平成21(ワ)38627等 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年4月26日 東京地方裁判所
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判決文本文88,288 文字)

- 1 -平成24年4月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第38627号損害賠償請求事件平成21年(ワ)第44344号損害賠償請求事件平成22年(ワ)第16300号損害賠償請求反訴事件口頭弁論終結日平成24年3月15日判決東京都千代田区<以下略>原告(反訴被告) 日本工営株式会社訴訟代理人弁護士小泉淑子同尾崎英男同上野潤一東京都江東区<以下略>被告(反訴原告) 株式会社IHI堺市堺区<以下略>被告(反訴原告) 株式会社IHIインフラシステム上記両名訴訟代理人弁護士古城春実同堀籠佳典同牧野知彦同玉城光博主文 1 原告(反訴被告)の請求及び被告(反訴原告)らの反訴請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,本訴反訴を通じて,原告(反訴被告)に生じた費用は原告(反訴被告)の負担とし,被告(反訴原告)らに生じた費用は被告(反訴原告)らの負担とする。 事実 及び理由 - 2 -第1 請求 1 本訴(1) 被告(反訴原告)株式会社IHIは,原告(反訴被告)に対し,8784万円及びこれに対する平成21年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告(反訴原告)株式会社IHIインフラシステムは,原告(反訴被告)に対し,8784万円及びこれに対する平成21年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴(1) 原告(反訴被告)は,被告(反訴原告)株式会社 ムは,原告(反訴被告)に対し,8784万円及びこれに対する平成21年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴(1) 原告(反訴被告)は,被告(反訴原告)株式会社IHIに対し,2000万円及びこれに対する平成22年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告(反訴被告)は,被告(反訴原告)株式会社IHIインフラシステムに対し,2000万円及びこれに対する平成22年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件の本訴は,発明の名称を「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」とする特許の特許権を有する原告(反訴被告)(以下「原告」という。)が,被告(反訴原告)株式会社IHI(以下「被告IHI」という。)及び被告(反訴原告)株式会社IHIインフラシステム(以下「被告インフラシステム」という。)による「大河津可動堰改築ゲート設備工事」における水門凍結防止装置の施工が,上記特許権の侵害に当たる旨主張して,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求め,これと選択的な請求として,上記施工等に際し,被告らが,原告が保有する営業秘密であるノウハウを使用したことが,営業秘密の不正使用の不正競争行為(不正競争防止法2条1項7号)に当たる旨主張して, - 3 -同法4条に基づく損害賠償を求めた事案である。 本件の反訴は,被告らが,原告に対し,被告らの上記施工行為が原告の上記特許権を侵害するものではなく,上記特許権が無効であるにもかかわらず,原告がその客先に被告らの上記施工行為が原告の上記特許権を侵害する旨告げたことが営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の不正競争行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たり,また,原告の本訴の提起及び仮処 がその客先に被告らの上記施工行為が原告の上記特許権を侵害する旨告げたことが営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の不正競争行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たり,また,原告の本訴の提起及び仮処分命令の申立て(東京地方裁判所平成22年(ヨ)第22035号不正競争仮処分命令申立事件。以下,この申立てを「別件仮処分の申立て」という。)が不法行為に当たる旨主張して,不正競争防止法4条又は民法709条に基づく損害賠償を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は, 土木,建築,電気,機械,農業,林業,地質,鉱業,都市・地域開発,海洋開発,公害防止,電気通信及び交通・運輸に関する計画,調査,測量,設計並びに工事監理等を目的とする株式会社である。 イ(ア) 被告IHI(旧商号・石川島播磨重工業株式会社)は,船舶,艦艇,橋梁,水門,鉄骨,貯蔵設備,海洋構造物,その他各種鉄構物及びその部品並びにこれに関連する総合設備の設計,製造,売買等を目的とする株式会社である。 (イ) 被告インフラシステム(旧商号・松尾橋梁株式会社)は,橋梁,鉄骨,鉄塔,水門その他構造物の設計,製作,施工,診断及び補修等を目的とする株式会社である。 (ウ) 被告IHIと被告インフラシステムは,平成21年8月24日,吸収分割会社を被告IHI,吸収分割承継会社を被告インフラシステム,分割の対象事業を被告IHIが営む橋梁,水門その他鋼構造物事業及び - 4 -これらのメンテナンス事業,分割の効力発生日を同年11月1日とする吸収分割契約を締結した(乙1)。上記吸収分割契約に基づく吸収分割により,平成21年11月1日,被告インフラシステムは,上記対象事業に係る被告 ンテナンス事業,分割の効力発生日を同年11月1日とする吸収分割契約を締結した(乙1)。上記吸収分割契約に基づく吸収分割により,平成21年11月1日,被告インフラシステムは,上記対象事業に係る被告IHIの権利義務を承継した。 (2) 特許庁における手続の経緯等ア原告は,平成20年4月15日,発明の名称を「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」とする発明について特許出願(特願2008-105963号。以下「本件出願」という。)をした。 原告は,平成21年7月17日付け及び同年8月10付け各手続補正書により,本件出願に係る特許請求の範囲の補正をした(甲6,8)。 その後,原告は,同年10月2日,本件出願について,特許第4379825号として特許権の設定登録(請求項の数10)を受けた(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)。 イ(ア) 被告インフラシステムは,平成22年1月29日,本件特許について無効審判請求(無効2010-800018号事件)をした。 原告は,同年4月19日,本件特許の特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求(以下,この訂正請求に係る訂正を「第1次訂正」という。)をした(甲21)。 特許庁は,同年10月13日,上記無効審判事件について,第1次訂正を認めた上で,「特許第4379825号の請求項1乃至10に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第1次審決」という。)をした(乙39)。 (イ) これに対し原告は,平成22年10月29日,第1次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10337号事件)を提起するとともに,同年12月22日付けで本件特許の特許請求の範囲の訂正等を内容(請求項1ないし5,7,8,10を - 5 -訂正し, 知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10337号事件)を提起するとともに,同年12月22日付けで本件特許の特許請求の範囲の訂正等を内容(請求項1ないし5,7,8,10を - 5 -訂正し,請求項6及び9を削除するもの)とする訂正審判請求(訂正2010-390130号事件)をしたところ,知的財産高等裁判所は,平成23年1月14日,特許法181条2項に基づき,事件を審判官に差し戻すため,第1次審決を取り消す旨の決定をした(甲35,39)。 特許庁は,上記決定を受けて,無効2010-800018号事件の審理を再開した。その審理の中で,原告は,同年2月10日付けで,上記訂正審判請求で求めたのと同内容の訂正請求(以下「第2次訂正」という。)をした(甲40)。この結果,特許法134条の3第4項により,上記訂正審判請求は取り下げられたものとみなされ,また,同法134条の2第4項により,第1次訂正も取り下げられたものとみなされた。 その後,特許庁は,同年7月20日,第2次訂正のうち,請求項6及び9を削除する訂正は適法と認めるが,請求項1ないし5,7,8及び10の訂正は新規事項の追加に該当し,不適法であるとした上で,請求項1ないし5,7,8,10に係る発明についての特許出願は特許法29条2項に規定する要件を満たさないとして,「平成23年2月10日付けの訂正請求のうち,請求項6及び9についての訂正を認める。特許第4379825号の請求項1乃至5,7,8,10に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第2次審決」という。)をした(乙44)。 (ウ) これに対し原告は,平成23年8月26日,第2次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10279号事件)を提起し,本件口頭弁論終結日現在,同事件 44)。 (ウ) これに対し原告は,平成23年8月26日,第2次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10279号事件)を提起し,本件口頭弁論終結日現在,同事件が知的財産高等裁判所に係属中である。 (3) 発明の内容ア設定登録時のもの - 6 -(ア) 本件特許の設定登録時の特許請求の範囲は,請求項1ないし10から成り,その請求項1の記載は,次のとおりである(甲14。以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 「【請求項1】 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」(イ) 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。 A 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,B 前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,C 前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,D 前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,E 誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。 イ第2次訂正後のもの(ア) 第2次訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり 前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,E 誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。 イ第2次訂正後のもの(ア) 第2次訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲40。以下,第2次訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正発明」という。なお,下線部は訂正箇所である。)。 「【請求項1】 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材である戸当板の - 7 -コンクリート充填側に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記戸当板のコンクリート充填側と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含み,並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」(イ) 本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A’」,「構成要件B’」などという。)。 A’水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材である戸当板のコンクリート充填側に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,B’前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,C’前記戸当板のコンクリート充填側と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,D’前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含み,E’並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体 ’前記戸当板のコンクリート充填側と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,D’前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含み,E’並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている,F’誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。 (4) 被告らの行為等ア被告IHIは,平成20年12月19日,国土交通省北陸地方整備局(以 - 8 -下「北陸地方整備局」という。)が実施した「大河津可動堰改築ゲート設備工事」(以下「本件工事」という。)の一般競争入札(公告日・同年8月11日)を落札し,同年12月22日,北陸地方整備局長との間で,本件工事の請負契約を締結した。 大河津可動堰改築ゲート設備(以下「本件ゲート設備」という。)は,下段ゲートのみからなる2門の「制水ゲート」と下段ゲート及び上段ゲートからなる4門の「調節ゲート」の合計6門の水門で構成されており,本件工事は,これら6門の水門のすべてに水門凍結防止装置を設置する工事を含むものである。 イ(ア) 被告IHIは,本件ゲート設備の水門凍結防止装置の施工に当たり,当初,次のような施工方法(以下「旧施工方法」といい,各構成を「構成a」,「構成b」などという。旧施工方法の概要は,別紙1のとおりである。)を実施することを予定していた。 「a 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,①伝熱セメントを塗布し,②内部に軸方向に延在する発熱ケーブル差込み孔をもつ柱状の磁性体鋼管を取り付け,③伝熱セメントが塗布されていない側において前記磁性体鋼管と被加熱部材を溶接する作業をこの順序で順次繰り返し,固定金具を取り付けて,電気的に接続された複数の磁性体鋼管を配置 体鋼管を取り付け,③伝熱セメントが塗布されていない側において前記磁性体鋼管と被加熱部材を溶接する作業をこの順序で順次繰り返し,固定金具を取り付けて,電気的に接続された複数の磁性体鋼管を配置する工程と,b 前記磁性体鋼管の伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する工程と,c 前記磁性体鋼管に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,d 前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む, - 9 -e 磁性体鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」(イ) 被告インフラシステムは,平成21年11月19日,本件工事の総括監督員である北陸地方整備局信濃川河川事務所(以下「信濃川河川事務所」という。)の所長に対し,本件工事における旧施工方法を次のような施工方法(以下「新施工方法」といい,各構成を「構成f」,「構成g」などという。新施工方法の概要は,別紙2のとおりである。)に変更することを内容とする「詳細設計図書第4回」を提出し,同年12月9日,信濃川河川事務所長から,上記詳細設計図書について「特記仕様書第2条」に基づき承認する旨の通知を受けた(乙9の1ないし9の3,43,弁論の全趣旨)。 「f 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,①伝熱セメントを塗布し,②内部に軸方向に延在する発熱ケーブル差込み孔をもつ柱状の磁性体鋼管を取り付け,③伝熱セメントが塗布されていない側において前記磁性体鋼管と被加熱部材を溶接する作業をこの順序で順次繰り返し,固定金具を取り付けて,電気的に接続された複数の磁性体鋼管を配置する工程(構成aの工程)と,g 前記磁性体鋼管の伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する工程(構成bの工程)と,h 前記磁性体鋼管に形成された発熱ケーブル差 磁性体鋼管を配置する工程(構成aの工程)と,g 前記磁性体鋼管の伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する工程(構成bの工程)と,h 前記磁性体鋼管に形成された発熱ケーブル差込み孔に,発熱ケーブルを通す工程と,i 前記発熱ケーブル中の2本の電線のそれぞれを交流電源に接続する(発熱ケーブルの一方端にのみ交流電源が設けられ,他端には設けられない。)工程とを含む,j 磁性体鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」 - 10 -(ウ) 被告インフラシステムは,本件ゲート設備の水門6門すべてについて,遅くとも平成23年2月1日までに新施工方法の構成gまでの工程を,更に同年5月23日までに構成hまでの工程をそれぞれ終了し,その後,同年7月28日までに新施工方法のすべての工程を完了した(乙43,弁論の全趣旨)。 (5) 原告の仮処分の申立て原告は,本訴係属後の平成22年5月17日,原告が保有する営業秘密である別紙3記載の各情報(以下「本件情報」という。)を記載した文書(乙28の1ないし7,9)を,被告らが,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づく情報公開制度を利用して取得し,本訴において書証として提出した行為が,営業秘密の不正取得及び不正開示の不正競争行為(不正競争防止法2条1項4号)に当たる旨主張し,被告らに対し,同法3条に基づく差止請求権を被保全権利として,情報公開法に基づいて文書開示請求を行うことなどの差止めを求める別件仮処分の申立てをした。 3 争点(1) 本訴の争点は,次のとおりである。 ア被告らによる本件特許権侵害の成否(争点1)(ア) 新施工方法の本件発明の技術的範囲の属否(争点1-1)(イ) 本件発明に係る本件特許に特許無効審判により無効に 争点は,次のとおりである。 ア被告らによる本件特許権侵害の成否(争点1)(ア) 新施工方法の本件発明の技術的範囲の属否(争点1-1)(イ) 本件発明に係る本件特許に特許無効審判により無効にされるべき無効理由があり,原告の本件特許権の行使が特許法104条の3第1項に基づいて制限されるかどうか(争点1-2)(ウ) 上記無効理由による権利行使の制限を否定する第2次訂正に係る対抗主張の成否(争点1-3)イ被告らによる不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否(争点2) - 11 -ウ被告らが賠償すべき原告の損害額(争点3)(2) 反訴の争点は,次のとおりである。 ア原告による不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否(争点4)イ原告による本訴の提起及び別件仮処分の申立ての不法行為該当性(争点5)ウ原告が賠償すべき被告らの損害額(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 本訴関係(1) 争点1-1(新施工方法の本件発明の技術的範囲の属否)についてア原告の主張(ア) 構成要件Aの充足a 本件発明の構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」及び構成要件Eの「誘導発熱鋼管」は,誘導発熱に利用できる性質を有する強磁性鋼材の鋼管を意味する。 そして,本件発明は,水門凍結防止装置の施工を作業効率よく行うことを目的とした水門凍結防止装置の施工法の発明(方法の発明)であり,実際に鋼管が発熱する際の発熱方式を特に限定するものではないから,実際に強磁性鋼材の鋼管が誘導発熱によって発熱している必要はない。 また,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)においては,「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」について,鋼管が相互に電気的に絶縁されていること,あるいは,「短絡片」によって電気的に接 はない。 また,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)においては,「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」について,鋼管が相互に電気的に絶縁されていること,あるいは,「短絡片」によって電気的に接続されていないことは構成要件上の限定となっていない。このことは,請求項1を引用する形式の請求項2において,「複数個の誘導発熱鋼管単体を相互に電気的に絶縁する」とする限定を付していることから - 12 -も明らかである。 さらに,本件出願の出願当初の請求項1には,「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている,水門凍結防止装置」と記載されていたが,平成21年7月17日付け手続補正により,上記記載部分について,「相互に電気的に絶縁されている」との限定を削り,「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」に補正したものであり,このような出願経緯のため,本件出願の願書に添付された明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。甲14)には,出願当初の請求項1の発明に対応した記載が残っているにすぎない。 したがって,「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」は,軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する鋼管であればよい。 しかるところ,新施工方法に用いる鋼管は,内部に軸方向に延在する発熱ケーブル差込み孔をもつ柱状の強磁性体鋼管であるから,「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」に該当する。 b 新施工方法は,水門設備の凍結防止を意図する範囲の戸当り金物に複数本の強磁性体鋼管を並べて固定金具を用いて固定する工程を有しており(構成f,別紙2の2(1)アないしキ),この戸当り金物は,構成要件Aの「被加熱部材」に,上記鋼管は,前記aのとおり,「誘導発熱鋼管単体」にそれぞれ該当するから,新施工方法は,構成要件 を有しており(構成f,別紙2の2(1)アないしキ),この戸当り金物は,構成要件Aの「被加熱部材」に,上記鋼管は,前記aのとおり,「誘導発熱鋼管単体」にそれぞれ該当するから,新施工方法は,構成要件Aを充足する。 (イ) 構成要件Bの充足新施工方法に用いる発熱ケーブルの外装には,別紙2の「(発熱ケーブルの構成例)」に示すように,シリコンラバーが設けられており,シリコンは絶縁物質であることからすると,当該発熱ケーブルは,絶縁被覆加工がされているといえるから,構成要件Bの「絶縁電線」に該当す - 13 -る。 そして,新施工方法は,当該発熱ケーブルを磁性体鋼管に形成された発熱ケーブル差込み孔に通す工程を有しているから(構成h,別紙2の2(5)),構成要件Bを充足する。 (ウ) 構成要件Cの充足a 新施工方法は,「被加熱部材」である戸当り金物と強磁性体鋼管との間に伝熱セメントを充填する工程を有しているから(構成f①及び②,g,別紙2の2(1),(2))から,構成要件Cを充足する。 b この点に関し被告らは,後記のとおり,構成要件Cの「伝熱セメントを充填塗布する」とは,被加熱部材に複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定した後に,当該被加熱部材と誘導発熱鋼管単体の隙間を伝熱セメントで塞ぐことを意味する旨主張する。 しかしながら,構成要件AないしDの各工程は,時間の先後の順序関係を定めた限定要件ではない。このことは,発熱電線を挿通する工程が,構成要件Bの工程として,構成要件Cの伝熱セメントを充填塗布する工程よりも前に記載されていることから明らかである。 また,本件明細書には,①鋼管を並べて固定する工程,絶縁電線を通す工程,電源を接続する工程を説明する段落【0047】の後に,段落【0049】として伝熱セメントの充填塗布の説 とから明らかである。 また,本件明細書には,①鋼管を並べて固定する工程,絶縁電線を通す工程,電源を接続する工程を説明する段落【0047】の後に,段落【0049】として伝熱セメントの充填塗布の説明があり,説明の順序にも工程の順序が示されていないこと,②段落【0049】で言及されている図8は,既に絶縁電線2が通線されていることからわかるように,鋼管の水門の戸当り板への設置状態を示して,鋼管と被加熱部材が線接触となるので,鋼管から戸当り板への熱伝導を良くするために伝熱セメントを充填塗布することを勧めていることからすると,当業者は,本件明細書から,鋼管を被加熱部材に固定するプロセスの中で,適宜,伝熱セメントの充填塗布を行えばよいことを理解 - 14 -できるのであり,被告らのように各工程の時間的先後関係を限定的に解する必要は一切ない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 (エ) 構成要件Dの充足a 新施工方法は,発熱ケーブルの各母線を,各電源ケーブルを介して交流電源に接続する工程を有している。