事施行に係る基本的事項を定める基本協定と、これに基づいて、各年度の予算の範囲内において、当該年度に発注する施設の内容、費用の額、支払方法等の実施の細目について定める年度実施協定に分かれること、施設の建設に必要な工事費や工事の監督、検査等に要する人件費等、そして一般管理等の費用については委託地方公共団体に負担させること(その支払方法については委託協定で定められる。)、受託した工事の請負業者への発注は被告事業団が行い、その方法は競争入札を原則とし、被告事業団の運営上特に必要がある場合等には指名競争入札又は随意契約の方式によることができるが、随意契約の方式による場合には、なるべく二以上の業者から見積書を徴すること、施設の建設が完成すると、被告事業団は請負工事等検査要領に基づき完成検査を行い、合格後、完成調書を作成して委 ことができるが、随意契約の方式による場合には、なるべく二以上の業者から見積書を徴すること、施設の建設が完成すると、被告事業団は請負工事等検査要領に基づき完成検査を行い、合格後、完成調書を作成して委託地方公共団体に提出し、その完成認定を受けて施設を引渡すとともに、費用については完了精算等報告を行うこと、年度実施協定による工期が二年度以上にわたるときは、中間年度の終了時に、年度内の遂行実績について年度終了報告を行うこととされている。 3 千葉県と被告事業団の契約の方式及び費用の支払(甲四ないし八、九の1ないし3、一〇の1、2、戊一、二の各1、2、三、六、八)(一) 下水道施設建設工事の委託に当たって、千葉県は、被告事業団に対し、工事施設名を明記した下水道施設の建設工事委託の要請書を提出して、被告事業団と委託協定締結のための協議をし、法令に従い予算措置を講じ、被告事業団と委託協定を締結する。 この委託協定には、前記のとおり基本協定と年度実施協定という二段階があるが、いずれも被告事業団と建設工事請負業者との間の工事請負契約に先行して締結される。 (二) 基本協定は、千葉県が、法令に従い予算措置を講じたうえ、被告事業団が施行する下水道施設の建設工事の施行に要する費用(概算)の支払義務を負担する旨規定し、これを受けた年度実施協定では、右費用が確定的に定められるとともに、賃金又は物価の変動等により右金額では建設工事の完成が困難である場合には、協議のうえこれを変更する旨規定している。 このように、年度実施協定には、千葉県が被告事業団に負担すべき費用の額(確定額)が定められるが、右費用は、(1)工事の施行に直接必要な工事請負費・原材料費その他の工事費、(2)工事の監督・検査その他工事の施行のため必要とする人件費・旅費・庁費、及び(3)建設業務の処理 定額)が定められるが、右費用は、(1)工事の施行に直接必要な工事請負費・原材料費その他の工事費、(2)工事の監督・検査その他工事の施行のため必要とする人件費・旅費・庁費、及び(3)建設業務の処理上必要とする一般管理費等から構成され(日本下水道事業団業務方法書)、(1)が請負業者に対して支払われるのに対し、(2)及び(3)は被告事業団の実質的収入となるもので管理諸費と呼ばれる。 基本協定及び年度実施協定は、被告事業団の発注する建設工事等の請負契約に先立って締結されるものであるから、年度実施協定で合意される費用の額は、個々の工事請負契約の全額を前提として決定されるものではなく、もっぱら千葉県の予算(国庫補助対象額等)を前提に決定される。そして、右費用の支払方法については、年度実施協定上、千葉県と被告事業団との協議により資金計画を定め、右資金計画に基づき被告事業団の請求により所要金額を被告事業団に前金払することになっている。さらに、年度実施協定では、被告事業団は、建設工事の完成後、建設工事の施行に要する費用について客観的に金額の異動を生ずる場合には、被告事業団の精算事務処理要領に基づき費用の精算を行い、納入済額と精算額との差額を千葉県に還付することになっている。 (三) 被告事業団は、年度実施協定に明記された下水道施設の建設工事の施行に当たっては、これを土木工事、建築工事、機械設備工事、電気設備工事等の各部分工事に分けて各請負業者に発注して請負契約を締結する。工事が完了し、施設が完成すると、被告事業団は、千葉県に完成調書を提出し、その完成認定を受けて、当該下水道施設を千葉県に引き渡す。そして、被告事業団は、各請負業者に対し、各工事請負契約に基づく請負代金を支払うことになる。 4 本件委託協定の締結と委託料の支払(甲六ないし八、九の1ないし けて、当該下水道施設を千葉県に引き渡す。そして、被告事業団は、各請負業者に対し、各工事請負契約に基づく請負代金を支払うことになる。 4 本件委託協定の締結と委託料の支払(甲六ないし八、九の1ないし3、一〇の1、2、調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)千葉県と被告事業団との間では、平成二年七月二五日、予定概算事業費を一〇九億円とする江戸川左岸流域下水道根幹的施設の建設工事委託に関する基本協定が、平成四年七月三〇日には、予定概算事業費を一三八億円とする江戸川左岸流域下水道江戸川第二終末処理場の建設工事委託に関する基本協定(以下これらを合わせて「本件基本協定」という。)がそれぞれ締結された。 そして、本件基本協定に基づき、平成四年六月三〇日、平成四年度における江戸川左岸流域下水道江戸川第二終末処理場の建設工事委託に関する年度実施協定(以下「平成四年度実施協定その1」という。)が締結されて、建設工事の内容・範囲を土木(最初沈殿池)、機械(汚泥貯留設備)、電気(汚泥貯留運転操作設備)とし、建設工事の施行に要する費用が五億〇九八一万四〇〇〇円と定められ、続いて、同年九月一日には、平成四年度における江戸川左岸流域下水道江戸川第二終末処理場の建設工事委託に関する年度実施協定(以下、後述する変更協定を合わせて「平成四年度実施協定その2」という。)が締結されて、建設工事の内容・範囲を土木建築(最初沈殿池、エアレーシヨンタンク、最終沈殿池、覆蓋)、機械(送風機設備)、電気(水処理運転操作設備、送風機運転操作整備、電算設備)とし、建設工事の施行に要する費用の額が五二億一七一七万八〇〇〇円と定められた。その後、平成四年度実施協定その2について、同年一〇月一五日、同年一二月一六日の二回にわたり、建設工事の内容・範囲及び建設工事の施行に要する費用を変更する協定が締 一七一七万八〇〇〇円と定められた。その後、平成四年度実施協定その2について、同年一〇月一五日、同年一二月一六日の二回にわたり、建設工事の内容・範囲及び建設工事の施行に要する費用を変更する協定が締結され(同年一二月一六日の変更協定で、電気工事につき新たに汚泥処理運転操作設備が加えられた。)、最終的に建設工事の施行に要する費用は六九億八一三六万七〇〇〇円となった。 また、平成五年四月三〇日には、平成五年度における江戸川左岸流域下水道江戸川第二終末処理場の建設工事委託に関する年度実施協定(以下、後述する変更協定を合わせて「平成五年度実施協定」といい、平成四年度実施協定その1及びその2と合わせて「本件年度実施協定」という。また、本件基本協定と本件年度実施協定を合わせて「本件委託協定」という。)が締結され、建設工事の内容・範囲を土木建築(覆蓋)及び機械(水処理施設)とし、建設工事の施行に要する費用の額が一七億四六四六万円と定められたが、同年一〇月一四日、右の建設工事の内容・範囲及び建設工事の施行に要する費用を変更する協定が締結され、電気工事(水処理運転操作設備)等が加わるとともに、最終的に建設工事の施行に要する費用は六八億一八六三万三〇〇〇円とされた。 そして、千葉県は、被告事業団の請求に基づき、以上の各建設工事の施行に要する費用(以下「委託料」という。)を、いずれも前金払の方法により被告事業団に支払った。 5 本件電気設備工事に関する請負契約の締結(甲一三ないし一七の各1、2)その後、被告事業団は、随意契約の方法により、平成四年一一月九日に江戸川第二終末処理場電気設備工事その一六(以下「本件工事①」という。)を請負代金額二二一四万五〇〇〇円で、同年一二月一五日に同工事その一七(以下「本件工事②」という。)を請負代金額一一億〇九三一万円で 第二終末処理場電気設備工事その一六(以下「本件工事①」という。)を請負代金額二二一四万五〇〇〇円で、同年一二月一五日に同工事その一七(以下「本件工事②」という。)を請負代金額一一億〇九三一万円で、平成五年二月九日に同工事その一八(以下「本件工事③」という。)を請負代金額八〇八五万五〇〇〇円で、同年一二月二日に同工事その一九(以下「本件工事④」といい、これらを併せて「本件各工事」という。)