【DRY-RUN】主 文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人の負担とする。 理 由 本件抗告理由は別紙記載のとおりである。 よつて按ずるに、 一、 相手方が東
主文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人の負担とする。 理由 本件抗告理由は別紙記載のとおりである。 よつて按ずるに、一、 相手方が東京都港区a町b番ノc宅地二百五十五坪三合五勺を所有すること、昭和二十年四月当時、抗告人が相手方から右宅地の内、東北部五十坪を除く残余の部分に存する相手方所有の(一)木造瓦葺二階建家屋一棟建坪五十七坪五勺二階四十八坪五合、(二)木造トタン葺平家建家屋一棟建坪十一坪二合五勺、(三)本造トタン葺平家建家屋一棟建坪七坪八合、(四)木造トタン葺二階建家屋一棟建坪八坪二階同坪の四棟を、期間の定めなく、賃料一ケ月金二百円、毎月二十五日支払の約定で賃借していたこと、前記家屋四棟が、東京都長官から相手方に対する防空法第五条の十の規定に基く譲渡命令によつて昭和二十年四月中、相手方から東京都に譲渡され、右家屋の賃貸借が黙示の意思表示により合意解除されたこと、前記(二)ないし(四)の家屋三棟は、その後間もなく防空上の必要によつて除却されたけれども、右(一)の家屋は遂に除却されず、戦時補償特別措置法第六十条第一項の規定によつて、昭和二十二年三月三十一日東京都から相手方に譲渡されたこと、並びに抗告人は相手方に対し昭和二十二年三月十二日附同月十九日到達の書面で、前記(一)の家屋の賃借及び(二)ないし(四)の家屋三棟の敷地の賃借の申出をしたところ、相手方が抗告人に対し同年四月四日附同月七日到達の書面で、該申出を拒絶したことは、本件記録に存する各資料に徴して明かである。 抗告人は、前記建物は防空法第五条の六の規定に基き除却のため東京都に収用されたものでおると主張するけれども、これを首肯するに足る資料はなく、その他前示認定を覆し抗告人の主張事実を認むべき証拠はない。 二、 前記建物は防空法第五条の六の規定に基き除却のため東京都に収用されたものでおると主張するけれども、これを首肯するに足る資料はなく、その他前示認定を覆し抗告人の主張事実を認むべき証拠はない。 二、 家屋賃借申出の効果。 抗告人が賃借申出をした前記(一)の家屋は、前述の如く、先きに防空法第五条の十の規定によつて東京都に譲渡されたが、その除却をみない間に終戦となり結局相手方に再譲渡となつたものである。 抗告人はかゝる家屋についても、罹災都市借地借家臨時処理法第十四条の準用によつて、これが賃借申出をなし得べぎものであると主張する。 <要旨>しかしながら同法案は、罹災建物又は疎開建物の旧借家人のために無制限に新築建物の優先賃借権を賦与せ</要旨>んとするものではなく、その優先賃借権が与えられるのは、罹災又は疎開跡地に「最初に」築造された建物についてのみ、しかもその「完成前に」賃借申出をした場合に限るのであつて、優先賃借権にかゝる制約を設けた所以は、若し敍上の如き制約なくして無制限に優先賃借権を認めるとすれば、旧借家人の保護が厚きに過ぎて、現に建物を利用する者の利益が不当に脅かされる結果となることを避けんとした決意に外ならないと解すべきである。 これを本件についてみるに、後段において説述するが如く、前記建物は、抗告人の賃借申出前である昭和二十年九月一日以降鳥羽電機株式会社(当時は日本工熱電気株式会社と称す)において、当時の所有者なる東京都から賃借し、その後右建物が相手方に譲渡され、戦時補償特別措置法施行規則第七十六条第二項の規定によつて、同会社が依然として右家屋を使用し得るこゝとなつた結果、相手方においても引続き該家屋を右会社に賃貸して現在に及んでいるものである。従つて同会社は抗告人の賃借申出前から適法に該家屋を賃借使用しているものであるから、 して右家屋を使用し得るこゝとなつた結果、相手方においても引続き該家屋を右会社に賃貸して現在に及んでいるものである。従つて同会社は抗告人の賃借申出前から適法に該家屋を賃借使用しているものであるから、かゝる場合において抗告人の優先賃借権を認めることは、甚だしく旧借家人なる抗告人の保護が厚きに失し、前記建物を適法に利用する右会社の利益を不当に阻害する結果となり、著しく衡平の観念に背馳するものといわなければならない。