平成25(ネ)10001 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成25年11月27日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成22(ワ)40006
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判決文本文23,028 文字)

平成25年11月27日判決言渡 平成25年(ネ)第10001号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第40006号) 口頭弁論終結日平成25年10月7日判決 控訴人 大王製紙株式会社 旧商号:ダイオーペーパーコンバーティング株式会社 控訴人 エリエールプロダクト株式会社 上記両名訴訟代理人弁護士 村林隆一 井上裕史 田上洋平 佐合俊彦 上記両名訴訟代理人弁理士 永井義久 上記両名補佐人弁理士 和泉久志 被控訴人 ユニ・チャーム株式会社 訴訟代理人弁護士 近藤惠嗣 萩尾保繁 山口健司 薄葉健司 訴訟代理人弁理士 古賀哲次 補佐人弁理士 蛯谷厚志 森本有一 小野田浩之 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原 文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ1億円及びこれに対する平成22年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「使い捨て紙おむつ」とする特許権(特許第4198313号)を有する控訴人らが,被控訴人が製造・販売する紙おむつは同特許の特許請求の範囲の請求項1及び3記載の各発明の技術的範囲に属しており,その紙おむつの製造・販売は上記特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,不法行為に基づき,損害賠償を請求した事案である。原審は,上記紙おむつは,上記各発明の技術的範囲に属しないとして,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らが,上記の裁判を求めて控訴した。 2 前提となる事実,争点及び争点についての当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引- 3 -用する(以下,原判決を引用する場合は,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と,それぞれ読み替える。)。 (1) 原判決6頁2行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「ア文言侵害の成否(争点2-1)イ均等侵害の成否(争点2-2)」(2) 原判決6頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「(5) 時機に後れた攻撃方法か否か等(争点5 文言侵害の成否(争点2-1)イ均等侵害の成否(争点2-2)」(2) 原判決6頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「(5) 時機に後れた攻撃方法か否か等(争点5)」(3) 原判決6頁22行目の「争点2(各被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか否か)について」を「争点2-1(文言侵害の成否)」と改める。 (4) 原判決6頁26行目冒頭から7頁6行目の「存在せず」までを次のとおり改める。 「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域である。 ところで,本件明細書の【0010】には,本件発明の作用効果として,「さらに,請求項1 記載の発明は,縦方向に沿って腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている。吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すので,伸縮部材による収縮力の伝達により変形したり皺を生じたりすることが少ない。その結果,製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。」との記載がある(注・下線は控訴人らによる。この項において以下同じ)。すなわち,構成要件Cで,腰下部の伸縮部材を「中央部を除く左右脇部に配置」するのは,前記作用効果を求めるためであり,とすれば,「中央部を除く左右脇部に配置」とは,弾性伸縮部材が,「吸収コア13 が位置する中央- 4 -部には存在しない」ことを意味することは,当業者に明白である。 このことは,本件発明の実施例を説明した【0050】の記載からも明らかである。すなわち,本件明細書の【0050】には,「図12の(F)に別の実施の形態として示すように,ウエス 当業者に明白である。 このことは,本件発明の実施例を説明した【0050】の記載からも明らかである。すなわち,本件明細書の【0050】には,「図12の(F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なども採用できる。このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。腰下部伸縮部材21F,21B,または股部伸縮部材23を,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する場合において,腰下部伸縮部材21F,21B端部,または股部伸縮部材23の端部が吸収コア13の側縁部に重なる場合と,吸収コア13の側縁に達しないで離間する場合との両者を含む。」との説明があり,「中央部を除く」との意味が,正確には「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味であることを明確にしている。 これに対し,本件明細書の【0032】には「図3の符号において,『縦方向』とは,腹側と背側を結ぶ方向を意味し,『周方向』とは前記縦方向と直交する方向を意味する。…また,『中央部』とは,製品の中央線を含む側部を除く中間領域を意味する。『脇部』とは,胴周り部Tにおける両側部を意味する。」との記載がある。しかしながら,【0032】は,紙おむつの各部の名称を,図3を用いて一般的に説明したものにすぎず,紙おむつの周方向が,概念上「中央部」と「脇部」の二つの領域に区分できることを説明したものであるが,紙おむつの縦方向のどこまでが「中央部」であるかを規定したものではない。よって,「腰下部の中央部」との用語が,周方向の中央を意味するとしても,縦方向において,腰下部のう ことを説明したものであるが,紙おむつの縦方向のどこまでが「中央部」であるかを規定したものではない。よって,「腰下部の中央部」との用語が,周方向の中央を意味するとしても,縦方向において,腰下部のうちどの部分を意味するのかは,本件発明1の構成要件Cに関する- 5 -具体的な説明(【0050】)によるべきである。 よって,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味であることは,明らかである。 