令和7(行ケ)2 人口比例選挙請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月30日 高松高等裁判所 棄却
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判決文本文29,383 文字)

主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 令和7年7月20日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の徳島県及び高知県参議院合同選挙区、香川県選挙区及び愛媛県選挙区における選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和7年7月20日施行の参議院議員通常選挙(以下、単に「通常 選挙」といい、同日施行の通常選挙を「本件選挙」という。)について、徳島県及び高知県参議院合同選挙区、香川県選挙区及び愛媛県選挙区(以下、これらを併せて「本件各選挙区」という。)の各選挙人である原告らが、公職選挙法14条1項及び別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下、数次の改正の前後を通じ、平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め、 「定数配分規定」という。)は、人口比例に基づいて定数配分をしておらず憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であると主張して、公職選挙法204条の規定に基づいて提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(争いのない事実、当裁判所に顕著な事実並びに後掲各証拠及び弁 論の全趣旨により認められる事実)⑴ 本件選挙は、令和7年7月20日、平成30年法律第75号(以下「平成30年改正法」という。)による改正(以下「平成30年改正」という。)後の公職選挙法14条1項及び別表第3の定数配分規定(以下「本件定数配分規定」という。)の下で、令和元年7月21日施行の通常選挙(以下、同日施 行の通常選挙を「令和元年選挙」という。)、令和4年7月10日施行の通常 選挙(以下「令和4年選挙」とい 件定数配分規定」という。)の下で、令和元年7月21日施行の通常選挙(以下、同日施 行の通常選挙を「令和元年選挙」という。)、令和4年7月10日施行の通常 選挙(以下「令和4年選挙」という。)に続く3度目の通常選挙として施行された。平成30年改正後の参議院議員の総定数は248人とされ、このうち比例代表選出議員は100人、選挙区選出議員は148人とされた。(争いがない)⑵ 本件選挙において、原告Aは徳島県及び高知県参議院合同選挙区の、原告 Bは香川県選挙区の、原告Cは愛媛県選挙区の各選挙人であった。(争いがない)⑶ 総務省発表令和6年9月登録日現在の選挙人名簿登録者数に基づき、本件定数配分規定の下での選挙区間における議員1 人当たりの選挙人数の較差を計算すると、その選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神 奈川県選挙区では3.102、徳島県及び高知県参議院合同選挙区では1. 895、香川県選挙区では1.273、愛媛県選挙区では1.781であった。(概数。以下、較差に関する数値は、全て概数である。)(争いがない)⑷ 本件選挙の期日である令和7年7月20日の選挙人数に基づき、上記較差を計算すると、選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県選挙区 を1とした場合、最多の神奈川県選挙区では3.127、徳島県及び高知県参議院合同選挙区では1.890、香川県選挙区では1.279、愛媛県選挙区では1.777であった。(乙1)⑸ 原告らは、令和7年7月22日、本件訴えを提起した。 3 当事者の主張 (原告らの主張)⑴ 憲法は人口比例選挙を要求しており、非人口比例選挙である本件選挙は無効であることア ①憲法56条2項、②憲法1条及び前文第1項第1文後段、③憲法前文第1項第1文前 (原告らの主張)⑴ 憲法は人口比例選挙を要求しており、非人口比例選挙である本件選挙は無効であることア ①憲法56条2項、②憲法1条及び前文第1項第1文後段、③憲法前文第1項第1文前段、④憲法43条1項は、人口比例選挙を要求していると ころ、本件選挙は、非人口比例選挙であったので、憲法の上記①ないし④ の規定に違反する。 国民は、主権を有し、主権の行使として選挙権を行使し、「正当に選挙された」国会議員を通じて主権を行使する。換言すれば、「正当に選挙された」国会議員は、国会において、主権を有する国民を代表し、全出席議員の「過半数」で「両議院の議事」を決する。したがって、各院の全出席 議員の「過半数」は、「正当な選挙」すなわち人口比例選挙で、全出席議員の過半数の比率の主権を有する全国民から選出されることが要求される。 他方で、非人口比例選挙では、各院の全出席議員の過半数が、全出席議員の過半数の比率の主権を有する全国民から選出されることが保障され ず、国会議員は、主権を有する国民から「正当に選挙された国会における代表者」ではない。非人口比例選挙で当選した国会議員は、「主権の存する日本国民」の「正当に選挙された国会における代表者」ではないので、非人口比例選挙は、国会議員主権に基づくものであり、憲法の前記①ないし④の規定に違反する。 イ憲法前文第1項第2文(「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」)は、受託者の忠実義務等(信託法30条(忠実義務。「受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。」)、8条(受託者の利益享受の禁止)) の趣旨も含むと解さ 」)は、受託者の忠実義務等(信託法30条(忠実義務。「受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。」)、8条(受託者の利益享受の禁止)) の趣旨も含むと解される。 換言すれば、信託事務の処理その他の行為から生ずる利益に関する受託者(国民の代表者)の受益者(国民)に対する忠実義務が、1票の較差を伴う選挙区割規定の立法について、国会が広範な立法裁量権を有するか否かの憲法47条についての解釈基準になると解される。 衆議院議員選挙に関する平成25年(行ツ)第209号、第210号、 第211号同年11月20日大法廷判決(以下「平成25年大法廷判決(衆)」という。)は、(投票価値の較差の変更を伴う)選挙区割規定の立法は、議員の身分にも直接関わる事柄(すなわち、当選・落選という国会議員個人の利益に直接関わる事柄)であるとしている。 よって、国民の代表者が選挙区割規定を立法することは、国民の代表者 が、国民の利益より自らの利益を優先させて当該選挙区割規定の立法をする点で、(憲法前文第1項第2文に定めるとおり信託された)国政の受託者の国政の受益者(国民)に対する忠実義務に違反し、憲法47条をその解釈基準たる憲法前文第1項第2文に反して適用するものであるから、憲法47条に違反する。 原告らは、衆議院議員選挙と参議院議員選挙のいずれについても、憲法は、同じ理由で人口比例選挙を要求すると主張するものである。したがって、衆議院議員選挙に関する平成25年大法廷判決(衆)の議論は、参議院議員選挙である本件選挙にも同様に当てはまる。 ウ憲法の規定が要求する人口比例選挙は、実務上合理的に実施可能な限り での人口比例選挙であれば足りると解される。米国の各州(フロリダ州、ペンシルバニア州及びニ 件選挙にも同様に当てはまる。 ウ憲法の規定が要求する人口比例選挙は、実務上合理的に実施可能な限り での人口比例選挙であれば足りると解される。米国の各州(フロリダ州、ペンシルバニア州及びニューメキシコ州)では、選挙区間の最大人口較差が僅か1人又は0人という連邦下院議員選挙が行われていること、英国では、選挙区間の最大有権者数差が7338人(約1.11倍以下)という英国議会議員総選挙が行われたこと、ドイツでは、全630議席は完全人 口比例により各政党への配分が決定されること(人口差ゼロ)に照らし、我が国でも、人口比例選挙の実施は技術的にみて実務上合理的に可能である。 当該選挙の各選挙区の投票価値の平等(一人一票等価値)からの乖離が合理的であることの立証責任は、国にある。米国連邦最高裁判決も、米国 連邦下院議員選挙の選挙区割りについて、これと同様の判断をしている。 エ本件選挙当時の参議院(選挙区選出)議員の定数は148人である(公職選挙法4条2項)。