されば前記法条の精神から考えて、本件の如き場合には、罹災都市借地借家臨時処理法第十四条の準用はないものと解するのが相当である。敍上の見解に反する抗告人の所論は採用し得ない。 従つて抗告人が右家屋の賃借権を有することの確認並びに右家屋の借家条件決定の裁判を求める申立は理由がない。 三、 土地賃借申出の効果。 (一) 乙第一号証、同第三号証の一ないし三、同第四号証、原審証人A、Bの各証言、並びに原審における相手方代理人の昭和二十四年二月二十六日附答弁書の記載を綜合すると、次の事実が認められる。 (1) 抗告人は右建物疎開前、前記(一)の家屋の主たる建物とし、(二)ないし(四)の家屋を附属建物として、東京肛門病院を経営していたものであつて、前記宅地二百五十五坪三合五勺の内、東北部五十坪を除く残余の部分は同病院の構内となつており、その内右(一)ないし(四)の家屋の敷地を除く部分は通路及び庭園等となつていた。 (2) 鳥羽電機株式会社(もと日本工熱電機株式会社と称す)は東京肛門病院と道路を距てた向側のd村町e番地に営業所及び主工場を、又同病院の隣地に分工場を有し、軍需品の製造販売を営んでいたところ、昭和二十年四月十六日空襲によつて、右営業所及び主工場が焼失したため、営業所を右分工場に、又主工場を、当時内部のみ取毀してあつた前記(一) の隣地に分工場を有し、軍需品の製造販売を営んでいたところ、昭和二十年四月十六日空襲によつて、右営業所及び主工場が焼失したため、営業所を右分工場に、又主工場を、当時内部のみ取毀してあつた前記(一)の建物に金五万五千三百余円の費用を投じて改修した上、これに移し、東京肛門病院の構内跡全部を工場用地として使用して生産を続けていたが、終戦後も引続きこれら土地建物を使用して、進駐軍関係の住宅用品及び輸出向電熱器等の生産を営んでいるものである。 (3) 右鳥羽電機株式会社は昭和二十年九月一日東京都から前記(一)の家屋を、賃料一ケ月金三百五十三円、三ケ月分宛前払の約定で、期間を定めず賃借し、同日以降は適法に右家屋を使用してきたものであつて、同時に、東京肛門病院の旧構内跡全部をも、右(一)の家屋に附属するものとして、使用することを東京都から許されたので、同会社は該土地を右工場の構内として使用し、その後昭和二十一年五、六月頃前記(二)ないし(四)の建物の敷地であつた部分に、木造トタン葺平家建倉庫(建坪十四坪五合のものと二坪のもの)二棟を建築してこれを同工場倉庫に使用し、右敷地であつた土地の残余の部分は、同工場用酸素熔接ガス発生爐に接近しているため、危険区域としてこれを空地としてあるものである。(本件記録にあらわれた各資料に照して考えると、他に反証のない以上、前記東京肛門病院の旧構内の土地は、東京都が前述の如く(一)ないし(四)の家屋を譲受けてからその再譲渡までの間、東京都においてこれを相手方から賃借していたものであつて、相手方も右会社が該土地を使用することに諒解を与えていたものと推定するのが、相当である)(4) 相手方は昭和二十二年三月三十一日戦時補償特別措置法第六十条第一項の規定に基いて東京都から前記(一)の家屋を譲渡された結果、右会社は同法施行 解を与えていたものと推定するのが、相当である)(4) 相手方は昭和二十二年三月三十一日戦時補償特別措置法第六十条第一項の規定に基いて東京都から前記(一)の家屋を譲渡された結果、右会社は同法施行規則第七十六条第二項の規定によつて、引続き右家屋を使用することができることゝなつたので、同会社は相手方から右家屋を引続き賃借するに至り、同時に東京肛門病院の旧構内の土地についても、これを右建物に附属する工場用地として、依然右会社において使用することを、相手方も承諾し、双方の合意によつて従前の家賃を増額するに至つたものである。 (二) 抗告人の援用する乙第三号証の一ないし三の記載内容は、これを原審証人Aの証言に照せば、未だ以て、敍上の認定を妨ぐべき資料とは認め難く、又甲第三号証を以てするも直ちに右認定を覆すに足りない。その他前示各認定に反する抗告人の主張事実は、これを認めるに足る資料に乏しい。 (三) 抗告人は「東京都長官は本件建物を防空上の必要により除却の目的で収用したものであるから、その目的に反して自ら使用し或は他人に使用させる権限を有しないものであつて、東京都長官が前記会社に対し本件土地建物の使用を許可したことは、その許可が法律上の効力要件を欠く結果、当然無効である」と主張するので、その当否について次に考える。 