そして,各被控訴人製品のフィットギャザー221 の一部である221-1は,腰下部で周方向に連続して配置されているものの,配置されている箇所は吸収コア上ではなく,吸収コアを避けて配置されており,「吸収コア13が位置する中央部には存在しない」のである。また」(5) 原判決7頁9行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「a 「伸張応力」「太さ」について前記(ア)のとおり,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であり,「腰下部」は,吸収主体11の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域であるから,各被控訴人製品における腰下部に配置された伸縮部材はフィットギャザー 221 であり,ウエスト部に配置された伸縮部材はウエストギャザー220である。 そして,各被控訴人製品のフィットギャザー221 の伸張応力がウエストギャザー220 より小さいこと,及び,フィットギャザー221 の太さが620dtex 以下であることについては,当事者間に争いはない。 したがって,各被控訴人製品は,いずれも構成要件Dの「伸張応力…は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力…よりも小さく, 0dtex 以下であることについては,当事者間に争いはない。 したがって,各被控訴人製品は,いずれも構成要件Dの「伸張応力…は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力…よりも小さく,かつ太さが620dtex 以下で」を充足する。」(6) 原判決7頁10行目冒頭の「a」を「b」と改める。 (7) 原判決7頁17行目冒頭から同8頁8行目末尾までを次のとおり改める。 「 そして,各被控訴人製品の腰下部に配置された伸縮部材(フィットギャ- 6 -ザー221)の断面外径は,ウエスト部に配置された伸縮部材(ウエストギャザー220)の断面外径よりも小さい。」(8) 原判決8頁12行目冒頭の「b」を「c」と改める。 (9) 原判決8頁14行目冒頭から同9頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件発明1における「伸長率」は,JIS規格のとおり,伸びた長さを元の長さで割った値を意味するものであり,自然長のときは伸長率0%であって,「伸長率が150~350%」は,自然長の2.5倍ないし4. 5倍を意味するとの被控訴人の主張を認める。」(10) 原判決9頁14行目の「100%」を「0%」と改める。 (11) 原判決9頁25行目の「1.5倍ないし3.5倍」を「2.5倍ないし4.5倍」と改める。 (12) 原判決10頁22行目冒頭から同頁末尾までを次のとおり改める。 「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であり,「腰下部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域である。」(13) 原判決11頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「 控訴人 」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域である。」(13) 原判決11頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「 控訴人らは,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味であると主張する。同主張は,腰下部のうち吸収コアの存在しない上端部を除く部分を「中央部」と呼ぶものであり,「中央部」という用語を横方向ではなく,縦方向の「中央部」と解釈しているものである。 しかし,控訴人らは,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であると主張しており,これは,控訴人らが,構成要件Cにおける縦方向の- 7 -領域である「腰下部」が,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域であることを認めたということである。そうであれば,構成要件Cにおける「腰下部」とは上記の意味の領域であるから,「腰下部の中央部」の縦方向の領域については,特許請求の範囲の記載から一義的に明確であって,控訴人らの主張するような限定解釈の余地はない。 また,構成要件Cの文言によれば,「前記腰下部の前記伸縮部材」は,「(中央部を除く)左右脇部に配置」されていなければならない。本件明細書には,「脇部」との用語について,「『脇部』とは,胴周り部Tにおける両側部を意味する。」(【0032】)と記載されており,紙おむつの周方向のみならず縦方向の範囲も含めて明確に定義されている。控訴人らの上記主張は,構成要件Cの要件である「左右脇部に配置され」との文言と整合しない。」 3 当審における当事者の主張(1) 争点2-2(均等侵害の成否)について れている。控訴人らの上記主張は,構成要件Cの要件である「左右脇部に配置され」との文言と整合しない。」 3 当審における当事者の主張(1) 争点2-2(均等侵害の成否)についてア控訴人らの主張仮に,各被控訴人製品が,そのフィットギャザー221 の一部(221-1)が,腰下部で周方向に連続して配置されていることにより,本件発明1の構成要件Cを文言解釈上充足しないとしても,各被控訴人製品は,次のとおり,いわゆる均等の5要件を充たしているから,本件発明1と均等であり,その技術的範囲に属するものである。 (ア) 非本質的部分(第1要件)本件明細書の【0010】にもあるように,本件発明1の構成要件Cにおいて,腰下部の伸縮部材を,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置するのは,半剛性の吸収コアを伸縮部材の収縮力により変形させたり皺を生じさせたりすることを防止し,「その結果,製品として目立つ中央- 8 -部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。」との作用効果を奏するためである。よって,当該作用効果に関連する本件発明1の本質的な部分は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材を配置しない点にある。 各被控訴人製品は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材を配置しておらず,伸縮部材(フィットギャザー221-1)は,吸収コアから外れた吸収主体上に周方向に連続して配置されているにすぎない。 したがって,本件発明1と各被控訴人製品との異なる部分(フィットギャザー221-1 が,腰下部で周方向に連続して配置されていること)は,本件発明1の本質的部分ではない。 (イ) 置換可能性(第2要件)従来製品において,腰下部に伸縮部材が配置されている場合,当該製品の吸収コアが変形し,大きな皺が生じることか されていること)は,本件発明1の本質的部分ではない。 (イ) 置換可能性(第2要件)従来製品において,腰下部に伸縮部材が配置されている場合,当該製品の吸収コアが変形し,大きな皺が生じることから,キャラクターなどのデザインは,伸縮部材の配置がない後身頃などに印刷されていた。 