を請負代金額一億二六六九万円で、いずれも被告三菱電機に発注して各工事請負契約を締結し(以下本件工事①ないし④に係る契約を「本件契約①」ないし「本件契約④」といい、これらを併せて「本件各契約」という。なお、本件契約③は、平成六年二月二二日に、請負代金額が八一九三万六五〇〇円に変更された。)その都度、工事請負業者及び契約内容について千葉県に報告した。 6 本件各工事の完成引渡し及び精算報告書の提出(甲一八、二〇、二二、二四及び二六ないし二九の各1、2、一九、二一、二三、二五)被告事業団から千葉県に対し、本件工事①について平成五年二月一日に、本件工事②及び③について平成六年三月二五日に、本件工事④について平成六年一二月八日に完成引渡しがなされ、完成調書及び引継書が作成交付された。 また、被告事業団は、千葉県に対し、平成五年四月一五日、本件工事①ないし③に係る年度終了精算報告書を提出し、平成六年三月三一日、右工事に係る年度完了精算報告書を提出するとともに、本件工事④に係る年度終了精算報告書を提出し、平成七年三月三一日、本件工事④に係る年度完了精算報告書を提出した。 7 公正取引委員会による課徴金納付命令等(甲二の1、2、三、三〇、三五、三六)公正取引委員会は、被告事業団からの電気設備工事の受注に関して、被告会社らによる独占禁止法三条違反行為(不当な取引制 7 公正取引委員会による課徴金納付命令等(甲二の1、2、三、三〇、三五、三六)公正取引委員会は、被告事業団からの電気設備工事の受注に関して、被告会社らによる独占禁止法三条違反行為(不当な取引制限)が行われたとして、平成六年九月に立入検査を行い、平成七年三月、被告会社らを告発するとともに、同年六月、被告会社らの談合担当者及び被告事業団元工務部次長を告発し、同年七月一二日、被告事業団が平成四年度及び同五年度に発注した新規工事を対象に、被告会社らに対し課徴金納付命令を発した。 また、東京高等検察庁は、平成七年六月一五日、被告事業団が平成五年度中に発注した新規工事につき、被告会社らとその各談合担当者及び被告事業団元工務部次長を独占禁止法違反で起訴し、東京高等裁判所は、平成八年五月三一日、右被告人ら全員に対して有罪判決を言渡した。 ただし、本件各工事については、公正取引委員会の課徴金納付命令の対象とはならず、東京高等検察庁による起訴もされていない。 8 原告らの監査請求(甲一、六六の1ないし8)原告らは、平成七年一一月二七日、千葉県監査委員に対し、被告会社らによる談合という共同不法行為によって千葉県が損害を被っているのに、県知事は損害賠償請求権の行使を怠っているとして、監査請求を行った(以下「本件監査請求」という。)が、右監査委員は、平成八年一月二四日、本件監査請求を棄却した。 三原告らの主張する被告らの責任 1 被告会社らの談合ルールと被告事業団の加功(一) 被告事業団は、電気設備工事を受注する資格のある業者として、以前から被告会社らと訴外松下電器産業、同横河電機、同東洋電機製造、同日昇製作所の四社を加えた一三社を指名対象業者に選定してきたが、被告会社ら以外の四社はアウトサイダーと呼ばれ、被告事業団発注の電気設備工事の殆どすべては、被 下電器産業、同横河電機、同東洋電機製造、同日昇製作所の四社を加えた一三社を指名対象業者に選定してきたが、被告会社ら以外の四社はアウトサイダーと呼ばれ、被告事業団発注の電気設備工事の殆どすべては、被告会社らが受注してきた。 そして、被告会社らは、被告事業団設立以降平成元年度までは、被告事業団が発注する個別の電気設備工事毎に受注調整(談合)を行っていたが、平成二年度からは、次の合意の下に、同一年度内に被告事業団が発注を予定しているすべての電気設備工事について、受注予定業者を一括して決定する方式の談合を行うようになり、この方式による談合は公正取引委員会による立入検査が行われるまで続けられた。 (1) 被告会社らは、その組織する「九社会」の毎年三月の会合において、新規工事についての受注調整と継続工事について被告事業団が従前の受注業者と随意契約を結ぶ(一機場一社の原則)のを他社は干渉しないこと、そして被告会社らの受注比率と右比率計算の前提となる工事の範囲(新規工事の全部と継続工事の一部)についての合意を主たる内容とする「談合ルール」を相互に確認する。 (2) 被告会社らは、毎年六月の会合(ドラフト会議)で、九社会の談合ルールで決定されている各社の受注割合(シェア)に基づいて、当該年度の各電気設備工事の新規工事受注予定業者を決定する。 (3) 被告会社らは、その後各工事の発注までの間に右各会合における決定事項を遵守するための各種の措置(受注予定業者から相指名者に対する入札価格の指示等)をとる。 (二) 被告事業団工務部次長は、被告事業団が当該年度において発注予定の電気設備工事全部のリストを、各工事の予定金額とともに被告会社らが構成する「九社会」の幹事に教示して、九社会における一括談合の成立を促進したばかりでなく、各工事について談合で決まった受注予 注予定の電気設備工事全部のリストを、各工事の予定金額とともに被告会社らが構成する「九社会」の幹事に教示して、九社会における一括談合の成立を促進したばかりでなく、各工事について談合で決まった受注予定業者を指名業者に選定するとともに、正式な予定価格が決定するとその金額を受注予定業者に教示して、受注予定業者が予定価格一杯の価格で落札することを可能にした。 2 本件談合及び被告事業団の加功本件各工事は、江戸川第二終末処理場電気設備工事その一の継続工事であり、被告会社らは、毎年三月の談合で同工事その一を受注した被告三菱電機がその後の継続工事を受注するよう包括的合意をし(以下「本件談合」という。)、被告三菱電機は、本件談合により本件各工事を受注した。 被告事業団は、本件各契約の締結に先立って、千葉県と本件委託協定を締結し、下水道施設の基本計画を定めたうえ、千葉県の事業予算規模も考慮して、当該年度に施行可能な工事範囲及び予算額等を協定するのであるから、右委託協定の段階では、工事請負業者は決定されていない。しかしながら、右のとおり、被告会社ら及び被告事業団との間では、九社会の談合ルールによって本件各工事の受注予定業者を決定し、請負代金を千葉県が設定する予定最高価格にすることが決定されていたのであって、千葉県と被告事業団との本件委託協定及び本件各契約等は、法令等によって要求される手続を形式的に履行するに過ぎないものであった。 本件各契約のように随意契約による場合でも、被告事業団がはじめから契約相手を任意の一社に絞ることは許されず、複数の業者から見積りをとる(見積り合わせ)ことが要請されるが、毎年三月に確認される談合ルールにおいては、受注予定業者に不利な見積りをするなどの干渉を避けることが被告会社らの間で確認されていたもので、これを受けて、被告事業 (見積り合わせ)ことが要請されるが、毎年三月に確認される談合ルールにおいては、受注予定業者に不利な見積りをするなどの干渉を避けることが被告会社らの間で確認されていたもので、これを受けて、被告事業団も、本来、適正価格をもって受注業者と請負契約を締結し、千葉県に適正価格を超える費用負担をさせない法的義務を負っているにもかかわらず、これに違背して、被告会社らと結託し、被告会社らの談合で決定された受注予定業者との間で契約を締結するとともに、予定価格を教示して、請負代金額を予定価格の限度額に誘導したものである。こうして、被告会社らの談合担当者及び被告事業団工務部次長は、共同して本件各契約締結にかかわる自由競争を排除し、契約価格を予定価格に誘導する不法行為を行ったものであるから、被告らは民法七一五条に基づき、その使用者として千葉県の被った損害を賠償する責任を負う。 3 千葉県の損害右共同不法行為に基づき、被告事業団は、千葉県に、不当に過大な請負代金を前提として委託料を前金払させたもので、右委託料が支払われた時点で千葉県に損害が発生し、その後、本件各工事の完成後、被告事業団が千葉県に完了精算報告書を提出したときに千葉県の損害が確定したのであって、仮に、被告らによる共同不法行為が存在せず、本件各契約が公正な競争に基づいて行われていたならば、本件各工事の契約価格は少なくとも二〇パーセントは低下したはずであり、委託者である千葉県が被告事業団に支払うべき委託料もその分低下したはずである。したがって、千葉県は、被告事業団に対して支払った委託料総額の二〇パーセントの損害を被った。この損害額は少なくとも二億六七八〇万円に達する。 また、千葉県は、本件訴訟により被告らから右損害額の填補を受けた場合には、原告ら訴訟代理人たる弁護士に対し報酬を支払う義務を負担し の損害を被った。この損害額は少なくとも二億六七八〇万円に達する。 また、千葉県は、本件訴訟により被告らから右損害額の填補を受けた場合には、原告ら訴訟代理人たる弁護士に対し報酬を支払う義務を負担している(地方自治法二四二条の二第七項)ところ、右報酬額は右損害額の一〇パーセントが相当である。 