平成7(行ウ)304 相続税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成10年5月29日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文41,935 文字)

主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一請求被告が原告に対し、平成六年一月三一日付けでした相続税の更正処分(ただし、同年六月二三日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、課税価格二億八七四六万四〇三〇円、納付すべき税額一七一二万四九〇〇円を超える部分を取り消す。 第二事案の概要本件は、原告の夫であるA(以下「本件被相続人」という。)が平成四年九月一日に死亡したことにより開始した相続(以下「本件相続」という。)に係る原告の相続税に関して、原告が別表1記載のとおり申告、修正申告をした後、本件相続により取得した取引相場のない株式(上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式をいう。)である中外石油株式会社(以下「中外石油」という。)の株式八〇〇〇株(以下「本件株式」という。)の価格をその後の右株式の平成五年四月二日の売却における売買代金相当額として相続財産の価格を計算し直して更正の請求をしたところ、被告が右株式の価格を財産評価基本通達(昭和三九年四月二五日付け直資五六・直審(資)一七・国税庁長官通達(平成五年六月二三日付け課評二ー七・課資二ー一五六による改正前のもの)。以下「評価通達」という。)一八九ー三に定める純資産価額方式によって評価して相続財産の価格を計算した上、別表1記載のとおり、右相続税につき更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたので、原告が右更正処分(異議決定により一部取り消された後のもの)は本件株式の価格ひいては相続財産の価格を過大に認定したものであり違法であると主張し、右更正処分の取消しを求めているものである。 一関係法令等の定め 1 相続税法(以下「法」という。)第三章で特別の定めのあるものを除く外、相続により取得した財産の価額は のであり違法であると主張し、右更正処分の取消しを求めているものである。 一関係法令等の定め 1 相続税法(以下「法」という。)第三章で特別の定めのあるものを除く外、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により評価される(法二二条)ところ、株式の評価に関し同法第三章には特別の定めはない。 2 評価通達における評価方法課税実務上、相続財産の評価の一般的な基準として評価通達が定められている。 取引相場のない株式の評価に関する評価通達の定めは、以下のとおりである(乙一)。 (一) 取引相場のない株式の評価の原則(評価通達一七八)(1) 取引相場のない株式は、同族株主以外の株主等が取得した株式(評価通達一八八)又は特定の発行会社の株式(評価通達一八九)に当たる場合を除き、原則として、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)を評価通達一七八に定める表の区分に応じて大会社、中会社及び小会社に区分した上、評価通達一七九に定める次の評価方式によって評価するものとされている。 ア大会社の株式類似業種比準価額によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、一株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価することができる。 イ中会社の株式次の算式によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、算式中の類似業種比準価額を一株当たりの純資産評価額(相続税評価額によって計算した金額)によって計算することができる。 類似業種比準価額×L+一株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額×(一ーL)右の算式中の「L」は、評価会社の評価通達一七八に定める純資産総額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数又は直前期末以前一年間における取引金額に応じて、それぞれ評価通達一七九(2 (一ーL)右の算式中の「L」は、評価会社の評価通達一七八に定める純資産総額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数又は直前期末以前一年間における取引金額に応じて、それぞれ評価通達一七九(2)に定める割合のうちいずれか大きい割合とする。 ウ小会社の株式一株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、Lを〇・五〇として右イの方法により評価することができる。 要するに、評価通達は、原則として、大会社に該当する会社の株式は、類似業種比準方式により、小会社に該当する会社の株式は、純資産価額方式により、中会社に該当する会社の株式は、類似業種比準方式と純資産価額方式の二つの方法を併用して評価するものとしているものである。 (2) 評価通達一七八に定める表の区分によれば、卸売業以外の業種における大会社とは、課税時期における資本金が一億円以上の会社又は直前期末における総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)が一〇億円以上か、直前期末以前一年間における取引金額が二〇億円以上のいずれかに該当する会社をいうものとされている。 (3) 類似業種比準価額は、評価通達一八〇に定める算式(類似比準方式)によって計算した金額とする旨定められている。この類似業種比準方式は、評価会社の配当、利益及び純資産(帳簿価額によって計算した金額)の各要素を評価会社と事業内容が類似する上場会社のそれらの平均値と比較の上、上場会社の株価に比準して評価会社の一株当たりの価額を算定する方法である。 一株当たりの純資産価額は、評価通達一八五に定める計算方法(純資産価額方式)により計算した金額とする旨定められている。この純資産価額方式とは、評価会社の課税時期現在における資産、負債を評価通達に基づいて評価替えし、その評価替 価通達一八五に定める計算方法(純資産価額方式)により計算した金額とする旨定められている。この純資産価額方式とは、評価会社の課税時期現在における資産、負債を評価通達に基づいて評価替えし、その評価替えした金額と帳簿価額との評価差額から評価通達一八六ー二により計算した評価差額に対する法人税額等相当額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して評価会社の一株当たりの価額を算定する方法である。 (二) 同族株主以外の株主等が取得した株式の評価(評価通達一八八)(1) 「同族株主以外の株主等が取得した株式」(評価通達一七八ただし書)とは、次のいずれかに該当する株式をいう(評価通達一八八)。 ア同族株主のいる会社の株主のうち、同族株主以外の株主の取得した株式右の場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の一人及びその同族関係者(法人税法施行令四条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する株式の合計数が、その会社の発行済株式数の三〇パーセント(ただし、その評価会社の株主のうち、株主の一人及びその同族関係者の有する株式の合計数が最も多いグループの有する株式の合計数が、その会社の発行済株式数の五〇パーセント以上である会社にあっては、五〇パーセント。)以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう(評価通達一八八(1))。 イ中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の取得後の株式数がその会社の発行済株式数の五パーセント未満である者(ただし、課税時期において評価会社の役員である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となる者を除く。)の取得した株式右の場合における「中心的な同族株主」とは、課税時期において同族株主の一人並びにその株主の配 いて評価会社の役員である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となる者を除く。)の取得した株式右の場合における「中心的な同族株主」とは、課税時期において同族株主の一人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び一親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち、これらの者が有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の二五パーセント以上である会社を含む。)の有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の二五パーセント以上である場合におけるその株主をいう(評価通達一八八(2))。 ウ同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の一人及びその同族関係者の有する株式の合計数が、その会社の発行済株式数の一五パーセント未満である場合におけるその株主の取得した株式(評価通達一八八(3))エ中心的な株主がおり、かつ、同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の一人及びその同族関係者の有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の一五パーセント以上である場合におけるその株主で、その者の取得後の株式数がその会社の発行済株式数の五パーセント未満である者(ただし、課税時期において評価会社の役員である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となる者を除く。)の取得した株式右の場合における「中心的な株主」とは、課税時期において株主の一人及びその同族関係者の有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の一五パーセント以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独でその会社の発行済株式数の一〇パーセント以上の株式を有している株主がいる場合におけるその株主をいう(評価通達一八八(4))。 (2) 同族株主以外の株主等が取得した株式の価額は、その株式に係る年配当金額(評価通達一八三に定める一株当たりの配当金額をいう。た る株主がいる場合におけるその株主をいう(評価通達一八八(4))。 (2) 同族株主以外の株主等が取得した株式の価額は、その株式に係る年配当金額(評価通達一八三に定める一株当たりの配当金額をいう。ただし、その金額が二円五〇銭未満のもの及び無配のものにあっては二円五〇銭とする。)を基として、評価通達一八八ー二に定める算式(配当還元方式)により計算した金額によって評価する。ただし、その金額がその株式を評価通達一七九の定めにより評価するものとして計算した金額を超える場合には、同一七九の定めにより計算した金額によって評価する。 配当還元方式とは、株価構成要素のうち配当金だけに着目して、配当金を収益還元することによりその元本である株式の価額を算定する方法である。 (三) 特定の評価会社の株式の評価(評価通達一八九。これは、平成二年八月三日付け直評一二・直資二ー二〇三をもって評価通達が一部改正された際に規定されたものである。)(1) 「特定の評価会社の株式」(評価通達一七八ただし書)とは、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等に応じて定めた、①株式保有特定会社の株式、②土地保有特定会社の株式、③開業後三年未満の会社等の株式、④開業前又は休業中の会社の株式、⑤清算中の会社の株式、のいずれかに該当する株式をいう(評価通達一八九)。 