平成15(わ)174 傷害,傷害致死被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月11日 神戸地方裁判所
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判決文本文6,414 文字)

主文 被告人Xを懲役7年に,被告人Yを懲役5年に処する。 被告人両名に対し,未決勾留日数中各120日を,それぞれその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人両名は,共謀の上,平成15年1月31日午前3時ころ,神戸市中央区中山手通a丁目b番c号Aビル3階にあるフードバー「B」西側通路において,第1 V(当時37歳)に対し,その顔面を殴打し,同人を転倒させ,こもごもその顔面及び頭部等を多数回足蹴にし,踏みつけるなどの暴行を加え,よって,同人に約7か月間の通院加療を必要とする右眼窩底骨折,上顎骨骨折及び顔裂挫創等の傷害を負わせた。 第2 W(当時31歳)に対し,同人を転倒させ,こもごもその顔面及び頭部等を多数回足蹴にし,踏みつけるなどの暴行を加えて,同人に頭部・顔面打撲等の傷害を負わせ,よって,同日午前5時7分ころ,同区G町d丁目e番H病院において,同人を上記傷害に基づく急性外傷性脳腫脹により,死亡させた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人の主張被告人Yの弁護人は,被告人Yは,本件犯行について被告人Xと共謀していないし,被害者らに対して暴行も加えていない旨主張し,被告人Yも一貫してこれに沿う供述をするので,以下検討する。 2 前提となる事実関係被告人Xの捜査段階及び当公判廷における各供述を含む関係証拠によれば,以下の事実が認められ,被告人Yもこれらの事実を争わない。 すなわち,被告人両名は,平成15年1月31日午前2時40分ころから45分ころ,判示のフードバー「B」に行き,同所でCと落ち合って飲酒していたところ,被告人Xが,相客のVからいきなり「知り合いか。」などと尋ねられ,「知らん。」などと答えたことから 時40分ころから45分ころ,判示のフードバー「B」に行き,同所でCと落ち合って飲酒していたところ,被告人Xが,相客のVからいきなり「知り合いか。」などと尋ねられ,「知らん。」などと答えたことから険悪な雰囲気となった。 Vは,店長のDや連れのWらになだめられながら店外に連れ出されたが,なおも店外で悪態をつくなどしていたところ,帰ろうとして店外に出てきた被告人XとVが,突如,つかみ合いを始め,その後,上記両名を止めに入った被告人YとWを加え,合計4名がもみ合う状態となった。 そして,上記4名は上記通路の南端付近までもみ合いながら移動し,なおも同所でもみ合っていたが,被告人XはWに頭突きをし,その後,転倒したWを踏みつけるなどし,引き続いてVにも同様の暴行を加え,再び,W,Vの順に踏みつけるなどの暴行を加えた。 なお,本件当時,被告人Xは黒のジャンパーに黒のセーターを着て,紺色のジーパンをはき,黒のスニーカーを履いており,一方,被告人Yはハーフコートくらいの長さの白のジャンパーで,その下にジーパンをはいていた。 3 関係各供述の信用性について(1) 証人Eの公判供述(以下「E証言」という。)本件当時,被害者らと同行していた証人Eは,Bの店外に出たVはひどく怒っており,同店の入り口ドアを少し開けて店内に向かって何か言った,その後,店から離れようとしたところ,店内から黒い服の男性らが出てきて,その男性はいきなりVにつかみかかり,取っ組み合いになった,Eはとっさに頭をすくめて,中に割り込むようにしてとめに入ったが,取っ組み合いはとまらなかった,その後,V,W及び店内から出てきた男性2名でだんご状態のまま取っ組み合いが続き,気が付くとVとWがぐったりとして床に倒れていた,そのとき,白い服の男性が,横向きに倒れ っ組み合いはとまらなかった,その後,V,W及び店内から出てきた男性2名でだんご状態のまま取っ組み合いが続き,気が付くとVとWがぐったりとして床に倒れていた,そのとき,白い服の男性が,横向きに倒れていたVの左側頭部を踏みつぶすようにしてけっていた,Eがとめてもやめないので,Vと白い服の男性の間に自分の体を入れるようにしてとめに入ったところ,その男性は,すぐにVをけるのをやめ,続いてWの右側頭部を踏みつぶすようにしてけり始めた,Wは全く抵抗していなかったので,EはWに覆いかぶさるようにしてとめたところ,白い服の男性はけるのをやめたなどと証言する。 このE証言は,それまでに相当量の飲酒をしていたことなどから若干記憶があいまいな点がみられるものの,白い服の男性が被害者らに対して踏みつけるなどの暴行を加えていたという点に関しては,一貫して明確に述べており,その証言内容も,自らがVやWへの攻撃をかばった行動を含め,具体的で迫真性に富むものであって,何ら不自然,不合理な点はみられず,覚えていない点は覚えていないとするなどその証言態度は誠実であり,後記F証言とも相互に整合的である上,反対尋問に何ら動揺していない。