よって、千葉県は、被告らに対して金二億九四五八万円の損害賠償請求権を有している。 四争点(本案前の抗弁に関する当事者の主張) 1 監査請求期間の徒過(一) 被告らの主張本件訴えは、地方自治法二四二条二項に規定する監査請求期間内に適法な監査請求をすることなく提起されたものであるから、不適法である。 すなわち、地方自治法二四二条の二第一項は、住民訴訟の提起に当たって適法な監査請求を前置すべき旨定めているところ、同法二四二条二項は、監査請求はその対象となるべき行為(当該行為)のあった日又は終わった日から一年を経過したときはすることができないとしている。そして、財産の管理を怠る事実の監査請求については、右期間制限の適用はないとされるものの、当該監査請求が、当該地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該監査請求については、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として一年間の期間制限に服すべきものと解される(最高裁昭和六二年二月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻一号一二二頁(以下「昭和六二年最判」という。))。けだし、かかる場合に、特定の財務会計上の行為の違法を主張してその是正を求める監査請求をすればすでに監査請求期間を徒過しているとされるのに、右財務 一号一二二頁(以下「昭和六二年最判」という。))。けだし、かかる場合に、特定の財務会計上の行為の違法を主張してその是正を求める監査請求をすればすでに監査請求期間を徒過しているとされるのに、右財務会計上の行為の違法を原因として発生する損害賠償請求権等の不行使をもって怠る事実と構成すれば、監査請求期間の制限を受けないとするのでは、法が住民監査請求について一年間の監査請求期間を設けて法律関係の早期安定を図ろうとしている趣旨を没却することとなるからである。 本件における原告らの請求は、千葉県が被告事業団に委託した平成四年度及び同五年度の下水道電気設備工事につき、被告会社らの談合担当者と被告事業団工務部次長とが、本件談合により、右工事の請負契約締結に係る自由競争を排除し、本件各工事の契約価格を予定価格の限度まで誘導するという共同不法行為の結果、本件委託協定において決定される委託料が高額になり、その支払によって千葉県が損害を被ったとして、千葉県に代位して被告らに損害賠償請求権を行使するというものである。しかしながら、本件においては、本件談合がなされただけでは、未だ千葉県には何らの損害も発生しておらず、千葉県と被告事業団との間の高額な委託料を内容とする本件委託協定の締結及びこれに基づく高額な委託料の支払という財務会計上の行為がなされてはじめて千葉県に損害が生じて損害賠償請求権が発生するのであるから、結局、原告らは、千葉県の損害賠償請求権の不行使の前提として、違法な本件談合に基づく違法な本件委託協定の締結、そしてこれに基づく委託料の支払という、地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為の違法を問題としていることに帰着する。そうすると、本件では、原告らが本件委託協定及びこれに基づく委託料の支払の違法を主張するか否かにかかわらず、違法 の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為の違法を問題としていることに帰着する。そうすると、本件では、原告らが本件委託協定及びこれに基づく委託料の支払の違法を主張するか否かにかかわらず、違法な財務会計上の行為である本件委託協定の締結及びこれに基づく委託料の支払により千葉県が被告らに対して有する損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると構成しうるものであるから、同法二四二条一項所定の財務会計上の行為を違法、無効であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものといえるのである。そして、ここでいう当該行為の違法、無効については、地方財政の適正を確保するという住民訴訟制度の趣旨に鑑み、また財務会計上の行為が無効である場合は勿論、無効とまでいえず違法にとどまる場合であっても、地方公共団体にはそれに基づく損害及び損害賠償請求権が発生することからしても、当該行為が違法かつ無効でなくても、違法であれば足りるものと解される(被告日新電機、同日立製作所及び同三菱電機は、本件委託協定の締結は、単に違法であるばかりでなく公序良俗等に反し無効でもあると主張する。)。したがって、本件は、同法二四二条二項により一年間の監査請求期間の制限を受けるものというべきである。 そして、本件では、千葉県の財務会計上の行為として、本件基本協定及び年度実施協定の締結(契約の締結)と、これに基づく委託料の支払(公金の支出)が存在するところ、特定の財務会計上の行為について監査請求期間を徒過した場合には、これを前提とする後行の財務会計上の行為について別個に監査請求を行いその違法をとりあげることは、後行の財務会計上の行為自体に独自の違法事由が存することを理由とする場合以外には許されないというべきである。けだし とする後行の財務会計上の行為について別個に監査請求を行いその違法をとりあげることは、後行の財務会計上の行為自体に独自の違法事由が存することを理由とする場合以外には許されないというべきである。けだし、後行の財務会計上の行為独自の違法事由が存しない場合にまで、当該行為に対する監査請求を許すとすれば、監査請求期間を徒過したためもはやその違法を論ずる余地がなくなった先行の財務会計上の行為について実質的にその効力を争うことを認めることに繋がり、監査請求期間を制限した法の趣旨(財務会計上の行為に係る法律関係の安定性の確保)が没却されることになるからである。そして、本件委託協定に基づく委託料の支払は本件委託協定による債務負担行為の結果に過ぎず、その違法性は、もっぱらその原因となる本件委託協定の違法性に依拠していることから、監査請求期間の起算日は、本件委託協定の締結日と解される。 本件各工事は、平成四年度及び同五年度の下水道施設の電気設備工事に係るものであり、本件委託協定は、本件基本協定が平成二年七月二五日及び平成四年七月三〇日に締結され、本件工事①ないし③に係る平成四年度実施協定が平成四年六月三〇日及び同年九月一日に締結され、本件工事④に係る平成五年度実施協定が平成五年四月三〇日に締結されている。したがって、本件委託協定の締結から原告らが本件監査請求を行った平成七年一一月二七日までの間に一年が経過したことは明らかである。 また、被告事業団と被告三菱電機との間の本件各契約は平成五年一二月二日までにすべて締結されており、千葉県による被告事業団に対する本件委託料の前金払も大半がそのころまでにはなされていることからすれば、仮にこれらを基準に考えてみたとしても本件監査請求は一年を経過した後になされたものである。 よって、本件監査請求は、同法二四二条二項に 料の前金払も大半がそのころまでにはなされていることからすれば、仮にこれらを基準に考えてみたとしても本件監査請求は一年を経過した後になされたものである。 よって、本件監査請求は、同法二四二条二項に規定する監査請求期間を徒過しているから、本件訴えは不適法である。 (二) 原告らの主張(1) 本件請求は財務会計上の行為の違法、無効に基づくものではなく、昭和六二年最判が妥当する事案ではない。 被告らは、右最判を引用して、本件は、地方公共団体の財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものであるから、右怠る事実に係る請求権の発生事実たる当該財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法二四二条二項の規定が適用されると主張する。 しかしながら、本件は、被告会社らの談合担当者と被告事業団工務部次長とが、本件各工事の請負契約締結に係わる自由競争を排除し、契約価格を予定価格の限度まで誘導するという共同不法行為を行ったことによって千葉県が被った損害につき、千葉県知事が被告らに対する損害賠償請求を怠っていることから、原告らが千葉県に代位して、怠る事実の相手方である被告らに対し、民法七一五条に基づいて損害賠償請求権を行使するというものである。原告らの請求は、被告らの談合という共同不法行為によって発生した実体法上の損害賠償請求権の行使を怠るという事実に係る請求であり、特定の財務会計上の行為の違法を前提とするものではなく、また、財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実と構成するものでもない。