この場合において、土地保有特定会社とは、課税時期において評価会社の有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合が七〇パーセント以上(評価通達一七八に定める中会社については、九〇パーセント以上)である評価会社(評価通達一七八に定める小会社及び右③ないし⑤のいずれかに該当するものを除く。)をいう(評価通達一八九(2))。 (2) 土地保有特定会社の株式の価額は、評価通 、九〇パーセント以上)である評価会社(評価通達一七八に定める小会社及び右③ないし⑤のいずれかに該当するものを除く。)をいう(評価通達一八九(2))。 (2) 土地保有特定会社の株式の価額は、評価通達一八五の本文の定めにより計算した一株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。この場合における当該各株式の一株当たりの純資産価額については、それぞれ、当該株式の取得者とその同族関係者の有する当該株式の合計数が土地保有特定会社の発行済株式数の五〇パーセント未満である場合においては、右により計算した一株当たりの純資産価額に一〇〇分の八〇を乗じて計算した金額とする(評価通達一八九ー三)。 ただし、当該株式が評価通達一八八に定める同族株主以外の株主等が取得した株式に該当する場合には、その株式の価額は、評価通達一八八ー二の本文の定め(配当還元方式)により計算した金額(この金額が評価通達一八八ー三の本文の定めにより評価するものとして計算した金額を超える場合には、右条項本文の定めにより計算した金額)によって評価する(評価通達一八九ー三ただし書)。 二前提となる事実(証拠により認定した事実は、その末尾に証拠を掲げた。その余の事実は、当事者間に争いがない。) 1 中外石油の資産状況等(一) 中外石油は、昭和三〇年三月に設立され、ガソリンスタンドの経営等、石油製品販売業務を中心に業務を行ってきた株式会社であり、その本店は東京都千代田区<以下略>に置かれている(乙二の1、4及び弁論の全趣旨)。 (二) 本件相続の時点において、中外石油の額面株式一株の金額は五〇〇円、発行済株式の総数は二万四〇〇〇株、資本の額は一二〇〇万円であり、その定款において「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を受けなければならない。」旨定められていた。 株式一株の金額は五〇〇円、発行済株式の総数は二万四〇〇〇株、資本の額は一二〇〇万円であり、その定款において「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を受けなければならない。」旨定められていた。 本件被相続人は、右二万四〇〇〇株の株式のうち八〇〇〇株(持株割合三三パーセント。一パーセント未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)を保有しており、その余の株式については、Bが六八〇〇株(同二八パーセント)、Cが六九〇〇株(同二八パーセント。Dが所有していた株式を相続したもの)を保有し、E、F及びGが残りの株式を保有していた(甲九、乙二の1及び弁論の全趣旨)。 なお、本件相続の時点における中外石油の取締役は、本件被相続人を除く右の五名であり、Bが代表取締役を務めていた(甲九、乙二の1、4及び弁論の全趣旨)。 (三) 中外石油の本件相続開始の直前期(平成三年四月一日から平成四年三月三一日まで)末における総資産価額は一五億六九一九万〇九六二円、同直前期末以前一年間における取引金額は一八億三〇〇七万九二一二円であった。 同会社の本件相続開始の直前期末における貸借対照表に記載された各資産をそれぞれの資産の種類に対応する評価通達の定めるところにより評価した場合の各資産の価額の合計額は九二億〇一九七万四〇〇〇円であり、そのうち土地等の合計額は八〇億九五八一万九〇〇〇円であって、総資産価額に占める土地等の価額の割合は八八パーセントであった。 これらを帳簿価額でみると、総資産価額は一五億二二〇九万三〇〇〇円、負債の合計額は一〇億一六三四万八〇〇〇円であって、帳簿価額による純資産価額は五億〇五七四万五〇〇〇円である(甲三、六の1、乙二の1ないし18)。 2 本件相続本件被相続人は、平成四年九月一日に死亡し、本件相続が開始したところ、本件被相続人の法定相続 額による純資産価額は五億〇五七四万五〇〇〇円である(甲三、六の1、乙二の1ないし18)。 2 本件相続本件被相続人は、平成四年九月一日に死亡し、本件相続が開始したところ、本件被相続人の法定相続人は、本件被相続人の妻である原告、本件被相続人の長男であるH、I、J、K、L及びMである(以下「本件相続人ら」という。)。 原告は、昭和六二年三月六日付けで作成された本件被相続人の公正証書遺言の内容に従い、本件株式を含め、本件被相続人の全遺産を相続した。 3 本件株式の売却原告は、平成五年四月二日、中外石油に対し、本件株式を合計六億三〇〇〇万円で売却した(以下「本件売買」といい、右売買価格を以下「本件売買価格」という。)。 4 課税処分の経緯(別表1参照)(一) 原告は、平成五年二月二六日、本件相続に係る相続税について、課税価格を一億八二六〇万七〇〇〇円、納付すべき税額を四八〇万九一〇〇円として被告に対し申告(以下「本件申告」という。)をし、同年一二月一六日、課税価格を九億四〇三〇万九〇〇〇円、納付すべき税額を一億四四一三万九二〇〇円とする旨の修正申告をした。 (二) 被告は、同月二〇日、右修正申告を受けて、過少申告加算税を二〇六五万九〇〇〇円とする賦課決定処分を行った。 (三) 原告は、同月二二日、課税価格を二億八七四六万四〇三〇円、納付すべき税額を一七一二万四九〇〇円とする旨の更正の請求を行ったところ、被告は、平成六年一月三一日、課税価格を七億九九一六万八〇〇〇円、納付すべき税額を一億一一四五万一三〇〇円とする更正処分(更正の請求に対し、これを一部認容する減額更正処分と一部理由がない旨の通知処分の性質を併せ有するものである。)及び過少申告加算税を一五七五万五五〇〇円とする変更賦課決定処分を行った。 (四) 原告は、右更正処分を不服として、 部認容する減額更正処分と一部理由がない旨の通知処分の性質を併せ有するものである。)及び過少申告加算税を一五七五万五五〇〇円とする変更賦課決定処分を行った。 (四) 原告は、右更正処分を不服として、同年三月二九日、被告に対し、異議申立てを行ったところ、被告は、同年六月二三日、課税価格を七億九五八三万二〇〇〇円、納付すべき税額を一億一〇七一万七七〇〇円、過少申告加算税を一五六四万四五〇〇円にそれぞれ減額する旨の異議決定を行った。 (五) 原告は、右異議決定を経た後の更正処分(以下「本件更正処分」という。)になお不服があるとして、同年七月二一日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は、平成七年九月一一日付けで、右審査請求を棄却する旨の裁決をした。 三本件更正処分の内容(本件訴訟における被告の主張はこれと同一である。争いのない点はその旨を付記した。) 1 課税価格の合計額(別表2の符号⑭の欄の金額)七億九五八三万二〇〇〇円右金額は、次の(一)記載の相続により取得した財産の総額から後記(二)記載の控除すべき債務の総額を控除した後の金額(ただし、国税通則法(以下「通則法」という。)一一八条一項の規定により、課税価格の一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 (一) 相続により取得した財産の総額(別表2の符号⑧欄の金額)二〇億九七四八万七七七七円右は、原告が本件相続により取得した財産の総額であり、その内訳は以下のとおりである。 (1) 土地の価額(別表2の符号①欄の金額。争いがない。)九億〇三六九万二九九八円(2) 家屋の価額(別表2の符号②欄の金額。争いがない。)三八六万九五〇〇円(3) 本件株式の価額(別表2の符号③欄の金額)一一億三八三六万八〇〇〇円右金額は、次に述べるとおり、評価通達一八九ー三 屋の価額(別表2の符号②欄の金額。争いがない。)三八六万九五〇〇円(3) 本件株式の価額(別表2の符号③欄の金額)一一億三八三六万八〇〇〇円右金額は、次に述べるとおり、評価通達一八九ー三の定める評価方法に従い、本件株式の一株当たりの金額を一四万二二九六円と評価し、これに本件株式数八〇〇〇株を乗じて算定したものである。 ア中外石油の株式は市場価格が形成されていない取引相場のない株式であるところ、同会社は卸売業以外の業種を営む会社であり、前記二1(三)記載のとおり、同会社の課税時期における資本金は一二〇〇万円であるが、本件相続開始の直前期末における総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)は一五億六九一九万〇九六二円であるから、同会社は、評価通達一七八に定める「大会社」に該当する。 イしかし、前記二1(三)記載のとおり、中外石油の本件相続開始の直前期末における貸借対照表に記載された各資産をそれぞれの資産の種類に対応する評価通達の定めるところにより評価した場合の各資産の価額の合計額は九二億〇一九七万四〇〇〇円であり、そのうち土地等の合計額は八〇億九五八一万九〇〇〇円であって、総資産価額に占める土地等の価額の割合は八八パーセントになるから、同会社は、評価通達一八九(2)に定める土地保有特定会社に該当する。したがって、本件株式は、評価通達一八九ー三に従い、純資産価額方式を適用して評価会社の一株当たりの金額を算定する方法により評価すべきである。そして、純資産価額方式により、本件株式の一株当たりの純資産価額を算出すると、別表4記載のとおり、その額は一七万七八七〇円となる。 ウまた、原告とその同族関係者の有する株式の合計数は同会社の発行済株式数の五〇パーセント未満であることから、評価通達一八九ー三本文後段が適用になり、本件株式の一株当た 額は一七万七八七〇円となる。 ウまた、原告とその同族関係者の有する株式の合計数は同会社の発行済株式数の五〇パーセント未満であることから、評価通達一八九ー三本文後段が適用になり、本件株式の一株当たりの相続税評価額は、右一株あたりの純資産価額一七万七八七〇円に一〇〇分の八〇を乗じて得られる一四万二二九六円となる。 エなお、前記二1(二)記載のとおり、原告が本件相続により取得したのは同社の株式の三三パーセントに当たり、本件株式は、評価通達一八八(1)に定める「同族株主以外の株主等の取得した株式」に該当せず、また、評価通達一八八(2)ないし(4)にも該当しないから、その評価に当たっては、評価通達一八八ー二に定める配当還元方式は適用されない。 (4) その他の有価証券(別表2の符号④欄の金額。争いがない。)九一七万七七〇〇円(5) 現金・預貯金等の価額(別表2の符号⑤欄の金額。争いがない。)三六六二万六六三七円(6) 家庭用財産の価額(別表2の符号⑥欄の金額。争いがない。)一〇〇万円(7) その他の財産の価額(別表2の符号⑦欄の金額。争いがない。)四七五万二九四二円(二) 控除すべき債務の総額(別表2の符号⑫欄の金額。争いがない。)一三億〇一六五万五七四七円右金額は、法(平成六年法律第二三号による改正前のもの。以下同じ。)一三条及び一四条の規定に基づき、原告が本件相続により取得した財産の総額から控除すべき債務の総額である。 2 原告の納付すべき相続税額(別表3の符号⑩欄の金額)一億一〇七一万七七〇〇円右金額は、法一五条ないし一七条及び一九条の二の規定に基づき、次のとおり算定したものである。 (一) 本件相続人らの課税価格の合計額(別表2の符号⑭欄の金額)七億九五八三万二〇〇〇円右金額は、前記二1記載の金額である。 七条及び一九条の二の規定に基づき、次のとおり算定したものである。 (一) 本件相続人らの課税価格の合計額(別表2の符号⑭欄の金額)七億九五八三万二〇〇〇円右金額は、前記二1記載の金額である。 (二) 遺産に係る基礎控除額(別表3の符号③欄の金額。争いがない。)一億一四五〇万円右金額は、課税価格の合計額から控除すべき基礎控除額であり、法一五条の規定に基づき、四八〇〇万円と、九五〇万円に本件被相続人の法定相続人の数である七を乗じて算出した六六五〇万円との合計額である。 (三) 課税遺産総額(別表3の符号⑭欄の金額)六億八一三三万二〇〇〇円右金額は、右(一)の金額から右(二)の金額を控除した金額である。 (四) 相続税の総額(別表3の符号⑤欄の金額)二億二一四三万五五〇〇円右金額は、法一六条の規定に基づき、右(三)の課税遺産額を本件相続人らが民法九〇〇条及び九〇一条の規定による相続分(法定相続分)に応じて取得したものとした場合における各相続人らの次の各取得金額(ただし、通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)に、法一六条の表に定める税率を適用してそれぞれ算出した金額の合計額(ただし、通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 (1) 原告(二分の一) 三億四〇六六万六〇〇〇円(2) 訴外H(一〇分の一) 六八一三万三〇〇〇円(3) 訴外I(一〇分の一) 六八一三万三〇〇〇円(4) 訴外J(一〇分の一) 六八一三万三〇〇〇円(5) 訴外K(一〇分の一) 六八一三万三〇〇〇円(6) 訴外L(二〇分の一) 三四〇六万六〇〇〇円(7) 訴外M(二〇分の一) 三四〇六万六〇〇〇円(五) 原告の相続税額(別表3の符号⑧欄の金額)二億二一四三万五五〇〇円右金 三〇〇〇円(6) 訴外L(二〇分の一) 三四〇六万六〇〇〇円(7) 訴外M(二〇分の一) 三四〇六万六〇〇〇円(五) 原告の相続税額(別表3の符号⑧欄の金額)二億二一四三万五五〇〇円右金額は、法一七条の規定に基づき、右(四)の相続税の総額に前記(一)の本件相続人らの課税価格の合計額に対する原告の取得した財産に係る課税価格の割合を乗じて計算した金額であるが、本件相続では、原告一人が本件被相続人の全遺産を相続しているため、右(四)の相続税の総額と同額となる。 (六) 税額控除額(別表3の符号⑨欄の金額)一億一〇七一万七七五〇円右金額は、法一九条の二の規定に基づき、本件被相続人の配偶者である原告の納付すべき相続税額が軽減される金額であり、その算出の経緯は別表5「配偶者の税額軽減額の計算明細書」記載のとおりである。 (七) 原告の納付すべき相続税額(別表3の符号⑩欄の金額)一億一〇七一万七七〇〇円右金額は、前記(五)の金額から右(六)の金額を控除した金額(ただし、通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 四争点及び及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件株式の本件相続開始当時における時価はいくらであるか、すなわち、右時価を評価するに当たり、評価通達を文字どおり適用して、本件株式を土地保有特定会社の株式として純資産価額方式により評価すべきか、それとも、評価通達の定めによらず、本件売買価格をもって右時価と評価するか、又は配当還元方式により評価すべきかということであり、この点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (被告の主張) 1 本件株式は、評価通達の定めに従い、土地保有特定会社の株式として純資産価額方式により評価すべきである。 法二二条の「時価」とは、相続開始時における当該財 張は次のとおりである。 (被告の主張) 1 本件株式は、評価通達の定めに従い、土地保有特定会社の株式として純資産価額方式により評価すべきである。 法二二条の「時価」とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい、右交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって、いわゆる市場価格と同義であると解されている。 しかし、客観的交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものであり、評価通達に規定された評価方法は、時価の評価方法として妥当性を有するものである。 しかし、客観的交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速 観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものであり、評価通達に規定された評価方法は、時価の評価方法として妥当性を有するものである。 評価通達は、上場株式及び気配相場のある株式とそれ以外の取引相場のない株式とを区別し、前者については取引価格によって評価し、後者については、別の評価方法を定めているところ、次に述べるとおり、評価通達の定める取引相場のない株式の評価方法は合理的なものであり、したがって、右評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別の事情がある場合を除き、取引相場のない本件株式は右評価方法により評価するのが相当である。 (一) 上場株式及び気配相場等のある株式のように大量かつ反復継続的に取引が行われている場合には、多数の取引を通じて一定の取引価格が形成され、右取引価格は、市場原理を通じてまさに当事者間の主観的事情が捨象された当該株式の価値を客観的に反映しているものと考えられる。したがって、当該取引価格は株式が客観的に有する交換価値として確立したものと把握することができる。 しかし、取引相場のない株式については、そもそも上場株式のように大量かつ反復継続的な取引は予定されておらず、また、取引事例が存在するとしても、その数がわずかにとどまるにすぎないので、当事者間の主観的事情に影響されたものでないことをうかがわせる特段の事情がない限り、当該実例価格が売買当事者間の主観 らず、また、取引事例が存在するとしても、その数がわずかにとどまるにすぎないので、当事者間の主観的事情に影響されたものでないことをうかがわせる特段の事情がない限り、当該実例価格が売買当事者間の主観的事情を離れた当該株式の客観的交換価値を反映したものとは到底評価できない。 そして、取引相場のない株式は、株式の圧倒的多数を占めており、その発行会社の規模は上場会社に匹敵するものから、個人企業と変わらないものまで千差万別であって、会社の株主の構成をみても、いわゆるオーナー株主といわれる株主のほか、従業員株主などの零細な株主が存在している。そこで、評価通達は、これらの実態を踏まえ、取引相場のない株式の価額について、合理的、かつ、その実態に即した評価を行うため、評価会社をその事業規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分し、それぞれの会社の株式の評価に適用すべき原則的評価方式を定めるとともに、零細な株主に代表される「同族株主以外の株主等が取得した株式」については、原則的評価方式に代えて、特例的評価方式である配当還元方式により評価することとしている。 (二) ところで、評価通達の取扱いは、相続税の性格を考慮して評価の安全性を図ること、課税の公平のために評価の統一を図ること、納税者の便宜のため簡便な評価方法によることなどを理念とするものであるが、これらの評価の安全性、統一性、便宜性等にかたよることになると、ある種の財産(たとえば土地、株式)については、その財産についての評価額と実際の取引価額との間に開差を生じさせることになり、右開差がこれを利用した租税回避行為の原因にもなっていることから、課税の公平の観点から、そのような開差の是正とともに、より株式取引の実態に適合するように評価の一層の適正化を図る目的で、平成二年八月三日付け直評一二・直資二ー二〇三をもっ 因にもなっていることから、課税の公平の観点から、そのような開差の是正とともに、より株式取引の実態に適合するように評価の一層の適正化を図る目的で、平成二年八月三日付け直評一二・直資二ー二〇三をもって評価通達の一部改正が行われた。すなわち、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等が一般の会社と異なる株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後三年未満の会社等、開業前又は休業中の会社、清算中の会社の各株式については、「特定の評価会社の株式」として特別な評価方法により評価することとし、その具体的な評価方法を評価通達一八九ー二ないし一八九ー五において定めた。 (三) 本件で問題となる土地保有特定会社の株式について評価通達が純資産価額方式を採用した趣旨は、土地保有特定会社の保有する資産の大部分が土地であることから、当該会社の資産性に着目し、その保有する土地等の価値を株価に反映させることにある。評価会社の資産の大部分が土地である場合には、当該会社はいわば、「土地の固まり」、すなわち土地そのものであるとみなすことができ、また、しばしば、その会社の所有する土地の価格に着目して会社の身売り(株式の売買)が行われるという実情があることにかんがみれば、このような会社の株式の評価に当たっては、類似業種比準方式によらず、当該会社の資産性すなわち土地保有の状況に着目して純資産価額方式を適用するものとした右評価通達の定めは合理的である。 なお、昭和六三年度における業種別の会社の土地保有割合の状況をみると、最も高いものは「映画・娯楽業」(資本金五〇〇〇万円以上一億円未満)の三三・七パーセントであったことと、租税特別措置法(以下「措置法」という。)三二条二項で、評価会社の保有する資産のうちに占める短期保有の土地の割合が七〇パーセント以上であれば、その会社の株式を譲渡した ・七パーセントであったことと、租税特別措置法(以下「措置法」という。)三二条二項で、評価会社の保有する資産のうちに占める短期保有の土地の割合が七〇パーセント以上であれば、その会社の株式を譲渡したとしても、これを当該会社の保有している土地の譲渡とみなして土地重課税を課すこととしている趣旨とを併せ考慮すれば、評価通達が、大会社の場合、土地等の価額が総資産の価額に占める割合が七〇パーセント以上であるか否かを土地保有特定会社に該当するか否かの判断基準としているのは妥当というべきである(なお、土地の保有割合は、大会社と比較すると、中会社においては高くなる傾向にあると考えられることから、評価通達は、中会社については、土地保有特定会社に該当するかどうかの判断基準である土地保有割合を九〇パーセントに引き上げている。)。 2 本件売買価格をもって本件株式の本件相続開始当時の時価と評価すべきであるとする原告の主張について(一) 上場株式のように、証券取引所において、日々大量に取引が行われ、市場原理が十分働くものについては、そこで形成された価額をもって客観的交換価値ということができるが、開かれた取引市場を有せず、市場原理が機能しない閉鎖的なものは、客観的交換価値を把握するのに困難を伴うものである。もっとも、気配相場を有する場合とか、当該非上場会社と特殊な関係を持たず、株式の価値を正当に認識した当事者間で成立した売買実例が存在する場合には、右相場又は売買実例における価額をもって適正な時価と評価することは可能である。なお、右交換価値の評価については、取引当事者間の主観的要素は排除されなければならず、買い進みや売り急ぎなどがなかったものとされなければならない。 (二) 本件においては、原告の主張する本件売買価格は、本件相続開始当時(本件株式の評価時点)の七か月 観的要素は排除されなければならず、買い進みや売り急ぎなどがなかったものとされなければならない。 (二) 本件においては、原告の主張する本件売買価格は、本件相続開始当時(本件株式の評価時点)の七か月後に決定されたものであり、本件相続開始当時における客観的交換価値を反映したものとはいえない。また、本件株式は開かれた取引市場を有せず、前記二1(二)記載のとおり、定款に譲渡制限に関する規定が置かれているものであって、市場原理が機能しない閉鎖的なものであり、他に対比し得る取引実例が全くない。 そして、本件売買は、同族株主と発行法人という限定された範囲の者の間で行われ、発行法人の発行済株式総数の三三パーセントを一括して売買するという特殊な取引であり、かつ、上場株式のように市場原理が機能する場面での取引ではない。 しかも、中外石油の経営陣が資金不足を理由に買取りを拒否していたなどの主観的事情が存在する下で譲渡されたものである。すなわち、本件売買価格は、交渉を進めるうちに五億円から一〇億円の間ということになり、税務上の低廉譲渡に該当する適正な価格の二分の一を下回らないように考慮しながら、中外石油の資金繰りの面を考慮した結果、決定されたものであり、他方、本件株式の売買交渉に当たって原告を代理したHは、右交渉当時、自らの借金の返済を迫られており、本件株式の譲渡代金を自らの借金の返済に充当することによって自らの債務を返済する必要性に迫られて本件株式を譲渡したのである。 