発熱ケーブルは2本の母線と,母線間を接続する発熱体(発熱エレメント)によって形成されている。2本の母線の他端は接続されておらず,エンドキャップが設けられているが,2本の母線とその間の発熱体が一つの回路を形成し,2本の母線の両端に交流電源が接続される。 したがって,発熱ケーブルの2本の母線に交流電源を接続することは,構成要件Dの「前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する」に相当するといえるから,新施工方法は,構成要件Dを充足する。 b この点に関し被告らは,後記のとおり,新施工方法において使用する発熱ケーブルと交流電源の接続は,「発熱ケーブルの中の2本の電線のそれぞれを交流電源に接続する(発熱ケーブルの一方端にのみ交流電源が この点に関し被告らは,後記のとおり,新施工方法において使用する発熱ケーブルと交流電源の接続は,「発熱ケーブルの中の2本の電線のそれぞれを交流電源に接続する(発熱ケーブルの一方端にのみ交流電源が設けられ,他端には設けられない)」(構成i)ものであり,「両端に交流電源を接続する」(構成要件D)ものとは異なる旨主張する。 しかしながら,新施工方法における発熱ケーブルの各母線と発熱体は,合わせて一本の電導路を構成しており,各電源ケーブルを含めた「1本の絶縁電線」となっている。すなわち,交流電源に接続される電流回路は,一方の電源ケーブルから発熱ケーブル内に入り,ケーブル内の一方の母線から,発熱体を通じて,他方の母線に接続され,発熱ケーブルを出て,他方の電源ケーブルを介して,交流電源に戻るのであり,そのような電線回路を素直に観察すれば,2本の母線とその - 15 -間の発熱体が全体として「1本の絶縁電線」を構成していることは明らかであるから,被告らの上記主張は理由がない。 (オ) 構成要件Eの充足新施工方法では,前記(ア)のとおり,「誘導発熱鋼管」が用いられており,新施工方法は,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法であるといえるから,本件発明の構成要件Eを充足する。 (カ) まとめ以上のとおり,新施工方法は,本件発明の構成要件をすべて充足し,その技術的範囲に属するものであるから,被告らが,本件工事において,新施工方法によって水門凍結防止装置を施工した行為は,原告の本件特許権の侵害行為に当たる。 イ被告らの主張(ア) 構成要件AないしC及びEの非充足a 構成要件Eに「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」とあるから,本件発明は,「誘導加熱」を利用する「誘導発熱鋼管方式」の発明である。 また,本件 構成要件AないしC及びEの非充足a 構成要件Eに「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」とあるから,本件発明は,「誘導加熱」を利用する「誘導発熱鋼管方式」の発明である。 また,本件明細書(甲14)では,段落【0002】ないし【0013】,図1,16ないし18に記載された,「短絡片」が接続された従来の鋼管を使用した方式ないし構造を「表皮電流発熱管」,これに用いられる鋼管1本1本を「誘導表皮電流発熱管」と称している。 一方で,「表皮電流発熱管」及び「誘導表皮電流発熱管」とは明確に区別された概念として,本件明細書では,段落【0033】が示すように,「短絡片」のような鋼管の外周部分に発生する渦電流を打ち消し合わせるための部材を有さず,かつ,強磁性鋼材の鋼管が相互に電気的に絶縁されている鋼管を使用した方式ないし構造を「誘導発熱鋼管」(構成要件E),これに用いられる鋼管1本1本を「誘導発熱鋼 - 16 -管単体」(構成要件AないしC)と称している。 b 新施工方法は,そもそも,「電気加熱」を利用する「発熱線加熱装置を用いた方式」であって,「誘導発熱方式」ではないから,新施工方法において,「誘導発熱鋼管単体」(構成要件AないしC)及び「誘導発熱鋼管」(構成要件E)が用いられているとはいえない。 また,新施工方法は,「電気的に接続された複数の磁性体鋼管」(構成fの③。正確には,固定金具(フラットバー)により接続されている。)を使用したものであり,この点においても,新施工方法において,「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」が用いられているとはいえない。 したがって,新施工方法は,本件発明の構成要件AないしC及びEを充足しない。 (イ) 構成要件A及びCの非充足a ①本件発明の構成要件Cが,「水門設備の凍結防止範囲の非 いるとはいえない。 したがって,新施工方法は,本件発明の構成要件AないしC及びEを充足しない。 (イ) 構成要件A及びCの非充足a ①本件発明の構成要件Cが,「水門設備の凍結防止範囲の非加熱部材に…装置の複数個の誘導発熱鋼管単体を被加熱部材に並べて固定する工程と」と記載された構成要件Aの後に,これを受けて置かれていること,②「充填」とは,「あいた所につめてふさぐこと」を意味するところ(乙2),構成要件Cが,単に伝熱セメントを「塗布」すると規定するのではなく,「充填塗布」と規定していること,③構成要件Cが,被加熱部材と誘導発熱鋼管単体とに「間」があることを前提としていること,④本件明細書(甲14)の段落【0049】等の記載によれば,構成要件Cの「伝熱セメントを充填塗布する」とは,被加熱部材に複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定した後に,当該被加熱部材と誘導発熱鋼管単体の隙間を伝熱セメントで塞ぐことを意味すると解すべきである。 また,①構成要件Aの「複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定す - 17 -る」との文言を字義通りに解釈すれば,複数個の誘導発熱鋼管単体を並べてから固定すると理解することが素直であること,②上記「充填塗布」の意味,③本件明細書の段落【0043】ないし【0046】等の記載によれば,構成要件Aの「並べて固定」とは,並べて固定した結果,被加熱部材と誘導発熱鋼管単体に伝熱セメントを「充填塗布」し得る隙間が生じる態様を意味すると解すべきである。 b 新施工方法は,被加熱部材に伝熱セメントを塗布し,その伝熱セメントに鋼管を配置し,鋼管の伝熱セメントを塗布していない側と被加熱部材を溶接するという作業を順次繰り返して複数の鋼管を配置するものであって(構成f),複数個の鋼管を並べてから固定するものではなく,ま トに鋼管を配置し,鋼管の伝熱セメントを塗布していない側と被加熱部材を溶接するという作業を順次繰り返して複数の鋼管を配置するものであって(構成f),複数個の鋼管を並べてから固定するものではなく,また,「充填塗布」し得る隙間が生じておらず,被加熱部材と鋼管の隙間を伝熱セメントで塞ぐことをしていないので,本件発明の構成要件A及びCを充足しない。 (ウ) 構成要件A,B及びDの非充足本件発明は,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置に関するものであるから,構成要件A,B及びDの「絶縁電線」とは,鋼管を流れる渦電流により鋼管を発熱させる誘導発熱方式の水門凍結防止装置で用いられる絶縁処理された電線を意味すると解される。 新施工方法の発熱ケーブルは,このような「絶縁電線」とは異なり,それ自体が発熱し,並列の2本の母線が発熱エレメントで接続されているなど「絶縁電線」と構造自体が大きく異なる。 また,構成要件Dの「絶縁電線の両端に交流電源を接続する」とは,渦電流が発生するような接続態様を指すものであるところ,新施工方法における交流電源との接続方法は,発熱ケーブルの中の2本の電線のそれぞれを交流電源に接続するものであり,交流電源は,発熱ケーブルの一方端にのみ設けられ,他端には設けられておらず(構成i),渦電流 - 18 -が発生しないので,「絶縁電線の両端に交流電源を接続する」ものとはいえない。 したがって,新施工方法は,本件発明の構成要件A,B及びDを充足しない。 (エ) まとめ以上のとおり,新施工方法は,本件発明の構成要件AないしEをいずれも充足せず,その技術的範囲に属さない。 したがって,被告インフラシステムが水門凍結防止装置を設置するに当たり新施工方法を実施したことは,本件特許権の侵害行為に当たらない。 (2) をいずれも充足せず,その技術的範囲に属さない。 したがって,被告インフラシステムが水門凍結防止装置を設置するに当たり新施工方法を実施したことは,本件特許権の侵害行為に当たらない。 (2) 争点1-2(本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)についてア被告らの主張本件発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することはできない。 (ア) 無効理由1(新規事項の追加による補正要件違反)本件出願に係る特許請求の範囲についての平成21年8月10日付け手続補正書(甲8)による補正は,以下のとおり,本件出願の願書に添付された特許請求の範囲,明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものではなく,本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり,本件発明に係る本件特許には,同項に違反する無効理由(同法123条1項1号)がある。 a 本件出願に係る出願当初の特許請求の範囲(甲5)においては,請求項1ないし9が誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置(請求項2な - 19 -いし9は請求項1を引用する従属項)の発明であり,請求項10が誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法の発明とされていた。 原告は,平成21年8月10日付け手続補正書(甲8)により,①本件出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置に関する発明を削除し,②請求項10に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法の発明について,「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」の構成を削除し, 水門凍結防止装置に関する発明を削除し,②請求項10に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法の発明について,「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」の構成を削除し,「(被加熱部材に)複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固着する工程と」を「(被加熱部材に)複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と」と置き換えた上で,これを請求項1とし,③請求項1の従属項として,「前記複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程とによって,前記複数個の誘導発熱鋼管単体を相互に電気的に絶縁する」との構成を限定して請求項2とし,④出願当初の特許請求の範囲の請求項2ないし9において限定した構成をそれぞれ限定した従属項を請求項3ないし10とする補正(以下「平成21年8月10日付け補正」という。)をした。 しかしながら,本件出願の出願当初明細書(甲5。以下,図面を含めて「本件当初明細書」という。)には,誘導発熱鋼管を構成する強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されているものを構成要素としたもの以外の発明の実施の形態は記載されていない。 また,本件当初明細書の段落【0012】に記載された技術は,従来技術の一つとして記載されたものであり,平成21年8月10日付け補正の根拠となるものではない。 - 20 -b そうすると,本件発明の「誘導発熱鋼管単体」につき,原告が主張するように,誘導発熱鋼管を構成する強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されているものに限定されないという解釈を採るとすれば,「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」との構成を備えない本件発 誘導発熱鋼管を構成する強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されているものに限定されないという解釈を採るとすれば,「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」との構成を備えない本件発明は,本件当初明細書に記載されていないものであるから,平成21年8月10日付け補正は,願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内においてされたものではないというべきである。 したがって,上記補正は,新規事項の追加に当たり,特許法17条の2第3項の規定に違反する。 (イ) 無効理由2(サポート要件違反)本件発明の特許請求の範囲の記載は,以下のとおり,特許を受けようとする発明が本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許法36条6項1号に適合しないから,本件発明に係る本件特許には,同項に違反する無効理由(同法123条1項4号)がある。 a 平成21年8月10日付け補正は,特許請求の範囲の記載のみの補正であって,発明の詳細な説明については何らの補正もされていない。 本件明細書(甲14)の発明の詳細な説明には,本件当初明細書と同様に,誘導発熱鋼管を構成する強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されているものが記載されているのみであり,図1に示されるような両端にある短絡片で相互に電気的に接続した誘導発熱鋼管に対応するものは,一切記載されていない。 そうすると,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」が,原告が主張するように,誘導発熱鋼管を構成する強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されているものに限定されないのであれば,「複数個の - 21 -前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」との構成を備えない本件発明は,発明の詳細な説明に記載された実施形態とも対応せず,「発明が解決しようとする課題」の欄に記載された課 - 21 -前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている」との構成を備えない本件発明は,発明の詳細な説明に記載された実施形態とも対応せず,「発明が解決しようとする課題」の欄に記載された課題を解決するための手段を備えておらず,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 b したがって,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)は,サポート要件に適合しない。 (ウ) 無効理由3(甲10に基づく新規性欠如)本件発明は,以下のとおり,本件出願前に頒布された刊行物である甲10(特公昭57-40293号公報)に記載された発明と同一であるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 a 甲10の記載事項(特許請求の範囲,1頁2欄34行~2頁3欄24行,2頁3欄25行~28行,2頁3欄29行~38行,3頁5欄24行~33行,3頁5欄34行~同頁6欄3行,3頁6欄3行~7行,第1図,第2図,第8図),及び甲10に記載された水門凍結防止装置を施工する際には,いずれかの段階で,絶縁電線に電源を接続しなければならないことからすると,甲10には,「水門の扉体の水側上部,扉体の左右両側誘導溝板の水側部分及び下縁の戸当板に,強磁性鋼材からなる誘導表皮電流発熱管を複数本並べて溶接又は伝熱セメントで固定する工程と,該誘導表皮電流発熱管に絶縁電線を挿通する工程と,絶縁電線の両端には単相の交流電源を接続する工程と,からなる水門凍結防止装置の施工方法」の発明が記載されている。 b 甲10記載の発明の「水門の扉体の水側上部,扉体の左右両側誘導溝板の水側部分及び下縁の戸当板」及び「強磁性鋼材からなる誘導表皮電流発熱管」は,それぞれ,本件発明の「水門設備の凍結防止範囲 - 22 -の被加熱部材 水門の扉体の水側上部,扉体の左右両側誘導溝板の水側部分及び下縁の戸当板」及び「強磁性鋼材からなる誘導表皮電流発熱管」は,それぞれ,本件発明の「水門設備の凍結防止範囲 - 22 -の被加熱部材」及び「内部の軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する誘導発熱鋼管単体」に相当する。 また,誘導発熱鋼管を伝熱セメントで固定するためには,「水門の扉体の水側上部,扉体の左右両側誘導溝板の水側部分及び下縁の戸当板」と誘導発熱鋼管との間に伝熱セメントを充填補充する必要がある。 そうすると,両発明は,本件発明が,複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,伝熱セメントを充填塗布する工程とを有するのに対し,甲10には,鋼管部材を固定する工程と伝熱セメントを充填塗布する工程とが別の工程であることについて明記されていない点でのみ文言上相違するといえる。 しかしながら,本件発明は,鋼管部材を「固定」する手段を何ら特定していないところ,伝熱セメントは固まるまでは流動性があるから,伝熱セメントを充填塗布する前及び伝熱セメントが固まるまでの間,誘導発熱鋼管は何らかの手段(ボルトなどによる仮固定,人が支えているものなど)によって固定されていなければならず,甲10記載の発明も,被加熱部材に誘導発熱鋼管単体を固定する工程を備えていることは明らかである。 したがって,上記相違点は,実質的な相違点とはいえず,本件発明は,甲10記載の発明と同一であり,新規性が欠如している。 (エ) 無効理由4(乙3に基づく新規性欠如)本件発明は,以下のとおり,本件出願前に頒布された刊行物である乙3(特開昭53-145334号公報)に記載された発明と同一であるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123 のとおり,本件出願前に頒布された刊行物である乙3(特開昭53-145334号公報)に記載された発明と同一であるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 a 乙3の記載事項(特許請求の範囲第2項,1頁右下欄10行~14 - 23 -行,1頁右下欄15行~2頁左上欄1行,2頁左上欄2行~6行,2頁左上欄7行~9行,2頁右上欄14行~20行,2頁右下欄1行~4行,第3図,第5図)及び水門凍結防止装置を施工する際に必要となる施工手段を考慮すれば,乙3には,「水門の扉体の池側上部,扉体の両側の誘導溝板の池側部分及び水密用ゴム板の接触面並びに下縁の水密用ゴム板が接触する戸当板の裏面板に,鉄管を複数本並べて溶接する工程,該鉄管に絶縁電線を挿通する工程,鉄管と水門を構成する部材の広い面積に熱良導性セメントを塗布する工程,絶縁電線の一端を鉄管の一端に接続し絶縁電線の他端と鉄管の他端との間に交流電源を接続する工程からなる,水門凍結防止装置の施工方法」の発明が記載されている。 b 乙3記載の発明の「水門の扉体の池側上部,扉体の両側の誘導溝板の池側部分及び水密用ゴム板の接触面並びに下縁の水密用ゴム板が接触する戸当板の裏面板」及び「熱良導性セメント」は,それぞれ本件発明の「水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材」及び「伝熱セメント」に相当する。 鉄は,強磁性材料であり,乙3記載の発明の「鉄管」も,本件発明の「誘導発熱鋼管」も,管を流れる表皮電流によって発熱するものであるから,乙3記載の発明の「鉄管」と,本件発明の「内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する誘導発熱鋼管単体」とは,「内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性材を有する発熱管単体」 鉄管」と,本件発明の「内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する誘導発熱鋼管単体」とは,「内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性材を有する発熱管単体」の点で共通する。 また,本件発明と乙3記載の発明とは,発熱管,絶縁電線及び交流電源の接続の態様が異なるが,いずれも発熱管に表皮電流を流すものであって,絶縁電線には,交流電源が接続される点で共通する。 そうすると,両発明は,本件発明が,鋼管に挿通した絶縁電線の両 - 24 -端に交流電源を接続しているのに対し,乙3記載の発明は,絶縁電線の一端を鉄管の一端に接続するとともに絶縁電線の他端と鉄管の他端とに交流電源を接続している点でのみ一応相違するといえる。 しかるところ,乙4(「電気工学ハンドブック」1978年版)の記載に照らすと,乙3記載の発明の「絶縁電線の一端を鉄管の一端に接続するとともに絶縁電線の他端と鉄管の他端との間に交流電源を接続した鉄管」は,乙4記載の「直列表皮電流発熱管」に相当し,本件発明の「鋼管に挿通した絶縁電線の両端に交流電源を接続した誘導発熱鋼管」は,乙4記載の「誘導表皮発熱管」に相当するものである。 そして,「直列表皮電流発熱管」及び「誘導表皮発熱管」は,いずれも表皮電流発熱装置として周知の技術であり,路面の凍結防止又は床壁面の加温などに使用されているものであることからすると,上記相違点は,単なる周知技術の転換にすぎないというべきである。 したがって,上記相違点は,実質的な相違点とはいえず,本件発明は,乙3記載の発明と同一であり,新規性が欠如している。 (オ) 無効理由5(甲10を主引例とする進歩性欠如)本件発明は,以下のとおり,甲10記載の発明に乙3に記載された技術を組み合わせることにより,当業者が 明と同一であり,新規性が欠如している。 (オ) 無効理由5(甲10を主引例とする進歩性欠如)本件発明は,以下のとおり,甲10記載の発明に乙3に記載された技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 a 本件発明と甲10記載の発明は,本件発明が,複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,伝熱セメントを充填塗布する工程とを有するのに対し,甲10記載の発明は,鋼管部材を固定する工程と伝熱セメントを充填塗布する工程とが別の工程であることが明らかでない点でのみ相違する(前記(ウ)b参照)。 b 乙3の「扉体1を構成する鉄板2の池側上部裏面へ,絶縁電線3を挿 - 25 -通した鉄管4を多数本溶接し,かつ,鉄管4と鉄板2両者の広い面を,金属または熱良導性セメントのような熱良導体5を介して相互に接続する。」(1頁右欄10行~14行)との記載によれば,乙3には,甲10に記載されたのと同じ水門凍結防止装置において,鉄管の熱を良好に被加熱部材に伝えるために,被加熱部材に鉄管(発熱管)を溶接する工程と熱良導性セメントにより相互に接続する工程とを備える技術(前記aの相違点に係る本件発明の構成)が開示されている。 しかるところ,発熱管の熱を良好に被加熱部材に伝えることは,水門凍結防止装置において当然に要求される機能であるから,甲10記載の発明に,乙3記載の上記技術を適用することに困難はない。 したがって,当業者であれば,甲10記載の発明に乙3記載の上記技術を採用することを容易に想到することができたものである。 c 以上によれば,本件発明は,当業者が,甲10及び乙3に基づいて容易に発明をすることができたもので ば,甲10記載の発明に乙3記載の上記技術を採用することを容易に想到することができたものである。 c 以上によれば,本件発明は,当業者が,甲10及び乙3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如している。 (カ) 無効理由6(乙3を主引例とする進歩性欠如)本件発明は,以下のとおり,乙3記載の発明及び甲10記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 a 本件発明と乙3記載の発明は,本件発明が,鋼管に挿通した絶縁電線の両端に交流電源を接続しているのに対し,乙3記載の発明は,絶縁電線の一端を鉄管の一端に接続するとともに絶縁電線の他端と鉄管の他端とに交流電源を接続している点でのみ相違する(前記(エ)b参照)。 b 甲10には,水門の凍結防止装置において,「誘導表皮電流発熱管」 - 26 -と「直列表皮電流発熱管」が選択的に使用可能であることが記載されている(甲10記載の「特許請求の範囲」)。 甲10記載の「誘導表皮電流発熱管」及び「直列表皮電流発熱管」は,それぞれ本件発明の「誘導発熱鋼管」及び乙3記載の発明の発熱する「鉄管」と同じである(前記(エ)b参照)。 そうすると,乙3記載の発明において,発熱する鉄管(直列表皮電流発熱管)を甲10記載の「誘導表皮電流発熱管」に置き換え,相違点に係る本件発明の構成とすることに困難はない。 したがって,本件発明は,当業者が,乙3及び甲10に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如している。 (キ) 無効理由7(乙28の8及び9に基づく新規性欠如)本件発明は,以下のとおり,乙28の8(国土交通省北海道開発局( て容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如している。 (キ) 無効理由7(乙28の8及び9に基づく新規性欠如)本件発明は,以下のとおり,乙28の8(国土交通省北海道開発局(以下「北海道開発局」という。)