談合によってつり上げられた価格に相当する損害の賠償を不法行為として請求する場合には、談合の結果形成された価格が予定価格の範囲内 する実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実と構成するものでもない。談合によってつり上げられた価格に相当する損害の賠償を不法行為として請求する場合には、談合の結果形成された価格が予定価格の範囲内に止まって、地方財政法等の規定に抵触する程度に至らなくても、談合がなければ落札価格は現実のそれよりも低下しえたことが立証されれば、その限度で損害賠償請求権が成立するのである。委託料が不当ないし違法に高いことを理由とする監査請求と、談合によって委託料がつり上げられたことを理由とする監査請求とは、請求の相手方の範囲を異にするばかりでなく、要件事実そのものが重要な部分において全く別物であり、表裏一体の関係とは到底いえず、したがって、後者の監査請求の申立期間が前者と一緒に進行することはありえない。さらに、被告会社らは、地方公共団体による財務会計上の行為の相手方ではないから、本件委託協定の締結という財務会計上の行為の違法性を監査請求することでは、被告会社らに対する損害賠償請求は達成できず、そのためには共同不法行為に基づく損害賠償請求権という財産の管理を怠る行為の相手方とするほかないものである。そして、昭和六二年最判が地方自治法二四二条二項の監査請求期間制限の規定の適用があるとしたのは、地方公共団体の財務会計職員の行為の法的安定性を確保する趣旨にあると解されるところ、原告らは、千葉県の財務会計上の行為の違法、無効を主張するのではなく、被告らに損害賠償を請求するにすぎないのであるから、何ら行政行為の法的安定性を害するものではない。 したがって、本件は、昭和六二年最判と事案を異にし、怠る事実に係る請求については、地方自治法二四二条二項の期間制限の規定の適用はないというべきである。 (2) 本件委託協定及び本件各契約は違法、無効ではない。 本件委託協定は、本 判と事案を異にし、怠る事実に係る請求については、地方自治法二四二条二項の期間制限の規定の適用はないというべきである。 (2) 本件委託協定及び本件各契約は違法、無効ではない。 本件委託協定は、本件基本協定、本件年度実施協定ともに、本件各契約の締結に先立って、本件各契約の成立を前提とせずに締結されているのであるから、本件委託協定の違法性を問題とする余地はない。すなわち、本件委託協定の締結及びこれに基づく委託料の支払以前に談合ルールの確認が行われるが、それは一般的、抽象的なルールの確認にとどまり、個別具体的な電気設備工事についての談合は、委託協定の締結又は委託料の支払後に行われるのである。そして、談合の結果締結された請負契約自体さえ当然には違法、無効とされるものではないのであるから、被告会社らの間で談合ルールの確認があったのみで、具体的な工事についての談合が行われる以前の段階における千葉県と被告事業団との本件委託協定の締結又はこれに基づく委託料の支払という財務会計上の行為が、直ちに違法、無効となるものではない。 また、地方自治法二四二条一項にいう違法な財務会計上の行為における違法とは、地方公共団体とその相手方との間の契約が不法行為として違法性を有すること、すなわち外部関係における違法とは別異のもので、地方公共団体の長若しくは職員の地方公共団体に対する職務義務違反、すなわち内部関係における違法をいうのであって、右職務義務違反がなければ、違法な財務会計上の行為には当たらないというべきであり、本件のように千葉県の長若しくは職員が欺罔されたような場合は、これによって千葉県に損害が発生しても、違法な財務会計上の行為は存在していない。したがって、この場合は直ちに住民の監査請求権は発生しないが、千葉県の長や職員がその損害の発生を知って、なお適正な管 は、これによって千葉県に損害が発生しても、違法な財務会計上の行為は存在していない。したがって、この場合は直ちに住民の監査請求権は発生しないが、千葉県の長や職員がその損害の発生を知って、なお適正な管理をなさず、その損害を放置した場合に、怠る事実として住民の監査請求権が生じるのである。 このように、違法な財務会計上の行為が存在しない以上、地方自治法二四二条二項の監査請求期間の制限を受けることはない。 (三) 被告らの反論(1) 地方自治法二四二条及び二四二条の二の住民監査請求制度及び住民訴訟制度は、個々の財務会計職員の責任を追及するものではなく、地方公共団体の財政の適正を確保し、ひいては住民全体の利益を擁護するための制度であるから、同法二四二条一項の違法な財務会計上の行為にいう違法とは、当該財務会計上の行為を行った職員の責任の有無とは関係なく、当該財務会計上の行為が憲法、法律、条例等の明文規定や信義則、公序良俗、条理等に反する等、当該財務会計上の行為自体によって客観的に判断されるべきであり、当該財務会計上の行為を行う地方公共団体の職員の故意・過失や知・不知といった主観的要素により左右されるものではない。住民監査請求に財務会計職員の帰責性を要すると解したのでは、客観的に正当性を欠く行為であっても、職員の帰責性がないとの一事をもって、これを放置しなければならないという不都合を生じる。また、当該職員に帰責性がなくても住民訴訟の提起が可能であることは、差止請求、不当利得返還請求が住民訴訟の類型にあげられていることからも明らかである。原告らの主張は、違法性の問題と義務違反の問題とを混同したものである。 同様に、監査請求期間の規定の適用は、原告らが明示に当該財務会計上の行為の違法を主張すると否とにかかわらない。けだし、住民監査請求制度及び住民訴訟制 の問題と義務違反の問題とを混同したものである。 同様に、監査請求期間の規定の適用は、原告らが明示に当該財務会計上の行為の違法を主張すると否とにかかわらない。けだし、住民監査請求制度及び住民訴訟制度の趣旨に鑑みれば、監査委員は、監査請求人が主張する事実関係により生ずるあらゆる請求権について、監査請求の範囲、対象としなければならないと解されるうえ、当該財務会計上の行為の違法を明示することを要するとすれば、当該財務会計上の行為を違法として監査請求をなしうるのに、違法を明示しないで財産管理を怠る事実として構成することにより、容易に監査請求期間制限を免れ得ることになり、監査請求期間の規定を設けた法の趣旨が没却されることになるからである。 本件では、千葉県の財務会計職員は、地方自治法(二三二条の四)、地方財政法(四条一項)等の法規に鑑み、適正価格を超える委託料の支払債務を負担する委託協定を締結してはならない法的義務(財務会計法規上の義務)を負うところ、本件委託協定は、これに反して締結されたものとなるのであり、当該職員の本件談合に対する認識、有責性の有無に関係なく、客観的にみて本件委託協定は地方財政の適正を害するものとして違法であって、原告らが財務会計上の行為の違法を明示に主張すると否とにかかわらず、千葉県の財務会計上の行為が違法であり、これに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実と構成しうるものであるから、地方自治法二四二条二項の監査請求期間制限の規定の適用があるというべきである。 なお、原告らは、談合による価格形成が行われても予定価格の範囲内にある限り地方財政法等の規定に抵触することはないというが、談合により不当な価格が形成される以上、それに基づく債務負担や支出行為が適法であるはずはなく、また仮に適法であるな われても予定価格の範囲内にある限り地方財政法等の規定に抵触することはないというが、談合により不当な価格が形成される以上、それに基づく債務負担や支出行為が適法であるはずはなく、また仮に適法であるならばそもそも損害賠償請求権が発生することもないことになる。 (2) また、地方自治法二四二条の二第一項四号の当該財務会計上の行為に係る相手方に対する請求につき被告適格を認められる相手方は、地方公共団体が有する請求権の相手方であれば、当該違法、無効な財務会計上の行為の直接の相手方には限られない(最高裁昭和五〇年五月二七日第三小法廷判決・判例時報七八〇号三六頁)のであるから、本件にあっても原告らは財務会計上の行為の違法等を理由に監査請求をすることによって、被告会社らに対する損害賠償請求権の行使を求めることも可能であった。 2 正当理由の具備(一) 原告らの主張仮に本件で地方自治法二四二条二項の適用があるとしても、原告らが期間内に監査請求できなかったことについては正当な理由がある。 