このように、本件株式の売買価額(六億三〇〇〇万円)は、本件相続開始当時における客観的交換価値、すなわち、法二二条に規定する「時価」を示すものとは到底いえない。 (三) 原告は、本件株式の時価が被告主張のとおり一一億三八三六万八〇〇〇円であるとすると、被告が中外石油に対し受贈益の認定課税を行わ なわち、法二二条に規定する「時価」を示すものとは到底いえない。 (三) 原告は、本件株式の時価が被告主張のとおり一一億三八三六万八〇〇〇円であるとすると、被告が中外石油に対し受贈益の認定課税を行わなかった理由の説明がつかない旨主張する。 確かに、原告が中外石油に売却した本件株式の価額六億三〇〇〇万円が、法人税法上、時価に比して低額であると認められる場合は、その時価と売買価額の差額について中外石油に対し受贈益の課税が行われることとなる。そして、法人税において、一般的に時価というのは、通常成立する市場価額をいうものである。しかしながら、現実の取引においては、通常成立する市場価額とは異なる価額で売買が行われる場合においても、売買するに至った経緯等からみて、合理的な経済人の取引として経済的合理性が十分に認められるものである限り、法人税の課税実務上、右取引は正常な取引として是認されるべきである。すなわち、法人税法における課税が、合理的な経済人の取引があることを前提に、そこから得られる経済的利益に対し課税されるものであることからすれば、売買するに至った経緯等に照らし、正常な取引条件に従って行われたものであると認められるときは、当事者の合意した価額をもって時価とみなしても何ら不都合はない。 これに対し、法における課税は、相続あるいは贈与等により財産を無償で取得したことに対して行われるものであり、法人税とは課税の趣旨及び目的において異なるのであって、非経済的行為により取得した財産(利益)に対し課税するという相続税の課税の趣旨及び目的に適合するように定められた評価通達に基づく評価方法を、経済的に合理的な取引行為により得られた利益に課税するという法人税法上の時価の評価方法として採用しなければならないというものではない。 したがって、相続税の課税におい た評価通達に基づく評価方法を、経済的に合理的な取引行為により得られた利益に課税するという法人税法上の時価の評価方法として採用しなければならないというものではない。 したがって、相続税の課税において本件株式を評価するに当たり、評価通達により評価が行われるからといって、法人税の課税実務上、売買に係る本件株式の時価を右と同一の方式を用いて時価とみなし、売買価額との差額につき中外石油に受贈益の認定を行わなければならないとする根拠はない。 3 本件株式を配当還元方式により評価すべきであるとする原告の主張について原告は、土地保有特定会社の株式の評価の方法として純資産価額方式を定める評価通達は合理的でなく、取引相場のない非上場株式の評価は、適切な取引事例のない場合にはすべて配当還元方式によるべきである旨主張する。 しかしながら、株式が本来的に会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであることにかんがみれば、会社の総資産の価額を発行済株式数で除したものが、一株当たりの株式の価値であるということができる。そして、商法二〇四条ノ四第二項が株式の譲渡価格決定の際に「会社ノ資産状態其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌スル」と規定して純資産の価額を重要視していることなどに照らせば、本件株式のような客観的交換価値の確立されていない取引相場のない株式の評価については、理論的には、純資産による評価方式によるべきである。 これに対し、評価通達は、前記一2(二)で述べたとおり、同族株主のいる会社のうち、同族株主以外の株主等が取得した株式を配当還元方式により評価するとしている(評価通達一八八、一八九)。右評価通達の規定の趣旨は、株式の保有形態(その持株割合)からみれば、経営に参加し、又は一定の株式を保有して会社を支配してい た株式を配当還元方式により評価するとしている(評価通達一八八、一八九)。右評価通達の規定の趣旨は、株式の保有形態(その持株割合)からみれば、経営に参加し、又は一定の株式を保有して会社を支配しているような株主がいる反面、従業員株主や経営に参加できない株主等の、いわゆる零細株主等も存在するところ、株主の持株割合が低下すると会社に対する支配権が希薄になり、したがって、配当を受けることが株式の保有により把握する権利の主たる要素となる反面、その割合が上昇すると会社に対する実質的支配権が増大するという実態を踏まえ、持株割合が低く、かつ、会社経営に参画していない零細株主等については、特例的な評価方式である配当還元方式が妥当であるとするところにある。すなわち、右の措置は、いわば納税義務者が零細株主等であることをしん酌した課税上の一つの措置である。 また、配当還元方式は、多種多様な株価の決定要素のうち配当金のみを基準とする評価方式であるため、評価の適正もそれだけ担保し難く、かつ、その計算の基礎となる配当額については絶対的な支払基準が存在しないため、会社が配当額を決定するに当たり経営者の恣意が介入しやすく、実際にもこれが介入する場合が多いこと、個人事業者の場合には、個々の資産、負債を基に相続税の課税価格が算出されるのと課税の権衡を図る必要性があることなどからして、右評価方法は、例外的な評価方法として限定的に用いるべきである。 したがって、評価通達の右取扱いは合理的であり、原告の右主張は失当である。 4 本件株式の評価に当たり評価通達によらないで評価することが合理的であると認められる特別の事情があるとする原告の主張について(一) 前記1で述べたとおり、評価通達に定める評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、取引相場 的であると認められる特別の事情があるとする原告の主張について(一) 前記1で述べたとおり、評価通達に定める評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、取引相場のない株式については、評価通達に基づき評価することが相当であるところ、本件では、右の特別の事情はない。 (二) 原告は、同族株主の判定に当たっては、支配従属関係を考慮し、実質的に判断するべきであり、全体の約三分の一を保有するにすぎないA側の保有株式(本件株式)は、過半数を超えるB・Dグループの株主の前では、およそ支配プレミアムを持ち得ない株式であって、原告は配当のみによって利益を受ける非支配株主にすぎないから、本件株式は配当還元方式による評価になじむものである旨主張する。 しかしながら、評価通達が「同族株主」の範囲を形式的に支配従属関係が及ぶとされる一定の範囲の者とし、画一的に同族関係者の範囲を定めていることは、課税事務上の迅速な処理の要請及び課税の公平の観点から合理的であるといえる。 すなわち、原告が主張するように支配従属関係を考慮して同族株主に当たるか否かを実質的に判断するとすれば、何をもって実質的な同族株主とするか否かの基準が極めてあいまいになるだけではなく、現実的には、会社によって株主間の経営権をめぐる対立状況、派閥の構成、個人的な思惑等が千差万別であるところ、ありとあらゆる事情を的確に把握して評価に反映させることは到底不可能である。仮に、取引相場のない株式の評価に当たり、右のような会社の内部事情に係る主観的な要素を基に支配従属関係を考慮して実質的に同族株主に当たるか否かを判断するということになるとすれば、評価を行う者によって異なった評価がされるおそれがあり、負担の公平という要請に反した著しい不都合が生じるのみならず、その評価に課 て実質的に同族株主に当たるか否かを判断するということになるとすれば、評価を行う者によって異なった評価がされるおそれがあり、負担の公平という要請に反した著しい不都合が生じるのみならず、その評価に課税権者の恣意が介入し、課税の公平を欠くおそれすらある。したがって、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理の要請及び課税の公平の観点からみて、同族関係者の範囲を評価通達に基づき形式的に判定することは合理的である。 また、評価通達は、株式の保有形態に着目して、特に持株割合が低く、かつ、会社経営等に参加していないとみられる零細株主等については、特例的に配当還元方式により評価することとしているところ、右零細株主等か否かの判定に当たっては、同族株主の判定について述べたのと同様に、課税事務の迅速な処理の要請及び課税の公平の観点から、評価通達の定めに従いこれを形式的、かつ、画一的にその範囲を定めるのが合理的である。 なお、本件においては、実際にもA家の人物が中外石油の経営に参画する可能性があったことは明らかである。 (三) 原告は、中外石油の主たる業務が従来から現在に至るまでガソリンスタンドであってその状態は変わっていないのに、被告は、一時的に異常に高騰した地価を前提として、同会社を土地保有特定会社と認定しているが、右認定は、その後のバブル崩壊等の経済変動をみる限り、土地を高く評価しすぎた結果によるものであることが明白であって誤りである旨主張する。 しかしながら、取引相場のない株式の評価は、株式が本来的に会社資産に対する割合的持分としての性質を有することから、理論的には純資産による評価方式によるべきところ、前記1で述べたとおり、土地保有特定会社の株式について評価通達が純資産価額方式を採用した趣旨は、右会社の保有する資産の大部分が土地であることから、 、理論的には純資産による評価方式によるべきところ、前記1で述べたとおり、土地保有特定会社の株式について評価通達が純資産価額方式を採用した趣旨は、右会社の保有する資産の大部分が土地であることから、当該会社の資産性に着目し、その保有する土地等の価値を株価に反映させることにある。評価会社の資産の大部分が土地である場合には、当該会社はいわば、「土地の固まり」、すなわち土地そのものであるとみなすことができ、また、しばしば、その会社の所有する土地の価格に着目して会社の身売り(株式の売買)が行われるという実情があること等にかんがみれば、このような会社の株式の評価に当たっては、類似業種比準方式によらず、当該会社の資産性すなわち土地保有の状況に着目して純資産価額方式を適用するものとした右評価通達の定めは合理的である。 相続税法二二条は、相続により取得した財産の価額は、相続開始時の時価による旨規定してところ、被相続人が会社の割合的持分である株式を通して土地を所有していると評価できる場合には、その法人の相続開始時における株式の時価は、法人が所有する相続開始時の価額に基づいて算出されることになる。そうすると、中外石油が土地保有特定会社に当たるか否かを判定するに際しても、課税基準時における土地保有特定会社の株式の価額を算定するに当たってその保有する土地の価額を株価に反映させるため純資産価額方式を採用した評価通達一八九ー三の趣旨に照らすと、中外石油の所有する土地の価額は課税基準時である相続開始時の時価により算定するのが妥当であり、原告が主張するようなバブル経済による地価の上昇があったとしても、それが全体的な地価の上昇である以上、その上昇した相続開始時の価額によるべきである。 よって、原告の右主張は失当である。 (四) 原告は、課税当局においては、バブル経済の 価の上昇があったとしても、それが全体的な地価の上昇である以上、その上昇した相続開始時の価額によるべきである。 よって、原告の右主張は失当である。 (四) 原告は、課税当局においては、バブル経済の変動という何人にも予測し難い急速な変動を考慮して、土地保有特定会社に該当するかどうかの判断基準を厳格化する必要があったものであり、具体的には評価通達に定める土地保有率の基準を大会社の場合七〇パーセントから相当程度上昇させ、あるいは、本件相続開始時点(平成四年九月一日時点)において、いわゆるバブル経済崩壊による地価下落を予想しこれを盛り込んで、右変動を的確に土地の評価額に反映させるなどし、中外石油を土地保有特定会社と認定しないで課税処分を行うべきであった旨主張する。 しかしながら、そもそも課税基準時である相続開始時における時価を算定するのに当たって、相続開始後に生じた事情を相続開始時に遡って考慮するようなことはすべきではない。