が保有する「平成16年度施行直轄堰堤維持の内定山渓ダム副ゲート凍結防止装置改修工事」の「特記仕様書」)及び乙28の9(北海道開発局が保有する上記工事の発注図面)に記載された発明と同一であるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条1項1号,3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 a 乙28の1ないし9は,被告IHIの従業員が,北海道開発局に対して,平成16年度(2004年度。工事期間は平成17年1月21日から同年3月22日まで)に行われた「平成16年直轄堰堤維持の内定山渓ダム副ゲート凍結防止装置改修工事」(以下「定山渓ダム副ゲート凍結防止装置工事」という。)に関し,株式会社イスミックが北海道開発局に提出した文書(完成図書一式及び特記仕様書,発注図面等)について,個人名で情報公開法に基づく開示請求をし,その - 27 -開示を受けて入手したものである。 これら乙28の1ないし9の書類は,原則として,何人であっても情報公開法に基づく開示請求をすることにより入手することが可能な文書であるから,一体のものとして特許法29条1項3号の「頒布された刊行物」に該当するというべきである。 また,少なくとも乙28の1ないし9が施工主である北海道開発局に示された時点で,乙28の1ないし9に記載された発明は,特許法29条1項1号の「公然知られた発明」に該当するというべきである。 b 乙28の8の記載事項(表紙,前文,第1条,第10条,第11条)及び乙28の9の記載事項(図面番号「4/5」,図 発明は,特許法29条1項1号の「公然知られた発明」に該当するというべきである。 b 乙28の8の記載事項(表紙,前文,第1条,第10条,第11条)及び乙28の9の記載事項(図面番号「4/5」,図面番号「5/5」)によれば,乙28の8及び9には,「水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個のSECT鋼管を並べてヒータ固定金具で固定する工程と,前記SECT鋼管に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記被加熱部材と前記SECT鋼管との間にサーモセメントを充填塗布する工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,SECT鋼管による水門凍結防止装置の施工法」の発明が記載されている。 そして,乙28の8及び9記載の発明の「SECT鋼管」は,本件発明の「誘導発熱鋼管単体」あるいは「誘導発熱鋼管」に,乙28の8及び9記載の発明の「サーモセメント」は本件発明の「伝熱セメント」にそれぞれ該当するから,本件発明の構成は,乙28の8及び9にすべて開示されている。 したがって,本件発明は,乙28の8及び9に記載された発明と同一であるから,新規性が欠如している。 (ク) 無効理由8(公然実施による新規性欠如) - 28 -本件発明は,以下のとおり,昭和63年ころに行われた定山渓ダム副ゲート凍結防止装置工事において公然実施をされた発明と同一であるから,本件発明に係る本件特許には,特許法29条1項2号に違反する無効理由(同法123条1項2号)があり,新規性が欠如している。 a 乙28の1ないし9には,「水門の扉体の上部水密部,側部水密部及び底部水密部の戸当り金物の水面付近の部分に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性 新規性が欠如している。 a 乙28の1ないし9には,「水門の扉体の上部水密部,側部水密部及び底部水密部の戸当り金物の水面付近の部分に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材からなる複数個の誘導表皮電流発熱管を並べて固定する工程と,前記誘導表皮電流発熱管に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を挿通する工程と,前記戸当り金物と前記誘導表皮電流発熱管との間にサーモセメントを充填塗布する工程と,前記耐熱絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程からなる,水門凍結防止装置の施工方法」の発明が記載されている。 乙28の1ないし9記載の発明は,本件発明の構成要件をすべて備えるものであり,本件発明と同一である。 b そして,乙28の1ないし9記載の発明は,昭和63年ころに行われた定山渓ダム副ゲート凍結防止装置工事において使用された水門凍結防止装置の施工方法であるから,本件発明は,本件出願前に公然実施をされた発明と同一であり,新規性が欠如している。 イ原告の主張(ア) 無効理由1に対し仮に本件出願の出願当初の特許請求の範囲に記載されていた発明が「強磁性鋼材が相互に電気的に絶縁されている」との限定を含んでいたとしても,本件当初明細書(甲5)の発明の詳細な説明や図面には,上記限定の範囲外の発明が記載されているから(本件発明の構成要件Aにつき段落【0043】ないし【0047】,図8,10,12,構成要件Bにつき段落【0047】,図7ないし12,構成要件Cにつき段落 - 29 -【0049】,図8,10,12,構成要件Dにつき,段落【0047】,図7,9,11),平成21年8月10日付け補正は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり,特許法17条の2第3項の規定に違反するものではない。 につき,段落【0047】,図7,9,11),平成21年8月10日付け補正は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり,特許法17条の2第3項の規定に違反するものではない。 したがって,被告ら主張の無効理由1は理由がない。 (イ) 無効理由2に対し本件発明が,本件当初明細書に記載された発明であることは,前記(ア)のとおりであるから,被告ら主張の無効理由2は理由がない。 (ウ) 無効理由3ないし6に対し被告らの主張は争う。 仮に被告ら主張の無効理由のいずれかが認められるとしても,後記(3)アのとおり,第2次訂正によって,当該無効理由は解消している。 (エ) 無効理由7及び8に対し被告らの主張は争う。 乙28の1ないし9には,原告の営業秘密である本件情報が記載されており,本件情報は,情報公開法5条2号イの不開示情報に該当する。 したがって,本件情報を含む乙28の1ないし9は,何人も開示を受けることができないものであるから,本件出願前に頒布された刊行物に当たらない。 (3) 争点1-3(第2次訂正による対抗主張の成否)についてア原告の主張(ア) 第2次訂正が適法にされたものであることa 第2次訂正は,本件発明の特許請求の範囲の請求項1について,「被加熱部材」を「被加熱部材である戸当板のコンクリート充填側」(構成要件A’)に訂正し,「並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸 - 30 -当板のコンクリート充填側に溶接されている」という構成(構成要件E’)を追加するものである。 そして,構成要件A’に関する訂正は,「被加熱部材」を,その実施形態の一つである「被加熱部材である戸当板」に限定し,更に,「戸当板」のうち誘導発 いう構成(構成要件E’)を追加するものである。 そして,構成要件A’に関する訂正は,「被加熱部材」を,その実施形態の一つである「被加熱部材である戸当板」に限定し,更に,「戸当板」のうち誘導発熱鋼管単体を固定する面を,「戸当板のコンクリート充填側」に限定するものであり,本件当初明細書(甲5)の段落【0012】及び図18の記載に基づくものである。 また,構成要件E’の追加も,本件当初明細書の段落【0012】及び図18の記載に基づく訂正である。 b 以上のとおり,第2次訂正は,本件当初明細書の範囲内において適法にされたものであり,特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項に違反するものではない。 (イ) 第2次訂正による無効理由の解消本件発明に係る本件特許に被告ら主張の無効理由がないことは,前記(2)イのとおりであるが,仮に被告ら主張の無効理由3ないし6のいずれかによって本件特許が無効になり得るとしても,以下のとおり,第2次訂正によって当該無効理由は解消される。 a 本件訂正発明は,構成要件E’の構成を採用することによって,①発熱鋼管及び戸当板のひずみ防止,コンクリート打設時の発熱鋼管の剥離やずれ防止,並列の複数個の発熱鋼管単体の戸当板への固定作業の効率化という,「発熱鋼管を戸当板に固定する施工時における課題」と,②発熱鋼管の振動による戸当板からの剥離防止という「装置の長期的使用において生じる課題」とを解決した点において,公知技術と対比した場合の進歩性が認められるものである。 被告ら主張の無効理由の引用例(甲10,乙3等)は,いずれも本件訂正発明の構成要件E’の構成について,開示も示唆もない。また, - 31 -平均的な当業者として想定される一般的な電気的加熱装置を扱う技術者が,上記引用例に基づいて,水門 等)は,いずれも本件訂正発明の構成要件E’の構成について,開示も示唆もない。また, - 31 -平均的な当業者として想定される一般的な電気的加熱装置を扱う技術者が,上記引用例に基づいて,水門凍結防止装置の特有の技術課題等を予想して,本件訂正発明の構成要件E’の構成を想到することは全く不可能である。 b 以上によれば,第2次訂正によって,被告ら主張の無効理由3ないし6は解消される。 (ウ) 本件訂正発明の技術的範囲に属することa 文言侵害前記(1)アで述べたのと同様の理由により,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件A’,B’,C’,D’及びF’を充足する。 新施工方法においては,水門凍結防止装置を長さ方向に3分割したうちの一つの部材につき,戸当り金物のフランジの内側に4本の鋼管を並行に配置し,4本の鋼管を覆うように一つのL字型の固定金具(フラットバー)を配し,固定金具を,フランジ,ウェブ,鋼管のそれぞれに溶接することによって,4本の鋼管を戸当り金物に固定するところ(別紙2の2(1)アないしキ),新施工方法における「固定金具」(フラットバー)は,本件訂正発明の「押さえ金具」に相当し,並列の4本の鋼管が一つのフラットバーに溶接されており,更に,フラットバーが戸当り金物のフランジのコンクリート充填側に溶接され,これによって,並列の4本の鋼管は,戸当り金物のフランジのコンクリート充填側に固定されていることとなるから,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件E’を充足する。 以上によれば,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件をすべて充足するから,その技術的範囲に属する。 b 均等侵害仮に本件訂正発明の構成要件A’,B’,C’,E’及びF’の「誘 - 32 -導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」が電磁誘導による誘導 充足するから,その技術的範囲に属する。 b 均等侵害仮に本件訂正発明の構成要件A’,B’,C’,E’及びF’の「誘 - 32 -導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」が電磁誘導による誘導発熱方式を採る鋼管を意味するものであり,新施工方法における発熱方式が,電磁誘導による誘導発熱方式ではなく,発熱ケーブルによる発熱方式である点で本件訂正発明と相違し,新施工方法が上記各構成要件を充足しないとしても,以下のとおり,新施工方法は,最高裁判所平成10年2月24日第三小法廷判決で示された均等の成立要件(第1ないし第5要件)をすべて充足するから,本件訂正発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するというべきである。 (a) 相違部分が本件訂正発明の本質的部分でないこと(第1要件)本件訂正発明の課題は,①発熱鋼管及び戸当板のひずみ防止,コンクリート打設時の発熱鋼管の剥離やずれ防止,並列の複数個の発熱鋼管単体の戸当板への固定作業の効率化という,「発熱鋼管を戸当板に固定する施工時における課題」と,②発熱鋼管の振動による戸当板からの剥離防止という「装置の長期的使用において生じる課題」の解決であり,本件訂正発明の中核をなす特徴的部分(本質的部分)は,これらの課題を解決する手段として,構成要件E’の「並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている」という構成を採用した点にある。 そして,新施工方法は,上記特徴的部分に係る構成を備えている。 一方で,新施工方法における発熱方式が,電磁誘導による誘導発熱方式ではなく,発熱ケーブルによる発熱方式(発熱線による発熱方式)であり,発熱ケーブルでは振動しないので,新施工方法においては,②の「装置の長期 新施工方法における発熱方式が,電磁誘導による誘導発熱方式ではなく,発熱ケーブルによる発熱方式(発熱線による発熱方式)であり,発熱ケーブルでは振動しないので,新施工方法においては,②の「装置の長期的使用において生じる課題」とは無関係であるが,①の「発熱鋼管を戸当板に固定する施工時における課題」は本件訂正発明と課題を共通にし,この課題を上記特徴的部分に係 - 33 -る構成によって解決するものである。 したがって,発熱方式が電磁誘導であるか,発熱線による発熱であるかは,本件訂正発明の本質的部分ではない。 (b) 作用効果の同一性(置換可能性)(第2要件)本件訂正発明の進歩性は,構成要件E’の構成を採用することによって,前記(a)①の「発熱鋼管を戸当板に固定する施工時における課題」を解決し,水門凍結防止装置という特殊な装置の施工方法が顕著に優れたものになったことにある。 そして,新施工方法においても,構成要件E’の構成を採用し,前記(a)①の「発熱鋼管を戸当板に固定する施工時における課題」を解決しているから,作用効果は同一であるといえる。 (c) 置換容易性(第3要件)加熱手段として発熱ケーブルを用いることは極めて一般的であるし,凍結防止装置として被加熱部材に直接取り付けた電熱線に電流を流す電熱線式は古くから用いられている(甲1,甲2)。 したがって,被告らが新施工方法を実施する時点において,発熱ケーブルによる発熱方式を採用することは当業者にとって容易であり,置換容易性がある。 (d) 出願時の公知技術との関係(第4要件)本件全証拠によっても,新施工方法が,本件出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から容易に推考できたものであるとは認められない。 (e) 意識的除外の不存在(第5要件)本 件)本件全証拠によっても,新施工方法が,本件出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から容易に推考できたものであるとは認められない。 (e) 意識的除外の不存在(第5要件)本件出願の出願経過及び第2次訂正手続の過程において,原告が,本件訂正発明の「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」から,発熱線による発熱方式を採った鋼管を意識的に排除し,電磁誘 - 34 -導による誘導発熱方式を採る鋼管に限定したといった事情は存在しない。 c 小括以上によれば,新施工方法は,均等論の成立要件(5要件)をすべて充足し,本件訂正発明と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 (エ) まとめ以上のとおり,適法にされた第2次訂正によって,被告らが主張する無効理由3ないし6はいずれも解消され,かつ,新施工方法は,本件訂正発明の技術的範囲に属するものであるから,上記無効理由に係る被告ら主張の本件特許権の権利行使の制限の主張は,いずれも理由がない。 イ被告らの主張(ア) 第2次訂正が訂正要件に違反することa 新規事項の追加に当たること(a) 本件当初明細書(甲5)の段落【0012】及び図18に記載された取付方法は,従来技術とされる図1に示されるような「誘導表皮電流発熱管」の取付方法であり,この「誘導表皮電流発熱管」は,短絡片を設けて,鋼管の外周部分には電流が流れない構造となっており,鋼管の内周部分に流れる電流のみによって生じるジュール熱を利用したものである。これに対し本件訂正発明は,「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」であって,請求項2で限定されているように,誘導発熱鋼管単体を電気的に絶縁したものを含み,あるいはこれに限定されるものであるから,本件当初明細書の上記記載を根拠として第2次訂正をす 止装置の施工法」であって,請求項2で限定されているように,誘導発熱鋼管単体を電気的に絶縁したものを含み,あるいはこれに限定されるものであるから,本件当初明細書の上記記載を根拠として第2次訂正をすることは認められない。 本件訂正発明は,本件当初明細書に格別に記載された「本件従来技術」による取付工法(構成要件E’のとおり,押さえ金具が誘導 - 35 -表皮発熱管に溶接されるので,押さえ金具に溶接された複数の誘導表皮発熱管同士は,押さえ金具を解して電気的に導通されることとなり,その結果,押さえ金具は,短絡片の機能を果たすこととなる。)と「本件最良実施形態」(この実施形態において,並列に並べられた鋼管単体同士は電気的に接続されないものである。)の二つの独立した技術思想を適当に組み合わせて,発明の体裁を整えたものにすぎず,このような発明が本件当初明細書に記載された事項であるとはいえない。 (b) また,本件当初明細書には,本件訂正発明が規定する「誘導発熱鋼管単体」について,本件訂正発明が規定する構成要件E’の構造(「並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている」)は記載も示唆もされていない。 b 小括以上のとおり,第2次訂正は,第2次審決(乙44)が認定判断するように,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないから,新規事項の追加に当たり,特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項に適合しない。 (イ) 第2次訂正による無効理由の解消の主張に対し前記(2)アで述べたのと同様の理由により,第2次訂正によっても,被告らが主張する無効理由はいずれも解消されない。 なお,第2次訂正によって,本件明細書 次訂正による無効理由の解消の主張に対し前記(2)アで述べたのと同様の理由により,第2次訂正によっても,被告らが主張する無効理由はいずれも解消されない。 なお,第2次訂正によって,本件明細書の発明の詳細な説明は訂正されておらず,発明の詳細な説明には,原告が主張する本件訂正発明の目的・作用効果についての何ら記載がないから,この点においてもサポート要件違反(被告ら主張の無効理由2)がある。 (ウ) 新施工方法が本件訂正発明の技術的範囲に属するとの主張に対し - 36 -a 文言侵害の主張に対し前記(1)イで述べたのと同様の理由により,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件A’ないしF’をいずれも充足せず,その技術的範囲に属しないものである。 b 均等侵害の主張に対し原告主張の均等論は,新施工方法が本件訂正発明の「絶縁電線」(構成要件A’,B’及びD’)及び「絶縁電線の両端に交流電源を接続する」(構成要件D’)との構成等の多数の構成要件を充足しないことを無視するものであり,その主張自体失当である。 仮に本件訂正発明と新施工方法との相違部分が原告主張の相違部分に限定されるという前提に立ったとしても,以下のとおり,新施工方法は,均等論の第1要件,第2要件及び第5要件を充足せず,本件訂正発明と均等なものとはいえない。 (a) 第1要件の非充足本件明細書(甲14)の記載(段落【0015】ないし【0020】,【0030】,【0031】等)によれば,本件訂正発明は,「誘導発熱鋼管単体」又は「誘導発熱鋼管」について,「短絡片」のような部材を有さず,かつ,強磁性鋼材の鋼管が相互に電気的に絶縁されている鋼管あるいはこれを使用した方式ないし構造を採用することで,鋼管の外周部分にも電流を生じさせ,従来の表皮電流発熱管による水 のような部材を有さず,かつ,強磁性鋼材の鋼管が相互に電気的に絶縁されている鋼管あるいはこれを使用した方式ないし構造を採用することで,鋼管の外周部分にも電流を生じさせ,従来の表皮電流発熱管による水門凍結防止装置の課題であった発熱効率及び伝熱効率を向上させることができることに技術的意義がある。 そうすると,本件訂正発明の本質的部分は,誘導発熱方式において,上記の構成を有する「誘導発熱鋼管単体」又は「誘導発熱鋼管」を用いることにあるというべきであるから,誘導発熱方式とは無関係な「発熱線加熱装置」を用いた方式を採用する新施工方法と本件 - 37 -訂正発明との相違部分は,本件訂正発明の本質的部分に関わるものであるといえる。 (b) 第2要件の非充足上記のとおり,電磁誘導による誘導発熱方式でなければ,本件訂正発明の目的を達成することはできず,同一の作用効果も奏しないから,新施工方法と本件訂正発明との間に置換可能性は認められない。 (c) 第5要件の非充足原告は,本件出願の審査中に作成した甲34(「大河津可動堰改築ゲート設備工事のうち凍結防止装置評価項目」と題する書面)において,「鋼管発熱方式の場合は,日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に抵触の可能性がある。」と記載する一方で,新施工方法のように,2芯ケーブルを用いる方式であれば,鋼管発熱方式に該当しないとして,本件特許との関係で抵触が生じないことを対外的に認めている。 したがって,原告は,本件出願の出願経緯において,本件訂正発明の「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管」から,発熱線による発熱方式を採った鋼管を意識的に排除したというべきである。 c 小括以上のとおり,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件をいずれも充足せず,また,均等侵害も成立 誘導発熱鋼管」から,発熱線による発熱方式を採った鋼管を意識的に排除したというべきである。 c 小括以上のとおり,新施工方法は,本件訂正発明の構成要件をいずれも充足せず,また,均等侵害も成立しないから,本件訂正発明の技術的範囲に属さない。 (エ) まとめ以上のとおり,第2次訂正は訂正要件に違反し,その点を措くとしても,第2次訂正によって本件特許の無効理由は解消されず,また,新施工方法は本件訂正発明の技術的範囲に属さないものであるから,原告の - 38 -第2次訂正による対抗主張は理由がない。 (4) 争点2(被告らによる不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否)についてア原告の主張(ア) 本件情報の概要本件情報の概要は,次のとおりであり,その具体的な内容は,別紙3の各【技術情報】欄記載のとおりである(以下,各符号に係る具体的な情報内容を,「本件情報A.1)」,「本件情報A.2)」,「本件情報A.3)-1」などということがある。)。 「A.全体設計に関する情報1) 発熱鋼管の高さ方向の加熱範囲の設定2) 発熱鋼管による加熱範囲(水平方向)の設定3) 鋼管による二次閉ループを形成するための構造設計3)-1 上部の接続構造3)-2 下部の接続構造3)-3 専用ジョイントソケットの使用・構造4) 端末箱の使用及び端末箱内の鋼管の配置B.発熱鋼管及び電線の選択C.鋼管の配列本数及び電気容量の決定1) 配列本数及び電気容量の決定プロセス2) 凍結防止部表面温度の設定3) 凍結防止部附近平均風速の設定4) 所定温度上昇時間の設定D.水門凍結防止装置の通電運転制御の方法1) 凍結防止部表面温度2) 温度検出器の設置位置 - 39 -3) 凍結防止部表面温度 部附近平均風速の設定4) 所定温度上昇時間の設定D.水門凍結防止装置の通電運転制御の方法1) 凍結防止部表面温度2) 温度検出器の設置位置 - 39 -3) 凍結防止部表面温度の設定値と加熱停止温度の差の設定4) ヒーター負荷回路の回路設計E.凍結防止装置の寿命の向上,保守運用技術1) 電線の被覆層の材質と耐熱温度2) 電線の被覆層の被覆方法3) 伝熱セメントの選択」(イ) 被告らによる本件情報の使用a 原告は,被告IHIに対し,被告IHIが原告に発注した昭和53年の「建設省白川ダムクレスゲート凍結防止装置」設置工事,昭和56年の「北海道開発局十勝ダムクレストゲート凍結防止装置」設置工事,「建設省北陸地方建設局大河津分水洗堰主ゲート凍結防止装置」設置工事を納入した際に,その関係書類等(甲22の1,2,23の1ないし5,24ないし27の書面と同様のもの)を示したり,実際の工事現場の状況を確認させるなどして,本件情報を開示してきた。 b 被告IHIは,平成20年12月19日,本件工事を落札した後,同22日,北陸地方整備局長との間で,本件工事の請負契約を締結した。 その後,被告IHIが信濃川河川事務所に提出した甲11(「大河津可動堰改築ゲート設備工事凍結防止装置関係図」)に,本件情報に係る記載があることからすると,被告IHIが,甲11の作成(甲11記載の凍結防止装置の設計)及び本件工事における水門凍結防止装置の施工に当たり,本件情報(ノウハウ)を使用していることは明らかである。 (ウ) 本件情報の営業秘密該当性原告が保有する本件情報は,以下のとおり,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当する。 - 40 -a 秘密管理性(a) 原告は,秘密情報管理規程(甲12の3)等を定 業秘密該当性原告が保有する本件情報は,以下のとおり,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当する。 - 40 -a 秘密管理性(a) 原告は,秘密情報管理規程(甲12の3)等を定めており,原告の内部では,本件情報について,請負契約に基づく顧客への開示を除き,第三者にその内容を開示しないように厳重に管理を行っている。一方で,原告の顧客との関係では,TRIPS協定39条2項(c)号にいう「状況に応じた合理的な措置」(甲18)の範囲内での十分な秘密の管理を行っている。 (b) 原告と被告IHIは,平成14年4月1日,原告の注文に基づき被告IHIが原告の工事を請け負うことに関し,工事請負基本契約(以下「本件請負基本契約」という。)を締結した(甲13)。 (c) 本件情報は,原告の水門凍結防止装置の設計に関する基本的かつ重要な設計情報そのものであり,原告の意思に反して自由に使用することのできる類のものではないから,本件請負基本契約の条項に明示的に秘密保持義務が記載されていなくても,本件請負基本契約に付随する信義則上の義務として,あるいは公正な商慣習法上の義務として,被告らは,原告に対し,本件情報に係る秘密保持義務,目的外使用禁止義務を負うものである。 (d)① これに対し被告らは,被告らに秘密保持義務を課す条項が本件請負基本契約には存在しないので,本件情報について,秘密保持義務を負うものではない旨主張する。 しかしながら,秘密管理性は,秘密の管理について「状況に応じた合理的な措置」がとられていればよいから,「秘密保持条項の明文」という形式は,不正競争防止法によって営業秘密を保護するための要件としては重要でない。 そして,本件情報は,原告の凍結防止装置の設計に関する,基本的かつ重要な設計情報そのものであるところ, 明文」という形式は,不正競争防止法によって営業秘密を保護するための要件としては重要でない。 そして,本件情報は,原告の凍結防止装置の設計に関する,基本的かつ重要な設計情報そのものであるところ,被告IHIは, - 41 -長年,原告と水門凍結防止装置の請負契約を行ってきたのであり,原告の設計情報が原告にとって重要な企業秘密情報であることは被告IHIが熟知しているはずであることなどからすれば,前記(c)のとおり,被告らは,本件請負基本契約に付随する信義則上の義務として,あるいは公正な商慣習法上の義務として,本件情報に係る秘密保持義務,目的外使用禁止義務を負うものであるから,被告らの上記主張は理由がない。 ② 被告らは,本件情報について,それが原告の営業秘密であることが被告らに対して客観的に明示されていない旨主張する。 しかしながら,そのように外形的に秘密であることが表示されていないとしても,別紙3の各【技術情報】欄記載のとおり,本件情報は,原告の水門凍結防止装置の設計に関する基本的かつ重要な設計情報そのものであるから,その内容それ自体によって,原告の営業秘密であることを被告らは十分に認識できることは明らかである。 したがって,外形的に秘密であることが表示されていないことをもって,直ちに本件情報の秘密管理性が否定されるものではなく,被告らの上記主張は理由がない。 b 本件情報の有用性(a) 本件情報には,水門凍結防止装置の加熱範囲の設定,鋼管による二次閉回路の構造設計,発熱鋼管と電線の選択,鋼管の配列本数と電気容量の決定等の水門凍結防止装置の基本設計に必要な情報が含まれ,これに加えて,通電制御方法や装置の寿命の向上,保守運用のための技術も含まれている。このように本件情報は,水門凍結防止装置の設計情報として,相互に の水門凍結防止装置の基本設計に必要な情報が含まれ,これに加えて,通電制御方法や装置の寿命の向上,保守運用のための技術も含まれている。このように本件情報は,水門凍結防止装置の設計情報として,相互に有機的な関連をもって「承認申請図」や「設計計算書」にまとめられている情報群である。 - 42 -本件情報の個別具体的な有用性は,別紙3の各【考え方】欄記載のとおりである。 (b) 被告らは,本件情報について,所与の条件によって必然的に決定される設計条件であるとか,当業者が適宜選択しうる技術事項であるとして,一見して明らかに有用性が認められないものが多数含まれており,有用性がない旨主張する。 しかしながら,本件情報は,水門凍結防止装置について原告が長年の経験によって蓄積してきたノウハウであり,被告らは,本件情報の設計条件をなぜ採用するのか,その意義を全く理解することなく,原告が採用する設計条件をそのまま採用したにすぎない。被告らは,過去において水門凍結防止装置の開発経験が皆無であったにもかかわらず,原告のノウハウを不正に利用したからこそ,甲11の設計書類を非常に短期間で作成し,本件工事を施工することができたのである。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 c 本件情報の非公知性(a) 本件情報は,その保有者である原告の管理下以外では,一般に入手することができないものであるし,被告IHIを含め,原告が請負契約に基づいて本件情報を開示した者については,当該契約に付随する信義則上の義務,あるいは公正な商慣習法上の義務として,秘密保持義務を負っているものであるから,そういった観点から,非公知性は担保されている。 (b) 被告らは,本件情報が記載された資料が国土交通省に提供されており,情報公開制度を利用して何人でもその開 密保持義務を負っているものであるから,そういった観点から,非公知性は担保されている。 (b) 被告らは,本件情報が記載された資料が国土交通省に提供されており,情報公開制度を利用して何人でもその開示請求ができること,また,実際に,開示されたことを理由として,本件情報の非公知性が否定される旨主張する。 - 43 -しかしながら,本件情報は,情報公開法5条2号イの不開示情報に当たるものであるから,行政機関が保有しているだけでは公知であるとはいえない。被告らの指示を受けた被告IHIの従業員の情報公開請求によって,行政機関から同人に対して本件情報が開示されたという事実はあるが,これは,行政機関が,本件情報が上記不開示情報に該当することを看過して情報を開示してしまったにすぎないものであるし,原告の本訴提訴後に,本件情報が誤って開示されたからといって,被告らが本件情報を使用して甲11の設計書類を作成した時点における本件情報の非公知性が否定されるものではない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 (エ) 被告らによる本件情報の使用目的被告らは,従前,本件請負基本契約に基づいて,水門凍結防止装置の設置工事については,これを原告に行わせていたにもかかわらず,そのような契約関係を通じて入手した原告の営業秘密である本件情報(ノウハウ)を使用して,原告が開発してきた水門凍結防止装置の製造ビジネスについて,原告から同ビジネスを奪うという不正の利益を得る目的又は原告に損害を加える目的で,同ビジネスに新規参入をしてきた。 (オ) まとめ以上のとおり,被告らが,不正の利益を得る目的又は原告に損害を加える目的で,原告から開示された営業秘密である本件情報を使用して,甲11の作成(甲11記載の凍結防止装置の設計)をし,本件工事におけ 以上のとおり,被告らが,不正の利益を得る目的又は原告に損害を加える目的で,原告から開示された営業秘密である本件情報を使用して,甲11の作成(甲11記載の凍結防止装置の設計)をし,本件工事における水門凍結防止装置の施工をした行為は,不正競争防止法2条1項7号に規定する不正競争行為(営業秘密の不正使用行為)に該当する。 イ被告らの主張(ア) 被告らによる本件情報の使用及びその使用目的の主張に対し - 44 -被告らが図利加害目的で本件情報の不正使用を行った事実はない。 被告IHIは,本件工事について独自に各種の設計条件を採用したのであって,本件情報を使用したことは一度もない。仮に被告IHIが採用した設計条件に本件情報と一致する部分があったとしても,それは当業者の通常選択する設計的事項であることから,一致したにすぎない。 また,甲11は,工事の過程における案の一つにすぎないものであり,客先である信濃川河川事務所は,甲11記載の内容を受け入れておらず,実際に,本件工事では,甲11と無関係の新施工方法が実施されており,甲11は全く使用されていない。 (イ) 本件情報の営業秘密該当性の主張に対しa 秘密管理性について営業秘密としての秘密管理性が認められるためには,事業者が主観的に秘密として管理しているだけでは不十分であり,客観的にみて秘密として管理されていると認識できる状態にあることが必要であると解される(経済産業省「営業秘密管理指針」平成22年4月9日改訂13頁参照)。 以下のとおり,本件情報は,主観的にも客観的にも秘密として管理されているものとはいえず,本件情報は,秘密管理性の要件を充たさない。 (a) 原告の秘密情報管理規程(甲12の3)の6条によれば,営業秘密には営業秘密である旨を記録媒体に明示しな 秘密として管理されているものとはいえず,本件情報は,秘密管理性の要件を充たさない。 (a) 原告の秘密情報管理規程(甲12の3)の6条によれば,営業秘密には営業秘密である旨を記録媒体に明示しなければならないとされているが,被告らが原告から開示を受けた水門凍結防止装置に関する資料にはそのような表示は一切付されてないし,被告らは,原告から資料の提供を受けるに当たって,秘密情報として取り扱うように要求されたことは一度もない。 (b) 原告の秘密情報管理規定(甲12の3)の5条によれば,原告 - 45 -の管理責任者は開示先にも秘密保持の徹底を図る責務を負うとされているのであるから,仮に被告らが原告の主張するような秘密保持義務を負うというのであれば,原告と被告IHIとの間の本件請負基本契約の契約書(甲13)には,被告IHIに秘密保持義務を課す旨の条項が記載されて然るべきところ,同契約書には,そのような秘密保持義務は一切記載されていない。そうである以上,私的自治の原則に鑑みて,被告IHIは,原告が主張するような秘密保持義務等を負うものではない。 また,明示又は黙示の合意が存在しないにもかかわらず,原告及び被告IHIが相互に秘密保持義務を負うなどといった原告主張の「公正な商慣習」は存在しない。 (c) 被告IHIが,原告から提供を受けた設計計算書,取扱説明書等は,発注者である国土交通省等に提出しており,それらの文書は情報公開法に基づく情報開示の対象になっているところ,原告が本件情報を秘密として管理しているのであれば,情報公開法に基づく開示が行われることを防止するために何らかの措置が講じられて然るべきであるが,原告は,そのような措置を何ら講じていなかったものである。 (d) 原告は,秘密情報管理規程(甲12の3)等に基づいて, 開示が行われることを防止するために何らかの措置が講じられて然るべきであるが,原告は,そのような措置を何ら講じていなかったものである。 (d) 原告は,秘密情報管理規程(甲12の3)等に基づいて,本件情報を秘密として管理していた旨を主張する。 しかしながら,秘密情報管理規程(甲12の3)が制定されたのは平成17年4月1日であり,同日以前の時点において,原告において本件情報について秘密管理がなされていたことを示す証拠はない。 いずれにせよ,前記(a),(b)のとおり,原告は,被告らとの関係で,本件情報を秘密として取り扱うことをしていないのであるか - 46 -ら,原告内部における本件情報の管理体制は,本件における秘密管理性の有無に何ら影響するものではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 b 有用性について不正競争防止法2条6項にいう「有用な」とは,当該情報自体が事業活動に使用・利用されていたり,又は,使用・利用されることによって費用の節約,経営効率の改善等に役立つものという意味であり,当業者であれば通常の創意工夫の範囲内において適宜に選択する設計的事項にすぎない情報などは有用性が否定されると解されるところ,本件情報には,所与の条件によって必然的に決定される設計条件や当業者が適宜選択しうる技術事項のような一見して明らかに有用性が認められないものが多数含まれている。 したがって,本件情報に有用性は認められない。 c 非公知性について(a) ある情報について非公知性が認められるためには,保有者の管理下以外では当該情報を一般に入手できない状態にあることが必要であるところ,被告IHIが本件情報について秘密保持義務を負っていないこと,本件情報が記された資料は発注者である国土交通省に提供されているため,そ は当該情報を一般に入手できない状態にあることが必要であるところ,被告IHIが本件情報について秘密保持義務を負っていないこと,本件情報が記された資料は発注者である国土交通省に提供されているため,その提供がなされた時点で,情報公開法(平成13年4月1日施行)により,原則として何人であっても行政機関の長に対し請求することにより開示(閲覧又は写しの交付)を受けることができる状況にあり,実際に,被告IHIの従業員が,平成22年1月8日付けで北海道開発局宛てに行った行政文書開示請求に基づき,本件情報が記載された乙28の1ないし9(平成16年度施工の定山渓ダム副ゲート凍結防止装置改修工事に関する施工計画書等)が開示されていること,ダムのゲートに関する工 - 47 -事に関わる多数の行政庁の職員や下請業者の全員が本件情報について守秘義務を負っているとは考え難いことからすると,本件情報について,非公知性は認められないといわざるを得ない。 (b) これに対し原告は,被告らの指示を受けた被告IHIの従業員の情報公開請求によって,行政機関から同人に対して本件情報が開示されたという事実はあるが,これは,行政機関が,本件情報が情報公開法5条2号イの不開示情報に当たることを看過して情報を開示したにすぎない旨を主張する。 しかしながら,乙28の1ないし9が情報公開法に基づく開示請求により現実に公開されていたことは事実であること,北海道開発局が,乙28の1ないし9に係る情報公開請求について,情報公開法13条1項の任意的意見聴取を行っていないことからすると,北海道開発局は,任意的意見聴取をするまでもなく,本件情報が同法5条2号イの不開示情報に該当しないと判断したものと考えられる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (ウ) まとめ以上に 道開発局は,任意的意見聴取をするまでもなく,本件情報が同法5条2号イの不開示情報に該当しないと判断したものと考えられる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (ウ) まとめ以上によれば,被告らによる甲11の作成行為(甲11記載の凍結防止装置の設計をした行為)及び本件工事を施工した行為が不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に該当するとの原告の主張は,理由がない。 (5) 争点3(原告の損害額)についてア原告の主張(ア) 被告IHIが賠償すべき原告の損害額a 本件特許権侵害の不法行為による損害(a) 被告IHIが,本件工事において,新施工方法によって水門凍 - 48 -結防止装置を施工した行為は,原告の本件特許権を侵害する不法行為に当たるから,被告IHIは,原告に対し,原告が受けた損害を賠償する義務を負う。 (b) 特許法102条1項は,侵害行為を組成した物の譲渡数量に,「侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を,特許権者又は専用実施権者の実施能力を超えない限度において,特許権者又は専用実施権者が受けた損害額とすることができると規定している。 しかるところ,①被告IHIが施工した水門凍結防止装置(「侵害の行為を組成した物」)は全部で6門であること,②6門の全部について原告が本件発明の実施品である水門凍結防止装置を供給する能力(実施能力)を有していたこと,③原告が,従前の交渉経過の段階で,被告IHIに対して提示した6門の水門凍結防止装置の見積金額が2億1960万円であり,原告の本件発明の実施品の限界利益率が40%を下回らないことからすると,特許法102条1項によって算定される原告の損害額は,8784万円を下回らない。 b 不正競争行為(営業秘 960万円であり,原告の本件発明の実施品の限界利益率が40%を下回らないことからすると,特許法102条1項によって算定される原告の損害額は,8784万円を下回らない。 b 不正競争行為(営業秘密の不正使用)による損害額(a) 被告IHIが,甲11を作成し,本件工事において,新施工方法によって水門凍結防止装置を施工した際に,別紙3記載の原告の営業秘密であるノウハウを不正に使用した行為は,不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たるから,被告IHIは,原告に対し,同法4条に基づき,原告が受けた損害を賠償する義務を負う。 (b) 不正競争防止法5条1項は,侵害行為を組成した物の譲渡数量に,「侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を,被侵害者の当該物に係る販売 - 49 -その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において,被侵害者が受けた損害額とすることができると規定している。 しかるところ,①被告IHIが施工した水門凍結防止装置(「侵害の行為を組成した物」)は全部で6門であること,②6門の全部について原告が本件発明の実施品である水門凍結防止装置を供給する能力(実施能力)を有していたこと,③原告が,従前の交渉経過の段階で,被告IHIに対して提示した6門の水門凍結防止装置の見積金額が2億1960万円であり,原告の本件発明の実施品の限界利益率が40%を下回らないことからすると,不正競争防止法5条1項によって算定される原告の損害額は,特許法102条1項によって算定される場合(前記a(b))と同様に,8784万円を下回らない。 c 小括以上によれば,原告は,被告IHIに対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,8784 b))と同様に,8784万円を下回らない。 c 小括以上によれば,原告は,被告IHIに対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,8784万円及びこれに対する平成21年11月19日(本訴(平成21年(ワ)第38627号事件)の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (イ) 被告インフラシステムが賠償すべき原告の損害額前記(ア)において被告IHIについて述べたのと同様の理由によって,原告は,被告インフラシステムに対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,8784万円及びこれに対する平成21年12月15日(本訴(平成21年(ワ)第44344号事件)の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることがで - 50 -きる。 イ被告らの主張原告の主張はいずれも争う。 なお,被告IHIと被告インフラシステム間の平成21年8月24日付け吸収分割契約に基づく吸収分割により,同年11月1日,本件工事を含む,被告IHIが営む橋梁,水門その他鋼構造物事業及びこれらのメンテナンス事業に係る被告IHIの債権債務は,本訴(平成21年(ワ)第38627号事件)に係る法律関係も含めて,すべて被告インフラシステムに承継されているから,原告の被告IHIに対する損害賠償請求は失当である。 2 反訴関係(1) 争点4(原告による不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否)についてア被告らの主張(ア) 告知行為に至る経緯a 本件工事の受注を目指していた被告IHIは,平成20年8月22日,本件工事の見積原価を作成す 止法2条1項14号の不正競争行為の成否)についてア被告らの主張(ア) 告知行為に至る経緯a 本件工事の受注を目指していた被告IHIは,平成20年8月22日,本件工事の見積原価を作成するために,過去の受注工事における水門凍結防止装置の設計を依頼していた原告に対し,本件工事の水門凍結防止装置の見積依頼をしたところ,同年9月2日,原告から,見積金額2億1960万円の提示があったが,被告IHIが想定していたものよりもあまりに高額であるといわざるを得なかった。そこで,被告IHIは,原告と値引き交渉を行ったが,原告の対応は極めて硬直的なものであったため,同年12月ころには,本件工事を受注できた場合の納期の関係もあることから,自社開発を視野に,基礎技術の開発を始めた。 b 被告IHIは,平成20年12月19日に本件工事を落札し,同月 - 51 -22日に本件工事を受注した以後,水門凍結防止装置を自社開発するための研究を継続しつつ,原告との値引き交渉を継続することとした。 被告IHIは,平成21年4月1日,原告から一切の値引に応じないとの回答を受けた後,同年5月7日,原告に対し,本件工事における水門凍結防止装置を自社開発で行うことを正式に連絡した。 (イ) 告知行為a 原告の担当者は,平成21年6月19日,信濃川河川事務所を訪問し,同事務所の担当者に対し,「大河津可動堰改築ゲート設備工事のうち凍結防止装置評価項目」と題する書面(甲34)を交付し,被告IHIの水門凍結防止装置が原告の特許権を侵害する可能性がある旨を述べた。 甲34には,「承認申請されたヒーターが鋼管発熱方式の場合は,日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に抵触の可能性がある。」との記載がある。 b 原告の担当者は,平成21年7月29日 甲34には,「承認申請されたヒーターが鋼管発熱方式の場合は,日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に抵触の可能性がある。」との記載がある。 b 原告の担当者は,平成21年7月29日,信濃川河川事務所を再度訪問し,同事務所の担当者に対し,被告IHIが水門凍結防止装置を自社開発した場合には,本件出願に係る特許権を侵害する旨を告げた。 (ウ) 不正競争防止法2条1項14号該当性a 被告IHIが原告の前記(イ)の行為がされた当時予定していた旧施工方法及び被告インフラシステムが本件工事において実施した新施工方法は,いずれも本件発明の技術的範囲に属さず,また,本件発明に係る本件特許には無効理由があるから,原告の上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」(実際には特許侵害をしていないのに,特許侵害をするとの虚偽の事実)を告知す - 52 -る行為(不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為)に該当する。 b(a) これに対し原告は,後記のとおり,平成21年6月19日の時点(甲34の交付時点)では,原告及び客先である信濃川河川事務所は被告らの水門凍結防止装置の方式の具体的内容を知るに至っていないし,本件出願の手続補正が行われている段階であるから,原告が,客先に対して行った説明は,被告IHIの水門凍結防止装置が鋼管発熱方式である場合には,原告が出願している特許との抵触問題があり得ることを一般的に指摘し,客先はこのような指摘であることを十分理解していたから,虚偽の事実の告知に当たらない旨を主張する。 しかしながら,仮に特許権者が自らが保有する特許権の無効理由や被侵害者の対象物件又は対象方法を十分に調査した上で客先に警告を行った場合であっても,結果的に非侵害であったり,無効であれば,原則的には,不 しながら,仮に特許権者が自らが保有する特許権の無効理由や被侵害者の対象物件又は対象方法を十分に調査した上で客先に警告を行った場合であっても,結果的に非侵害であったり,無効であれば,原則的には,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当すると解されている。本件においては,未だ特許権が成立していない段階において,原告において,被告IHIの水門凍結防止装置やその施工方法を何ら調査することなく,漫然と客先に警告を行ったもので,その悪質性は極めて高い。 また,本件工事の平成20年8月付け特記仕様書(甲15)には,「凍結防止装置は鋼管発熱方式とする。」と記載されているから,被告IHIが自社開発を行う装置は,特段の事情がない限り,鋼管発熱方式の凍結防止装置となるところ,「鋼管発熱方式」といえば,水門設備においては,「電磁誘導方式」(旧施工方法など)か「発熱ケーブル方式」(新施工方法など)しかない上,一般的に用いられている方式は,「電磁誘導方式」であり,しかも,被告IHIが原告に発注しようとしていた装置は「電磁誘導方式」であった。 - 53 -そして,被告IHIは,平成21年5月7日,原告に対し,原告への発注をやめて水門凍結防止装置を自社開発することを伝えているのであるから,原告は,甲34の交付時点で,被告IHIの水門凍結防止装置が「電磁誘導方式」となる蓋然性が高いことを十分に理解した上で,客先に対し,警告を行ったものであって,原告が出願している特許との抵触問題があり得ることを一般的に指摘したにすぎないものとはいえない。また,客先において,原告の前記(イ)aの告知内容は,被告IHIの実施する施工方法が原告の出願した特許を侵害する旨のものであると捉えたことは疑いようがない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (b) いて,原告の前記(イ)aの告知内容は,被告IHIの実施する施工方法が原告の出願した特許を侵害する旨のものであると捉えたことは疑いようがない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (b) 次に,原告は,後記のとおり,平成21年7月29日に客先の担当者を訪問した際は,本件出願の手続補正が同月17日に行われたことから,本件出願の審査状況について説明したにすぎないなどと主張する。 しかしながら,原告の客先の担当者への上記訪問は,被告IHIが平成21年7月1日に水門凍結防止装置に関する設計図書(甲11)を客先に提示し,同月2日ころこれを原告に交付した後にされたものである。 そして,原告が客先を訪問した翌日の7月30日には,客先の担当者から被告IHIの担当者に対して,「IHIの言い分と日本工営の言い分に大きな差がある。一度整理したいので,来週早々に事務所で打合せしたい」との電話連絡があった(乙20)。仮に原告が被告IHIの装置とは無関係に,一般的に本件出願の審査状況を報告しただけであれば,「日本工営の言い分」なるものはそもそも存在しないから,客先から「IHIの言い分と日本工営の言い分に大きな差がある。」という発言がされるはずがないし,少なくとも,客先が「日本 - 54 -工営の言い分」としている以上,原告が行った説明について,客先は,原告が,「被告IHIの装置が原告の特許権(正確には出願中である)を侵害する」との説明をされたものと受け取っていることは明らかである。 さらに,客先からの上記電話連絡を受けて,被告IHIは,同年8月6日に客先と打合せを行った。打合せの目的は,「日本工営が凍結防止装置に関して「追加特許」申請中で,特許抵触するのではないかという心配を客先がしており,今後の対応について客先と協議するため」で 月6日に客先と打合せを行った。打合せの目的は,「日本工営が凍結防止装置に関して「追加特許」申請中で,特許抵触するのではないかという心配を客先がしており,今後の対応について客先と協議するため」である(乙22)。原告が客先に対して,被告IHIの装置との関係で原告が本件出願に係る発明の説明をしていなければ,被告IHIが,客先から急遽このような協議を求められることはなく,客先が被告IHIの装置に対し原告の特許権に抵触するおそれがあるのではないかとの疑念を抱いたことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は,事実に反するものであって,理由がない。 (エ) 小括以上のとおり,原告による前記(イ)の告知行為は,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当する。 