人口比例選挙では全人口の過半数が全参議院(選挙区選出)議員の過半数を選出すべきであるが、本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.127倍であり、本件選挙においては、全人口の過半数が全参議院議員の過半数を選出できない。したがって、本件選挙は、人口比例 選挙(一人一票選挙)とはいえず、非人口比例選挙であるので、憲法の人口比例選挙の要求に違反する。 ⑵ 仮に国会に裁量が認められるとしても、本件選挙は、大法廷判決に照らせば、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態の下で施行されたものと解されること ア平成24年から本件選挙(令和7年)までの13年間の通常選挙の選挙区割りの変動は、別紙の表のとおりである。 平成25年から、参議院の選挙制度改革協議会 で施行されたものと解されること ア平成24年から本件選挙(令和7年)までの13年間の通常選挙の選挙区割りの変動は、別紙の表のとおりである。 平成25年から、参議院の選挙制度改革協議会では、合区制若しくは11ブロック制の2択で議論が続いており、平成26年、平成30年の各報告書では、公明党、日本維新の会、日本共産党(ただし、10ブロック)、 社会民主党などが、11ブロック案を提示していた。公明党試案の11ブロック案では、1票の最大較差は1.13倍であった。 参議院改革協議会において、令和3年5月から令和4年6月までの間、合計13回にわたり、参議院の在り方、参議院選挙制度、議員の身分保障等に関する検討が行われたが、参議院選挙制度改革について意見の集約は できず、投票価値の不均衡を縮小させることに関する具体的な方向性が示されることはなかった。また、令和4年5月及び同年6月開催の参議院憲法審査会においても、参議院選挙制度改革について具体的な方向性は示されなかった。 令和5年2月から令和6年6月までの間、参議院改革協議会では、合計 16回にわたり、参議院選挙制度について検討が行われたが、本件選挙ま でに改正法は成立しなかった。 その結果、本件選挙は、平成30年改正法による最大較差3倍を伴う定数配分規定の下で行われた3回目の選挙となり、別紙の表のとおり、較差3倍となる3選挙区の有権者数は2120万7678人で、全有権者数約1億0416万人のうちの約20パーセントを占めたままである。 本件選挙は、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、更なる較差の是正(すなわち、最大較差3.00倍を更に是正すること)を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組 口変動が生ずることが見込まれる中で、更なる較差の是正(すなわち、最大較差3.00倍を更に是正すること)を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められるとした、直近の3つの大法廷判決(最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷 判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)、最高裁令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)及び最高裁令和5年(行ツ)第54号同年10月18日大法廷判決・民集77巻7号1654頁(以下「令和5年大法廷判決」という。))の趣旨に沿わない立法状 況のまま施行された。 したがって、本件選挙は、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態の下で施行されたものと解される。 イ昭和22年から平成22年までの約63年間に、衆議院の多数意見と参議院の多数意見が最終局面まで対立した法律案が15個あったが、衆議院 が参議院の修正案に同意して法律となったのが9個であり、廃案になったのが6個である。このように、参議院は最終決定権を有している。 最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)、最高裁平成26年(行ツ)第155号、第156号同年11月26日大法 廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」とい う。)、平成29年大法廷判決、令和2年大法廷判決及び令和5年大法廷判決は、参議院議員選挙の一票の投票価値の平等の要請について、衆議院議員選挙のそれより後退してよいと解すべき理由は見いだし難いとする。 それにもかかわら 廷判決、令和2年大法廷判決及び令和5年大法廷判決は、参議院議員選挙の一票の投票価値の平等の要請について、衆議院議員選挙のそれより後退してよいと解すべき理由は見いだし難いとする。 それにもかかわらず、本件選挙当時における有権者数の最大較差である3.13倍は、令和4年選挙当時の有権者数の最大較差である3.03倍 と比較して、明らかに後退しているから、本件選挙は令和5年大法廷判決に照らして違憲である。 なお、令和5年大法廷判決は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等を考慮すると、較差の更なる是正を図ること等は喫 緊の課題というべきであるとしている。 ⑶ 平成26年大法廷判決は、当該定数配分規定が違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態に至っている場合でも、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えたとまでは認められないとして選挙は違憲とはいえないとの「合理的期間論」の判断基準を示したが、 憲法98条1項により、憲法に反する選挙は違憲無効とされるのであり、上記の判例としての「合理的期間論」の判示部分も、憲法98条1項により、無効であると解される。 (被告らの主張)⑴ 本件訴訟の判断枠組み 憲法は、投票価値の平等を要求しているが、他方で、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきもの である。そのため、国会が定めた具体的な選挙制度がその裁量権の する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきもの である。そのため、国会が定めた具体的な選挙制度がその裁量権の行使とし て合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反しない。 憲法が二院制を採用した趣旨は、立法を始めとする多くの事項について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆 議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性及び継続性を確保しようとするところにある。つまり、憲法は、参議院については、衆議院が多数決原理に基づいて国政の在り方を決定する際の行き過ぎを抑制することを行う「良識の府」、「再考の府」として機能させることを想定しているから、そのような参議院の選挙制度については、人口を基準とするのみでは適切に 反映されない国民の意見を公正かつ効果的に国政に反映させるため、投票価値の平等の要請のみならず、それ以外の諸要素も十分に考慮することを求めているものと解される。 そうすると、国会の定めた定数配分規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは、参議院の独自性のほか、国会が正当に考慮する ことができる他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており、かつ、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 ⑵ 本件選挙当時において、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題 が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえな がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 ⑵ 本件選挙当時において、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題 が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえないことア都道府県が有する歴史、都道府県が我が国において果たしている政治的・社会的な役割・機能や、各国民が有する都道府県に対する帰属意識等に鑑みれば、我が国において、都道府県は、長年にわたる歴史を通じて、一つの行政単位としての歴史的、政治的、経済的、社会的及び文化的な一体感 が醸成されているといえるのであって、選挙制度の決定に際し、国会が考 慮することのできる基本的な要素の一つである。 