なお、仮に、原告が主張するように、バブル経済における地価変動を的確に評価に反映させ、相続開始時点において地価下落を盛り込んで土地を評価するとしても、現在においてみれば、バブル経済により地価上昇が生じていたといえても、当時においてそれがバブル経済によるものであると判断することはできるはずもなく、また、何を基に「適正価格」なるものを評価するのか、何を評価に盛り込むべき地価変動ととらえるのかなどといったことは極めて困難な問題であり、原告のいうところの異常な地価の上昇であることを考慮して評価通達を改正しなかったとしても、評価通達の合理性が失われるものでないことは明らかである。 よって、原告の右主張は失当である。 (原告の主張) 1 法二二条の「時価」とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取 失われるものでないことは明らかである。 よって、原告の右主張は失当である。 (原告の主張) 1 法二二条の「時価」とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものとされている。非上場株式の評価における「時価」の意義も、これと同義に解すべきである。 2 本件株式については、本件売買価格をもって本件相続開始当時の時価とみるべきである。 (一) 評価通達は、大量かつ回帰的に発生する課税事務の便宜のために、一定の評価基準を設けており、課税実務も右通達に沿って処理がなされているが、かかる取扱いは、あくまで行政の便宜に出たものにすぎず、納税者から適正な取引価額による実例が示されるなどした場合には、取引価額を時価の算定に当たって考慮に入れるべきは当然のことである。評価通達は当該行政機関の間で効力を持つ行政組織内部の規範にすぎないから、時価を算定する根拠法規とはなり得ないのであり、現に、評価通達によらない評価方式も是認されているのである。しかも、評価通達は、上場株式については取引価格をもって時価としているところ、右1で述べたとおり、上場株式と非上場株式とで法上「時価」の意義を異にするものではないから、評価の方法も同様にされるべきである。 したがって、取引相場のない株式の評価における「時価」を考えるに当たっては、法二二条の文言からみて、実際に当該株式の取引が行われた場合には、当該取引価格を原則として「時価」と考えるのが相当であり、例外的に、当該取引価格が「時価」、すなわち、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額と認めることができない特段の事情が存在する場合に限り、便宜的に、他の方法による算定が許容されるというべきである。 (二 、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額と認めることができない特段の事情が存在する場合に限り、便宜的に、他の方法による算定が許容されるというべきである。 (二) 本件においては、かかる特段の事情はみられず、むしろ、中外石油の経営権をめぐって本件被相続人とB及びD側との間に対立があり、本件相続の後、Hが原告の代理人として、中外石油の経営権を握っていたBらに対して本件株式を買い取るように交渉してきたが、Bらは資金不足を理由に買取りを拒否し、長期間にわたる交渉のすえ、ようやく本件売買契約が成立したものである。 このように、本件売買価格は、利害が決定的に対立する当事者間における長期間の交渉の結果形成されたものであるから、これが適正な価額であることは明らかである。 (三) 仮に、本件株式の時価が被告主張のとおり一一億三八三六万八〇〇〇円であるとした場合、中外石油はこれを六億三〇〇〇万円という低廉な価格で買い受けたのであるから、被告は中外石油に対し受贈益の認定課税を行うはずであり、これを行わなかった理由の説明がつかない。 すなわち、法人の所得は、実額において把握すべきであるにもかかわらず、相続税上考慮した本件株式の価格を下回る額での本件売買価格を正当なものと認め、中外石油の収益の発生を否定しながら、他方で原告に対し高額の資産価値を前提とする恣意的課税を行うことは、完全に矛盾しているのである。 3 取引相場のない非上場株式の評価は、適切な取引事例のない場合にはすべて配当還元方式によるべきである。 (一) 配当当還元方式は、将来の各事業年度に期待される一株当たりの予測配当金額を一定の資本還元率によって還元する方法により、元本である株式の現在の価額を算出するものであるところ、営利法人は、対外的事業活動によって得た利益 、将来の各事業年度に期待される一株当たりの予測配当金額を一定の資本還元率によって還元する方法により、元本である株式の現在の価額を算出するものであるところ、営利法人は、対外的事業活動によって得た利益を、構成員(株式会社においては株主)に対して、利益配当又は残余財産分配の方法によって分配することを目的とする団体であり、かつ、株式会社においては、利益配当又は残余財産分配以外の方法によって株主が会社から財産上の利益の提供を受けることはあり得ないから、株式の売買は、経済的に評価する限り、本質的には、将来の利益配当・残余財産分配に関する期待の売買にほかならなず、したがって、少なくとも理論的観点からみる限りは、営利法人である株式会社の株式の価格の算定方式として、最も適合するものである。 確かに、配当還元方式によった場合、その方式により理論的に厳密に株価算定を行えば行うほど、他の方式によった場合に比較して、算定された株式の価格が低くなりがちではある。すなわち、同族会社的な中小企業の株式の中には、通常の会社に比較して配当性向が著しく低いあるいは利益配当金額が支配株主により気まぐれ的に決定される結果、第三者がその予測を行うことが難しく、高リスクが反映される結果、資本還元率が高くなる傾向がないわけではない。しかし、中小企業の株式の経済的価値というものは、結局は、そのようなものなのであって、低い予測配当金額を高い資本還元率で還元した結果、算定株価が低額に止まるのは致し方ないところである。そうであればこそ、中小企業の株式の株価は通常低額であり、現に、本件株式も、被告算定の価額を大幅に下回る価額で実際の取引がされたのである。 (二) 被告は、本件株式の時価を評価するに当たって、評価通達一八九ー三に定める純資産価額方式を適用しているが、次に述べるとおり、純資産価額 算定の価額を大幅に下回る価額で実際の取引がされたのである。 (二) 被告は、本件株式の時価を評価するに当たって、評価通達一八九ー三に定める純資産価額方式を適用しているが、次に述べるとおり、純資産価額方式は、取引相場のない非上場株式の評価の基準として不適切である。 すなわち、純資産価額方式という場合、①決算貸借対照表上の純資産を発行済株式総数で除したものを一株の価格とする方式を指す場合もあれば、②現時点で会社を解散し清算を行うと仮定した場合に一株に対して払い戻されるであろう額をもって一株の価額とする方式を指す場合もあり、必ずしも一義的でない。右の各方式のうちで、①の方式が適当でないことはいうまでもない。決算貸借対照表上の資産項目の大部分は、それ以後の毎事業年度に費用として配分されることによって期間損益を明らかにするところの費用の未配分額(未実現費用の集積)の集積としてとらえられるべきものであり、したがって、純資産の一株当たりの帳簿価額自体は、株式の時価に関して、何ら意味ある情報を提供するものでないからである。他方、現時点で会社が解散・清算されると仮定する②の方式については、会社は実際に現時点で解散されるわけではないこと、仮に将来解散される可能性があるとしても、その際の残余財産分配額は、配当還元方式を採用した場合の予測残余財産分配額として考慮すれば足りると考えられることから、やはり適当な方式とはいえない。 そもそも、現に事業を継続している会社の株式の評価に当たり、清算を前提とした評価方法を用いることは不適切である。純資産価額方式による評価の矛盾は、土地の評価に集約される。仮に、商店街など比較的地価の高いところに営業用のため相応の土地を有している法人の代表者について相続が開始すると、その土地は営業を続けていく上での使用価値以上の価値を有する 土地の評価に集約される。仮に、商店街など比較的地価の高いところに営業用のため相応の土地を有している法人の代表者について相続が開始すると、その土地は営業を続けていく上での使用価値以上の価値を有するものではないが、純資産方式によりその株式を評価すると、地価の高騰分が含み益としてその敷地の評価額を構成し、その膨らんだ評価額が会社資産の持分としての株価に跳ね返ることになる。要するに、事業を継続している会社の株主が現実に取得する利益は配当金のみであるのに、純資産価額方式によると、株価の主要な要素である配当の主要な要素である配当性や収益性がほとんどその評価に反映されない反面、右のような未実現利益が評価額に組入れられ、課税されるという結果を招くものである。 (三) なお、評価通達によれば、取引相場のない大会社の株式は、原則的には類似業種比準方式によって評価されることになっている(前記一2(一))。 しかし、類似業種比準方式による場合、事業内容や事業規模等の点において、標本会社と評価会社の類似性を担保することが困難であり、比較対照する標本会社の数値如何により評価額が大きく変動するものであるから、その数値が評価会社の数値と類似性が希薄な場合は、著しく妥当性に乏しい評価額を生じる上、株式市場の乱高下を反映した標本会社の株価を基準とするため、実際には譲渡・換金性のほとんどない非上場株式の評価額が、株式市況と連動した非現実的な額となるなど、多くの矛盾が生じるおそれがあるのであって、右方式が財産評価の方法として妥当でないことは明らかである。 (四) 以上から明らかなように、土地保有特定会社の評価は、適切な取引事例のない場合においてはすべて配当還元方式によるべきである。そうすると、別紙記載のとおり、本件株式の時価は、一株当たり七五〇円、合計で六〇〇万円となる。 うに、土地保有特定会社の評価は、適切な取引事例のない場合においてはすべて配当還元方式によるべきである。そうすると、別紙記載のとおり、本件株式の時価は、一株当たり七五〇円、合計で六〇〇万円となる。 4 さらに言えば、本件株式については、評価通達によらないで評価することが合理的であると認められる特別の事情がある。 (一) 納税者が、評価通達によらないことに特段の合理的な理由があり、かつ、評価通達によらない評価方法が客観的で妥当性を有するものであることを正当に立証した場合には、評価通達によらない他の適正な評価によることが許されると解すべきである。そして、経済変動に伴い目的物の価額が変動するなど特段の事情があるため、評価通達を形式的に適用すると不当な結果が生ずる場合のみならず、評価通達適用の要件を形式的に解釈すると不当な結果を生ずる特段の事情がある場合にも、右の特段の合理的な理由があるものというべきである。 (二) 本件被相続人は、中外石油の現経営陣から経営権を剥奪され、創業者としての処遇をされてこなかったものである。本件被相続人が所有していた本件株式を相続により原告が取得しても、純資産価額方式で算定された評価額に相当する経済的メリットは何ら得られず、株式の配当すら満足に期待できないものであった。純資産価額方式により本件株式が一一億円余の価値を持つものと評価されても、この株式を同価格で購入しようとする第三者はほとんど絶対といってよいほど出てこない。本件株式を購入することに経済的関心ないし利害を有するのは現経営陣をおいてほかにあり得ないのである。このような事情がある場合においても、評価通達をただ形式的かつ機械的に適用するならば、原告は極めて過度な課税負担を強いられることになり、法の基本精神に照らしても不当な結論が導かれることになる。 (三) 元来、 事情がある場合においても、評価通達をただ形式的かつ機械的に適用するならば、原告は極めて過度な課税負担を強いられることになり、法の基本精神に照らしても不当な結論が導かれることになる。 (三) 元来、中外石油は、本件被相続人、Bの亡父、Dの三者により保有されていたものであり、その後、発行済株式総数の三分の一を超える株式を有していBの亡父は、相続税対策のため、保有株式の一部を第三者に譲渡したが、本件被相続人以外の株主らは、本件被相続人と対立する、会社経営権を把握していた「発行済株式総数の五〇パーセント以上を保有する株主グループ」と評価すべき人たちであった。そして、本件相続開始後も、B、Dが結託し、半年にわたり、Hと対立することとなった。このように、当時の状況下では、全体の約三分の一の抹式を保有するにすぎない原告側の保有株式は、過半数の株式を保有するB・Dグループの前では、およそ、支配プレミアムを持ち得ない株式であったものである。 