また,伸縮部材が配置されている箇所にキャラクターなどのデザインを印刷した製品なども存在したが,伸縮部材の伸長力により発生した皺の為,見栄えは必ずしも良いものではなかった。 これに対し,本件発明1の実施品は,腰下部の伸縮部材が,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されており,吸収コア上が平面になっており,印刷されたキャラクターも明確に判別できる。また,各被控訴人製品でも同様に吸収コア上が平面になっており,印刷されたキャラクターは明確に判別できる。このように,各被控訴人製品は,本件発明1の「製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。」との作用効果を奏している。 したがって,本件発明1の構成要件Cの一部を各被控訴人製品の上記異なる部分に置き換えても,本件発明1と同一の作用効果を奏するた- 9 -め,置換可能性がある。 (ウ) 置換容易性(第3要件)各被控訴人製品製造当時,製造上の理由から,構成要件Cの「腰下部の中央部を除く左右脇部に配置」することに代えて,吸収コアを避けた吸収主体の一部に伸縮部材を配置することは,当業者が容易に想到する構成であるから,各被控訴人製品との前記異なる部分については置換容易性がある。 (エ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)少なくとも本件発明1の構成要件Dは,本件特許の出願前の公知技術にはない独創的な構成であるから,構成要件Dを備える各被控訴人製品の構成は,本件特許 (エ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)少なくとも本件発明1の構成要件Dは,本件特許の出願前の公知技術にはない独創的な構成であるから,構成要件Dを備える各被控訴人製品の構成は,本件特許の出願前の公知技術から,当業者が容易に想到できたものではない。 (オ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)本件特許の出願審査の過程で,各被控訴人製品の構成をその技術的範囲から除外した等の特段の事情はない。 被控訴人は,出願当初明細書には,各被控訴人製品のように,伸縮部材が,腰下部の一部において吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,腰下部の残部においては中央部に存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定されるという構成をも含めた開示・示唆があったにもかかわらず,これを意識的に除外したものであると主張する。 しかしながら,構成要件Cには,「腰下部の全領域において中央部を除く」と記載されているわけではなく,また,「左右脇部にのみ」とも記載されているわけではないのであるから,出願経過において,意識的に「吸収コア13が位置しない中央部にも伸縮部材を存在させない」との構成を記載したものではないから,意識的除外には該当しない。 - 10 -イ被控訴人の主張各被控訴人製品は,以下のとおり少なくとも均等論の第1,第4及び第5要件を充足しないから,均等侵害は成立しない。 (ア) 非本質的部分(第1要件)について控訴人らは,フィットギャザー(221-1)が腰下部で周方向に連続して配置されている点で異なるとしても,同部分は,本件発明1の本質的部分ではないと主張する。しかし,同主張は,特許請求の範囲に記載されたどの構成とフィットギャザー(221-1)とを対比しているのかが明瞭ではない。 仮に,控 としても,同部分は,本件発明1の本質的部分ではないと主張する。しかし,同主張は,特許請求の範囲に記載されたどの構成とフィットギャザー(221-1)とを対比しているのかが明瞭ではない。 仮に,控訴人らが,フィットギャザー(221-1)は腰下部にあっても,吸収コアが存在しない部分はウエスト部と異なるところがないから,フィットギャザー(221-1)が腰下部にあることは本件発明1の本質的部分に関するものではないと主張するのであれば,同主張は,「ウエスト部は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域である」との控訴人らの主張を裏口から覆すことにほかならず,失当である。 また,仮に,控訴人らが,フィットギャザー(221-1)は吸収コアが存在しない部分にあるから,「腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」た伸縮部材と均等であると主張するのであれば,同主張も明らかに本件発明1の本質と矛盾している。本件発明1の本質の少なくとも一部は,腰下部の中央部から伸縮部材を除くことによって中央部に皺を生じさせないことにある。したがって,中央部に伸縮部材が存在しても均等であるといえる場合があるとすれば,控訴人らの主張とは正反対に,伸縮部材が板のような剛性のある部材に固定されているために伸縮性を全く発揮できないような場合に限られるはずだからである。 いずれにせよ,本件明細書の【0010】の「製品として目立つ中央- 11 -部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。」との作用効果の観点からすれば,吸収コア上に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することよりも,吸収コア上ではない箇所に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することの方がより技術的に重要であ すれば,吸収コア上に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することよりも,吸収コア上ではない箇所に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することの方がより技術的に重要である。また,同じく【0010】の記載の「さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央部)であるところ,この形態においては中央部を除く左右脇部においてのみ伸縮部材が存在するので,製品の見栄えに優れる。」という作用効果の観点からは,伸縮部材が吸収コアの上に配置されているか否かは技術的に無関係であり,伸縮部材が中央部の全体において中央部を除く左右脇部に配置される必要があること等を考慮すれば,「縦方向に沿って腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有し」との構成と,「腰下部の伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている」との構成の双方とも本件各発明の本質的部分であると解される。さらに,後記(ウ)で述べる本件特許の出願経過を考慮すれば,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との点は,少なくとも本件各発明の本質的部分であると解される。 よって,周方向に連続して配置されるフィットギャザー(221-1)の一部が腰下部に配置されていることから,「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」(構成要件C)との点で本件各発明と相違する各被控訴人製品は,本件各発明の本質的部分において相違するものであるから,均等論の第1要件を充足しない。 (イ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)について本件各発明が,花王発明に基づき進歩性欠如の無効理由を有することは,前記(原判決15頁下から6行目から同19頁10行目)のとおりである。 - 12 -したがって,各被控訴人製品の 件)について本件各発明が,花王発明に基づき進歩性欠如の無効理由を有することは,前記(原判決15頁下から6行目から同19頁10行目)のとおりである。 - 12 -したがって,各被控訴人製品の構成が本件各発明の技術的範囲に属するのであれば,各被控訴人製品の構成が,本件各発明の出願時における公知技術(花王発明)と同一又は容易に推考できたものであることは明らかである。 よって,均等論の第4要件も充足しない。 (ウ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)について構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との要件は,出願当初明細書の特許請求の範囲の記載には存在せず,平成20年6月19日付けの拒絶理由を回避するため,平成20年8月26日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)によって追加されたものである。 当該手続補正書と同日付けで提出された意見書において,出願人は,「構成Cは,段落0043に依拠」する補正であると説明している。出願当初明細書の【0043】の記載とは,【0040】から始まる一連の文章の一部であることは明らかであるから,図4に関する説明である。そして,図4においては,腰下部Uの吸収コアが存在する部分のみならず,吸収コアが存在しない吸収主体部分も含めて,腰下部Uの全領域において,中央部を除く左右脇部に腰下部伸縮部材21F,21Bが配設されている様子が図示されていることから,構成要件Cの要件の追加が,このような図4の形態を意図して追加されたものであることが明らかである。 また,出願当初明細書には,現在の明細書(本件明細書)の記載と同じく,「上記の第1~第4の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ図12の(A)~(D)に示すとおりとなる。これらを 明らかである。 また,出願当初明細書には,現在の明細書(本件明細書)の記載と同じく,「上記の第1~第4の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ図12の(A)~(D)に示すとおりとなる。これらを比較して推測できるように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固- 13 -定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。」,「このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。」(いずれも【0050】)との記載がある。そうすると,各被控訴人製品のように,腰下部の一部は吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定という構成をも含めた開示・示唆があったといえ,また,伸縮部材の配設形態を特許請求の範囲の記載においてどのように特定するかも出願人の任意であったことが明らかである。そのような状況の中,出願人は,上記のとおり,構成要件Cを追加する本件補正を行ったのである。 以上の出願経過に鑑みれば,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との形態以外の伸縮部材の配設形態,すなわち,各被控訴人製品のように吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定という構成を含むその他の伸縮部材の配設形態の構成は,本件補正によって,本件各発明の技術的範囲から意識的に除外されたことが客観的・外形的に明らかである。 以上によれば,本件については,意識的除外等の特段の事情があり,均等を認めることはできない。 ( によって,本件各発明の技術的範囲から意識的に除外されたことが客観的・外形的に明らかである。 以上によれば,本件については,意識的除外等の特段の事情があり,均等を認めることはできない。 (2) 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)についてア被控訴人の主張(ア) 控訴審における控訴人らの主張は,いずれも時機に遅れた攻撃方法の提出である。 控訴人らは,「ウエスト部は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域である」- 14 -との原判決の認定を前提とした上で,①構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味であるとの新たな文言侵害の主張,及び②各被控訴人製品について均等侵害が成立するとの新たな主張を,控訴審になって初めて提出した(以下,①の主張と②の主張を併せて「本件攻撃方法」という。)。 しかしながら,控訴人らは,原審においては,「ウエスト部は,胴回り部のうちウエスト開口縁側の領域であり,かつ,吸収コア13の長手方向端部と重ならない部分と解するべきである。」として,原判決の上記認定とは異なる「ウエスト部」の解釈を一貫して主張し,この解釈を前提として,各被控訴人製品が構成要件Dの「前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく」との要件を充足することについての主張に専心してきた。 これに対して,被控訴人も,原審においては,「ウエスト部」に関する控訴人らの解釈を前提とした構成要件D非充足の主張が認められることを前提に,「ウエスト部」の解釈に関する控訴人らの主張を争わないとした上で,専ら,各被控訴人製品が構成要件Dの「前記腰下部に配置さ る控訴人らの解釈を前提とした構成要件D非充足の主張が認められることを前提に,「ウエスト部」の解釈に関する控訴人らの主張を争わないとした上で,専ら,各被控訴人製品が構成要件Dの「前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく」との要件を充足しないとの主張及びこれに対する控訴人らの反論への再反論に注力するとともに,予備的に,原判決が採用した構成要件C非充足の理由と同様の主張も適時に提出していた。 したがって,控訴人らは,原審において,構成要件Cについて,原判決が採用した「ウエスト部」の解釈を前提として,本件攻撃方法と同様の主張を提出する機会は十二分にあった。のみならず,控訴人らは,原審が開始されるよりも前から本件攻撃方法と同様の主張を検討していた- 15 -(乙61参照)。したがって,控訴人らが時機に後れて本件攻撃方法を提出したことにつき「故意又は重大な過失」があったことは明らかである。 また,本件攻撃方法は,原審における控訴人らの主張と重なるところが全くないものであり,特に均等論については五つもの各要件の充足性について当事者間で新たに攻撃防御を重ねなければならないことになるから,「訴訟の完結を遅延させる」ものであることは明らかである。 