被告会社らが被告事業団発注に係る下水道施設の電気設備工事の入札談合を行い、独占禁止法に違反するとして起訴されたのが平成七年六月一五日であるが、本件各工事については起訴されておらず、また、同年七月一二日、公正取引委員会から被告会社らに対し課徴金納付命令がなされ、これに関する新聞報道が翌日なされたが、本件各工事を含め千葉県が委託した下水道施設の電気設備工事において談合があった等の報道はされず、被告会社らの談合による工事は全国に広まっていて、数も多く、一般市民は調べる方法がなかったため、注意深い市民でも本件各工事について談合があったことを知り得なかった。 そして原告らは、同年八月九日、千葉県知事に対し、千葉県が被告事業団に委託している下水道施設工事に関する文書の公開を請求 ため、注意深い市民でも本件各工事について談合があったことを知り得なかった。 そして原告らは、同年八月九日、千葉県知事に対し、千葉県が被告事業団に委託している下水道施設工事に関する文書の公開を請求し、同年九月八日にその公開を受け、その結果、千葉県が被告事業団に対しいくつかの下水道施設工事の委託をしている事実が判明した。 しかしながら、右文書は量としても膨大であり、内容的にも専門的なためその分析に時間を要し、また、右文書の公開によっても、本件各工事に係る財務会計状況(委託料、請負代金の支払時期、額等)は判明せず、原告らは千葉県立中央図書館等における閲覧や官公署、新聞社等への問い合わせを行う等、住民が採り得る可能な限りの手段を講じ、相当の注意力をもって調査したが、客観的にみて本件談合を知ることはできなかった。 そして、被告会社らとその談合担当者及び被告事業団の元工務部次長に対する独占禁止法違反刑事事件の第一回公判期日である同年一一月一〇日に至って、被告会社らが起訴事実を認めたことから、原告らは初めて本件共同不法行為の存在を知り、監査請求をすることが可能となり、その一七日後の同年一一月二七日に本件監査請求を行ったのである。 したがって、原告らは被告らの共同不法行為を知ってから相当な期間内に本件監査請求を行ったものである。 (二) 被告らの主張(1) 地方自治法二四二条二項但書は、監査請求期間を徒過しても正当な理由がある場合には例外的に監査請求を適法としているが、その趣旨は、違法又は不当な行為が地方公共団体の住民に隠れて秘密裡になされたため、監査請求期間内に監査請求を行うことができないまま一年を経過し、その後に違法又は不当な行為が明らかになった場合等に監査請求の機会を全く与えないことは相当でないため、例外的に監査請求を行う余地を認めたも 請求期間内に監査請求を行うことができないまま一年を経過し、その後に違法又は不当な行為が明らかになった場合等に監査請求の機会を全く与えないことは相当でないため、例外的に監査請求を行う余地を認めたものである。したがって、右にいう正当な理由とは、監査請求をすることについて客観的障害がある場合、すなわち、当該行為が秘密裡に行われた場合や天災、地変等による交通杜絶により請求期間を徒過したような場合に限られ、その有無は、住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て違法な財務会計上の行為を知ることができたかどうか、また違法な財務会計上の行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和六三年四月二二日第二小法廷判決・判例時報一二八〇号六三頁)。 本件では、すでに平成六年九月二日以降、被告事業団が発注した各地方公共団体の下水道施設の電気設備工事について、被告事業団の指導の下にシェアを割り振っての談合が行われていたとの報道が多数なされ、また、平成七年六月一五日には、被告会社らが独占禁止法違反で起訴され、同年七月一三日には、公正取引委員会から被告会社らに独占禁止法違反に基づく課徴金納付命令が発せられたとの報道がされたのであるから、原告らとしては平成六年九月ころ、遅くとも右課徴金納付命令についての報道がなされた平成七年七月一三日ころには、本件談合という不法行為及び本件各工事に係る本件委託協定とこれに基づく委託料の支払が違法であるとの合理的疑いを持ち監査請求ができたはずである。 (2) 原告らは、平成七年八月九日に公文書公開請求をし、同年九月八日に公開を受けたとするが、右談合の報道がすでに平成六年九月二日以降行われていたことからすれば、原告らは千葉県議会議事録の閲覧等により平成七年八月九日 平成七年八月九日に公文書公開請求をし、同年九月八日に公開を受けたとするが、右談合の報道がすでに平成六年九月二日以降行われていたことからすれば、原告らは千葉県議会議事録の閲覧等により平成七年八月九日より相当以前に公文書公開請求を行い得たはずである。 また、地方自治法二四二条一項は、住民監査請求の添付書類に「証する書面」を挙げているが、これは事実に基づかない憶測や主観だけで監査請求する弊害を防止する趣旨であるから、監査請求事実の存在を一応推認させるに足りる書面であればよく、監査請求人は、請求後も随時証拠の提出や意見陳述の機会が与えられているから、監査請求前にすべての証拠を収集する必要もない。さらに、監査請求に当たっては、監査請求の対象を他の事項から区別しうる程度に個別的、具体的に特定すれば足りるのであって、原告らは、平成七年八月九日の千葉県に対する公文書公開請求に当たって、本件各工事名を特定していたのであり、本件各工事の請負代金の支払額や支払時期等まで特定せずとも、十分に監査請求可能な程度に監査請求の対象を特定していたのである。そして、原告らが公開を受けた文書の内容及び数量等に照らしても、その検討にさほどの時間を要するものではない。したがって、前記談合の報道がされた平成六年九月から一年以上、課徴金納付命令の報道がされてから四か月以上経過し、原告らが文書の公開を受けた時点からでも約三か月を経過した平成七年一一月二七日になって行われた原告らの監査請求は、相当な期間内になされたものとはいえず、監査請求期間の徒過について正当理由は認められない。 3 違法な怠る事実の不存在(一) 被告らの主張地方自治法二四二条の二第一項四号の損害賠償代位請求の提起には、地方公共団体が右損害賠償請求権を行使しないことが違法であることが必要である。 地方公共団体 な怠る事実の不存在(一) 被告らの主張地方自治法二四二条の二第一項四号の損害賠償代位請求の提起には、地方公共団体が右損害賠償請求権を行使しないことが違法であることが必要である。 地方公共団体は、損害賠償請求権を取得している可能性がある場合であっても、右損害賠償請求権の行使を法的に義務づけられているものではなく、請求認容の蓋然性その他の諸事情を総合考慮して、これを行使するか否かを決する裁量権を有するのであって、右損害賠償請求権の不行使が右裁量の範囲を超え違法となる場合にはじめて、代位請求が認められるというべきである。 本件各工事については、随意契約の方式により行われ、談合の前提とされている競争入札自体が行われていないため、公正取引委員会は告発や課徴金納付命令を行っておらず、また、本件各工事の請負価格は適正妥当で、委託料も客観的な基準に基づいて千葉県と被告事業団との合意により適正に決定されたものであった。千葉県が、被告らの談合の存否、談合と本件各工事の関連性の有無、損害発生の有無、額等の困難な判断事項を含む本件の事案について、損害賠償請求権を行使しなかったことは適切な裁量権の行使であって裁量権の濫用逸脱は認められない。したがって、本件において、千葉県が損害賠償請求権を行使しなかったことに違法性はないから、本件訴えは不適法である。 (二) 原告らの主張地方自治法二四二条一項、二四二条の二の規定からすれば、住民が地方公共団体に代位して損害賠償請求を行うための手続上の要件としては、住民監査請求が前置されていること、住民監査請求後同法二四二条の二第二項の期間内に訴訟が提起されたことが充足されれば足り、損害賠償請求権の不行使が裁量の範囲を超えあるいは濫用として違法であるか否かは無関係である。そして、客観的に損害賠償請求権が存在する場合には 第二項の期間内に訴訟が提起されたことが充足されれば足り、損害賠償請求権の不行使が裁量の範囲を超えあるいは濫用として違法であるか否かは無関係である。そして、客観的に損害賠償請求権が存在する場合には、地方公共団体の長にはこれを行使するか否かの裁量権はなく、これを行使しないことは違法である。 4 監査請求の同一性(一) 被告らの主張原告らの本件監査請求の対象とする共同不法行為の行為者は、被告会社らと被告事業団であるのに対し、本件訴えの対象とする共同不法行為の行為者は、被告会社らの談合担当者と被告事業団の工務部次長である。