- 1 -主文 原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。 前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人田野壽,同宮崎隆博の上告受理申立て理由第3の3について 本件は,A(当時22歳)運転の自動二輪車とパトカーとが衝突し,自動二輪車に同乗していたB(当時19歳)が死亡した交通事故につき,Bの相続人である被上告人らが,パトカーの運行供用者である上告人に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条に基づく損害賠償を請求する事案である。 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)A及びBは,中学校時代の先輩と後輩の関係であり,平成13年8月13日午後9時ころから,友人ら約20名と共に,自動二輪車3台,乗用車数台に分乗して,集合,離散しながら,空吹かし,蛇行運転,低速走行等の暴走行為を繰り返した。Bは,ヘルメットを着用せずに,消音器を改造した自動二輪車(以下「本件自動二輪車」という。)にAと二人乗りし,交代で運転をしながら走行していた。 (2)岡山県警察勝山警察署のC警察官らは,付近の住民から暴走族が爆音を立てて暴走している旨の通報を受け,同日午後11時20分ころ,これを取り締まるためにC警察官が運転するパトカー(以下「本件パトカー」という。)及び他の警察官が運転する小型パトカー(以下「本件小型パトカー」という。)の2台で出動した。上告人は,本件パトカーの運行供用者である。 - 2 -(3)C警察官は,国道313号線(以下「本件国道」という。)を走行中,同日午後11時35分ころ,本件自動二輪車が対向車線を走行してくるのを発見し追跡したが,本件自動二輪車が転回して逃走したためこれを見失い,いったん本件国道に面した商業施設の駐車場 いう。)を走行中,同日午後11時35分ころ,本件自動二輪車が対向車線を走行してくるのを発見し追跡したが,本件自動二輪車が転回して逃走したためこれを見失い,いったん本件国道に面した商業施設の駐車場(以下「本件駐車場」という。)に入って本件パトカーを停車させた。また,本件小型パトカーも本件駐車場に入って停車していた。本件駐車場先の本件国道は片側1車線で,制限速度は時速40㎞であった。 (4)同日午後11時49分ころ,Aが運転しBが同乗した本件自動二輪車が本件国道を時速約40㎞で走行してきたため,C警察官は,これを停止させる目的で,本件パトカーを本件国道上に中央線をまたぐ形で斜めに進出させ,本件自動二輪車が走行してくる車線を完全にふさいだ状態で停車させた。 付近の道路は暗く,本件パトカーは前照灯及び尾灯をつけていたが,本件自動二輪車に遠くから発見されないように,赤色の警光灯はつけず,サイレンも鳴らしていなかった。 (5)Aは,本件駐車場内に本件小型パトカーが停車しているのに気付き,時速約70~80㎞に加速して本件駐車場前を通過し逃走しようとしたが,その際,友人が捕まっているのではないかと思い,本件小型パトカーの様子をうかがおうとしてわき見をしたため,前方に停車した本件パトカーを発見するのが遅れ,回避する間もなく,その側面に衝突した(以下「本件事故」という。)。 (6)Bは,本件事故により頭がい骨骨折等の傷害を負い,同月14日午前1時13分ころ死亡した。 (7)本件事故によりBが受けた損害の額は合計6600万5364円であり,Bの両親である被上告人らは,Bの有する損害賠償請求権を各2分の1の割合で相- 3 -続した。被上告人らの固有の損害の額は各100万円である。 また,被上告人らは,損害の一部てん補として,56万5000円の支払を受け 人らは,Bの有する損害賠償請求権を各2分の1の割合で相- 3 -続した。被上告人らの固有の損害の額は各100万円である。 また,被上告人らは,損害の一部てん補として,56万5000円の支払を受けた。 原審は,次のとおり判断して,被上告人らの上告人に対する請求を,各2961万9645円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとした。 (1)C警察官が本件自動二輪車を停止させるために執った措置は,赤色の警光灯をつけず,サイレンも鳴らさずに片側1車線を完全にふさいで本件パトカーを停車させるという交通事故発生の危険が高いものであり,相当と認められる限度を超えるもので,自賠法3条ただし書所定の免責事由は存しないし,正当業務行為として違法性が阻却されるものでもない。したがって,上告人は,同条本文に基づき,被上告人らに対し損害賠償責任を負う。 (2)Aには前方注視義務違反及び制限速度違反が,Bにはヘルメット着用義務違反及びAと共に暴走行為をしてパトカーに追跡される原因を作ったという事情があることを考慮すれば,A,B,C警察官の過失割合は6対2対2である。 本件事故は,Bとの関係では,AとC警察官との共同不法行為により発生したものである。そして,AとBとの間に身分上,生活関係上の一体性はないから,過失相殺をするに当たってAの過失をいわゆる被害者側の過失として考慮することはできない。 したがって,上告人は,被上告人らに対して,Aと連帯して損害の8割を賠償する責任を負う。損害の一部てん補額を控除し,弁護士費用を加算すると,被上告人らの上告人に対する損害賠償の請求は,各2961万9645円及びこれに対する- 4 -遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理 告人に対する損害賠償の請求は,各2961万9645円及びこれに対する- 4 -遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 前記事実関係によれば,AとBは,本件事故当日の午後9時ころから本件自動二輪車を交代で運転しながら共同して暴走行為を繰り返し,午後11時35分ころ,本件国道上で取締りに向かった本件パトカーから追跡され,いったんこれを逃れた後,午後11時49分ころ,Aが本件自動二輪車を運転して本件国道を走行中,本件駐車場内の本件小型パトカーを見付け,再度これから逃れるために制限速度を大きく超過して走行するとともに,一緒に暴走行為をしていた友人が捕まっていないか本件小型パトカーの様子をうかがおうとしてわき見をしたため,本件自動二輪車を停止させるために停車していた本件パトカーの発見が遅れ,本件事故が発生したというのである(以下,本件小型パトカーを見付けてからのAの運転行為を「本件運転行為」という。)。 以上のような本件運転行為に至る経過や本件運転行為の態様からすれば,本件運転行為は,BとAが共同して行っていた暴走行為から独立したAの単独行為とみることはできず,上記共同暴走行為の一環を成すものというべきである。 したがって,上告人との関係で民法722条2項の過失相殺をするに当たっては,公平の見地に照らし,本件運転行為におけるAの過失もBの過失として考慮することができると解すべきである。 これと異なり,Aの過失はBの過失として考慮することができないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上の見解の下にBとC- 5 -警察官との過失割合等につき更に 審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上の見解の下にBとC- 5 -警察官との過失割合等につき更に審理を尽くさせるため,上記部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官古田佑紀裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋)
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