平成12(ワ)1490等 ダイコー懲戒解雇

裁判年月日・裁判所
平成15年5月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文47,912 文字)

主文 1 原告の被告ダイコーに対する訴えのうち,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分を却下する。 2 原告が,被告ダイコーに対し,雇用契約上の権利を有することを確認する。 3 被告ダイコーは,原告に対し,829万0836円及び平成15年2月から本判決確定に至るまで,毎月15日限り,30万7068円の割合による金員を各支払え。 4 原告の被告ダイコーに対するその余の請求及び被告Aに対する請求をいずれも棄却する。 5 被告Aの請求を棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の1と被告Aに生じた費用の合計を4分し,その1を原告の,その余を被告Aの負担とし,原告に生じたその余の費用と被告ダイコーに生じた費用の合計を10分し,その1を原告の,その余を被告ダイコーの負担とする。 7 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1) 被告らは,原告に対し,連帯して,200万円及びこれに対する平成12年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告ダイコーは,原告に対し,50万円及びこれに対する平成14年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件原告は,被告Aに対し,290万4882円及びこれに対する平成11年8月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 丙事件(1) 主文第2項同旨(2) 被告ダイコーは,原告に対し,平成12年11月から毎月15日限り,月額31万7068円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要乙事件は,被告ダイコーの従業員(トラック運転手)である原告が同僚である被告Aに対し職場構内で暴行を加えたこと(以下「本件暴行」又は「本件暴行事件」とい による金員を支払え。 第2 事案の概要乙事件は,被告ダイコーの従業員(トラック運転手)である原告が同僚である被告Aに対し職場構内で暴行を加えたこと(以下「本件暴行」又は「本件暴行事件」という。)により,被告Aが傷害を負ったとして,被告Aが原告に対して治療費等の損害賠償を求める事案である。 丙事件は,被告ダイコーが,本件暴行事件を理由として原告を解雇(以下「本件解雇」という。)したのは,解雇権濫用,不当労働行為に当たるとして,原告が被告ダイコーに対して雇用契約上の地位にあることの確認及び解雇の意思表示後の賃金の支払を求める事案である。 甲事件は,①被告ダイコーと被告Aが共謀して,原告を陥れる目的で,本件暴行によって被告Aが傷害を負ったとして,殊更にその治療を長引かせ,また,原告を告訴して強く処罰を求めるなどしたため,原告が精神的苦痛を被ったとして,原告が被告らに対して,共同不法行為に基づく慰謝料の支払を求め,また,②被告ダイコーが原告に対して配車差別をしたため,精神的苦痛を被ったとして,原告が,被告ダイコーに対し,不法行為に基づく慰謝料の支払を求める事案である。 1 争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない。 なお,甲事件及び乙事件における書証と丙事件における書証で重複するものがある場合には,基本的に甲事件及び乙事件の書証番号のみを記載することとし,書証番号につき,特に断りがないものは,甲事件及び乙事件の書証番号を指す。以下同じ。)(1) 当事者ア被告ダイコーは,自動車運送業等を業とする株式会社である。 イ原告及び被告Aは,いずれも被告ダイコーの従業員(トラック運転手)である。 (2) 本件暴行事件の概要(ただし,本件暴行の具体的態様等については争いがある。)原告は,平成11年8 ある。 イ原告及び被告Aは,いずれも被告ダイコーの従業員(トラック運転手)である。 (2) 本件暴行事件の概要(ただし,本件暴行の具体的態様等については争いがある。)原告は,平成11年8月11日,被告ダイコーの3番車庫(以下「3番車庫」という。)で待機していたが,被告Aが同車庫を先に出ていった。原告は,これについて被告ダイコーから本社へ戻る旨の指示が出ているのに,被告Aがこれを他の従業員に教えずに一人だけで本社へ戻ったものと誤解して,被告Aに対して立腹し,同日,被告ダイコー本社へ戻った際,被告Aに対して「お前,バックがかかっていた(本社へ戻る指示が出ていた)のを知っていたんだろう,何で教えなかったんだ。」などと言って,同人の胸倉をつかむなどの暴行をはたらいた。 (3) 本件暴行事件後の経緯等ア被告Aの被害届被告Aは,本件暴行事件の当日,被告ダイコーのB課長にC病院に連れていってもらい,10日間の安静加療を要する旨の診断書を得た上で,同日中にa暑に傷害の被害届をなした。 イ被告Aの治療期間等被告Aは,本件暴行により傷害を負ったとして,約4か月間にわたって通院治療を続け,その間,休業した。 ウ原告に対する刑事処分名古屋区検察庁は,本件暴行事件につき,原告を暴行罪で起訴し,名古屋簡易裁判所は,平成12年7月12日,暴行罪として原告に対し罰金10万円の略式命令をなし,同刑は確定した。 (4) 原告の解雇被告ダイコーは,原告に対し,平成12年11月1日,本件暴行事件について原告が起訴され,略式命令が確定したことから,暴行の事実が明確となったとして,就業規則第20条に基づき解雇する旨の通知書の交付により本件解雇をした(甲30)。 (5) 被告の就業規則(本件解雇当時効力を有したもの)上の解雇に関する規定(甲 ら,暴行の事実が明確となったとして,就業規則第20条に基づき解雇する旨の通知書の交付により本件解雇をした(甲30)。 (5) 被告の就業規則(本件解雇当時効力を有したもの)上の解雇に関する規定(甲31。ただし,本件に直接関係のない部分を省略する。)ア就業規則第20条は,従業員が退職又は解雇とされる場合として,以下の各号を規定している。 「⑨ 懲戒解雇の処分が決定したとき。 ⑩ 事業の都合により止むを得ないとき。 ⑪ 勤務成績が著しく不良と認められる場合。 ⑫ 道路運送法・運行管理上不適当と認めた場合。」イまた,前記⑨に関連して,就業規則第98条は,懲戒解雇にする場合として,以下の各号を規定している。 なお,同条ただし書は,「情状により降格,又は出勤停止処分とする場合もある。」と規定している。 「② 正当な理由なく業務に関する上役の指示に反抗し,職場の秩序を乱したとき。 ⑮ 刑罰に触れる行為があったとき。 ⑱ 会社内で賭博・暴行その他これに類する行為を行ったとき。 ⑲ 集団生活の秩序を乱し,著しく他人の生活に迷惑を及ぼしたとき。」(6) 原告の平成12年5月分ないし同年7月分の賃金額原告の賃金額は,平成12年5月分が30万1799円,同年6月分が33万2879円,同年7月分が31万6528円である。 なお,原告は同年8月に業務外でアキレス腱断裂の傷害を負ったとして同年10月まで入院しており,同年8月の稼働日数は4日で,同年9月及び同年10月は全く稼働していないため,同年8月分ないし同年10月分の賃金額はマイナスとなっている。 2 争点(1) 本件暴行事件の態様並びに被告Aの損害の程度及び本件暴行との間の相当因果関係の存否(乙事件)(2) 本件解雇は,解雇権の濫用として無効か(丙事件)(3) 本件解雇は,不当労働 2 争点(1) 本件暴行事件の態様並びに被告Aの損害の程度及び本件暴行との間の相当因果関係の存否(乙事件)(2) 本件解雇は,解雇権の濫用として無効か(丙事件)(3) 本件解雇は,不当労働行為に該当して無効か(丙事件)(4) 原告の賃金額の算定方法(丙事件)(5) 被告らは,原告に対して,共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うか(甲事件)(6) 被告ダイコーは,原告に対して,不法行為に基づく損害賠償責任を負うか(甲事件) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件暴行事件の態様並びに被告Aの損害の程度及び本件暴行との間の相当因果関係の存否)について(被告Aの主張)ア本件暴行前の経過(ア) 平成11年8月11日,被告Aが午前中の運転業務を終えて被告ダイコーの3番車庫で待機していたところ,被告従業員であるR,S,原告が順次3番車庫に来た。 被告Aは,自己の車両に不具合があったため,Rと相談の上,本社の指示を受けて,日産の修理工場へ車両を持っていくことになり,午後1時ころ,3番車庫を出た。 (イ) ところが,上記修理工場が閉まっていたため,被告Aは本社の指示を仰ぎ,本社の整備部へ車両を持っていくことにした。しかし,そこでも部品がなく,盆明けにならないと修理できないということで,被告Aは被告ダイコー本社へ戻った。 イ本件暴行事件の状況(ア) 平成11年8月11日午後3時ころ,被告Aが被告ダイコー本社駐車場に戻り,自車中で日報を書き終えて車から降りたところ,後方から原告に「A。」と呼び止められた。被告Aが振り向くと,原告は手にした鞄を地面に叩きつけて,いきなり被告Aの胸倉をつかみ,同時に被告Aの左腕をつかんだ。このとき,原告は被告Aの胸倉をつかんでいた左手で被告Aの胸を強く揺さぶり,そのため被告A 振り向くと,原告は手にした鞄を地面に叩きつけて,いきなり被告Aの胸倉をつかみ,同時に被告Aの左腕をつかんだ。このとき,原告は被告Aの胸倉をつかんでいた左手で被告Aの胸を強く揺さぶり,そのため被告Aの胸に赤いまだらが残った。同時に原告は被告Aの左上腕部をつかんでいた右手を強くひねったため,被告Aは左手の指の感覚がなくなった。 (イ) 原告は,本件暴行に際し,被告Aに対し,「何でお前会社へ戻れということを教えなんだ。」と言いがかりをつけており,それに対して被告Aは「何するの,知らんよ。」と正直に答えていた。それにもかかわらず,原告が日ごろから被告Aを快く思っていないために,一方的に暴行に及び傷害の結果を招来したものである。本件暴行事件が原告の勘違いによるものであったことは原告自身が認めており,被告Aには原告から襲われる理由は全くなく,身に覚えのないことで一方的に襲われたものである。また,原告は,被告Aに上記傷害を負わせた後,被告ダイコー本社事務所へ入っていったが,事務所に入る直前に,被告Aに対し,「お前みたいなやつは盆明けには出てこれんようにしてやる。」と脅迫した。 (ウ) その後,被告Aは,被告ダイコー本社事務室(以下「本社事務室」という。)へ入っていったが,原告が同事務室内におり,そのときは怖くて何も言えなかった。 そして,原告が上記事務室を出ていった後すぐに,被告ダイコーのD課長代理に対して「駐車場でFさんから呼び止められ,振り向きざまに胸倉をつかまれ,上下に二,三回押され,腕をひねられ,手が痛い。」