したがって、中外石油について原告側を同族株主として把握する被告の事実認定は誤っており、少なくとも、評価通達の規定の趣旨から逸脱する適用が行われたものといわざるを得ない。当時の、原告側の保有株式のメリットとしては、解散による純資産価値しかなかったのであるが、前記2(二)で述べたとおり、純資産価額方式は、株式会社の解体を前提とする評価方法であり、本件には適合しないものである。 (四) 中外石油においては、従来から東京都千代田区内においてガソリンスタンドの経営を主たる業務として行ってきており、現在も、その状態は変わっていない。ところが、バブル経済という一般的な経済事情のため、その保有に係る不動産の市場性に劇的な変動が生じ、短期間のうちに地価が異常なまでに高騰したため、保有土地の価額が総資産価額に占める割合が八八パーセント ころが、バブル経済という一般的な経済事情のため、その保有に係る不動産の市場性に劇的な変動が生じ、短期間のうちに地価が異常なまでに高騰したため、保有土地の価額が総資産価額に占める割合が八八パーセントに至ることとなった。 被告は、かかる異常な高値にある土地の価額を基準として、中外石油を土地保有特定会社と認定したのである。しかし、その後のバブル経済の崩壊等をみる限り、本件相続開始当時の土地の評価があまりにも高きに失していたことは明らかであり、そのような土地の評価に基づいて同会社を土地保有特定会社と認定すること自体が誤りといわなければならない。 本来であれば、課税当局は、バブル経済の変動という何人にも予測し難い急速な変動を考慮して、土地保有特定会社に該当するか否かの判断基準を厳格化する必要があったのである。具体的には、課税当局は、土地保有特定会社とされる場合のその土地保有率を七〇パーセントから相当程度引き上げ、あるいは本件相続開始当時においてバブル経済の崩壊が始まっており、地価が下落することを予想できたのであるから、その地価下落を盛り込んで、土地保有特定会社に該当するかどうかの判定を行うべきであったのである。 右のような取扱いは、課税時期前の資産構成の変動に対する措置を定めた評価通達一八九との対比からも許容されるべきである。すなわち、課税時期直前に土地以外の資産を借入金により取得し、土地保有割合を引き下げた場合において、当該取引に経済的合理性が認められず、土地保有特定会社と判定されることを回避するために行われたものと認められる場合には、そのような資産変動はなかったものとして土地保有特定会社の判定を行うとされている(評価通達一八九)。そうであれば、本件のように、中外石油の関与しないバブル経済の沸騰とその後の崩壊に伴う土地の価格の乱高下があった 変動はなかったものとして土地保有特定会社の判定を行うとされている(評価通達一八九)。そうであれば、本件のように、中外石油の関与しないバブル経済の沸騰とその後の崩壊に伴う土地の価格の乱高下があった場合に関しては、公平の観点からいって、地価の異常な上昇はなかったものとして土地保有特定会社に当たるか否かの判定を行うべきである。そして、バブル経済が崩壊して地価や株価が急速に下落しているにもかかわらず、このような価格低下を十分に考慮しないまま、安易な課税上の評価が行われたとするならば、右評価は公平な課税の前提条件を欠くことになるのである。 そして、右のような常識的かつ公平な判定が行われていれば、中外石油が土地保有特定会社と認定されることはなかったのである。 しかるに、課税当局は、税務行政上の理由等で右変動を的確にその評価額に反映させることができず、その結果、評価通達が本来想定していた土地保有特定会社と市場の実際における不動産の評価に基づき土地保有特定会社と判定された会社との間に著しい乖離が生ずるに至ったのであって、このような場合にはむしろ評価通達一八九ー三に定める土地保有特定会社の株式の評価方法によって得られた株式価格をもって、法二二条にいう「時価」ということができなくなるというべきである。 評価通達六の定めも、このように、評価通達による評価額が市場価格と著しく相違し「時価」ということができなくなるような事態が生ずることを想定したものということができるのである。 第三当裁判所の判断一相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により評価される(法二二条)。ここにいう「時価」とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい、右交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間に 産の取得の時における時価により評価される(法二二条)。ここにいう「時価」とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい、右交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって、いわゆる市場価格と同義であると解するのが相当である。 二本件株式を評価通達の定めに従い土地保有特定会社の株式として純資産価額方式により評価することの適否について 1 相続財産の客観的交換価値といっても、必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務においては、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、これに定められた画一的な評価方式によって相続財産の時価、すなわち客観的交換価値を評価するものとしている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものであり、したがって、相続財産の価格は、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特段の事情がない限り、評価通達に規定された評価方法によって画一的に評価するのが相当である。 2 評価通達は、上場株式及び気配相場のある株式とそれ以外の取引相場のない株式とを区別し、前者については取引価格によって評価し、後者については、評価会社の規模、性格、株主の実態等に応じて別の評価方法を定めているところ、次に述べるとおり、評価通達の定める取引相場のな ない株式とを区別し、前者については取引価格によって評価し、後者については、評価会社の規模、性格、株主の実態等に応じて別の評価方法を定めているところ、次に述べるとおり、評価通達の定める取引相場のない株式の評価方法は合理的なものであり、したがって、右評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、取引相場のない株式は右評価方法により評価するのが相当である。 (一) すなわち、上場株式及び気配相場等のある株式のように大量かつ反復継続的に取引が行われている場合には、多数の取引を通じて一定の取引価格が形成され、右取引価格は、市場原理を通じてまさに当事者間の主観的事情が捨象された当該株式の価値を客観的に反映しているものと考えられる。したがって、当該取引価格は原則として株式が客観的に有する交換価値として確立したものということができる。しかしながら、取引相場のない株式については、そもそも上場株式のように、大量かつ反復継続的な取引は予定されておらず、また、取引事例が存在するとしても、その数がわずかにとどまるにすぎない場合には、当事者間の主観的事情に影響されたものでないことをうかがわせる特段の事情がない限り、当該実例価格は、売買当事者間の主観的事情を離れた当該株式の客観的交換価値を反映したものとは評価できないというべきである。それゆえ、評価通達は、上場株式及び気配相場等のある株式と取引相場のない株式とを区別して、前者についてのみ取引価格によって評価することとしているものと解されるのであり、右区別は合理的である。 (二) そして、我が国において、取引相場のない株式は、株式の圧倒的多数を占めており、その発行会社の規模は上場会社に匹敵するものから、個人企業と変わらないものまで千差万別であって、会社の株主の構成をみても、いわゆるオ が国において、取引相場のない株式は、株式の圧倒的多数を占めており、その発行会社の規模は上場会社に匹敵するものから、個人企業と変わらないものまで千差万別であって、会社の株主の構成をみても、いわゆるオーナー株主といわれる株主のほか、従業員株主などの零細な株主が存在していることから、評価通達は、これらの実態を踏まえ、取引相場のない株式の価額について、合理的、かつ、その実態に即した評価を行うため、評価会社をその事業規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分し、それぞれの会社の株式の評価に適用すべき原則的評価方式を定めるとともに、零細な株主に代表される「同族株主以外の株主等が取得した株式」については、原則的評価方式に代えて、特例的評価方式である配当還元方式により評価することとしているのである。 (三) ところで、ある種の財産(たとえば土地、株式)については、その財産についての評価額と実際の取引価額との間に開差を生じさせることになり、右開差がこれを利用した租税回避行為の原因にもなっていることから、課税の公平の観点から、そのような開差の是正とともに、より株式取引の実態に適合するように評価の一層の適正化を図る目的で、平成二年八月三日付け直評一二・直資二ー二〇三をもって評価通達の一部改正が行われた(乙一、弁論の全趣旨)。すなわち、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等が一般の会社と異なる株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後三年未満の会社等、開業前又は休業中の会社、清算中の会社の各株式については、「特定の評価会社の株式」として特別な評価方法により評価することとし、その具体的な評価方法を評価通達一八九ー二ないし一八九ー五において定めた。右のうち、土地保有特定会社の株式の評価が純資産価額方式によることとされていることは、前記第二の一2に記載したとおりであ とし、その具体的な評価方法を評価通達一八九ー二ないし一八九ー五において定めた。右のうち、土地保有特定会社の株式の評価が純資産価額方式によることとされていることは、前記第二の一2に記載したとおりである。 土地保有特定会社の株式について評価通達が純資産価額方式を採用した趣旨は、土地保有特定会社の保有する資産の大部分が土地であることから、当該会社の資産性に着目し、その保有する土地等の価値を株価に反映させることにある。評価会社の資産の大部分が土地である場合には、当該評価会社はいわば、「土地の固まり」、すなわち土地そのものであるとみなすことができ、また、しばしば、その会社の所有する土地の価格に着目して会社の身売り(株式の売買)が行われるなど租税回避行為に利用されるという実情があることにかんがみれば、右のような会社の株式の評価に当たって、当該会社の資産性すなわち土地保有の状況に着目して純資産価額方式を適用するものとした右評価通達の定めを不合理なものということはできない。 なお、乙三によれば、昭和六三年度における業種別の会社の土地保有割合の状況をみると、最も高いものは「映画・娯楽業」(資本金五〇〇〇万円以上一億円未満)の三三・七パーセントであったことが認められ、このことと、措置法三二条二項で、評価会社の保有する資産のうちに占める短期保有の土地の割合が七〇パーセント以上であれば、その会社の株式を譲渡したとしても、これを当該会社の保有している土地の譲渡とみなして土地重課税を課すこととしている趣旨とを併せ考慮すれば、評価通達が、大会社の場合、土地等の価額が総資産の価額に占める割合が七〇パーセント以上であるか否かを土地保有特定会社に該当するか否かの判断基準としているのは妥当というべきである。 3 これに対し、原告は、そもそも、現に事業を継続している会社の 産の価額に占める割合が七〇パーセント以上であるか否かを土地保有特定会社に該当するか否かの判断基準としているのは妥当というべきである。 3 これに対し、原告は、そもそも、現に事業を継続している会社の株式の評価に当たり、清算を前提とした純資産価額方式という評価方法を用いることは不適切である、すなわち、事業を継続している会社の株主が現実に取得する利益は配当金のみであるのに、純資産価額方式によると、株価の主要な要素である配当性や収益性がほとんどその評価に反映されない反面、地価の高騰分のような未実現利益が評価額に組み入れられ、課税されるという結果を招くなど妥当性を欠くものである旨主張する。 