【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人土屋東一の上告理由について 所論の点に関する原審の事実認定は、原判
主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人土屋東一の上告理由について 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯する に足り、右事実及び原審が適法に確定したその余の事実関係によれば、(1) D株 式会社(以下「D」という。)は、計量装置の計器用変成器の設定誤りにより、昭 和四七年四月から同五九年一〇月までの間、上告人から電気料金等(電気料金、契 約超過違約金及び電気税をいう。以下同じ。)を過大に徴収していた、(2) Dは 昭和五九年一二月ころに至り、この事実を初めて発見したため、同月一四日、上告 人に対して、これを伝えて陳謝し、同月二一日、右期間に係る過収電気料金の概算 額を伝えた、(3) その後、Dは、右過収電気料金の返戻額の算定作業を進める一 方で、上告人に対し、年六パーセントの割合による利息を単利計算によって付加し て支払うこと、Dが特別徴収義務者として上告人から過大に徴収した電気税につい ては、昭和五九年度分の税額に当たる額のみを返金し、その余の部分は上告人が放 棄することなどを申し入れ、上告人もこれを了承した、(4) 右のような交渉を経 て、Dは上告人に対し、昭和六〇年三月二八日、本件過収電気料金等一億五三一一 万一八一九円を含む具体的精算金額を提示し、Dで作成した案どおりの確認書を取 り交わすことを申し入れたところ、上告人もこれを了承し、翌三月二九日、本件確 認書が取り交わされるに至った、(5) 本件過収電気料金等のうち電気料金の額は、 昭和四七年四月から同四八年九月までの間の上告人の使用電力量を明らかにする資 料が残っていなかったため、その間の過収電力量料金の額を昭和四八年一〇月から 同四九年九月までの一年間の一箇月平均使用電力量を基礎として推 月から同四八年九月までの間の上告人の使用電力量を明らかにする資 料が残っていなかったため、その間の過収電力量料金の額を昭和四八年一〇月から 同四九年九月までの一年間の一箇月平均使用電力量を基礎として推計することによ - 1 - って算出した、(6) 本件確認書には精算終了条項があり、これにより、上告人と Dとの間において、過収電気料金等に係る精算を終了する旨が確認されている、と いうのである。右事実関係によれば、上告人は、昭和四七年四月から同五九年一〇 月までの一二年間余もの期間、Dによる電気料金等の請求が正当なものであるとの 認識の下でその支払を完了しており、その間、上告人はもとよりDでさえ、Dが上 告人から過大に電気料金等を徴収している事実を発見することはできなかったので あるから、上告人が過収電気料金等の返還を受けることは事実上不可能であったと いうべきである。そうであれば、電気料金等の過大支払の日が属する各事業年度に 過収電気料金等の返還請求権が確定したものとして、右各事業年度の所得金額の計 算をすべきであるとするのは相当ではない。上告人のDに対する本件過収電気料金 等の返還請求権は、昭和五九年一二月ころ、Dによって、計量装置の計器用変成器 の設定誤りが発見されたという新たな事実の発生を受けて、右両者間において、本 件確認書により返還すべき金額について合意が成立したことによって確定したもの とみるのが相当である。したがって、本件過収電気料金等の返戻による収益が帰属 すべき事業年度は、右合意が成立した昭和六〇年三月二九日が属する本件事業年度 であり、その金額を右事業年度の益金の額に算入すべきものであるとした原審の判 断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用す ることができない。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九 益金の額に算入すべきものであるとした原審の判 断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用す ることができない。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官 味村治の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 裁判官味村治の反対意見は、次のとおりである。 私は、多数意見と異なり、原判決を破棄し、上告人の本件請求を認容すべきもの と考えるので、以下その理由を述べる。 