本件現場は,深夜ないし未明の時間帯とはいえ,繁華街の一角で,本件当時,通路の照明や店舗の看板が点灯されており,色の識別が容易にでき,顔もはっきりと分かる状況であったことに加え,被告人Xは黒いジャンパー,同Yは白いジャンパーという対照的な服装をしていたのであり,本件現場には,店長のDを除くと被害者側の男性2名と女性2名,被告人側の男性2名と女性1名しかいなかったのであるから,黒い服の男性が被告人X,白い服の男性が被告人Yであることが明らかである。そして,E証人は,これを至近距離から目撃していたことからすると,同証人の酔いの程度を と女性1名しかいなかったのであるから,黒い服の男性が被告人X,白い服の男性が被告人Yであることが明らかである。そして,E証人は,これを至近距離から目撃していたことからすると,同証人の酔いの程度を考慮に入れても,その識別に誤りが生じるとは考え難く,これらの事情に照らすと,その証言は,十分信用することができる。 (2) 証人Fの公判供述(以下「F証言」という。)本件当時,被害者と同行していたFは,酔って何か文句を言っていたVを,Wと一緒に抑えるようにしてBの店外に出したが,Vは店の扉を開けて中に文句を言った,その後,黒い服の男性が出てきて,Vとつかみ合いになった,そこでEがVと黒い服の男性の間にかがんで入り,その男の腕をつかんでとめようとしたがとまらなかった,その後,気が付くと,VとWはB前通路の南の方に倒れていた,黒い服の男性は,まだVとWの方に向かおうとしたので,前から両手で押さえてとめようとした,そのとき,白い服の男性が,Vの顔あたりを右足のつま先でけっていたなどと証言する。 このF証言は,証言内容が具体的である上,Vが倒れていた位置等についてE証言や客観的証拠(実況見分調書・検察官請求証拠番号甲20)と若干食い違う点が見られるものの,格別不自然,不合理な点はない。そして,前記のとおり被害者らに対して暴行を加えた犯人について人違いの可能性が考えにくい本件状況下において,白い服の男性が被告人Yであることは明らかであるところ,F証人は,被告人YがVをけっていたという点については明確に供述する一方,同被告人のWに対する攻撃については述べていないことから,その証言態度には,殊更同被告人に不利益な供述をしようという姿勢はみられず,誠実であるということができ,前記E証言と相互に整合的であることからしても,F証言は十分 攻撃については述べていないことから,その証言態度には,殊更同被告人に不利益な供述をしようという姿勢はみられず,誠実であるということができ,前記E証言と相互に整合的であることからしても,F証言は十分信用することができる。 (3) 証人Dの公判供述(以下「D証言」という。)B経営者であり,本件を目撃したDも,被告人らとVらがつかみ合いのけんかになった,Vらの連れの女性が止めに入ったが,転倒してとめることができなかった,その後,倒れたVとWを別々の男がけっていたなどと証言する。 このD証言も,Dは,本件犯行まで被告人両名及び被害者らとは一面識もなかったもので,被告人両名に対して殊更不利益な虚偽供述をするべき理由,動機が全く見当たらない。そして,前記のとおり本件犯行現場の視認状況には何ら問題はなく,被害者両名以外に男は被告人両名しかいないのであるから,別々の男が,それぞれ被告人X及び同Yを指すことは明らかである。 (4) なお,被告人Yの弁護人は,これらの各証言は,被告人Yの靴からルミノール反応が検出されなかった事実(鑑定書・同番号甲56)と矛盾し,信用できないと主張する。しかしながら,被告人Yの靴は,本件犯行直後洗濯されていること(Yの妻の警察官に対する供述調書・同番号甲78)からすると,被告人Yの靴から同反応が検出されないことと,これらの各証言とは矛盾するものではないから,この主張は採用し得ない。 4 小括上記2で認定した前提となる事実関係に,上記3で検討したとおり十分信用することができるE,F及びDの各証言から認められる事実を総合すると,被告人Xが被害者らに対して暴行を加えるのとほぼ同時に,被告人Yも,被害者らに対して被告人Xと同様の踏みつけたり足蹴にするなどの暴行を加えていることが認められる。そし ら認められる事実を総合すると,被告人Xが被害者らに対して暴行を加えるのとほぼ同時に,被告人Yも,被害者らに対して被告人Xと同様の踏みつけたり足蹴にするなどの暴行を加えていることが認められる。そして,被告人両名の関係,本件暴行に至る経緯や暴行の状況等からすると,本件現場において,被告人両名の間に黙示の共謀が成立したことも明らかである。 5 被告人Yの弁解についてこれに対し,被告人Yは,自分は,被告人Xとつかみ合っていたVの腕を振り払いはしたが,その後,被告人Xをとめていただけで,自分は一切暴行を加えていないなどと弁解する。 しかし,この弁解供述は,本件に至るまでの経緯等に関してはかなり具体的で詳細であるのに比して,質問が本件罪体の核心部分である暴行行為の点に及ぶや,にわかに,ただVの手を振り払った後は傍観していたのみで何ら暴行には加わっていないなどとあいまいで具体性に乏しい漠然とした供述をするにとどまり,当時の緊迫したけんか状況下における行動としてかなり不自然であること,前記のとおり信用することができるEやFらの各証言と大きな相違が存することなどから,信用することができない。 6 結論以上のとおりであって,判示の傷害及び傷害致死の各事実は,これらを優に認めることができる。 (累犯前科)被告人Xは,平成12年1月14日神戸地方裁判所で傷害及び強要の各罪により懲役3年に処せられ,平成14年9月15日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号乙19)によって認める。 (法令の適用)被告人両名の判示第1の所為はいずれも刑法60条,204条に,判示第2の所為はいずれも同法60条,205条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,被告 法令の適用)被告人両名の判示第1の所為はいずれも刑法60条,204条に,判示第2の所為はいずれも同法60条,205条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,被告人Xには前記の前科があるので,同法56条1項,57条により判示各罪についてそれぞれ再犯の加重(判示第2の罪の刑については同法14条の制限に従う。)をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Xを懲役7年に,被告人Yを懲役5年にそれぞれ処し,同法21条を適用して,被告人両名に対し,未決勾留日数中各120日を,それぞれその刑に算入し,被告人両名について生じた訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して,被告人両名に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,飲食店で居合わせた被害者らとのささいな口論をきっかけとして,被告人両名が共謀して,こもごも被害者らを足蹴にするなどの暴行を加え,被害者1名に対して約7か月間の通院加療を必要とする傷害を負わせ,もう1名の被害者に対し,頭部・顔面打撲等の傷害を負わせて死亡するに至らせたという傷害,傷害致死の事案である。 2 量刑上考慮した事情(1) 不利な事情被告人両名は,飲食店で居合わせた被害者らと口論し,取っ組み合いとなった末,その場に倒れ込んで何ら抵抗しなくなった被害者らに対して,こもごも頭部を踏みつけたり,足蹴にするなどの暴行を加え,被害者らの頭部を床面のコンクリートに打ち当てるなどしたもので,本件暴行態様は,凶器は使用していないものの,非常に危険性の高い悪質なものである。 そして,その結果,友人Vと被告人らのけんかを止めに入っただけ のコンクリートに打ち当てるなどしたもので,本件暴行態様は,凶器は使用していないものの,非常に危険性の高い悪質なものである。 そして,その結果,友人Vと被告人らのけんかを止めに入っただけの被害者Wは,被告人らの強度の暴行を受け,交際相手や家族らを残し,約31年間の人生をこのような無残な形で終えざるを得なくなったもので,Wが被告人両名から足蹴にされるなどの暴行を受け続けていたときに抱いたであろう苦痛や屈辱感の大きさは計り知れず,Wの無念の心中は察するに余りある。また,被害者Vも,上記Wと同様の暴行を受け,右眼窩底骨折等の約7か月間の通院加療を必要とする重傷を負い,右眼陥凹変形,複視症状の固定等の後遺症が残ると予想され,今後の社会・職業生活に支障を来すことも考えられる。本件各犯行の結果は極めて重大である。 加えて,被告人両名は,被害者VやWの遺族に対して,何らの被害弁償をしておらず,被害者Vの被害感情が厳しいのはもちろん,被害者Wの遺族の被害感情はまことに峻烈である。 さらに,被告人Xは,平成8年ころから現役の暴力団構成員として活動し,これまでに前掲の累犯前科を含む同種前科2犯のほか,公務執行妨害,傷害罪等による前歴5回を数え,その粗暴癖には根深いものがあるばかりか,前刑から出所してわずか4か月余りで再び本件犯行に及んだものであって,その規範意識の鈍麻には甚だしいものがあり,その犯情は悪質である。 一方,被告人Yは,自ら被害者らに対して暴行を加えたことが明らかであるにもかかわらず,何ら暴行には関与していないなどと不合理な弁解に終始し,反省の情は見られない。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,飲食店内において,泥酔した被害者Vから被告人Xに対し絡んでいったことが本件の契機になっ いなどと不合理な弁解に終始し,反省の情は見られない。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,飲食店内において,泥酔した被害者Vから被告人Xに対し絡んでいったことが本件の契機になったことは明らかであること,被告人Xは犯行翌日に自首し,公判廷においても自己の行為に関しては事実を認め,被害者Wの遺族に対して謝罪文をしたためるなど一応の反省の情を示していること,被告人Yには前科がないことなど各被告人にとって有利な事情も若干認められる。 3 結論そこで,以上諸般の事情を総合して考慮し,各被告人に対して,それぞれ主文の刑を科することとした。 (求刑・被告人Xについて懲役10年,被告人Yについて懲役7年)平成15年9月11日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸

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