- 1 -平成19年4月25日判決言渡平成18年(ネ)第10081号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審東京地方裁判所平成17年(ワ)第24452号)平成19年3月12日口頭弁論終結判決控訴人X訴訟代理人弁護士酒井正之補佐人弁理士内山充被控訴人小林製薬株式会社代表者代表取締役小林豊訴訟代理人弁護士畑郁夫同古谷誠同野口明男同飯塚卓也同松井秀樹訴訟代理人弁理士三枝英二同中野睦子主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の生理用品を製造,販売してはならない。 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の生理用品を廃棄せよ。 - 2 - 被控訴人は,控訴人に対し,200万円及びこれに対する平成17年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要及び当事者の主張等 事案の概要,「」,本件は多層生理用品に係る特許権を有する控訴人が被控訴人に対して原判決別紙被告製品目録記載の製品以下被告製品というを製造販売す(「」。)る被控訴人の行為が上記特許権(請求項1及び3)を侵害すると主張して,被告製品の製造販売の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求めた事案である。 原判決は,上記請求項1の発明の構成要件D「該仮固定が機械的圧着プレスによるものであり」について,上記特許権に係る明細書の記載に,出願過程に,「,おいて控訴人がした説明内容を参酌すれば2個以上の対をなす工具を用い工具間に材料 要件D「該仮固定が機械的圧着プレスによるものであり」について,上記特許権に係る明細書の記載に,出願過程に,「,おいて控訴人がした説明内容を参酌すれば2個以上の対をなす工具を用い工具間に材料を置いて工具を相対運動させ,塑性変形によって材料に所望の形状を与えることを主たる手段として携帯状態と装着状態では安定してしっ」,「かりと固定されているが,取り替え時には,指で容易に取り外し可能な取り付け状態」とすることを意味するものと解釈されるところ,(省略)したがって,上記請求項1及びこれを引用する上記請求項3の各発明の上記構成要件を充足しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。 前提事実,争点,及び,争点に関する当事者の主張次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1ないし3(原判決2頁7行~32頁6行)記載のとおりであるから,。 ,,。 これを引用するなお原判決の略語表示は当審においてもそのまま用いる(1)当審における控訴人の主張- 3 -ア構成要件Dの「機械的圧着プレス」及び「仮固定」の意義について「(ア)構成要件Dにおける「機械的圧着プレス」とは,原審で主張したとおり2以上の対をなす工具を用い工具間に材料を置いて工具を相対,「,的に圧着運動させ,塑性変形によって材料に所望の形状を与える機械的なプレス」を指す。そして,機械的な圧着プレスは,仮固定手段として用いられさえすれば足りるのであって,それ以外の加熱等の固定手段が作用することを排除すると解すべきではない。 (省略)(イ)(省略)イ被告製品の構成要件Dの充足性について(ア)控訴人において,被告製品について,上層部と下層部の錘による剥離実験を実施したと 作用することを排除すると解すべきではない。 (省略)(イ)(省略)イ被告製品の構成要件Dの充足性について(ア)控訴人において,被告製品について,上層部と下層部の錘による剥離実験を実施したところ,両者の積層は500gの錘荷重に対し平均13分以上固定されており,被告製品は,下層部(0.6g)800枚の重さを保持できる固定力があることが明らかとなった甲25被告製()。 品を袋から取り出して下着に装着するまで(2分以内)の操作中に,上層部と下層部との積層を安定してしっかり固定するためには,下層部の重さの10倍の6gもあれば十分であり,着用後の固定力がほとんど不要であることは上記のとおりであるから,被告製品の固定力は,実際に必要な固定力を大きく上回るものであって,500g荷重の固定力中,494g荷重が過剰であるということができる。 (省略)(イ)(省略)(ウ)以上のとおりであるから,被告製品は,構成要件Dを充足する。 (2)当審における被控訴人の反論ア構成要件Dの「機械的圧着プレス」及び「仮固定」の意義について(ア)(省略)- 4 -(イ)(省略)イ被告製品の構成要件Dの充足性について(ア)(省略)なお,控訴人は,製品を袋から取り出して下着に装着するまでの2分間程度重量06gの下層部を保持できれば仮固定として十分で,. ,「」あるとの前提に基づいて,新たな実験結果(甲25)に基づく主張を展開しているが,そもそも上記前提自体が根拠を欠くものであり,控訴人の主張は失当である。 (イ)以上のとおりであり,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,被告製品は構成要件Dを充足せず,控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正付加するほかは,原判決の「事実 は,構成要件Dを充足しない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,被告製品は構成要件Dを充足せず,控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の訂正(1)原判決35頁17行目の主たる手段してを主たる手段としてと改「」「」める。 (2)原判決35頁20行目以下36頁19行目までを次のとおり改める。 