よって,被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法につき,民事訴訟法157条1項に基づく却下を申し立てる。 (イ) 控訴審における控訴人らの主張は,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し許されないこと被控訴人は,原審において,「ウエスト部」の解釈に関する原審における控訴人らの主張を条件付きで認めた上で,これを前提とした防御に多大な負担を強いられてきたが,それが奏功して,被控訴人は,原審において,構 人は,原審において,「ウエスト部」の解釈に関する原審における控訴人らの主張を条件付きで認めた上で,これを前提とした防御に多大な負担を強いられてきたが,それが奏功して,被控訴人は,原審において,構成要件C非充足の主位的判断,及び原審における控訴人らの「ウエスト部」の解釈に関する主張を前提とした構成要件D非充足の予備的判断を勝ち取った。 したがって,「ウエスト部」の解釈に関して,原審における控訴人らの主張と明らかに矛盾する新たな主張を許すことは,原審において,控訴人らの「ウエスト部」の解釈を前提とした主張に誠実に対応してきた被控訴人の,もはや控訴人らが「ウエスト部」ないし構成要件Cについて別異の主張をすることはないだろうという保護されるべき合理的な期待に反するものであるから,控訴人らが本件攻撃方法を主張することは,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し,許されないというべきである。 イ控訴人らの主張- 16 -(ア) 時機に後れた攻撃方法であるとの主張について訴訟において事実関係に争いがある場合に,当事者の一方が,相手方の主張を認めて争点を減らし,審理を促進させることは一般的になされることであり,「審理の完結を遅延させる」ものに該当しないから,被控訴人の主張には理由がない。 (イ) 禁反言の法理ないし訴訟上の信義則違反であるとの主張について同一訴訟手続内において,控訴審において原審の認定を争わないとしただけで,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するとするいわれはない。まして,原審は控訴人らの請求を棄却しているのであるから,原審の認定を争わないことにより,被控訴人の利益を損なうおそれもない。よって,控訴人らが本件攻撃方法を主張することが,訴訟上の信義則違反等の法理で制限される理由はない。 また,控訴人ら文言侵害に関 審の認定を争わないことにより,被控訴人の利益を損なうおそれもない。よって,控訴人らが本件攻撃方法を主張することが,訴訟上の信義則違反等の法理で制限される理由はない。 また,控訴人ら文言侵害に関する新主張及び均等侵害の主張は,控訴理由書で主張されているものであり,適時においてなされているから,控訴審の「審理の完結を遅延させる」ものではなく,被控訴人の主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,各被控訴人製品は,本件各発明の技術的範囲に属しないから,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 1 争点2-1(文言侵害の成否)について(1) 本件発明1の構成要件Cについてア本件明細書の記載等(ア) 本件明細書(甲2,3)の発明の詳細な説明には,次の記載がある。 「【0010】- 17 -(作用効果)・・・請求項1記載の発明は,縦方向に沿って腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている。 吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すので,伸縮部材による収縮力の伝達により変形したり皺を生じたりすることが少ない。 その結果,製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。製品の中央部には,キャラクターなどのデザインを施すが,この部分が変形したり皺を生じたりすることがないためにそのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。 また,製品の周方向の締め付け力は,主に胴周り部の脇部に作用し,肌との摩擦力により吸収コアの中央に向かうに従って減衰されるので,吸収コアのほぼ全体領域においては周方向の締め付け力が小さいものとなり,お腹を過度に圧迫することがない。 胴周り部の脇部に作用し,肌との摩擦力により吸収コアの中央に向かうに従って減衰されるので,吸収コアのほぼ全体領域においては周方向の締め付け力が小さいものとなり,お腹を過度に圧迫することがない。 さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央部)であるところ,この形態においては中央部を除く左右脇部においてのみ伸縮部材が存在するので,製品の見栄えに優れる。」「【0032】図3の符号において,「縦方向」とは,腹側と背側を結ぶ方向を意味し,「周方向」とは前記縦方向と直交する方向を意味する。「ウエスト開口縁」とはウエスト開口部WOの縁を意味し,「レッグ開口縁」とはレッグ開口部LOの縁を意味する。「レッグ開口始端」とはレッグ開口部LOのレッグ開口縁と接合部30とが交差する位置を意味し,レッグ開口縁の始まり個所の意味である。「胴周り部」Tとは,ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の全体領域を意味する。胴周り部Tは,概念的に「ウエスト部」Wと「腰下部」Uとに分けることができ- 18 -る。これらの縦方向の長さは,製品のサイズによって異なるが,ウエスト部Wは15~40mm,腰下部Uは65~120mmである。「股部」Lとは,レッグ開口部LOを形成する長さ範囲の全体領域を意味する。また,「中央部」とは,製品の中央線を含む側部を除く中間領域を意味する。「脇部」とは,胴周り部Tにおける両側部を意味する。」「【0043】そしてかかる構成のもと,本発明に従って前身頃F及び後身頃Bのウエスト部Wから股部Lまでの間の領域たる腰下部Uにおける,前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に,周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。そして,腰下部伸縮部材21F,21Bはそれぞれ,前身頃F及び後身頃Bにおいて,一方側の接合部3 ,前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に,周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。そして,腰下部伸縮部材21F,21Bはそれぞれ,前身頃F及び後身頃Bにおいて,一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体を除く製品の左右脇部に設けられている。」「【0050】(パンツ型使い捨ておむつの各形態についての補足説明及び他の実施の形態)上記の第1~第3の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ図12の(A)~(C)に示すとおりとなる。