したがって、本件監査請求の対象とした財務会計上の怠る事実と本件訴えの対象とする財務会計上の怠る事実との間には同一性がないので、本件訴えは適法な監査請求を経ていないというべきである。 (二) 原告らの反論住民監査請求における請求の特定の程度は、対象事項が他の事項から区別して特定認識しうる程度であれば足りる。本件では、被告らに対し直接不法行為責任を追及するか使用者責任を追及するかは法律構成の問題に過ぎないのであるから、監査請求の特定はできており、適法な監査請求を経ている。 第三争点に対する当裁判所の判断一監査請求期間の徒過について1(一) 一般に、財産管理を怠る事実にかかる住民監査請求については、地方自治法二四二条二項の監査請求期間の規定の適用はないとされるが、違法、不当に財産の管理を怠る事実があるとして同条一項の規定による住民監査請求がなされた場合であっても、右監査請求が、当該地方公共団体の長その他の財務会計職員の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該 計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として、同条二項の規定を適用すべきである(昭和六二年最判)。 これは、当該財務会計上の行為自体の違法又は不当を理由とする監査請求が、すでに当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したことにより不適法とされるにもかかわらず、右財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって違法、不当に財産管理を怠る事実として監査請求をすれば、監査請求期間の制限を受けないとしたのでは、地方自治法二四二条二項が財務会計上の行為に係る法律関係の安定を図って監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されることを理由とするものであるが、そうであるならば、右請求権の不行使を怠る事実とする監査請求において、具体的に財務会計上の行為の違法、無効を主張していなくとも、客観的に当該請求権が財務会計上の行為の違法、無効に基づいて発生するものである限りは、同様に解すべきものということができる。 (二) ところで、本件において原告らは、被告会社らの本件談合及びこれに対する被告事業団の加功が共同不法行為に当たり、これがなければ本件各工事の請負代金はもっと低額であったはずであり、千葉県が被告事業団に支払うべき委託料もそれに応じて低下したはずであるとして、千葉県は委託料のうち右過大部分の損害を被ったと主張するのであるが、その主張によっても、本件談合自体は千葉県とは何ら関係なく被告会社らの間で行われたものであり、またこれに被告事業団が加功したからといって、それらの行為から直ちに千葉県に損害が発生し、千葉県が あるが、その主張によっても、本件談合自体は千葉県とは何ら関係なく被告会社らの間で行われたものであり、またこれに被告事業団が加功したからといって、それらの行為から直ちに千葉県に損害が発生し、千葉県が共同不法行為による損害賠償請求権を取得するわけではない。本件談合に基づく受注調整により、被告三菱電機が受注予定業者となり、被告事業団からは予定価格の教示を受けるなどして、不当な工事価格の形成のもとに本件各工事を受注することが予定され、これを前提として被告事業団が千葉県との間に本件委託協定を締結して、千葉県に委託料の支払義務が生じ、これにより千葉県は、本件談合に基づく受注調整等がなかった場合に負担したであろう金額を超えた不当に過大な委託料の債務を負担して、千葉県に損害が発生することとなるのである。そして、この被告事業団と千葉県との間の本件委託協定の締結、さらにはこれに基づく委託料の支払は千葉県の財務会計上の行為にほかならない。 また、本件基本協定及び年度実施協定は、ともに本件各契約に先立って締結されているものではあるが、証拠(甲四八の1ないし5、四九の1ないし7、五〇の1ないし7、五一の1ないし9、五二の1ないし4、五三の1ないし3、五四ないし六四、六七、弁論の全趣旨)によれば、平成二年度以降、被告会社らで構成する九社会においては、毎年、被告事業団が当該年度において発注する電気設備工事に関し、新規機場に係る工事の受注調整や継続工事(随意契約を含む)についての一機場一社の原則の確認(既設設備の工事を行った業者が、当該施設に係る継続工事を受注するというもの)等を内容とする談合を行い、これに被告事業団が、その発注する電気設備工事のリスト及び予定受注価格等を教示するなどして加功していたこと、被告三菱電機は江戸川第二終末処理場電気設備工事その一を被告事 の)等を内容とする談合を行い、これに被告事業団が、その発注する電気設備工事のリスト及び予定受注価格等を教示するなどして加功していたこと、被告三菱電機は江戸川第二終末処理場電気設備工事その一を被告事業団から受注しており、その後の継続工事についても引き続き受注していて、本件各工事(江戸川第二終末処理場電気設備工事その一六ないし一九)についてもまた、被告三菱電機が継続工事として受注することが右談合では当然に予定されていたものであることがそれぞれ認められるのであり、これに前述したところを合わせて考えれば、本件各契約はいうに及ばず、本件基本協定及び年度実施協定もまた、被告会社らの談合とこれに対する被告事業団の加功による影響を受けてなされたものといえるのである。さらに前述したとおり、本件基本協定において建設工事の予定概算事業費が合意され、本件年度実施協定において、各年度における千葉県の費用負担額が確定的に定まるものであるところ、被告事業団としては、被告会社らの談合とこれに対する被告事業団の加功を前提としてこれらの費用額の決定を含む本件委託協定を千葉県との間で締結していたものであり、したがって本件に係る下水道施設建設工事の完成後、建設工事の施行に要する費用について精算を行う際、本件談合によって水増しされたと考えられる部分の委託料を差額として千葉県に還付することなどは全く予定しておらず、被告事業団は、千葉県に損害を与えることを認識しながら、本件談合により不当に形成される工事価格を前提に本件委託協定を締結していたものということができる。この点からも、千葉県と被告事業団との間の本件委託協定が本件談合の影響の下に締結されたことは明らかである。 そして、独占禁止法に違反する談合が違法であることはいうまでもなく、原告らの主張によれば、これによって千葉県は不当 告事業団との間の本件委託協定が本件談合の影響の下に締結されたことは明らかである。 そして、独占禁止法に違反する談合が違法であることはいうまでもなく、原告らの主張によれば、これによって千葉県は不当に高額の委託料を負担したというのであるから(この債務負担が本件委託協定によってなされていること、具体的な負担額は本件年度実施協定において確定的に定まることは前述した。)、地方自治法が、地方公共団体の事務処理は最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないとし(二条一三項)、地方財政法が、地方公共団体の経費はその目的を達成するために必要かつ最小の限度を超えてこれを支出してはならないとしていること(四条)に照らしても、本件基本協定及び年度実施協定は客観的に違法なものと認められる。なお、原告らは、談合により形成される価格は予定価格の範囲内に止まっているのであるから違法ではないとも主張するが、談合の結果不当に高額な委託料を負担したという関係のある以上は、前記地方財政法等の規定に照らして右委託料の負担は違法と解すべきである。 そうすると、本件における原告らの請求は、千葉県が被告会社らの本件談合及びこれに対する被告事業団の加功という共同不法行為によって千葉県に生じた損害の賠償を求めると主張するものの、その実質は、千葉県と被告事業団との間の本件委託協定の締結という財務会計上の行為が違法であることに基づき発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実に係るものであるから、地方自治法二四二条二項の監査請求期間制限の規定が適用されるというべきである。 (三) なお、昭和六二年最判は、当該財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使というが、地方財政の適正を図るための是正等の措置を講じる権限を地方公共団体の住民の権能として付与 和六二年最判は、当該財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使というが、地方財政の適正を図るための是正等の措置を講じる権限を地方公共団体の住民の権能として付与するという住民訴訟制度の趣旨や、財務会計上の行為が違法に止まる場合であっても各種の実体法上の請求権が発生する場合のあることからすれば、これは当該財務会計上の行為の違法若しくは無効をいうものと解するのが相当である。 