憲法の制定過程をみても、その国会審議の中で、各都道府県を参議院の選挙区選出議員選挙の選挙区の単位とすることが取り上げられており、そのことを踏まえれば、憲法は、参議院の選挙制度における国会の裁量権の行使として、選挙区を都道府県単位とする選挙制度を採用することを具体 的に想定し、かつ、これを合理的なものとして許容していたものといえる。 都道府県単位の選挙区割りは、国民に定着しており、世論調査でも都道府県単位で代表を選ぶべきとする意見も多く、当該選挙区割りを大きく変えることは、自己の居住する県に縁故があり、その地域の実情に通じた候補者に投票したいと考える国民の投票意識に悪影響を与えるなどのおそ れもあるから、都道府県を選挙区割りの基本単位としていることの意義は十分に尊重されるべきである。 また、衆議院においては市町村の単位を基本とする小選挙区制度が採用されているのに対し、参議院において都道府県を選挙区の基本的な単位とする選挙制度が維持されていることによって、両議院の選挙制度全体とし て、我が国における地方公共団体の種類及び各地方公共 採用されているのに対し、参議院において都道府県を選挙区の基本的な単位とする選挙制度が維持されていることによって、両議院の選挙制度全体とし て、我が国における地方公共団体の種類及び各地方公共団体の特色を踏まえた多角的な民意の反映が可能となっており、憲法が二院制を採用した趣旨に沿うものである。参議院議員が衆議院議員よりも任期が長く、解散もない立場にあることも踏まえると、都道府県を選挙区の基本単位とすることは、選挙制度を通じた民意の集約及び国政への反映を継続的かつ安定的 に実現する効果をもたらすものともいえるから、合理性を有している。 加えて、都市と地方の較差が顕著なものとなった今日の社会的状況下においては、人口の多い都市部に居住する多数派の国民のみならず、地方に住む少数派の国民の意見も十分に国政に届くような定数配分規定を定めることの重要性が増してきている。したがって、参議院の選挙区選出議員 選挙の選挙区について、都道府県を基本的な単位とすることは、少数派の 国民の意見を含む地域ごとの意見を国政に効果的に反映させることが期待できるという点においても合理性を有するものであり、選挙制度の構築に当たり、国会が正当に考慮することができる人口比例以外の政策的目的ないし理由として十分に考慮されるべきものである。 イ国会は、選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度 の著しい不平等状態に至っていた旨を判断した平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿い、一部の選挙区について二つの県を合わせた選挙区(以下「合区」という。)を創設することなどを内容とする平成27年法律第60号(以下「平成27年改正法」という。)による改正(以下「平成27年改正」という。)を行ったことにより、国勢調査結果による 下「合区」という。)を創設することなどを内容とする平成27年法律第60号(以下「平成27年改正法」という。)による改正(以下「平成27年改正」という。)を行ったことにより、国勢調査結果による 人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となり、前記不平等状態は解消された。 同改正後の定数配分規定の合憲性が争われた平成29年大法廷判決においても、最大較差が3.08倍であった平成27年改正後の定数配分規定の下での初めての通常選挙(以下「平成28年選挙」という。)について、 投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない旨判示された。 現在の選挙区割りを定める平成30年改正は、一部合区がありつつも都道府県単位を基本としていた平成27年改正による選挙区割りを維持した上で、埼玉県選挙区の定数を2人増員したものであり、国勢調査結果に よる人口に基づく選挙区間の最大較差は、2.99倍にまで縮小した。このように平成30年改正も、平成27年改正と同様に、選挙区選出議員について都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという都道府県を選挙区の単位とすることの意義ないし機能を原則として維持しつつ、議員定数を調整することにより選挙区間の投票価値の不均衡の更なる 是正を実現したものである。 ウ令和元年選挙に係る令和2年大法廷判決は、平成27年改正法が数十年間にわたり5倍前後で推移してきた最大較差を約3倍にまで縮小させたものであり、平成30年改正法が参議院選挙制度改革について容易に成案が得られない状況下において、合区を維持して僅かに較差を是正しており、平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものと評し、令 和元年選挙当時、投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい ない状況下において、合区を維持して僅かに較差を是正しており、平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものと評し、令 和元年選挙当時、投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえない旨判示した。また、令和4年選挙に係る令和5年大法廷判決も、合区が維持されたことにより、選挙区間の最大較差が有意な拡大傾向にあるともいえないなどと指摘し、令和4年選挙当時も、投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に あったものとはいえない旨判示した。 令和元年選挙当時、選挙区間の最大較差は3.00倍であり、最も有権者数が少なかった選挙区と比べて較差が3倍以上になった選挙区は一つであった。本件選挙当時においても、選挙区間の最大較差は3.13倍であり、また較差が3倍以上となった選挙区も令和4年選挙と同じ三つにと どまるものであって、平成27年改正法及び平成30年改正法により実現された定数配分規定の合憲性は、本件選挙当時においても維持されたといえる。 エ参議院は、憲法上、3年ごとに議員の半数が改選されるため、選挙区選出議員の選挙区ごとの定数を偶数配分しており、衆議院と比して、投票価 値の平等の要請に配慮して全国の各選挙区に定数を配分するのに制約が存在する。そうした中でも、国会は、参議院の選挙制度改革に向けた努力を続け、平成27年改正により合区が導入されるなどした結果、投票価値の不均衡が大きく改善された。しかし、合区については、合区の対象となった県相互間ではその課題や利害等が一致するとは限らず、そうした場合に 当該合区から選出された参議院議員が両県の意見を集約して国政に反映す ることは事実上困難であり、仮に人口の大きい県の意見に従って意見を集約した場合、人口の るとは限らず、そうした場合に 当該合区から選出された参議院議員が両県の意見を集約して国政に反映す ることは事実上困難であり、仮に人口の大きい県の意見に従って意見を集約した場合、人口の少ない県の意見が国政に届けられないこととなると思われるなど、様々な問題が指摘されている。実際にも、令和元年選挙及び令和4年選挙においては、合区の対象となった県の多くで投票率の低下がみられるなど合区が導入されたことによる弊害が指摘されており、合区に 対する反対意見は今も根強く存在する。しかしながら、立法府においては、平成27年改正法に、参議院選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るものとする旨の附則を置いたり、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会により、平成30年改正後も参議院選挙制度改革に向けた検討を引き続き行う旨の附帯決議を行っている。 令和2年大法廷判決及び令和5年大法廷判決後も、国会においては、参議院改革協議会等が組織され、参議院の在り方や参議院選挙制度の改革等に関し、各会派の間で議論が交わされ、全ての会派が本件選挙後にも選挙制度の改革に関する議論を継続することを表明し、複数の会派が令和10年通常選挙に向けた制度改正を明示するなどしている。 