平成6(行ウ)6 土地改良事業計画決定等取消請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月28日 大津地方裁判所 公用負担・公用収用など
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判決文本文98,255 文字)

平成14年10月28日判決言渡平成6年(行ウ)第6号土地改良事業計画決定等取消請求事件口頭弁論終結日平成14年3月11日 主文 1 原告らの被告が平成6年1月24日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定の取消しを求める訴えをいずれも却下する。 2 別紙原告目録1記載の原告らの被告が平成6年7月14日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定に対する異議申立てを棄却及び却下する決定の取消しを求める訴えをいずれも却下する。 3 別紙原告目録2記載の原告らの被告が平成6年7月14日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定に対する異議申立てを棄却する決定の取消しを求める訴えをいずれも却下する。 4 別紙原告目録2記載の原告らの被告が平成6年7月14日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定に対する異議申立てを却下する決定の取消しを求める請求をいずれも棄却する。 5 別紙原告目録3記載の原告らの被告が平成6年7月14日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定に対する異議申立てを棄却する決定の取消しを求める請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判Ⅰ 原告ら 1 被告が平成6年1月24日付けで行った国営新愛知川土地改良事業計画の決定及び被告が原告らに対し平成6年7月14日付けでなした上記計画決定に対する土地改良法87条7項による原告らの異議申立てに関する決定をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 Ⅱ 被告 1 本案前の申立て(1) 原告らの訴えをいずれも却下する。 (2) 訴訟費用は原告らの負 いずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 Ⅱ 被告 1 本案前の申立て(1) 原告らの訴えをいずれも却下する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 2 本案に対する答弁(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要本件は,滋賀県内の愛知川扇状地に形成された1市8町にまたがる一定の地域を施行地域とし,農業用用排水施設として永源寺第2ダムを新設することを主な内容とする国営新愛知川土地改良事業(以下「本件事業」という。)につき,被告が平成6年1月24日付けで計画の決定を行ったところ,これに対し,異議申立てがあったが,被告が同年7月14日付けで,これを却下ないし棄却する決定をしたことについて,本件事業の施行地域に居住するなどする原告らが,本件事業の計画の決定は,土地改良法上の必要性,技術的可能性,経済性等の実体的要件を欠き,また,環境影響評価を行っていないなど手続的要件も欠くものであると主張して,上記計画の決定及びこれに対する異議申立てについての決定の取消しを求めた事案である。 Ⅰ 基礎となる事実(争いのない事実か証拠により認定した事実。なお,証拠により認定した事実については,認定の用に供した証拠を括弧内に掲記する。) 1 国営新愛知川土地改良事業計画(乙8)本件事業は,土地改良法(平成13年法律第82号による改正前のもの。以下単に「法」という。)85条,86条,87条等の規定に基づき国が事業主体となって行う土地改良事業であり,滋賀県の琵琶湖東部に位置し,愛知川の扇状地に形成された八日市市,安土町,永源寺町,五個荘町,愛東町,湖東町,秦荘町,愛知川町,豊郷町の1市8町にまたがる約 が事業主体となって行う土地改良事業であり,滋賀県の琵琶湖東部に位置し,愛知川の扇状地に形成された八日市市,安土町,永源寺町,五個荘町,愛東町,湖東町,秦荘町,愛知川町,豊郷町の1市8町にまたがる約7600ヘクタールの水田地帯を事業施行地域とし(以下「本件事業施行地域」という。),愛知川に第2ダムを建設して水源の転換とかんがい用水の安定供給により同地域における農業経営の安定と所得向上を図ることを目的とするものである。 本件事業の計画(以下「本件事業計画」という。)によれば,本件事業の内容は,本件事業施行地域のうち水田7500ヘクタールを受益面積として,その面積への用水補給のために,愛知川上流の茶屋川(滋賀県神崎郡永源寺町大字Γ地先)の地点にダム(以下「永源寺第2ダム」という。)を築造するとともに,本件事業施行地域内に調整池等を設置するというものである。なお,本件事業施行地域のかんがい用水の供給は,既存の永源寺ダム,愛知川頭首工,中小河川水,集水渠(地下水取水),湧水,ため池及び地下水揚水井戸によって行われている。 本件事業計画の概要は,次のとおりである。 (1) 永源寺第2ダム工事計画ア位置滋賀県神崎郡永源寺町大字Γ地先イ形式重力式コンクリートダムウ規模直接流域面積  29.4平方キロメートル間接流域面積  16.6平方キロメートル堤高 90.0メートル堤長 205.0メートル堤体積 34万7000立方メートルエ貯水量総貯水量 2570 堤長 205.0メートル堤体積 34万7000立方メートルエ貯水量総貯水量 2570万立方メートル有効貯水量 2480万立方メートル洪水吐の型式直線越流型洪水量毎秒730立方メートルオ付帯施設流域変更頭首工(御池頭首工)流域変更水路(御池導水路)(2) その他かんがい施設の工事計画幹線水路付帯工-調整池及び連絡水路,分水工整備,取水施設整備(大幹線,愛知幹線,愛知第一幹線,愛知第二幹線,愛知西幹線,宇曽川幹線,神崎幹線,蒲生幹線)(3) 事業費ア主要工事476億円(平成3年度単価)イ関連事業(都道府県営)3億円(平成3年度単価)(4) 工事の着手及び完了の予定時期着手平成5年度完了平成16年度 2 本件事業計画の策定過程(1) 国営土地改良事業計画の策定過程国営土地改良事業計画を策定する場合,通常は法に基づく手続の前に,土地改良事業計画直轄調査実施要領(昭和27年地局第686号)に基づき,都道府県知事から国営事業を前提とした調査を希望する旨の申請が行われる。当該土地改良事業が,農業用用排水施設の整備を内容とする国営かんがい排水事業である場合は,上記申請を受けて,農林水産省地方農政局長が,国営かんがい排水事業実施要綱(乙59)に基づき,調査(事業の実施の 該土地改良事業が,農業用用排水施設の整備を内容とする国営かんがい排水事業である場合は,上記申請を受けて,農林水産省地方農政局長が,国営かんがい排水事業実施要綱(乙59)に基づき,調査(事業の実施の必要性,技術的可能性,経済的妥当性について検討を行い,土地改良事業計画の案を作成するもの)及び全体実施設計(土地改良事業計画の案における工事計画に係る詳細な設計)を行う。なお,全体実施設計は,全体実施設計要綱(乙60)に基づき行うものとされている。 (以上,乙31,59,60)(2) 本件事業計画の策定過程本件事業計画の策定過程における調査及び全体実施設計は,昭和63年度から平成4年度までの間,近畿農政局淀川水系土地改良調査管理事務所(以下「淀川調査事務所」という。)及び近畿農政局計画部事業計画課が行い,国営新愛知川土地改良事業計画書(案)及び全体実施計画書(乙16の1ないし7)を作成した(乙31)。 3 本件事業計画決定等の経緯(1) 本件事業の申請ア本件事業施行地域について法3条に規定する資格を有する者(以下「3条資格者」という。)であるαほか23名(以下「本件申請人」という。)は,八日市市,安土町,永源寺町,五個荘町,愛東町,湖東町,秦荘町,愛知川町,豊郷町(以下「本件関係市町」という。)にわたる一定の地域を本件事業施行地域と定め,同地域にかかる土地改良事業計画の概要(農業用用排水)を定めた(法85条1項,2項。乙1の1,2の1)。 イ本件申請人は,平成4年11月24日付けで上記アの計画概要について,本件関係市町長の意見聴取を行った(法85条5項,5条3項)ところ,本件関係市町長のうち,永源寺町長を除く長は,平成4年11月25日から平成5年1月7 成4年11月24日付けで上記アの計画概要について,本件関係市町長の意見聴取を行った(法85条5項,5条3項)ところ,本件関係市町長のうち,永源寺町長を除く長は,平成4年11月25日から平成5年1月7日までの間に上記アの計画概要について異存がない旨の書面による回答をしたが,永源寺町長は,平成5年1月8日付けで7項目の事項の実現が図られることを条件とする旨を記載した書面を提出した(乙1の4の1ないし10)。 そこで,本件申請人は,国及び滋賀県に対して上記7項目への対応について照会し,永源寺町長とも再度協議したところ,平成5年1月13日付けで永源寺町長から手続を進めることについて了承する旨の回答を得た(乙3の1ないし6)ことから,本件申請人は,同年1月18日から同月22日までの間,計画概要・予定管理方法等を関係市町の事務所の掲示場に掲示することにより公告した(法85条2項,法施行規則55条,8条。乙1の2,乙2の1ないし3)。 ウまた,本件事業にかかる3条資格者の同意徴集が行われ(法85条2項),3条資格者9273名のうち,3分の2以上に当たる8820名の同意が得られた(乙1の3)。 エそこで,本件申請人は,平成5年3月8日,上記イにおいて公告した事項及び同意があったことを証する書面並びに関係市町長の意見を記載した書面を添付し,滋賀県知事を経由して,被告に本件事業の施行の申請を行った(法85条1項,6項,法施行規則57条の3。乙1及び4の各1,2)。 (2) 本件事業の適否の決定被告は,上記申請にかかる計画概要・予定管理方法等の書面に記載された事項について滋賀県知事と協議を行い,滋賀県知事から協議内容について異存がない旨の回答を得た上で,平成6年1月21日付けで,本件事業 被告は,上記申請にかかる計画概要・予定管理方法等の書面に記載された事項について滋賀県知事と協議を行い,滋賀県知事から協議内容について異存がない旨の回答を得た上で,平成6年1月21日付けで,本件事業を国営土地改良事業として実施することが適当である旨の決定を行い,その旨を本件申請人に通知した(法86条1項,2項。乙5の1ないし4,乙6の1及び2)。 (3) 国営新愛知川土地改良事業計画の決定被告は,本件事業計画を策定するため,専門技術者から本件事業について「国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)計画に対する専門技術者の調査報告書」(乙7。以下「調査報告書」という。)による調査報告を受けた(法87条2項,8条2項,3項)上で,平成6年1月24日付けで,法8条4項1号,施行令2条の各適法要件を具備しているとして,本件事業計画を決定した(法87条1項。乙8,9。以下「本件事業計画決定」という。)。 そして,被告は,上記事項を同月25日付けで官報に公告する(乙10)とともに,同月26日から同年2月23日までの間,「国営新愛知川土地改良事業計画書(農業用用排水)」の写し(乙8)を本件関係市町の各事務所において縦覧に供した(法87条5項,法施行規則59条,16条。乙11及び12の各1ないし9)。 (4) 異議申立て及びそれについての決定ア平成6年2月23日から同年3月10日までの間,βらは,被告に対し,289件の本件事業計画決定に対する異議申立てを行った(弁論の全趣旨。以下「本件異議申立て」という。)。 イ被告は,技術的,経済的事項について専門技術者の意見を求め(法87条7項),専門技術者から,「国営新愛知川土地改良事業計画に関する異議申立てに対する土地改良法第87条 という。)。 イ被告は,技術的,経済的事項について専門技術者の意見を求め(法87条7項),専門技術者から,「国営新愛知川土地改良事業計画に関する異議申立てに対する土地改良法第87条第7項の規定において準用する同法第8条第2項の規定に基づく報告書」(乙13)による報告を受けるとともに,異議申立内容等の確認等に関する補正命令を行った上で異議申立ての内容についての審査を行い,平成6年7月14日付けで,本件異議申立てのうち不適法な申立てと認めた268件については異議申立てを却下する旨の決定を,申立ての理由がないものと認めた21件については異議申立てを棄却する旨の決定を行い,同年8月4日にこれらの決定書の送付を完了した(弁論の全趣旨)。 なお,原告らのうち,別紙原告目録2記載の原告らについては異議申立てを却下する旨の決定(以下「本件却下決定」という。)がなされ,別紙原告目録3記載の原告らについては異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件棄却決定」という。)がなされた。 4 国営愛知川土地改良事業計画本件事業施行地域付近においては,昭和27年から昭和58年にかけて,同地域の用水不足を解消するとともにほ場整備事業等を実施することにより,農業経営の安定と農業生産性の向上を図るため,国営愛知川土地改良事業(以下「旧事業」という。)が実施された(ただし,昭和43年度及び昭和54年度に計画変更が行われた。)。 旧事業においては,愛知川の永源寺第2ダムより下流に位置する部分(滋賀県神崎郡永源寺町相谷・高野)に永源寺ダムが建設され,その他幹線用水路等の水利施設が建設された。 (以上,甲165,弁論の全趣旨)Ⅱ 争点 1 本案前の争点(1) 本件事業計画決定の取消しを求 に永源寺ダムが建設され,その他幹線用水路等の水利施設が建設された。 (以上,甲165,弁論の全趣旨)Ⅱ 争点 1 本案前の争点(1) 本件事業計画決定の取消しを求める訴えについて本件事業計画決定に対する取消訴訟を提起できるか否か。 (2) 本件異議申立てについての決定の取消しを求める訴えについて異議申立てを経ていない原告らの訴えは適法か否か。 2 本案の争点(1) 本件却下決定の取消しを求める訴えについて本件却下決定が違法であるか否か。 (2) 本件棄却決定の取消しを求める訴えについてア本件事業計画が実体的要件を充足しているか否か。 (ア) 必要性の要件(土地改良法施行令(平成13年政令第341号による改正前のもの。以下「施行令」という。)2条1号)を充足しているか。 (イ) 技術的可能性の要件(施行令2条2号)を充足しているか。 (ウ) 経済性の要件(施行令2条3号)を充足しているか。 (エ) その他の実体的要件(①環境配慮義務を尽くすこと,②周辺住民等の生命,身体,財産に対する配慮義務を尽くすこと,③その他の産業と調和すること)があり,それを充足しているか。 イ本件事業計画が手続的要件を充足しているか否か。 (ア) 事前に環境影響評価をする必要があるか。 (イ) 法85条2項の公告手続及び同意徴集手続に違法があるか。 (ウ) 専門家の調査報告(法87条2項,8条2項,3項)は十分なものであったか。 ウ被告の法86条に基づく適否の決定 項の公告手続及び同意徴集手続に違法があるか。 (ウ) 専門家の調査報告(法87条2項,8条2項,3項)は十分なものであったか。 ウ被告の法86条に基づく適否の決定自体が違法か否か。 エ 3条資格者以外の原告らの訴えが適法であった場合,行政事件訴訟法10条1項の主張制限が適用されるか否か。 Ⅲ 争点に関する当事者の主張 1 本案前の争点について(1) 本案前の争点(1)(本件事業計画決定取消訴訟提起の可否)について(被告の主張)法87条10項は,裁決主義を定めていることから,本件事業計画に不服のある者は,本件異議申立てについての決定に対してのみ取消しの訴えができるのであり,本件事業計画決定の取消しを求める訴えは不適法である。 (原告らの主張)法87条10項は,土地改良事業計画決定が取消訴訟の対象であることを当然の前提とする。このように解さなければ,国民の裁判を受ける権利(憲法32条)が害され,また,異議申立てについての決定に対する取消しの訴えで勝訴しても,土地改良事業計画がそのまま残るという問題が起こり,不当である。 (2) 本案前の争点(2)(異議申立てを経ていない原告らの訴えの適法性)について(被告の主張)ア裁決主義が採用される結果,取消しの対象は裁決以外にはあり得ないのであるから,裁決取消訴訟を提起するためには,少なくとも裁決を受けたことを要するところ,別紙原告目録1記載の原告らについては,異議申立てがないのであるから,これらの原告らの訴えは不適法である。 イ仮に,上記原告らが他人を名宛人とする裁決の取消しを求めていたとして ,別紙原告目録1記載の原告らについては,異議申立てがないのであるから,これらの原告らの訴えは不適法である。 イ仮に,上記原告らが他人を名宛人とする裁決の取消しを求めていたとしても,そのような訴えができるのは,当該裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限られる(行政事件訴訟法9条)ところ,上記原告らが本件異議申立てに対する決定について法律上の利益を有しているとは考えられず,これらの原告らの訴えは不適法である。 (原告らの主張)ア別紙原告目録1記載の原告らのうち次の者は,所属団体の名義で異議申立てをしているが,その際,個人としても異議申立てをしたものである。すなわち,(ア) 原告番号17,18,22,25,29,37の原告らは,ダム建設とまちづくりを考える町民の集い実行委員会の会員であるが,同委員会が異議申立てをしたことにより,個人としても異議申立てをしたものである。 (イ) 原告番号19,27,31,42の原告らは,永源寺町観光協会の会員であるが,同協会が異議申立てをしたことにより,個人としても異議申立てをしたものである。 (ウ) 原告番号24,27,30,31,34ないし36,38ないし41,44の原告らは,愛知川上流漁業協同組合の組合員であるが,同組合が異議申立てをしたことにより,個人としても異議申立てをしたものである。 (エ) 原告番号22,24,27,29,36ないし41の原告らは滋賀県神崎郡永源寺町大字Λの住民,原告番号25の原告は同町大字Σの住民,原告番号34,35の原告らは同町大字Φの住民,原告番号31の原告は同町大字Γの住民であるが,これらの各集落の区長らで構成される同町東 崎郡永源寺町大字Λの住民,原告番号25の原告は同町大字Σの住民,原告番号34,35の原告らは同町大字Φの住民,原告番号31の原告は同町大字Γの住民であるが,これらの各集落の区長らで構成される同町東部区長連絡協議会が異議申立てをしたことにより,個人としても異議申立てをしたものである。 (オ) 原告番号28の原告(ただし,被承継人亡γ)は,愛知川漁業協同組合の組合長として組合を代表して異議申立てをするとともに,個人としての資格でも異議申立てをしたものである。 イ仮に異議申立てを経ていない原告らがいたとしても,それらの原告らと主張を同じくする他の原告らが異議申立てを経由している場合には,異議申立てを経ていない原告らについても,異議申立てを経たものとみなすべきである。 2 本案の争点について(1) 本案の争点(1)(本件却下決定の違法性の有無)について(被告の主張)ア異議申立適格について裁決主義がとられている場合の異議却下決定の取消しを求める訴えにおける審理対象は,異議申立ての適法要件が欠けるとした裁決の判断であるから,本件では,異議申立適格がないとした本件却下決定の当否が審理対象となる。 ところで,法87条10項により異議申立てについての決定に対する取消しの訴えを提起できる「土地改良事業計画に不服がある者」とは,取消訴訟を提起できる者として行政事件訴訟法9条が規定する「法律上の利益を有する者」と同義であって,行政処分の根拠となる行政法規が特定の範囲の個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課している場合には当該権利利益の帰属主体である者が,上記行政法規が不特定多数者の具体的利益を て,行政処分の根拠となる行政法規が特定の範囲の個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課している場合には当該権利利益の帰属主体である者が,上記行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,そのような利益を有する者がこれに該当すると解するべきである。 これを法についてみると,法には,3条資格者以外の施行地域の近隣住民や隣接地で事業を営む者については,これらの者の個別の権利利益を直接保護する旨定めた規定はなく,法の趣旨を達成するため,3条資格者以外の者についての環境,生命,身体,財産等の個別的利益が配慮されることがあったとしても,それらは事業計画上配慮される公益の中に吸収,解消されるべきものであって,個別的権利利益として直接保護すべきものとするものではない。 したがって,3条資格者でない者は,異議申立適格を有しない。 イ 3条資格者該当性について本件異議申立てを行った別紙原告目録2及び3記載の原告らのうち,3条資格者は,同目録3記載の原告らだけである。 原告番号48,50の各原告らは,いずれも関連すると思われる事業地区内の受益農用地の所有名義人ではなく,3条資格者ではない。 したがって,同目録2記載の原告らの本件異議申立てを却下した裁決は適法である。 (原告らの主張)ア異議申立適格について(原告らは,「原告適格」として主張しているが,異議申立適格がないとした本件却下決定の当否を判断するにあたっては,異議申立適格の有無を判断 (原告らの主張)ア異議申立適格について(原告らは,「原告適格」として主張しているが,異議申立適格がないとした本件却下決定の当否を判断するにあたっては,異議申立適格の有無を判断する必要があるところ,原告らが「原告適格」の有無として主張するところは,本件事業計画決定に対する「異議申立適格」の有無の主張としてもほぼ同内容になると考えられることから,ここでは「異議申立適格」の有無として記載することとする。)(ア) 3条資格者には異議申立適格がある。 (イ) 愛知川上流上流漁業協同組合の組合員である原告らの異議申立適格原告番号3,7,9,12,14,15,20,22ないし25,27,30ないし36,38ないし41,44の各原告は,いずれも愛知川上流漁業協同組合の組合員であり,漁業者であって,永源寺ダムの上,下流で漁業を営む者であるところ,永源寺第2ダムが建設されると,富栄養化,濁水,河川の掘削等による河川環境の悪化のために,漁業が営めなくなり,自己の営業上の利益を侵害されるから,上記原告らには異議申立適格がある。 (ウ) 永源寺ダム,永源寺第2ダム下流の愛知川沿岸に居住する原告らの異議申立適格原告番号44,51,52の原告らを除く49名の原告らは,いずれも永源寺ダムの下流の愛知川沿岸または同ダムの後背地で永源寺第2ダムの下流に当たる愛知川沿岸に宅地・建物,農地などを所有し,生活している者である。そして,永源寺第2ダムの建設は,過去に愛知川流域で起こった洪水等による流域住民の生命,財産等の被害と同様の被害を発生する可能性を増大させるものであり,愛知川沿岸に居住する原告らは,その生命,身体,財産その他生活上の利 ダムの建設は,過去に愛知川流域で起こった洪水等による流域住民の生命,財産等の被害と同様の被害を発生する可能性を増大させるものであり,愛知川沿岸に居住する原告らは,その生命,身体,財産その他生活上の利益を侵害されるおそれがあるから,これらの原告らには異議申立適格がある。 イ 3条資格者該当性について原告らのうち,3条資格者は原告番号1,2,4ないし6,16ないし18,48,50の原告ら10名である。 これらの者のうち,原告番号18,48,50の原告らについて,被告は,土地の所有名義人が異なるなどとして3条資格者該当性を否認する。しかし,本件事業計画に関する3条資格者の同意徴集にあたって,本件申請人及び愛知川沿岸土地改良区(以下「改良区」という。)は,3条資格者の認定について,「地主とは,同一家族内で全ての所有者を同一地主とみなす。同一家族で,祖父,父,子名義で,改良区賦課は子であれば,地主は子とみなす。」としているのであるから,土地所有者名義人が誰であっても,土地改良区の賦課名義人であれば3条資格者に該当すると解すべきである。したがって,原告番号18,48,50の原告らも3条資格者である。 (2) 本案の争点(2)ア(本件事業計画の実体的要件充足の有無)についてア必要性の要件(施行令2条1号)について(被告の主張)施行令2条1号は,土地改良事業の基本的要件の1つとして,事業の必要性を定めているところ,本件事業計画策定時点における本件事業施行地域の現況についてみると,自然的条件としては,愛知川が用水として利用困難な状況にあること,営農形態の変化などから,農業用水の必要量が増大しており,多くのほ場において,極 画策定時点における本件事業施行地域の現況についてみると,自然的条件としては,愛知川が用水として利用困難な状況にあること,営農形態の変化などから,農業用水の必要量が増大しており,多くのほ場において,極めて深刻な用水不足が生じていて,このため,かんがい用水の安定確保のために多大な労力と費用を要している実情にあった。また,社会経済的条件としては,かんがい用水の安定確保のために極めて多大な労力と費用を要していることが,水稲作の規模拡大を妨げ,田畑輪換による水田の高度利用及び大型機械の導入等による農業の生産性の向上等を阻害していた。 以上のような条件からみて,水不足を解消するため,永源寺ダムの上流に永源寺第2ダムを新設し,また,調整池を設けるなどして安定した水源を確保することは,農業用水の安定確保のために必要としていた多大な労力と費用を大幅に軽減し,農業の生産性,特に労働生産性の向上に大きく資することは明らかであり,また,ほ場の条件が良くなることにより農業経営の規模拡大による農業構造の改善に資するほか,干ばつ時における米の品質低下を防いで農業総生産の増大に資することも明白で,本件事業の施行の必要性は極めて高い。 したがって,本件事業計画は,必要性の要件に適合している。 (原告らの主張)(ア) 必要性判定の原則と基準について施行令2条1号によって事業の必要性という厳格な要件が要求されているのは,土地改良事業は,通常の公的事業と異なり,受益者が特定の地域の一部の人々に限定されているためであり,ことにダムの建設を含む土地改良事業の場合は,多額の公費を投入し,一部の受益者のために大規模な自然環境の破壊を伴う事業を行うことになることから,通常の 定の地域の一部の人々に限定されているためであり,ことにダムの建設を含む土地改良事業の場合は,多額の公費を投入し,一部の受益者のために大規模な自然環境の破壊を伴う事業を行うことになることから,通常の公共事業に比べて特に高い必要性が要求される。そして,必要性判断にあたって考慮すべき項目要素の取捨選択や判断は,その対象地域の農業実態に即したものであり,計画実施によって期待される効果を発生させ,目的を実現できるものであるかという観点から適正かつ合理的に実施されなければならない。 また,取消訴訟の役割は,現在まで継続している処分の効力を維持すべき理由があるか否かを判断することにあるから,違法性判断の基準時は,口頭弁論終結時とすべきである。 (イ) 本件事業計画の必要性の有無a 必要水量の増大について調査報告書は,旧事業実施後も,ほ場整備の進展,営農形態等の変化により必要水量が増大していると結論づけている。しかし,必要水量の変化を裏付ける資料がない。 なお,旧事業終了後である平成元年から同11年までの旧事業計画による計画水源からの取水実績は年平均1億4227万7000トンにすぎず,旧事業における水源施設の利用可能水量で,旧事業の計画変更時における計画必要用水量である1億7750万トンを下回っている。特に,旧事業に基づく水利計画は,永源寺ダム以外に地下水や小河川,ため池などの補助水源からも取水して受益地の農業用水を賄うことのできる水利構造として計画されているところ,補助水源からの利用可能水量は5430万トンであるのに対し,平均取水実績は約半分の2837万6000トンにすぎない。このことは,旧事業の計画及び変更の時点 のできる水利構造として計画されているところ,補助水源からの利用可能水量は5430万トンであるのに対し,平均取水実績は約半分の2837万6000トンにすぎない。