令和7(わ)4 窃盗、準詐欺、業務上横領被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年5月12日 佐賀地方裁判所
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判決文本文3,364 文字)

令和7年5月12日宣告令和7年(わ)第4号、第21号、第39号窃盗、準詐欺、業務上横領被告事件主文被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】第1 被告人は、A(当時77~80歳)が認知機能の低下により事物の判断をするのに十分な普通人の知能を欠く状態にあることに乗じてAから現金の交付を受けようと考え 1 令和3年5月12日、Aを佐賀市(住所省略)株式会社B銀行C出張所に同行した上、同出張所において、同出張所職員に対し、A作成名義の払戻請求書及び振込依頼票各1通を提出するなどし、同出張所に開設されたA名義の普通預金口座から同出張所に開設された被告人名義の普通預金口座への振込を依頼させ、よって、同日午後2時28分頃、同出張所において、情を知らない同出張所職員を介し、A名義の普通預金口座から前記被告人名義の普通預金口座に現金3000万円を振込入金させ、もって人の心神耗弱に乗じて財物を交付させた。 2 同年6月9日、Aを佐賀市(住所省略)株式会社B銀行D支店に同行した上、同支店において、同支店職員に対し、A作成名義の払戻請求書及び被告人作成名義の入金票各1通を提出するなどし、A名義の普通預金口座から現金400万円の払戻しを依頼させるとともに、同支店に開設された被告人名義の普通預金口座への入金を依頼し、よって、同日午前11時27分頃、同支店において、情を知らない同支店職員を介し、A名義の普通預金口座から払い戻した現金400万円を前記被告人名義の普通預金口座に入金させ、もって人の心神耗弱に乗じて財物を交付させた。 3 令和6年5月24日、Aを前記B銀行D支店に同行した上、同支店において、同支店職員に対し、A作成名義の払戻請求書1通を提出するなどし、 せ、もって人の心神耗弱に乗じて財物を交付させた。 3 令和6年5月24日、Aを前記B銀行D支店に同行した上、同支店において、同支店職員に対し、A作成名義の払戻請求書1通を提出するなどし、前記B銀行C出張所に開設されたA名義の普通預金口座から現金185万円を払い戻させ、同日午前11時11分頃、同支店において、情を知らない同支店職員を介し、Aから現金185万円の交付を受け、もって人の心神耗弱に乗じて財物を交付させた。 4 同年6月21日、Aを前記B銀行D支店に同行した上、同支店において、同支店職員に対し、A作成名義の払戻請求書1通を提出するなどし、前記3記載の口座から現金210万円を払い戻させ、同日午前11時26分頃、同支店において、情を知らない同支店職員を介し、Aから現金210万円の交付を受け、もって人の心神耗弱に乗じて財物を交付させた。 第2 被告人は、正当な払戻権限がないにもかかわらず、別表(省略)記載のとおり、令和5年8月7日から令和6年3月19日までの間、7回にわたり、前記B銀行C出張所及び前記B銀行D支店において、各所に設置された現金自動預払機にA名義のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ、同機から当時の株式会社B銀行D支店支店長管理の現金合計350万円を引き出して窃取した。 第3 被告人は、佐賀市立E小学校区の各自治会会長により構成されるE校区自治会長会の会長として、同会を代表し、その会務を総理する業務に従事していたものであるが 1 令和6年7月5日午前10時37分頃、前記B銀行D支店において、前記B銀行C出張所に開設されたE自治会長会名義の普通預金口座から現金30万円を出金し、これを同会のために業務上預かり保管中、同日午前10時41分頃、同支店において、自己の用途に費消する目的で、同支店に開設され 張所に開設されたE自治会長会名義の普通預金口座から現金30万円を出金し、これを同会のために業務上預かり保管中、同日午前10時41分頃、同支店において、自己の用途に費消する目的で、同支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金17万円を入金し、もって横領した。 