前述の如く、本件建物が東京都に譲渡されたのは、防空上の必要により防空法第五条の十の規定に基いてなされたものであるから、その当時においては東京都長官はその目的に反して自ら使用し或は他人に使用させる権限を有しないものと解すべきであろう。しかしながら東京都長官が本件建物を前記会社に賃貸したのは、終戦後の昭和二十年九月一日であつて、当時は既に防空上の必要ということは解消されているものであるから、東京都長官としては、東京都の所有に帰して かしながら東京都長官が本件建物を前記会社に賃貸したのは、終戦後の昭和二十年九月一日であつて、当時は既に防空上の必要ということは解消されているものであるから、東京都長官としては、東京都の所有に帰している右家屋について、戦時補償特別措置法の規定に基き旧権利者に再譲渡されるに至るまでの間は、これを自ら使用し或は他人に使用させることに関して、特別の制約を受けるものでないと解するのが相当である。かく解するときは東京都長官が前記会社に対し本件家屋を賃貸し、同時に右家屋に附属する土地の使用を許可したことについては、抗告人所論の如くこれを無効であると断定することはできない。更に又右使用権設定手続に瑕疵があるとの抗告人の主張についても、これを認めるに足る根拠は見い出されない。 (四) 以上認定事実に基いて、抗告人の本件土地賃借申出の効果について考えてみるに、抗告人が前記(二)ないし(四)の建物の敷地として賃借申出をしている土地の坪数は、a町b番地のc宅地二百五十五坪三合五勺の内、東北部五十坪及び(一)の家屋の現存する部分約六十坪を除く、約百四十五坪となるものであるが、(1) その内、鳥羽電機株式会社が現に建設所有している前示倉庫二棟の敷地である部分については、前述の如く、同会社において抗告人の賃借申出当時既に権原により現に建物所有目的でこれを使用していたものであるから、該土地に関する限り抗告人の賃借申出は、罹災都市借地借家臨時処理法第九条によつて、疎開跡地の賃借申出に準用される同法第二条第一項但書前段の規定に従つて、その効果を生ずるに由ないものといわなければならない。 (2) その余の土地に対する賃借申出については、前述の如く、(イ)前記約百四十五坪の土地の内、現実に右(二)ないし(四)の家屋そのものの敷地となつていた部分は約二十七坪に過ぎない ればならない。 (2) その余の土地に対する賃借申出については、前述の如く、(イ)前記約百四十五坪の土地の内、現実に右(二)ないし(四)の家屋そのものの敷地となつていた部分は約二十七坪に過ぎないのであつて、その他は東京肛門病院の庭園通路等になつていたものであり、(ロ)鳥羽電機株式会社は昭和二十年九月一日以降東京都から前記(一)の家屋を賃借しこれを工場として使用するとともに、右病院の旧構内全部を同家屋に附属する工場用地として使用することを東京都から許されて、これを右工場の構内として使用し、昭和二十二年三月三十一日右家屋が東京都から相手方に再譲渡となるや、戦時補償特別措置法施行規則によつて、右会社は引続き該家屋を使用し得ることとなつたので、相手方から右家屋を賃借し同時に前示病院の旧構内全部を工場用地として使用することの諒解を得るに至り、(ハ)これより先き右会社は昭和二十一年五、六月頃前記(二)ないし(四)の家屋の敷地であつた部分に工場用倉庫二棟を建設し、該敷地の残余の部分は同工場用酸素熔接ガス発生爐に接近しているため、これを危険区域として空地としてあるものであつて、以上の各事実を併せ考えると、他に特段なる事情を認めるに足る資料のない本件においては、相手方が抗告人の前記賃借申出を拒絶したのは、正当の事由に基くものと解するのが妥当である。他に該拒絶の正当性を否定するに足る証拠はない。 従つて右拒絶は有効であつて、抗告人の賃借申出はその効力を生じないものといわなければならない。 四、 しからば抗告人の本件申立はいずれも失当であるから、これを棄却した原決定は相当であつて、本件抗告は理由がない。 よつて主文のとおり決定する。 (裁判長判事渡辺葆判事浜田潔夫判事牛山要) 主文 決定は相当であって、本件抗告は理由がない。 よって主文のとおり決定する。 (裁判長判事渡辺葆 判事浜田潔 夫 判事牛山要)
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