イ原告の主張(ア) 被告ら主張の前記ア(イ)aの告知行為について国土交通省は,水門凍結防止装置を含むダム等の工事の入札に当たって,水門凍結防止装置の参考見積を原告に依頼していた。結果的には,ダム工事を落札した企業が水門凍結防止装置の部分は原告に発注するので,水門凍結防止装置を実際に製造するメーカーが国土交通省に入札のための参考見積を提出するという関係になっていた。本件工事の入札に当たっても,信濃川河川事務所(客先)は,平成19年9月28日及 - 55 -び平成20年5月9日に,本件工事のうち水門凍結防止装置の参考見積を原告に依頼し,原告は,その見積書(甲31の1ないし4)を客先に提出した。 被告IHIが自社開発したとする水門凍結防止装置が客先によって正式に採用されるためには,客先において,特記仕様書(甲15)に基づいて被告IHIの水門凍結防止装置の評価を行い,承認を受ける必要がある。 そこで,原告の担当者は,平成21年6月19日,客先の便宜を考 採用されるためには,客先において,特記仕様書(甲15)に基づいて被告IHIの水門凍結防止装置の評価を行い,承認を受ける必要がある。 そこで,原告の担当者は,平成21年6月19日,客先の便宜を考慮し,信濃川河川事務所工務課担当者を訪問し,甲34を提示して,一般的に水門凍結防止装置の承認申請図が受注者から提出された場合に,どのような点に着目して評価すべきかの評価項目を説明し,その中で,水門凍結防止装置が鋼管発熱方式の場合には,原告が出願している特許との抵触問題があり得ることを一般的に説明した。すなわち,この時点では,原告及び客先は被告IHIが自社開発しようとする水門凍結防止装置の方式の具体的内容を知らない状況にあり,原告の客先に対する説明は,もしそれが鋼管発熱方式であれば,原告が出願している特許に抵触する可能性があるとの一般論を述べたものであり,また,本件出願の手続補正が行われていない段階であったから,特許発明の具体的内容を前提とするものではない。 したがって,原告の上記説明は,被告らが主張するような「競争関係にある他人の営業上の信用を害する事実」の告知に当たらない。 (イ) 被告ら主張の前記ア(イ)bの告知行為について原告の担当者は,平成21年7月17日に本件出願の手続補正が行われたことから,同月29日に客先の担当者を訪問し,本件出願の審査状況について報告したが,その際に,被告ら主張の前記ア(イ)bの告知行為を行った事実は存在しない。 - 56 -被告らが根拠として挙げる乙20及び乙22の電子メールは,被告IHIの従業員が被告IHIの立場で作成したものであるから,そもそも客先の発言を正確に記載したものとはいえない。 乙20の電子メールは,客先から電話を受けた被告IHIの従業員が他の従業員にその旨の連絡を行っ 員が被告IHIの立場で作成したものであるから,そもそも客先の発言を正確に記載したものとはいえない。 乙20の電子メールは,客先から電話を受けた被告IHIの従業員が他の従業員にその旨の連絡を行ったものであり,客先からの電話の用件は,客先が同年7月29日に原告の訪問を受けて,翌週に被告IHIと打合せがしたいと求めたことである。この電子メールの時点より前に,原告と被告IHIの双方が客先に「言い分」を具体的に述べた事実はないのであり,仮に客先が「IHIの言い分と日本工営の言い分に大きな差がある。」というような表現を用いたとしても,原告が同日に被告IHIの具体的な装置について,同月17日付け補正に係る特許を侵害すると客先に告知したことを示すものではない。 また,乙22の電子メールは,同年8月6日に行われた客先と被告IHIの打合せの内容を被告IHIの他の従業員に報告するものである。 乙22の電子メールには打合せの目的として,「日本工営が凍結防止装置に関して「追加特許」申請中で,特許抵触するのではないかという心配を客先がしており,今後の対応について客先と協議するため」との記載があるが,この記載は,上記打合せを行った際の被告IHI側の認識を表現したものにすぎず,同電子メールには,打合せの場で客先が,原告は被告IHIの装置が原告の特許を侵害すると主張していると述べたなどとは一切記載されていない。 したがって,乙20及び乙22の電子メールは,被告ら主張の前記ア(イ)bの告知行為を行った事実を裏付けるものではない。 (ウ) 不正競争防止法2条1項14号該当性についてa 前記(ア)及び(イ)のとおり,原告の担当者が平成21年6月19日及び同年7月29日に客先の担当者に行った説明内容は,水門凍結防止 - 57 -装置の承認の判断における評価 該当性についてa 前記(ア)及び(イ)のとおり,原告の担当者が平成21年6月19日及び同年7月29日に客先の担当者に行った説明内容は,水門凍結防止 - 57 -装置の承認の判断における評価項目として,鋼管発熱方式の場合に問題となり得る特許出願の存在の指摘及びその審査状況の報告のみであって,被告らが主張するような「競争関係にある他人の営業上の信用を害する事実」ではない。 また,原告の担当者が行った説明内容に,「虚偽の事実」となり得る事実は存在しない。 b 原告と客先との関係は,一般に特許侵害に関して不正競争防止法2条1項14号の問題が起こり得る権利者(告知者)と被告知者の関係とは全く異なるもので,前記(ア)のとおり,原告は,客先から依頼を受けて,本件工事における水門凍結防止装置の参考見積を提出したり,被告らの水門凍結防止装置について必要な情報の提供を求められたりする立場にあったもので,原告が客先に提供した甲34に掲載された情報や告知内容は,客先が被告らの施工方法に係る水門凍結防止装置の評価を適切にするため必要なもので,被告らの営業上の信用を害するものではない。 c 以上によれば,原告の担当者が平成21年6月19日及び同年7月29日に客先の担当者に行った説明(告知行為)が,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するとの被告らの主張は理由がない。 (2) 争点5(原告による本訴の提起及び別件仮処分の申立ての不法行為該当性)についてア被告らの主張原告は,平成21年10月28日に,被告IHIに対し,本訴(平成21年(ワ)第38627号事件)を,同年12月7日に,被告インフラシステムに対し,本訴(平成21年(ワ)第44344号事件)をそれぞれ提起し,平成22年5月17日に,被告らに対し,別件仮処分の申立て 1年(ワ)第38627号事件)を,同年12月7日に,被告インフラシステムに対し,本訴(平成21年(ワ)第44344号事件)をそれぞれ提起し,平成22年5月17日に,被告らに対し,別件仮処分の申立てを - 58 -した。 ところで,訴訟において,提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときには,当該訴えの提起は,訴権の濫用として,不法行為を構成する(最高裁判所昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。この理は,仮処分の申立てにもあてはまるものであり,仮処分の申立人の主張した権利等が事実的,法律的根拠を欠くものである上,申立人が,そのことを知りながら又は仮処分の申立てをするために通常必要とされている事実調査及び法律的検討をすれば,事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのにあえて仮処分を申し立てた場合には,当該仮処分の申立ては,不法行為を構成すると解すべきである。 (ア) 本訴提起の不法行為該当性a 本訴のうち,本件特許権に基づく請求についてみるに,①新施工方法は,本件発明のような「電磁誘導方式」を用いたものではなく,発熱線加熱装置を用いた方式(「発熱ケーブル方式」)であり,本件発明の技術的範囲に属さないこと,②旧施工方法は,「電磁誘導方式」であるが,「電気的に接続された磁性体鋼管」(正確にはフラットバーにより接続されている。)を用いたものであるから,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」及び構成要件Eの「誘導発熱鋼管」の構成を充足せず,本件発明の技術的 された磁性体鋼管」(正確にはフラットバーにより接続されている。)を用いたものであるから,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」及び構成要件Eの「誘導発熱鋼管」の構成を充足せず,本件発明の技術的範囲に属さないこと,③原告が平成21年6月に作成した「大河津可動堰改築ゲート設備工事のうち凍結防止装置評価項目」と題する文書(甲34)には,「2芯ケーブルであれば磁界が発生せず保護(金属)管への誘導電流発生は無いの - 59 -で鋼管発熱方式には該当しない。」との記載があることからすると,原告自身が新施工方法が本件発明の技術的範囲に属さないことを認識していたといえること,④本件発明に係る本件特許は,原告自身がした特許出願の公告公報(甲10,乙3等)によって進歩性が否定され,無効とされるべきものであること,⑤原告が有している技術的知見の程度,原告が甲11を保有していたという本件の状況及び無効理由の内容に鑑みれば,原告は,旧施工方法及び新施行方法が本件発明の技術的範囲に属さないこと,本件発明に係る本件特許に無効理由が存在することを知っていたか,そのことを容易に知ることができたものである。 b 次に,本訴のうち,不正競争防止法に基づく損害賠償請求についてみるに,本件情報は,原告において主観的にも客観的にも秘密として管理されておらず,秘密管理性の要件を欠いており,さらに有用性及び非公知性の要件を欠くことからすると,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当せず,原告は,そのことを知っていたか,そのことを容易に知ることができたものである。 c さらに,①被告IHIが原告へ発注することを考えていた本件工事の水門凍結防止装置の価格交渉が折り合わなかった中で,被告IHIが装置の自社開発を行うことを知った原告が,本件出願の出願当初は,鋼管が絶縁 らに,①被告IHIが原告へ発注することを考えていた本件工事の水門凍結防止装置の価格交渉が折り合わなかった中で,被告IHIが装置の自社開発を行うことを知った原告が,本件出願の出願当初は,鋼管が絶縁であることを特徴点として記載し,明細書においてもこれ以外の開示がないにもかかわらず,平成21年7月2日に,被告IHIの水門凍結防止装置に関する設計図書(甲11)の内容を知るやいなや,同月17日付け手続補正書により,本件出願に係る発明の技術的範囲に甲11の内容を含めることを意図した補正を行っていること,②原告が客先である信濃川河川事務所に原告の特許権との抵触の可能性を告知した同月29日の時点では,本件出願の内容は公開 - 60 -されていなかったこと,③被告IHIが,同年8月下旬に,原告に対し,交渉の申入れや原告の特許内容の開示要求をしたにもかかわらず,原告は,これを拒否し,それどころか,同年9月3日,被告IHIに対して,内容証明郵便で,秘密保持契約を締結しないと本件特許の包袋記録は開示できないと回答したり,同年10月1日,同月9日までという極めて短い期間を指定して水門凍結防止装置の発注を要求してきたり,同月6日に予定されていた面談のわずか数日前にようやく本件特許の包袋記録を送付し,当該面談においては,原告が主張するノウハウについて,発熱鋼管の寸法と電線の断面積の組合せを除き,何も具体的な開示を行わなかったりするなど,被告IHIにおいて検討する時間を与えないままに,本訴を提起したことを総合的に考慮すれば,原告の一連の行動は,被告らの業務を妨害し,被告らをして,やむなく原告に対し,水門凍結防止装置の発注をせしめることを目的としてされた不当なものである。 d 以上によれば,本訴において原告が主張する権利等は,事実的,法律的根拠を欠いてお ,被告らをして,やむなく原告に対し,水門凍結防止装置の発注をせしめることを目的としてされた不当なものである。 d 以上によれば,本訴において原告が主張する権利等は,事実的,法律的根拠を欠いており,原告は,そのことを知っていたか又は容易に知り得たにもかかわらず,本訴を提起したものであり,本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くといえるから,訴権の濫用であって,不法行為を構成するというべきである。 (イ) 別件仮処分の申立ての不法行為該当性a 原告は,被告IHIの従業員が北海道開発局に本件情報が記載された文書について情報公開請求を行った行為が被告らによる「不正の手段により営業秘密を取得する行為」(不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為)に該当するとして,被告らに対し,不正競争防止法3条に基づく差止請求権を被保全債権とする別件仮処分の申立てをしている。 - 61 -しかしながら,本件情報は,秘密管理性,有用性及び非公知性のいずれの要件も欠いているから,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当しない。 また,被告IHIの従業員は,情報公開法に基づき,同法の定める通常の手順に則って情報開示を請求したにすぎず,本件情報が開示されたのは行政庁の判断によるものである。そして,その行政庁の判断に関して被告IHIが関与する余地はないのであるから,被告らが「不正取得行為」を行っていないことは明らかである。 したがって,原告の主張する上記被保全権利が認められないことは明らかである。 b 以上によれば,原告による別件仮処分の申立ては,事実的,法律的根拠を欠いており,原告はそのことを知っていたか又は容易に知り得たにもかかわらず,あえて別件仮処分の申立てを行ったものであるから,当該申立ては,不法行為を構成すると 仮処分の申立ては,事実的,法律的根拠を欠いており,原告はそのことを知っていたか又は容易に知り得たにもかかわらず,あえて別件仮処分の申立てを行ったものであるから,当該申立ては,不法行為を構成するというべきである。 イ原告の主張(ア) 本訴提起の不法行為該当性について原告は,被告らが本件工事に係る水門凍結防止装置を自社で設計,製造するに当たり,原告の長年にわたる水門凍結防止装置に関する研究開発成果であり,また,原告の保有する重要な知的財産である本件特許権及び本件情報(ノウハウ)を不正競争行為に使用したことから,本訴を提起したものである。 したがって,原告による本訴の提起は,原告の正当な権利行使であり,不法行為を構成しないことは明らかである。 (イ) 別件仮処分の申立ての不法行為該当性について別件仮処分の申立ては,原告が,自らの営業秘密が,被告らによって違法に開示されようとする具体的な場面に直面して,直ちにそのような - 62 -違法な開示行為が繰り返されることを停止させるために採った緊急行為である。 そして,本件情報が営業秘密に該当することは,前記1(4)ア(ウ)のとおりであるところ,被告らが,被告IHIの従業員に指示をし,情報公開法に基づく開示請求をし,情を知らない北海道開発局をして,情報公開法5条2号イの不開示情報に当たる本件情報を開示させてこれを取得した目的は,本件情報を公知情報とすることによってその営業秘密性を喪失させることにあり,被告らがこのような開示請求行為を行うことは,行政庁から,「不正の手段により営業秘密を取得する行為」(不正競争防止法2条1項4号)そのものである。 そうすると,原告による別件仮処分の申立ては,原告の正当な権利行使であって,不法行為を構成しないことは明らかである。 (3 業秘密を取得する行為」(不正競争防止法2条1項4号)そのものである。 そうすると,原告による別件仮処分の申立ては,原告の正当な権利行使であって,不法行為を構成しないことは明らかである。 (3) 争点6(被告らの損害額)についてア被告らの主張(ア) 被告らの損害の発生被告らは,原告の不正競争行為(前記(1)ア)及び不法行為(前記(2)ア)により,以下のとおり,信濃川河川事務所から,被告IHIの施工方法に係る製品が本件特許に抵触していないと確信できない限り,被告IHIの水門凍結防止装置に関する施工計画書は承認できないと告げられたことなどを受けて,やむなく旧施工方法から新施工方法に設計変更し,そのための費用等を追加で支出することを余儀なくされ,被告らの信用を毀損されるなどの損害を被った。 (イ) 被告らの損害額a 設計変更に要した追加費用旧施工方法から新施工方法に設計変更するに当たって,追加で支出した費用は,以下のとおり,合計1688万0660円を下らない(乙 - 63 -45ないし55)。 (a) 設計費用に関する外注費用 169万0240円以上(内訳:ヒーティングケーブルの昇温試験費 92万円,図面等の差し替え費 15万円以上,通線試験用のヒーティングケーブル費62万0240円)(b) 信濃川河川事務所との打合せ等に要した出張費 52万6420円(c) 設計変更作業に費やした労務費 429万6000円以上(d) 弁護士又は弁理士との打合せに要した労務費 1036万8000円以上b 信用毀損による損害原告の信濃川河川事務所に対する虚偽の事実の告知により,被告らはそれぞれ信用を毀損されており,その損害額は,合計で350万円を下らない。 c 弁護士費用及び弁理士費用 よる損害原告の信濃川河川事務所に対する虚偽の事実の告知により,被告らはそれぞれ信用を毀損されており,その損害額は,合計で350万円を下らない。 c 弁護士費用及び弁理士費用被告らは,本訴,反訴,無効審判,別件仮処分の申立ての対応を弁護士及び弁理士に依頼せざるを得なかったものであり,被告らが被った弁護士費用及び弁理士費用相当額の損害は,2000万円を下らない。 (ウ) まとめ以上によれば,原告の前記(ア)の不正競争行為及び不法行為によって生じた被告らの損害額の合計は4000万円を下回るものではないところ,被告らが被った損害を按分すると,各被告当たり2000万円を下回るものではない。 したがって,被告らは,原告に対し,不正競争防止法4条及び不法行為に基づく損害賠償の一部請求として,それぞれ2000万円及びこれ - 64 -に対する平成22年5月13日(反訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 イ原告の主張被告らの主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本訴請求について(1) 争点1-1(新施工方法の本件発明の技術的範囲の属否)についてア本件明細書等の記載事項等(ア) 本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書(甲14)には,次のような記載がある(各記載中に引用する図1ないし3,13ないし15,19ないし24については,別紙本件明細書図面参照)。 a 「【請求項1】 水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記被加熱 軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」,「【請求項2】 請求項1に記載の誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法において,前記複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固定する工程と,前記被加熱部材と前記誘導発熱鋼管単体との間に伝熱セメントを充填塗布する工程とによって,前記複数個の誘導発熱鋼管単体を相互に電気的に絶縁する,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法。」(以上,1頁)b「【技術分野】 本発明は,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置に - 65 -関する。」(段落【0001】)c(a) 「【背景技術】 寒冷地のダム等の水門は,しばしば凍結により開閉不能になる。具体的には,降雪地域に於ける水門設備は,冬期の貯水池の水門扉体に接する水面に氷雪が浮遊し,更には扉体の上面,左右両溝部,側部水密ゴム板,下縁底部戸当板,底部水密ゴム板等にも氷雪が発生し,扉体本体が凍結して開閉不能になる。」(段落【0002】),「そこで,冬季でも水門の開閉に支障がないようにするため,次のような凍結を防止する熱源が利用されてきた。」(段落【0003】),「(1)温水循環,温風循環,温油・不凍液循環等の各方式による加熱これらの各方式には,加熱機器の故障,加熱配管の凍結の危険性,通風路の水溜による通風能力低下,油系路の破損による河川への油流出,公害の発生等諸々の欠点が挙げられる。」(段落【0004】),「(2)電気加熱電気加熱に 熱機器の故障,加熱配管の凍結の危険性,通風路の水溜による通風能力低下,油系路の破損による河川への油流出,公害の発生等諸々の欠点が挙げられる。」(段落【0004】),「(2)電気加熱電気加熱には,抵抗加熱,アーク加熱,誘導加熱,赤外線加熱,ビーム加熱,その他の方式がある。」(段落【0005】)(b) 「この中で,誘導加熱における表皮電流発熱管を利用した水門凍結防止装置は,温水,温風や温油,不凍液循環方式による加熱方式に比較して,種々の利点を有している。図1は,誘導表皮電流発熱管を示している。」(段落【0006】),「絶縁電線2の両端と電源3の両端とを接続線で夫々接続し,2本の鋼管1,1′はその両端にある短絡片4,5間が溶接等により電気的に夫々接続されている。電源3及び絶縁電線2の作る1次回路に流れる1次電流i1に対応して,発熱鋼管1,1′の内周部分に反対方向の2次電流i2が誘導され,発熱鋼管1,1′の外周部分に1次電流と同じ方向の渦電流が発生する。しかし,発熱鋼管1,1′の外周部分に発生する渦電流は相互に逆方向のため,短絡片4,5を通って打ち消し合 - 66 -う。従って,鋼管外周面に金属が接触してアークが発生したりせず,人体,動物が接触しても危険が無い。」(段落【0007】),「このような表皮電流発熱管による水門凍結防止装置は,次の特許文献1で公知である。【特許文献1】特公昭57-40293「電気的水門凍結防止付水門」(公告日:昭和57年8月26日)」(段落【0008】),「図14の扉体断面中央部鋼板9,扉体前部鋼板29及び底部水門戸当板19の付近に夫々発生する氷雪15,16,20,21の凍結により,水門の開閉に支障をきたす。同様に,図15の溝形成板24及び戸当板26の付近に夫々発生する氷雪27の凍結により,水門の 底部水門戸当板19の付近に夫々発生する氷雪15,16,20,21の凍結により,水門の開閉に支障をきたす。同様に,図15の溝形成板24及び戸当板26の付近に夫々発生する氷雪27の凍結により,水門の開閉に支障をきたす。」(段落【0009】),「これを防止するため,図16に示すように,扉体断面中央部鋼板9,扉体前部鋼板29及び扉体底部水門戸当板19に,表皮電流発熱管の各群30,31,32,33,34を取付け,水門の9,29,19及び底部水密ゴム板18を夫々加熱し,水門の凍結防止を行っている。同様に,図17の溝形成板24及び戸当板26に,表皮電流発熱管の各群35,36を夫々取付け,水門の24,26及び側部水密ゴム板25を夫々加熱し,水門の凍結防止を行っている。」(段落【0010】)(c) 「取付け方法としては,発熱管1,1′を直接溶接付すること,状況によっては伝熱セメント等で代用すること,時には密着すること,が記載されている。以上が,特許文献1の表皮電流発熱管に関する開示内容である。」(段落【0011】),「なお,取り付け方法に関しては,実際には,誘導表皮電流発熱管1,1′の各群は,図18に示すように,水門扉体断面中央部鋼板9,扉体前部鋼板29,水門鋼板製戸当板19及び溝形成板24に対して,必要発熱量に相当する本数の誘導表皮電流発熱管が各群に分けて配置され,こ - 67 -れら鋼板等への伝熱を良くするために,伝熱セメント10を塗布すると共に,扉体断面中央部鋼板9及び扉体前部鋼板29に固定締付ボルト11と発熱鋼管押さえ金具12で固定して取付けられる。一方,コンクリート側へは誘導表皮電流発熱管1,1′と押さえ金具12とを溶接37付けし,一緒に鋼板24へも溶接37付して密着するように取付けられている。」(段落【0012】)d 「 付けられる。一方,コンクリート側へは誘導表皮電流発熱管1,1′と押さえ金具12とを溶接37付けし,一緒に鋼板24へも溶接37付して密着するように取付けられている。」(段落【0012】)d 「【発明が解決しようとする課題】 このような表皮電流発熱管は,加熱効率が優れていること,耐久性,耐候性に優れていることなどの利点を有する。」(段落【0014】),「しかし,この誘導表皮電流発熱管は,鋼管の外周部分には電流が流れない構造となっているため,鋼管の内周部分に流れる電流のみによって生じるジュール熱を利用したものである。」(段落【0015】),「更に,この誘導表皮電流発熱管は,形状が円管であって,その取付け断面は,被加熱部材(水門扉体前部鋼板,水門扉体断面中央部鋼板等)に対して線接触となり,発熱管の発熱が有効に伝熱されない。例え,伝熱セメントを充填して熱伝導を良くしても,伝熱は十分とは言えない。更に,伝熱セメントの充填塗布のための作業性の問題も残る。」(段落【0016】),「更に,誘導表皮電流発熱管の発熱原理に基づく閉回路として,短絡片間の接続のため,作業性の問題もある。」(段落【0017】)e 「【課題を解決するための手段】 そこで,本発明は,発熱効率を一層向上させた新規な水門の凍結防止装置を提供することを目的とする。」(段落【0018】),「更に,本発明は,伝熱効率を一層向上させた新規な水門の凍結防止装置を提供することを目的とする。」(段落【0019】),「上記目的に鑑みて,本発明に係る水門凍結防止装置は,水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に対して固着する誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置であって,前記誘導発熱 - 68 -鋼管は,並列に配置された複数個の誘導発熱鋼管単体を備え,各々の前期誘導発熱鋼管単体は,内部に軸方向 熱部材に対して固着する誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置であって,前記誘導発熱 - 68 -鋼管は,並列に配置された複数個の誘導発熱鋼管単体を備え,各々の前期誘導発熱鋼管単体は,内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有し,並列した複数個の前記誘導発熱鋼管単体の差込み孔に通して,その両端に交流電源が接続された絶縁電線を有し,複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている。」