確かに純資産価額方式については、原告が指摘するような問題点がないわけではない。しかしながら、株式は、会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであり、株主は、株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり、当該株式の理論的・客観的な価値は、会社の総資産の価額を発行済株式数で除したものと考えられるところである。また、株式の保有が会社財産の間接的保有であり、個人事業主が事業用資産を直接所有するのとは所有形態を異にすることから、評価通達では、純資産価額方式による純資産価額の算定に当たっては、①課税時期における各資産を評価通達の定めるところにより評価した価額の会計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額から、②課税時期における相続税評価額による総資産価額の基礎とした各資産の帳簿価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額を控除した残額がある場合にその残額に五一パーセント(清算所得に対する法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合) 計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額を控除した残額がある場合にその残額に五一パーセント(清算所得に対する法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合)を乗じて計算した金額を控除するものとし、これにより両者の財産の所有形態の違いによる評価の不均衡を解消することとしているのであり、これらの点を考慮すれば、評価通達が、その保有する資産の大部分が土地である評価会社の株式の評価について、前記2記載のような政策的配慮から、配当性や収益性といったものではなく、会社のその時点における純資産がいくらかということに着目した評価方法を採用していることは、不合理とはいえないというべきである。 4 そこで、評価通達に従い本件株式を評価すると、次のとおりとなる。 (一) 前記第二の二1(一)、(三)記載の事実によれば、中外石油は、卸売業以外の業種を営む会社であり、本件相続開始の直前期末における総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)は、一五億六九一九万〇九六二円であり、したがって、同会社は、評価通達一七八に定める「大会社」に該当する。 (二) 前記第二の二1(三)記載のとおり、同会社の本件相続開始の直前期末における貸借対照表に記載された各資産をそれぞれの資産の種類に対応する評価通達の定めるところにより評価した場合の各資産の価額の合計額は九二億〇一九七万四〇〇〇円であり、そのうち土地等の合計額は八〇億九五八一万九〇〇〇円であって、総資産価額に占める土地等の価額の割合は八八パーセントになるから、同会社は土地保有特定会社に該当する。したがって、本件株式の評価に当たっては、評価通達一八九(2)、一八九ー三に従い、純資産価額方式によって評価すべきである。そして、前記第二の二1(三)記載の事実を前提に、純資産価額方式により、中外石 たがって、本件株式の評価に当たっては、評価通達一八九(2)、一八九ー三に従い、純資産価額方式によって評価すべきである。そして、前記第二の二1(三)記載の事実を前提に、純資産価額方式により、中外石油の一株当たりの純資産価額を算出すると、別表4記載のとおり、一七万七八七〇円となる。 (三) 前記第二の二1(二)記載の事実によれば、原告とその同族関係者の有する株式の合計数は同会社の発行済株式の五〇パーセント未満であると認められるから、評価通達一八九ー三本文後段が適用になり、中外石油の一株あたりの純資産価額一七万七八七〇円に一〇〇分の八〇を乗じると、その一株当たりの相続税評価額は一四万二二九六円となる。そして、これに本件株式数八〇〇〇を乗じて算定すると、本件株式の相続税評価額は一一億三八三六万八〇〇〇円となる。 (四) なお、前記第二の二1記載の事実及び弁論の全趣旨によれば、同会社の株式は、取引相場のない株式であること、原告が本件相続により取得したのは同会社の株式の三三パーセントに当たり、かつ、他に同会社の発行済株式総数の五〇パーセント以上を保有する株主グループは存在しないことが認められ、したがって、本件株式は、評価通達一八八(1)に定める「同族株主以外の株主等の取得した株式」に該当せず、また、評価通達一八八(2)ないし(4)にも該当しないから、その評価に当たっては、評価通達一八八ー二に定める配当還元方式は適用されない。 三本件売買価格をもって本件株式の本件相続開始当時における時価とみるべきであるとする原告の主張について 1 ところで、取引相場のない株式については、上場株式のように大量かつ反復継続的な取引は予定されておらず、また、取引事例が存在するとしても、その数はわずかに止まり、その売買実例における価格は通常は売買当事者間の主観的事情を離 株式については、上場株式のように大量かつ反復継続的な取引は予定されておらず、また、取引事例が存在するとしても、その数はわずかに止まり、その売買実例における価格は通常は売買当事者間の主観的事情を離れた客観的交換価値を反映したものとは評価できないものであることからすれば、前記一で説示したとおり、一般的には、その評価は、評価通達に従って行うほかないというべきである。もっとも、取引相場のない株式であっても、当事者間の主観的事情に影響されず、株式の客観的交換価値を正当に評価した上で成立した適正な売買実例が存在する場合には、右売買実例における価額をもって適正な時価と評価することは可能であり、評価通達も、右のような適正な売買実例が存在する場合にこれにより株式の評価をすることを排除するものではないと考えられる。 2 そこで、本件売買が、当事者間の主観的事情に影響されず、株式の客観的交換価値を正当に評価した上で成立した適正な売買実例であり、本件売買価格が本件相続開始当時のその客観的交換価値を示すものといえるものかどうかについて検討を加える。 (一) この点に関し、原告は、中外石油の経営権をめぐって本件被相続人とB及びD側との間には対立があり、中外石油が資金不足を理由に買取りを拒否していたことから、原告の代理人であるHとBとの間で長期間にわたる交渉が行われ、漸く本件売買契約が成立したものであり、右売買契約の経緯に照らし、本件売買価格は適正な価額であるとして、本件売買価格をもって本件株式の本件相続開始当時における時価とみるべきである旨主張する。 (二) しかしながら、本件売買は、本件相続が開始した平成四年九月一日の約七か月後に行われたものであり、その間に、いわゆるバブル経済の崩壊により地価や株価が急激に下落したことは公知の事実であるから、この点をみただけでも 、本件売買は、本件相続が開始した平成四年九月一日の約七か月後に行われたものであり、その間に、いわゆるバブル経済の崩壊により地価や株価が急激に下落したことは公知の事実であるから、この点をみただけでも、本件売買価格をもって本件相続開始当時の時価であるといえないことは明らかである。 (三) しかも、中外石油の定款には「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を得なければならない。」旨の規定が置かれ、本件株式はいわゆる譲渡制限のある株式であること、本件売買は、中外石油の株式の三三パーセントを保有する最大の株主である原告と同会社との間で右株式のすべてを一括して売買するものであることは前記第二の二記載のとおりであり、また、前記第二の二3、4記載の事実に証拠(甲九、一三、一五、証人H、同B)及び弁論の全趣旨を併せれば、以下の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。 (1) 本件相続開始当時、本件被相続人及びHは、保証債務を含めそれぞれ約三〇億円の債務を有していたのに対し、積極財産としては東京都千代田区<以下略>の自宅、東京都世田谷区<以下略>の借地(約一〇〇坪)のほかは本件株式がある程度であった。 (2) Hは、原告を代理して中外石油との間で本件売買の交渉に関与した者であるが、本件相続が開始した平成四年九月から同年一二月ころにかけ、右債務の返済を迫られており、同年一一月ころには、事務所立退きの強制執行や自宅の家財の競売をされ、平成五年四月二六日、浦和地方裁判所に対し破産宣告の申立てをするに至った。 (3) 中外石油は、本件売買当時、本件株式を買い取るのに必要な資金が十分でなく、銀行からの借入れによって本件株式を買い取ることにしたが、同会社の経営状態などから、高額の借入れは難しい状況にあった。 (4) 本件売買の交渉は、Hから依頼されたNと中 るのに必要な資金が十分でなく、銀行からの借入れによって本件株式を買い取ることにしたが、同会社の経営状態などから、高額の借入れは難しい状況にあった。 (4) 本件売買の交渉は、Hから依頼されたNと中外石油の代理人である上野健二郎弁護士との間で行われ、Nは、当初約一一億四〇〇〇万円(本件更正処分における本件株式の相続税評価額)以上の金額での本件株式の買い取りを求めていたが、中外石油側はこれには応じられないということであり、交渉が重ねられた結果、代金額を「五億円から一〇億円の間」でまとめようという話がNから示された。これに対し、中外石油の代表取締役であるBは、銀行からの借入額を含めた同会社の支払能力と、本件株式が本件更正処分によって一一億三八三六万八〇〇〇円と評価されていることから、これを大幅に下回るような低額な売買だと税務上の低廉譲渡に当たるおそれがあることなどを考慮し、最終的に、本件株式の購入価格を六億三〇〇〇万円とすることに合意した。 (5) Hは、本件株式の売却代金を本件相続税の納税に充てたほか、本件被相続人やHの負担した債務、保証債務の弁済に充てた。 右事実によれば、中外石油の株式については取引相場がなく、売主と買主という当事者間の個別事情が売買価格に大きく影響すると考えられるところ、本件売買は、中外石油が発行済株式数の三分の一に上る自己株式を一括して買い取るというものであり、中外石油の資産という点からみれば同会社にとってメリットは特にないものの、同会社の他の株主からみれば、その保有割合を一気に高めるものであるという側面があり、様々な思惑や利害が錯綜し、現実に行われた売買価格がかかる主観的な要素によって影響を受けていることが優に推認されるし、また、本件株式の売却に当たり、原告を代理したHは、資金繰りに窮しており、多少代金が安くて や利害が錯綜し、現実に行われた売買価格がかかる主観的な要素によって影響を受けていることが優に推認されるし、また、本件株式の売却に当たり、原告を代理したHは、資金繰りに窮しており、多少代金が安くてもこれを売却する必要に迫られていたこと、他方、中外石油は、資金不足等から本件株式を高額で買い取ることはできない状態にあったことが認められるのであって、これらの事情を考慮すると、本件売買には当事者の主観的事情・個人的事情等の要素が強く影響していると認めるほかない。 (四) 以上のように、本件売買は本件相続開始の約七か月後に行われたものであるが、その間にバブルの崩壊による地価の急激な下落があったこと、本件売買には、売買価格の決定に主観的事情・個人的事情等の要素が強く影響していたと認められることからすれば、本件売買価格が本件相続開始当時における当事者間の主観的事情等を離れた本件株式の客観的な交換価値を反映したものであるとは認められないというべきである。したがって、原告の前記主張は理由がない。 3 原告は、本件株式の時価が被告主張のとおり一一億三八三六万八〇〇〇円であるとすると、被告が中外石油に対し受贈益の認定を行わなかった理由の説明がつかない旨主張する。 しかしながら、株式等の取引があった場合において、売買するに至った経緯等に照らして、合理的な経済人の取引として経済的合理性が認められるものである限り、法人税の課税上は、右取引は正常な取引として是認されるものであり、正常な取引であると認定される売買価格には一定の幅があるものと考えられるから、評価通達の定める統一的、画一的な基準に基づき評価される相続税評価額と右取引額との間に一定の格差が生ずることはやむを得ないことである。