このことは,旧事業の計画及び変更の時点から必要水量が増大していないことを示すもので,この点からも本件事業計画は必要性を欠くことは明らかである。 さらに,減反政策や農地転用によって水田面積が減少しているのだから,必要水量は減少していく可能性が高い。 b 水不足の有無について調査報告書には,「その他水源である井戸,湧水等が地下水位低下による取水量の減少から水不足が発生しており」とあるが,水不足を検証し得るに足りる合理的な資料が存在せず,また,水需要予測の前提となった水の使い方自体に疑問がある。 また,上記aのとおり,旧事業終了後の用水使用実績は旧事業の計画必要用水量(利用可能量,水需要予測水量)を下回っているのであり,そのような現況下においては,旧事業の水源施設に利用可能量の余裕があるのであるから,水不足があるとは認められず,本件事業計画は必要性を欠く。 c 揚水機の維持管理の労力及び費用について調査報告書には,「揚水機等の維持管理に多大の労力と費用を要している」とあるが,計画基準年における資料及びその過去からの推移や将来に関する資料がなく,これを裏付けるものはない。 d 受益面積について(a) 現在の受益面積について調査報告書によれば,受益面積は約7500ヘクタールとなっているところ,平成2年度の農業センサスに (a) 現在の受益面積について調査報告書によれば,受益面積は約7500ヘクタールとなっているところ,平成2年度の農業センサスによれば受益地域の経営耕地面積は7033ヘクタールにすぎず,受益面積の評価は過大である。 また,法2条2項2号に規定されている土地の区画形質の変更を内容とする土地改良事業(以下「ほ場整備事業」という。)が完了している地域については,ほ場整備事業実施済み面積と受益面積が一致するはずであるところ,本件事業施行地域のうち,ほ場整備事業が完了し,その全部が受益地となる愛東町,湖東町,秦荘町においては,ほ場整備事業実施済み面積より受益面積の方が大きく,被告主張の受益面積は過大である。 さらに,受益面積と改良区の経営賦課金徴収面積も一致するはずであるところ,前者の方が大きく,この点からも被告主張の受益面積は過大である。 (b) 将来の受益面積について本件事業計画における受益面積の計算は,受益地すなわち農地が年々減少している現実を全く無視したもので,合理性を欠く。 (被告の反論)(ア) 必要性判定の原則と基準について土地改良事業の内容がダムの建設を含むからといって,殊更に特に高い必要性が要求されてはいない。 また,行政処分取消訴訟において裁判所が行政処分を取り消すのは,当該処分が処分当時に違法であったことを事後的に審査してその効力を失わせるのがその本質であるから,違法性判断基準時は処分時である。 (イ) いて裁判所が行政処分を取り消すのは,当該処分が処分当時に違法であったことを事後的に審査してその効力を失わせるのがその本質であるから,違法性判断基準時は処分時である。 (イ) 本件事業計画の必要性の有無a 必要水量の増大について本件事業施行地域においては,ほ場整備の進展,営農形態の変化,高品質米需要の増加により,必要水量が増大した。 b 水不足の有無について本件事業施行地域は,地下水位の低下等により,必要水量が確保し難い状況となっていた。そして,用水不足量は,諸調査に基づいた諸元により計算し,時期別必要用水量を控除して算出したものであり,本件事業施行地域内における用水不足や厳しい用水管理状況の実態は明らかである。また,水の使い方に問題があり,水を節約すべきとする原告らの主張は,本件事業計画が,農家が負担している多大な労力と費用を節減し,もって農業の生産性の向上による農家経営の安定と所得向上を図ろうとするものであることを全く理解していないものである。 c 揚水機の維持管理の労力及び費用について本件事業施行地域では,水不足に対応するため,愛知川沿岸土地改良区による用水の対応・管理及び各末端ほ場における節水管理を行っていたが,各農家では揚水量が不安定で維持管理に多大な労力及び恒常的な出費を要する揚水機付き井戸に依存せざるを得ない状況にあったのであり,その実態は現在も基本的には変わっていない。 また,土地改良事業計画は,あくまでも地域の土じょう,水利その他の自然的,社会的及び経済的環境についての計画策定時点における現況 態は現在も基本的には変わっていない。 また,土地改良事業計画は,あくまでも地域の土じょう,水利その他の自然的,社会的及び経済的環境についての計画策定時点における現況を基にして策定されるものであり,過去から現在に至るまでの諸条件の推移や将来予測は必要でない。 d 受益面積について(a) 現在の受益面積について本件事業の受益面積の算定は,ほ場整備事業実施済み地域等についての確定測量面積等とほ場整備事業未実施地域における図測面積を集計したものから,将来建設される道路・水路敷面積を減ずる方法により行い,その結果算定された面積7500ヘクタールを受益面積としたものである。 農業センサスは,すべての農家を対象としたものではないし,調査員の聞き取り等の方法により,属人的な経営面積を集計したものであるから,上記受益面積と算定方法が異なり,これを前提とした原告らの主張は当たらない。 また,本件事業の受益面積には,原告らがほ場整備事業が完了した地域と主張する町(愛東町,湖東町,秦荘町)におけるほ場整備事業の予定されていない地域が含まれるから,ほ場整備実施済み面積と本件事業の受益面積とは一致するものではない。 さらに,改良区の経常賦課金徴収面積は,ほ場未整備地区にあっては土地登記簿上の面積で算定されており,賦課金保留区域や本件事業により加入予定の新規受益地があることなどから,同面積と本件事業の受益面積とは一致するものではない。 (b) 将来の受益面積について農用 入予定の新規受益地があることなどから,同面積と本件事業の受益面積とは一致するものではない。 (b) 将来の受益面積について農用地の転用は,予測することが極めて困難であり,また,土地改良事業計画を策定するためには,極力客観的な資料に基づき検討する必要があることから,受益面積の算定は,農用地の転用などの将来予測できない変動要因は含まず,計画策定時点における現況での面積を集計すべきものであり,仮に計画策定後に変動が生じた場合には計画変更の手続により対応すべきものである。 イ技術的可能性の要件(施行令2条2号)について(被告の主張)(ア) 施行令2条2号は,土地改良事業の基本的要件の1つとして,技術的可能性の要件を定めている。本件事業は,土地改良事業のうちいわゆるかんがい排水事業(農業用用排水施設の新設変更を行うもの)であるところ,そのような場合,技術的可能性の要件は,施設を築造する候補地があるだけでなく,その貯水量,ダムの位置,地盤,水路の路線等の技術的問題が解決され得ることが科学的に立証されることを要求している。 (イ) そして,本件事業は,法,施行令及び法施行規則その他の法令の定めに従って,計画,実施の細則を定めるものである「国営かんがい排水事業実施要綱の制定について」(乙59)に基づき行われるところ,この要綱において,事業の採択に先立ち,原則として全体実施設計要綱(乙60)に基づく全体実施設計を行うものとされており,全体実施設計要綱には,全体実施設計は,土地改良事業計画設計基準及び関係法令等に準拠して行うものと定められている。この土地改良事業計画設計基準には,国営土地改良事業によって造成する施 のとされており,全体実施設計要綱には,全体実施設計は,土地改良事業計画設計基準及び関係法令等に準拠して行うものと定められている。この土地改良事業計画設計基準には,国営土地改良事業によって造成する施設の設計に必要な事項を施設の種類ごとに定めた土地改良事業計画設計基準(設計)(以下,ダムについての設計基準である昭和56年4月1日付け通達を「ダム設計基準」という。)と,事業計画策定に必要な技術的基礎諸元,判断基準について定めた土地改良事業計画設計基準(計画)があり,これらは,専門的知識を有する学識経験者からなる委員及び幹事によって基準原案が作成され,この基準原案について,かんがい排水審議会に諮問し,その詳細な検討審議会を経て制定されたものである。 したがって,施設の築造の場合,上記各設計基準を満たす計画は,その貯水量,ダムの位置,地盤,水路の路線等の技術的問題が解決され得ることが科学的に立証されたものというべきである。 (ウ) 本件事業計画は,新たに永源寺第2ダムを築造するとともに本件事業施行地域内に調整池を配置し,これらの施設によって確保した用水を永源寺ダム及び幹線水路等を経由して本件事業施行地域に配水するものであるところ,本件事業計画における施設は,以下のとおり,上記(イ)の土地改良事業計画設計基準の要件を満足したものであり,また,専門家の報告書においても適当と認められたものであって,技術的可能性の要件を満足していることは明らかである。 a 永源寺第2ダムダムの設置位置の選定については,淀川調査事務所が,ダム設計基準に従い,地質調査を実施したところ,愛知川支流古語録谷川合流部下流地点がダム基礎として良好な基盤が得られると確認された。 ダムの設置位置の選定については,淀川調査事務所が,ダム設計基準に従い,地質調査を実施したところ,愛知川支流古語録谷川合流部下流地点がダム基礎として良好な基盤が得られると確認された。 ダム本体の構造については,ダム設計基準に基づいて設計しており,ダムの強度,滑動及び転倒について所定の安全率を満たしている。 ダム設計洪水流量は,ダム設計基準に従い,毎秒730立法メートルとし,また,洪水吐についても,ダム設計基準に従い,重力式コンクリートダムで通常採用されるのと同様に,流入部は直線越流型,導流部は堤体流下式とし,副ダム式の減勢工を設けることとしている。なお,永源寺第2ダムは流域面積が小さいことから,ダム設計基準に従い,ゲートレスダムとしている。 そして,現地調査を実施した専門技術者は,ダムの形式等の基本的な構造及び形状については適切と考えられるとの意見を述べた。 b その他の施設調整池等についても,土地改良事業計画設計基準の要件を満たしている。なお,これらの施設は一部完成しており,技術的可能性が問題にならないことはいうまでもない。 (原告らの主張)(ア) 技術的可能性の要件の判定における原則法施行令2条2号の規定する技術的可能性の要件は,永源寺第2ダムの築造や構造に限らず,本件事業計画全体が計画どおりに実現可能であるかを,社会的環境,経済的環境,自然環境の各側面にわたって自然科学的な観点から検討すべきことを要求したものと理解すべきものである。 そして,本件事業計画は,以下のとおり, かを,社会的環境,経済的環境,自然環境の各側面にわたって自然科学的な観点から検討すべきことを要求したものと理解すべきものである。 そして,本件事業計画は,以下のとおり,技術的可能性の要件を充足しないもので,違法なものである。 (イ) 治水上の安全性について永源寺第2ダムは,利水専用ダムであり,治水ダムではないところ,堤頂に洪水吐が設置され,これが自然越流式となっているから,洪水に備えて予備放流することは不可能である。すなわち,堤体満杯に近い状態で洪水を迎えた場合,洪水初期の小流量の段階では洪水を貯め込み,洪水が大きくなった段階で貯水池は満杯となり,越流量も増加して,その結果,大量放水が下流域を襲うことになる。また,御池頭首工が洪水調節機能を果たすこともあり得ない。 さらに,永源寺第2ダムにおいては,堆砂の進行や茶屋川・愛知川の河道貯留機能の低下により,洪水による災害を引き起こす危険性が高い。 したがって,永源寺第2ダムは治水上の安全性を欠くものである。 (ウ) 貯水可能性について永源寺第2ダムは,集水流域面積が46平方キロメートルと小さく流入量が少量しか期待できない(計画基準年である昭和39年の年間総流水量は4209万トンしかない。)のに,下流の発電所の既得水利権が大きい(年間総量は3474万8000トン)ことから,多量に放流しなければならない条件下にあり,極めて貯水効率が悪く,計画どおりの取水(計画用水量2450万トン)を実現できない可能性が高い。 (エ) 濁水対策・富栄養化対策について永源寺第2ダムは 水効率が悪く,計画どおりの取水(計画用水量2450万トン)を実現できない可能性が高い。 (エ) 濁水対策・富栄養化対策について永源寺第2ダムは,茶屋川と御池川の流域の地形,地質,林相などから,濁水発生の可能性が高く,また,湖水交換率が異常に低いことから,深刻な富栄養化問題が生じる可能性が高いのであるから,濁水対策,富栄養化対策が必要である。ところが,被告が検討している対策であるバイパス水路建設は,河川環境に致命的な影響を与えたりダム湖の富栄養化を促進したりするなどの新たな問題を生じさせるもので,濁水及び富栄養化をいずれも解決できるような対策は見出されていない。 仮に何らかの対策を講じるとしても,その費用等は全く計上されていないから,計画の変更手続が必要となる。 (オ) 河川流水の収奪による河川環境の破壊について永源寺第2ダム建設後は,茶屋川は河川維持流量を確保できないことになり,また,集水が予定されている御池川も河川維持流量を確保できない可能性が高く,両河川の河川環境が悪影響を受けることになる。 したがって,河川環境保全の必要からすれば,本件事業計画は自然科学的に見て実現不可能である。 (被告の反論)(ア) 技術的可能性の要件の意義施行令2条2号の要件は,土地改良事業が目的とする農業上の利益を保護する観点から要請される限度で技術的問題が解決され得ることを意味するものであるところ,本件事業計画のようにダムの建設を伴う土地改良事業計画においては,地質・地形等の自然的条件を基礎とした工学的な見地から見て当該ダムの建設予定位 技術的問題が解決され得ることを意味するものであるところ,本件事業計画のようにダムの建設を伴う土地改良事業計画においては,地質・地形等の自然的条件を基礎とした工学的な見地から見て当該ダムの建設予定位置が適切か,当該地域の気象条件や流域の地形条件等から見て当該土地改良事業計画で要求される農業用水の水量が当該ダムに安定的に貯留することができるのか,当該ダムに貯留される水が農業用水として適切な水質基準を満足するものとして確保できるのか,当該ダムに貯留した水が既往のあるいは当該事業で新設または改良される農業用水路等を通じて農用地に適切に配水されるのか等の農業用用排水施設としての技術的問題が解決され得ることが科学的に立証されることを要求しているものであるにとどまる。 (イ) 治水上の安全性についてa 技術的可能性の要件に,下流における治水上の安全性を備えていることまでは含まれない。 b 永源寺第2ダムは,利水ダムであり,治水ダムと異なり,洪水調節を目的としたものではないが,洪水流量の予測も相当で,直線越流型の洪水吐,副ダム式の減勢工を予定しており,法令に規定されている一般的な技術水準に適合していて,ダムの構造上の安全性に欠けるところはない。 また,利水ダムであってもダムに空容量(最大貯留可能量と当該時点の貯水量との差)がある場合,洪水の貯留が可能となるため,結果的に洪水調整機能を発揮する場合がある。 したがって,永源寺第2ダムの建設により洪水等の危険性が増大するものではない。 (ウ) 貯水可能性について土地改良事業計画設計基準においては,水源計画は計画地区における ダムの建設により洪水等の危険性が増大するものではない。 (ウ) 貯水可能性について土地改良事業計画設計基準においては,水源計画は計画地区における最適な取水が継続して確保できるように合理的に計画することとされているところ,永源寺第2ダムの貯水可能量は,実測流量等を基礎に計算しており,ほとんどの年において,ダムの有効貯水量を十分上回る水量が確保されている。したがって,貯水可能性に欠けることはない。 (エ) 濁水対策・富栄養化対策についてa 濁水や富栄養化の有無は,技術的可能性の要件に含まれるものではない。 b 仮に水質の点が問題になるとしても,土地改良事業においては,農業用水としての技術的利用可能性が問題となり得るにすぎないところ,永源寺第2ダムについては,その建設予定位置や,その構造,さらに河川への放流水をれき等のフィルターを通して浄化する施設や多段式取水ゲートといった施設が予定されていることなどからすれば,農業用水として必要な水質は確保されている。 また,永源寺第2ダム付近の状況に照らせば,その建設によって著しい濁水,富栄養化が生じることは考え難い。 なお,被告は,永源寺第2ダムから放流される水の水質保全に一層配慮していくことを今後の検討課題としているが,そのことと,本件事業計画の適法性の判断とは関係がない。 (オ) 河川流水の収奪による河川環境の破壊について河川流量は河川法上の許可の要件であるが,技術的可能性の概念に含まれるものではないし,原告らが問題としている環境保護も本件事業計画の要件でない。 る河川環境の破壊について河川流量は河川法上の許可の要件であるが,技術的可能性の概念に含まれるものではないし,原告らが問題としている環境保護も本件事業計画の要件でない。 なお,年間を通じて考えれば,永源寺第2ダムがある場合とない場合では河川の流量はほとんど変わらないのであって,河川流量により環境が損なわれるということにはならない。また,河川維持流量は,御池頭首工建設予定地点及び永源寺第2ダム建設予定地の双方とも,適切に設定している。 ウ経済性の要件(施行令2条3号)について(被告の主張)施行令2条3号は,土地改良事業計画の基本的要件の1つとして経済性の要件を定めているところ,これは,事業に要するすべての費用が,その結果生ずる直接効果(増産効果,労働力の節減等)及び波及効果(土地改良事業の施行によって雇用機会が増大し,建設事業の需要を促す等の国民経済的効果を含む。)によってつぐなわれなければならないことをいうのであって,投資効率が当該事業全体で1.00以上となれば,当該事業が経済的に見て適正かつ妥当であると認められるというべきである。 本件事業計画策定にあたっては,「土地改良事業における経済効果の測定方法について」(昭和60年7月1日付け60構改C第688号農林水産省構造改善局長通達。乙14。)に従って,概略以下の方法で投資効率を算定したところ,1.04となったものである。したがって,直接効果のみにおいても事業費投資を上回る効果の発現が見込まれるのであって,本件事業計画は,経済性の要件に適合するように定められていることは明らかである。 (ア) 投資効率 みにおいても事業費投資を上回る効果の発現が見込まれるのであって,本件事業計画は,経済性の要件に適合するように定められていることは明らかである。 (ア) 投資効率投資効率は,その事業及び関連事業実施に必要な費用(事業費)の総額と妥当投資額(事業により生ずる年効果額をその事業の耐用年数間に生ずる総効果額に換算した額)を対比することにより測定する。 (イ) 妥当投資額妥当投資額は,年総効果額を資本還元(将来収益を生むと予想される資産の価値を評価すること)するため,現在の価値価格を算定したものであり,次の算式により算定する。 年総効果額妥当投資額=────────────── - 廃用損失額還元率×(1+建設利息率)(ウ) 年総効果額年総効果額は,各効果項目ごとの年効果額を合算して算定するもので,「経済効果の測定における年効果額等の算定方法及び算定表の様式について」(昭和60年7月1日付け60構改C第689号農林水産省構造改善局長通達。乙19。)に従い,「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について」(昭和60年7月1日付け60構改C第690号農林水産省構造改善局長通達。乙15。)に定められた諸係数を適用して算定するものである。 所定効果項目は,作物生産効果,営農経費節減効果,維持管理費節減効果及び更新効果であり,これらそれぞれについて,計画策定時点において,本件事業及び 定するものである。 所定効果項目は,作物生産効果,営農経費節減効果,維持管理費節減効果及び更新効果であり,これらそれぞれについて,計画策定時点において,本件事業及び関連事業の実施後に発生することが見込まれる各年効果額を合算したものが年総効果額であり,本件事業でこれを算定すると,29億7931万1000円である。 a 作物生産効果作物生産効果は,事業により水利が開発又は改良されること等に伴って発生する作物の量的増減等に関する効果である。 本件事業の年効果額は,水管理改良効果,作付増減効果及び稲作転換効果の和である3億5033万7000円と算定された。 b 営農経費節減効果営農経費節減効果は,事業の実施に伴って営農技術体系,経営規模等が変化することにより作物生産に要する費用が節減される効果である。 本件事業の年効果額は,ほ場条件の改善に伴う作業効率改善により営農に要する年経費が節減される額と,用水改良に伴って個々の農家における営農レベルの水管理に要する年経費が節減される額とを合算した8640万2000円と算定された。 c 維持管理費節減効果維持管理費節減効果は,事業により水利施設等が新設又は改良されることに伴って水利施設の維持管理に要する費用が増減する効果である。 本件事業の年効果額は,①新たに造成する諸施設,②旧事業により設置された施設を改良する用水管理施設,③調整池として改修するため池及び④補助水源 減する効果である。 本件事業の年効果額は,①新たに造成する諸施設,②旧事業により設置された施設を改良する用水管理施設,③調整池として改修するため池及び④補助水源として依存していた揚水機付き井戸について,それぞれ計画策定時点における年経費と本件事業実施後に想定される年経費との差額であり,6億2666万2000円となる(なお,計画策定時点では,算定に誤りがあり,145万7000円高く算定されていた。)。 d 更新効果更新効果とは,事業により廃用する施設の機能を代替する施設を新たに建設する場合において,廃用施設の下で行われていた農業生産が廃用施設の機能喪失予定期に喪失せずに新たに建設される施設の下で引き継がれる効果である。 本件事業では,揚水機付き井戸が永源寺第2ダム及び調整池に水源転換され,ため池が調整池に改修されるが,これらの井戸及びため池について,計画策定時点における現況の施設機能を有する施設を再建設するために必要な最経済的事業費を算定し,各施設ごとに耐用年数に応じた還元率を乗じて得た額を合算して年効果額を算定したところ,19億1591万円となった。 (エ) 廃用損失額廃用損失額は,土地改良事業により廃用する施設のうち,耐用年数の残存する施設等が廃用されることによる損失額であり,本件事業では,廃止される揚水機付き井戸のうち耐用年数が尽きていない施設の未償却資産額を合算して1億4855万1000円と算定した。 (オ) 投資効率の算定前記(ウ)の通達にしたがい,還元率0.0561,建設利 償却資産額を合算して1億4855万1000円と算定した。 (オ) 投資効率の算定前記(ウ)の通達にしたがい,還元率0.0561,建設利息率0.0650を用いて本件事業の妥当投資額を算定すると,497億5600万円となる。 また,本件事業の総事業費は,本件事業の事業費476億円と関連事業のほ場整備事業費3億円を合算した総額479億円である。 これらにより投資効率を算定すると1.04となる。 (原告らの主張)(ア) 経済性の判断基準について施行令2条3号の要件を充足するための経済性の判断は,行政機関の自由裁量に委ねられるべきものではなく,少なくとも費用便益分析(便益の現在価値と費用の現在価値の比率に基づく分析)が行われ,その結果として投資効率が少なくとも1.00を上回ることが必要であり,その前提として効果と費用は社会的実態に即した現実的なものである必要があり,さらに,経済性の観点から代替案との比較検討がなされ,当該事業が最経済的であることが検証されている必要がある。 ところが,被告による経済性判断は以下のような問題点を有しており,その判断は裁量権を逸脱した違法なものである。 (イ) 被告による経済効果の算定について被告による経済効果の算定は,以下のとおり,過大に見積もられている一方,事業費の算定が過小であるから,投資効率が過大に算定されているもので,正確に算定すれば投資効率は1.00を大きく下回るものである。 a り,過大に見積もられている一方,事業費の算定が過小であるから,投資効率が過大に算定されているもので,正確に算定すれば投資効率は1.00を大きく下回るものである。 a 作物生産効果について作物生産効果の計算の基礎となった生産計画によれば,水稲が減少し,野菜など水稲以外の生産物が増加することになっているが,農業人口が減少し,兼業農家が増加しつつある本件受益地内の農業実態を前提にすれば,水稲より多くの労力を要する水稲以外の作物が増加することを前提とした計画は,実状と矛盾する。このことは,旧事業完了後,米の作付け面積はもちろん,畑の面積も減少していることからも明らかである。 また,被告による作物生産効果の算定は,本件事業計画により裏作が増加することはあり得ないのにこれが増加することを前提としている点,さらに,減反政策による耕地面積全体が減少することを考慮していない点でも不合理である。 b 営農経費節減効果について被告は,本件事業計画において,水管理労働の節減効果とほ場整備による労働・機械経費等の節減効果を算定しているというが,その81.9パーセントを占める前者については,本件事業計画によって節減されることの合理的な説明がされていない。 c 維持管理費節減効果について維持管理費節減効果の算定は,事業の実施前における既往年経費から事業の実施後における計画年経費を控除して算出することとされているところ,被告によるそれぞれの年経費の算出方法は,以下のとおり合理性がない。 (a) 廃用予定 費から事業の実施後における計画年経費を控除して算出することとされているところ,被告によるそれぞれの年経費の算出方法は,以下のとおり合理性がない。 (a) 廃用予定の揚水機付き井戸について① 廃用予定とされる903か所の揚水機付き井戸が実際に存在するのか不明である。 ② 903台の揚水機の廃止が前提とされているが,受益地内の農家の実状に鑑みれば揚水機の多くが廃止されるとは考えられず,このことは,揚水機の廃止が計画された旧事業完了後も揚水機を使い続けざるを得なかった地域があったことからも明らかである。 ③ 昭和58年以前に設置されていた末端揚水機については,既に旧事業計画で廃止することとされていたものであり,そこで維持管理費節減効果として効果算定されていたから,本件事業計画において算入してはならないものである。 (b) 年経費について① 既往年経費の調査がいつどのような方法によってなされたのか明らかでなく,特に揚水機の管理所要時間及び末端揚水機の賦役は聞き取り調査によるものと思われるが,聴取者や聴取時期が不明であるし,これに対してどのような検証を経たかも明らかでないから,調査の信用性は確保されていないといわざるを得ない。 ② 揚水機にかかる賦役のうち,末端用水路の排水状況の確認や番水などは維持管理費に含まれないか,含まれたとしても軽減されこそすれなくなることはないし,末端用水路の清掃,草刈り等にかかる賦役は,揚水機が廃止されてもほとんど影響を受けないのであって,これらも節減されるというのは 費に含まれないか,含まれたとしても軽減されこそすれなくなることはないし,末端用水路の清掃,草刈り等にかかる賦役は,揚水機が廃止されてもほとんど影響を受けないのであって,これらも節減されるというのは過大評価である。 ③ 揚水機にかかる賦役時間は,被告によれば年間460時間から年間760時間とされているが,その内訳や作業内容が不明であり,原告らによる聞き取り調査の結果が平均39時間42分であることと比較しても過大である。 ④ 被告が主張する維持管理費は主として電気代であるが,高額すぎる。 d 更新効果について被告による本件事業計画における経済効果算定においては,揚水機廃用に伴う更新効果が経済効果の大半を占める。しかし,(a) 前記c(a)のとおり,廃用予定とされる903台の揚水機が実際に存在するのか不明であるし,現在利用されている揚水機の利用・管理状況や地域の農業水利のあり方から見て,その多くが廃止されることはない。 (b) 廃用される施設である揚水機,ため池に関する最経済的事業費の根拠が不明である。特に被告が廃用するとしている903台の揚水機のうち,昭和62年までに耐用年数が到来しているはずの815台の揚水機については,遅くとも昭和62年度以前に補修,再設置等が行われているはずであり,更新された揚水機の事業費を計算するためには事業計画年における残存価格が控除されなければならないのであって,これを計算に入れていないとすれば,事業費が過大に計上されていることになる。 (c) 903台の揚水機のほとんどが旧 る残存価格が控除されなければならないのであって,これを計算に入れていないとすれば,事業費が過大に計上されていることになる。 (c) 903台の揚水機のほとんどが旧事業計画の経済効果の算定(昭和55年3月5日に確定した第2回変更計画における算定)において更新効果として算定されていたものである。被告の算定によれば,旧計画において永源寺ダムが代用するものとされていた揚水機の機能を再度永源寺第2ダムでも代用することになり,二重評価となって不当である。 (d) そもそも,全国的な類似の土地改良事業計画を見ると,年総効果額に占める更新効果額の割合が66.44パーセントであることは,高額に過ぎる。 e 廃用損失額について被告による廃用損失額の算定において,廃用される予定の揚水機の廃用時における残存耐用年数は,0から3年とされているが,上記揚水機の中には平成元年度以降に設置されたものや,事業完了予定年である平成16年度までの間に耐用年数が到来して補修や再設置がされるものも含まれるのであるから,被告による算定は,残存耐用年数を著しく短いものとして計算していて,不合理である。 f 総事業費について本件事業の事業費には,将来の調査の結果生じる,安全対策費用,環境影響防止費用,濁水防止対策費用も計上すべきで,被告が算定した総事業費は過小である。 (ウ) 投資効率の数値について仮に被告による経済効果の算定が適正になされていたとしても,投資効率は1.04と極めて低く,妥当な投資効率を下回るものである。 (ウ) 投資効率の数値について仮に被告による経済効果の算定が適正になされていたとしても,投資効率は1.04と極めて低く,妥当な投資効率を下回るものである。 (エ) 代替案との比較による最経済性検証の欠如経済性の評価にあたっては,計画の各部分が同じ目的を達成するために考慮し得る計画の中で最経済的なものになっているかどうかを検討する必要がある。 この点,被告は,本件事業計画策定における複数計画案の内容,その具体的な経済効果を明らかにしていないが,淀川調査事務所が,平成4年2月ころ,本件事業計画対象地域の関係自治体に配布した「国営土地改良事業『新愛知川地区』について」と題する書面(甲9)によれば,被告は,新規水源確保対策の検討として本件事業計画対象地域の農業用水源確保という必要性を満たすために比較検討した上流域での新規ダム(第2ダム案),永源寺ダムの嵩上げ(嵩上げ案),琵琶湖からの揚水(琵琶湖逆水案)及びこれらの複合案の4案のうち,第2ダム案が優れているとしている。しかし,第2ダム案より琵琶湖逆水案の方がはるかに投資効率が高い。被告は,第2ダム案は,受益者の負担額が軽減されるという理由でこれを採用したとするが,法施行令2条4号の要件(当該土地改良事業に要する費用について負担することとなる金額が,これらの者の農業経営の状況からみて相当と認められる負担の限度をこえることとならないこと)は,経済性とは別個のものである。被告は,琵琶湖逆水案との経済性の比較を看過して本件事業計画決定をしており,本件事業計画は,最経済性に関する検証が行われていないもので,著しく合理性に欠けるものである(なお,琵琶湖逆水案は,供給の安定性にも優れ,環境 案との経済性の比較を看過して本件事業計画決定をしており,本件事業計画は,最経済性に関する検証が行われていないもので,著しく合理性に欠けるものである(なお,琵琶湖逆水案は,供給の安定性にも優れ,環境への影響も遙かに少ない。)(被告の反論)(ア) 経済性の判断基準について施行令2条3号は,当該事業に要する総経費がその結果生ずる直接効果及び波及効果によってつぐなわれるものでなければならないことを要件として定めているものであり,投資効率が当該事業全体で1.00以上となれば,当該事業が経済的に見て適正かつ妥当であると認められるというべきであって,それ以上にあらゆる面において最も経済的であることまで要求するものではない。 (イ) 被告による経済効果の算定についてa 作物生産効果について作物生産効果は営農計画を基礎に算定するものであるところ,本件事業計画についても,滋賀県及び関係市町が農家を含めた農業関係機関の参画を得て策定した関係各市町の「農業生産総合振興計画」を基礎として,転作実績,作付け動向を把握した上で,地元普及所などの意見を参考に決められたものであり,地域の実情に即した計画というべきである。なお,本件事業の営農計画においては,大豆については兼業農家であっても十分に実現可能な集落営農によることとなっており,野菜その他についても,農業用水の安定確保が図られ水管理労力が軽減されれば高齢者などによる栽培も可能であって,兼業農家が多くても実現可能な計画である。 なお,作物生産効果の算定において,裏作による効果は見込んでいない。 ば高齢者などによる栽培も可能であって,兼業農家が多くても実現可能な計画である。 なお,作物生産効果の算定において,裏作による効果は見込んでいない。 b 営農経費節減効果について本件事業施行地域においては,毎年のように用水不足が発生するため,隔日給水などの厳しい配水管理やかんがい地域を分けて順番にかんがいする「番水」が実施されるが,これらと連動して個々の農家が行うほ場ごとの煩雑な水管理が多くの労働力を要するものとなっているところ,本件事業によって用水不足が解消されることでこれらの水管理労働力が節減されることになる。そこで,代表的なほ場を抽出して,計画策定時点における現況と計画における個々の農家のほ場の水管理に要する労働力等を調査し,これを集計する方法で効果算定の基礎を割り出したものである。 なお,ほ場整備に伴う労働力節減についても,区画形状の整形及び拡大,乾田化等の実施に伴い,作業効率が向上して労働力,機械力等が節減されることになることから,地域の公的な農業指導機関の資料等を基に各作業ごとの計画策定時点における現況と計画における労働力や機械力等を把握し,その結果を集計する方法で効果算定の基礎を割り出している。 c 維持管理費節減効果について維持管理費節減効果の算定にあたっては,諸通達に従って適切かつ合理的に経済効果を測定している。 (a) 廃止予定の揚水機付き井戸について① 本件事業計画において廃止する揚水機付き井戸と引き続き利用する揚水機付き井戸の調査は,改良区の (a) 廃止予定の揚水機付き井戸について① 本件事業計画において廃止する揚水機付き井戸と引き続き利用する揚水機付き井戸の調査は,改良区の資料を基に,聞き取り,現地調査等から本件事業施行地域に存する揚水機付き井戸の状況を把握し,地域内の水利用計画との関係,井戸相互の距離,井戸の規模,井戸の使用年数,県営事業及び団体営事業で設置予定の井戸なども含めて総合的に検討して,本件事業実施後も引き続き利用するもの126か所と廃止が見込まれるもの903か所を特定したものである。 ② 農家の所有する揚水機付き井戸の廃止見込みについては,農家の合理的判断を前提として判断するほかないところ,農家の合理的意思としては,本件事業計画が実施され,ダムからの水が十分配水されているのに,さらに費用をかけて揚水機を更新したり,その電気代を負担することは通常考えられない。 ③ そもそも土地改良事業は,その地域の現況における農業性の向上などを目的とするものであることから,経済性の測定はその目的を達成するために必要な総事業費と効果を比較すべきものであり,既に同一地域において事業が実施完了していたとしても,当該旧事業の事業費と効果を考慮する必要はない。また,旧事業と本件事業は,計画時点を大きく異にし,その間に現況は大きく変化しているし,その目的も全く異なるものであるから,本件事業と旧事業が重複するものでもない。 したがって,旧事業で廃止予定であった揚水機が実際には廃止されず,本件事業で廃止されるものとして経済効果を算定しても,二重算定にはならない。 (b) 年経費について たがって,旧事業で廃止予定であった揚水機が実際には廃止されず,本件事業で廃止されるものとして経済効果を算定しても,二重算定にはならない。 (b) 年経費について① 維持管理費節減効果の算定の基礎となった揚水機の維持管理費の額は,改良区の資料及び水利組合からの聞き取り結果等をとりまとめた資料(乙54)に基づくものであり,算定根拠及びその合理性は明らかである。 ② 本件事業施行地域においては限られた用水の公平な配水を行う必要性から,揚水機にかかる各作業及び用水路への排水状況確認や番水(用水配分)等の末端水路の水管理と,揚水機操作とは一元的に集落共同で行われている場合が多く,いずれも維持管理費に含まれるものであり,揚水機が廃止されれば必要なくなる賦役である。また,番水は用水不足のない地域では干ばつ時のみに行われる用水管理形態であり,永源寺第2ダム建設後も継続して行うとは考えられない。 ③ 原告らが行った賦役時間の調査は,調査時点に問題がある上,調査対象が恣意的で,現地における揚水機の維持管理に要する賦役の状況を把握するための資料としては不適切である。 ④ 揚水機の維持管理費には,電気料などの年々の経常的な経費のほかに,周期的に必要となる経費,人件費及びこれと一体的に行われる賦役その他に係る経費等がすべて含まれており,地域の用水状況から,電気料金以外の経費が無視できない部分を占めていることは明らかである。 d 更新効果について(a) 廃用予定の揚水機付き井戸が存在すること及びこれらが廃用される可能性が を占めていることは明らかである。 d 更新効果について(a) 廃用予定の揚水機付き井戸が存在すること及びこれらが廃用される可能性があることは,前記c(a)①及び②のとおりである。 (b) 更新施設の最経済的事業費は,各種の工事費目を積み上げて算定したものであるが,そのうち今後契約事務の適正な執行に支障を及ぼす恐れがあるため明示することができないものを除き,既に明らかにしている。 なお,廃止予定の揚水機付き井戸のうち,再設置されているものについてはその年度を確認しているし,その結果廃用時以降の使用可能年数が残存している場合,すなわち未償却資産額がある場合には,それを廃用損失額として妥当投資額の算定の際に別途控除しているのであり,更新効果算定においてこれを控除するとすれば二重控除した不当な結論となる。 (c) 前記c(a)③のとおり,旧事業と本件事業とは別個のものであり,二重評価とはならない。 (d) 土地改良事業の経済効果の発現は,事業計画の内容,それぞれの地域の営農の実態,施設の状況等によって異なるものであり,全国と比較することはできない。本件事業は水源を転換することで用水供給を安定化することを目的としているのであるから,更新効果がその他の効果に比して卓越して発現するのは当然である。なお,他の用水改良を目的とした土地改良事業における更新効果の割合をみても,本件事業における割合が異常に高いとはいえない。 e 廃用損失額について揚水機は耐用年数を超えても使用できる可能性がある をみても,本件事業における割合が異常に高いとはいえない。 e 廃用損失額について揚水機は耐用年数を超えても使用できる可能性があるところ,農家の合理的判断から考えても,ダムの計画があるにもかかわらず,耐用年数が経過したからといって,引き続き使用に耐え得る揚水機を更新するとは到底考えられない。また,廃用損失額の算定に当たっては,当該廃用施設の耐用年数経過時ではなく,予定廃止年が基準となるが,予定廃止年が未定の場合は,これを確定することが困難であるため,事業の完了予定年度を予定廃止年として廃用損失額を算出している。 f 総事業費について総事業費は,本件事業及び関連事業において計画された工事を実施するのに必要な費用を計画策定時点において実施できる費用として積み上げた総額とされており,工事施工に必要な安全対策費や,濁水処理費等は見込んでいるが,本件事業計画に含まれない施設等の費用は加算すべきでない。 (ウ) 投資効率の数値について投資効率は1.00を上回っており,直接効果のみで事業費投資を上回る効果の発生が見込まれ,施行令2条3号の要件を満たしている。さらに,本件事業による波及効果や計測不能な効用も考えられるから,本件事業は国家投資の面から見ても妥当なものである。 (エ) 代替案との比較について土地改良事業計画は,申請人からの申請の内容,計画内容の持続性や安定性,技術的課題の多寡,維持管理の容易性,従前の水利慣行等の要素を総合的に勘案し,国の施策及び国家的見地に照らして,最適な整備水準となるように 業計画は,申請人からの申請の内容,計画内容の持続性や安定性,技術的課題の多寡,維持管理の容易性,従前の水利慣行等の要素を総合的に勘案し,国の施策及び国家的見地に照らして,最適な整備水準となるように策定されたものであり,施行計画の各部分が最も経済的であることまでも要求されるものではない。 そして,土地改良事業において,一つの目的を達成する複数の方法が考えられ,そのいずれもが経済性の要件を満たす場合に,どれを選択するかは合理的な政策判断に委ねられている。 また,本件事業計画は,既存施設の有効利用・整合性,供給の安定性,管理の利便性及び技術的可能性の観点から,琵琶湖逆水案より優れているとともに,経済性の点においても,維持管理費を加味して試算した投資指標は第2ダム案が優れており,琵琶湖逆水案を選択することは不合理である。 エその他の要件について(原告らの主張)(ア) 環境配慮義務a 自然環境は,農地及び農業生産活動の基盤であり,これらのあり方を規定する基本的要素であり,地域住民の存続基盤である。そして,農業基盤の整備に関する土地改良事業計画づくりや実施に当たっては,その生産基盤をなす自然環境に配慮することなくしては計画内容を定めることはできない。よって,被告には土地改良事業計画の決定及び実施にあたり環境に配慮する義務が課されているのであり,このことは,法1条2項,87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項,9条,環境基本法1条,6条,14条等に照らし明らかである。 仮に上記各規定が訓示規定であり具体的な環境配慮義務を規定した ,施行令2条,農業基本法1条,2条2項,9条,環境基本法1条,6条,14条等に照らし明らかである。 仮に上記各規定が訓示規定であり具体的な環境配慮義務を規定したものではないとしても,土地改良事業計画の適法要件を充足するか否かを判断するにあたっては,上記各規定により具体化された環境保全の施策の指針や基準を考慮してこれらを遵守すべきで,これらに違反した場合は,被告の判断は違法となる。 また,仮に被告の判断に一定の裁量権が認められるとしても,これらを無視,軽視,誤認し,それにより判断結果に影響が生じるなどした場合には,その判断は裁量権の逸脱,濫用があるものとして違法となるというべきである。 b 永源寺第2ダム及び頭首工・導水路など関連施設の建設は,湛水地域の自然環境を消滅させ,ダム上下流の河川を物理的にも機能的にも大きく変化させるのみならず,冷水,濁水,富栄養化現象,工事用道路の建設等による捨土等の問題を引き起こし,河川の水質,動植物の生育環境にも重大な悪影響を及ぼすことが必至であり,河川と人間との関わりを恒久的・不可逆的に破壊するものである。 ところが,被告による本件事業計画対象地の自然環境等についての現況把握は極めて不十分であるし,本件事業計画による環境への影響をどのように予測し,評価したのか,それをふまえてどのような対策をとるのかについては具体的に示されていない。 c したがって,被告は,本件事業計画決定の適法要件の判定にあたって当然に調査,考慮し,対策を講じるべき自然環境項目や要素に対する考慮検討を欠落ないし軽視したもので,前記aの義務に違反し,または裁量権を逸脱し,違法であ は,本件事業計画決定の適法要件の判定にあたって当然に調査,考慮し,対策を講じるべき自然環境項目や要素に対する考慮検討を欠落ないし軽視したもので,前記aの義務に違反し,または裁量権を逸脱し,違法である。 (イ) 周辺住民等の生命,身体,財産に配慮する義務法87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項等は,土地改良事業計画の決定にあたり周辺住民等の生命,身体,財産その他人格上の価値に配慮する義務を課したものであるが,被告は,実体的にも手続的にも,これに違反した。 すなわち,永源寺ダムは,異常放流,冷水・濁水,富栄養化,水質悪化,河床低下,堤防の崩落・橋脚の深掘れ,地下水位の低下,河口である琵琶湖岸の砂浜のやせ現象,これらに伴う死亡事故,自然生態系の破壊,住民生活や産業への悪影響を引き起こしているところ,永源寺第2ダムの建設は,このような悪影響を増幅し,また,洪水等の災害発生の危険性を高めるものである。ダムに起因する災害が起こった場合,関係住民の生命,身体,財産等に対する影響,被害は深刻なものとなる。ところが,被告は,このような危険性について調査や調査結果を踏まえた対策の検討等を行っていない。 (ウ) その他の産業との調和法87条3項,8条4項1号,施行令2条6号,農業基本法前文,1条,2条2項等の規定は,土地改良事業が他産業と調和することを当該事業の適法要件としたものであり,当該事業が競合する他産業と調和しない場合は当然に,またその判断過程においてこれを考慮しなかった場合には裁量権を逸脱しあるいは合理性を欠くものとして,当該事業計画決定は違法となるところ,被告はこれに反し 事業が競合する他産業と調和しない場合は当然に,またその判断過程においてこれを考慮しなかった場合には裁量権を逸脱しあるいは合理性を欠くものとして,当該事業計画決定は違法となるところ,被告はこれに反したものである。 すなわち,本件事業は,本件事業施行地域の林業との整合性を著しく欠くものであるし,自然環境に大きく依存している漁業や観光業に壊滅的影響と被害を与えるものである。ところが,被告は,これらの産業の現況,それが果たしている経済的,社会的機能や効果等について調査せず,これらに関連する項目,要素についての検討を行っていないか,軽視した。 (被告の主張)(ア) 環境配慮義務についてa 農業基本法は,地域の自然的経済的諸条件を考慮して,総合的な農業諸政策を策定し,実施する責務を抽象的に規定するものであり,環境基本法は,環境保全について適正に配慮する措置を講ずる責務を定めた総則規定であるにとどまるから,これらの規定により直ちに個別具体的な環境配慮義務を課する趣旨ではない。 法87条3項,8条4項1号,施行令2条は,環境配慮を直接に規定したものではなく,また,その運用・解釈にあたっても,環境配慮は事業計画決定の要件ではなかった。なお,平成13年6月29日に公布された土地改良法の一部を改正する法律において,法1条2項に「環境との調和に配慮しつつ」と規定され,これを受けて施行令2条において環境との調和に配慮したものであることが要件と位置づけられた。 b もっとも,本件事業計画は,環境に十分配慮した内容として計画され,環境基本法の趣旨を踏まえて実施されることとなっている。 あることが要件と位置づけられた。 b もっとも,本件事業計画は,環境に十分配慮した内容として計画され,環境基本法の趣旨を踏まえて実施されることとなっている。 すなわち,本件事業においては,永源寺第2ダムへの濁水対策として河川への放流水をれき等のフィルターを通して浄化する施設等を計画し,周辺の緑化,工事中の濁水対策など自然環境に配慮した設計を行うなど,事業計画中に既に環境への配慮がされており,また,調査計画時から滋賀県の環境影響評価を予定して現況調査を進めている。 (イ) 周辺住民等の生命,身体,財産に配慮する義務について原告ら主張の関係法規には,ダム災害の防止等を沿岸住民個々人の個別的な利益として保護する趣旨は含まれていない。もとより,周辺住民の生命,身体,財産に配慮すべきことは当然であるが,それは,公益的な配慮の性質にとどまる。 なお,永源寺第2ダムは,一般的技術基準等に基づき計画された結果,その安全性は確保されており,さらに,事業の実施に当たってもダム災害により周辺住民の生命,身体,財産に危害が及ばないよう,十分な配慮を行うこととしている。 (ウ) その他の産業との調和について土地改良事業は,漁業や観光などの他の産業と調和することを当該事業の適法要件としたものではなく,この点に関する原告らの主張は失当である。 (3) 本案の争点(2)イ(本件事業計画の手続的要件充足の有無)についてア事前の環境影響評価の必要性の有無(原告らの主張)法87条1項・ 本案の争点(2)イ(本件事業計画の手続的要件充足の有無)についてア事前の環境影響評価の必要性の有無(原告らの主張)法87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項等は,土地改良事業計画の決定前に環境影響評価をする義務を課したものである。特に施行令2条1号は,検討すべき項目として「自然的環境上」の検討を要求しており,これらの規定が事前の環境影響評価を予定していることは明らかである。また,法87条6項が事業計画決定に対する異議申立手続を規定していること,土地改良事業計画による工事着工ができる場合を規定した法87条8項によれば,異議申立手続を経由すれば直ちに工事に着手できると解されることからすれば,計画決定手続により,その内容である個々の事業実施についても最終的な意思決定をしたことになるはずであるから,計画決定前に環境影響評価がされることを前提としていると解される。さらに,決定後に環境影響評価がされた場合,事業計画の修正変更を伴うことが明らかであるのに,そのために事業計画の費用や効果が変化しても事業計画の適法要件判定のための経済効果分析には何ら反映されないという著しく不合理な結果となる。 ところが,被告は,本件事業計画決定に先立ち,環境影響評価を行っていないから,本件事業計画決定は,手続的要件を欠き違法である。 (被告の主張)法87条1項・3項等の関係法規には,環境配慮義務を沿岸住民個々人の個別的な権利・利益として保護する趣旨は含まれておらず,また,環境基本法20条,法8条4項1号,施行令2条等は,環境影響評価を法的に義務付けた規定ではない。したがって,事前に環境影響評価をする必要はない。 利・利益として保護する趣旨は含まれておらず,また,環境基本法20条,法8条4項1号,施行令2条等は,環境影響評価を法的に義務付けた規定ではない。したがって,事前に環境影響評価をする必要はない。 もっとも,本件事業計画の実施にあたっては,他の法令等に基づいて環境影響評価が実施される予定になっている。なお,計画策定時点では,滋賀県環境評価に関する要綱及びその実施要領に基づき,河川管理者である滋賀県との協議までに環境影響評価準備書を提出すれば足りることとなっていたが,環境影響評価法が施行され,永源寺第2ダムが対象事業となった現時点では,同法に基づく環境影響評価を実施することとしており,その時期は工事実施に必要なダム諸元の調査終了後工事着手までに行うことが必要であり,かつそれで足りると解すべきである。 イ法85条の公告手続の違法性の有無(原告らの主張)本件事業計画決定に先立つ法85条に定める同意徴集及び公告手続は,以下の理由により違法であるから,本件事業計画決定は,手続的要件を欠き違法である。 (ア) 公告の前に同意徴集を行っており,しかも同意徴集の期間が長期にわたっている。 法85条2項が土地改良事業の計画の概要を公告をする旨を規定しているのは,それによって当該地域の住民が当該事業計画の概要を周知したものと擬制するためであり,土地改良事業の円滑な実施に不可欠な同意徴集という重要な手続を担保するものであるから,公告は同意徴集に先立って行われるべきものであり,これに違反した場合その瑕疵は重大であって,そのような場合には,当該事業計画決定自体が違法となると解すべきである。 この点,被告は,実 集に先立って行われるべきものであり,これに違反した場合その瑕疵は重大であって,そのような場合には,当該事業計画決定自体が違法となると解すべきである。 この点,被告は,実質的に計画概要書が示されていることや説明会が開催されていることにより,瑕疵は治癒されると主張するが,これらの行為は利害関係者全員に対して行われたものではなく,公告と同視することはできない。 また,同意の期間が長期にわたると同意の同一性が損なわれることになることから,そのような場合にも同意徴集手続は違法となる。 (イ) 同意率が3分の2に極端に満たない集落が4か字存在する。 法は,土地改良事業が強制主義であること,私人による申請事業であること,集落ぐるみの水管理慣行が存在すること,水利状況は対象地域の水利状況や農業実態を反映すべきことから,対象地域の各大字ごとに3分の2以上の同意があることを要求していると解すべきである。 ところが,本件事業計画において,同意率が3分の2を下回る集落が4か字もあるのであって,手続的に違法であり,これらの4か字については,本件事業計画の対象地に組み入れる合理的な理由がないのであるから,これらの4か字の3条資格者に事業費等の負担を強いる本件事業計画は無効となるというべきである。 (被告の主張)(ア) 同意徴集手続及び概要公告は,申請人により担われる申請までの手続きとして位置づけられており,事業計画決定からみると,その前提行為であって,国として国営土地改良事業を施行するか否かの意思形成過程の意味を有するにとどまる。また,事業計画の概要の公告が必要とされる趣旨は,3条資格者の同意を得 ,事業計画決定からみると,その前提行為であって,国として国営土地改良事業を施行するか否かの意思形成過程の意味を有するにとどまる。また,事業計画の概要の公告が必要とされる趣旨は,3条資格者の同意を得るため及び事業参加者の確定のための補足的手続であって,これに瑕疵があっても,同意に影響がない限り,計画の適法性には影響がないと解すべきである。さらに,法85条2項は,公告と同意徴集との前後関係についての規定を置いておらず,公告と同意の間に利害関係人の手続等をも何ら予定していない。そして,上記のような公告の趣旨に照らし,公告前に同意を徴集しても,事業参加者の確定には何ら影響はないし,計画内容を十分理解して同意がなされていれば,同意に瑕疵はない。したがって,誤った説明などによって公告内容と同意の対象となる事業計画内容との間に齟齬があったような場合を除いては,同意が公告に先行したとしても,事業計画決定の適法性に影響を及ぼすことはない。 本件事業にかかる同意徴集手続は,地元説明会において,公告内容を簡潔にまとめた資料を配付してその内容を説明した上で行われたものであり,3条資格者の同意は十分かつ正確な説明を受けてなされたものであるから,その手続に本件事業計画決定の適法性に影響を及ぼすような瑕疵はない。 同意徴集期間については法及び施行令に何ら規定がないから,長期にわたったからといって直ちに違法となるものではない。また,本件事業は広大な地域を対象とするもので,対象者も9273名に及ぶため,同意徴集期間に8か月を要したことはやむを得ないと言うべきであるし,本件においては錯誤等によって同意の効力が争われてもいないから,その同一性に問題はなく,同意徴集手続に違法はない。 (イ) 国は,同意は たことはやむを得ないと言うべきであるし,本件においては錯誤等によって同意の効力が争われてもいないから,その同一性に問題はなく,同意徴集手続に違法はない。 (イ) 国は,同意は市町村別及び大字別においても3分の2以上になるように指導しているが,これは,事業実施の円滑を図るためであり,法及び施行令の解釈上そのような要件が必要と解しているわけではない。また,土地改良事業の事業施行地域とは,土地及び用水系統によるつながりを有する一定の地域を対象として実施される事業であって,特定の施行地域内の同意率が低いからといって,その者らの土地のみを排除することは物理的に困難であり,排除することは適当でない。 ウ専門家の報告の適法性の有無(原告らの主張)専門技術者の調査報告書(乙7)は,環境影響に触れていないばかりか,その結論の合理性を検証する根拠付けが明示されておらず,法の要求するものでない。 (被告の主張)専門技術者の調査報告書は,法87条2項,8条2項及び3項に規定され,法施行規則15条に掲げられた事項について,包括的に要約してとりまとめられたものであり,法に基づくものである。 (4) 本案の争点(2)ウ(法86条に基づく適否の決定の違法性の有無)について(原告らの主張)前記のとおり,被告による本件事業計画の適否の決定は,環境配慮義務に違反して,施行令2条の基本的要件を充足していないのにこれを充たすものとして適当との決定をしたもので,法8条4項2号に違反し,また,同意徴集手続等において手続的な違法があったのにこれを看過して適当と判断したもので,違法である。 (被告の これを充たすものとして適当との決定をしたもので,法8条4項2号に違反し,また,同意徴集手続等において手続的な違法があったのにこれを看過して適当と判断したもので,違法である。 (被告の主張)法8条4項2号の規定は,国営土地改良事業の適否の決定にあたり準用されていないし,法86条の適否決定は同一行政庁による事業計画決定の前提行為に過ぎず,事業計画決定の違法性とは別にその違法性が問題となる余地はない。 (5) 本案の争点(2)エ(行訴法10条1項の主張制限適用の可否)について(被告の主張)3条資格者以外の原告らの訴訟要件が満たされるとしても,これらの者は,本件事業計画に不服を申し立てる利益を有することの根拠として,専ら自己の環境,生命,身体,財産に対する利益が侵害されることを主張するものであるから,これらの原告らについては,本案の争点(2)ア(ア)ないし(ウ)並びに同(2)イ(イ)及び(ウ)については,行訴法10条1項により,これらを本件事業計画の違法事由として主張することは許されない。 (原告らの主張)争う。 法には,3条資格者以外の者の個別の権利・利益・人間的価値を保護したと解される規定が存するのであるから,原告らの主張する違法事由は,いずれも原告らの法律上の利益に関係するものであって,行訴法10条1項に反しない。 第3 当裁判所の判断Ⅰ 本案前の争点(1)(本件事業計画決定取消訴訟提起の可否)について 1 法は,87条6項において,国営又は都道府県営の土地改良事業につき,農林水産大臣又は都道府県知事が決定した事業計画についての異議申立てに関する行政不服審査法45条の期間について特則を定める 1 法は,87条6項において,国営又は都道府県営の土地改良事業につき,農林水産大臣又は都道府県知事が決定した事業計画についての異議申立てに関する行政不服審査法45条の期間について特則を定めるとともに,同条7項において,農林水産大臣又は都道府県知事がこれに対する決定をするまでの期間を規定している。そして,同条10項は,「土地改良事業計画に不服がある者は,第7項の規定による決定に対してのみ,取消しの訴えを提起することができる」と規定している。 上記各規定の文言によれば,法は,土地改良事業計画に対する不服申立ての方法について,行政事件訴訟法8条1項の定めるいわゆる選択主義の例外として,土地改良事業計画決定に不服のある者は,まず審査請求である同決定に対する異議申立てをする必要があるとしているのみならず,同法10条2項の定めるいわゆる原処分主義の例外として,裁決主義,すなわち原処分である土地改良事業計画決定の取消しの訴えの提起を許さず,裁決である異議申立てについての決定に対する取消しの訴えのみの提起を認めることを規定していると解するのが相当である(最高裁昭和61年2月13日第一小法廷判決・民集40巻1号1頁参照)。 したがって,土地改良事業計画に不服がある者が,原処分である土地改良事業計画決定そのものに対して取消しの訴えを提起することはできない。 よって,原告らの本件事業計画決定の取消しを求める訴えはいずれも不適法であり,却下を免れない。 2 なお,この点について,原告らは,土地改良事業計画決定そのものが取消訴訟の対象となると解さないと,国民の裁判を受ける権利が害されることになるし,そうしないと異議申立てについての決定に対する取消しの訴えで勝訴しても土地改良事業計画自体が残ることになり不当であると主張す 訟の対象となると解さないと,国民の裁判を受ける権利が害されることになるし,そうしないと異議申立てについての決定に対する取消しの訴えで勝訴しても土地改良事業計画自体が残ることになり不当であると主張する。 しかし,法87条10項が,土地改良事業計画に不服がある者は,土地改良事業計画決定に対する異議申立てについての決定に対してのみ訴えを提起できると規定したのは,土地改良事業計画において定める事項が専門的技術的事項にわたるため,行政庁の判断による異議の決定を経ずして直ちに出訴し得ることとすることは妥当でないと考えられることから,当該土地改良事業計画に不服がある者は,まず異議申立てをし,異議申立てを棄却する旨の決定を受けた後に,棄却決定の取消訴訟を提起して当該土地改良事業計画の適否を争うべきものとした趣旨であると解される。そして,このような裁決主義が採られている場合には,裁決取消訴訟においても,原処分自体の違法事由を主張することは何ら妨げられない(行政事件訴訟法10条2項,最高裁昭和50年11月28日第三小法廷判決・民集29巻10号1797頁参照。)。したがって,土地改良事業計画に対する異議申立てについての決定の取消しを求める訴えを提起した者は,その中で同計画の違法を主張できるのであるから,同計画決定自体の取消しの訴えが認められないからといって,裁判を受ける権利が妨げられることにはならない。 また,上記裁決主義の趣旨からすれば,異議申立てについての決定に対する取消訴訟において,土地改良事業計画決定自体が違法であることを理由として異議申立てについての決定を取り消す旨の判決がされ,同判決が確定した場合は,異議申立てについての決定に対する取消訴訟が,実質的には土地改良事業計画決定の違法を確定してこれを取り消し,違法状態を排除して,これ てについての決定を取り消す旨の判決がされ,同判決が確定した場合は,異議申立てについての決定に対する取消訴訟が,実質的には土地改良事業計画決定の違法を確定してこれを取り消し,違法状態を排除して,これにより権利を侵害されている者を救済することをその趣旨としていると解することができること,上記判決において,原処分である土地改良事業計画決定の違法性が判断されており,その判断内容は,土地改良事業計画決定全体の効力を失わせるもので,同決定自体の取消しの当否を判断する場合と同一であると考えられることからすれば,同時に原処分である土地改良事業計画自体も取り消されることになると解するのが相当であるから,原告らが主張するような原処分である土地改良事業計画が残るという不都合が生じることもない。 したがって,原告らの主張は採用できない。 Ⅱ 本案前の争点(2)(異議申立てを経ていない原告らの訴えの適法性)について 1 裁決の取消しの訴えは,当該裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができる(行政事件訴訟法9条)ところ,法87条10項に基づく訴えは,直接的には同条7項による決定(土地改良事業計画決定についての異議申立てに対する決定)の取消しを求めるものであるから,原則として,訴訟提起者自身が異議申立ての手続を経ていることが予定されているものと解するのが相当であり,異議申立てを経ておらず,自己を名宛人とする決定がない者については,たまたま他の者が当該処分について同一の理由に基づいて異議申立てを経ていても,両者が当該処分に対して一体的な利害関係を有し,実質的にみれば,その異議申立てがその者のための異議申立てでもあるといえるような特段の事情が存しない限り,これらの者は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当すると 体的な利害関係を有し,実質的にみれば,その異議申立てがその者のための異議申立てでもあるといえるような特段の事情が存しない限り,これらの者は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当するということはできず,これらの者が提起した異議申立てについての決定の取消しを求める訴えは,適法な訴えと解することはできないというべきである(最高裁昭和61年6月10日第三小法廷判決・判例時報1210号51頁参照)。 2 そこで,各原告が,本件異議申立てについての決定の名宛人となっているか否かについて検討する。 (1) 別紙原告目録2及び3記載の各原告が本件異議申立てについての決定の名宛人となっていることは,当事者間に争いがない(ただし,原告番号1の原告δは,異議申立てを行った亡ηの妻である。)。 (2) 別紙原告目録1記載の原告らが本件異議申立てについての決定の名宛人となっていることを認めるに足りる証拠はない。 なお,別紙原告目録1記載の原告らには,原告らにおいて,その所属団体等が異議申立てをしたことにより個人としても異議申立てをしたと主張する者がおり(原告番号17ないし19,22,24,25,27ないし31,34ないし42,44の各原告),甲183,184,187の3の1及び2,187の11の1及び2,187の12の1,187の17,187の18によれば,上記原告らがそれぞれ所属しているとする法人格のない団体である「ダム建設とまちづくりを考える町民のつどい実行委員会」(甲187の3の1,2),「永源寺町観光協会」(甲187の12の1)及び「滋賀県神崎郡永源寺町東部区長連絡協議会」(甲187の18)並びに水産業協同組合法上の法人である「愛知川漁業協同組合」(甲187の11の1,2)及び「愛知川上流漁業協同組合」( 87の12の1)及び「滋賀県神崎郡永源寺町東部区長連絡協議会」(甲187の18)並びに水産業協同組合法上の法人である「愛知川漁業協同組合」(甲187の11の1,2)及び「愛知川上流漁業協同組合」(甲187の17)がそれぞれ本件事業計画決定に対する異議申立てをしたことが認められるが,上記証拠(申立書ないし異議申立てについての決定書)の記載等によれば,これらの異議申立ては,各団体が団体として行ったものであると解されるところであって,申立人として名を連ねていないそれぞれの団体の構成員や代表者あるいは発起人等として申立書等に記載されている者が団体を離れた個人として異議申立てを行ったものと解することは,いずれの異議申立てにおいてもできないというべきである。このことは,別紙原告目録2及び3記載の原告らの中に,上記団体の構成員である者もおり,これらの者は,団体と個人を区別して,個人としても異議申立てをしていることからも明らかである。 したがって,これらの団体の構成員である上記原告らが個人としても異議申立てを行っていて,これらの者が異議申立てについての決定の直接の名宛人であるとする原告らの主張は採用できない。 3 なお,原告らは,異議申立てを経ておらず,異議申立てについての決定の名宛人となっていない者でも,その者と主張を同じくする者が異議申立てを経由している場合には,異議申立てを経たものとみなすべきであると主張し,他人を名宛人とする異議申立てについての決定の取消しを求める訴えも一定の場合には適法となると主張する。 しかし,前記1のとおり,たまたま他の者が当該処分について同一の理由に基づいて異議申立てを経ていても,両者が当該処分に対して一体的な利害関係を有し,実質的にみれば,その異議申立てがその者のための異議申立てでもあるといえ り,たまたま他の者が当該処分について同一の理由に基づいて異議申立てを経ていても,両者が当該処分に対して一体的な利害関係を有し,実質的にみれば,その異議申立てがその者のための異議申立てでもあるといえるような特段の事情が存しない限り,これらの者は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当するということはできないところ,自己が所属する団体が異議申立てを経ている場合に,その構成員について上記の特段の事情があると一般的にいうことはできない上,別紙原告目録1記載の原告らそれぞれについて,上記の特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの上記主張は理由がない。 4 以上によれば,別紙原告目録1記載の原告らは,本件事業計画決定に対する異議申立てについての決定の名宛人となっておらず,また,同決定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者にも当たらないから,これらの者のした本件異議申立てについての決定(本件却下決定及び本件棄却決定)の取消しを求める訴えはいずれも不適法であり,却下を免れない。 なお,原告番号1の原告δは,本件事業計画の決定に対する異議申立てを自ら行ってはおらず,異議申立てについての決定の直接の名宛人ではないが,弁論の全趣旨によれば,同人は,本件事業計画決定に対して異議申立てを行いこれについて棄却決定を受けた亡ηの妻であり,亡ηが所有していた本件事業施行地域内の農用地を相続したものと認められるから,法113条により,亡ηについての上記行為及び処分の効力は,原告δに対しても生じるものと認められ,また,前記1の特段の事情もあるというのが相当であるから,原告δの訴えは適法である。 Ⅲ 本案の争点(1)(本件却下決定の違法性の有無)について 1 証拠(甲187の4の1,187の5, ,また,前記1の特段の事情もあるというのが相当であるから,原告δの訴えは適法である。 Ⅲ 本案の争点(1)(本件却下決定の違法性の有無)について 1 証拠(甲187の4の1,187の5,187の6の2,187の7,187の8,187の13,187の14の2)及び弁論の全趣旨によれば,被告による本件却下決定の理由とするところは,当該異議申立てを行った者らは,その主張する理由からは,単なる反射的利益を受けることはあっても,本件事業計画決定処分により自己の権利もしくは法律上保護するに値する利益を侵害されたか又は必然的に侵害されるおそれがある者には当たらないから,本件異議申立ての異議申立人たり得ず,その異議申立ては不適法であるというものである。 そこで,被告が上記のような理由で行った本件却下決定が違法なものであるか否かについて検討する。 2 法87条1項に基づく被告による本件事業計画決定に対して行政不服審査法4条に基づく異議申立てをすることができることは,法87条6項ないし10項の文言から明らかである。ところで,行政不服審査法4条に基づいて異議申立てをすることができるのは,行政庁の処分に「不服がある者」であり,これは,当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者,すなわち,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい(最高裁昭和53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁参照),当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害さ させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,同法4条に基づく異議申立適格を有するものというべきである。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,当該行政法規が当該処分を通じて保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁,最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁参照)。 3 そこで,上記2の観点から,本件事業計画決定について異議申立てをすることができる者について検討する。 (1) 法は,1条において,「この法律は,農用地の改良,開発,保全及び集団化に関する事業を適正かつ円滑に実施するために必要な事項を定めて,農業生産の基盤の整備及び開発を図り,もって農業の生産性の向上,農業総生産の増大,農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする。」(1項),「土地改良事業の施行に当っては,その事業は,国土資源の総合的な開発及び保全に資するとともに国民経済の発展に適合するものでなければならない。」(2項)と規定しており,これらの規定によれば,法の目的とするところは,耕作の目的等に供される土地である農用地の改良等の土地改良事業を円滑に実施することで農業生産の基盤の整備や開発を図り,農業の発展,効率化を促すことにあるということができる。 (2) ところで,土地改良事業は,一般に土地の環境条件を整備し,あるいはその利用 に実施することで農業生産の基盤の整備や開発を図り,農業の発展,効率化を促すことにあるということができる。 (2) ところで,土地改良事業は,一般に土地の環境条件を整備し,あるいはその利用状況を変えて,農業上の利用度を増進するものであることから,法は,原則として,事業の受益地について利害関係を有する者の意思に基づき,かつ,その者が費用を負担することによって土地改良事業を施行するものとし,そのような者を3条資格者として規定している。そして,3条資格者は,土地改良事業の開始,変更等について賛否を表明し(法5条,48条,85条等),土地改良区の組合員となり(法11条),事業の申請人となり(法85条,85条の4),その費用の一部を負担し(法90条,91条等),事業の施行者ともなる(法95条)のであるから,法は,3条資格者の土地の農業上の利用権をこれらの者の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解せられる。 したがって,3条資格者は,土地改良事業計画の決定に対する異議申立適格を有すると解するのが相当である。 (3) 一方,原告らは,3条資格者以外でも,愛知川上流漁業協同組合の組合員については,本件事業計画決定により漁業の営業上の利益を侵害され,また,愛知川沿岸に宅地・建物,農地などを所有して生活している者については,本件事業計画決定によりその生命,身体,財産その他生活上の利益を侵害されるおそれがあることから,これらの者についても本件事業計画決定についての異議申立適格があると主張する。しかし,法や関係法規にはそのような利益を保護する規定が見当たらず,また,前記(1)のような法の規定等に照らせば,法が周辺河川での漁業従事者の漁業上の営業の利益や周辺地域に居住する者の生活上の利益というような個々人の個別的利益を保 な利益を保護する規定が見当たらず,また,前記(1)のような法の規定等に照らせば,法が周辺河川での漁業従事者の漁業上の営業の利益や周辺地域に居住する者の生活上の利益というような個々人の個別的利益を保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできない。 したがって,上記のような利益を有するにすぎない者は,土地改良事業計画決定に対する異議申立適格を有しないものといわざるを得ない。 4 そこで,本件却下決定を受けた原告ら(別紙原告目録2記載の原告ら)が,異議申立適格を有するか否かについて検討する。 (1) 前記3(3)のとおり,漁業上の権利及び周辺地域住民としての生活上の利益を有するにすぎない者は異議申立適格を有しないのであるから,別紙原告目録2記載の原告らのうち,本件事業計画決定によって侵害される利益としてこれらの利益だけを主張する原告番号3,9ないし15,20,21,23,33,43,45ないし47,49の各原告らは,異議申立適格を有しない。また,原告番号51及び52の各原告については,本件事業計画決定によって侵害される利益が具体的に主張立証されていないから,これらの者も,異議申立適格がないものといわざるを得ない。 (2) 次に,3条資格者に該当するとして異議申立適格を主張する原告らについて検討する。 ア原告番号48の原告θについて(ア) 原告θは,本件土地改良事業に関する3条資格者の同意徴集手続において,同一家族内では同一地主とみなし,改良区賦課の名義人が地主とみなすとされていたところ,同人及びその父κの所有地の土地改良区賦課の名義人は原告θであること,また,同人は換地処分の名義人でもあることから,3条資格者に該当すると主張する。 しか とされていたところ,同人及びその父κの所有地の土地改良区賦課の名義人は原告θであること,また,同人は換地処分の名義人でもあることから,3条資格者に該当すると主張する。 しかし,乙66及び67によれば,原告θらが所有する土地について同人が土地改良区の賦課名義人となったのは,κから原告θに対する相続があった平成9年10月31日以降であることが認められ,本件異議申立当時は,同人は賦課名義人でなかったのであるから,この点に関する原告θの主張は理由がない。 また,換地処分の通知は,法5条7項に規定する者に対してなされるものであるところ(法54条1項),法5条7項に規定する者が全て3条資格者であるわけではないことは法文上明らかであるから,換地処分の名義人であること(甲145の2)を理由として3条資格者であるとする原告θの主張は採用できない。 そして,前記3(1)(2)のような法の趣旨に照らせば,法は,土地改良事業による農業の発展,効率化という目的実現に必要な農用地等の農業上の利用権を保護するものと解されるから,法3条1項1号に基づいて3条資格者とされる,農用地であって所有権に基づき耕作の目的に供されるものの所有者とは,その農用地について所有権に基づいて耕作の業務を営む者,すなわち,耕作業務による損益が自己に帰属する者をいうと解するのが相当であるところ,原告θが本件異議申立当時において,その所有する農用地について耕作の業務を営む者に該当していたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告θが3条資格者であるということはできない。 (イ) さらに,原告θは,本件土地改良事業計画決定によりその生活上の利益を侵害されるおそれがあるとも主張するが したがって,原告θが3条資格者であるということはできない。 (イ) さらに,原告θは,本件土地改良事業計画決定によりその生活上の利益を侵害されるおそれがあるとも主張するが,そのような利益を有するにすぎない者が,異議申立適格を有しないことは,前記3(3)のとおりである。 (ウ) よって,原告θは異議申立適格を有しないものといわざるを得ない。 イ原告番号50の原告λについて(ア) 原告λは,自らが3条資格者であると主張する。しかし,同人が3条資格者であることを認めるに足りる証拠はなく,同原告の主張は理由がない。 (イ) また,原告λは,本件土地改良事業計画決定によりその生活上の利益を侵害されるおそれがあるとも主張するが,そのような利益を有するにすぎない者が,異議申立適格を有しないことは,前記3(3)のとおりである。 (ウ) よって,原告λは異議申立適格を有しないものといわざるを得ない。 (3) 以上によれば,本件却下決定の名宛人となった原告らはいずれも本件事業計画決定に対する異議申立適格を有しないものというべきである。 5 したがって,異議申立人らには異議申立適格がないという理由で本件事業計画決定に対する異議申立てを却下した被告の本件却下決定は,いずれも適法なものであったと認められる。よって,このような決定を受けた原告ら(別紙原告目録2記載の原告ら)による本件却下決定の取消しを求める請求は,いずれも理由がないから,棄却されるべきものである。 6 なお,本件却下決定の名宛人となった上記原告らは,本件棄却決定の取消しをも求めているものと解されるから,これらの者が本件棄却決定の取消訴訟において原告適格を有していると べきものである。 6 なお,本件却下決定の名宛人となった上記原告らは,本件棄却決定の取消しをも求めているものと解されるから,これらの者が本件棄却決定の取消訴訟において原告適格を有しているといえるか否かについて検討すると,これらの原告らは,本件棄却決定の名宛人となっていないばかりか,上記5のとおり,これらの原告らの異議申立てが適法になされたのに被告が誤ってこれを却下したという事情もないのであるから,これらの原告らは,本件事業計画決定に対する異議申立適格を有しないものであり,本件棄却決定の取消しを求める法律上の利益もないというべきであって,これらの原告が本件棄却決定の取消しを求める訴えは,いずれも不適法であり,却下を免れないというべきである。 7 以上に述べたところによれば,本件棄却決定の取消しを求める訴えのうち,別紙原告目録3記載の原告らである原告番号1の原告δ,同2の原告μ及び同16のπによるものは,いずれも適法になされたものであるということになるから,以下,これらの原告らの請求について検討する。 Ⅳ 本案の争点(2)ア(本件事業計画の実体的要件充足の有無)について 1 土地改良事業計画の実体的適法要件(1) 本件棄却決定の取消しを求める訴えにおいては,本件事業計画決定自体の違法を主張することができることは,前記Ⅰ2のとおりであるところ,法87条3項は,被告が土地改良事業計画決定を行う場合には,当該計画に基づいて施行される土地改良事業が法8条4項1号の政令で定める基本的な要件に適合するものとなるように定めなければならないと規定し,上記政令である施行令(昭和24年8月4日政令第295号)2条には,土地改良事業の施行に関する基本的な要件として,次のとおりの規定がある。 ① 当該土地改良事業の施行に ないと規定し,上記政令である施行令(昭和24年8月4日政令第295号)2条には,土地改良事業の施行に関する基本的な要件として,次のとおりの規定がある。 ① 当該土地改良事業の施行に係る地域の土じょう,水利その他の自然的,社会的及び経済的環境上,農業の生産性の向上,農業総生産の増大,農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資するためその事業を必要とすること。 (1号)② 当該土地改良事業の施行が技術的に可能であること。(2号)③ 当該土地改良事業のすべての効用がそのすべての費用をつぐなうこと。(3号)④ 当該土地改良事業の施行に係る地域内にある土地につき法第3条に規定する資格を有する者・・・・・・が当該土地改良事業に要する費用について負担することとなる金額が,これらの者の農業経営の状況からみて相当と認められる負担能力の限度をこえることとならないこと。(4号)したがって,土地改良事業計画決定が適法であるというためには,以上の各要件を満たすことが必要である。 また,施行令の規定する上記の要件のほかに,土地改良事業計画が適法となるための要件があると解される場合,これらの要件を満たすことも必要である。 (2) もっとも,国営の土地改良事業計画は,申請人が作成した計画の概要を,広く国民経済的見地からさまざまな利益を比較衡量した上で国営の事業計画として定めるものであり,その内容は,高度に技術的専門的な事項にわたり,政策的判断をも要するものであるから,上記適法要件を満たすか否かの判断は,被告の広範な裁量に委ねられているというべきである。したがって,土地改良事業計画決定は,その決定を行う際に考慮した事実及びそれを前提とした判断過程に,著しい過誤や欠落があ 要件を満たすか否かの判断は,被告の広範な裁量に委ねられているというべきである。したがって,土地改良事業計画決定は,その決定を行う際に考慮した事実及びそれを前提とした判断過程に,著しい過誤や欠落があるなど,被告において,その決定について委ねられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に限り違法となるものと解される。 (3) なお,原告らは,前記(1)の適法要件のうち特に必要性の要件(施行令2条1号)を充足しているか否かの判断は,口頭弁論終結時を基準として行うべきであると主張する。 しかし,裁決取消訴訟において,裁決の基礎となった行政処分が違法か否かを判断するに際して,当該行政処分の後に事実状態や法令に変化があった場合は,まずは行政庁が自ら当該行政処分に変更を加える必要があるか否かを判断すべきであって,裁判所がこれを待たずに処分後の法令や事実状態に照らして処分の違法性を判断することは,行政庁の第1次判断権を侵すものであり,行政処分に対する事後審査という取消訴訟の本質に反すると考えられるから,行政処分の違法判断は,当該処分がされた当時を基準とすべきである(最高裁昭和27年1月25日第二小法廷判決・民集6巻1号22頁,最高裁昭和28年10月30日第二小法廷判決・行裁集4巻10号2316頁,最高裁昭和34年7月15日第二小法廷判決・民集13巻7号1062頁参照)。 したがって,土地改良事業計画決定に対する異議申立棄却決定に対する取消訴訟における当該土地改良事業計画決定の違法判断の基準時は,行政庁のした当該土地改良事業計画決定の時というべきである。 (4) そこで,以下,本件事業計画が,その決定の時において,上記(1)の各要件を満たすとした被告の判断に,その裁量権の範囲の逸脱や濫用があっ 該土地改良事業計画決定の時というべきである。 (4) そこで,以下,本件事業計画が,その決定の時において,上記(1)の各要件を満たすとした被告の判断に,その裁量権の範囲の逸脱や濫用があったか否かについて検討する。 2 本件事業の必要性(施行令2条1号)(1) 施行令2条1号は,土地改良事業がその施行地域において必要であることを基本的な要件として規定しているところ,この規定及び前記Ⅲ3(1)のような法の趣旨等に照らせば,国営土地改良事業において,当該事業の必要性があるかどうかの判断は,当該事業の施行にかかる地域の自然的,社会的及び経済的諸条件を基礎として,当該事業が農業生産の基盤の整備及び開発を図るという土地改良事業の目的実現にどの程度資するかという観点から,総合的に行うべきものであるということができる。 (2) ところで,本件事業計画決定にあたって,被告が本件事業の必要性について行った判断の内容は,以下のとおりである。 