(段落【0020】),「更に,本発明に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法は,水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固着する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法であって,複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている。」(段落【0029】)f 「【発明の効果】 本発明によれば,発熱効率を一層向上させた新規な水門の凍結防止装置を提供することができる。」(段落【0030】),「更に,本発明によれば,伝熱効率を一層向上させた新規な水門の凍結防止装置を提供することができる。」(段落【0031】)g(a) 「[誘導発熱鋼管](誘導発熱鋼管単体) 図2及び図3に示す誘導発熱鋼管の特徴の1つは,鋼管1,1′の両端を電気的に接続する短絡片4,5(図1参照)は存在しない点にある。このため,1次電流i1に対応して鋼管1,1′に流れる2次電流i2 は,鋼管断面の内周部分から外周部分に渦電流として流れる。そのジュール熱は,図1に示す誘導表皮電流発熱管のジュール熱の約2倍とな 。このため,1次電流i1に対応して鋼管1,1′に流れる2次電流i2 は,鋼管断面の内周部分から外周部分に渦電流として流れる。そのジュール熱は,図1に示す誘導表皮電流発熱管のジュール熱の約2倍となり,発熱電力が大幅に増加する。」(段落【0033】),「先に,図2及び図3に示す誘導発熱鋼管の特徴の1つは,鋼管1,1′の - 69 -両端を電気的に接続する短絡片4,5が存在しない点にあると説明した。即ち,図2及び図3の誘導表皮電流発熱管は,図1の誘導表皮電流発熱管から短絡片4,5を除去した構成として説明している。しかし,本発明のポイントの1つは,短絡片4,5を除去することにより,誘導発熱鋼管1,1′の外周部分に流れる渦電流をも利用する点にある。従って,図2及び図3の誘導発熱鋼管は,図1の誘導発熱鋼管のように2本(単相交流電源を利用する場合)又は3本(多層交流電源を利用する場合)に限定されず,任意の本数でよい。更に,絶縁電線2に流す電流の方向も,図1の誘導発熱鋼管のように,隣接する誘導発熱鋼管に対して反対方向に流す必要もなく,同じ方向でもよい。」(段落【0040】)(b) 「(誘導発熱鋼管単体の配列方法) この誘導発熱鋼管単体は,短長寸法構造のため,凍結防止が必要な範囲の被加熱部材に対して,複数個並べて取り付ける必要がある。」(段落【0043】)(c) 「(水門への設置方法) この誘導発熱鋼管を水門の凍結防止が必要な箇所に設置した図を図19及び図20に,その拡大図を図21,図22,図23及び図24に,夫々示す。」(段落【0053】),「図19の扉体断面中央部鋼板9及び扉体前部鋼板29の裏面には,池水22上面の氷雪15,16(図14参照)による影響が無いように,誘導発熱鋼管の各群38,39,40が夫々取付けられる。」(段落【 ,「図19の扉体断面中央部鋼板9及び扉体前部鋼板29の裏面には,池水22上面の氷雪15,16(図14参照)による影響が無いように,誘導発熱鋼管の各群38,39,40が夫々取付けられる。」(段落【0054】),「図21に示すように,誘導発熱鋼管の各群38,39,40は,扉体断面中央部鋼板9及び扉体前部鋼板29の平面又は曲面に沿って配置され,誘導発熱鋼管7,7′及び8,8′の所要本数を,固定締付ボルト11と発熱鋼管押さえ金具12等で設置される(図8,10図,12図参照)。」(段落【0055】),「図22に示すように,扉体断面中央鋼板 - 70 -9及び扉体前部鋼板29の底部には底部水密ゴム板18があり,この水密ゴムの凍結防止のため,水門戸当板19裏面にも誘導発熱鋼管7,7′及び8,8′が取付けられる。また,底部水密ゴム板18の押さえ板と一緒に誘導発熱鋼管41を取付け,誘導発熱鋼管41の伝熱で底部水密ゴム板18を加熱して凍結を防止する。」(段落【0056】),「図23及び図24に示すように,水門の扉体誘導溝28のローラー23及び側部水密ゴム板24附近の凍結防止のために,誘導発熱鋼管の各群43,44,45,46が取付けられる。誘導発熱鋼管の各群43,44,45は,溝形成板24の外面に取付けられ,発熱鋼管から直接の加熱によって氷雪27(図15参照)を溶融し,誘導発熱鋼管46は側部水密ゴム板25の押さえ板と一緒に側部水密ゴム板25を加熱する。誘導発熱鋼管47,48は,いずれも溝形成板24,26の裏側に取付けられる。」(段落【0057】)h 「[実施形態の利点・効果] 本実施形態に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置は,次のような利点・長所を有する。」(段落【0059】),「(1)この誘導発熱鋼管では,一層大きな渦電流を利用する 「[実施形態の利点・効果] 本実施形態に係る誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置は,次のような利点・長所を有する。」(段落【0059】),「(1)この誘導発熱鋼管では,一層大きな渦電流を利用することが出来,発熱効率を向上することが出来る。」(段落【0060】),「図2及び図3の強磁性鋼管1,1′に絶縁電線2を通して交流電源3より1次電流i1を通電することにより,鋼管1,1′に鋼管断面の内周部と外周部に2次電流i2が流れ,鋼管1,1′ には図1の誘導表皮電流発熱管1,1′より約2倍のジュール熱が発生して加熱される。」(段落【0061】),「発熱電力が大幅に増加するため,従来の誘導表皮電流発熱管(図1参照)に比較して,一層少ない本数で済む。発熱管取付けの取り付け作業も軽減される。閉回路を形成するための短絡片の設置も必要が無く,溶接作業が軽減され - 71 -る。」(段落【0062】),「(2) 外形の一辺が平面状の誘導発熱鋼管を採用することで,伝熱効率を向上させることが出来る。」(段落【0063】),「例えば,角型誘導発熱鋼管のような外形の一辺が平面状の誘導発熱鋼管を採用することで,被加熱部材の平面部に対して固着して,両者を面接触させることができる。管状誘導発熱鋼管では,被加熱部材の平面部に対して線接触である。従って,角型誘導発熱鋼管のような発熱鋼管を採用することで,伝熱効率を向上させることが出来る。」(段落【0064】)(イ) 前記(ア)の本件明細書等の記載事項を総合すれば,本件明細書には,①寒冷地のダム等の水門は,凍結により開閉が不能となることがあることから,冬季でも水門の開閉に支障がないようにするため,従来,「温水循環,温風循環,温油・不凍液循環等の各方式による加熱」,「電気加熱」(具体的には,「抵抗加熱,アーク加熱, 不能となることがあることから,冬季でも水門の開閉に支障がないようにするため,従来,「温水循環,温風循環,温油・不凍液循環等の各方式による加熱」,「電気加熱」(具体的には,「抵抗加熱,アーク加熱,誘導加熱,赤外線加熱,ビーム加熱,その他の方式」)を熱源とした水門凍結防止装置が利用されてきたが,このうち,特公昭57-40293号公報(甲10)に開示された誘導加熱における表皮電流発熱管を利用した水門凍結防止装置は,他の加熱方式に比較して,加熱効率,耐久性,耐候性に優れていることなどの利点を有するが,鋼管の外周部分には渦電流が流れない構造で,鋼管の内周部分に流れる渦電流のみによって生じるジュール熱を利用したものであったので,発熱効率が十分でない,誘導表皮電流発熱管の閉回路として短絡片間の接続のための作業性などの問題があったこと,②「本発明」は,上記問題を解消し,発熱効率及び伝熱効率を一層向上させた新規な水門凍結防止装置の施工法を提供することを目的とするものであり,その目的を達するための手段として,「本発明」に係る水門凍結防止装置の施工法は,水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に,各々内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強 - 72 -磁性鋼材を有する複数個の誘導発熱鋼管単体を並べて固着する工程と,前記誘導発熱鋼管単体に形成された絶縁電線差込み孔に,絶縁電線を通す工程と,前記絶縁電線の両端に交流電源を接続する工程とを含む,誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法であって,複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,鋼管の両端を電気的に接続する短絡片を設置せず,相互に電気的に絶縁されている構成を採用し,これにより鋼管断面の内周部分に流れる渦電流によって生じるジュール熱のみならず,外周部分に流れる渦電流によって生じるジュール熱を利用し る短絡片を設置せず,相互に電気的に絶縁されている構成を採用し,これにより鋼管断面の内周部分に流れる渦電流によって生じるジュール熱のみならず,外周部分に流れる渦電流によって生じるジュール熱を利用して,発熱効率を一層向上させる効果を奏するようにした点に技術的意義があることが開示されていることが認められる。 イ本件発明における「誘導発熱鋼管単体」及び「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」の意義(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言,本件明細書(甲14)の段落【0006】,【0007】,【0015】,【0020】,【0029】,【0033】,【0040】,【0061】の各記載,図1ないし3及び前記ア(イ)認定の本件明細書の開示事項を総合すれば,本件発明の構成要件Eの「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」にいう「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」とは,電磁誘導により流れる渦電流により強磁性鋼材からなる鋼管自体を発熱させ,そのジュール熱を熱源とする誘導加熱方式を利用した水門凍結防止装置を意味し,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」とは,この誘導加熱方式に用いられる強磁性鋼材からなる鋼管を意味するものと解される。 (イ) これに対し原告は,本件発明は,水門凍結防止装置の施工を作業効率よく行うことを目的とした水門凍結防止装置の施工法の発明(方法の発明)であり,実際に鋼管が発熱する際の発熱方式を特に限定するもの - 73 -ではないから,実際に強磁性鋼材の鋼管が誘導発熱によって発熱している必要はないなどと主張する。 しかしながら,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書の記載事項(前記ア(ア))に照らすならば,「強磁性鋼材からなる鋼管」であっても,誘導加熱方式により発熱させるのに用いられる しかしながら,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書の記載事項(前記ア(ア))に照らすならば,「強磁性鋼材からなる鋼管」であっても,誘導加熱方式により発熱させるのに用いられるのでなければ,本件発明の構成要件Eの「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置の施工法」にいう「誘導発熱鋼管による」ものとはいえないから,原告の上記主張は,採用することはできない。 ウ新施工方法の本件発明の技術的範囲の属否新施工方法は,別紙2のとおり,調節ゲート及び制水ゲートのコンクリートに埋設される戸当り金物の内側に,複数の磁性体鋼管を伝熱セメント及び固定金具(フラットバー)により固定した後,上記磁性体鋼管に形成された差込み孔に,2本の母線と発熱エレメントを有する「発熱ケーブル」(別紙2の2(5))を通し,上記2本の母線のそれぞれを交流電源に接続することにより水門凍結防止装置を製作する施工法であり,上記水門凍結防止装置においては,上記2本の母線に電圧を加えると,発熱ケーブルの発熱エレメントに電流が流れ発熱し,この熱を上記磁性体鋼管に伝熱し,更にその鋼管の熱が戸当り金物及び扉体に取り付けられた水密部に伝熱され,水門の凍結が防止されることとなる。 そうすると,新施工方法で製作された水門凍結防止装置は,発熱ケーブルを発熱させる加熱方式を利用するものであって,電磁誘導により流れる渦電流により鋼管自体を発熱させる誘導加熱方式を利用したものとはいえないから,構成要件Eの「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に該当しない。また,新施工方法で製作された水門凍結防止装置を構成する磁性体鋼管は,誘導加熱方式に用いられるものとはいえないから,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」に該当しない。 - 74 -したがって,新施工方法は,構成要件A 凍結防止装置を構成する磁性体鋼管は,誘導加熱方式に用いられるものとはいえないから,構成要件AないしCの「誘導発熱鋼管単体」に該当しない。 - 74 -したがって,新施工方法は,構成要件A,B,C及びEを充足するものと認められないから,本件発明の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 エまとめ以上のとおり,新施工方法は本件発明の技術的範囲に属するものと認めることができないから,原告の本訴請求のうち,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 (2) 争点2(被告らによる不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否)について原告は,被告らが,不正の利益を得る目的又は原告に損害を加える目的で,原告から開示された営業秘密である本件情報を使用して,甲11の作成(甲11記載の凍結防止装置の設計)をし,本件工事における水門凍結防止装置を施工した行為は,不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為(営業秘密の不正使用行為)に該当する旨を主張する。これに対し,被告らは,本件情報は,そもそも,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に当たらない旨主張する。 そこで,まず,本件情報の営業秘密該当性につき判断する。 ア原告の情報管理体制証拠(甲12の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,次のような事実が認められる。 (ア) 原告は,平成13年5月8日,「日本工営行動指針」(甲12の1)を策定した。「日本工営行動指針」の3頁には,「企業行動指針」の「従業員に対する指針」として「2)情報管理の徹底職務上知り得た情報の管理を徹底し,不正利用と漏洩の防止を図ります。」との記載がある。 (イ) 原告は,平成16年12月21日,「情報セキュリティ基本方針」 - として「2)情報管理の徹底職務上知り得た情報の管理を徹底し,不正利用と漏洩の防止を図ります。」との記載がある。 (イ) 原告は,平成16年12月21日,「情報セキュリティ基本方針」 - 75 -(甲12の2)を策定した。「情報セキュリティ基本方針」には,以下のような記載がある。 a 「当社は,…事業遂行に広く活用する情報資産の安全性および信頼性の確保,すなわち,情報セキュリティの確保に万全を期し,社会・顧客・取引先の信頼に応えることを基本方針とします。」b 「1.当社は,業務において取り扱うすべての情報資産を対象として,それぞれに適した情報セキュリティ管理策を講じます。」c 「2.当社の業務において情報資産を取り扱うすべての者は,情報セキュリティの重要性を認識し,本情報セキュリティ基本方針を遵守するとともに,本方針を基に定める管理基準および手順等の規程に準じて行動します。」d 「5.当社は,情報資産に対する新たな脅威にも対応できるよう,情報セキュリティ管理体制を整備し,継続的に改善活動を行います。」(ウ) 原告は,平成17年4月1日,「秘密情報管理規程」を制定した。 平成18年10月1日改正の「秘密情報管理規程」(甲12の3)には,次のような記載がある。 a 「(目的) 第1条本規程は,当社の保有する秘密情報の管理に関して必要な事項を定め,もって秘密情報の漏洩防止および適正な管理を行うことを目的とする。」b 「(適用範囲) 第2条本規程は,役員,従業員,その他当社業務に従事する者に適用される。また本規程は,就業規則の一部として就業規則と一体としての法的効力を有する。」c 「(定義) 第3条秘密情報とは,営業,技術,製造などに関する事項,レポートや図面などの成果品に関する事項,契約,協定または申合せな の一部として就業規則と一体としての法的効力を有する。」c 「(定義) 第3条秘密情報とは,営業,技術,製造などに関する事項,レポートや図面などの成果品に関する事項,契約,協定または申合せなどにより守秘義務を負った事項,内部情報管理規程に掲げる重要事実,個人情報などを,電子・非電子媒体を問わず記録媒体に - 76 -記録したもののうち,第5条による指定を受けたものをさす。」d 「(総括責任者等の責務) 第4条秘密情報の全社的な管理は,リスク管理委員会委員長が統括責任者としてこれを行う。各部門における管理は各門長等が部門責任者としてこれを行い,各部・室においては各部・室長が管理責任者としてこれを行う。…(以下省略)」e 「(指定・保管) 第5条秘密情報の指定は管理責任者が行う。 管理責任者は,秘密情報を一般情報と区別し,アクセス権を制限するなど適正な方法で保管しなければならない。また,社内または社外を問わず秘密情報の開示先(以下開示先という)に対しても同様に秘密保持の徹底を図る責務を負う。」f 「(作成) 第6条管理責任者は,秘密情報を作成させるとき,もしくは指定するとき,以下の事項を当該情報の記録媒体に表示するよう指示しなければならない。 (1) 秘密情報である旨(2) 秘密情報の開示先(3) 秘密保持期限(秘密保持期限が当該情報内に明示されている場合を除く)」g 「(配付) 第8条」,「3.秘密情報の受領者は,当該秘密情報を一般情報と区別し,アクセス権を制限するなど適正な方法で保管しなければならない。」h 「(通信ネットワークセキュリティ) 第9条秘密情報のうち電子情報の管理については,情報の漏洩を防止するため,以下の事項を確実に行わなければならない。 (1) コンピュータにより社内通信ネ h 「(通信ネットワークセキュリティ) 第9条秘密情報のうち電子情報の管理については,情報の漏洩を防止するため,以下の事項を確実に行わなければならない。 (1) コンピュータにより社内通信ネットワークを利用する者はIDパスワードを利用者個人の責任で管理すること。 (2) コンピュータ内に秘密情報を保存する場合には,パスワード - 77 -の設定などによりデータへのアクセス権を制限するほか,データコピーを防止する対策を講ずること。 (3) 通信ネットワークを通じて秘密情報を提供する場合は,セキュリティが確保されたネットワークを利用し,社外に提供する場合には事前に秘密保持契約を締結すること。 (4) 秘密情報の保全のため,コンピュータウイルスの感染予防策を実施すること。」i 「(秘密情報の取扱に関する誓約書) 第14条役員・従業員は,入社時において,別に定める書式に基づいて秘密情報の保持を誓約する書面を人事・総務部へ提出しなければならない。」j 「(関係会社等に対する措置) 第17条管理責任者は,関係会社等(協力会社,下請などを含む)に業務の必要上秘密情報を貸与,閲覧または使用・利用させる場合には,秘密保持の履行を書面で確約させるとともに,本規程に準じ秘密情報の漏洩を防止するための適切な措置を講じなければならない。」イ本件情報の管理等証拠(甲3,12,13,22ないし27(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,次のような事実が認められる。 (ア) 被告IHI(旧商号・石川島播磨重工業株式会社)は,昭和53年5月から平成18年3月までの間,国土交通省(旧建設省を含む。),農林水産省又は都道府県から合計18件の水門施工工事を受注し,その水門施工工事のいずれについても,その受注の都度,原 )は,昭和53年5月から平成18年3月までの間,国土交通省(旧建設省を含む。),農林水産省又は都道府県から合計18件の水門施工工事を受注し,その水門施工工事のいずれについても,その受注の都度,原告に対し,当該水門の水門凍結防止装置の設置工事(以下「別件工事」と総称する。)を発注し,これを受けた原告は,別件工事を完成させ,被告IHIに対し,納入してきた。 (イ)a 原告は,昭和53年8月ころ,被告IHIに対し,別件工事のう - 78 -ち,「建設省白川ダムクレスゲート凍結防止装置」設置工事に関し,水門凍結防止装置の完成図(「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター組立全体図」(甲22の1),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター施工断面図」(甲22の2))を交付した。 上記各図には,発熱鋼管の高さ方向の配置位置に関する情報(「本件情報A.1)」),発熱鋼管の幅方向の配置位置に関する情報(「本件情報A.2)」),ヒータ端末箱の配置位置に関する情報(「本件情報A.4)」)に係る記載があった。 b 原告は,昭和55年から昭和58年ころ,被告IHIに対し,別件工事のうち,「北海道開発局十勝ダムクレストゲート凍結防止装置」設置工事に関し,水門凍結防止装置の完成図(「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター布設正面」(甲23の1),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター布設側面図」(甲23の2),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター布設平面図」(甲23の3),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター取付詳細図」(甲23の4),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター取付詳細図」(甲23の5))を交付した。 上記各 ,「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター取付詳細図」(甲23の4),「クレストゲート凍結防止装置戸当金物SECT式ヒーター取付詳細図」(甲23の5))を交付した。 上記各図には,発熱鋼管の高さ方向の配置位置に関する情報(「本件情報A.1)」),発熱鋼管の幅方向の配置位置に関する情報(「本件情報A.2)」),ヒータ端末箱の配置位置に関する情報(「本件情報A.4)」)に係る記載があった。 c 原告は,平成10年から平成12年ころ,被告IHIに対し,別件工事のうち,「建設省北陸地方建設局大河津分水洗堰主ゲート凍結防止装置」設置工事に関し,水門凍結防止装置の完成図(「主ゲート設 - 79 -備工事凍結防止装置全体配置図」(甲24),「主ゲート設備工事凍結防止装置制御盤三線結線図」(甲27)),装置の取扱説明書(甲25),装置の設計計算書(甲26)を交付した。 上記各図には,水門凍結防止装置における,鋼管と電線の組合せに関する情報(「本件情報B.」),温度二段階制御に関する情報(「本件情報D.3)」),二次回路単相に関する情報(本件情報A.4)」),鋼管の配列本数・電気容量の決定プロセスに関する情報(「本件情報C.1)」ないし「本件情報C.4)」)に係る記載があった。 (ウ) 原告と被告IHIは,平成14年4月1日,原告の注文に基づき被告IHIが原告の工事を請け負うことに関し,本件請負基本契約を締結した。本件請負基本契約の契約書(甲13)には,次のような記載がある(なお,同契約書中の「甲」は,被告IHI(旧商号・石川島播磨重工業株式会社),「乙」は,原告である。)。 a 「(基本原則)第1条取引は,相互の利益の尊重に基づき,かつ信義誠実の原則に従って行なうものとする。」b 「(基本契約と個別 ・石川島播磨重工業株式会社),「乙」は,原告である。)。 a 「(基本原則)第1条取引は,相互の利益の尊重に基づき,かつ信義誠実の原則に従って行なうものとする。」b 「(基本契約と個別契約)第3条基本契約は,甲乙間の個々の工事請負契約(以下,「個別契約」という。)に共通して適用する。ただし,甲および乙は,協議のうえ,個別契約において基本契約の条項の一部の適用を排除し,または基本契約と異なる事項を定めることができる。 2.甲および乙は,基本契約のほか,工事名称,工事場所,施工条件,工事完成期限,請負代金等を記載した注文書,図面,仕様書および工事計画書等(以下,総称して,「工事関係図書」という。)に従い,個別契約を履行する。」c 「(個別契約の成立) - 80 -第4条個別契約は,甲が乙に注文書を交付し,乙が甲に注文請書を交付することによって成立する。」d 「(届出事項等および提出書類)第7条(中略)2.乙は,甲が要求したときは,次の各号に掲げる書類を直ちに甲に提出しなければならない。 (中略)(5) 工事関係図書から指定された見本または工事写真等の記録(6) その他甲から要求された書類」e 「(監督員)第10条甲は,監督員を定めたときは,書面をもってその氏名を乙に通知する。 2.監督員は,基本契約の他の条項に定めるもの,および基本契約に基づく甲の権限とされる事項のうち,甲が必要と認めて監督員に委任したもののほか,工事関係図書で定めるところにより,次に掲げる権限を有する。 (中略)(2) 工事関係図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成および交付または乙が作成したこれらの図書の承認 (3) 工事関係図書に基づく工程の管理,立会,工事の施工の状況の検査または工事材料 (2) 工事関係図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成および交付または乙が作成したこれらの図書の承認 (3) 工事関係図書に基づく工程の管理,立会,工事の施工の状況の検査または工事材料の試験もしくは検査」f 「(秘密保持義務)第30条乙は,基本契約および個別契約の履行に関連し,知り得または甲から提供を受けた工事関係図書,機材器具,ノウハウ,技術資料,技術情報および取引上の情報等(以下,「資料等」という。) - 81 -を秘密として慎重に取扱うものとし,予め甲の書面による承諾を得ない限り,第三者に開示または漏洩してはならない。 2.乙は,予め甲の書面による承諾を得ない限り,資料等を個別契約以外の目的のために,利用,複写,複製または再生等を行なってはならない。 3.乙は,資料等を使用した後は,直ちに資料等とともにその複写,複製または再生等を行なったものを甲に返却しなければならない。 4.乙は,乙の労働者ならびに下請負人およびその労働者に対しても本条の義務を負わせるものとする。」