「イ(ア)控訴人は,①着用使用中において固定状態を維持するための結合力の下限は殆ど零であり,②携帯状態(包装状態の2層シートを持ち運ぶ際)ではごく小さい結合力であっても上層部と下層部とがずれることはなく,また,③商品の包装を解いてから着用使用するまでの間は,1枚の吸収シートの重量を支える程度の極めて低い結合力があれば十分であることに照らすならば,結合力の大部分が機械的圧着プレス以外による場合であっても,構成要件Dにおける「機械的圧着プレスによる」場合であると解釈すべきである旨主張する。 - 5 -(イ)しかし,控訴人の同主張は採用できない。すなわち,控訴人は,熱エンボスにより仮固定を行っている刊行物2に対し,本件特許発明が進歩性を有することを明らかにするために「機械的圧着」を「機,,械的圧着プレスに限定するとともに本特許発明の機械的圧着プレ」,「スは,熱を用いなくとも仮固定が可能な程度の強力な圧着プレスであります単に機械的圧着プレスで行い加熱手段がなくとも仮固定。」,「,操作が簡単にかつ正確に実施できる利点があります等の意見を述べ。」たが(前記1(1)ウ) これらの出願過程における意見の内容に照らすな,らば,構成要件Dにおける「機械的圧着プレスによる」 ,操作が簡単にかつ正確に実施できる利点があります等の意見を述べ。」たが(前記1(1)ウ) これらの出願過程における意見の内容に照らすな,らば,構成要件Dにおける「機械的圧着プレスによる」の意義は,強力な圧着プレスの方法を採用し,その方法により必要な固定力が得られている場合のみを指すと解すべきである。したがって,控訴人の主張は採用できない。 (ウ)さらに前記(1)イに説示のとおりエンボス加工は上下の型間,,,に板状の材料を挟み加圧するものであり,弁論の全趣旨によれば,エンボス加工における加圧にも大小の幅があることが認められ,これらの事実によれば,熱を用いないエンボス加工の方法によって複数の複,,合吸収シートを仮固定した場合であってもその結合力は零ではなく控訴人が十分な結合力であると主張する程度の結合力を具備する場合も生じ得るというべきである。そうすると,仮に,控訴人が,本訴において,構成要件Dにおける「機械的圧着プレス」の意味は「熱エンボス加工の一態様のみを排除する」との意味に理解すべきであるとともに,控訴人が十分であると主張する程度の結合力を超える結合力は単なる付加にすぎないと主張するのであれば,同主張は,熱エンボスが本件特許発明1の技術的範囲に含まれることを意味するから,本件特許には,無効事由が存在することを自認することになるというべきである。 - 6 -(エ)よって,控訴人の上記主張は,採用することができない」。 (3)原判決37頁24行目の後に次のとおり加える。 (2)物の発明に係る特許請求の範囲の記載中の一部に発明の対象とな「「」る物の製造方法が付加して記載されているときに,当該発明の対象となる物を,その構造や性質により直截的に特定することが不可能ないし困難であるなど,製造方法 の記載中の一部に発明の対象とな「「」る物の製造方法が付加して記載されているときに,当該発明の対象となる物を,その構造や性質により直截的に特定することが不可能ないし困難であるなど,製造方法に係る構成を規定せざるを得ない合理的な理由が存在する場合はさておき,そのような特段の事情の認められない場合においては,当該発明の技術的範囲は,製造方法に係る構成要件を除外して確定されるべきではなく,製造方法に係る構成要件をも含めた特許請求の範囲の記載の全体に基づいて確定されるべきである。 これを本件についてみるに本件特許発明は多層生理用品という,,「」「物」の発明であるところ,その特許請求の範囲の記載中には,製造方法の一部を規定するとも理解される構成要件が含まれているが,前記1(1)ないし(3)において説示したところに照らせば,本件特許発明において多層生理用品という発明の対象たる物を構造や性質により直截,「」,的に特定することが不可能又は困難であり,製造方法によって物を特定することに合理的な理由が存在するような特段の事情を認めることはできないから本件特許発明の技術的範囲は該仮固定が機械的プレスに,,「よるものである」との構成要件を含めた特許請求の範囲の記載の全体に基づいて解釈されるのが相当である(本件においては,控訴人及び被控訴人ともにこの点を前提として主張をしている。 。)なお,本件において,仮に機械的圧着プレスとは異なる方法により仮固定を行っているものであっても物としての構成が客観的に同一で,「」あれば,構成要件Dを充足すると解する余地があるとしても,被告製品の構成が機械的圧着プレスを主たる手段として仮固定を行っているものと客観的に同一であることを認めるに足りる証拠は,本件記録を検討し- 7 - 成要件Dを充足すると解する余地があるとしても,被告製品の構成が機械的圧着プレスを主たる手段として仮固定を行っているものと客観的に同一であることを認めるに足りる証拠は,本件記録を検討し- 7 -ても,これを見いだすことができない。 (4)原判決37頁25行目の「(2)」を「(3)」と改める。 当審における控訴人の主張に対する判断(1)構成要件Dの「機械的圧着プレス」及び「仮固定」の意義についてア控訴人は,本件特許権の審査経過及び訂正審判手続において,構成要件Dの「機械的圧着プレス」に含まれない場合について意見を述べたが,それはエンボス加工のすべてではなく,乙5,8記載の熱エンボス加工だけであるから,エンボス加工のすべてが「機械的圧着プレス」から排除されると解すべきではないと主張する。 (省略)イ(省略)(2)被告製品の構成要件Dの充足性についてア(省略)イ(省略)ウ(省略)エ以上のとおり,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 結論 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求を棄却すべきものとした,,,原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明- 8 -裁判官大鷹一郎裁判官嶋末和秀
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