と説明し,B課長と一緒にC病院に行った。 ウ傷害の結果被告Aは,本件暴行により,頚部捻挫,左前腕部挫傷,左橈骨神経不全麻痺の傷害を負った。 エ治療の経過(ア) 平成11年8月11日(本件暴行事件当日)受 ウ傷害の結果被告Aは,本件暴行により,頚部捻挫,左前腕部挫傷,左橈骨神経不全麻痺の傷害を負った。 エ治療の経過(ア) 平成11年8月11日(本件暴行事件当日)受傷直後にC病院にて診察を受け,その後同月16日,同月18日,同月26日,同年9月1日,同月8日,同月14日,同月16日,同月17日,同月18日,同月20日,同月21日及び同月22日の12日間,C病院に通院して治療を受けた。 (イ) 原告が所属する労働組合がE病院への転院を要求しているということで被告ダイコーから指示があり,平成11年9月27日にE病院にて受診し,その後同年10月4日,同月12日,同月18日,同月25日,同年11月1日,同月8日,同月15日,同月22日,同月29日,同年12月6日及び同月13日の11日間,E病院に通院して治療を受けた。 (ウ) 被告Aは,平成11年12月13日に治療を終了し,同月15日から仕事に復帰した。 オ損害(以下の(ア)ないし(カ)の合計290万4882円)(ア) 治療費合計13万8713円aC病院 7万5535円bE病院 6万3178円(イ) 診断書料(合計9通) 1万6780円(ウ) 通院交通費合計2万3120円aC病院バス往復13日分 4160円bE病院近鉄電車,バス(2回)往復12日分 1万8960円(エ) 休業損害 132万6269円a 平成11年8月16日から同年12月14日までの4か月間休業。平均賃金30万9348円の4か月分123万7392円b 平成11年冬期賞与減額分 8万8877円(オ) 慰謝料(通院慰謝料を含む。) 合計125万円a 通院慰謝料 50万円b その他の慰謝料 75万円(カ) 弁護士費用 15万円カよって,被告Aは, 年冬期賞与減額分 8万8877円(オ) 慰謝料(通院慰謝料を含む。) 合計125万円a 通院慰謝料 50万円b その他の慰謝料 75万円(カ) 弁護士費用 15万円カよって,被告Aは,原告に対し,上記損害賠償金合計290万4882円及びこれに対する本件暴行のなされた日の翌日である平成11年8月12日から支払済みに至るまで,年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (原告の主張)ア本件暴行事件に至る経緯及び本件暴行の態様(ア) 被告ダイコーにおいては,運転業務を終えて待機中の運転手に対して,待機を解除して早く帰社することを認める指示を出すことがあった。この早帰り指示(従業員間では,「バックがかかる」と表現していた。)は,トラックの無線で伝達されるものであるが,待機中の従業員間では,その無線を聞いた者が,他の従業員にそれを伝えるという了解事項があった。 (イ) 平成11年8月11日,原告と被告Aは,それぞれ運転業務を終えて,他の数名の従業員とともに,愛知県b郡c村所在の被告ダイコー3番車庫で待機していたところ,同日午後1時過ぎころ,被告Aは何も言わずにどこかへ出ていった。 その後,他の従業員も上記3番車庫を出ていこうとしたので,原告が「どうしたの。」と聞くと,「バックがかかっているよ。」とのことであった。このとき,原告は,被告Aが何も言わずに出ていったことにつき,早帰り指示を聞きながら,それを原告をはじめとする他の従業員に知らせずに勝手に帰ったものと考えた。 (ウ) その後,原告は,被告ダイコー本社事務室において日報を記載した後,トラックを降りたところで,日報を持って同事務室に向かっている被告Aを見つけた。 そこで同事務室東側駐車場内において,原告は,被告Aを呼び止め,「お前,バックがかかっていたのを知っていたんだろう 後,トラックを降りたところで,日報を持って同事務室に向かっている被告Aを見つけた。 そこで同事務室東側駐車場内において,原告は,被告Aを呼び止め,「お前,バックがかかっていたのを知っていたんだろう,何で知らせんのだ。」と言って作業服姿の被告Aの胸倉を両手でつかみ,前後に二,三回揺さぶったところ,被告Aは「俺は知らないよ。」と答え,体をかわしたので,原告の手は被告Aから離れた。 このとき,Aに痛がる様子はなく,悲鳴もあげていない。また,腕を振りきった後に,原告に対し抗議することもなく,当時着用していた長袖作業服に異状は生じなかった。なお,被告Aは,原告と比較して体格的にまさっており,年齢も若く,胸倉をつかんでいた原告をたやすく引き離すことができた。 そして,被告Aは先に本社事務室に入り,原告は被告Aの後に付く形で,後から同事務室に入っていった。 (エ) ところが,被告Aは,本社事務室に入ると,D課長代理に対し,「今,Fさんに殴られた。バック命令のことなんか知らなかったのに,知っていただろうとつかみかかられた。」と申告した。これに対し,原告が「いつ俺がお前を殴った。」と言ったところ,被告Aは殴打部分を指示することもなく,口をつぐんでしまった。 (オ) 原告は,同日の夕方ころ,被告Aが早帰り指示が出ていたのを知らせなかったというのは誤解であったことを認識した。 (カ) 被告Aは,本件暴行の態様につき,原告が左手で被告Aの胸倉をつかんだ上,右手で同人の左腕をつかみ,ひねったと主張するが,このような体勢で腕をひねるというのは極めて不自然である上,本件暴行の態様に関する被告Aの供述内容は大きく変遷しており,到底信用できない。 