一 法人税法二二条一項は、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年 - 2 - 度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とし、同条二項及び三項 は、各事業年度の所得の金額の計算上益金又は損金の額に算入すべき金額について それぞれ規定している。 法人税法による確定申告について、損金の過大計上、益金の過少計上があった場 合には、申告をした者は国税通則法等の定めるところにより修正申告をすることが でき、課税庁は、同法等の定めるところにより、損金の過大計上、益金の過少計上 の有無を調査し、これらがあった場合には、その額を調査し、その結果に基づき、 更正する権限を有する。 二 原審の認定した事実によれば、上告人は、昭和四七年四月から同五九年一〇 月までの間、電気料金等を過大に支払い、過大支払の事実を昭和五九年一二月一四 日知ったというのであり、上告人は、この間に電気料金等として支払った金額を、 支払の時の属する各事業年度における損金の額に算入していて、その算入の根拠は、 右の金額が法人税法二二条三項一号の原価に該当するとしたことにあったと認めら れる。しかし、実は、その間の電気料金等の支払は過大であったのであるから、過 収電気料金等の額に相当する額は、同号の原価の額には該当しなかったというべき であり、上告人の当 るとしたことにあったと認めら れる。しかし、実は、その間の電気料金等の支払は過大であったのであるから、過 収電気料金等の額に相当する額は、同号の原価の額には該当しなかったというべき であり、上告人の当該各事業年度に関する確定申告における所得金額の計算には、 原価の過大計上ひいては損金の過大計上という違法があり、その結果所得金額が過 少であったものと認められる。 したがって、右の各事業年度について、上告人は、国税通則法等の定めるところ により修正申告をすることができ、被上告人は、同法等の定めるところにより、電 気料金等の過大計上の有無を調査し、その結果に基づき、損金の過大計上を理由と して右の各事業年度の所得について更正すべきであって、被上告人が返還を受ける べき過収電気料金等の額を右の各事業年度以外の事業年度の益金の額に算入する更 正をすることはできないというべきである。 - 3 - 三 多数意見は、原審が適法に確定した事実関係の下においては、上告人のDに 対する本件過収電気料金等の返還請求権は、右両者間において、その金額について 合意が成立したことによって確定したものとみるのが相当であるから、本件過収電 気料金等が帰属すべき事業年度は、右合意が成立した昭和六〇年三月二九日が属す る本件事業年度であるとしたが、私は、多数意見に賛成できない。その理由は、二 に述べたところのほか、次のとおりである。 1 前述のように、上告人が電気料金等の過大支払をした日の属する各事業年度 に関する確定申告における所得金額の計算には、原価の過大計上ひいては損金の過 大計上という違法があるが、多数意見は、右の計算に違法があることを認めない。 過収電気料金等の額に相当する額は、法人税法二二条三項一号の原価又は同項二号 の費用の額に該当しないことは明らかであって、上告人が請求を受けた電気料金等 数意見は、右の計算に違法があることを認めない。 過収電気料金等の額に相当する額は、法人税法二二条三項一号の原価又は同項二号 の費用の額に該当しないことは明らかであって、上告人が請求を受けた電気料金等 の額を正当なものと信じていたとしても、そのために過収電気料金等の額が右の原 価又は費用の額に該当することとなることはあり得ないから、多数意見は、その額 が同項三号の損失に当たるとするものと解さざるを得ない。たしかに、上告人は、 電気料金等の過大支払により、その都度、過収電気料金等の額に相当する額の現金 を失ってはいるが、それと同時に、民法の規定によりDに対し不当利得としてその 額の返還を請求する権利を取得したことが明らかである。このように、上告人の財 産については、現金の喪失という資産の減少と不当利得返還請求権の取得という資 産の増加が生じているが、この両者は、表裏の関係にあり、しかも、その発生の時 点においては等価であると認められるから、過収電気料金等の支払によっては上告 人の財産に増減を生じていない。右の現金の喪失という資産の減少は、これに見合 う額の返還を受けることを内容とする不当利得返還請求権の取得によって補われて いるから、同条三項三号の損失に当たらないというべきである。 2 多数意見は、本件過収電気料金等の返還請求権の取得を法人税法二二条二項 - 4 - の収益と解するが、右の権利は、前述のように、過収電気料金等の額に相当する現 金の喪失という資産の減少を回復するものにすぎないから、その取得は、同項の収 益に当たらないというべきである。