これらを比較して推測できるように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部の(ママ)おいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。また,股部伸縮部材23の配設の有無についても選択可能である。さらに,前身頃Fと後身頃Bとの間で伸縮部材の配設形態を相違させることもできる。したがって,図12の(E)に他の実施の形態として示すように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21- 19 -F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設けない形態や,図12の(F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部の(ママ)おいてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なども採用できる。このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。 腰下部伸縮部材21F,21B,または股部伸縮部材23を,吸 ママ)おいてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なども採用できる。このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。 腰下部伸縮部材21F,21B,または股部伸縮部材23を,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部の(ママ)おいてのみ配置固定する場合において,腰下部伸縮部材21F,21B端部,または股部伸縮部材23の端部が吸収コア13の側縁部に重なる場合と,吸収コア13の側縁に達しないで離間する場合との両者を含む。」「【0056】他方で,製品の中央部(吸収コアのほぼ全体領域)に,図14に示すように,不透液性バックシート12の裏面側にキャラクターなどのデザインをたとえば印刷により施すことができる。このデザイン部分は,ある程度の剛性を有する吸収コア13を有し,かつ本発明にしたがって外形シート1が変形したり皺を生じたりすることがないために,そのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。また,図14に示すように,製品の正面と裏面とに対応して,当該キャラクターの正面と背面とを施すと,誰でも一目で前後を判別でき,おむつ換えが楽しくなり,着用者も喜ぶものとなる。デザインを施したデザインデザイン(ママ)シートを外形シート間に介在させることでもよい。また,外形シート1にデザイン印刷することもできる。」(イ) また,図4(第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図)及び図9(第3の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図)は,吸- 20 -収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近をもってウエスト部Wと腰下部Uとを区分し,ウエスト部Wにウエスト伸縮部材20F,20Bを配置し,腰下部Uに腰下部伸縮部材21F,21Bを配置していることを図示している。 イ 「ウエスト部」と「腰下 もってウエスト部Wと腰下部Uとを区分し,ウエスト部Wにウエスト伸縮部材20F,20Bを配置し,腰下部Uに腰下部伸縮部材21F,21Bを配置していることを図示している。 イ 「ウエスト部」と「腰下部」の意味について上記ア認定の本件明細書及び図面の記載によれば,本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であり,「腰下部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域であると認められる(この点は,控訴人らも争わないところである。)。 ウ 「腰下部の中央部」の意味について上記ア認定の本件明細書及び図面の記載よれば,本件発明1における「腰下部の中央部」とは,製品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間領域を意味するものと認められる(【0032】)。 控訴人らは,「腰下部の中央部」との用語が周方向の中央を意味するとしても,縦方向において腰下部のうちどの部分を意味するのかは,本件明細書【0050】の説明によるべきであるとして,構成要件Cの「腰下部の中央部を除く」とは「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」の意味であると主張する。控訴人らの主張は,「腰下部の中央部」とは,製品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在する領域だけを意味するというものと解される。 なるほど,本件明細書の【0050】には「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択- 21 -的に採ることができる」との記載があり,また,【 断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択- 21 -的に採ることができる」との記載があり,また,【0056】には「製品の中央部(吸収コアのほぼ全体領域)に,図14に示すように,・・・キャラクターなどのデザインをたとえば印刷により施すことができる」との記載があって,「腰下部の中央部」に吸収コア13が位置すること及び「腰下部の中央部」が吸収コアのほぼ全体領域であることが記載されている。 しかし,これらの記載は,吸収コア13が位置する部分のみ,あるいは吸収コアの全体領域のみが,「腰下部の中央部」であることを示すものではない。 また,本件明細書の【0050】には,「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,…吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態」,「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定し」などの記載がある。これらの記載によれば,「腰下部の中央部」は,腰下部(すなわち胴周り部)の縦方向の範囲全体において,「左右脇部」と相対立する概念して位置付けられていることが認められる。 さらに,後記2(2)のとおり,構成要件Cは,平成20年8月26日付けの本件補正によって付加された要件であり,控訴人らの同日付けの意見書において「請求項1発明の・・・構成Cは,段落0043に依拠し」と記載されているところ,本件補正における構成要件Cの根拠とされた出願当初明細書の【0043】(本件明細書の【0043】)において説明されている図4には,腰下部Uの吸収コアが存在する領域のみな し」と記載されているところ,本件補正における構成要件Cの根拠とされた出願当初明細書の【0043】(本件明細書の【0043】)において説明されている図4には,腰下部Uの吸収コアが存在する領域のみならず,吸収コアが存在しない吸収主体の領域を含めて,腰下部Uの全領域において,左右脇部にのみ腰下部伸縮部材21F,21Bが配設されている様子が図- 22 -示されている。