イ本件暴行事件後の経緯等(ア) 被告Aの刑事告訴a 被告ダイコーの従業員の大部分は,本件暴行事件のあった翌 行の態様に関する被告Aの供述内容は大きく変遷しており,到底信用できない。 イ本件暴行事件後の経緯等(ア) 被告Aの刑事告訴a 被告ダイコーの従業員の大部分は,本件暴行事件のあった翌日である平成11年8月12日から同月15日までは盆休みであったが,被告Aは盆休み明けの同月16日以降も出勤しなかった。 被告ダイコーは,原告ら従業員に対して,被告Aの休業につき,何ら事情説明をしなかった。 b 同月26日の朝,原告が被告ダイコーの4番車庫にいたところ,D課長代理から連絡が入り,本社事務室に呼び戻された。D課長代理は,原告に対し,「a署(愛知県a警察署を指す。以下「a署」という。)から出頭命令が出ているぞ。」と告げた。 原告がa署に電話をしたところ,担当の警察官から,本件暴行事件に関するものであることを聞かされた。原告は,本件暴行事件が刑事事件になるようなものとは考えていなかったが,a署に出頭し,取調べに応じた。 a署では,被告Aが,本件暴行により傷害を負ったとして,原告を告訴しており,また,被告Aは,本件暴行事件当日の終業後に被告ダイコーのB課長に付き添われ,愛知県b郡d町所在のC病院整形外科G医師の診察を受け,「頚部捻挫・左前腕部挫傷・左橈骨神経不全麻痺(疑い)」等の傷病名を記載した診断書を得て,a署に提出していた。 (イ) 被告Aの通院・休業a その後,被告Aは,C病院及びE病院に通院を続け,平成11年12月中旬まで,約4か月間の長期にわたって休業した。 b 被告Aの主治医であったG医師によれば,当初,被告Aが受診した際にも,被告Aの主張する腕部分にはれや発赤は認められず,レントゲン撮影でも全く異常は認められなかったが,被告Aが痛みを訴えるので,本人の意向に従い,投薬治療をしたとのことであり,診断書の記載も, 際にも,被告Aの主張する腕部分にはれや発赤は認められず,レントゲン撮影でも全く異常は認められなかったが,被告Aが痛みを訴えるので,本人の意向に従い,投薬治療をしたとのことであり,診断書の記載も,本人の愁訴のみによるものであった。 c また,被告Aがその後転院して受診したE病院のH医師も他覚的所見がなかったことを認めている。 (ウ) このように初診時に全く外見的症状がないにもかかわらず,4か月もの長期間にわたって休業治療を要するような傷害を負ったという被告Aの主張は誇張ないし虚偽のものというほかない。しかも,被告Aは,原告に対し,抗議をするとか謝罪を求めるなどの被害者としての要求を全くしないばかりか,原告が被告A宅を謝罪のため訪問した際も,会おうとすらしない不自然な対応に終始している。なお,被告Aは,以前にも,①他の従業員の車両のエアーホースを切ったり,②危険物取扱甲種免許を有していないのに,有している旨の嘘をついたり,③国道19号線で他人に殴られ,損害賠償を取ったなどと吹聴するなど,嘘をつく傾向があった。 (エ) 名古屋区検察庁は,平成12年7月10日,本件暴行事件を,傷害事件ではなく暴行事件として略式起訴した。その公訴事実の概要は,「両手でその胸倉をつかんで前後に揺さぶる」というものであった。そして,名古屋簡易裁判所は,同年7月12日,暴行罪として原告に対し罰金10万円の略式命令を出した。 このように,捜査当局も被告Aの被害申告が過剰なものであることを認めたといえる。 ウ以上のように,原告は被告Aの胸倉をつかむという程度の暴行をはたらいたのみであり,被告Aの主張するような傷害を負わせたものではない。また,上記暴行によって,通院・加療や休業の必要性は生じない。 したがって,原告は本件暴行について被告Aに対する損害賠償責任を負わない。 ( みであり,被告Aの主張するような傷害を負わせたものではない。また,上記暴行によって,通院・加療や休業の必要性は生じない。 したがって,原告は本件暴行について被告Aに対する損害賠償責任を負わない。 (2) 争点(2)(本件解雇は,解雇権の濫用として無効か)について(原告の主張)ア被告ダイコーは,原告に対し,平成12年11月1日,本件暴行事件の刑罰が確定したことを理由に,就業規則第20条に基づき解雇する旨の通知書の交付により本件解雇をした。 イ本件暴行事件後の被告ダイコーの対応(ア) 被告ダイコーは,本件暴行事件当日,被告Aの通院にB課長を付き添わせ,B課長は被告ダイコーのI代表取締役社長(以下「I社長」という。)と連絡を取り合い,本件暴行事件について被告Aが刑事告訴することをしょうようした。 そして,B課長やD課長代理,更にはI社長までもが,本件暴行事件について警察で取り調べられていたにもかかわらず,被告Aの通院や告訴のことを原告に対して一切秘匿していた。 本件暴行事件当日は,原告は,結成されたばかりのJ労働組合e地方f支部L分会(以下,J労働組合e地方f支部を「Jf支部」,同L分会を「L分会」という。)の分会長として,被告ダイコーと初めて団体交渉をした日であり,被告ダイコーからもI社長やK総務部長(以下「K部長」という。),B課長が参加していたが,本件暴行事件について何ら話題になることはなかった。 (イ) また,K部長は,原告が警察の取調べを受けた後には,本件暴行事件について,「Aが大変なことになっている。Fにやられて腕がはれ上がって,首が回らない。」とか,「Aの腕が丸太みたいにはれ上がって,指輪も取れない。」などと被告Aのけがの程度が外見的にも重いかのように吹聴していた。 しかし,本件暴行事件当日,最初に被告Aを診察したG医師の が回らない。」