そして、合区を創設した平成27年改正後、合区対象県において、投票率の低下等の弊害がみられており、その合区による弊害は、本件選挙時においても、有意な改善がみられないまま、継続して生じており、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるという観点からいえば、都道府県単位を基本とする選挙区を見直すことには慎重に検討すべき課題 が依然として存在するといえ、国会が較差の是正のための検討等に時間を要したとしてもやむを得ないものであって、国 からいえば、都道府県単位を基本とする選挙区を見直すことには慎重に検討すべき課題 が依然として存在するといえ、国会が較差の是正のための検討等に時間を要したとしてもやむを得ないものであって、国会の取組が不適切であるとはいえない。 オ以上の諸点に照らせば、本件選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らして看 過し得ない程度に達しているとはいえず、違憲の問題が生ずる程度の著し い不平等状態に至っていたとはいえない。 ⑶ 本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえないことア当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っている場合において、当該選 挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会の裁量権の限界を超えるといえるか否かを判断するに当たっては、単に期間の長短のみならず、是正のために採るべき措置の内容、そのために検討を要する事項、実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して、国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方 として相当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべきである。そして、当該選挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否かは、裁判所において当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているとの判断が示されるなど、国会が、違憲の問 題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得た時期を基準(始期)として判断されるべきである。 イ本件では、平成27年改正に に至っているとの判断が示されるなど、国会が、違憲の問 題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得た時期を基準(始期)として判断されるべきである。 イ本件では、平成27年改正により、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを一部改め、投票価値の較差を大幅に縮小させ、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、そのよう な状態から最大較差を更に縮小させるため、平成30年改正により現在の本件定数配分規定を定めたところ、その定数配分規定の下で令和元年選挙及び令和4年選挙が施行され、令和元年選挙に係る令和2年大法廷判決では当該定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないと判示され、その結論は、令和4年選挙に係る令和5年大法廷判決でも維 持された。そして、本件選挙は、そのような平成30年改正後の定数配分 規定に基づいて施行され、本件選挙当日の最大較差は3.13倍であり、最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁(以下「平成21年大法廷判決」という。)までの累次の最高裁判決の事案において合憲とされた最大較差を大幅に下回り、令和2年大法廷判決及び令和5年大法廷判決により合憲と判断された令和 元年選挙当時及び令和4年選挙当時の最大較差と大きく異なるとはいえないものであったから、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとは考え難い状況にあった。したがって、万一、本件選挙当時、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると判断されることがあるとしても、国会 において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定に基づく選挙区間における投票価値の不均衡が前記 ついて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると判断されることがあるとしても、国会 において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定に基づく選挙区間における投票価値の不均衡が前記状態にまで至っていたと認識し得たとはいえないから、国会が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態になったことを認識し得た時期(始期)が開始していたとはいえない。 加えて、選挙区間の較差の更なる是正等のためには、参議院の議員定数 を増加させる措置や、都道府県よりも広域の選挙区を設けるなどの措置を講ずることが考えられるものの、いずれの措置を講ずる場合でもそれ自体に困難が伴い、措置を講じた場合に種々の弊害が生じることも想定されるところ、国会が是正のために採るべき立法措置の検討等に相応に長期の期間を要することはやむを得ないものというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実、証拠(乙9、10のほか後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人 とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選出され るものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。同法案の提案理由説明において、地方選出議員は、地方の事情に詳しい人に出てもらうという趣旨での地域代表的性格を有するものとされた。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議員につき 3年ごとにその半数を改選すると定めていること(46条)に応じて、各選挙区においてその選出議員の半数が改選され するものとされた。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議員につき 3年ごとにその半数を改選すると定めていること(46条)に応じて、各選挙区においてその選出議員の半数が改選されることとなるよう、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をその まま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで、上記定数配分規定に変更はなかった。 なお、昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により、参議院議員252人は各政党等の得票に比例し て選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたものである。 その後、平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により、参議院議員の総定数が242人とされ、比 例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。 ⑵ 参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年に施行された通常選挙(以下「平成4年選挙」という。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下「選挙区間の最大較差」 という。)が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数 を8増8減とする措 いう。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下「選挙区間の最大較差」 という。)