2 令和6年7月19日午前11時53分頃、前記B銀行D支店において、前記B銀行C出張所に開設されたE校区自治会後援会名義の普通預金口座から現金30万円を出金し、これを前記自治会長会のために業務上預かり保管中、同日午前11時57分頃、同支店において、自己の用途に費消する目的で、前記被告人名義の普通預金口座に現金29万円を入金し、もって横領した。 【法令の適用】罰条判示第1の各所為いずれも刑法248条判示第2の各所為いずれも刑法235条(別表番号1及び2、同4~7はそれぞれ包括して)判示第3の各所為包括して刑法253条刑種の選択判示第2の各罪いずれも懲役刑選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書【量刑の理由】まず、判示第1の各準詐欺及び判示第2の各窃盗は、かねてより市議会議員や自治会長を務めていた被告人が、夫に先立たれた高齢の被害者が保有する多額の遺産等の資産に目を付け、遺産分割協議に助力する素振りを示しつつ、被害者の認知機能が低下した状態に付け込み、3000万円という大金を自身の口座に移転させ(判示第1の1)、その後も被害者の同状態を利用し、被害者の口座から400万円を自身の口座に入金させたり(判示第1の2)、被害者が取得した共済解約金や農地の売却金等の合 う大金を自身の口座に移転させ(判示第1の1)、その後も被害者の同状態を利用し、被害者の口座から400万円を自身の口座に入金させたり(判示第1の2)、被害者が取得した共済解約金や農地の売却金等の合計350万円を出金して窃取したりし(判示第2)、挙句の果てには、被 害者の亡き夫の借金返済のためなどと不動産業者等に嘘を言って被害者の自宅売却を主導し、その売却代金のほとんどである合計395万円までも詐取した(判示第1の3・4)ものであり、自身の社会的な信用や被害者からの信頼を逆手に取り、犯罪が発覚しないよう周囲に立ち回りつつ、高齢の被害者の資産をとことんまで貪り尽くす、周到かつ執拗で、卑劣極まりない態様である。その結果、被害者は持つべき資産のほとんどである合計4145万円を失った上、亡き夫と長年生活した自宅をも失い、自宅内の荷物もほとんど持たないまま賃貸物件に転居させられ、生活保護を受けるまで困窮するに至っており、被害者の今後の生活に与えた悪影響は甚大というほかない。 また、判示第3の業務上横領も自身の信頼を悪用した背信的な犯行であり、被害額も合計46万円と多額であり、今後の自治会長会の運営に与えた悪影響は軽視できない。 被告人が各犯行に至った経緯や動機については不明な点もあるが、各犯行に及んでいる最中に競艇等のギャンブルを繰り返していた様子がうかがわれる一方、各犯行を正当化するような状況が何らうかがわれないことに鑑みると、同情の余地は乏しい。弁護人は、被告人の認識について、被害者の認知機能が低下していることについては未必的なものであった旨主張するが、そうであるとしても、各犯行の態様及び結果に見合った責任非難を向けるべきである。 そして、各犯行の被害弁償がされておらず、今後される具体的な目途も認められないことに照らすと、本 った旨主張するが、そうであるとしても、各犯行の態様及び結果に見合った責任非難を向けるべきである。 そして、各犯行の被害弁償がされておらず、今後される具体的な目途も認められないことに照らすと、本件は、被告人に対し、相当期間の懲役刑の実刑を科すべき事案といえる。 その上で、被告人が、事実を認めて反省の態度を示していること、異種の罰金前科1犯を除けば前科を有さないこと、長年町議会議員や市議会議員を務めるなど地域に貢献してきた一面もあること、妻が出廷し、更生に協力する旨述べていることなど被告人のために斟酌できる事情を最大限考慮し、主文の刑期を量定した。 (検察官の求刑:懲役8年の実刑) 令和7年5月12日佐賀地方裁判所刑事部 裁判官山田直之

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