とか,「Aの腕が丸太みたいにはれ上がって,指輪も取れない。」などと被告Aのけがの程度が外見的にも重いかのように吹聴していた。 しかし,本件暴行事件当日,最初に被告Aを診察したG医師の所見では,被告Aに外見的な症状はなく,レントゲンでも異常は見られない程度のもので,本人が痛みを訴えるので投薬治療をしたというものであり,K部長の上記言動は,殊更に本件暴行事件を大げさに仕立て上げようとするものである。 (ウ) L分会は,本件暴行事件について,原告と被告Aの間で円満解決の労をとるよう求めたが,被告ダイコーは,「個人間の問題」として,放置した。その一方で,被告ダイコーは,被告Aの言い分のみを聞いて傷害事件を作り上げようとし,当初は原告からの事情聴取すらしようとしなかった。 被告ダイコーは,L分会に対して,「原告が退職届を出すなら受理するが,就業規則からいえば,刑法に触れる行為をしたのだから解雇する。」などと事実上退職を強要した。 ウ前記のとおり,被告Aは4か月以上にわたって休業し,治療を継続したが,被告Aを診察したG医師やH医師によれば,この間,レントゲンやその他の検査には全く異常がなく,本人の愁訴のみで投薬治療を続けており,被告A本人は長期の休業を認める診断書を求めているが,医師の方でそれを制限している状況とのことであった。 エそして,前記のとおり,原告は,本件暴行事件につき,傷害罪ではなく暴行罪で起訴され,罰金10万円の略式命令を受けた。 オ解雇権の濫用(ア) 本件解雇の理由とされる暴力行為とは,「原告が被告Aに対して数秒間両手でその胸倉をつかんで前後に揺さぶった」というものである。また,本件暴行事件は,一時の誤解によるわずか数秒の出来事であって,殴る,蹴るといった典型的な暴力事件ではなく,計画性も反復性もない,偶発的な でその胸倉をつかんで前後に揺さぶった」というものである。また,本件暴行事件は,一時の誤解によるわずか数秒の出来事であって,殴る,蹴るといった典型的な暴力事件ではなく,計画性も反復性もない,偶発的な事件である。 (イ) 被告ダイコーは,本件暴行の態様につき,既に刑事事件で被告Aの主張が退けられているのに,これを無視し,被告Aの主張をうのみにした偏ぱな事実認定を基に原告を解雇するに至ったものである。 この点,被告ダイコーは,原告の処分につき「司法の裁きを待って,それから対応する」としていたが,前記のとおり,本件暴行事件が,傷害事件としてではなく,暴行事件として起訴され,原告はその限度で処罰されたところ,解雇の相当性を判断するに当たり重要な論点となる本件暴行の態様,被告Aの負った傷害の有無について,司法判断を参考にした形跡もないし,被告ダイコーが真しに調査したこともない。むしろ,被告Aの言い分のみを聞き,原告には本件暴行事件が刑事事件となったことを秘匿するなどしていたのが実態である。 (ウ) 原告は,従前,格別の不都合もなく誠実に業務に従事していたものである。また,被告ダイコーでは,従前にも本件よりも重大な暴力事件が生じていたが,これによって解雇処分となった例はなく,本件解雇は,過去の同種事件と比較しても均衡を著しく失した不当な処分というべきである。 なお,被告は,原告の入社後間もない時期である平成7年7月ないし8月ころに原告が起こした事故について言及するが,既に5年以上も前の事実である上,当時原告が始末書を出して決着したものである。また,タコ釣りに出掛けた点については,被告ダイコーからも取り分け始末書の提出を求められたこともないささいなトラブルであった。したがって,これらを解雇の正当性,相当性の判断材料とすべきではない。 (エ) 被告ダイ 出掛けた点については,被告ダイコーからも取り分け始末書の提出を求められたこともないささいなトラブルであった。したがって,これらを解雇の正当性,相当性の判断材料とすべきではない。 (エ) 被告ダイコーは,本件解雇の事由として,就業規則第20条⑨ないし⑫の各号に該当すると主張するが,本件暴行事件後も,本件解雇に至るまで1年以上,原告に対して就業差止め(就業規則第22条)等の措置は全く採らず,従前どおり労働を続けさせていたのであって,それは,原告の雇用を継続しても,被告ダイコーの企業秩序や運行管理上,格段の不都合がなかったからにほかならない。 また,被告ダイコーが指摘する就業規則の解釈はし意的で偏ぱなものであって,合理性がないというべきであり,そもそも上記就業規則が規定する解雇事由に該当しない場合が多く,形式的に解雇事由に該当する場合であっても,その適用による解雇は不相当で,解雇するべきではない。 (オ) 以上からすると,被告ダイコーには,司法判断を無視しても原告を解雇するという強固な意志があったというべきであり,本件暴行事件が軽微なものであること及び前記解雇までの前記の経緯に照らすと,原告を解雇することは,解雇権の濫用であることが明らかであって,本件解雇は無効である。 (被告ダイコーの主張)ア本件暴行の態様及び被告Aが負った傷害の程度は,前記(1)(被告Aの主張)のとおりである。 被告Aを最初に診察したG医師は,被告Aの初診時に同人の指輪が外れにくく,看護婦が石けん等を使用して抜去したことを認めている。また,その後被告Aを診察したH医師は,被告Aに対して「左腕神経叢不全麻痺,頚部捻挫,左肩挫傷」の診断を下した上,X線は軽度の変形を認め,所見としては頚部痛,左上肢しびれ感,左握力低下を認めるとしている。 被告Aの治療は約4か H医師は,被告Aに対して「左腕神経叢不全麻痺,頚部捻挫,左肩挫傷」の診断を下した上,X線は軽度の変形を認め,所見としては頚部痛,左上肢しびれ感,左握力低下を認めるとしている。 