すなわち,「腰下部の中央部」が,製品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在する領域だけを意味するという控訴人らの上記主張は,出願経過における控訴人ら自身の上記意見書における説明及び本件明細書の記載と上記図4とも矛盾するものである。 以上によれば,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」における「腰下部の中央部」を,吸収コアの位置する中央部のみに限定することはできず,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 エ各被控訴人製品が構成要件Cを充足するかについて(ア) 証拠(甲4,5,乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,各被控訴人製品1のフィットギャザー(221)の本数は,前身頃が12本ないし14本,後身頃が13本であり,そのうち周方向に連続して配置されているものの本数は,前身頃が1本ないし3本,後身頃が4本ないし5本であり,各被控訴人製品2のフィットギャザー(221)の本数は,前身頃が12本ないし14本,後身頃が11本であり,そのうち周方向に連続して配置されているものの本数は,前身頃が3本ないし4本,後身頃が3本ないし5本であること,各被控訴人製品のフィットギャザー(221)のうち周方向に連続して配置されているフィットギャザー(221-1)は,吸収コア(213)の長手方向端部よりも上部(ウエスト 頃が3本ないし5本であること,各被控訴人製品のフィットギャザー(221)のうち周方向に連続して配置されているフィットギャザー(221-1)は,吸収コア(213)の長手方向端部よりも上部(ウエスト開口縁の側)の領域に配置され,その一部が吸収主体(210)を横断して配置され,フィットギャザー(221)からフィットギャザー(221-1)を除いたフィットギャザー(221-2)は,吸収コア(213)の長手方向端部よりも下部(股部の側)の領域において,吸収コア(213)を横断することなく,中央部を除く左右脇部に配置されていることが認められる。 (イ) そうすると,各被控訴人製品の吸収主体(210)は,本件発明1の吸- 23 -収主体10に該当するから,各被控訴人製品は,フィットギャザー(221-2)が腰下部の左右脇部に配置されているものの,フィットギャザー(221-1)は,腰下部においてその周方向に連続して配置されていて,腰下部の左右脇部のみならずその中央部にも配置されているものである。したがって,各被控訴人製品は,本件発明1の「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との構成要件Cを充足しない。 (2) 本件発明2の構成要件Gについて本件発明2の構成要件Gは「前記腰下部の前記伸縮部材は,…前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,」であり,本件発明1の構成要件Cの構成を含むものであるから,前記のとおり各被控訴人製品が構成要件Cを充足しない以上,各被控訴人製品は,本件発明2の構成要件Gも充足しない。 (3) 小括よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において文言侵害は成立しない。 2 争点2-2(均等侵害の成否)について(1) 各被控訴人製品と本件各発明との相 (3) 小括よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において文言侵害は成立しない。 2 争点2-2(均等侵害の成否)について(1) 各被控訴人製品と本件各発明との相違点前記1のとおり,各被控訴人製品は,腰下部に配置されたフィットギャザー(221)の一部であるフィットギャザー(221-1)が,周方向に連続して配置されていて,本件発明1の構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との要件を文言上充足しない。各被控訴人製品は,少なくともこの点において,本件各発明と相違する。 そして,均等侵害については,最高裁判所平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁が示す五つの要件について判断する必要があるところ,本件では,事案の内容に鑑み,まず,- 24 -意識的除外等の特段の事情(第5要件)から判断する。 (2) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)についてア本件特許の出願経過の概要控訴人らは,平成12年12月8日に本件特許を出願し(特願2000-374190,甲1),平成14年6月18日に出願公開されたものの(特開2002-172134,甲2),平成20年6月19日に拒絶理由通知を受けた(乙6の1)。 控訴人らは,平成20年8月26日,手続補正書(乙6の5)を提出して本件補正をするとともに同日付けで意見書(乙6の2)を提出した。 控訴人らは,上記出願について,平成20年9月11日,特許査定を受けた(乙6の3)。 イ本件補正の内容控訴人らは,平成20年6月19日付けで,請求項1ないし8について,引用文献1(特開平8-280739号公報)及び引用文献2(特開2000-126229号公報)を理由とする拒絶理由通知 補正の内容控訴人らは,平成20年6月19日付けで,請求項1ないし8について,引用文献1(特開平8-280739号公報)及び引用文献2(特開2000-126229号公報)を理由とする拒絶理由通知を受け(乙6の1),請求項1を次のとおり補正した。 (本件補正前のもの)「【請求項1】使用状態においてウエスト開口部及び左右レッグ開口部が形成され,少なくとも前記ウエスト開口縁から前記レッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周り部において周方向に沿い,かつ縦方向に間隔を有する多数の伸縮部材を有する使い捨て紙おむつであって,少なくとも前身頃において,太さが620dtex以下の前記伸縮部材が,前記間隔を7.0mm以下とされた状態で製品の外面を構成するシートに対して取り付けられた領域が,前記胴周り部の60%以上の長さ範囲にわたって存在する,- 25 -ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」(本件補正後のもの)「【請求項1】使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成され,前記ウエスト開口縁を含むウエスト部と,該ウエスト部の下端から前記レッグ開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において,周方向に沿い,かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し,かつ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつであって,前記伸縮部材は,前記胴回り部の60%以上の長さ範囲にわたって前記間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され,前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく,かつ太さが620dtex以下で,伸長率が150~3 置され,前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく,かつ太さが620dtex以下で,伸長率が150~350%ある,ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」ウ本件補正により意識的に除外されたもの上記イによれば,本件発明1については,本件補正により,少なくとも構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,」との要件が加えられたことが明らかである。 