が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数 を8増8減とする措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減とする措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」という。)における4選挙区の定数を4増4減とする措置の前後を通じて、平成7年から同19年 までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。 しかるところ、最高裁大法廷は、定数配分規定の合憲性に関し、最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下「昭和58年大法廷判決」という。)において後記2(1) の基本的な判断枠組みを示した後、平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙については、上記の不平等状態に至っていたとはいえない旨判示した(最 高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。 その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常 選挙のいずれについても、最高裁大法廷は、結論において当該各定数配分規定が憲法に違 数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常 選挙のいずれについても、最高裁大法廷は、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁(以下「平成18年大法廷判決」という。)、 平成21年大法廷判決)。もっとも、平成18年大法廷判決においては、投 票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、平成21年大法廷判決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、選挙区間の最大較差 が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 ⑶ 平成22年7月11日、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙につき、平成24年大法廷判決は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたもの の、長年にわたる制度及び社会状況の変化として、①参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度が同質的なものとなってきているとともに、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでにも増して大きくなってきていること、②衆議院については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区 化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでにも増して大きくなってきていること、②衆議院については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人 口の較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていること等を挙げた上で、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由とし ては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし、上記通常選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著 しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙 区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 ⑷ 平成24年大法廷判決の言渡し後、平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」 という。)が成立し、同月26日に施行された。同法は、選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減とすることを内容とするものであった。 ⑸ 平成25年7月21日、平成24年改正法による改正後の定数配分規定の下での通常選挙(以下「平成25年 同法は、選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減とすることを内容とするものであった。 ⑸ 平成25年7月21日、平成24年改正法による改正後の定数配分規定の下での通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。 平成26年大法廷判決は、結論において平成25年選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による上記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については上記の改 正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、同法による上記措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現 行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 ⑹ 平成27年7月28日、公職選挙法の一部を改正する平成27年改正法が成立し、同年11月5日に施行された。同法による改正(平成27年改正)の結果、平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間 の最大較差は2.97倍となった。(乙3、11の1・2) 平成27年改正法は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選 2) 平成27年改正法は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われる通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における 議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。 ⑺ 平成28年7月10日、平成27年改正後の定数配分規定の下での通常選挙(平成28年選挙)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3. 08倍であった。(乙3、11の3)平成29年大法廷判決は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とする ものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年大法廷判決等の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則において、上記(6)のとおり規定され、今後における較差の更なる是正に向けての方向性と立法府 の決意が示されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあっ 生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑻ 平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3 県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか、無 効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった。 (乙11の4・5)全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下等の様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を行った。また、全国都道府県議会議長会や全国市長会等において も、合区の早急な解消に向けた決議等が行われた。