したがって、右の権利の取得を収益として、こ れにより返還を受けるべき過収電気料金等の額を益金の額に算入することはできな いし、まして、表裏の関係にある右の権利の取得と現金の喪失とを切り離して、右 の現金の喪失は前記の過大支払の日の属 として、こ れにより返還を受けるべき過収電気料金等の額を益金の額に算入することはできな いし、まして、表裏の関係にある右の権利の取得と現金の喪失とを切り離して、右 の現金の喪失は前記の過大支払の日の属する各事業年度の損失であるとしながら、 右の権利の取得は前記の合意の日の属する事業年度の収益であるとすることはでき ない。 3 多数意見は、本件過収電気料金等の返還請求権は、その額についての前記の 合意の成立によって確定したとするが、過収電気料金等の額は、電気料金等の過大 支払の時において、客観的に確定していて、算定可能であり、税法上は、この客観 的に確定した額が不当利得として上告人が返還を受けるべき額であって、被上告人 は、右の合意にかかわらず、所定の権限を行使し、過収電気料金等の額を調査し、 これに基づいて更正を行うべきである。その際、右の合意による額が客観的に確定 した額と異なるときは、その額により更正すべきであり、年月の経過による資料の 散逸等により過収電気料金等の正確な額を算定できない期間については、残存資料 等に基づき合理的な方法を用いてその額を推定すべきである。 原審の認定した事実によれば、Dは、昭和五五年一月から同五九年一〇月までの 間の過収電気料金等については、検針カードが保存されていたので、これによりそ の額を算定し、昭和四八年一〇月から同五四年一二月までの間の過収電気料金等に ついては、大口電力カードが保存されていたので、その記載により一〇〇〇キロワ ット時未満を四捨五入した使用電力量を基礎として、その額を推定し、昭和四七年 四月から同四八年九月までの間の過収電気料金等の額については、その間の使用電 力量をその直後の一年間の一箇月平均使用電力量を基礎として、その額を推定した - 5 - というのである。被上告人は、国税通則法等の定めるところにより、右の 過収電気料金等の額については、その間の使用電 力量をその直後の一年間の一箇月平均使用電力量を基礎として、その額を推定した - 5 - というのである。被上告人は、国税通則法等の定めるところにより、右の合意にか かわらず、右の算定の正確性及び右の推定が合理的か又はより合理的な方法がない か等について、調査し、その結果に基づいて更正すべきである。 このように、税法上、右の合意がなければ過収電気料金等の額が確定しないとい うことはできず、右の合意によりその額が確定するということもできない。したが って、右の不当利得返還請求権が右の合意の成立によって税法上確定したとする理 由はない。 最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二三号同五三年二月二四日第二小法廷判決(民集 三二巻一号四三頁)は、所得税法上の所得の計算上、賃料増額請求が賃借人により 争われた場合には、原則として、増額賃料債権の存在を認める裁判が確定した時に その権利が確定すると判示していて、その趣旨を推及すると、増額賃料債権は、そ の額について賃借人と賃貸人との合意が成立した場合には、その合意の時に確定す ると解すべきものと考えられる。しかし、右判例の理由とするところは、増額賃料 債権の存在を認める裁判が確定するまでは、増額すべき事情があるかどうか、客観 的に相当な賃料額がどれほどであるかを正確に判断することは困難であり、課税庁 に独自の立場でその認定をさせることも相当でないということにある。しかし、本 件においては、前述のように、過収電気料金等の額は、検針カードさえあれば容易 に算定できるし、それがなくとも、使用電力量を合理的に推定して、その額を算定 することが可能であるから、本件は、右判例とは事案を異にするというべきである。 なお、原審の認定した事実によれば、上告人は、昭和五九年一二月二一日、Dに 対する不当利得返還請求権 定して、その額を算定 することが可能であるから、本件は、右判例とは事案を異にするというべきである。 なお、原審の認定した事実によれば、上告人は、昭和五九年一二月二一日、Dに 対する不当利得返還請求権のうち昭和五八年度以前の電気税の額に相当する部分を 放棄したものというべきであるから、右の放棄についての税務上の処理は、同日の 属する事業年度の所得の計算についてするのが相当である。 四 原判決は、被上告人がした本件更正処分を適法と認めたが、上述したように、 - 6 - 法人の各事業年度の所得の金額の計算に関する法令の解釈を誤っているので、これ を破棄し、上告人の本件請求を認容すべきである。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 小 野 幹 雄 裁判官 大 堀 誠 一 裁判官 橋 元 四 郎 平 裁判官 味 村 治 裁判官 三 好 達 - 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