したがって、本件委託協定が右に述べたとおり違法と評価される以上、これが無効とまではいえないとしても前項の判断を妨げるものではない。 2(一) 以上に対し、原告らは、地方自治法二四二条一項の違法な財務会計上の行為にいう違法とは、財務会計職員の地方公共団体に対する職務義務違反を内容とする内部関係の違法をいうものであり、本件のように千葉県の財務会計職員が被告事業団に欺罔されて本件委託協定を締結しているような場合には、右職務義務違反はなく、従って本件委託協定は違法とはいえず、また、本件においては、原告らは、千葉県の財務会計上の行為の違法を問題として主張してはいないから、本件と昭和六二年最判とは事案を異にすると主張する。 しかしながら、原告らの本件請求は、前記のとおり財務会計上の行為に係るものと目すべきものであり、そして、住民監査請求制度及び住民訴訟制度が、個々の財務会計職員の責任を追及するものではなく、地方公共団体の財政の適正を確保し、ひいては住民全体の利益を擁護するための制度であることからすれば、地方自治法二四二条一項にいう財務会計上の行為の違法は財務会計上の行為自体によって客観的に判断すべきであって、当該財務会計上の行為を行う地方公共団体の職員の故意・過失といった主観的責任要素の有無により左右されるものではないと解すべきである。同様に は財務会計上の行為自体によって客観的に判断すべきであって、当該財務会計上の行為を行う地方公共団体の職員の故意・過失といった主観的責任要素の有無により左右されるものではないと解すべきである。同様に、監査請求の期間制限の規定の適用は、原告らが明示に当該財務会計上の行為の違法を主張すると否とにかかわらないと解される。なぜなら、右住民監査請求制度の趣旨に鑑みれば、監査請求にあっては、監査委員は、監査請求人によって特定された財務会計上の行為又は怠る事実を対象に、明示された措置内容に拘束されることなく、必要と考えられる措置を講ずべきことを勧告することを要するのであって、その意味で当該監査請求が特定の財務会計上の行為の違法を明示的に主張していなくても、客観的に特定の財務会計上の違法を前提とするものと認められる以上、これを監査請求の範囲、対象としなければならないと解されるうえ、当該財務会計上の行為の違法を明示することを要するとすれば、当該財務会計上の行為を違法として監査請求をなしうるのに、違法を明示しないで財産管理を怠る事実として構成することにより、容易に監査請求期間制限を免れ得ることになり、監査請求期間の規定を設けた法の趣旨を潜脱することになるからである。したがって、この点に関する原告らの主張は採用し得ない。 (二) さらに、原告らは、被告会社らは、千葉県による本件委託協定の締結という財務会計上の行為の相手方ではないから、本件委託協定の締結という財務会計上の行為の違法を監査請求することでは被告会社らに対する損害賠償請求を達成できず、被告らの共同不法行為に基づく損害賠償請求権という財産の管理を怠る行為の相手方とするほかないとも主張するが、地方自治法二四二条の二第一項四号の当該行為若しくは怠る事実に係る相手方とは、当該財務会計上の行為の直接の相手方で づく損害賠償請求権という財産の管理を怠る行為の相手方とするほかないとも主張するが、地方自治法二四二条の二第一項四号の当該行為若しくは怠る事実に係る相手方とは、当該財務会計上の行為の直接の相手方であるとそれ以外の第三者であるとを問わず、当該財務会計上の行為に関し、地方公共団体との間で法律関係の存否が問題となっている者、あるいは地方公共団体が有する実体法上の請求権(損害賠償請求権、不当利得返還請求権等)についてこれを履行する義務がある者など、地方公共団体に対して当該財務会計上の行為に係る義務を負う者を広く指すものと解されるのであって、本件では、違法な財務会計上の行為である本件委託協定の直接の相手方である被告事業団のみならず、被告会社らもまた相手方となりうるものであり、この点の原告らの主張も理由がない。 3 そこで、監査請求期間の起算点について検討するに、本件では、千葉県の財務会計上の行為として、本件基本協定及び年度実施協定の締結(契約の締結)と、これに基づく委託料の支払(公金の支出)が存在するところ、財務会計上の行為の法的安定性の確保という法の趣旨に鑑みれば、特定の財務会計上の行為について監査請求期間を徒過した場合には、これを前提とする後行の財務会計上の行為について別個に監査請求を行いその違法をとりあげることは、後行の財務会計上の行為自体に独自の違法事由が存することを理由とする場合以外には許されないというべきである。そして、本件委託協定に基づく委託料の支払の違法性は、その原因となる本件委託協定の違法性と同一であり、原告らも右委託料の支払の独自の違法事由について何ら主張していない。なお、原告らは、右委託料の支払は前金払となっており、千葉県から被告事業団に委託料の支払がなされた時点で損害が発生するものの、未だその損害は確定してはおらず、下水道 事由について何ら主張していない。なお、原告らは、右委託料の支払は前金払となっており、千葉県から被告事業団に委託料の支払がなされた時点で損害が発生するものの、未だその損害は確定してはおらず、下水道施設建設工事完成後に被告事業団による精算がなされないことにより千葉県の損害が確定する旨主張するが、原告らは支出行為独自の違法性を主張せず、かつ、支出負担行為としての本件委託協定の無効を主張しない以上、前述のとおり、被告事業団が精算を行う際、本件談合によって水増しされたと考えられる部分の委託料を差額として千葉県に還付することなどは全く予定していないことからして、本件における千葉県の損害は、千葉県が被告会社らの談合及びこれに対する被告事業団の加功の影響の下、被告事業団との間で締結した不当に過大な委託料の債務負担を内容とする本件委託協定によって生じたものということができるのである。 したがって、本件においては、住民は、本件委託協定が締結された時点からその違法を主張して監査請求をなしえたものであり、監査請求期間の起算点は、委託料の支払の日ではなく、本件委託協定の締結の日であると解されるところ、本件委託協定のうち、本件基本協定において定められる千葉県の費用負担額は予定概算事業費にすぎず、その後、本件基本協定に基づく千葉県と被告事業団の間の本件年度実施協定の締結により、当該年度における千葉県の費用負担額が確定的に定まり、右確定債務負担額を千葉県が被告事業団に前金払する義務を負うことになることからすれば、本件各工事に対応する年度実施協定の締結日をもって監査請求期間の起算点というべきである。 そして、本件では、本件工事①に係る平成四年度実施協定その1が平成四年六月三〇日に、本件工事②及び③に係る平成四年度実施協定その2が同年九月一日に、本件工事④に係る平 の起算点というべきである。 そして、本件では、本件工事①に係る平成四年度実施協定その1が平成四年六月三〇日に、本件工事②及び③に係る平成四年度実施協定その2が同年九月一日に、本件工事④に係る平成五年度実施協定の一部を変更する協定が平成五年一〇月一四日に(同年四月三〇日に締結された平成五年度実施協定では電気工事は工事の内容・範囲に含まれていない。)それぞれ締結され、平成四年度実施協定その2については、平成四年一〇月一五日、同年一二月一六日の二回にわたりその一部を変更する協定が締結され、同年一二月一六日の二回目の変更協定において電気工事の内容・範囲に汚泥処理運転操作設備が新たに加えられていることは前述したとおりであり、本件監査請求がなされた平成七年一一月二七日には、すでに、平成四年度実施協定その1が締結された平成四年六月三〇日、同その2の変更協定が締結された同年一二月一六日、平成五年度実施協定の変更協定が締結された平成五年一〇月一四日のいずれからも、地方自治法二四二条二項に規定する一年の監査請求期間を経過していたこととなる。 二正当な理由の有無について 1 地方自治法二四二条二項が、住民において当該行為があったことを知っていたか否かを問わず、一年という短期間で監査請求ができなくなると定めた趣旨は、早期に財務会計上の行為に係る行政上の法律関係の安定を図ろうとしたものと解される。そして、それにもかかわらず、同項但書が、右期間を過ぎても正当な理由がある場合には監査請求を適法として例外を認めているのは、違法又は不当な財務会計上の行為が地方公共団体の住民に隠れて秘密裡になされ、そのため監査請求を行うことができないまま一年を経過し、その後になってはじめて違法又は不当な財務会計上の行為の存在が明らかになったような場合にまで監査請求の機会を与えないの 民に隠れて秘密裡になされ、そのため監査請求を行うことができないまま一年を経過し、その後になってはじめて違法又は不当な財務会計上の行為の存在が明らかになったような場合にまで監査請求の機会を与えないのは相当でないことによるものと考えられる。 