(乙30の2、乙31の1ないし5、乙32の1ないし3)平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査を行う「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。同委員会は、参議院選挙制 度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又は選挙区の単位を都道府県に代えてより広域の ものとすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかし、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体 いて検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかし、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがある状況であった。(乙 12ないし16、17の1・2、乙22、23)平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分するとともに、比例代表選出議員の定数を4人増員し、政党等が優先的に当選人となる べき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。 その後、協議が行われるなどしたものの、各会派間に意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてより広域の選挙区による選挙を導 入することを内容とする法律案等が提出された。平成30年7月11日、上記特別委員会において、上記の自由民主党の提案内容に沿った公職選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。(乙19の1ない し3、乙20、21)平成30年7月18日、上記法律案どおりの平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。同法による公職選 討を行うこと」との附帯決議がされた。(乙19の1ない し3、乙20、21)平成30年7月18日、上記法律案どおりの平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。同法による公職選挙法の改正(平成30年改正)の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった。(乙3、22、23) ⑼ 令和元年7月21日、本件定数配分規定の下での初めての通常選挙(令和元年選挙)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった。(乙5の1)令和2年大法廷判決は、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡 大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正法につき、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を3倍程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したもので あるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、事柄の性 質上慎重な考慮を要することに鑑み、その実現は漸進的にならざるを得ない面があることからすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないなどとして、令和元年選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑽ 令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県でもそれぞれ過去最低とな 憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑽ 令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県でもそれぞれ過去最低となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった。(乙5の2・3、乙40の8ないし11)令和元年選挙の後も、全国知事会等において、合区の解消を求める決議等 が行われている。(乙30の7ないし9、乙31の6ないし9、乙32の4ないし9、乙33の6ないし11、乙34の7ないし14、乙35の5ないし9、乙37の2、125ないし147、乙40の2ないし7)令和3年5月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会(以下「令和3年協議会」という。)が改めて設置され、参議院の組織及び運営の改革に 関する検討項目の一つとして、較差の是正を含む選挙制度改革についての議論がされた。合区については、何らかの形で解消することを目指す意見が多かったものの、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持するか、選挙区の単位を都道府県に代えてより広域のものとするか、議員の総定数を増やすか等の点について意見の隔たりがあり、最終的に、参議院選挙 制度改革の具体的な方向性についての各会派の意見が一致するには至らなかった。令和4年5月及び同年6月に開かれた参議院憲法審査会における参議院選挙制度改革をめぐる議論の状況も、上記と同様であった。(乙24、25の1・2)⑾ 令和4年7月10日、本件定数配分規定の下での2回目の通常選挙として、 令和4年選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は、3.03倍 であった。(乙6の1)令和5年大法廷判決は、立法府においては、今後も不断に人口 下での2回目の通常選挙として、 令和4年選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は、3.03倍 であった。(乙6の1)令和5年大法廷判決は、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが引き続き求められているというべきところ(令和2年大法廷判決 参照)、令和4年選挙までの間、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難いとしながらも、平成27年改正がされてから令和4年選挙までの約7年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移しており、有 意な拡大傾向にあるともいえないことや、都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すに当たっては、代表民主制の下で国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべき課題があり、また、参議院の議員定数の見直しなどの方策を採ることにも様々な制約が想定されることに鑑み、立法府が較差の更なる是正に向けた取 組を進めていくには、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれるとして、令和4年選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはい えないとした。なお、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度が民主政治の基盤 挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはい えないとした。なお、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等を考慮すると、較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題とした上で、立法府においては、現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含め、較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解 も得られるような立法的措置を講じていくことが求められると付言した。 ⑿ 令和4年選挙において、合区の対象となった鳥取県での投票率は、令和元年選挙時を更に下回って過去最低を更新し、また、徳島県での投票率は、令和元年選挙時より上昇したものの、なお全国最低であった。合区の対象となった4県での無効投票率は、いずれも全国平均を上回った。(乙6の2・3)全国知事会は、令和4年選挙後の令和4年7月28日、「3度目となる合区 選挙が実施され、鳥取県では、合区制度開始以降、連続で過去最低の投票率を更新する結果となった。島根県、徳島県、高知県の3県では前回を上回ってはいるものの、合区制度の導入前と比べると低い水準のままであり、合区を起因とした弊害が常態化しており、深刻度が増している」と指摘し、合区を確実に解消して都道府県単位による代表が国政に参加できる選挙制度を求 める旨の意見を表明する決議をした(乙38の1)。このような合区を解消し、都道府県単位による代表が国政に参加することができる選挙制度を求める地方公共団体等の動きは、その後も続き、一例として、全国知事会は、上記決議のほか、令和5年7月26日及び令和6年8月2日にも、上記決議と同様に「合区の確実な解消」を求める意見を表明する決議をした( る地方公共団体等の動きは、その後も続き、一例として、全国知事会は、上記決議のほか、令和5年7月26日及び令和6年8月2日にも、上記決議と同様に「合区の確実な解消」を求める意見を表明する決議をした(乙38の 2・3)。また、合区対象の4県のそれぞれの県議会、市議会、町村議会等においても、上記各決議と同旨の決議が次々とされたほか、中四国地方9県の知事、中国経済連合会会長及び四国経済連合会会長による協議の場である「中四国サミット」、中国地方知事会の知事会議及び四国知事会の四国知事会議においても、上記各決議と同旨の共同アピールや提言がされた(乙38の4 ないし8)。以上のほか、本件選挙直近における報道においても、合区対象4県の地方紙のみならず、全国紙を含む各新聞において、上記各決議と同旨の意見が取り上げられた(乙41の1ないし7)。 令和3年協議会の報告書に、令和4年選挙後、選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について、速やかに協議を開始し、更に議論を継続すること とされていたことから、令和3年協議会に引き続いて上記各事項の調査・検 討をするため、令和4年11月、参議院改革協議会(以下「令和4年協議会」という。)が再度設置され、同年12月、同協議会の下に、各会派代表による選挙制度に関する専門委員会(以下「令和4年専門委員会」という。)が設置され、令和5年2月から令和6年6月までの間、16回にわたって開会され、参議院選挙制度の在り方等について意見交換等がされた。その中で、合区の 弊害については多くの会派において共通認識となっており、合区は解消すべきとの意見が大勢となっている状況にあったが、具体的な選挙制度の枠組みについては、都道府県単位の選挙区及び全国比例を維持すべきとの意見と、ブロック制を導入すべきとの意見 となっており、合区は解消すべきとの意見が大勢となっている状況にあったが、具体的な選挙制度の枠組みについては、都道府県単位の選挙区及び全国比例を維持すべきとの意見と、ブロック制を導入すべきとの意見の、大きく二つに分かれており、意見の集約は困難であった。そこで、令和4年専門委員会は、令和4年協議会の座長 に、上記の内容を含む「参議院改革協議会選挙制度に関する専門委員会報告書」を提出した。令和4年協議会は、上記報告書の内容を踏まえて、2回にわたって参議院の在り方について意見交換を行い、令和7年6月18日、座長が報告書を参議院議長に提出した。同報告書では、令和10年通常選挙を見据えた今後の協議の進め方として、「協議会においては、令和10年通常選 挙に間に合わせるため、選挙制度の見直しを行う法律案を令和9年常会に提出する必要があるとの意見があった。選挙制度の見直しについては、広く国民の理解も得られるような立法的措置が求められているところ、令和10年通常選挙に向けて、本年の通常選挙後、新たな会派構成の下でも協議の場を速やかに設けていただき、工程案(ママ)を共有しつつ、具体的な参議院改 革について結論を出し、選挙制度改革の方向性を見いだすべく議論が引き継いでいかれることを切望する。」と記載された。令和4年選挙後には、参議院憲法審査会において、同年12月、令和5年4月、同年5月、同年6月及び同年11月に、参議院の在り方並びに一票の較差及び合区が主たる議題として取り上げられ、継続的に調査・検討が行われたが、同審査会においても参 議院議員の具体的な選挙制度の枠組みに関しては、各会派によって意見が分 かれる状況であった。(乙24ないし27の6) 2 本件定数配分規定の憲法適合性について⑴ 憲法は、選挙権の内容の平等、換 議員の具体的な選挙制度の枠組みに関しては、各会派によって意見が分 かれる状況であった。(乙24ないし27の6) 2 本件定数配分規定の憲法適合性について⑴ 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政 に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として 合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところ にあると解される。前記1(1)においてみた参議院議員の選挙制度の仕組みは、このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22 年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範 県を各選挙区の単位としたものである。昭和22 年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継 続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁 量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 以上は、昭和58年大法廷判決以降の参議院議員(地方選出議員ないし選挙区選出議員)選挙に関する累次の大法廷判決の趣旨とするところであり(令和2年大法廷判決参照)、当裁判所も、基本的な判断枠組みとしてこれと同 様に考えるものである。 ⑵ 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、 参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そして、いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議 院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合 価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議 院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合 理的行使として是認し得るものと考えられる。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票 価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏ま えた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 ⑶ 参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度は、選出方法等に係るこれまでの変遷を経て同質的なものとなってきているところ、衆議院議員選挙については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の 人口の較差が2倍未満となるようにする旨の区割りの基準が定められ、少なくとも長期間にわたり2倍以上の較差が放置されることはないような措置が講じられている(衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条、4条)。また、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に、国政の運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。 そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員定数配分に当たり考慮を要する の下で、議員の長い任期を背景に、国政の運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。 そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い。したがって、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大さ せずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが引き続き求められており(令和2年大法廷判決参照)、これは喫緊の課題というべきである(令和5年大法廷判決参照)。 この観点から見ると、令和4年選挙以降本件選挙までの間、令和4年専門委員会、令和4年協議会及び参議院憲法調査会において、参議院選挙制度の 在り方等について、各会派の間で多数回にわたる議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難いのは、令和4年選挙当時と同様である。 しかしながら、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正 により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は 3倍程度まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから本件選挙までの約10年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で、解消を目指す意見がある中でも上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍前後で推移しており、有意な拡大傾向にあるとまではいえない。 このような中で、立法府においては、較差の更なる是正を図る観点から、 意見がある中でも上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍前後で推移しており、有意な拡大傾向にあるとまではいえない。 このような中で、立法府においては、較差の更なる是正を図る観点から、都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策について議論がされてきたところであり、こうした方策によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すことも考えられる。もっとも、合区の導入後に、その対象となった4県において、投票率の低下や無効投票率等の上昇が 顕著かつ継続的にみられること等を勘案すると、有権者において、都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出するとの考え方がなお強く、これが選挙に対する関心や投票行動に影響を与えていると認められ、合区については、各会派の代表による協議の場においても何らかの形で解消することを目指す意見が多いことがうかがわれる。このような状況は、都道府県を各選 挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すに当たり、代表民主制の下で、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべき課題があることを示しているものと考えられる。他方で、立法府においては、較差の更なる是正をめぐって、選挙区割りだけでなく、参議院の議員定数の見直しなどの方策についても議論がされてきたが、こう した方策を採ることにも様々な制約が想定される。加えて、このような状況下においても、立法府が協議会等において精力的に議論を継続していることに鑑みれば、較差の是正を指向する立法府の姿勢が失われるに至ったと評価できるものでもない。 そうすると、立法府が上記是正に向けた取組を進めていくには、更に議論 を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国 民の理解 至ったと評価できるものでもない。 そうすると、立法府が上記是正に向けた取組を進めていくには、更に議論 を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国 民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要するといわざるを得ない。 以上に述べたような状況の下、立法府が、参議院議員の選挙制度の改革に向けた議論を継続する中で、較差の拡大の防止等にも配慮して4県2合区を含む本件定数配分規定を維持したという経緯に鑑みれば、立法府が、較差の 更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくための具体的な方策を新たに講ずるに至らなかったことを考慮しても、本件選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡が、憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできない。 ⑷ したがって、本件選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下で の選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 ⑸ 原告らは、平成25年大法廷判決(衆)が議員の身分にも直接関わる事柄であると説示していることから、国民の代表者が投票価値の較差の変更を伴 う選挙区割規定の立法をすることは、国民の利益より自らの利益を優先させて当該選挙区割規定の立法をすることであり、憲法前文第1項第2文の「国政は、国民の厳粛な信託によるものであって」「その福利は国民がこれを享受する。」に従って解釈されるべき憲法47条に違反すると主張する。 しかし、平成25年大法廷判決(衆)における「多くの議員の身分にも直 接関わる事柄」というのは、「平成22年国勢調査の結果を基に各都 。」に従って解釈されるべき憲法47条に違反すると主張する。 しかし、平成25年大法廷判決(衆)における「多くの議員の身分にも直 接関わる事柄」というのは、「平成22年国勢調査の結果を基に各都道府県への選挙区の数すなわち議員の定数の配分を見直し、それを前提として多数の選挙区の区割りを改定することが求められていたところである。」という説示に続くもので、「国会における合意の形成が容易ではない」という文脈で使われたものにすぎない。憲法が選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に 委ねていると解されるのは前記のとおりであって、上記「信託」の趣旨に照 らせば、容易ではないものの一定の時間をかけて合意を形成し、国民(委託者・受益者)の利益となる選挙制度を構築することが求められていると理解すべきであり、選挙区割りの変更等が議員の身分にも直接関わる事柄であるという部分を取り出して、このことから直ちに国会の立法裁量が否定されるかのようにいうのは論理に飛躍がある。選挙区割りの変更等により不利な影 響を受ける議員がこれに反対するとしても、それは自らに投票する国民の意思を国政に反映できなくなることへの反対ともいえるのであって、これをもって、議員が国民の利益より自らの利益を優先させるもので、国民に対する忠実義務に違反するといえるものではない。合区の導入によって較差の是正が進んだ反面、前記認定の投票率の低下や無効票の増加が示すような選挙民 の関心の低下という弊害を生じさせたように、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度の構築には多様な要素を考慮する必要があり、人口比例選挙でなければ「正当に選挙された国会における代表者」とならないから「国会議員主権」となるという議論も乱暴なものである。投票価値の平等の要請は重要であ 築には多様な要素を考慮する必要があり、人口比例選挙でなければ「正当に選挙された国会における代表者」とならないから「国会議員主権」となるという議論も乱暴なものである。投票価値の平等の要請は重要であるものの、選挙制度の仕組みの決定における唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであることは前述したとおりである。 原告らの主張は採用できない。 よって、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第4部 裁判長裁判官 森實将人 裁判官 藤原典子 裁判官 児玉禎治

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