被告Aの治療は約4か月に及んでいるが,平成11年9月17日の団体交渉の席上で,Jf支部のN副委員長から,AをE病院に転医させよとの要求があり,これを受けてAはE病院に転医したものである。この転医が,治療を遷延させた一因となったと考えられる。 イ被告ダイコーは,平成11年9月4日にK部長,M営業部長より,原告及びAに対して個別に事情を聴取している。この中で原告は「けがをさせたことについては反省し,申し訳ないと思っている。Nと一緒にAに会おうとしたが会ってくれない。警察にも言ったが,会社にお願いして面接できるよう取り計らってもらえと言われた。」などと申告し,これを受けてK部長とM部長が,被告Aに「Fはやったことについて反省しているようだ。会って話し合う気持ちがあれば会社が仲介する。」と申し向けたが,被告Aは,会う気持ちはないとして,これを拒絶した。また,被告Aは,原告が被告A宅へ何度も押し掛けてきて,精神的に参ってしまったと言っていた。 ウ本件暴行事件は,被告ダイコー構内で,就業時間中に,被告ダイコー従業員同士で,業務に関連して発生したものであり,被害者である被告Aには何の落ち度もない。このような事実は,被告ダイコーの企業秩序維持の観点から看過できない悪質なものであり,本件解雇は,以下のとおり,本件暴行事件が就業規則第20条の⑨ないし⑫に該当するとしてなされたものである。 (ア) 就業規則第20条⑨についてa 同号は,「懲戒解雇の処分が決定したとき」と定められているが,本件暴行事件については,被告ダイコーの数度の幹部会に諮られ,最終的に平成12年10月21日 る。 (ア) 就業規則第20条⑨についてa 同号は,「懲戒解雇の処分が決定したとき」と定められているが,本件暴行事件については,被告ダイコーの数度の幹部会に諮られ,最終的に平成12年10月21日の幹部会において,「懲戒解雇相当」の意見で一致した。 b 本件暴行事件は,就業規則第98条の次の各号所定の懲戒事由に該当する。 (a) ②号本件暴行事件は,原告が,就業場所で,就業時間内に同僚従業員に暴力を振るったものであり,「職場の秩序を乱したとき」に該当する。 (b) ⑮号原告は,本件暴行事件について名古屋簡易裁判所から罰金10万円の略式命令を受け,これが確定しており,「刑罰に触れる行為があったとき」に該当する。 (c) ⑱号本件暴行事件は,「会社内で賭博・暴行その他これに類する行為を行ったとき」に該当する。 (d) ⑲号本件暴行は,被告ダイコー構内で同僚従業員に対して正当な理由もなく行われたものであり,「集団生活の秩序を乱し,著しく他人の生活に迷惑を及ぼしたとき」に該当する。 (イ) 就業規則第20条⑩について同号は,「事業の都合により止むを得ないとき」と定めているが,本件暴行事件は,被告ダイコーの企業秩序をびん乱するもので,原告を雇用し続けることは,被告ダイコーの事業の運営に著しい不都合を生じるものであるから,同号に該当する。 (ウ) 就業規則第20条⑪について同号は,「勤務成績が著しく不良と認められる場合」と定めているが,ここにいう勤務成績とは,労務提供の成果のみを指すのではなく,労務提供の方法,態様も当然に含まれるものである。本件暴行事件は,労務提供に関連してなされたものであり,同号に該当する。 (エ) 就業規則第20条⑫について同号は,「道路運送法・運行管理上不適当と認めた場合」と定めているが,本件暴行事件は 。本件暴行事件は,労務提供に関連してなされたものであり,同号に該当する。 (エ) 就業規則第20条⑫について同号は,「道路運送法・運行管理上不適当と認めた場合」と定めているが,本件暴行事件は,原告の法律・就業規則に対する遵法精神の欠如を表すものであり,原告の雇用を継続することは,被告ダイコーの運行管理上不適当と認められるものである。したがって,同号に該当する。 (オ) そして,本件暴行事件は,原告に対して懲戒解雇処分を発令すべき事案であったが,被告ダイコーは,原告の利益を考慮して,普通解雇にとどめたのである。 (カ) なお,原告は,被告Aは本件暴行の態様につき針小棒大化しており,被告Aの言い分を前提に原告を解雇するのは偏ぱな事実認定に基づくものであると主張するが,仮に本件暴行の態様が,原告主張のとおりであったとしても,被告ダイコー構内で,就業時間中に,被告ダイコーの従業員が,業務に関連して,全く落ち度のない無抵抗の同僚従業員に対して,一方的に暴力を振るったということには変わりがなく,被告ダイコーとしては,企業秩序維持の観点から看過できない悪質な事件だったものである。 エ原告は,これまでにトラック横転の人身事故(同乗者が受傷)を含め,3件の事故をじゃっ起させている。また,就労時間中に,トラクター(ヘッド)をコンテナーセミトレーラーから切り離し,セミトレーラーを放置して,トラクターで,タコ釣りに行き,客先からクレームが来たこともあり,決して「格別の不都合なく勤務してきた」などということはできない上,事故を起こした際に提出した始末書で,今後誠実に勤務することを約束しながら,本件暴行事件を起こしたものである。本件暴行事件が故意犯であることに加え,上記のような事情をしんしゃくすれば,本件解雇は解雇権の濫用ではない。 オ原告は,本件暴行事件 に勤務することを約束しながら,本件暴行事件を起こしたものである。本件暴行事件が故意犯であることに加え,上記のような事情をしんしゃくすれば,本件解雇は解雇権の濫用ではない。 