ア被告が本件事業計画決定をするに先立って提出を受けた法87条2項,8条2項に規定する専門的知識を有する技術者の調査報告書(乙7)のうち,本件事業の必要性に関する記述部分は,概要次のとおりである。 (ア) 自然的条件本件事業施行地域は,滋賀県の琵琶湖東部に位置し,愛知川により形成された扇状地で八日市市他8町にまたがる約7600ヘクタールの水田地帯である。 気象は全般に温暖で年平均気温14.1度,降水量は年平均1560ミリメートルである。 標高は東端で約250メートル,西端で約90メートルで,全体的に概ね東から西に緩やかに傾斜しており,傾斜100分の1以下が全体の約70パーセントを占 60ミリメートルである。 標高は東端で約250メートル,西端で約90メートルで,全体的に概ね東から西に緩やかに傾斜しており,傾斜100分の1以下が全体の約70パーセントを占めている。 地質は丹波帯の中古生層とこれを貫く花崗岩類や流紋岩類を基盤とし,その上位の主として第四紀層からなり,土壌は黄褐色土壌,黒色土壌及び灰褐色土壌が多く分布している。 本件事業施行地域の中央を流れる愛知川は天井川で洪水時は一気に流下し,また渇水期には伏流するという極めて利用し難い河川であったため,古くから干ばつに悩み,多くの取水施設や井戸などの複雑かつ不安定な用水で凌いできた。 このような状況のもとで昭和27年に着工し58年に完了した国営愛知川土地改良事業により,主水源である永源寺ダム及び幹線用水路の新設と併せて,付帯県営事業によって愛知川頭首工,支線用水路等の農業用用排水施設が新設された。 しかし,その後のほ場整備の進展,営農形態等の変化による必要水量が増大する一方,その他水源である井戸,湧水等が地下水位低下による取水量の減少から水不足が発生しており,この揚水機等の維持管理に多大な労力と費用を要している。 このような現状を改善するため,既設永源寺ダムの上流に第二ダム等を新設し,また,地区内に調整池を設け安定した水源を確保することによって農業経営の安定と所得向上を図るものであり,当地域発展のため重要であると認められる。 (イ) 社会経済的条件農林業センサス(1990)によると,本件事業施行地域の1戸当たり平均耕地面積は1.0ヘクタールであり,滋賀県の平均(0.85ヘクタール)を (イ) 社会経済的条件農林業センサス(1990)によると,本件事業施行地域の1戸当たり平均耕地面積は1.0ヘクタールであり,滋賀県の平均(0.85ヘクタール)を上まわっており,県内の主要な農業地域となっている。 地域ではほ場整備事業の推進とともに,農地の流動化及び農作業の受委託が進んでおり,大型機械化体系による水稲作を中心とした規模拡大の傾向が強い。また,野菜指定産地等の各種指定による野菜・畜産等を組み合わせた複合経営も育成されている。 しかしながら,農業用水の安定確保に多大な労力と費用を要していることが,農業経営の安定と所得向上を阻害している。 これらに対処するため,本件事業により農業用水の安定供給が図られることから,水田の高度利用,大型機械の導入等による農業生産性を更に高めることが可能となり,農業経営の合理化が図られることから,この事業は社会経済的にも必要性が十分あると認められる。 イそして,上記アの調査報告書に基づき被告が決定した本件事業計画の計画書である「国営新愛知川土地改良事業計画書(農業用用排水)」(乙8)には,本件事業の必要性に関して,次のような記載がある。 (ア) 本件事業施行地域は,滋賀県の琵琶湖東部に位置し,愛知川の扇状地に形成された八日市市外8町にまたがる約7600ヘクタールの水田地帯である。 かんがい用水は,愛知川及び永源寺ダムと小河川,溜池,地下水に依存している。 地下水利用の大部分は揚水機に依存しており,維持管理に多大な労力と費用を要し生産性向上の阻害要因となっている。 (イ) 本件事業施行地域のかんがい用 る。 地下水利用の大部分は揚水機に依存しており,維持管理に多大な労力と費用を要し生産性向上の阻害要因となっている。 (イ) 本件事業施行地域のかんがい用水は,国営愛知川土地改良事業によって造成された主水源としての永源寺ダムと付帯県営事業による県営愛知川頭首工及び補助水源としての中小河川水,集水渠(地下水取水)の他既存の湧水,溜池,地下水揚水井戸に依存した用水管理が行われてきた。その後のほ場整備の進展・営農形態の変化による必要水量が増大する一方,地下水位低下等による水源取水量の減少から毎年水不足が発生しており,土地改良区は愛知川左右岸で「隔日給水」の対応と併せて,廃止予定の井戸(揚水機)約1000台に依存するという厳しい配水管理の状況にある。 (ウ) 本件事業は,滋賀県八日市市外8町に広がる水田7500ヘクタールに対し,用水補給を行うため第2ダム等の水源施設を建設することにより農業経営の安定と農業の生産性の向上を図るものである。 ウ上記ア及びイ並びに証拠(乙16の7,乙31,証人ρ)によれば,被告は,上記アの調査報告を踏まえ,上記イの計画書に記載されているような事情等を考慮した上で,本件事業施行地域において,旧事業完了後のほ場整備の進展・営農形態の変化,農業経営の合理化や技術革新の進行による必要水量の増大及びこれらによる地下水位の低下等の水源環境の変化等のため,必要水量の確保が困難な状況にあると認識した上で,本件事業施行地域が滋賀県下有数の穀倉地帯としてさらに発展していくためには,不足する用水を安定した水源により確保し,用水供給の安定と配水管理のために要する労力及び揚水機等の運転経費の節減を図り,農業経営の安定を図るために,本件事業の必要性があると判断して,本件事業計 には,不足する用水を安定した水源により確保し,用水供給の安定と配水管理のために要する労力及び揚水機等の運転経費の節減を図り,農業経営の安定を図るために,本件事業の必要性があると判断して,本件事業計画を決定したものと認められる。 (3) 上記(2)の判断について,原告らは,以下の各点において被告には事実誤認があり,本件事業の必要性はないと主張するので,それらの点について検討する。 ア 「必要水量が増大している」との判断について(ア) 括弧内に掲記する証拠によれば,本件事業施行地域内における必要水量の変化等について以下のような事実が認められる。 a 本件事業施行地域の自然的環境及び旧事業本件事業施行地域は,その中央を流れる愛知川が天井川であることなどから,普段は水量が少なく,日照りが続けば干ばつに襲われる反面,台風などによって豪雨が発生すると洪水の被害を受けてきていて,流水の利用が難しく,多数の堰や井戸などに頼る複雑かつ不安定な用水による農業経営を余儀なくされてきた。 そこで,昭和27年から昭和58年にかけて,旧事業が実施され,主水源である永源寺ダム及び幹線用水路が新設されるとともに,付帯県営事業により農業用用排水施設が整備され,洪水の発生が減少するとともに,かんがい用水の供給が旧事業実施前に比べ,格段に改善された。 (以上,乙7,32ないし34,証人τ)b 農業用水の需要増大しかし,旧事業の完了後も,本件事業施行地域においては,次の事情により農業用水の需要が増大していった。 (a) ほ場整備が進んだこと等により, しかし,旧事業の完了後も,本件事業施行地域においては,次の事情により農業用水の需要が増大していった。 (a) ほ場整備が進んだこと等により,用排水路が改良されるなどして用排水調整が可能になったため,使用水量が増大した。 (b) 転作による水田の畑利用が増大したところ,一旦畑利用した土地は乾燥状態が進行し,水持ちが悪くなっているため,水田に戻す際に大量の水量が必要で,時には通常の田に比べて2倍以上の水量を要することもあることから,必要水量が増大した。 (c) 高品質米の作付けが増加したところ,コシヒカリ等の高品質米は,かんがい期間が長くなるため,必要水量が増大した。 (以上,乙16の7,乙31ないし34,証人ρ,証人τ)そして,水田における1日当たりの葉面蒸散量と水面蒸発量を合わせた蒸発散量,地下浸透量,畦畔浸透量の合計である水田浸透量の和を水深単位(ミリ/日)で表したものである減水深についてみると,平均減水深は19.7であって,これは,旧事業計画作成にあたって測定された平均減水深19.2より0.5ミリメートル増加していること,0.5ミリメートルの減水深の差は,ヘクタールあたりに換算すると,1日5立方メートルに相当するものであること(乙8,31,証人ρ)からして,農業用水の需要増大が数値としても裏付けられているものと認められる。 c 水源環境の変化他方で,旧事業実施後の必要水量への対応として,河川の還元水や地下水を利用するための補助水源の追加施工を行ってきたが,①ほ場整備等による受水流域の開発整備に伴い流況が変化したことによる水源 他方で,旧事業実施後の必要水量への対応として,河川の還元水や地下水を利用するための補助水源の追加施工を行ってきたが,①ほ場整備等による受水流域の開発整備に伴い流況が変化したことによる水源取水地点での利用可能量低下,②地下水位の低下等による湧水取水や地下水揚水量の減少,③老朽化等のため利用可能なため池が減少したことによる利用量の減少及びピークカットとしての機能の低下など,補助水源を取り巻く環境が変化したことにより,必要水量の確保が困難な状況となった(乙16の7)。 (イ) 以上によれば,被告が本件事業施行地域において「必要水量が増大している」と判断したことに不適切なものがあったということはできない。 (ウ)a この点について,原告らは,旧事業に基づく水利計画は,永源寺ダムの水だけではなく,地下水や愛知川以外の河川水,ため池などの補助水源から取水し,これらを一体的に運用して初めて受益地の農業用水を賄うことのできる水利構造として計画されており,上記水利構造は,本件事業計画においても前提条件となっているところ,旧事業完了後の用水使用実績が旧事業の計画必要用水量を下回っており,取水容量,特に補助水源からの取水容量には余裕があるのであって,必要水量が増大しているとはいえないと主張する。 しかし,前記(ア)に認定しているとおり,旧事業実施後に補助水源における取水機能が低下し,その結果利用水量が減少しているのであって,とりわけ河川水や揚水等の補助水源の取水実績が減少している(甲81)こと,乙31ないし34及び証人τの証言によれば,旧事業終了後も現実問題として水不足の状態があると実感している農家が存在し,その数は少なくないと認められることからすれば,旧事業で計画されていた取水量を本件事業 1ないし34及び証人τの証言によれば,旧事業終了後も現実問題として水不足の状態があると実感している農家が存在し,その数は少なくないと認められることからすれば,旧事業で計画されていた取水量を本件事業計画策定の時点においてすべて確保することは困難になっていたものと推測されるのであって,取水実績が旧事業における計画必要量を下回っていることから,直ちに「恒常的な水不足はない」と断定することは適切でない。 また,本件事業計画は,本件事業施行地域において,農業用水の取水を揚水機に依存しており,その維持管理に多大な労力と費用を要し,それが生産性向上を阻害していることから,そのような状況を改善することを目的として実施計画されたものである(乙8)ことからすれば,原告らが主張するように,補助水源の計画必要用水量が使用実績を上回っていて十分な余裕があり,補助水源の利用が可能であるとして,農業用水が不足していないから必要性がないと断定することは,上記の本件事業計画の目的の正鵠を得ないものである。 b 原告らは,減反政策の結果米の作付け面積が毎年急激に減少していることや,農地転用によって水田面積が減少していることからすれば,将来にわたって必要水量が減少していく可能性が高いのであって,このことを看過して必要水量が増大しているというのは不適切であると主張する。 確かに,本件事業は,その完成予定年が平成16年度であり,将来にわたる本件事業施行地域の農業用水の安定確保を目的とするものであるから,将来における必要水量の見通しを立てた上で本件事業の必要性を判断すべきであって,将来の予測は不確定要素によるものであるから考慮しなくてよいということにはならないことはいうまでもない。 必要水量の見通しを立てた上で本件事業の必要性を判断すべきであって,将来の予測は不確定要素によるものであるから考慮しなくてよいということにはならないことはいうまでもない。 しかし,本件事業の計画書(乙8)によれば,生産計画において,水稲の作付面積は約19パーセント(6280ヘクタールから5100ヘクタールへ),生産量は約17パーセント(3万1470トンから2万6070トンへ)減少するものとされており,この数値が当時の諸事情に照らし,著しく不相当であると認めるに足りる証拠はないこと,上記計画書によれば,水稲の作付面積減少分は,水田の畑利用により畑作へ転換するものと扱われており,全体としての作付面積は増大するものとされていて,耕作放棄すること等は想定されていないこと,乙27によれば,本件事業施行地域周辺の耕作放棄率(経営耕地面積に占める耕作放棄地面積の割合)は,年間0.2ないし0.4パーセント程度で推移していると認められること,原告ら提出の甲110号証によっても本件関係市町の米の作付面積は,平成3年から平成10年までの間にわずか5パーセント程しか減少していないこと,本件事業計画策定時において耕作放棄等により農用地そのものが減少していくことが相当程度の蓋然性をもって予測できたことを示す的確な証拠がないこと,本件事業計画が予定している水田の畑利用により前記(ア)の事情による必要水量の増大を上回るような必要水量の減少があると認めるに足りる証拠はないこと,以上の事情に照らせば,本件事業計画策定にあたって,上記のような水田の畑利用があることを想定した生産計画を策定し,これを前提に必要水量が増大すると判断したことが,被告の裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用したものとはいえない。 イ 「水不足が発生」しているとの判断につい 想定した生産計画を策定し,これを前提に必要水量が増大すると判断したことが,被告の裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用したものとはいえない。 イ 「水不足が発生」しているとの判断について(ア) 証拠(乙31ないし34,証人τ)及び弁論の全趣旨によれば,本件事業計画決定がされた当時の本件事業施行地域における水利用の実態について,以下の事実が認められる。 a 隔日送水等による節水かんがい本件事業施行地域においては,改良区が,送水範囲を愛知川左岸ブロックと同右岸ブロックに分けて1日おきに送水する隔日送水を行ったり,永源寺ダムの貯水量が大きく減少した場合には,夜間節水,数日おき送水及び全面止水等も行うなどして,送水制限を行っていた。 上記のような送水制限を行った日数は,旧事業完了後の昭和58年から平成12年までの間で述べ985日(1年あたり約55日)に及び,年間かんがい期間150日の3分の1以上となっている。 このような送水制限を行う場合,改良区の職員による送水の管理や巡視等が必要となるほか,これに要する人件費等の水管理費用が増大し,改良区組合員の経費負担も増加する。 b 各末端ほ場における節水個々の農家は,節水対策として,通常の代かき前に荒かきをしたり,漏水を防ぐためのシートを設置するなどの作業を行っていた。 また,分水工以下の末端水路は,各ほ場ごとに管理していたところ,集落ごとに当番で巡視や送水作業等を行う番水を強いられ,農家にとって相当な負担となっていた。 このような節水を強いられていた農家の間で は,各ほ場ごとに管理していたところ,集落ごとに当番で巡視や送水作業等を行う番水を強いられ,農家にとって相当な負担となっていた。 このような節水を強いられていた農家の間では,用水をめぐる諍いも起こり,その処理に改良区職員が苦慮することもあった。 (イ) 以上のように,改良区及び末端のほ場においては,厳しい節水対策を強いられている状況にあり,そのような状況の下では,客観的に見ても水不足の状態にあったものと認められる。 (ウ) この点について,原告らは,水不足は現実になく,改良区において節水が必要となったのは,水の使い方に問題があったからであるなどと主張し,これに沿う原告μの供述がある。 しかし,証拠(甲80,原告μ)によれば,原告μの所有する農用地は,本件事業施行地域のうち愛知川の比較的上流部分の沿岸にあって,永源寺ダムからの放水後水が供給されるまでに1時間程度しかかからないこと,同人は本件事業施行地域全体の実態を把握していたわけではないことが認められることに加え,同人の供述によっても,夜間放流等が水の無駄遣いであったと認めることはできないことに照らせば,水の使い方に問題があったとの原告μの供述は採用できず,他に水の無駄遣いがあったと認めるに足りる的確な証拠はない。 なお,旧事業終了後の用水使用実績と旧事業の計画必要用水量の比較から水不足の有無を論じることができないことは,前記ア(ウ)aのとおりである。 ウ 「揚水機の維持管理に多大の労力と費用を要している」との判断について(ア) 証拠(乙32,33,48ないし50,54の2,4及び7,証人τ,証人φ)及び弁論の全趣旨によれば,本件事業施行地域におけ に多大の労力と費用を要している」との判断について(ア) 証拠(乙32,33,48ないし50,54の2,4及び7,証人τ,証人φ)及び弁論の全趣旨によれば,本件事業施行地域における本件事業計画決定当時の揚水機の使用状況等について,以下の事実が認められる。 前記イのとおり,本件事業施行地域においては,水不足が深刻で,厳しい用水管理が必要とされており,不足する水については,揚水機付き井戸に頼らざるを得ない状況であった。 そこで,淀川調査事務所が,平成3年ころに農家への聞き取り調査を行い,その当時の揚水機に関する賦役経費(寄り合い,水番操作手当,草刈,井戸掃除に要する時間を経費計算したもの)を井戸の口径別に算定したところ,改良区全体で年間経費は4億9239万円,揚水機場1か所あたりの経費は60万2000円から85万3000円,賦役時間は460時間ないし720時間であった。 また,揚水機の管理等に要する時間は,水路と土地の位置関係により大幅に異なり,1日1,2時間程度のところから,10時間程度を要するところまでさまざまであり,基幹水路から離れている土地などでは,水番に当たっている日は,ほぼ1日水番作業を行わなければならないこともあった。なお,本件事業施行地域において,平成3年当時は渦巻きポンプが全体の約60パーセントを占めていたところ,渦巻きポンプは水中ポンプに比べ,吸水管への充水,ベルトや井戸の水位等の確認及び機械室の排水など,ポンプの管理,運転,操作に多くの時間を要するものであった。 さらに,揚水機のための農家負担金として,平成2年から平成11年までの間は,10アールあたり年間5600円を要していた。 (イ) 以上に るものであった。 さらに,揚水機のための農家負担金として,平成2年から平成11年までの間は,10アールあたり年間5600円を要していた。 (イ) 以上によれば,本件事業施行地域においては,揚水機の維持管理に相当程度の労力と費用を費やしていたことが認められ,それらは,揚水機の位置等により異なるものの,平均すると,その負担は決して少なくなかったものというべきである。 (ウ) これに対し,原告らは,被告主張の揚水機の維持管理に要する労力や時間は信用できず,独自の調査(甲148,149)の結果によれば,実際には年間賦役平均時間は39時間42分にすぎないなどと主張する。 しかし,上記の原告らの調査は,平成13年から平成14年にかけて行われたもので,本件事業計画策定時とは時期を異にするばかりか,非かんがい期である平成13年11月または平成14年1月に聞き取り調査していること,調査地点が12か所で管理者は5者にすぎず,本件事業施行地域の全体を代表するような地点が選択されているか疑問であること,揚水機の維持管理費として扱われる番水等にかかる賦役等が含まれていないこと等によれば,上記調査が本件事業施行地域における揚水機の維持管理に要する労力や時間を的確に示すものと認めることはできず,これを採用することはできない。 エ受益面積について(ア) 証拠(乙8,16の7,乙31,証人ρ)及び弁論の全趣旨によれば,本件事業計画において受益面積を7500ヘクタールと算出した方法について,以下の事実が認められる。 a ほ場整備事業の実施地域のうち,換地処分登記手続済みまたは手続中の地区については,確定測量結果に基づく農地面積を集計し ールと算出した方法について,以下の事実が認められる。 a ほ場整備事業の実施地域のうち,換地処分登記手続済みまたは手続中の地区については,確定測量結果に基づく農地面積を集計した。その結果は,4758.4ヘクタールである。 ほ場整備事業の実施地域のうち,一時利用地の指定が行われる区域について,指定済みの地域についてはその指定のために用いた測量結果に基づく面積を,未指定の地域については当該ほ場整備事業計画に基づく計画農地面積を集計した。その結果は904.8ヘクタールである。 b ほ場整備事業の実施が計画されている農地については,当該計画に基づく計画農地面積を集計した。その結果は,283ヘクタールである。 ほ場整備事業が予定されているが,実施時期が未定の地域については,縮尺5000分の1の地形図を基にして計測した面積を集計した。その結果は,970.1ヘクタールである。 ほ場整備事業の予定がない農地についても,同様に,地形図を基にして計測した面積を集計した。その結果は,688.6ヘクタールである。 c そして,上記bのうち,ほ場整備事業の実施時期が未定の地域の面積から,将来ほ場整備事業が実施されることにより建設される道路・水路敷面積100ヘクタールを減じた上で,これらを合計して,受益面積を約7500ヘクタールとした。 (イ) 上記(ア)の受益面積の算出方法は合理的なものであり,本件事業計画における受益面積は適切に算出されていたというのが相当である。 (ウ) これに対し,原告らは,①平成2年度の農業センサス(1990年世界農林業センサス)における受益地区の経営耕地面 おける受益面積は適切に算出されていたというのが相当である。 (ウ) これに対し,原告らは,①平成2年度の農業センサス(1990年世界農林業センサス)における受益地区の経営耕地面積との齟齬,②ほ場整備実施済み面積との齟齬,③改良区の経営賦課金徴収面積との不一致を根拠に受益面積が過大であると主張する。 a しかし,乙22,証人ρによれば,農業センサスにおける経営耕地面積は,その算入対象となる農家について経営耕地面積や農産物販売金額の下限が設けられていてすべての農家を対象とするものではないこと,調査員による対象農家からの聞き取りによる面積であって実測でない面積が集計されていること,耕地の経営農家の居住地ごとの集計であること等により,実際の面積より過小となる場合もあることが認められ,これらに照らせば,農業センサスによる経営耕地面積を根拠として,本件事業計画の受益面積が不相当であるという原告の主張は採用できない。 b また,証拠(甲18,原告μ)及び弁論の全趣旨によれば,平成11年の時点では愛東町,湖東町,秦荘町においてはほ場整備が実施済みであることが認められるものの,本件事業計画策定時点における整備済地区,未整備地区及び非整備地区の合計面積を集計して算出した受益面積と平成11年時点でのほ場整備完了面積とを単純に比較することはできないこと,乙77によれば平成4年当時の上記3町の要ほ場整備面積はいずれも平成11年時点での要ほ場整備面積を上回っていることが認められること,上記(ア)aの本件事業計画策定時の上記地域におけるほ場整備実施済み面積算出方法が不相当であることを示す証拠はないことに照らせば,ほ場整備実施済み面積との齟齬を理由とする原告らの主張も理由がない。 c さら の上記地域におけるほ場整備実施済み面積算出方法が不相当であることを示す証拠はないことに照らせば,ほ場整備実施済み面積との齟齬を理由とする原告らの主張も理由がない。 c さらに,甲117によれば,平成3年度の改良区の賦課金徴収面積は約7200ヘクタールで,本件事業計画における受益面積より少ないものの,乙32によれば,改良区の組合員でも水が利用できないために賦課金徴収を保留している保留地があると認められることに照らせば,賦課金徴収面積との不一致をもって受益面積が過大であるということはできない。 (エ) 原告らは,受益面積の算定は,将来の受益地減少を無視したものであるとも主張する。本件事業計画はその完了までに10年以上を要するものであるから,将来確実に受益地が減少することが予想されるのであれば,そのことを考慮に入れた計画を策定すべきであって,計画策定時の現状だけを前提とした計画にすることは適切とはいえない。しかし,全国的に減反政策が遂行されていたという状況の下にあっても,本件事業計画策定時において,本件事業施行地域で水田の畑化が進むだけでなく,農地そのものが減少していくことを相当程度の確実性があるものとして予測するに足りる資料があったことを示す的確な証拠はなく,乙27によれば,平成2年の本件事業施行地域における耕作放棄率は0.4パーセントにすぎず,平成7年のそれも結局0.3パーセントにすぎなかったことが認められ,実際にも農地の減少はわずかであることに照らしても,受益面積について受益地が減少することを考慮しなかったことをもって,本件事業計画が不合理であるということはできない。 (4) 以上のとおりであるから,前記(2)の被告による本件事業の必要性の判断は,その基礎事実や判断過程において著しい過誤や欠 をもって,本件事業計画が不合理であるということはできない。 (4) 以上のとおりであるから,前記(2)の被告による本件事業の必要性の判断は,その基礎事実や判断過程において著しい過誤や欠落等を有するものとは認められず,その判断において被告の裁量権の逸脱ないし濫用があったとはいえない。 3 本件事業の技術的可能性(施行令2条2号)(1) 施行令2条2号は,土地改良事業の施行が技術的に可能であることを基本的な要件として規定しているところ,前記Ⅲ3(1)のような法の趣旨に照らせば,この要件は,当該事業によって農業生産の基盤の整備及び開発を図るという土地改良事業の目的を実現することが,当該土地改良事業によって新設される施設等の技術的側面に照らして可能であることが,科学的に証明されることを要求したものと解される。 そして,永源寺第2ダムを中心とした農業用用排水施設の新設を主たる内容とする本件事業においては,永源寺第2ダムの建設位置,構造,貯留水量や,農業用水路などによる配水方法等が,農業用用排水施設として十分な機能を発揮することが可能なものであるか否かについて,科学的に証明されることが必要であると解すべきである。 (2) ところで,土地改良事業計画における工事計画にかかる設計である全体実施設計のあり方について規定した農林水産省構造改善局長,同省畜産局長名義の全体実施設計要綱(昭和54年3月20日付け構改D第131号。乙60。)は,全体実施設計は,土地改良事業計画設計基準及び関係法令等に準拠して行うものと定めているところ,その基準を定めた国営土地改良事業の工事の設計及び施行の基準に関する訓令(昭和44年9月1日付け農林省訓令第26号。乙61。)によれば,国営土地改良事業によって造成する施設の設計につい ているところ,その基準を定めた国営土地改良事業の工事の設計及び施行の基準に関する訓令(昭和44年9月1日付け農林省訓令第26号。乙61。)によれば,国営土地改良事業によって造成する施設の設計について,構造物の位置,形式,規模及び構造は,地形,地質,水分,気象,現場の状況等の設計条件を考慮したものであることとされ,ダムの設計について,必要な機能を確保するものであって,全体として必要な強度及び水密性を有し,滑動,転倒及び沈下が生じない構造とすることとされている。さらに,上記訓令に基づき,農林水産省において,ダムの設計及び施行に当たって遵守すべき事項については,土地改良事業計画設計基準(設計ダム)(ダム設計基準。乙62。)を定めている。この基準は,土地改良事業で新築又は改築するダムの設計及び施工に当たって遵守すべき一般的な事項を定めたものであり,河川法13条2項に基づく河川管理施設等構造令及び河川管理施設等構造令施行規則の規定に照らして定められたものであって,土地改良法の側面からだけでなく,ダムを新築する際には河川法上の許可が必要な場合がほとんどであることから,同法の側面からも適切なダムの設計及び施工がされるように設けられたものと解される。 したがって,本件事業計画において設置が予定されている永源寺第2ダムを中心とした農業用用排水施設について,上記の各要綱,訓令,基準等に適合するように調査及び全体実施設計がされているのであれば,土地改良事業の要請にも河川法上の要請にも適うものであって,原則として施行令2条2号が規定する技術的可能性の要件を備えているものというのが相当である。 (3) そこで,本件事業計画策定に先立って行われた調査及び全体実施設計についてみると,証拠(乙16の1,乙31,62,証人ρ)及び弁論の全趣旨によれば ているものというのが相当である。 (3) そこで,本件事業計画策定に先立って行われた調査及び全体実施設計についてみると,証拠(乙16の1,乙31,62,証人ρ)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア永源寺第2ダムの設置位置の決定淀川調査事務所は,専門技術者の指導の下に地質調査等を行い,地形調査,地表地質踏査,ダム貯水容量,水没地域の問題等から総合的に検討した結果,永源寺第2ダムの設置位置を,堅固な岩盤で,左右岸とも急峻な地形を呈し,かつ近くにダム建設に問題となるような活断層のない愛知川支流古語録谷川合流部下流地点と決定した。 イダム設計洪水流量の決定ダム設計基準によれば,ダム洪水流量は気象及び水象の調査等により適切に定めるものとされ,河川管理施設等構造令によれば,確率的に200年に1回の割合で発生するものと推定される200年確率洪水流量,当該地点において観測あるいは洪水痕跡等から推定される既往最大洪水流量,当該ダムに係る地域と水象・気象が類似する近傍流域における観測結果から推定される最大洪水流量のうち,いずれか大きい流量とされているところ,淀川調査事務所は,これらについての検討を行った結果,最大値を示した洪水流量に御池川からの間接流入量(毎秒10立方メートル)を加えて,ダム設計洪水流量を毎秒730立方メートルと決定した。 ウダム本体の構造の決定淀川調査事務所は,永源寺第2ダムの堤高については,有効貯水量及び計画堆砂量を計算した上で,ダムサイトの地質や岩盤の調査を行って決定した。また,提体の設計は,ダムの堤体自重,静水圧,泥圧,堤体の地震時慣性力,動水圧等予想される荷重に対する安定性を考慮して決定した。 堆砂量を計算した上で,ダムサイトの地質や岩盤の調査を行って決定した。また,提体の設計は,ダムの堤体自重,静水圧,泥圧,堤体の地震時慣性力,動水圧等予想される荷重に対する安定性を考慮して決定した。 エ洪水吐の設計ダム設計基準によれば,洪水吐は,ダム設計洪水流量以下の流水を安全に流下させる構造とし,流下する流水の水勢を緩和する必要がある場合には適当な減勢工を設けるものとすると規定されている。洪水吐は,流入部,導流部及び減勢工から構成されているところ,永源寺第2ダムにおいては,ダムの形式や構造を考慮し,安全性,経済性等の観点から,流入部をゲートのない直線越流型,導流部を提体流下式,減勢工を副ダム式とすることとした。 オその他の施設の設計頭首工等の付帯施設,幹線水路や調整池等の付帯工等についても,永源寺第2ダムと同様に,土地改良事業計画設計基準に基づいて設計が行われた。 (4) 上記(3)のとおり,本件事業計画に先立って行われた調査及び全体実施設計は,前記(2)の各要綱,訓令,基準等に準拠して適切に行われたものと認められるのであり,乙7によれば,専門技術者も,ダムの形式,座取り及び減勢工等のその基本的な構造や形状については,地形条件等から適切と考えられるとの意見を述べていることも考慮すれば,本件事業計画については,農業用用排水施設としての機能を発揮することが科学的に証明されたものと認めるのが相当である。 (5)アこれに対し,原告らは,永源寺第2ダムは,洪水調節機能を有せず治水上の安全性を欠くことから本件事業計画は技術的可能性の要件を欠くと主張し,これに沿う甲16,甲18,甲144,証人χの証言がある。 しかし,証拠(乙31,35,5 機能を有せず治水上の安全性を欠くことから本件事業計画は技術的可能性の要件を欠くと主張し,これに沿う甲16,甲18,甲144,証人χの証言がある。 しかし,証拠(乙31,35,53,証人ρ)によれば,①永源寺第2ダムは,かんがい用水専用ダム(利水専用ダム)であること,②日本全国にはかんがい目的のダムが約1600あり,全国のダムの約半分を占めていて,かんがい用水専用ダムは全国でも一般的なダムであること,③前記(3)のとおり,永源寺第2ダムは,ダム設計基準等に適合するように設計が行われているところ,そのように設計されたダムについて安全上の問題が生じた例は過去にないこと,④永源寺第2ダムは,ゲートのないダムであるから,永源寺第2ダムから放流される水量は,流域から同ダムに流入してくる水量を上回ることはないこと,⑤永源寺第2ダムには,洪水に対応して,ダムに来た洪水を安全に流下させる施設である洪水吐が設けられることになっていること,⑥永源寺第2ダムについては,秋口にかんがいが終わり,ダムに水がなくなった状態で台風が来て洪水が発生した場合,洪水が空いたダムの貯水池内に貯まり,その貯留効果により洪水時の最大流量がカットされ,下流に放流される最大流量が小さくなって,洪水調節機能が発揮されることもあること(なお,甲17によれば,永源寺第2ダムと同じ利水専用ダムである永源寺ダムが,昭和46年と昭和47年の各台風時において洪水の調節の機能を果たしたことが窺われる。),⑦永源寺第2ダムには,他の流域である御池川からも茶屋川を介して導水する計画であるところ,御池川からの導水路はトンネル構造になっていて,毎秒10立方メートルに流量が制限され,洪水時には上記トンネルのゲートを閉め切って茶屋川に水が流れ込まないようにされていること,⑧永源寺第2ダムが初期洪水を貯 からの導水路はトンネル構造になっていて,毎秒10立方メートルに流量が制限され,洪水時には上記トンネルのゲートを閉め切って茶屋川に水が流れ込まないようにされていること,⑧永源寺第2ダムが初期洪水を貯留し,貯水量がいっぱいになったときに,ダムから下流への放流量が突然増えることは否定できないものの,ダム直下流から2キロメートル以上の区間は人家もなく渓谷となっていることから,永源寺第2ダム付近では,人家に与える影響も少ないと考えられること,⑨永源寺第2ダムの建設前でも,既に洪水時には下流部において御池川等から愛知川に永源寺第2ダムからの洪水量を超える洪水量が流出していること,⑩永源寺第2ダム建設に伴い,洪水観測態勢が整備されることとなり,永源寺ダムがない場合よりも,洪水の状況をより迅速かつ的確に下流の市町村や集落に警報することが可能になることが認められ,以上①ないし⑩に照らせば,永源寺第2ダムの新設により,洪水災害を惹起する危険性を増大させるものということはできない。原告ら主張に沿う上記各証拠は,その内容等に鑑み,ダム一般の安全性に対する懸念を示すものであって,上記認定事実に照らしても,これにより,永源寺第2ダム固有の安全上の問題点を的確に指摘するものとは認められない。 したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 イ次に,原告らは,永源寺第2ダムは,集水流域面積が少なく,また,下流の発電所の既得水利権が大きいことから,貯水効率が悪く,貯水可能性がないとして,技術的可能性の要件を欠くと主張し,これに沿う甲16,144,証人χの証言がある。 基礎となる事実1(1)のとおり,永源寺第2ダムの有効貯水量は,2480万立方メートルであるところ,乙53によれば,永源寺第2ダム近傍地点の実測流量等を ,証人χの証言がある。 基礎となる事実1(1)のとおり,永源寺第2ダムの有効貯水量は,2480万立方メートルであるところ,乙53によれば,永源寺第2ダム近傍地点の実測流量等を基に,水源の利用可能水量から下流流下量(下流の発電所の取水量を含む。)を差し引いて算出した貯水可能量は,昭和57年から同61年までの間,いずれの年においても有効貯水量を上回っていると認められ,貯水可能量の算出方法に格別不合理な点は認められない。なお,乙16の7,乙39の1,2,乙53によれば,被告の計算によっても,昭和39年及び同62年の貯水可能量は,有効貯水量に満たないことが認められるが,乙53によれば,これらの年は異常渇水年であった(昭和30年から昭和62年までの33か年間のうち,河川流量が昭和62年は2番目に,昭和39年は4番目に小さかった。)ことが認められる。以上の事情によれば,永源寺第2ダムは,20年から30年に1度あるような深刻な渇水年を除いては,1年単位でも有効貯水量を超える貯水を確保できるものと認められる。 そして,永源寺第2ダムは,長期間にわたって存在することが予定されている施設であるから,水収支を年単位で合わせなければならない理由はなく,渇水年の翌年に水量が満たされるなどすれば十分であること,乙16の7及び乙39の1,2によれば,有効貯水量全てを満たすことのできなかった昭和39年の降水量の下においても,かんがい期には,永源寺第2ダムから農業用水の補給がある程度可能であると認められ,有効貯水量をその年のうちに回復できない年が存在することだけをもって,永源寺第2ダムには貯水可能性がないということはできず,他に農業用用排水施設としての機能を発揮するに足りるだけの貯水可能性がないことを認めるに足りる的確な証拠はない。 存在することだけをもって,永源寺第2ダムには貯水可能性がないということはできず,他に農業用用排水施設としての機能を発揮するに足りるだけの貯水可能性がないことを認めるに足りる的確な証拠はない。 よって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 ウ原告らは,永源寺第2ダムによる濁水発生及び富栄養化の危険が高いから,これらに対する対策が必要であるのに,本件事業計画ではその対策が不十分であって技術的可能性の要件を欠くと主張し,これに沿う甲16,144,証人χの証言がある。 ところで,前記(1)のとおり,施行令2条2号にいう技術的可能性の要件は,農業用用排水施設としての機能を発揮するか否かという観点から考察されるべきものであるから,永源寺第2ダムの建設に伴う水質の変化についても,第1次的には,農業用水としての利用の可能性という点からその適否を判断すべきものである。 そこで,永源寺第2ダム建設による濁水発生や富栄養化の危険についてみると,甲10,11の1,2,甲12ないし14,130,131,133の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,現に永源寺ダム周辺において濁水問題が発生しており,これに対する対策が検討されていること,永源寺第2ダムによる濁水発生の可能性等については,正確な解明がされていないものの,洪水や水質の変化等により,ある程度の濁水発生の危険があることが認められ,富栄養化の危険もないとは言い切れない(なお,甲13によれば,近畿農政局において,永源寺第2ダムによる濁水への対策も検討中であることが認められる。)。しかし,上流に人家のある永源寺ダムについて,農業用水としての利用の可能性を否定するような水質汚染が生じているとは認められず(甲128,乙45),富栄養化による水質悪 討中であることが認められる。)。しかし,上流に人家のある永源寺ダムについて,農業用水としての利用の可能性を否定するような水質汚染が生じているとは認められず(甲128,乙45),富栄養化による水質悪化は平成10年においても顕著には生じていないのであり(甲14),上流に人家のない永源寺第2ダムについて,永源寺ダムの場合以上に農業用水としての利用可能性を否定するような水質汚染があるとは考え難いこと,上記のとおり,現在検討中の濁水対策が,農業用水としての利用を不可能とするような濁水を想定したものであると認めるに足りる証拠はないこと,以上に照らせば,濁水や富栄養化等による農業用水としての利用可能性の点から,本件事業計画の要件としての技術的可能性を欠くということはできない。 よって,この点に関する原告らの主張も理由がない。 エ原告らは,永源寺第2ダムの建設により,茶屋川や御池川が河川維持流量を維持できなくなり,両河川の河川環境が悪影響を受けることになるから,本件事業計画は技術的可能性を欠くとも主張する。 しかし,ダム建設等を内容とする土地改良事業を実施するにあたって,周辺環境への配慮が必要とされることは当然であるとしても,施行令2条2号にいう技術的可能性の要件は,農業用用排水施設としての機能の発揮の可否という観点から検討されるべきものであることは前記(1)のとおりであり,河川維持流量(河川の適正な利用及び河川の流水の正常な機能を維持できる最低限の流量)の確保の可否及び河川環境への影響の有無は同要件の有無を判断するに当たって,直接考慮対象となるものではないといわざるを得ない。よって,原告らの主張は,その前提において当を得ないものである。 4 本件事業の経済性(施行令2条3号)(1) するに当たって,直接考慮対象となるものではないといわざるを得ない。よって,原告らの主張は,その前提において当を得ないものである。 4 本件事業の経済性(施行令2条3号)(1) 施行令2条3号は,「土地改良事業のすべての効用がそのすべての費用をつぐなうこと」を基本的な要件として規定しているところ,これは,国営土地改良事業が,国及び県からの高額の財政支出を必要とするものであるとともに,農家にも一定の負担を課するものであること等を考慮すると,当該事業に要する総経費がその結果生ずる直接効果(増産効果,労働力の節減等)及び間接効果(土地改良事業の施行によって雇用機会が増大し,建設事業の需要を促す等の国民経済的な効果を含む。)によって償われるものでなければならいこと(以下「経済性」という。)をいうものと解される。本件事業は,永源寺第2ダム等の水源施設を新設して水源を転換し,かんがい用水を安定的に供給することにより農業経営の安定と農業の生産性の向上という経済効果を得ることを目的とするものであるから,本件事業の施行によって生じる上記経済効果がその実施費用を上回る場合に施行令2条3号の経済性の要件を充足するものというべきである。 もっとも,経済効果の測定は,本件事業の目的を達成するべく,専門的技術と知識を駆使して行うものであり,また,その測定方法等について法は何らの規定も置いていないことに鑑みれば,経済性の要件充足の有無の判断は行政庁の裁量に委ねられているものといわざるを得ない。したがって,行政庁の行った経済効果の測定が社会通念上又は計算上著しく妥当性を欠いていて,行政庁に裁量権を付与した目的を逸脱したもので,行政庁の要件充足についての判断がその裁量権を濫用してなされたと認められる事情が存しない限り,その判断裁量の範囲内にある 計算上著しく妥当性を欠いていて,行政庁に裁量権を付与した目的を逸脱したもので,行政庁の要件充足についての判断がその裁量権を濫用してなされたと認められる事情が存しない限り,その判断裁量の範囲内にあるものとして,当該土地改良事業は経済性の要件を充足するものと解すべきである。 (2) そこで,本件事業計画策定に先立って行われた経済効果の測定方法について検討する。 ア証拠(乙8,14,15,16の3,19,20,31,63,証人ρ)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 本件事業の経済効果の測定は,平成4年度に,「土地改良事業における経済効果の測定方法について」(昭和60年7月1日付け60構改C第688号農林水産省構造改善局通達。乙14。以下「測定方法通達」という。)に従い,投資効率方式によって行われた。 投資効率方式とは,土地改良事業を経済的な投資事業とみなして擬制的に経済的側面から評価するもので,その事業及び関連事業実施に必要な費用(事業費)の総額と妥当投資額(事業により生ずる年効果額をその事業の耐用年数間に生ずる総効果額に換算した額)を対比することにより,投資効率を測定して行うものである。そして,妥当投資額は,年総効果額を資本還元(将来収益を生むと予想される資産の価値を評価するため,出資元本に対する配当や利子など予想収益を利子率で除して現在の価値価格を算定すること)したものであり,具体的には次の算式により算出される。 妥当投資額投資効率 =──────────────── 妥当投資額投資効率 =────────────────総事業費 年総効果額妥当投資額=──────────────── -廃用損失額還元率×(1+建設利息率)それぞれの項目の内容及び本件事業における数値は,以下のとおりである。 (ア) 年総効果額年総効果額は,本件事業及びその関連事業の実施後に発生することが見込まれる作物生産効果,営農経費節減効果,維持管理費節減効果及び更新効果のそれぞれについて算出した年効果額を合算して算出する。その算定は,「経済効果の測定における年効果額等の算定方法及び算定表の様式について」(昭和60年7月1日付け60構改C第689号農林水産省構造改善局長通達。乙19。以下「算定方法等通達」という。)に従い,「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について」(昭和60年7月1日付け60構改C第690号農林水産省構造改善局長通達。乙15。 以下「諸係数通達」という。)に定められた諸係数を適用して行った。 後記のとおりの各年効果額を合算すると,本件事業の年総効果額は,29億7931万1000円である。 (イ) 還元率・建設利息率還元率及び建設利息率は,諸係数通達により算定されるところ,本件事業においては,還元率は0.0561,建設利息率は0.0650と算定される。 イ) 還元率・建設利息率還元率及び建設利息率は,諸係数通達により算定されるところ,本件事業においては,還元率は0.0561,建設利息率は0.0650と算定される。 (ウ) 廃用損失額土地改良事業により廃用する施設のうち,耐用年数の残存する施設等が廃用されることによる損失額をいい,本件事業においては,廃止される揚水機のうち耐用年数が尽きていない施設の未償却資産額を合算すると,後記(3)オのとおり,1億4855万1000円である。 (エ) 妥当投資額上記(ア)ないし(ウ)を基に,本件事業の妥当投資額を算定すると,497億4170万円となる。 (オ) 総事業費本件事業における総事業費は,後記カのとおり,本件事業の事業費476億円と関連事業であるほ場整備事業費3億円を合算した479億円である。 (カ) 投資効率上記(エ)及び(オ)を基に,本件事業の投資効率を算定すると約1.04となる。 イ上記アの投資効率の算定方法は明解かつ合理的なものと認められ,その過程において,行政庁の裁量権の範囲を逸脱し,これを濫用したと認めるに足りる事情はない。そして,上記アの算定結果によれば,本件事業の投資効率は1.04であって,経済効果が実施費用を上回っているものと認められるのであるから,本件事業計画は経済性の要件を充足するものと認められる。 (3) これに対し,原告らは,上記(2)アの算定過程で用いた各数値には不合理なものがあり,合理的な数値により算定すれば,本件事業の投資効率は1.00を下回るものであると主張するから,原告らが不合理である ) これに対し,原告らは,上記(2)アの算定過程で用いた各数値には不合理なものがあり,合理的な数値により算定すれば,本件事業の投資効率は1.00を下回るものであると主張するから,原告らが不合理であると主張する項目について検討する。 ア作物生産効果について(ア) 作物生産効果とは,事業により農地若しくは水利が開発され,又はこれらの条件が改良されることに伴って発生する作物の量的増減及び質的向上に関する効果であり,その年効果額は,事業による単位面積当たり収量の増加,作付面積の増減,品質の向上等に伴う純益の年増減額として算定されるものである。 本件事業計画策定にあたっては,①用水の安定供給により,水稲単収が増加する効果(水管理改良効果),②作物の作付面積の増減により生産量が増減する効果(作付増減効果)及び③水稲の生産調整のため,転作作物を作付けた場合に転作助成補助金が交付される効果(稲作転換効果)の和として算定したところ,年効果額は3億5033万7000円とされた。 (以上,乙14,20,31,証人ρ)(イ) この作物生産効果について,原告らは,その算定の基礎となった生産計画において,水稲が減少し,その他の生産物が増加することとなっているのは,実状と矛盾し不合理であると主張する。 a しかし,乙31によれば,作物生産効果は,営農計画を基礎として算定されるものであること,本件事業の営農計画は,「湖国農林水産プラン」(昭和63年3月に滋賀県が策定した21世紀に向けた県の農林水産行政の基本方針や振興方策)や「滋賀県農業生産総合振興基本方針」(上記プランの基本方針と振興方策を具体化するための生産振興計画として策定されたもの)を背景に, 県が策定した21世紀に向けた県の農林水産行政の基本方針や振興方策)や「滋賀県農業生産総合振興基本方針」(上記プランの基本方針と振興方策を具体化するための生産振興計画として策定されたもの)を背景に,農業生産の総合振興方針,主要作物の振興方針等を農家を含めた農業関係機関の参画を得て昭和63年と平成元年に関係市町が策定した「農業生産総合振興計画」を基礎として,水田農業確立対策の転作実績及び農林統計資料等により,本件事業施行地域の作付け動向を把握した上で,地元普及所等の意見を参考にして決められたものであることが認められ,本件事業についての経済効果の算定が行われた平成4年当時において,上記のような営農計画を基礎とすることが不合理であったと認めるに足りる証拠はない。 b また,乙8によれば,本件事業の営農計画においては,作付面積の割合が,現況では,表作は水稲が85パーセントを占めているものを,計画では水稲70パーセント,大豆22パーセント,野菜その他8パーセントとするとされているところ,本件事業計画策定に先立つ全体実施設計の際に立てられた営農計画(乙16の7)によれば,本件事業施行地域の兼業化率は95.7パーセントと高く,営農類型は大部分が水稲+麦+大豆であり,営農形態も小規模自己完結型あるいは農協等の大規模共同処理施設利用型で,農作業は日曜日に集中していることを把握した上で,兼業農家の組織化をはかり,水稲+麦+大豆体系で合理的な集落営農を展開し,規模の拡大と機械や施設の共同利用を進め,コストの低減と省力化を図ること,立地を活かした地方市場向け,特産物産地の育成に努めることにより営農体制を確立すること,集落拠点農家の規模拡大と組織化を図ることが計画されていることが認められる。そして,乙32ないし34及び弁論の全趣旨によれば,集落営農が け,特産物産地の育成に努めることにより営農体制を確立すること,集落拠点農家の規模拡大と組織化を図ることが計画されていることが認められる。そして,乙32ないし34及び弁論の全趣旨によれば,集落営農が定着することで農作業の効率化が進むことが認められることも考慮すると,本件事業計画における営農計画は,兼業農家が多い本件事業施行地域でも実現可能なものであるというのが相当である。 したがって,実現可能性の点からも,本件事業計画における営農計画は,合理性を有するというべきである。 c よって,原告らの主張は理由がない。 (ウ) なお,原告らは,被告による作物生産効果の算定は,実現不可能な裏作の増加を前提としている点でも不合理であると主張する。しかし,乙8,20によれば,本件事業計画における生産計画は裏作の増加を内容としているものの,その作物生産効果の算定においては,裏作の増加分は考慮されていないものと認められるから,原告らの上記主張は,その前提において当を得ていないものである。 また,原告らは,減反政策による耕地面積全体の減少を考慮していないことも作物生産効果の算定が不合理であることの理由として主張するようであるが,前記2(3)エのとおり,本件事業計画における受益面積の算出は合理的なものと認められるのであるから,この点についての原告らの主張も理由がない。 イ営農経費節減効果について(ア) 営農経費節減効果とは,作物生産効果では把握されない生産費の増減を算定するものであり,事業の実施により営農技術体系,経営規模等が変化することに伴って作物生産に要する費用が節減される効果である。その年効果額は,事業による労働費,生産資材経費等の年増 い生産費の増減を算定するものであり,事業の実施により営農技術体系,経営規模等が変化することに伴って作物生産に要する費用が節減される効果である。その年効果額は,事業による労働費,生産資材経費等の年増減額として算定される。 本件事業計画策定にあたっては,①水管理労働の節減効果(本件事業により用水が安定供給される結果,少ない水を有効利用するために行っている見回り作業等の水管理に要する労力が節減される効果)と②ほ場整備による労働・機械経費等の節減効果(関連事業のほ場整備によるほ場条件の改良に伴って作業効率が向上することにより,労働費,機械経費等が節減される効果)を,滋賀県農業経営ハンドブック(昭和62年3月),地元普及所からの聞き取り,水管理の実態を把握するために行った水管理労力調査(平成元年11月)等によって把握し,算定方法等通達,諸係数通達に基づいて,ほ場の規模ごとに算定し,合算したところ,年効果額は,①が7081万6000円,②が1558万6000円,合計8640万2000円となった。 (以上,乙14,20,31,証人ρ)(イ) この営農経費節減効果について,原告らは,上記(ア)①②のうち81.9パーセントを占める前者について,本件事業によって節減されることの合理的な説明がされておらず,被告の年効果額算定は不合理であると主張する。 ところで,乙52によれば,水管理労働に要する経費のうち,営農経費として扱われるのは,作物の栽培管理(ほ場管理)として営農労力面で対象とするような作物への直接のかん排水及びそのために必要な末端施設の操作(個人用揚水機の操作バルブの開閉,スプリンクラーの移動等ほ場におけるかん水作業等)に要する時間の経費であることが認められる(なお, するような作物への直接のかん排水及びそのために必要な末端施設の操作(個人用揚水機の操作バルブの開閉,スプリンクラーの移動等ほ場におけるかん水作業等)に要する時間の経費であることが認められる(なお,水路の浚渫,番水等の施設管理と一体とした賦役等に要する時間の経費は維持管理費として計上すべきものであると認められる。そして,乙53及び弁論の全趣旨によれば,本件事業施行地域においては,揚水機の管理と末端用水路の管理とが一体として行われていることが認められるから,揚水機に関する管理作業は,営農経費ではなく維持管理費として扱われることになる。)。 そして,上記(ア)のとおり,本件事業計画における営農経費節減効果は,滋賀県農業経営ハンドブック(昭和62年3月),地元普及所からの聞き取り,水管理の実態を把握するために行った水管理労力調査(平成元年11月)等により,ほ場の規模ごとに算定したものであり,その過程に不合理な点は認められない。なお,乙32,50によれば,水の安定供給が得られないために各農家におけるほ場管理に多くの労力が費やされており,それは,末端用水路などの施設管理と一体とした賦役に限られないことが認められ,本件事業により用水不足が解消されれば,これらの労力が節減されることが期待されるものと考えられることからすれば,上記算定結果は,本件事業施行地域の実態に即したものであるというのが相当である。 以上によれば,本件事業計画における営農経費節減効果は,合理的な根拠に基づいて算定されたものというべきであり,これを覆すに足りる証拠はない。 (ウ) なお,原告らは,本件事業計画において算定されているような水管理節減効果が生じることがないことを基礎づける独自調査の結果として,甲123,148を提出 に足りる証拠はない。 (ウ) なお,原告らは,本件事業計画において算定されているような水管理節減効果が生じることがないことを基礎づける独自調査の結果として,甲123,148を提出する。しかし,これらの調査は,揚水機に関する賦役を調査したものであって,上記のとおり,本件事業計画においては,主に維持管理費として扱われるべきものについてのものであると認められるから,これらを根拠として営農経費節減効果算定の当否を論じることは相当でない。 ウ維持管理費節減効果について(ア) 維持管理費節減効果とは,事業により水利施設等が新設又は改良されることに伴って水利施設の維持管理に要する費用が増減する効果であり,その年効果額は,事業による施設の維持管理費用の年増減額として算定される。 本件事業計画策定にあたっては,①現況維持管理費として,廃用井戸,ため池,用水管理施設の維持管理に要している費用(合計7億6839万8000円)を,②計画維持管理費として,永源寺第2ダム,調整池,連絡水路等,用水管理施設の維持管理に要すると見込まれる費用(合計1億4027万9000円)を算定し,現況維持管理費から計画維持管理費を差し引いた差額を年効果額として算定したところ,その額は,6億2811万9000円とされた(なお,本件事業計画策定時点では,年効果額は上記金額とされていたが,その後被告において誤りを修正し,現況維持管理費を145万7000円減じたことから,年効果額は6億2666万2000円となった。)