(エ)a 被告IHIは,平成20年12月19日,北陸地方整備局が実施した「大河津可動堰改築ゲート設備工事」(本件工事)の一般競争入札(公告日・同年8月11日)を落札し,同年12月22日,北陸地方整備局長との間で,本件工事の請負契約を締結した。 b その後,被告IHIは,平成21年7月1日,信濃川河川事務所に対し,甲11(「大河津可動堰改築ゲート設備工事凍結防止装置関係図」)を提示した。 甲11には,次のように,本件情報に係る記載がある。 (a)① 発熱鋼管の高さ方向の加熱範囲の設定に関する情報(「本件情報A.1)」)(甲11の5枚目正面図,側面図)② 発熱鋼管による加熱範囲(水平方向)の設定に関する情報(「本件情報A.2)」 (a)① 発熱鋼管の高さ方向の加熱範囲の設定に関する情報(「本件情報A.1)」)(甲11の5枚目正面図,側面図)② 発熱鋼管による加熱範囲(水平方向)の設定に関する情報(「本件情報A.2)」)(甲11の4枚目左頁の図4-1,5枚目右の図)③ 鋼管による二次閉ループを形成するための構造設計のうち上部の接続構造に関する情報(「本件情報C.1)」)(甲11の5枚目の正面図,側面図で各発熱鋼管の上端がヒーター端末箱に収容されている。) - 82 -④ 下部の接続構造に関する情報(「本件情報C.2)」)(甲11の5枚目右の「“d”部詳細」)⑤ 端末箱の使用及び端末箱内の鋼管の配置に関する情報(「本件情報C.4)」)(甲11の5枚目の正面図,側面図)(b) 発熱鋼管及び電線の選択に関する情報(「本件情報B.)」)(甲11の1枚目右頁7行目の発熱管の記載,及び5枚目正面図の鋼管発熱式ヒーター及びヒーターケーブルの記載)(c)① 鋼管の配列本数及び電気容量の決定プロセスに関する情報(「本件情報C.1)」)(甲11の1枚目ないし4枚目)② 凍結防止部表面温度の設定に関する情報(「本件情報C.2)」)(甲11の1枚目右の3行目「b.凍結防止部表面温度(t2)2(℃)」の記載)③ 凍結防止部附近平均風速の設定に関する情報(「本件情報C. 3)」)(甲11の1枚目右の4行目「c.凍結防止装置付近の平均風速(V) 2(m/s)」の記載)④ 所定温度上昇時間の設定に関する情報(「本件情報C.4)」)(甲11の3枚目右の2行目)(d)① 水門凍結防止装置の通電運転制御の方法について,凍結防止部表面温度に関する情報(「本件情報D.1)」)(甲11の1枚目右の3行目「b.凍結防止部表面温度(t2) 2(℃)」の記載)② d)① 水門凍結防止装置の通電運転制御の方法について,凍結防止部表面温度に関する情報(「本件情報D.1)」)(甲11の1枚目右の3行目「b.凍結防止部表面温度(t2) 2(℃)」の記載)② ヒーター負荷回路の回路設計に関する情報(「本件情報D. 4)」)(甲11の7枚目及び8枚目の単線結線図)(e) 凍結防止装置の寿命の向上,保守運用技術について,電線の被覆層の材質と耐熱温度に関する情報(「本件情報E.1)」)(甲11の5枚目の正面図のヒーターケーブルの記載における“PF - 83 -A”の表記)(オ)a 原告が保有する前記(イ)aないしc等の水門凍結防止装置の完成図書(設計計算書,完成図,検査成績書,取扱説明書,施工記録写真)は,原告において,一つの工事につき一つのファイルに綴じられて保管されている(平成22年5月14日付け原告第6準備書面の「原告のノウハウの説明」のスライド16頁参照)。 b 原告の電力事業カンパニープラント事業部が,平成18年3月13日付けで作成した営業秘密の抽出結果表(甲12の4)によれば,少なくとも,同日時点では,原告において,水門凍結防止装置に関する「報告書(設計図等を含む)」に記載された情報は,秘密の表示が付され,アクセス制限がされた上で,原告の電気技術部,機会情報通信技術部,ES部の各部キャビネットに,ファイルに綴られた状態で保管されているとの報告がされている。 (カ) 本訴(平成21年(ワ)第38627号事件,第44344号事件)の各訴状記載の営業秘密の不正使用の不正競争行為に関する原告の主張に対し,被告らが,原告が主張する営業秘密が具体的に特定されておらず主張自体失当である旨を反論したところ(例えば,平成22年2月26日付け「準備書面(被告その1)」の59頁等),原告は,同年4 張に対し,被告らが,原告が主張する営業秘密が具体的に特定されておらず主張自体失当である旨を反論したところ(例えば,平成22年2月26日付け「準備書面(被告その1)」の59頁等),原告は,同年4月13日の本件第2回弁論準備手続期日において,「原告のノウハウの説明」のスライド(同年5月14日付け「原告第6準備書面」添付)を用いた説明を行った上,同年8月31日付け「原告第9準備書面」の別紙営業秘密目録及び同年12月24日付け「原告第12準備書面」の別紙1営業秘密目録修正書をもって,原告が主張する営業秘密の具体的内容を特定し,その有用性についての考えを明らかにする主張(別紙3)をした。 ウ本件情報の営業秘密該当性 - 84 -(ア) 不正競争防止法2条6項の「秘密として管理されている」とは,情報の種類,性質,管理の方法・態様,情報を保有する事業者と情報にアクセスした者との具体的な関係等の諸般の事情に照らし,客観的にみて,情報にアクセスした者において当該情報が秘密情報であることを認識し得る程度に管理されていることを要するものと解される。 これを本件についてみるに,①原告は,平成13年5月8日策定の「日本工営行動指針」,平成16年12月21日策定の「情報セキュリティ基本指針」で,情報管理・情報セキュリティの確保を徹底する旨を謳い,平成17年4月1日制定の「秘密情報管理規程」(平成18年10月1日改正)において,秘密情報の定義(3条),管理責務の所在(4条),指定・保管の方法(秘密情報と一般情報の区別,アクセス権の制限。5条),秘密情報作成の際の留意事項(秘密情報である旨の表示等。6条)等を具体的に規定し,従業員に示していること(前記ア),②原告の社内において,本件情報に係る記載を含む水門凍結防止装置の完成図書(設計計算書,完 作成の際の留意事項(秘密情報である旨の表示等。6条)等を具体的に規定し,従業員に示していること(前記ア),②原告の社内において,本件情報に係る記載を含む水門凍結防止装置の完成図書(設計計算書,完成図,検査成績書,取扱説明書,施工記録写真)を,一つの工事につき一つのファイルに綴じて保管し,遅くとも平成18年3月13日の時点では,それら文書に,秘密の表示を付し,アクセス制限をした上で,キャビネットに保管されていたこと(前記イ(オ))からすると,少なくとも原告の社内においては,本件情報を含む水門凍結防止装置の完成図書記載の情報が,「秘密情報管理規程」に定義する秘密情報に指定され,同規程に則った管理をされていたものと推認される。 (イ)a 次に,本件情報に関する原告と被告IHIとの関係をみるに,①被告IHIが,昭和53年5月から平成18年3月まで,国土交通省等から受注した合計18件の水門施工工事について,その水門凍結防止装置の設置工事(別件工事)を原告に発注し,原告がこれを施工して,被告IHIに納入してきたこと,②別件工事のうち,少なくとも - 85 -3件において,本件情報の一部に係る記載がある原告作成の図面等が,原告から被告IHIに交付されていること,③被告IHIの本件工事の落札後に,被告IHIが作成した甲11に,本件情報の一部に係る記載があることからすると,従来,水門凍結防止装置の施工は,原告がほぼ独占的に行ってきた技術分野であったが(少なくとも原告と被告IHIとの間では,被告IHIがこれをすべて原告に発注してきた。),本件請負基本契約が締結された平成14年4月1日の前後に実施された別件工事における原告と被告IHIとの間での書面のやり取りや現場での共同作業を通じて,本件情報に係る情報が,原告から,被告IHIに示されていたもの 約が締結された平成14年4月1日の前後に実施された別件工事における原告と被告IHIとの間での書面のやり取りや現場での共同作業を通じて,本件情報に係る情報が,原告から,被告IHIに示されていたものと推認される。 しかしながら,原告の「秘密情報管理規程」の17条には,「管理責任者は,関係会社等(協力会社,下請などを含む)に業務の必要上秘密情報を貸与,閲覧または使用・利用させる場合には,秘密保持の履行を書面で確約させるとともに,本規程に準じ秘密情報の漏洩を防止するための適切な措置を講じなければならない。」と規定されている(前記ア(ウ)j)にもかかわらず,本件全証拠によっても,原告が,被告らに対し,本件情報又はそれを記載した書面等の媒体を貸与,閲覧等させるに当たって,本件情報の内容を具体的に特定し,これについて秘密保持の履行を書面で確約させたり,口頭でその旨を伝えたことを認めるに足りない。 むしろ,前記イ(カ)認定のとおり,本件情報の内容及びその有用性についての考えが,原告から被告らに対し,別紙3に相当するような形式で具体的に特定されたのは,本件の審理の過程においてであり,それまでは,原告から,被告らに対し,原告が営業秘密であると主張する本件情報の具体的内容は明らかにはされていなかったものである。 - 86 -b これに対し,原告は,本件情報は,原告の水門凍結防止装置の設計に関する基本的かつ重要な設計情報そのものであり,原告の意思に反して自由に使用することのできる類のものではないから,本件請負基本契約の条項に明示的に秘密保持義務が記載されていなくても,本件請負基本契約に付随する信義則上の義務として,あるいは公正な商慣習法上の義務として,被告らは,原告に対し,本件情報に係る秘密保持義務,目的外使用禁止義務を負うものである旨 記載されていなくても,本件請負基本契約に付随する信義則上の義務として,あるいは公正な商慣習法上の義務として,被告らは,原告に対し,本件情報に係る秘密保持義務,目的外使用禁止義務を負うものである旨を主張する。 しかしながら,前記イ(ウ)認定のとおり,本件請負基本契約は,被告IHI又はその監督員において,原告に工事関係図書を提出させたり,原告が作成した工事関係図書に基づく工事の施工のための詳細図等の承認をしたりする権限を与えるなどし,本件情報が記載されている蓋然性の高い書面に被告IHIが接する機会があることを念頭に置きながら,原告に対して秘密保持義務を課す条項を設けるものの,被告IHIに対し,そのような義務を課す条項を設けていないことからすると,本件情報の性質それ自体を踏まえたとしても,被告らは,原告に対し,本件情報に係る秘密保持義務,目的外使用禁止義務を本件請負基本契約に基づいて負うものではないと解される。 また,公正な商慣習法上の義務として,原告の主張するような義務が被告らにおいて発生していることを認めるに足りる証拠は一切ない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (ウ) 以上によれば,本件情報は,少なくとも被告らとの関係において,客観的にみて,秘密情報であることを認識し得る程度に管理されていたものと認めることはできない。 エまとめ以上のとおり,本件情報は,被告らとの関係で,秘密として管理されて - 87 -いたものと認められないから,営業秘密(不正競争防止法2条6項)に該当するものと認めることはできない。 したがって,原告の本訴請求のうち,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 2 反訴請求について(1) 争点4(原告による不 できない。 したがって,原告の本訴請求のうち,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 2 反訴請求について(1) 争点4(原告による不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否)について被告らは,被告IHIが平成21年6月ないし7月当時予定していた旧施工方法及び被告インフラシステムが本件工事において実施した新施工方法は,いずれも本件発明の技術的範囲に属さず,また,本件発明に係る本件特許には無効理由があるから,原告の担当者が,客先である信濃川河川事務所の担当者に対し,①平成21年6月19日に,甲34を交付し,被告IHIの水門凍結防止装置が原告の特許権を侵害する可能性がある旨を述べた行為(以下「本件告知行為①」という。),②同年7月29日に,被告IHIが水門凍結防止装置を自社開発した場合には,原告の特許権を侵害する旨を告げた行為(以下「本件告知行為②」という。)は,原告による「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」(実際には特許侵害をしていないのに,特許侵害をするとの虚偽の事実)を告知する行為(不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為)に当たる旨主張する。 ア前提事実前記争いのない事実等,前記(2)イの認定事実,証拠(甲3,6ないし9,15,30,31,乙9ないし17,20,22ないし27(いずれも枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件の経緯等に関し,次のような事実が認められる。 (ア) 信濃川河川事務所は,平成19年9月28日及び平成20年5月9日の2回にわたり,原告に対し,本件工事に係る河川用水門設備の凍結 - 88 -防止装置に関し,品目を「凍結防止装置(制水ゲート用)」,「凍結防止装置(調節ゲート用) 28日及び平成20年5月9日の2回にわたり,原告に対し,本件工事に係る河川用水門設備の凍結 - 88 -防止装置に関し,品目を「凍結防止装置(制水ゲート用)」,「凍結防止装置(調節ゲート用)」,形式を「鋼管発熱方式」とする合計6門分の参考見積を依頼し,原告は,信濃川河川事務所に対し,平成19年10月11日付け及び平成20年5月30日付けの各見積書(甲31の2,4)を提出した。 また,原告は,遅くとも平成20年5月30日付け見積書を提出したころまでに,信濃川河川事務所から,本件工事の設計業務等の委託を受けていた。 (イ) 原告は,平成20年4月15日,本件出願をした。 (ウ)a 北陸地方整備局は,平成20年8月11日,本件工事の一般競争入札の公告をした。 信濃川河川事務所作成に係る本件工事の平成20年8月付け特記仕様書(甲15)の28頁には,「第6節付属設備」,「4-6- 5 凍結防止装置」,「1.凍結防止装置は鋼管発熱方式とする。」との記載がある。 b 被告IHIの担当者は,平成20年8月22日,原告の担当者に対し,「鋼管発熱式凍結防止装置」6門分の見積依頼書(「凍結防止装置見積仕様」を含む。)を電子メールに添付して送信し,本件工事における水門凍結防止装置の設置工事の見積りを依頼した。 なお,被告IHIは,昭和53年5月から平成18年3月までの間,国土交通省,農林水産省又は都道府県から受注した合計18件の水門施工工事における水門凍結防止装置の設置工事(別件工事)をすべて原告に発注し,原告が別件工事を施工してきた。 c 原告の担当者は,平成20年9月2日,被告IHIの担当者に対し,見積総金額を2億1960万円とする見積書を電子メールに添付して送信し,同メールにおいて,「貴社への仕切り希望は本金額の15% - 原告の担当者は,平成20年9月2日,被告IHIの担当者に対し,見積総金額を2億1960万円とする見積書を電子メールに添付して送信し,同メールにおいて,「貴社への仕切り希望は本金額の15% - 89 -とさせて頂きますので,よろしくお願い申し上げます。」との回答をした。被告IHIは,原告から提示のあった見積額が想定していたよりも高額であったことから,原告との値引き交渉を行うこととした。 その後,原告の担当者と被告IHIの担当者は,同年11月13日,水門凍結防止装置の見積額の交渉をしたが,合意に至らなかった。 d 被告IHIは,平成20年12月19日,本件工事の一般競争入札を落札し,同月22日,本件工事を受注した。 e 被告IHIは,平成21年4月1日,本件工事における水門凍結防止装置の施工に関する方針決定会議を開催し,被告IHIが自社で施工する場合の仮スケジュールを決めた。 同日,被告IHIの担当者は,原告の担当者と交渉をした際,原告の担当者から,原告の見積額が1億8000万円から下げることはない旨告げられたため,被告IHIが自社で施工する予定があることを伝えた。 その後,被告IHIの担当者は,同年5月7日,原告の担当者に対し,本件工事における水門凍結防止装置は被告IHIが自社で施工することを決定したことを連絡した。 (エ) 原告の担当者は,平成21年6月19日,信濃川河川事務所を訪問し,その担当者に対し,甲34(「大河津可動堰改築ゲート設備工事のうち凍結防止装置評価項目」と題する書面)を交付した。 甲34には,次のような記載がある。 a 「1.特記仕様書要求事項客先特記仕様書記載事項は下記である。 第4章水門設備第6節付属設備4-6-5 凍結防止装置 - 90 -1.凍結防止装置は鋼 な記載がある。 a 「1.特記仕様書要求事項客先特記仕様書記載事項は下記である。 第4章水門設備第6節付属設備4-6-5 凍結防止装置 - 90 -1.凍結防止装置は鋼管発熱方式とする。」b 「2.承認申請図評価項目2-1 特記仕様書に対する評価(1) 承認申請されたヒーターは鋼管発熱方式か→ 承認されたヒーターが鋼管発熱方式の場合は,日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に抵触の可能性がある。」c 「2-2 性能その他に関する評価(1) 承認申請されたヒーターの加熱効果は実証試験その他の方法により客観的妥当性をもって確認されているか→ 熱量計算に基づく発熱量を持つヒーターを戸当り金物に取り付け,水密部で所定の温度上昇が得られるかを実証試験その他の方法により確認しているか,また,確認根拠は客観的妥当性を有するか。 (2) 承認申請されたヒーターの効率は鋼管発熱方式と同等あるいはそれ以上か→ 承認申請ヒーターの効率は,鋼管発熱方式の効率と同等あるいはそれ以上を有しているか,その結果,設備容量は鋼管発熱方式の場合と同等かあるいは低減されているか。 (3) 承認申請されたヒーターは水中での使用が可能か→ 水門に取り付けられるヒーターは飛沫,結露等により,運用後は水中にての使用と同等環境におかれるため,水中での使用が可能な性能を求められる。承認申請されたヒーターの水中使用性能は,水中使用が可能である鋼管発熱方式と同等かあるいはそれ以上のものを有している - 91 -か。その性能について客観的妥当性をもって証明できるか,過去に同等条件での使用実績はあるか。 (4) 承認申請されたヒーターの耐用年数は鋼管発熱方式と同等かあるいはそれ以上か→ 鋼管発熱方式の耐用 その性能について客観的妥当性をもって証明できるか,過去に同等条件での使用実績はあるか。 (4) 承認申請されたヒーターの耐用年数は鋼管発熱方式と同等かあるいはそれ以上か→ 鋼管発熱方式の耐用年数は使用実績から30余年以上を有する。提案ヒーターは30余年以上の使用に無事故で耐えられるか,また,耐えられるとした場合,客観的妥当性をもってそれを証明できるか。」(オ)a 被告IHIは,平成21年7月1日,信濃川河川事務所に対し,被告IHIが作成した本件工事における水門凍結防止装置に関する「凍結防止装置関係図」と題する設計図書(甲11)を提出した。 被告IHIは,同月2日ころ,原告に対しても,甲11を交付した。 b 原告は,平成21年7月6日,本件出願について審査請求をした後,同月17日付け補正により,本件出願に係る特許請求の範囲を補正した。 c 原告の担当者は,平成21年7月29日,信濃川河川事務所を訪問し,その担当者と面談した。 d 被告IHIの担当者は,平成21年7月30日,信濃川河川事務所の担当者から,被告IHIの言い分と原告の言い分に大きな差があるので,整理のために打合せをしたい旨の電話連絡を受けた。 その後,被告IHIの担当者は,同年8月6日,信濃川河川事務所の担当者と打合せをした。 その打合せの際,被告IHIの担当者は,被告IHIが施工予定の水門凍結防止装置が原告の特許を侵害しないと考えているが,原告が申請中の特許(本件出願に係る特許)の内容がこの時点では不明であるため,断言はできない旨述べたところ,信濃川河川事務所の担当者 - 92 -は,被告IHIの施工する水門凍結防止装置が原告の特許に抵触するかどうか判断できない限り,被告IHIの施工計画書を承認することはできない旨述べた。 e 原告は,平成2 所の担当者 - 92 -は,被告IHIの施工する水門凍結防止装置が原告の特許に抵触するかどうか判断できない限り,被告IHIの施工計画書を承認することはできない旨述べた。 e 原告は,平成21年8月4日付けで拒絶理由通知を受けた後,同年8月10日付け補正により,本件出願に係る特許請求の範囲を再度補正した。 (カ)a 被告IHIは,代理人弁護士を通じて,原告に対し,平成21年8月26日付け申入書(乙23は,その修正書)を送付した。 上記申入書には,①原告は,被告IHIが採用予定の凍結防止装置(「弊社製品」)が本件出願の技術的範囲に含まれると主張しているが,「弊社製品」は本件出願以前に公知となっている技術のみを使用しているものであり,本件出願を侵害することはないものと思料しているが,本件出願は未だ出願公開さえされていないため,その内容を知ることはできず,本件についての適切な判断をすることは不可能な状況になっている,②本件の解決のために,本件関連特許出願の「特許願」,「特許請求の範囲」,「明細書」,「図面」,「特許査定」,さらには,審査中であるという本件出願については,出願経過で示された拒絶理由通知書,補正などに関係する各書類について,遅くとも8月31日までに開示していただきたい,③出願公開さえされていない未確定な権利に基づいて「弊社製品」が特許権を侵害するなどと口外されること自体,不正競争防止法2条1項14号(虚偽事実の告知)に該当する疑いが高い上に,後日原告の特許権が成立した場合に,その権利範囲に「弊社製品」が含まれなかったとすれば,原告の行為は不正競争防止法2条1項14号(虚偽事実の告知)に該当すると言わざるを得ないことになると思料する旨の記載があった。 b 原告の代理人弁護士は,被告IHIの代理人弁護士に対し,平成2 ば,原告の行為は不正競争防止法2条1項14号(虚偽事実の告知)に該当すると言わざるを得ないことになると思料する旨の記載があった。 b 原告の代理人弁護士は,被告IHIの代理人弁護士に対し,平成2 - 93 -1年9月3日付け回答書(乙24)を送付した。 上記「回答書」には,①原告が,信濃川河川事務所に対して,被告IHIの採用予定の凍結防止装置(「貴社製品」)が原告の本件出願の技術的範囲に含まれるので,「工事の差止請求などの権利行使を行う」と述べたことはなく,仮に差止請求に言及したことがあったとしても,一般的な可能性を説明したにすぎない,②原告は,平成21年8月28日付けで特許査定の通知を受領したが,被告IHIから提供のあった「大河津可動堰改築ゲート設備工事凍結防止装置関係図」(甲11)及び「国交省本件特記仕様書」(甲15)を見ると,「貴社製品」は,原告が特許査定を受けた請求項のうち,請求項1の技術的範囲に含まれると推測される,③被告IHIは,これまで凍結防止装置を独自開発した経験がなく,一方,被告IHIは原告が以前に開発製造し,施工してきた凍結防止装置の設計事項の詳細を「水門製造者(元請管理者)」の立場で知ることができたので,被告IHIが原告とは別の正当なルートで得た情報によって「独自開発」したことを示さない限り,今回の被告IHIの行為が上記の特許権の問題だけでなく,原告が保有するノウハウの不正使用の問題をも含んでいる,④今回の凍結防止装置(6門)の納入については納期の問題があるので,上記問題の解決案として,「1.平成21年9月末日までに工場製作予定の貴社製品については,貴社が合理的な実施料を当社に支払うことを条件として,当社はその実施を許諾する。」,「2.残りの4門については,問題の解決に向けて早急に協議をする。」と 末日までに工場製作予定の貴社製品については,貴社が合理的な実施料を当社に支払うことを条件として,当社はその実施を許諾する。」,「2.残りの4門については,問題の解決に向けて早急に協議をする。」との提案をする,⑤特許出願書類は特許庁においても出願公開まで秘密として扱われている文書であるので,被告IHIからの秘密保持の覚書と引き換えに,上記包袋書類一式を被告IHIに開示する旨の記載がある。 c その後,原告の代理人弁護士と被告IHIの代理人弁護士との間 - 94 -で,交渉を継続し,平成21年10月6日には直接話合いをしたが,合意に至らなかった。 その間の同月2日,原告は,本件特許権の設定登録を受けた。 (キ)a 原告は,平成21年10月28日,被告IHIに対し,本訴(平成21年(ワ)第38627号事件)を提起した。 b 被告IHIの代理人弁護士は,原告に対し,平成21年11月4日付けの「申入書の修正書」と題する書面(乙23)を送付した。 上記書面には,「本件に関連して貴社から訴訟が提起されましたことに鑑み,当該工事に対する影響を最小限にするために,本件工事においては本件特許発明が規定する電磁誘導方式を採用しないよう設計変更を行いますので,ご連絡いたします。」との記載がある。 c 被告インフラシステムは,平成21年11月19日,信濃川河川事務所に対し,本件工事の詳細設計概要一覧表(乙9の3)を含む詳細設計図書を提出した。 当該一覧表には,「元設計」の欄に「1.凍結防止装置は鋼管発熱方式とする。」,「詳細設計」の欄に「凍結防止装置は,鋼管発熱方式の内,間接加熱方式の発熱線式を採用するものとします。」との記載がある。 その後,信濃川河川事務所は,同年12月9日付けで,被告インフラシステムに対し,上記詳細設計図書につい 置は,鋼管発熱方式の内,間接加熱方式の発熱線式を採用するものとします。」との記載がある。 その後,信濃川河川事務所は,同年12月9日付けで,被告インフラシステムに対し,上記詳細設計図書について,「特記仕様書第2条」に基づき承認する旨の通知をした。 d 原告は,平成21年12月7日,被告インフラシステムに対し,本訴(平成21年(ワ)第44344号事件)を提起した。 e 被告らは,平成22年3月10日の本件第1回弁論準備手続期日において同年2月26日付け「準備書面(被告その1)」を陳述した。 上記準備書面において,被告らの主張する旧施工方法の構成(別紙 - 95 -1)及び新施工方法の構成(別紙2)が,初めて具体的に明らかにされた。 f 被告らは,平成22年4月30日,原告に対し,反訴を提起した。 g 原告は,平成22年5月17日,被告らに対し,別件仮処分の申立てをした。 イ原告の本件告知行為①の有無及び不正競争行為該当性被告らは,原告が平成21年6月19日に行った本件告知行為①は,競争関係にある被告IHIの営業上の信用を害する虚偽の事実(実際には特許侵害をしていないのに,特許侵害をするとの虚偽の事実)を告知する行為(不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為)に該当する旨主張する。