そうすると、同項但書にいう「正当な理由」も右趣旨に則って解すべきであり、当該財務会計上の行為を違法、不当ならしめる事実が秘密裡になされた場合であって、かつ、特段の事情のない限り、地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(前掲最高裁昭和六三年四月二二日第二小法廷判決)。 2(一) 本件では、千葉県の本件委託協定の締結及びこれに基づく委託料の支払という財務会計上の行為自体は秘密裡に行われたものではないが、これを違法ならしめる被告会社らによる談合とこれに対する被告事業団の加功は、その性質上、秘密裡に行われたものということができる。 (二) そして、証拠(甲三六、三七、四〇、四一、四三、四七の1、2、六五の1、2、六七、乙一ないし五四、戊二の1、2、三、弁論の全趣旨)によれば、本件基本協定の締結については、平成二年六月二七日と平成四年六月一二日に千葉県知事から千葉県議会に議案として提出され、平成二年六月及び平成四年七月の各定例県議会において可決されており、千葉県議会時報にもその旨記載されていること、被告会社らによる談合については、すでに平成六年九月二日以降、被告事業団が発注した各地方公共団体における下水道施設の電気設備工事に関して広く談合が行われていたとの報道が多数なされており、このうち新聞では、すでに同年一〇月ころまでには、被告会社らに 二日以降、被告事業団が発注した各地方公共団体における下水道施設の電気設備工事に関して広く談合が行われていたとの報道が多数なされており、このうち新聞では、すでに同年一〇月ころまでには、被告会社らによる談合の仕組みについて、毎年度初めに被告事業団が一年分の委託工事の一覧表を被告会社らで構成する九社会の幹事に交付して予算額を教え、これを受けて被告会社ら間で取り決められた各社のシェアに応じて具体的に受注する工事の配分が行われ、その際、継続工事については最初に受注した業者が続けて受注し、それによる受注額が他より少ない業者には新規工事受注の優先権を与えていた旨極めて詳細に明らかにされるとともに、このような談合が長期かつ広範に行われていたことが、また平成七年三月七日には、同月六日、公正取引委員会が、被告事業団による平成五年度の委託工事約二五〇件、金額にして四六〇億円のうちの、八一件、一四六億円を告発対象として、独占禁止法三条(不当な取引制限の禁止)違反の疑いで被告会社らを告発したことが、同年四月には、被告会社らの幹部が東京地方検察庁での事情聴取に対して談合の事実を概ね認める供述を始めたことが、そして同年六月一六日には、同月一五日に被告会社らの談合担当者と被告事業団の元工務部次長が、平成五年度の委託工事のうち新規機場に係る四九件に関して独占禁止法の不当な取引制限違反の罪で起訴されたこと、さらに同年七月一三日には、同月一二日に公正取引委員会から被告会社らに対し、独占禁止法に基づく合計一〇億三〇〇〇万円の課徴金納付命令が発せられたことがそれぞれ報道されたこと、原告上村勉は、同年八月九日、千葉県知事に対し、千葉県から被告事業団への工事委託に関する基本協定、年度実施協定、年度別終了精算報告書及び完了精算報告書、電気設備工事に関する設計書、引継書、完成調書等 原告上村勉は、同年八月九日、千葉県知事に対し、千葉県から被告事業団への工事委託に関する基本協定、年度実施協定、年度別終了精算報告書及び完了精算報告書、電気設備工事に関する設計書、引継書、完成調書等の公開を請求し、その結果、同年九月八日、千葉県から、被告事業団との間の基本協定、年度実施協定及び江戸川第二終末処理場の電気設備工事その10ないし20に関する工事請負契約締結報告書等、設計書を除く各文書が公開されたこと、その後、同年九月三〇日、全国市民オンブズマン連絡会議は、下水道談合事件に関して、同年一一月二七日に一斉に住民監査請求をする方針を決定したことがそれぞれ認められ、本件監査請求が同日なされたことは前述したとおりである。 以上の事実によれば、住民が相当の注意力をもって調査したとすれば、前記各報道のなされた相当に早い時期において、遅くとも独占禁止法違反による起訴や被告会社らに対する課徴金納付命令に係る報道のあったころまでには、千葉県と被告事業団の間における本件年度実施協定を含む本件委託協定の存在を知り、かつ、これが被告会社らによる談合やこれに対する被告事業団の加功により違法ではないかとの合理的な疑いを抱くことができたものというべきである。 原告らは、本件各工事は公正取引委員会による課徴金納付命令の対象となった工事には含まれておらず、原告上村勉による公文書公開請求の結果、平成七年九月八日になって千葉県が被告事業団に下水道施設工事の委託をしていることが判明し、その後公開された資料の分析や本件各工事に係る財務会計状況の調査などを行ったが、被告らが独占禁止法違反の刑事事件で起訴事実を認めた同年一一月一〇日までに本件各工事に係る談合の事実は知り得なかったと主張するのであるが、前記認定した事実に照らせば、県議会議事録の閲覧や公文書公開請求等による 占禁止法違反の刑事事件で起訴事実を認めた同年一一月一〇日までに本件各工事に係る談合の事実は知り得なかったと主張するのであるが、前記認定した事実に照らせば、県議会議事録の閲覧や公文書公開請求等による調査はもっと以前から十分になし得たものと考えられ、また監査請求に際しては、その対象を他の事項から区別しうる程度に個別、具体的に特定すれば足り、添付すべき事実証明書も違法又は不当とする行為又は事実の主張について疎明しうる書面であれば良く、新聞記事で足りるとされる場合もあると解されるうえ、現に原告らによる本件監査請求においても、監査請求の趣旨には本件各工事名の特定と請負代金の合計額の記載がなされている程度であり、また事実証明書としても、前記新聞記事のほか、工事請負契約締結書及び年度別終了精算報告書(いずれも平成七年九月八日に千葉県から公開された文書である。)が添付されているにとどまるのであって、本件監査請求の内容はいずれも平成七年九月八日ころまでに原告らがすでに知っていたであろう事実や入手していた資料に基づいてなされていること(甲六六の1ないし8)からすれば、独占禁止法違反による起訴の報道から五か月以上、課徴金納付命令の報道から四か月以上を経過してなされた本件監査請求は相当な期間内になされたものということはできない。 (三) また、原告らは、前記刑事事件において被告会社らが談合の事実を認めたことによってはじめて不法行為の存在を知り、本件監査請求が可能となったのであり、それ以前の段階で、相当な証拠もないまま監査請求を行うことは名誉毀損のそしりを受けるおそれもあったと主張するが、住民監査請求は財務会計上の行為の不当を理由にしても行うことができ、また、すでに前述のような内容の報道がなされていることについて監査請求をなしたからといって名誉毀損が成立すると もあったと主張するが、住民監査請求は財務会計上の行為の不当を理由にしても行うことができ、また、すでに前述のような内容の報道がなされていることについて監査請求をなしたからといって名誉毀損が成立するとは思われず、さらに必ずしも監査請求時にすべての証拠を収集して提出する必要はないことからしても、監査請求期間徒過についての正当な理由となるものとはいえない。 3 よって、本件では、原告らの本件監査請求が監査請求期間を徒過したことにつき、正当な理由があったとは認められない。 したがって、本件訴えは、いずれも適法な監査請求を経たものとは認められない。 三よって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの本件各訴えは、いずれも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担については行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六五条を適用して、平成一〇年一二月七日に終結した口頭弁論に基づき、主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第二部裁判長裁判官西島幸夫裁判官岩坪朗彦及び裁判官室橋雅仁は、いずれも転補のため署名捺印することができない。 裁判長裁判官西島幸夫
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