。 (以上,乙14,20,31,54,証人ρ,弁論の全趣旨)。 そして,上記の維持管理費節減効果のうち,廃用される揚水機付き井戸に関する維持管理費節減効果の算出 (以上,乙14,20,31,54,証人ρ,弁論の全趣旨)。 そして,上記の維持管理費節減効果のうち,廃用される揚水機付き井戸に関する維持管理費節減効果の算出方法についてみると,証拠(乙16の7,20,24,31,35,54の1ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 廃止予定の揚水機付き井戸の決定前記2のとおり,本件事業施行地域においては,揚水機付き井戸によって補助水源としての地下水を利用しているところ,被告は,本件事業計画において,引き続き利用する揚水機付き井戸と廃止する揚水機付き井戸とを選定することとし,昭和63年から平成3年にかけて淀川調査事務所が中心となり,改良区の資料を基に,地域の状況に精通している者への聞き取り,改良区との合同現地調査等から本件事業施行地域に存する井戸の状況を把握し,地域内の水利用計画との関係等を考慮して,本件事業実施後も引き続き安定して利用し得るもの126台を補助水源として残すこととし,残り903台を廃止するものとし,それぞれの井戸を特定した。 b 揚水機付き井戸の既往年平均経費(現況維持管理費)の算定被告は,維持管理費のうち年々経常的なもの,すなわち電力料金については,井戸の口径別に抽出調査を行い,昭和58年度ないし昭和62年度の1か所当たりの料金を求めた。 維持管理費のうち周期的なもの,すなわち部品交換,修理等の経費については,水利組合からの聞き取り調査結果から,井戸の口径別に1か所当たりの平均費用を算定した。 賦役その他にかかる経費,すなわち,揚水機の操作や草刈り等の人件費,番水等の賦役に ,水利組合からの聞き取り調査結果から,井戸の口径別に1か所当たりの平均費用を算定した。 賦役その他にかかる経費,すなわち,揚水機の操作や草刈り等の人件費,番水等の賦役にかかる経費等についても,聞き取り調査結果から,口径別に1か所あたりの経費を算定して算出した。 その結果,既往年平均経費は,前記のとおり,廃止予定の903台合計で6億6568万5000円と算出された。 c 計画年経費(計画維持管理費)の算定廃止する揚水機については,本件事業計画実施後に経費が発生することはないから,経費の算定は行われていない。 以上の揚水機に関する維持管理費節減効果の算定は,水利組合等への聞き取りを行うなど十分な調査に基づくものと認められ,合理的なものというべきである。 (イ) これに対し,原告らは,上記維持管理費節減効果算定における揚水機付き井戸の廃止予定台数及び既往年平均経費の設定はいずれも不合理であると主張するが,これらは,以下のとおり,いずれも理由がない。 a 廃止予定の揚水機付き井戸について(a) 廃止される揚水機付き井戸の存在等について原告らは,上記(ア)aの廃止される揚水機の台数及び位置が確認できないから,既往年平均経費の算定は不合理であると主張する。 確かに,甲81及び114によれば,本件事業計画の基準年である平成3年度に改良区が把握していた揚水機の数は869台であり,本件事業により廃止予定の903台より少ないことが認められるものの,改良区が揚水機の数を把握するのは,主として電気料金 業計画の基準年である平成3年度に改良区が把握していた揚水機の数は869台であり,本件事業により廃止予定の903台より少ないことが認められるものの,改良区が揚水機の数を把握するのは,主として電気料金の補助という観点からであり(甲114,乙35,弁論の全趣旨),改良区が把握している揚水機の数が本件事業施行地域にある揚水機の全数であることを認めるに足りる証拠はなく,上記(ア)aのとおり,被告において廃止する井戸を特定した経緯等をも併せ考えれば,改良区が把握している揚水機数との不一致から,本件事業計画において廃止予定とされた揚水機数が不合理であるということはできない。 また,原告らが被告提出の井戸調査の集計資料(乙24)に基づきこれらの井戸の存在について独自に調査を行ったが全台数を確認できなかったとする甲149及び原告μの供述があるところ,甲149は原告μの平成14年1月18日付けの「追加陳述書」と題する書面で,①愛知川沿岸土地改良区かんがい揚水機の使用実績(甲114)に基づきかんがい揚水機の使用実績の推移としてかんがい揚水機の台数を取りまとめたものと,②原告μにおいて,乙24で示された廃止する揚水機の所在地をいくつかの水利組合に聞き取り調査を行った結果,一部の地区別揚水機の状況が既に乙24の数より少ないことから,本件事業計画が策定された基準年(平成3年度)に廃止される揚水機が903台存在していたことは極めて信憑性がないと記載されたものであり,原告μは「平成11年と平成12年の2回,1市8町を回ったりして井戸を調査したが,資料には番地が書かれていなかったので903台については全然確認できなかった。調査した井戸の数は確認していない。」と供述するものであって,このような記載や供述内容等と併せて,上記(ア)aのとおり,淀川調査事 は番地が書かれていなかったので903台については全然確認できなかった。調査した井戸の数は確認していない。」と供述するものであって,このような記載や供述内容等と併せて,上記(ア)aのとおり,淀川調査事務所において廃止する井戸を特定した経緯等に照らせば,甲149及び原告μの供述によっても,淀川調査事務所による調査が不合理であったと認めることはできない。 そして,他に同調査が著しく不合理でその根拠を欠くものであると認めるに足りる証拠はない。 (b) 揚水機付き井戸の廃止見込みについて原告らは,手っ取り早く利用できる井戸に依存する農家もあることなどから,903台の揚水機付き井戸が全て廃止されることはあり得ず,既往年平均経費の算定がその前提において不合理であると主張し,これに沿う甲88,141,157,証人φの証言,原告μの供述がある。 しかし,①本件事業計画は,永源寺第2ダムと調整池を設けて本件事業計画が策定された当時の現況の水源施設である903台の揚水機に代わるものとして,10年に1回程度の渇水にまで対応できる水源施設を確保することとされていること(乙8,16の7,乙53),②本件事業の実施により,安定的な用水供給がされれば,異常渇水などの特別の事情がない限り,操作や維持管理のために労力や電気代を要する揚水機付き井戸を使わなくても用水確保ができると考えられること,③証拠(乙48ないし50,53,証人τ)によれば,本件事業施行地域の農家の多くが,揚水機付き井戸の維持管理に多大な労力と費用がかかっていると考えており,水源の転換を望んでいると認められること,以上に照らせば,903台の揚水機付き井戸が廃止されることを前提として維持管理費 多くが,揚水機付き井戸の維持管理に多大な労力と費用がかかっていると考えており,水源の転換を望んでいると認められること,以上に照らせば,903台の揚水機付き井戸が廃止されることを前提として維持管理費節減効果の算定が行われたことをもって,不合理なものであったということはできない。仮に揚水機付き井戸の使用継続を望む農家があったとしても,本件事業施行地域全体の農業の発展という土地改良事業の目的に照らせば,被告において,そのような農家の揚水機も廃止するものとして計画策定したことをもって,裁量権を逸脱したものであるということはできない。 なお,原告らは,永源寺第2ダムからの給水によって用水事情が緩和され,小揚水機認定制度(改良区において設けた制度で,認定した小揚水機について電力料金などを改良区が負担する制度)が廃止された場合,認定外の揚水機(甲89によれば,418台である。)の存廃は農民の自由であることから,廃用される揚水機付き井戸は,改良区における小揚水機認定制度によって認定された井戸のうち,水源計画に組み入れられてない471台にすぎないなどと主張し,これに符合する甲88及び証人φの証言がある。しかし,上記認定制度は,水源転換が行われるまでの暫定的な期間に地下揚水を確保するために適用されたものにすぎないこと(甲89),乙32,53,証人τの証言によれば,認定外の揚水機を利用している農家には原則として助成金がないから,改良区の賦課金以外に揚水機の電力料等を負担しなければならず,これを重いと感じている農家が存在すると認められること,上記①ないし③のとおりの本件事業計画の目的,予想される効果,本件事業施行地域の多くの農民の意向等に照らせば,認定外の井戸が廃用されないことを前提とする前掲甲88及び証人φの証言はにわかに採用し難い。 記①ないし③のとおりの本件事業計画の目的,予想される効果,本件事業施行地域の多くの農民の意向等に照らせば,認定外の井戸が廃用されないことを前提とする前掲甲88及び証人φの証言はにわかに採用し難い。 (c) 旧事業計画との関係について原告らは,旧事業において廃止が予定されていた揚水機付き井戸については,すでに旧事業計画策定時に維持管理費節減効果が算定されていたのであるから,本件事業において節減される維持管理費にはこれらの井戸に関する経費を算入してはならないと主張する。 しかし,旧事業と本件事業は別個独立の事業であるから,本件事業における経済効果の算定は,本件事業施行前の現況と施行後の計画との比較においてなされるべきものである。確かに旧事業と本件事業は,その施行地域の大部分を同一にし,同じ愛知川にダムを建設して農業用水供給の安定を図るというものであるが,両者は計画時点が異なる上,前記のとおり,本件事業は,旧事業完了後に生じた状況の変化等により本件事業施行地域内で厳しい配水管理が必要となったことからこれに対処するために施行されるものであるから,旧事業において計画通りに廃止されなかった揚水機付き井戸があるからといって,これを本件事業において廃止するものとして扱ってはならないということにはならない。 よって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 b 既往年平均経費の算定について(a) 既往年経費の調査方法について原告らは,既往年経費の調査の信用性は確保されていないなどとして,維持管理費節減効果の算定は合理性を欠くと主張する。 既往年経費の調査方法について原告らは,既往年経費の調査の信用性は確保されていないなどとして,維持管理費節減効果の算定は合理性を欠くと主張する。 しかし,淀川調査事務所による既往年経費の算定方法は,前記(ア)bのとおりであり,この方法は,合理的なものと認められるから,原告らの主張は理由がない。 (b) 節減される経費について原告らは,揚水機付き井戸の維持管理費として計上されているものには,維持管理費に該当しない番水等にかかる費用や,本件事業によっても節減されない労働である末端用水路の清掃作業等にかかる費用が計上されており,合理性を欠くと主張する。 しかし,前記イ(イ)のとおり,番水等施設管理と一体とした賦役等は,営農経費ではなく維持管理費として計上されるべきものであるところ,証拠(乙49,50,53,証人τ)によれば,本件事業施行地域においては,揚水機付き井戸の操作と番水や用水状況の確認等は一元的に集落で共同して行われているものと認められるから,これらに要する経費は,いずれも揚水機付き井戸の維持管理費用として計上されるものというべきである。 また,末端用水路の清掃,草刈りに関する費用や番水等にかかる維持管理費用は,揚水機付き井戸が廃止されれば,揚水機付き井戸の維持管理費用としては当然節減されることのであるから,これらを節減される維持管理費として扱うことは,何ら不合理ではない。なお,本件事業計画においても,揚水機付き井戸と関連しない用水路の維持管理作業まで節減されると扱われているわけではない。 (c) 賦役の評価について 合理ではない。なお,本件事業計画においても,揚水機付き井戸と関連しない用水路の維持管理作業まで節減されると扱われているわけではない。 (c) 賦役の評価について原告らは,揚水機付き井戸の維持管理費用として計上されている賦役等は過大であると主張し,独自に調査した維持管理に要する時間に関する資料(甲123,148,149)を提出する。 しかし,原告らの調査は,一部の揚水機に限定して行われたものにすぎないこと,調査の時期や方法において本件事業計画策定時と同様の条件であったと認めることはできないこと,原告らの調査においては,上記(b)の番水等にかかる賦役が維持管理費用として計上されていないこと等を総合すると,上記調査の合理性には疑問があるといわざるを得ず,他に淀川調査事務所による調査が不合理であることを認めるに足りる証拠はない。 エ更新効果について(ア) 更新効果とは,老朽化等に伴い廃用する施設(以下「廃用施設」という。)に代えて廃用施設と同じ機能を有する施設を新たに建設する場合において,廃用施設の下で行われていた農業生産が維持される効果をいい,その算定方法は,事業計画時における一般的な施工水準を前提として,廃用施設の機能を再現するために必要な施設(以下「更新施設」という。)ごとに最経済的事業費を算出し,これに更新施設ごとの耐用年数に応じた還元率を乗じて得た額の合計額をもって年効果額とするとされている。 本件事業計画においては,揚水機付き井戸が永源寺第2ダム及び調整池に水源として転換され,また,ため池を改修して調整池として利用されることから,更新効果の算定に当たっては,①廃用施設である揚水機付き井戸( 件事業計画においては,揚水機付き井戸が永源寺第2ダム及び調整池に水源として転換され,また,ため池を改修して調整池として利用されることから,更新効果の算定に当たっては,①廃用施設である揚水機付き井戸(903台)とため池について,事業計画策定時に再建設する事業費を耐用年数で除した年減価額と②更新施設である新設される永源寺第2ダム及び調整池とため池改修後の調整池について,事業計画策定時に廃用施設と同じ機能を有する施設として建設する事業費を耐用年数で除した年減価額とをそれぞれ比較し,その結果,より小さい②の事業費(永源寺第2ダム及び調整池については337億4773万4000円,ため池改修後の調整池については5億8757万6000円)を最経済的事業費としたうえ,これにそれぞれ還元率0.0558(耐用年数期間の効果を年効果に換算する係数として,諸係数通達及び各施設の耐用年数から求めたもの)を乗じて合算した合計19億1591万円を年効果額とした。 (以上,乙19,20,31)。 (イ) この更新効果について,原告らは,①揚水機の台数及び廃止見込みが不当である,②最経済的事業費算定の基礎となった調査経過や算定方法が明らかにされていない,③旧事業において更新効果として算定されていたものが二重評価されている,ことから,その算定は不合理であると主張する。 しかし,①及び③については,前記ウ(イ)aのとおり,原告らの主張は採用できない。 また,②については,確かに,廃用施設の再建設事業費及び年減価額がいかなる方法で算出されたのかを示す証拠はない。しかし,全体実施設計の際の経済効果等算定調書(乙16の2)に記載されている揚水機付き井戸の事業費(揚水機34億1335万9000円,井戸8 び年減価額がいかなる方法で算出されたのかを示す証拠はない。しかし,全体実施設計の際の経済効果等算定調書(乙16の2)に記載されている揚水機付き井戸の事業費(揚水機34億1335万9000円,井戸82億0529万4000円,建屋18億0854万7000円)をそれぞれの耐用年数(揚水機20年,井戸30年,建屋45年)で除したものを合計して年減価額を算出すると約4億8436万8000円となるところ,揚水機付き井戸の更新施設である永源寺第2ダム及び調整池の年減価額は事業費337億4773万4000円を耐用年数80年(乙15)で除した年減価額4億2184万6675円で,後者の方が小さくなるから,これによれば,最経済的事業費を永源寺第2ダム及び調整池の事業費としたことは妥当であると考えられる。 原告らが独自に行ったとする更新効果の試算(甲88,157)は,基礎費用については現在における機能,構造のものを再建設する費用とすべきである(乙52)のに,現在渦巻きポンプであるものについても水中ポンプを建設する費用を基礎としたり,現存する建屋を建設しないものとしたりしていること,廃用予定井戸の数を独自の算定根拠に基づく471台としていることから,その算出方法において合理性を欠くといわざるを得ず,これを採用することはできない。そして,他に本件事業計画における最経済的事業費の算出方法が不合理であったことを認めるに足りる証拠はない(ちなみに,仮に井戸の再建設費が原告らが主張するとおりの1000万円であったとしても,903台の井戸を再建設する費用の年減価額は,単純計算でも4億5150万円となるのであって,更新施設である永源寺第2ダム及び調整池の年減価額より大きくなる。)。 (ウ) また,原告らは,本件事業計画においては,年総効果額に ,単純計算でも4億5150万円となるのであって,更新施設である永源寺第2ダム及び調整池の年減価額より大きくなる。)。 (ウ) また,原告らは,本件事業計画においては,年総効果額に占める更新効果額の割合が高すぎて不当であると主張する。 原告らの上記主張の具体的な根拠は明らかでないが,本件事業計画は,井戸やため池をダムや貯水池に水源転換することにより,用水供給の安定化を図り,農業生産を向上させることを目的とするものであるところ,このように現存する施設による農業生産を廃止される施設の老朽化等により損なうことなくこれを新設される施設によって維持し,さらに新設される施設によって農業生産を向上させることを主たる目的とすることは,土地改良事業として適切な一つの形態であるというべきであり,そのような土地改良事業の場合には,更新効果の割合が必然的に高くなるのであって,このことは何ら不合理ではないというべきである。なお,証人ρの証言及び弁論の全趣旨によれば,他の用水改良を目的とした国営土地改良事業においても,年総効果額に占める更新効果額の割合が本件事業計画の場合より高くなっているものが複数存在することが認められ,本件事業計画における年効果額に占める更新効果額の割合が他に例を見ないほど高いということもできない。 よって,原告らのこの点に関する主張も採用できない。 オ廃用損失額について(ア) 廃用損失額とは,土地改良事業により既存の施設が廃用されることに伴う損失額をいい,廃用施設の未償却資産額がこれに該当し,効果算定ではマイナスの効果として扱われる。 本件事業計画策定にあたっては,廃用される903台の揚水機付き井戸について,これと同規模の井 廃用施設の未償却資産額がこれに該当し,効果算定ではマイナスの効果として扱われる。 本件事業計画策定にあたっては,廃用される903台の揚水機付き井戸について,これと同規模の井戸を再建設した場合の事業費から廃棄価額(スクラップとして残る価値)を控除した額に,井戸の耐用年数に占める廃用時である本件事業完了予定年の平成16年以降の残りの耐用年数の割合を乗じて求めたところ,廃用損失額は,1億4855万1000円であった。 (以上,乙14,16の2,19,20,31)(イ) この点について,原告らは,廃用予定の揚水機の中には平成元年度以降に設置されたものや,事業完了予定年である平成16年度までの間に耐用年数が到来して補修や再設置されるものも含まれるのに,上記(ア)の算定においては,これらが考慮されず,残存耐用年数が著しく短いものとして計算されており,不合理であると主張する。 しかしながら,本件事業において廃止予定の903台の揚水機付き井戸はすべて昭和62年度までに設置されたものであって(乙16の2),原告らの上記主張はその前提において採用し難いものがあること,加えて,本件事業計画策定後も,本件事業完了までの間は廃用施設を利用し続けることが予定されており,その間に当該施設について補修や改修が行われることが全くないわけではないと考えられるから,廃用損失額算定にあたって,耐用年数経過後に施設を改修するなどして耐用年数が延びたような場合を予測し,これを想定した算定を行うのが実態に即するものであることは否定できないものの,一般に施設の耐用年数が経過することで施設の機能が全て喪失されるものではなく,改修等をしなくても耐用年数を経過した施設を使用し続けられる場合も少なくないこと, するものであることは否定できないものの,一般に施設の耐用年数が経過することで施設の機能が全て喪失されるものではなく,改修等をしなくても耐用年数を経過した施設を使用し続けられる場合も少なくないこと,本件事業が進行している間に耐用年数を経過したということで施設の更新等を行うことは事実上ごく限られてくると考えられること,改修の予測は困難であること等を考慮すると,本件事業計画策定に当たって,当時の事実を前提にそのような改修等が行われないものとして廃用損失額を算定したことが著しく不合理であるとはいえない。 よって,この点に関する原告らの主張は採用できない。 カ総事業費について(ア) 総事業費は,効果の発生に係る農地若しくは水利の開発又はこれらの条件の改良のための投下資本の総額である。農林水産省構造改善局では,構造物等の建設に必要な工事価格(請負費),構造物の建設用地の取得及び補償並びに事業の施行に必要な経費(測量試験費,機械器具費,営繕及び宿舎費,工事諸費等)の総額を総事業費とするものとしている。 本件事業における総事業費は,本件工事費476億円と関連事業であるほ場整備の事業費3億円を合算した479億円とされた。 (以上,乙14,16の2,3,乙31,65)(イ) 原告らは,総事業費には,将来の調査の結果生じる安全対策費用,環境影響防止費用,濁水防止対策費用も計上すべきであると主張する。 原告らが主張するような安全対策費等も,その対策工事等が,本件事業計画策定時点において本件事業の内容として含まれるあるいは含めるのが相当であると解されるのであれば,それらの費用も総事業費として計上すべきであることは当 うな安全対策費等も,その対策工事等が,本件事業計画策定時点において本件事業の内容として含まれるあるいは含めるのが相当であると解されるのであれば,それらの費用も総事業費として計上すべきであることは当然である。しかし,後述のとおり,原告らが主張するような対策が本件事業の内容として本件事業計画策定時に当然含まれるべきであるとまではいえないのであるから,本件事業の総事業費として,それらの費用を計上しなかったことが著しく不合理であるとはいえない。 (4) なお,原告らは,本件事業計画における投資効率1.04は極めて低く,妥当な投資効率を下回るものであると主張する。 しかし,前記(1)のとおり,施行令2条3号は,当該事業に要する総経費がその結果生ずる直接効果(増産効果,労働力の節減等)及び間接効果(国民経済的な効果を含む。)によってつぐなわれるものでなければならないことを規定したものであるところ,投資効率が1.00を上回る場合には,直接効果だけをもって,総経費を上回ることになるのであるから,経済性の要件を充足していることは明らかであって,1.00に近接した投資効率であっても,当該事業は違法とはならないものというべきである。よって,この点に関する原告らの主張も採用できない。 (5)アさらに,原告らは,経済性の要件を充足するためには,他に考慮し得る計画の中で最経済的になっている必要があり,その判断のためには,代替案の十分な検討が必要であり,最経済性の点からすれば,本件事業計画よりも投資効率の高い「琵琶湖逆水案」を採用すべきであると主張する。 しかし,施行令2条3号にいう経済性の要件は,その文言が示すとおり,当該事業に要する総経費がその結果生ずる効果によってつぐなわれることを要求しているにとどまるといわ と主張する。 しかし,施行令2条3号にいう経済性の要件は,その文言が示すとおり,当該事業に要する総経費がその結果生ずる効果によってつぐなわれることを要求しているにとどまるといわざるを得ず,同じ目的を達成するために考え得る他の方法との比較において,計画の各部分について最も経済性に優れていることまで要求しているものと解することはできない。そして,同じ目的を達成するために考え得る複数の方法が存在し,いずれも上記経済性の要件を満たしている場合に,そのうちのどれを採用するかについては,被告の合理的な政策的判断に委ねられているものと解するのが相当であり,その判断は単に投資効率の高低のみによってされるべきものではないことはいうまでもない(なお,原告らは,「琵琶湖逆水案」の方が本件事業計画より投資効率が高いと主張する。これは,前記(2)アの投資効率算定式のうち,妥当投資額については本件事業計画に関して算定された数字を用い,事業費については「琵琶湖逆水案」の建設事業費を用いて投資効率を試算すると2.19となるというものである。しかし,前記のとおりの妥当投資額の算定方法に照らせば,「琵琶湖逆水案」を採用した場合に得られる妥当投資額は,本件事業計画における妥当投資額と同一のものとはならないことは明らかであって,原告らの上記主張はこのことを看過したものであり,当を得ていないものといわざるを得ない。)。 イもっとも,法及び施行令に直接的には規定されていないものの,土地改良事業計画を策定するにあたって,同じ目的を達成するために複数の方法が考えられる場合に,その複数の方法から最終的にどの方法を選択するかという判断をする場合において,他の案の十分な検討を怠るなどしてその判断が著しく合理性を欠くというような場合には,その判断が被告の裁量の範囲 れる場合に,その複数の方法から最終的にどの方法を選択するかという判断をする場合において,他の案の十分な検討を怠るなどしてその判断が著しく合理性を欠くというような場合には,その判断が被告の裁量の範囲を逸脱するものとして違法となる余地を完全に否定することはできない。 そこで,原告らが本件事業計画に代えて採用すべきであると主張する「琵琶湖逆水案」についてみると,甲8,9及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 「琵琶湖逆水案」は,本件事業計画策定前に,淀川調査事務所が,本件事業施行地域の用水問題対策として確保する新規水源の一つの案として検討したもので,琵琶湖からの揚水を水源とするものである。淀川調査事務所において,本件事業のようにダムを新設する案(第2ダム案),琵琶湖逆水案,永源寺ダムを嵩上げする案(嵩上げ案)及びこれらの複合案について,それぞれ既存施設との整合性,供給の安定性,管理の利便性及び技術的可能性について比較検討したところ,嵩上げ案は技術的に困難であるということで,ダムと逆水の複合案は経済性に劣るということで,それぞれ除外された。そして,第2ダム案と琵琶湖逆水案の経済性を昭和62年及び平成3年に試算して比較したところ,1年あたりの投資指標(施設の建設事業費の年減価額と年維持管理費の合計)と農家負担額の双方において第2ダム案の方が優れているという結果が導かれ,総合的にみて,第2ダム案が優れていると判断された。 以上の事実によれば,淀川調査事務所は,代替案である琵琶湖逆水案についてもその安定性や経済性等を検討し,第2ダム案と比較した結果第2ダム案を採用することとしたものと認められ,その判断が合理性を欠いていたものとは認められない。 よって,被告が複数案の中 の安定性や経済性等を検討し,第2ダム案と比較した結果第2ダム案を採用することとしたものと認められ,その判断が合理性を欠いていたものとは認められない。 よって,被告が複数案の中から第2ダム案を採用した判断が違法なものであったということはできない。 5 負担能力の妥当性(施行令2条4号)(1) 施行令2条4号は,3条資格者等の農家が「当該土地改良事業に要する費用について負担することとなる金額が,これらの者の農業経営の状況からみて相当と認められる負担能力の限度をこえることとならないこと」を基本的な要件として規定しているところ,これは,その事業に要する費用が国民経済的側面から見て妥当なものであるのはもちろんのこと,その事業が農家の一定の負担を伴うものであるから,農家個人の負担という私経済的側面から見ても妥当な範囲のものでなければならないことを意味するものであると解される。 そして,負担能力の妥当性は,事業実施の結果,農家が負担金として毎年支払う償還額すなわち「農家負担年償還額」が,「年総増加所得額」(当該事業実施による作物の増産,営農経費の節減,維持管理費の節減により増額する年農業所得額)に占める割合である所得償還率によって判断されているところ(乙31),上記方法が不相当であるとする事情は窺えない。 (2) そこで,本件事業により農家が負担することとなる年償還額が年総増加所得額に占める割合である所得償還率を測定方法通達及び算定方法等通達に従って算出すると,次のとおりである。 