出願当初明細書の【0050】には,「上記の第1~第4の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ図12の(A)~(D)に示すとおり- 26 -となる。これらを比較して推測できるように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。」,「このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。」との記載がある(乙6の4)。本件補正前と本件補正後の請求項1の前記各記載と図12の(A)~(D)の実施の形態からも明らかなように,本件補正前の請求項1には,腰下部伸縮部材が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実施形態と,腰下部伸縮部材が吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定される実施形態が選択的に存在し,いずれも請求項1に包含されていたところ,本件補正後の請求項1においては,このうち,前者(腰下部伸縮部材が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実施形態)が減縮により除外され,後者(腰下部収縮部材が中央部に されていたところ,本件補正後の請求項1においては,このうち,前者(腰下部伸縮部材が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実施形態)が減縮により除外され,後者(腰下部収縮部材が中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定される実施形態)が本件補正による減縮後も残ったことが認められる。 なお,控訴人らの平成20年8月26日付け意見書によれば,本件補正により加えられた構成要件Cは,本件明細書の【0043】に依拠するものであることが明記されており(乙6の2),本件明細書の【0043】には,「腰下部伸縮部材21F,21Bは・・・一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体を除く製品の左右脇部に設けられている」との記載があり,これと同一の実施形態についての記載である【0040】で引用されている図4に記載された実施形態をみると,腰下部伸縮部材21F,21Bが腰下部中央部を除く左右脇部にのみ配置されている実施形態が示されている。 - 27 -以上によれば,本件補正を客観的・外形的に見れば,控訴人らにおいて,腰下部における伸縮部材の配置について,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との実施形態が包含されるものに減縮し,従前の請求項1に記載されていた,これと異なる実施形態,すなわち,腰下部伸縮部材の一部が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,その余の腰下部伸縮部材が製品の左右脇部において配置固定されるという実施態様を,本件補正により,本件発明1の技術的範囲から意識的に除外したものと認められる。 そして,各被控訴人製品は,腰下部伸縮部材に当たるフィットギャザー221 の一部(221-1)が吸収主体10を横断して周方向に連続して 本件発明1の技術的範囲から意識的に除外したものと認められる。 そして,各被控訴人製品は,腰下部伸縮部材に当たるフィットギャザー221 の一部(221-1)が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,その余のフィットギャザー221-2 が中央部を除く左右脇部において配置固定されるというものであるから,各被控訴人製品は,本件補正により請求項1から意識的に除外されたものに包含されるものといわざるを得ない。したがって,各被控訴人製品については,均等論を主張し得ない特段の事情が存在するものと認められる。 (3) 小括よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において均等侵害は成立しない。 3 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)について(1) 被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法の提出は時機に後れたものであり却下されるべきである旨主張する。 しかし,本件攻撃方法は,いずれも平成25年3月18日の当審第1回口頭弁論期日において陳述された控訴理由書に記載されており,既に提出済みの証拠に基づき判断可能なものである上,当裁判所は,その後2回の弁論準備手続期日(そのうち1回は技術説明会を実施したもの)を経て,同年10- 28 -月7日の当審第2回口頭弁論期日において弁論を終結したものである以上,本件攻撃方法の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとまでは認められない。 よって,本件攻撃方法を時機に後れたものとして却下する必要はない。 (2) 被控訴人は,本件各発明の「ウエスト部」の文言解釈に関して,控訴人らが控訴審において,原審における主張と異なる主張をしたことは,被控訴人において,もはや控訴人らが「ウエスト部」ないし構成要件Cについて別異の主張をすることはないであろうとの合 解釈に関して,控訴人らが控訴審において,原審における主張と異なる主張をしたことは,被控訴人において,もはや控訴人らが「ウエスト部」ないし構成要件Cについて別異の主張をすることはないであろうとの合理的な期待に反するものであり,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し許されない旨主張する。 しかし,控訴人らは,「ウエスト部」の解釈に関して,原審において主張したところが原判決によっていれられなかったことを受けて,控訴審においては,原判決の認定を争わないとしたものにすぎない。このような控訴人らの対応をもって,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するものということはできない。 よって,被控訴人の上記主張を採用することはできない。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂  一 - 29 -裁判官西理香 裁判官田中正哉

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