加えて、本件売買は本件相続が開始した約七か月後に行われたものであり、その間に株価が著 的、画一的な基準に基づき評価される相続税評価額と右取引額との間に一定の格差が生ずることはやむを得ないことである。加えて、本件売買は本件相続が開始した約七か月後に行われたものであり、その間に株価が著しく下落していること、株式が会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであるところ、本件売買によって中外石油が取得したのは取引相場のない自社株であって、それによって同会社の実質的な財産はかえって流出していることは右2で認定したとおりであるから、本件売買価格は、本件相続開始当時の本件株式の時価に比べて相当低いものになっているものと推認される。したがって、本件株式の本件相続開始当時の時価が被告主張のとおり一一億三八三六万八〇〇〇円であるからといって、被告が当然に中外石油に対し受贈益の認定を行うべきであるということにはならないというべきである。 しかも、本件で問題となっているのは、本件相続によって原告が取得した本件株式の本件相続開始当時の時価がいくらであるかであり、中外石油が本件株式を取得したのはこれと時期・取得原因を異にするのであるから、被告が中外石油に対し受贈益の認定課税を行わないからといって、原告に対する課税が正しく行われている限り、原告を不当に不利益に取り扱うものではないから、中外石油に対して受贈益の認定を行うか否かは、本件更正処分の適法性に何ら影響を与えるものではないというべきである。この点からも、原告の右主張は理由がない。 四取引相場のない非上場株式の評価は適切な取引事例のない場合にはすべて配当還元方式によるべきであるとする原告の主張について原告は、取引相場のない非上場株式の評価は、適切な取引事例のない場合にはすべて配当還元方式によるべきである旨主張する。 しかしながら、我が て配当還元方式によるべきであるとする原告の主張について原告は、取引相場のない非上場株式の評価は、適切な取引事例のない場合にはすべて配当還元方式によるべきである旨主張する。 しかしながら、我が国において、取引相場のない株式は、株式の圧倒的多数を占めており、その発行会社の規模は上場会社に匹敵するものから、個人企業と変わらないものまで千差万別であって、会社の株主の構成をみても、いわゆるオーナー株主といわれる株主のほか、従業員株主などの零細な株主が存在していることから、評価通達は、これらの実態を踏まえ、取引相場のない株式の価額について、合理的、かつ、その実態に即した評価を行うため、評価会社をその事業規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分し、それぞれの会社の株式の評価に適用すべき原則的評価方式を定めるとともに、零細な株主に代表される「同族株主以外の株主等が取得した株式」については、原則的評価方式に代えて、特例的評価方式である配当還元方式により評価することとしているところ、取引相場のない株式については、会社の規模、性格、株主の実態等に応じて適切な評価方法により評価を行うべきであり、この観点から、評価通達の右の定めは合理性を有するものであること、また、土地保有特定会社の株式については、評価通達に従い純資産価額方式により評価するのが相当であると考えられることは前記一に説示したとおりである。一方、配当還元方式は、多種多様な株価の決定要素のうち配当金のみを基準とする評価方式であるため、評価の適正もそれだけ担保し難い。しかも、その評価・計算の基礎となる配当額については客観的な支払基準が存在しないため、会社が配当額を決定するに当たり経営者の恣意が介入しやすく、実際にもこれが介入する場合が多い。さらに、個人事業者の場合には、個々の資産、負債を基に相続税 額については客観的な支払基準が存在しないため、会社が配当額を決定するに当たり経営者の恣意が介入しやすく、実際にもこれが介入する場合が多い。さらに、個人事業者の場合には、個々の資産、負債を基に相続税の課税価格が算出されるのであり、これと課税の権衡を図る必要性がある。これらの点を考慮すれば、配当還元方式は、例外的な評価方法として限定的に用いられるべきものというべきである。 しかも、原告の主張によれば、本件株式を配当還元方式で評価すると、本件相続開始当時の時価は合計六〇〇万円となるにすぎないことになるが、本件相続開始から約七か月が過ぎ、株価が相当程度下落していると思われる平成五年四月二日に行われた本件売買においてさえ、本件株式は合計六億三〇〇〇万円で売買されているのであり、このように価格が大幅に乖離することについて合理的な理由は認められず、このことは、本件株式の評価を配当還元方式によって行うことが妥当でないことを示すものというべきである。 したがって、右主張は採用することができない。 五本件株式の評価に当たり評価通達によらないで評価することが合理的であると認められる特別の事情があるとする原告の主張にについて 1 前記二1で説示したとおり、取引相場のない株式について評価通達に定める評価方法は合理的であり、かかる評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、取引相場のない株式については、評価通達に基づき評価するのが相当である。 2 原告は、同族株主に該当するか否かについては、支配従属関係を考慮し、実質的に判断するべきであり、全体の約三分の一を保有するにすぎない原告側の保有株式(本件株式)は、過半数を超えるB・Dグループの株主の前では、およそ支配プレミアムを持ち得ない株式であって、原告は配当のみによって利益を受 であり、全体の約三分の一を保有するにすぎない原告側の保有株式(本件株式)は、過半数を超えるB・Dグループの株主の前では、およそ支配プレミアムを持ち得ない株式であって、原告は配当のみによって利益を受ける非支配株主にすぎないから、本件株式は配当還元方式による評価になじむものである旨主張する。 しかしながら、取引相場のない株式の発行会社の場合、会社によって株主間の経営権をめぐる対立状況、派閥の構成、個人的な思惑等は千差万別であるところ、ありとあらゆる事情を的確に把握して評価に反映させて、実質的に同族会社に該当するかどうかを判断すべきものとするのは、課税庁等に極めて困難な作業を求めるものであって、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて妥当性を欠くというべきであるし、支配従属関係を考慮して実質的に同族株主に当たるか否かを判断するということになるとすれば、同族株主とするか否かの基準が極めてあいまいになるだけではなく、評価を行う者によって異なった評価がされるおそれがあり、その評価に課税権者の恣意が介入し、課税の公平を欠くおそれすらあるといえるのであって、これらの点を考慮すれば、評価通達が「同族株主」の範囲を形式的に支配従属関係が及ぶとされる一定範囲の者とし、画一的に同族関係者の範囲を定めることとしているのは、回帰的かつ大量に発生する課税事務上の迅速な処理の要請及び課税の公平の観点からむしろ合理的であるというべきである。 したがって、原告の右主張は採用することができない。 3 原告は、中外石油の主たる業務が従来から現在に至るまでガソリンスタンドであってその状態は変わっていないのに、被告が、一時的に異常に高騰した地価を前提として、中外石油の総資産価額に占める土地の価額の割合が八八パーセントだとして同会社を土地保有特定会社と認定したのは、その後 ってその状態は変わっていないのに、被告が、一時的に異常に高騰した地価を前提として、中外石油の総資産価額に占める土地の価額の割合が八八パーセントだとして同会社を土地保有特定会社と認定したのは、その後のバブル崩壊等の経済変動を見る限り土地の評価が高きに失したためであって誤りであり、バブル経済の沸騰とその後の崩壊に伴う土地価額の乱高下について中外石油は何ら関与していないのであるから、評価通達一八九との対比及び公平の観点から、本件においては、そのような価額上昇はなかったものとして土地保有特定会社の判定を行うべきである旨主張する。 しかしながら、法二二条は、相続により取得した財産の価額は、相続開始時の時価によると規定しているから、中外石油が土地保有特定会社に該当するか否かを判定する基準時は、本件相続開始当時であり、たとえそれ以後に地価が下落したとしても、そのことが右判定に何ら影響しないことは当然である。しかも、バブル経済による地価の上昇とはいえ、それが全体的な地価の上昇であり、その高騰した価格で土地取引等が行われたことは公知の事実であるから、そのような高騰した地価がその当時における客観的な交換価値であったといわざるを得ない。そして、かかる地価の高騰は、評価会社が土地保有特定会社と認定されることを避けるために評価会社の資産構成をことさら変動させた場合(評価通達一八九参照)とは明らかに異なり、経済全体の動向の中の一つの現象であるから、そのような高騰した地価を基に時価を評価しても何ら公平の原則に反するものではない。 したがって、原告の右主張は採用することができない。 4 原告は、課税当局においては、バブル経済の変動という何人にも予測し難い急速な変動を考慮して、評価通達に定める土地保有特定会社に該当するか否かの判定基準を相当程度上昇させ、あるいは、バ できない。 4 原告は、課税当局においては、バブル経済の変動という何人にも予測し難い急速な変動を考慮して、評価通達に定める土地保有特定会社に該当するか否かの判定基準を相当程度上昇させ、あるいは、バブル経済の崩壊による地価下落を盛り込んで、右変動を的確に土地の評価額に反映させるなどし、中外石油を土地保有特定会社と評価しないで課税処分を行うべきである旨主張する。 しかしながら、そもそも課税基準時である相続開始時における時価を算定するのに当たって、相続開始後に生じた事情を相続開始時に遡って考慮すべきではないから、相続開始後の地価の下落を土地の評価額にあらかじめ盛り込んだり、相続開始後の地価の下落を相続開始当時の客観的な交換価値の把握に当たって考慮したりする余地はないものである。 また、土地保有特定会社の株式について評価通達が純資産価額方式を採用した趣旨は、土地保有特定会社の保有する資産の大部分が土地であることから、当該会社の資産性に着目し、その保有する土地等の価値を株価に反映させることにあること、評価会社の資産の大部分が土地である場合には、当該会社はいわば、「土地の固まり」、すなわち土地そのものであるとみなすことができ、また、しばしば、その会社の所有する土地の価格に着目して会社の身売り(株式の売買)が行われるなど租税回避行為に利用されるという実情があることにかんがみれば、右のような会社の株式の評価に当たって、当該会社の資産性すなわち土地保有の状況に着目して純資産価額方式を適用するものとした右評価通達の定めを不合理なものということはできないこと、土地保有特定会社とされる基準となる土地保有率を七〇パーセントとする評価通達の定めが合理的であることは、前記二に説示したとおりであるところ、右評価通達の規定の趣旨からすれば、土地が高騰している場合に、 地保有特定会社とされる基準となる土地保有率を七〇パーセントとする評価通達の定めが合理的であることは、前記二に説示したとおりであるところ、右評価通達の規定の趣旨からすれば、土地が高騰している場合に、土地保有特定会社に該当するか否かを判定するに当たってその高騰分を土地の評価に反映させないように配慮すべき必要性は認め難く、本件相続開始当時、バブル経済によって地価が高騰していたからといって、土地保有特定会社に該当するか否かの判定基準を大会社の場合右七〇パーセントから相当程度上昇させる必要があったということはできない。 したがって、原告の右主張は採用することができない。 六以上の次第で、本件株式は評価通達一八九(2)、一八九ー三に従い純資産価額方式により行うべきであり、そうすると、前記二4記載のとおり、本件株式の相続税評価額は、一株当たり一四万二二九六円、合計で一一億三八三六万八〇〇〇円となる。そして、これと前記第二の三記載のその余の争いのない金額を基にして本件相続に係る原告の相続税を計算すると、課税価格七億九五八三万二〇〇〇円、納付すべき税額一億一〇七一万七七〇〇円となるところ、本件更正処分は、これと同額であるから適法である。 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第三部裁判長裁判官青柳馨裁判官増田稔裁判官篠田賢治

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