これに対し原告は,原告の担当者が信濃川河川事務所を訪問し,その担当者に対し,甲34を交付したことを認めた上で,原告の担当者がした説明は,被告IHIが自社開発しようとしている水門凍結防止装置が鋼管発熱方式である場合には,原告が出願している特許との抵触問題があり得ることを一般的に指摘したものであり,そもそも,被告らが主張するような「競争関係にある他人の営業上の信用を害する事実」の告知に当たらないなどと主張する。 (ア) 原告の担当者が の抵触問題があり得ることを一般的に指摘したものであり,そもそも,被告らが主張するような「競争関係にある他人の営業上の信用を害する事実」の告知に当たらないなどと主張する。 (ア) 原告の担当者が信濃川河川事務所の担当者に交付した甲34は,「大河津可動堰改築ゲート設備工事のうち凍結防止装置評価項目」と題する書面であり,同書面中の「2.承認申請図評価項目」には,「2-1 特記仕様書に対する評価」として,「(1)承認申請されたヒーターは鋼管発熱方式か → 承認されたヒーターが鋼管発熱方式の場合は,日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」に抵触の可能性がある。」との記載(以下「甲34の本件記載部分」ということがある。)がある。 そして,甲34の記載事項全体(前記ア(エ))及び原告の担当者が平 - 96 -成21年6月19日に信濃川河川事務所を訪問するまでの間の本件の経緯等(前記ア(ア)ないし(ウ))を総合すると,原告の担当者から甲34の交付を受けた信濃川河川事務所の担当者は,甲34の本件記載部分中の「日本工営特許「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」」,「特記仕様書」及び「承認申請されたヒーター」とは,それぞれ「原告の本件出願に係る発明」,「信濃川河川事務所が作成した本件工事の平成20年8月付け特記仕様書(甲15)」,「本件工事の発注を受けた被告IHIが,信濃川河川事務所に承認申請する本件工事における水門凍結防止装置」を意味するものと理解したものと認められる。 そうすると,甲34の本件記載部分は,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置が「鋼管発熱方式」である場合には,原告の本件出願に係る発明が特許されたときはその特許権に抵触する可能性があるとの意見ないし見解を示したものであり,原告の担当者は,信 件工事における水門凍結防止装置が「鋼管発熱方式」である場合には,原告の本件出願に係る発明が特許されたときはその特許権に抵触する可能性があるとの意見ないし見解を示したものであり,原告の担当者は,信濃川河川事務所の担当者に対し,甲34を交付することにより,上記の意見ないし見解を述べたものと認められる。 被告ら主張の原告の本件告知行為①は,このような意見ないし見解を告知したものとして,認めることができる。 (イ) 以上を前提に,原告の本件告知行為①が,被告IHIの営業上の信用を害する「虚偽の事実の告知」(不正競争防止法2条1項14号)に該当するかどうかについて検討する。 a 甲34の記載事項(前記ア(エ))によれば,甲34は,「承認申請されたヒーター」が,本件工事の特記仕様書(甲15)の各要求事項を満たすものかどうかを評価するための具体的な評価基準を示す体裁のものといえる。 加えて,原告は,本件工事の一般競争入札が実施される前に,信濃川河川事務所の依頼を受けて,本件工事に係る凍結防止装置の見積書 - 97 -を2回にわたり提出したほか,本件工事の設計業務等の委託を受けていたものであり(前記ア(ア)),このような原告と信濃川河川事務所との関係に鑑みると,原告は,信濃川河川事務所から,本件工事の設計業務等に関し,意見や助言等を求められる立場にあったものと認められる。 そうすると,甲34の本件記載部分は,原告が,信濃川河川事務所から委託のあった本件工事の設計業務等に関する意見等の表明の一環として記載されたものと推認することができる。 b そして,①平成21年6月19日の時点では,原告及び信濃川河川事務所のいずれにおいても,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置及びその施工方法の具体的な内容を把握していなか b そして,①平成21年6月19日の時点では,原告及び信濃川河川事務所のいずれにおいても,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置及びその施工方法の具体的な内容を把握していなかったこと,②本件工事の特記仕様書(甲15)に,「1.凍結防止装置は鋼管発熱方式とする。」との記載があることからすると,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置が「鋼管発熱方式」のものであると予測するのは自然であり,一方,本件当初明細書(甲5)によれば,平成21年6月19日の時点における特許請求の範囲の請求項1は,「水門設備の凍結防止範囲の被加熱部材に対して固着する誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置において,前記誘導発熱鋼管は,並列に配置された複数個の誘導発熱鋼管単体を備え,各々の前期誘導発熱鋼管単体は,内部に軸方向に延在する絶縁電線差込み孔をもつ柱状の強磁性鋼材を有し,並列した複数個の前記誘導発熱鋼管単体の差込み孔に通して,その両端に交流電源が接続された絶縁電線を有し,複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている,水門凍結防止装置。」というものであり,「鋼管発熱方式」の水門凍結防止装置の発明であることからすると,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置が,上記請求 - 98 -項1の記載に係る発明の技術的範囲に入る可能性があると考えることは不合理であるとはいえない。 c 前記a及びbを総合すれば,甲34の本件記載部分は,原告が,信濃川河川事務所から委託を受けていた本件工事の設計業務等に関する意見等の表明の一環として,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置が「鋼管発熱方式」である場合には,原告の本件出願に係る発明が特許されたときはその特許権に抵触する可能性があるとの意 見等の表明の一環として,被告IHIが承認申請する本件工事における水門凍結防止装置が「鋼管発熱方式」である場合には,原告の本件出願に係る発明が特許されたときはその特許権に抵触する可能性があるとの意見ないし見解を示したものであり,そもそも被告IHIの具体的な水門凍結防止装置を前提として原告の本件出願に係る特許権を侵害することになることを述べたものではないのみならず,上記意見ないし見解の前提とする事実関係は事実に合致し,不合理であるとはいえないこと(前記b)に鑑みれば,原告の本件告知行為①が,被告IHIの営業上の信用を害する「虚偽の事実の告知」(実際には特許侵害をしていないのに,特許侵害をするとの虚偽の事実)に該当するものと認めることはできない。 (ウ) これに対し,被告らは,仮に特許権者が自らが保有する特許権の無効理由や被侵害者の対象物件又は対象方法を十分に調査した上で客先に警告を行った場合であっても,結果的に非侵害であったり,無効であれば,原則的には,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当すると解されており,本件においては,未だ特許権が成立していない段階において,原告において,被告IHIの水門凍結防止装置やその施工方法を何ら調査することなく,漫然と信濃川河川事務所に警告を行ったもので,極めて悪質性の高い行為である旨を主張する。 しかしながら,前記(イ)で述べた理由により,被告らの上記主張を採用することはできない。 ウ原告の本件告知行為②の有無及び不正競争行為該当性 - 99 -被告らは,原告の担当者は,平成21年7月29日,信濃川河川事務所を訪問し,その担当者に対し,本件告知行為②を行った旨主張する。これに対し原告は,原告の担当者が信濃川河川事務所を訪問したことを認めた上で,本件告知行為②の事実を否認し, 月29日,信濃川河川事務所を訪問し,その担当者に対し,本件告知行為②を行った旨主張する。これに対し原告は,原告の担当者が信濃川河川事務所を訪問したことを認めた上で,本件告知行為②の事実を否認し,原告の担当者は,本件出願の審査状況を説明したにすぎないなどと主張する。 そこで検討するに,原告の担当者が被告ら主張の本件告知行為②を行ったことを客観的に裏付ける書面等の証拠は提出されていない。 もっとも,被告IHIの担当者は,平成21年7月30日,信濃川河川事務所の担当者から,被告IHIの言い分と,原告の言い分に大きな差があるので,整理のために打合せをしたいという旨の電話を受け,同年8月6日に,信濃川河川事務所の担当者と打合せをした際に,信濃川河川事務所の担当者が,被告IHIの施工する水門凍結防止装置が原告の特許に抵触するかどうか判断できない限り,被告IHIの施工計画書を承認することはできない旨述べた事実(前記ア(オ)d)が認められるが,信濃川河川事務所の担当者の上記発言は,原告の担当者が同年7月29日に信濃川河川事務所の担当者に対し被告IHIの施工する水門凍結防止装置が本件出願に係る特許権を侵害する旨を具体的に告げたことをうかがわせるものとはいえない。また,被告ら提出の被告IHIの従業員が作成した乙20及び乙22の電子メールには,原告の担当者が本件告知行為②を行ったことをうかがわせる具体的な事情の記載はない。 結局,本件全証拠によっても,原告の担当者が被告ら主張の本件告知行為②を行ったことを認めるに足りない。 エまとめ以上のとおり,原告の本件告知行為①は,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するものとは認められず,また,原告が本件告知行為②を行った事実を認めるに足りる証拠はない。 - 100 -した り,原告の本件告知行為①は,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するものとは認められず,また,原告が本件告知行為②を行った事実を認めるに足りる証拠はない。 - 100 -したがって,被告らの反訴請求のうち,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 (2) 争点5(原告による本訴の提起及び別件仮処分の申立ての不法行為該当性)についてア本訴の提起の不法行為該当性(ア) 訴訟において,提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときには,当該訴えの提起は,不法行為を構成すると解される(最高裁判所昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。 そこで,原告の本訴の提起が不法行為を構成するかどうか検討するに,前記1のとおり,当裁判所は,原告の本訴請求のうち,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は,被告インフラシステムが行った新施工方法は本件発明の技術的範囲に属するものと認めることができないから,理由がなく,また,原告の本訴請求のうち,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求は,本件情報が,被告らとの関係で,秘密として管理されていたものと認められず,営業秘密(不正競争防止法2条6項)に該当するものと認めることはできないから,理由がなく,結局,原告の本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものである。 しかしながら,①前記(1)アの認定事実を総合すると,原告は,被告IHIが受注した合計18件の水門施工工事における水門凍結防止装置 ,原告の本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものである。 しかしながら,①前記(1)アの認定事実を総合すると,原告は,被告IHIが受注した合計18件の水門施工工事における水門凍結防止装置の設置工事(別件工事)をすべて原告に発注し,原告がこれを施工しきたが,本件工事における水門凍結防止装置の設置工事については,被告IHIから発注を受けることができなかったものであるところ,被告 - 101 -IHIがこれまで凍結防止装置を独自開発した経験がなかったことから,被告IHIによる本件工事における水門凍結防止装置の施工方法が本件発明の技術的範囲に属するものと考え,また,被告IHIがその施工に当たり原告が別件工事において被告IHIに開示した原告の保有する営業秘密であるノウハウを使用したものと考えて,本訴を提起するに至ったこと,②本訴請求のうち,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求との関係では,被告らは,平成22年3月10日の本件第1回弁論準備手続期日において,原告に対し,被告らの主張する旧施工方法の構成(別紙1)及び新施工方法の構成(別紙2)を初めて具体的に明らかにしたものであり,しかも,その主張が,工事現場の写真といった客観的な証拠で裏付けされたのは,平成23年5月16日であること(乙43「被告技術説明資料」スライド11。被告らの同日付け証拠説明書(被告その8)参照),③原告の本訴請求のうち,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求については,少なくとも原告の内部においては,本件情報が,「秘密情報管理規程」に定義する秘密情報に指定され,同規程に則った管理をされていたものと推認されること,④その他本件における原告の主張及び証拠関係,本訴に至るまでの具体的な経緯等を総合的に考慮すると,原告において,本訴における原告の主張が事 れ,同規程に則った管理をされていたものと推認されること,④その他本件における原告の主張及び証拠関係,本訴に至るまでの具体的な経緯等を総合的に考慮すると,原告において,本訴における原告の主張が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに本訴を提起したということはできず,原告の本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとは認められない。 (イ) 以上によれば,原告の本訴の提起が不法行為を構成するとの被告らの主張は,理由がない。 イ別件仮処分の申立ての不法行為該当性(ア) 仮処分命令の申立てをした債権者の主張した被保全権利が事実的, - 102 -法律的根拠を欠くものである上,債権者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに仮処分命令の申立てをしたなど,仮処分命令の申立てが裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときには,当該仮処分命令の申立ては,不法行為を構成すると解されるそこで,原告の別件仮処分の申立てが不法行為を構成するかどうか検討するに,別件仮処分は,原告が,本件情報を記載した文書(甲28の1ないし7,9)を,被告らが,情報公開法に基づく情報公開制度を利用して取得し,本訴において書証として提出した行為が,営業秘密の不正取得及び開示の不正競争行為(不正競争防止法2条1項4号)に当たる旨主張し,債務者らに対し,同法3条に基づく差止請求権を被保全権利として,情報公開法に基づいて文書開示請求を行うことなどの差止めを求めた仮処分命令申立事件であるところ,被告IHIの従業員が情報公開法に基づいて開示請求を行ったこと自体は,情報公開法の定める適法な行為であること,被告IHIの従業員が上記文書の開示を受 の差止めを求めた仮処分命令申立事件であるところ,被告IHIの従業員が情報公開法に基づいて開示請求を行ったこと自体は,情報公開法の定める適法な行為であること,被告IHIの従業員が上記文書の開示を受けたのは,行政機関の長である北海道開発局長の開示決定に基づくものであることなどに照らすならば,原告主張の被告らの行為は,特段の事情のない限り,不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に該当せず,原告の別件仮処分の申立ては,その主張する被保全権利の疎明を欠くものといわざるを得ない。 また,本件情報は,被告らとの関係で,秘密として管理されていたものと認められず,営業秘密(不正競争防止法2条6項)に該当するものと認めることができないことは,前記1(2)のとおりである。 しかしながら,他方で,①原告が主張するように,情報公開法は,同法5条2号イで不開示情報を規定しており,行政機関において保管されている文書であるからといって,すべからく同法に基づく公開の対象と - 103 -なるものとは一般的にいえないこと,②少なくとも原告の内部においては,本件情報が,「秘密情報管理規程」に定義する秘密情報に指定され,同規程に則った管理をされていたものと推認されること(前記1(2)ウ(ア)),③その他本件における原告の主張及び証拠関係,別件仮処分の申立てに至るまでの具体的な経緯等を総合的に考慮すると,原告において,原告の被保全権利の主張が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに別件仮処分の申立てをしたものということはできず,別件仮処分の申立てが裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとは認められない。 (イ) 以上によれば,原告の仮処分の申立てが不法行為を構成するとの被告らの主張は,理由 うことはできず,別件仮処分の申立てが裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとは認められない。 (イ) 以上によれば,原告の仮処分の申立てが不法行為を構成するとの被告らの主張は,理由がない。 ウまとめ以上のとおり,原告の本訴の提起及び別件仮処分の申立ては,被告らに対する不法行為を構成するものと認められない。 したがって,被告らの反訴請求のうち,不法行為に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 3 結論以上によれば,原告の本訴請求及び被告らの反訴請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 - 104 -裁判官上田真史 裁判官大西勝滋は,転補により署名押印することができない。 裁判長裁判官大鷹一郎 - 105 -(別紙1) 旧施工方法説明書 1 凍結防止装置の構成本件工事では,4門の調節ゲート及び2門の制水ゲートに,それぞれ,埋設戸当り金物と扉体に取り付けられた水密部(水密ゴム)が接触する部分の凍結を防止するための凍結防止装置が設けられる。 図1は,コンクリートに埋設される戸当り金物,扉体(ゲート)及び扉体に取り付けられ戸当り金物と接触する水密部(水密ゴム)を示している。図において水流と標記された矢印が川の水流方向を示している。図中水密部の下側は,河川水位以下の高さでは川の水が存在し,水密部の下側で河川水位以上の高さ及び水密部の上側は大気に曝されている。扉体(ゲート)が開閉される時は,扉体とこれに取り付けられた水密部(水密ゴム)は図で紙面に垂直な方向に上下動する。 【図1 密部の下側で河川水位以上の高さ及び水密部の上側は大気に曝されている。扉体(ゲート)が開閉される時は,扉体とこれに取り付けられた水密部(水密ゴム)は図で紙面に垂直な方向に上下動する。 【図1】 戸当り金物の内側(コンクリート埋設部分の内部側)には,8本の鋼管が図1の紙面に垂直方向に延在し,固定金具(フラットバー)によって戸当り金物に固定されている。又,鋼管の周囲には後述する方法で伝熱セメントが塗布されていて,鋼管の熱を戸当り金物,さらに水密部に伝達するようになっている。図2は8本の鋼管が4本ずつをひとまとめにして所定の間隔で固定金具(フラットバー)によって戸当り金物に固定されている様子を示している。 コンクリート戸当り金物水密部(水密ゴム) - 106 -【図2】 2 施工方法凍結防止装置の組み付け及び取り付けは,次の工程からなる。なお,鋼管は磁性体のものである。 (1) 一つの水門には左右に二つの凍結防止装置を設けるところ,その半門分の凍結防止装置を3分割したうちの一つの部材につき,以下の作業を行う。 ア現場において,戸当り金物のウェブとフランジのコーナー部に伝熱セメントを塗布する。 伝熱セメント イ 1本目の鋼管をウェブとフランジのコーナー部に配置する。 伝熱セメント ウ鋼管の伝熱セメントを塗布していない側を,鋼管の長さ方向に所定間隔をウェブフランジ戸当り金物固定金具(フラットバー)鋼管 - 107 -おいてフランジに溶接する。 溶接 エ鋼管とフランジの間に伝熱セメントを塗布する。 伝熱セメント オ前記エで塗布した伝熱セメントに2本目の鋼管を配置する。 いてフランジに溶接する。 溶接 エ鋼管とフランジの間に伝熱セメントを塗布する。 伝熱セメント オ前記エで塗布した伝熱セメントに2本目の鋼管を配置する。 カ前記ウないしオの要領を繰り返し,鋼管を4本配置する。 溶接 キ4本の鋼管を覆うようにL字型の固定金具(フラットバー)を配し,フランジ,ウェブ,鋼管と溶接する。これにより,鋼管同士が電気的に接続される。 溶接 溶接AA溶接溶接 (フラットバーを設けた箇所の断面模式図) ク鋼管の周囲で伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する。 (フラットバーを設けていない箇所の断面模式図) ケフランジの反対側にも同様の施工を行い,合計8本の鋼管を配置する。 (フラットバーを設けた箇所の断面模式図) (2)3分割した凍結防止装置の残りの二つの部材について,前記アないしケの作業を行い,これによって製造した三つの部材を揃えて,水門の所定の場所に取り付けたうえで,これら三つの部材を接続(カップリング)し,接続部に伝熱セメントを塗布する。 (3)ゲート設備工事の現場において,前記(2)で製造した凍結防止装置をコンクリートで埋設する。 (4)水門の残りの半門分について,前記(1)ないし(3)の工程を行う。 (5)鋼管の端部から内部長手方向にテフロン被覆をした発熱電線を挿入する。 (6)発熱電線の両端に交流電源を接続する。 以上 の残りの半門分について,前記(1)ないし(3)の工程を行う。 (5) 鋼管の端部から内部長手方向にテフロン被覆をした発熱電線を挿入する。 (6) 発熱電線の両端に交流電源を接続する。 以上 - 110 -(別紙2) 新施工方法説明書 1 凍結防止装置の構成本件工事では,4門の調節ゲート及び2門の制水ゲートに,それぞれ,埋設戸当り金物と扉体に取り付けられた水密部(水密ゴム)が接触する部分の凍結を防止するための凍結防止装置が設けられる。 図1は,コンクリートに埋設される戸当り金物,扉体(ゲート)及び扉体に取り付けられ戸当り金物と接触する水密部(水密ゴム)を示している。図において水流と標記された矢印が川の水流方向を示している。図中水密部の下側は,河川水位以下の高さでは川の水が存在し,水密部の下側で河川水位以上の高さ及び水密部の上側は大気に曝されている。扉体(ゲート)が開閉される時は,扉体とこれに取り付けられた水密部(水密ゴム)は図で紙面に垂直な方向に上下動する。 【図1】 戸当り金物の内側(コンクリート埋設部分の内部側)には,8本の鋼管が図1の紙面に垂直方向に延在し,固定金具(フラットバー)によって戸当り金物に固定されている。又,鋼管の周囲には後述する方法で伝熱セメントが塗布されていて,鋼管の熱を戸当り金物,さらに水密部に伝達するようになっている。図2は8本の鋼管が4本ずつをひとまとめにして所定の間隔で固定金具(フラットバー)によって戸当り金物に固定されている様子を示している。 コンクリート戸当り金物水密部(水密ゴム) - 111 -【図2】 2 施工方法凍結防止装置の組み付け及び取り付けは,次の工程からなる。なお,鋼管は磁性体 コンクリート戸当り金物水密部(水密ゴム) 施工方法凍結防止装置の組み付け及び取り付けは,次の工程からなる。なお,鋼管は磁性体のものである。(1) 一つの水門には左右に二つの凍結防止装置を設けるところ,その半門分の凍結防止装置を3分割したうちの一つの部材につき,以下の作業を行う。ア現場において,戸当り金物のウェブとフランジのコーナー部に伝熱セメントを塗布する。伝熱セメントイ 1本目の鋼管をウェブとフランジのコーナー部に配置する。伝熱セメントウ鋼管の伝熱セメントを塗布していない側を,鋼管の長さ方向に所定間隔をウェブフランジ戸当り金物固定金具(フラットバー)鋼管おいてフランジに溶接する。溶接エ鋼管とフランジの間に伝熱セメントを塗布する。伝熱セメントオ前記エで塗布した伝熱セメントに2本目の鋼管を配置する。カ前記ウないしオの要領を繰り返し,鋼管を4本配置する。溶接キ 4本の鋼管を覆うようにL字型の固定金具(フラットバー)を配し,フランジ,ウェブ,鋼管と溶接する。これにより,鋼管同士が電気的に接続される。溶接溶接AA溶接溶接(フラットバーを設けた箇所の断面模式図)ク鋼管の周囲で伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する。(フラットバーを設けていない箇所の断面模式図)ケフランジの反対側にも同様の施 で伝熱セメントが塗布されていない部分に伝熱セメントを塗布する。 (フラットバーを設けていない箇所の断面模式図) ケフランジの反対側にも同様の施工を行い,合計8本の鋼管を配置する。 (フラットバーを設けた箇所の断面模式図)(2) 3分割した凍結防止装置の残りの二つの部材について,前記アないしケの作 - 114 -業を行い,これによって製造した三つの部材を揃えて,水門の所定の場所に取り付けたうえで,これら三つの部材を接続(カップリング)し,接続部に伝熱セメントを塗布する。 (3) ゲート設備工事の現場において,前記(2)で製造した凍結防止装置をコンクリートで埋設する。 (4) 水門の残りの半門分について,前記(1)ないし(3)の工程を行う。 (5) 鋼管の端部から内部長手方向に発熱ケーブルを挿入する。 (発熱ケーブルの構成例) (発熱ケーブルの構造)(6) 発熱ケーブル中の2本の母線のそれぞれを交流電源に接続する。なお,発熱エンドキャップ母線・発熱エレメントジョイント部母線発熱エレメント外装:シリコンラバー母線・発熱エレメントジョイント部グランド絶縁キャップ母線(電源接続口) - 115 -ケーブルの一方端にのみ交流電源が設けられ,他端には設けられない。 (発熱ケーブルの電源接続方法)以上 鋼管エンドキャップ発熱ケーブル交流電源電源ケーブル発熱ケーブル母線 - 116 -(別紙3)●省略● - 117 -(別紙) ルの電源接続方法)以上 鋼管エンドキャップ発熱ケーブル交流電源電源ケーブル発熱ケーブル母線 本件明細書図面【図1】 【図2】 【図3】 【図13】 【図14】 【図15】 【図19】 【図20】 【図21】 【図22】 【図23】 【図24】

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