本件事業計画の年償還額は,本件事業及び関連事業の事業費の総額479億円から国及び地方公共団体の負担額を控除して得た額である11億6952万円を所定の金利及び償還年限に基づいて償還 本件事業計画の年償還額は,本件事業及び関連事業の事業費の総額479億円から国及び地方公共団体の負担額を控除して得た額である11億6952万円を所定の金利及び償還年限に基づいて償還するものとして算出すると1億1297万2000円となる。 一方,年総増加所得額は,農業所得の増減に係る作物生産効果,営農経費節減効果及び維持管理費節減効果について,年効果額の算定方法に準じて算定した年増加額(作物生産効果8億5206万2000円,営農経費節減効果8640万2000円,維持管理費節減効果6億2666万2000円)を合算すると15億6512万6000円となる。 したがって所得償還率は,7.2パーセントとなる。 (以上,乙14,16の2,乙19,20,31,弁論の全趣旨)(3) 農家の負担能力は,農家の経営規模,経営能力によって差があるが,地域としての償還能力の基準としては,農家の貯蓄性向がほぼ40パーセントで推移していることから,事業により新たに増加する所得の中から貯蓄に回し得る金額の範囲内であれば無理なく償還できるという考え方等から,所得償還率40パーセントが一つの目安とされている(乙31,63)。 本件事業計画における所得償還率は上記(2)のとおり,7.2パーセントであり,40パーセントをはるかに下回るものであるから,本件事業計画における農家の負担金額は妥当な範囲のものであり,本件事業計画は負担能力の妥当性の要件を充足するものというべきである。 6 その他の要件について原告らは,①環境配慮義務を尽くすこと,②周辺住民等の生命,身体,財産に配慮する義務を尽くすこと,③その他の産業との調和を図ることも土地改良事業に 6 その他の要件について原告らは,①環境配慮義務を尽くすこと,②周辺住民等の生命,身体,財産に配慮する義務を尽くすこと,③その他の産業との調和を図ることも土地改良事業における適法要件であり,本件事業計画決定は,これらの要件を欠き違法であると主張するから,この点について判断する。 (1) 環境配慮義務についてア(ア) 原告らは,法1条2項,87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項,9条,環境基本法1条,6条,14条等は,土地改良事業計画決定及び実施にあたり環境に配慮する義務を課したものであると主張する。 (イ) しかし,法87条1項・3項,8条4項1号及び施行令2条1号は,本件事業計画の適法要件の一つである必要性の要件について,「当該土地改良事業の施行に係る地域の土じょう,水利その他の自然的,社会的及び経済的環境上,農業の生産性の向上,農業総生産の増大,農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資するためその事業を必要とすること。」と規定しているところ,これは,前記2(1)のとおり,地域の自然的,社会的及び経済的諸条件を基礎に当該事業が農業生産の基盤の整備及び開発に資するものであるか否かという観点から当該事業の必要性を判断すべきことを要求しているものと解されるのであって,この規定自体が,事業施行主体に対して,一般的に当該事業施行地域及びその周辺地域の環境保全等に配慮すべきことを法的義務として課していると解することはできず,法は他にそのような法的義務を課すような規定を置いていない。なお,平成13年6月29日公布の土地改良法の一部を改正する法律(平成13年法律第82号)により,法1条2項に「環境との調和に配慮しつつ」との文言を付加され,これを 務を課すような規定を置いていない。なお,平成13年6月29日公布の土地改良法の一部を改正する法律(平成13年法律第82号)により,法1条2項に「環境との調和に配慮しつつ」との文言を付加され,これを受けた施行令2条においても,環境との調和に配慮したものであることが基本的要件の一つとして加えられたが,これらの規定が本件事業計画決定時にまでさかのぼって適用されるものでないことはいうまでもない。 (ウ) また,農業基本法は,その1条において,同法の目的につき,「農業の発展と農業従事者の地位の向上を図ること」にあるとし,同法2条1項において,国が上記目的を達成するために必要な施策を講じなければならないとして,その2号で水の有効利用によって農業の生産性の向上及び農業総生産の増大を図ることを施策の一つとして掲げ,さらに同条2項において,その施策は,「地域の自然的社会的諸条件を考慮して講ずるものとする。」と規定しているところ,これらの規定は,国が農業等のために必要な施策を講じる際に,地域の自然的社会的諸条件を考慮すべきことを一般的に規定しているもので,土地改良事業の施行主体に対して,その計画の策定にあたって,原告らが主張するような環境配慮義務のような法的義務を課したものと解することはできない。 (エ) さらに,環境基本法は,その1条において同法の目的につき「環境の保全について,基本的理念を定め,並びに国,地方公共団体,事業者及び国民の責務を明らかにするとともに,環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。」と規定して,同法3ないし5条で基本理念について定めるとともに,同法6条において,国は「基本的理念にの び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。」と規定して,同法3ないし5条で基本理念について定めるとともに,同法6条において,国は「基本的理念にのっとり,環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し,及び実施する責務を有する。」と規定しているが,これらの規定は,国に対し,環境保全のための施策を策定し,実施すべきことを抽象的に求めているものにすぎず,国に対し,具体的な法的義務として土地改良事業の策定等にあたり環境に配慮すべき義務を課しているものと解することはできない。なお,同法14条は,上記施策を策定及び実施する際の指針を規定したものであり,これが法的義務の根拠とならないことは明らかである。 (オ) 以上によれば,原告らが主張する諸法規が,国に対し,環境配慮義務というような具体的義務を課しているものと解することはできず,この点に関する原告らの主張は採用できない。 イなお,乙31及び弁論の全趣旨によれば,本件事業計画については,以下のとおり環境影響評価等を実施することが予定されていることが認められ,このことにより,環境への配慮が担保されているということができるのであるから,原告らが主張するように,被告が環境への配慮を無視,軽視,誤認していて,本件事業計画決定がその裁量権を逸脱,濫用したものということはできない。 (ア) 本件事業計画策定当時は,永源寺第2ダム(湛水面積96ヘクタール)が「農林水産省所管事業に係る環境影響評価実施要綱」(昭和60年構改第551号)の対象事業(一級河川に係る湛水面積200ヘクタール以上のダムの新築)に該当しないものの,「滋賀県環境影響評価に関する要綱」(昭和56年告示第112号)及び「滋賀県環境影響評価に 60年構改第551号)の対象事業(一級河川に係る湛水面積200ヘクタール以上のダムの新築)に該当しないものの,「滋賀県環境影響評価に関する要綱」(昭和56年告示第112号)及び「滋賀県環境影響評価に関する要綱実施要領」の対象事業(ダムの新設で湛水面積50ヘクタール以上のもの)に該当することから(乙7),上記要綱及び要領に基づき,河川法の協議を行うまでに環境影響評価準備書を提出し,ダム工事に着手するまでに環境影響評価を行う予定で必要な調査等を進めていた。 (イ) ところが,環境基本法20条を受けて,平成11年6月12日に施行された環境影響評価法(平成9年法律第81号)では,永源寺第2ダムは,第二種事業の対象事業(ダムの新設で湛水面積75ヘクタール以上100ヘクタール未満)に該当することになったことから,現時点では,これに基づいた環境影響評価の手続を行うこととし,滋賀県知事とも協議の上,平成11年2月10日付けで了解を得ている。 (ウ) さらに,永源寺第2ダムの設置位置及び湛水区域は,鈴鹿国定公園の特別地域の指定範囲外ではあるが,御池導水路の出口部分が範囲内となっていることから,自然公園法40条,17条3項に基づき,工事を着手するまでに滋賀県知事と協議することとしている。 (2) 周辺住民等の生命,身体,財産に対し配慮する義務についてア原告らは,法87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項等は,周辺住民等の生命,身体,財産その他人格上の価値に対し配慮する義務を規定しており,これに違反した場合は,当該土地改良事業計画決定は違法になると主張し,本件事業は,洪水発生等の危険を有するものであるから,その決定は違法であると主張する。 イしかし, を規定しており,これに違反した場合は,当該土地改良事業計画決定は違法になると主張し,本件事業は,洪水発生等の危険を有するものであるから,その決定は違法であると主張する。 イしかし,原告が主張する法規から,個別具体的な個々人の生命,身体,財産に対する配慮義務が規定されていると解することが困難であることは上記(1)アと同様であり,他にそのような義務を規定していると解されるような法規もないから,原告らの主張は理由がない。なお,原告らは,住民の生命等への危険の内容として洪水等の災害発生の危険があることを主張するところ,本件事業により洪水等の災害が発生する蓋然性が高いと認めるに足りる証拠がないことは,前記3(5)アのとおりである。 (3) その他の産業との調和についてア原告らは,法87条3項,8条4項1号,施行令2条6号,農業基本法前文,1条,2条2項等は,土地改良事業が他の産業と調和することを当該事業の適法要件としているところ,本件事業は,本件事業施行地域の林業や漁業,観光業と調和しないものであり,適法要件を充足しないと主張する。 イしかし,施行令2条6号は,当該土地改良事業が森林,運輸,発電その他に関する事業と競合する場合において,国民経済の発展の見地からその土地改良事業の施行を相当とすることを基本的要件の一つとして規定しているものであると解されるところ,本件事業が他の産業と競合すると認めるに足りる証拠はないこと,法及び施行令には他に他の産業と調和することを土地改良事業の適法要件として規定していると解されるような規定が存しないことに照らせば,土地改良事業計画の策定にあたって,一般論としては当該事業の施行地域で営まれている農業以外の産業への影響等を考慮する必要があることは否定できないものの, と解されるような規定が存しないことに照らせば,土地改良事業計画の策定にあたって,一般論としては当該事業の施行地域で営まれている農業以外の産業への影響等を考慮する必要があることは否定できないものの,競合する他産業と調和するものであることが,当該事業計画が適法であるための要件となるものと解することはできない。 ウよって,この点に関する原告らの主張は,その前提において当を得ないものというべきである。 Ⅴ 本案の争点(2)イ(本件事業計画の手続的要件充足の有無)について 1 事前の環境影響評価の必要性の有無について原告らは,法87条1項・3項,8条4項1号,施行令2条,農業基本法1条,2条2項等は,土地改良事業計画の決定前に環境影響評価をする義務を課していると主張する。 しかし,上記の諸規定が,法的義務としての環境配慮義務などを規定したものでないことは前記Ⅳ6(1)アのとおりであるから,上記各法条が土地改良事業計画の決定前に環境影響評価をする義務などを課しているものと解することはできない。 したがって,土地改良事業計画決定前に環境影響評価をすることが同決定の手続的要件であるとして本件事業計画決定の違法性をいう原告らの主張は理由がない。 2 法85条の同意徴集及び公告手続の違法性の有無について(1) 同意徴集の時期及び期間ア原告らは,本件事業計画について法85条に定める同意徴集が公告手続の前にされており,また,同意徴集の期間が長期にわたっていることから,同意徴集及び公告手続は違法であると主張する。 ところで,法85条1項・2項は,3条資格者の15人以上の者が土地改良事業の申請をするには,あらかじめ土地改良事業の計画の概要及び土地改 徴集及び公告手続は違法であると主張する。 ところで,法85条1項・2項は,3条資格者の15人以上の者が土地改良事業の申請をするには,あらかじめ土地改良事業の計画の概要及び土地改良施設の管理者及び管理方法に関する基本的事項その他必要な事項(以下「概要等」という。)を公告して,当該事業の施行地域内にある土地について3条資格を有する者の3分の2以上の同意を得なければならない旨規定している。これは,土地改良事業において,当該事業の施行地域内の3条資格者は,土地改良事業の受益者となるとともに,その費用の一部を負担する義務を負うことになり(法90,91条),当該土地改良事業について強い利害関係を有することから,あらかじめ当該事業の内容を周知させた上で,これらの者の同意を得てからでなければ,当該事業を施行してはならないとして,利害関係人の利益保護を図った趣旨であると解される。 もっとも,土地改良事業計画の概要等の公告は,当該事業の施行地域内にある土地の属する市町村の事務所の掲示場に5日間掲示して行われるものである(土地改良規則55条,8条)ところ,当該事業計画の概要等が公告以外の方法で3条資格者全員に周知され,それに基づいて同意徴集が行われたような場合において,周知された内容が公告内容と一致しており,周知方法も3条資格者の理解を得るという観点から相当であると認められるのであれば,仮に同意徴集に先立って公告が行われていなかったとしても,上記同意徴集及び公告の趣旨に照らせば,そのような手続上の瑕疵は,同意の効力を左右するものではないといえ,公告に先立って行われた同意徴集に基づく土地改良事業計画が違法とはならないと解するのが相当である。 なお,被告は,同意徴集及び公告の手続は,土地改良事業の申請人により担 いといえ,公告に先立って行われた同意徴集に基づく土地改良事業計画が違法とはならないと解するのが相当である。 なお,被告は,同意徴集及び公告の手続は,土地改良事業の申請人により担われる申請までの手続であり,事業計画決定の前提行為であって,国として当該事業を施行するか否かの意思形成過程の意味を有するにとどまり,申請人が作成した申請書面を被告において書面審査した上で事業計画決定を行った場合において,意思形成過程に瑕疵があっても,当該決定に対して重大な影響を与えないなどと主張する。しかし,申請書面の審査が書面審査にとどまるとしても,事後的にせよ,その意思形成過程に重大な瑕疵があることが判明した場合に,当該瑕疵が事業計画の施行にとって重大な障害となるようなものである場合には,同意徴集を必要とする上記の趣旨に照らし,当該事業計画決定自体が違法となる場合もあると解するのが相当であり,この点に関する被告の主張は採用できない。 イそこで,本件事業計画の内容の周知方法や同意徴集手続及び公告の経緯についてみると,証拠(甲1,4,17ないし20,乙1の7,乙17,18,32ないし34,証人τ)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりであると認められる。 (ア) 旧事業の完成に伴う昭和62年の完了地区調査において,本件事業施行地域における水不足があるとの結果が示されたことから,改良区は,滋賀県に対して地区調査を実施してほしい旨の要請をすることとし,同年7月ころ,改良区の組合員に対し,①調整池を新設し,幹線水路の改修・新設を行うこと,②上下流域に新たな水源を計画すること,③事業費用は300億円が想定されること,を事業構想とする国営事業計画を樹立するための調査要請をすることをパンフレット(甲19)や広報誌(甲20)等を用いて と,②上下流域に新たな水源を計画すること,③事業費用は300億円が想定されること,を事業構想とする国営事業計画を樹立するための調査要請をすることをパンフレット(甲19)や広報誌(甲20)等を用いて知らせた。その結果,組合員の約93パーセントが上記要請をすることに同意した。 (イ) 平成4年2月17日から同年4月6日にかけて,改良区の理事,監事,職員や,市町の担当者等が,改良区の総代(改良区のブロックごとに公職選挙に準じて選出された地域の代表者で,改良区の意思決定機関である総代会の構成員)に対し,「国営新愛知川土地改良事業の概要」と題するパンフレット(乙18)を配布したうえで,本件事業計画の事前説明を行った。 また,改良区は,同年7月14日から同月24日にかけて,各行政単位ごとに新愛知川事業同意取得説明会を開催し,本件事業の申請人等が,総代,各集落の区長,水利組合長,営農組合長に対し,本件事業の内容について,上記「国営新愛知川土地改良事業の概要」及び「新愛知川農業水利事業」と題するパンフレット(乙17)を示して,本件事業の内容を説明した。そして,本件事業の申請人等は,総代に対し,上記パンフレット(乙18)を全戸配布し,担当区域の集落の区長等を通じて各農家に上記パンフレット等に基づく事業内容の説明をすること及び同意のとりまとめをすることを依頼した。 (ウ) これを受けて,各総代は,上記パンフレット(乙18)を1万戸農家全戸に配布するとともに,担当区域の農家に対して本件事業の内容を説明したが,本件事業の申請人等が直接市や町の役場,各集落等に出向いて説明をすることもあり,そのような説明会は,平成14年12月16日まで続いた。改良区のうち,八日市市Ω町の集落では,同年7月ころ,改良区の担当者か 事業の申請人等が直接市や町の役場,各集落等に出向いて説明をすることもあり,そのような説明会は,平成14年12月16日まで続いた。改良区のうち,八日市市Ω町の集落では,同年7月ころ,改良区の担当者から農家に対し本件事業の目的や内容等についての説明があった。また,愛東町の妹集落営農組合では,総代から本件事業の説明及び同意取得依頼を受けた組合長が,各農家に出向いて説明を行った。 そして,各総代は同年秋ころから平成5年3月8日までの間に各農家から本件事業計画に対する同意をとりまとめ,最終的には,3条資格者9273名のうち95パーセントに当たる8820名の同意が得られた。 (エ) 本件事業計画の概要は,平成5年1月18日から同月22日までの間,本件事業施行地域の1市8町の掲示場に掲示する方法で公告された。 ウところで,前記イ(イ)の総代等に対する説明及び同(ウ)の各農家に対する説明の際に配布された資料の内容についてみると,「国営新愛知川土地改良事業の概要」と題するパンフレット(乙18)は,事業の目的,事業の内容(基本計画,受益面積,必要水量,水源計画,主要施設計画),事業費及び地元負担(総事業費及び工期,受益者負担額と年償還額),維持管理について記載されたものであり,「新愛知川農業水利事業」と題するパンフレット(乙17)は,本件事業の必要性及び基本構想(関係市町,受益面積,主要施設計画,総事業費,予定工期)が写真等とともに記載されたものである。 一方,乙1の8によれば,前記イ(エ)の本件事業計画の概要の公告において掲示された書面は,①国営新愛知川土地改良事業計画概要書(農業用用排水)(乙2の1),②国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)によって造成された施設の予定管理方法等 本件事業計画の概要の公告において掲示された書面は,①国営新愛知川土地改良事業計画概要書(農業用用排水)(乙2の1),②国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)によって造成された施設の予定管理方法等を記載した書面(乙2の2),③国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)の事業費の負担区分の予定及び地元負担の予定基準を記載した書面(乙2の3。以下まとめて「本件事業計画概要等」という。)であるところ,乙2の1ないし3によれば,上記の二つのパンフレットの内容は,本件事業計画概要等の重要な部分をまとめたものであると認められ,そこには本件事業計画の概要を理解するのに必要な事項が盛り込まれていると認められる。 エ上記イの本件事業に関する農家への説明及び同意取得の経過と上記ウの農家への説明の際に用いられたパンフレットの内容を総合すると,本件事業施行地域の3条資格者らは,本件事業計画概要等に記載された事項についての説明を受け,その内容を周知された上で,それを前提に本件事業計画への同意を行ったものと認められる。そして,その周知方法も,申請人から総代,集落代表,各農家へと順次行われ,必要に応じて各農家に対して申請人等から直接説明が行われることもあったもので,3条資格者らの理解を得るために相当な方法であったと認められる。 よって,上記イ(ウ)及び(エ)のとおり,本件事業計画に対する3条資格者らの同意は計画概要の公告前に行われたものであり手続上の瑕疵があるものの,その瑕疵によって上記同意の効力は左右されず,本件事業計画は違法とはならないというべきである。 オ(ア) この点について,原告らは,前記の説明資料等が関係者全員に配布されたこともなく,説明会に全員が参加するわけでもないから,本件事業計画の内容が関係者全員に周知された きである。 オ(ア) この点について,原告らは,前記の説明資料等が関係者全員に配布されたこともなく,説明会に全員が参加するわけでもないから,本件事業計画の内容が関係者全員に周知されたとはいえないと主張する。しかし,本件事業計画についてまったく説明を受けずにこれに同意した3条資格者がいたと具体的に認めるに足りる証拠はなく,前記ウの認定事実によれば,3条資格者全員に本件事業計画の概要が周知されていたものと解するのが相当であって,この点についての原告らの主張は採用できない。 (イ) また,原告らは,一部の説明会で負担金について誤った説明がされたことや,強引な同意徴集行為がされたことがあると主張し,これに沿う甲79及び原告μの供述がある。 しかし,乙32,証人τの証言及び弁論の全趣旨によれば,説明資料に記載された10アールあたり年1464円の負担金が500円程度になる可能性もあるとの説明がされたことはあると認められるものの,それはあくまで県の補助金が継続すればという条件付きであるという説明がなされたと認められること,同意をした後にこれを撤回したいと申し出た改良区組合員が1人いたため改良区はこれを受け付けたが,他にそのような申し出をした者はいないと認められること,原告μは本件事業計画に同意しておらず,他に誤った説明や強引な同意徴集行為によって本来の意思に反して同意をした者がいたと認めるに足りる証拠がないことに照らせば,上記証拠はいずれも採用できない。 よって,この点に関する原告らの主張も理由がない。 (ウ) さらに,原告らは,①同意率が極端に低い集落が存在すること及び②同意徴集期間が長期にわたることから,同意徴集手続は違法であると主張する。 主張も理由がない。 (ウ) さらに,原告らは,①同意率が極端に低い集落が存在すること及び②同意徴集期間が長期にわたることから,同意徴集手続は違法であると主張する。 しかし,①については,全ての集落においてそれぞれ3分の2以上の同意があれば好ましいとはいえるものの,集落ごとに3分の2以上の同意を要する旨の規定は見当たらず,また,同意率の低い集落は本件事業施行地域内のごくわずかな地域であり(乙1の3),農業用用排水施設の整備を目的とする土地改良事業であるという本件事業の性質上,同意率の低い集落を一律にその施行地域から除外することも相当でないというべきであるから,同意率が低い集落が存在することによって,本件事業計画決定の手続が違法になるということはできない。 また,②については,前記イ(ウ)のとおり,本件事業計画に対する同意徴集期間は8か月に及んでいることが認められるものの,本件事業施行地域が1市8町にまたがる約7600ヘクタール,同意徴集対象の3条資格者が9273名に及ぶものであったために,同意徴集に上記期間を要したものと推認できるうえ,法及び関連法規に同意徴集期間についての規定はないことに加え,本件事業計画に対する同意において,その徴集時期の違いによって,同意の内容に差異が生じたと認めるに足りる証拠もないことを考慮すれば,同意徴集期間が長期間にわたったことによって本件事業計画決定の手続が違法になるということもできない。 よって,これらの点に関する原告らの主張も理由がない。 3 専門家の報告の適法性の有無について(1) 原告らは,専門技術者の調査報告書(乙7)は,法の要求するものでなく,本件事業計画決定は,その手続において違法であると主張 がない。 3 専門家の報告の適法性の有無について(1) 原告らは,専門技術者の調査報告書(乙7)は,法の要求するものでなく,本件事業計画決定は,その手続において違法であると主張する。 (2) ところで,法87条2項,8条2項は,土地改良事業計画を決定するにあたっては,専門技術者の提出する報告に基づかなければならないと規定しているところ,専門技術者の調査を適正に行うため,専門技術者の委嘱については,「専門技術者委嘱の要領について」(昭和40年12月25日40農地B第4184号。乙25。)に基づくこととされている。 乙32及び証人ρの証言によれば,本件事業計画については,上記要領に基づき,平成5年2月4日付けで被告が農業土木の専門家及び農業経済の専門家の2名に調査を委嘱し,委嘱を受けた専門技術者は,国営新愛知川土地改良事業計画書(案),国営かんがい排水事業新愛知川地区全体実施設計書(乙16の1ないし7),国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)によって造成された施設の予定管理方法等を記載した書面(乙2の2),国営新愛知川土地改良事業(農業用用排水)の事業費の負担区分の予定及び地元負担の予定基準を記載した書面(乙2の3)等の基礎的資料に基づき,平成5年2月22日及び23日に現地調査を行ったうえで,近畿農政局における内容審議を経て調査報告書(乙7)を作成したもので,その過程は適切なものということができる。 (3) そして,他に調査報告書がその内容等において法の要求するものでないことを認めるに足りる証拠はないから,専門技術者調査報告書(乙7)は,法の要求に適合するものであるというべきであって,この点に関する原告らの上記主張は理由がない。 Ⅵ 本案の争点(2)ウ(法86条に基づく適否の決定の違法性 いから,専門技術者調査報告書(乙7)は,法の要求に適合するものであるというべきであって,この点に関する原告らの上記主張は理由がない。 Ⅵ 本案の争点(2)ウ(法86条に基づく適否の決定の違法性の有無)について原告らは,本件事業計画の決定は,法8条4項2号に違反し,手続的に違法であることを看過して適当と判断されたもので,違法である旨主張するが,前記Ⅳ及びⅤのとおり,本件事業計画は適法なものであるから,法86条に基づく適否の決定が違法となることはなく,この点に関する原告らの主張は失当である。 Ⅶ 結論以上のとおりであるから, 1 原告らの本件事業計画決定の取消しを求める訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下し, 2 別紙原告目録1記載の原告らの本件事業計画決定に対する異議申立てを棄却及び却下する決定の取消しを求める訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下し, 3 別紙原告目録2記載の原告らの本件事業計画決定に対する異議申立てを棄却する決定の取消しを求める訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下し, 4 別紙原告目録2記載の原告らの本件事業計画の決定に対する異議申立てを却下する決定の取消しを求める請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し, 5 別紙原告目録3記載の原告らの本件事業計画の決定に対する異議申立てを棄却する決定の取消しを求める請求はいずれも理由がないからこれらを棄却する,こととし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部裁判長裁判官神吉正則 のとおり判決する。 主文 大津地方裁判所民事部裁判長裁判官神吉正則 裁判官山口芳子 裁判官澤村智子

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