オ原告は,本件暴行事件が偶発的なものにすぎないと主張するが,原告が3番車庫を出てから,本件暴行事件発生まで1時間以上が経過しているのであり,この間に,他の同僚にバックがかかっているか否かを確認することもできたはずである。 にもかかわらず,そのような対応をせず,被告ダイコー本社に戻って被告Aを見つけるや,直ちに本件暴行に及んでいることからすると,原告が日ごろから被告Aを嫌っていたことが伏線となり,原告は被告Aに対する加害の意思を早期に固め,被告Aを追走したというのが実態といえる。 カまた,原告は,本件暴行事件当日に開催された団体交渉で,被告ダイコーが本件暴行事件について被告Aが被害届を出したことを原告に知らせなかったのが不当であると主張するが,そもそもこのような事項は団体交渉事項となるものではない。 (3) 争点(3)(本件解雇は,不当労働行為に該当して無効か)について(原告の主張)ア被告ダイコーには,トラック運転手が約100名いるが,L分会が結成されるまで,労働組合はなく,労働者は,同業他社と比べても低劣な賃金水準におかれていた。 被告ダイコーは,平成10年ころから,労働者に対して「イエローカード制」という厳格な服務規律を強制したことから,労働者の中に不満が募り,平成11年6月ころから組合結成の話が出始め,Jf支部との協議を経て,同年7月27日にL分会が結成された。この結成時の分会長は原告であった。 イ被告ダイコーは,L分会の結成に対し,従前,P運輸に勤めていたK部長を平成11年8月3日に労務担当の総務部長として迎えるなど,組合対策を始めた。 そして,被告 この結成時の分会長は原告であった。 イ被告ダイコーは,L分会の結成に対し,従前,P運輸に勤めていたK部長を平成11年8月3日に労務担当の総務部長として迎えるなど,組合対策を始めた。 そして,被告ダイコーは,その後,①同年8月11日の本件暴行事件を利用して分会長である原告の放逐をねらい,本件暴行事件の針小棒大化を図った,②同月中には第2組合としてO会労働組合を組織し,新入社員らに対して,L分会加入を阻止しようと働きかけた,③L分会が有給休暇を取った際の賃金額について是正を要求しても誠実に対応せず,また,組合要求に対する回答書において就業規則の変更はL分会に通知する旨の回答をしていながら,L分会に全く通知のないまま,就業規則の変更を繰り返した(第2組合の同意のみを得て労働基準監督署に届けていた。),④L分会員に対する嫌がらせ,差別,退職強要,組合脱退勧奨等により,L分会員を激減させ,また,平成12年11月1日から平成13年8月11日までの間に原告を含むL分会員3名を解雇するなど,L分会を嫌悪して不当労働行為を繰り返してきた。 ウ本件暴行事件に対する被告ダイコーの対応は次のとおりである。 (ア) 被告ダイコーは,L分会に対しては,団体交渉の場において,本件暴行事件は従業員間のトラブルで会社としては関与しないとの立場を装っていながら,D課長代理は,「会社としてはAの意思をくんで刑事事件として警察に処理してもらうこととなった。」と供述し,また,I社長は,B課長から本件暴行事件が発生した旨の連絡を受けると,「病院に連れていけ」と指示し,その後もB課長が断片的にI社長に報告をし,被告Aが警察に行っていることなどの連絡を取っていることからすれば,被告Aの通院,告訴が,I社長との連絡の下でなされたことは明らかであり,被告ダイコーは,Aに対して告訴をし 片的にI社長に報告をし,被告Aが警察に行っていることなどの連絡を取っていることからすれば,被告Aの通院,告訴が,I社長との連絡の下でなされたことは明らかであり,被告ダイコーは,Aに対して告訴をしょうようしたものである。 そして,被告ダイコーは,被告Aに治療費や生活費を貸すなどして,被告Aの長期間の通院・休業を助けた。 (イ) 被告ダイコーは,被告Aに対して上記アのとおり丁寧な対応をしているのに,その一方で,原告に対しては事情聴取もせず,警察ざたになっていることを秘匿していた。 被告ダイコーがこのような偏ぱな対応をしたのは,結成されたばかりのL分会を嫌悪し,本件暴行事件を利用して組合攻撃を画策したものとみるべきである。 (ウ) K部長やB課長は,被告Aの腕が外見的には何ら異常がなかったにもかかわらず,同人の指や腕がパンパンにはれているなどと全く虚偽の事実を他の従業員に告げており,これも本件暴行事件を誇張して,原告の暴力のひどさをでっち上げようとしたものである。 (エ) また,I社長は,個々の運転手と面接することなどないのに,a署の取調べにおいて,被告Aについて「まじめで会社の規律を守る全く問題のない社員」と評価する一方,原告について「上司の前ではまじめを装っているものの,社外に出ると服装の乱れ等が見受けられ,規律を守らない」と供述しているが,これもL分会の分会長であった原告を嫌悪したからである。 エこのように,本件解雇は,前記被告ダイコーの不当労働行為の最初のものであり,原告がL分会結成の中心人物であり,初代分会長であったがゆえにささいなトラブルをさも重大な事件であるかのように仕立て上げ,それを名目として原告を解雇したものであって,その後の上記一連の不当労働行為の経過を見れば,本件解雇が不当労働行為に該当して無効であることは明らか ラブルをさも重大な事件であるかのように仕立て上げ,それを名目として原告を解雇したものであって,その後の上記一連の不当労働行為の経過を見れば,本件解雇が不当労働行為に該当して無効であることは明らかである。 (被告ダイコーの主張)ア本件暴行事件に対する被告ダイコーの対応は以下のとおりである。 (ア) 被告Aは,本件暴行事件の後,本社事務室で,D課長代理に対し,駐車場で原告から呼び止められ振り向きざまに胸倉をつかまれ上下に二,三回押され,また,腕もひねられ,手が痛い,などと訴えた。 D課長代理は,原告に事情を聞こうとしたが,同人は帰宅してしまった。 被告Aは,D課長代理に対し,更に腕がしびれて痛くて仕方がない,到底車の運転もできないし,病院に連れていってほしい旨申し出た。このため,D課長代理は,会社の構内における同僚従業員からの,就業時間内の暴力事件であることから放置することもできず,取りあえずB課長に自動車を運転させて,被告Aを病院まで連れていき,治療を受けさせることとした。 そして,被告Aは,上記病院で診察を受けた後,自らの意思によりa署に行き,本件暴行事件について原告を告訴したとのことであり,被告ダイコーは,後になってこの告訴の事実を聞き及んだ。 上記のように,社員がけがをしたとの連絡を受けた会社代表者が当該社員を病院に連れていくよう指示をし,上司が当該社員に付き添って病院へ行ったことにつき,原告から非難されるいわれはない。 (イ) 本件暴行事件の翌日である平成11年8月12日,a暑から被告ダイコーに対して,現場検証をする旨の連絡があり,a暑の指示により,被告ダイコーのK部長と被告Aの立会いを求められ,同日現場検証が実施された。 また,同月20日に会社代表者として被告ダイコーのI社長,労務担当者であるK部長の2名が,同 連絡があり,a暑の指示により,被告ダイコーのK部長と被告Aの立会いを求められ,同日現場検証が実施された。 また,同月20日に会社代表者として被告ダイコーのI社長,労務担当者であるK部長の2名が,同月24日には被告Aが,同月26日には原告が,それぞれ取り調べられた。 (ウ) また,同月26日には,L分会の上部団体役員が被告ダイコーを訪れ,原告の処遇について,従前どおりの雇用関係を続けてもらいたいとの請願をしたが,これに対し,被告ダイコーは,会社構内において,就労時間内に,その事由いかんにかかわらず暴力行為に及んだことは,職場秩序を乱すゆゆしき事態であり,職場秩序維持のためにも,司直の判断を待って対応する,期待に沿いかねる結果になるかもしれないと伝えた。 (エ) 被告ダイコーは,被告Aが本件暴行により負った傷害により,就労できなくなった間,被告Aの生活を支えてやるために生活費を貸与した関係があるのみであり,被告ダイコーが被告Aに経済的援助をしたなどというものではない。なお,被告ダイコーは,L分会員である佐藤照彦にも同様に金銭を貸与したことがあり,何ら差別をしたことはない。 イ被告Aの病状について(ア) 被告Aは,本件暴行によって,左手の筋を痛め,手がしびれ,はれ上がったものであり,頚部捻挫,左前腕部挫傷,左橈骨神経不全麻痺の診断を受けた。そして,この傷病のための通院加療によりおおむね4か月間出勤できず休業した。 (イ) 被告Aの左腕ははれ上がったばかりか,指輪も取れなくなり,医師に指輪を外してもらったほどであった。 このように被告Aには外見的所見があったのであり,K部長が本件暴行事件を誇張したとか,でっち上げをしたなどということはない。なお,原告も,刑事事件における供述で,被告Aが提出した診断書の傷病について,本件暴行により生じたけが 見があったのであり,K部長が本件暴行事件を誇張したとか,でっち上げをしたなどということはない。なお,原告も,刑事事件における供述で,被告Aが提出した診断書の傷病について,本件暴行により生じたけがである旨認めている。 ウ前記のとおり,被告ダイコーは,原告及び被告Aの双方から事情を聞き,慎重に原告の非違行為を認定した上で本件解雇を決定したものであり,偏った認定や,異常な対応をしたことはない。 エ本件解雇は,前記のとおり,専ら本件暴行事件の発生及びその内容の悪質性にかんがみた処分であり,原告の過去の事故歴や勤務状態をしんしゃくすると,明らかに解雇事由が存在するものであって,原告の組合活動とは全く関係がないものである。 オ原告が主張するイエローカード制というのは,平成10年5月ころ作られた制度で,シートベルト,ヘルメット等の着用などトラック運行の安全を目指した制度であり,被告ダイコーにはほかに何らの意図もない。 カ原告は被告ダイコーがL分会をつぶすためにK部長を採用したと主張するが,被告ダイコーは従前より総務担当部長格の人物を探していたところ,たまたま平成9年にP運輸を退職したKを平成11年8月2日に採用したまでである。なお,被告ダイコーとP運輸は,資本,人的・物的つながりは全くない。 キ原告は,親睦会であったO会を第2組合として立ち上げたと主張するが,被告ダイコーには現に親睦団体O会が存在しており,組織替えなどという事実はない。また,O会労働組合という第2組合が存在するものの,被告ダイコーはその結成に何ら関与していない。 ク被告ダイコーは,原告が,被告ダイコー構内で,しかも就労時間中に本件暴行事件を起こしたことから,企業秩序維持のため,司直の判断が出次第これに対応することとしたにすぎず,原告の放逐をねらったり,L分会の切り イコーは,原告が,被告ダイコー構内で,しかも就労時間中に本件暴行事件を起こしたことから,企業秩序維持のため,司直の判断が出次第これに対応することとしたにすぎず,原告の放逐をねらったり,L分会の切り崩しをしたなどということはない。いかなる場合でも,暴力行為が許容され,正当化されることはないというべきである。 ケ K部長は,本件暴行事件発生時は外出しており,被告Aがa署に本件暴行事件につき原告を告訴するまでの間に被告Aと顔を合わせたこともないのであって,被告Aに告訴をしょうようしたとか,本件暴行事件を刑事事件に仕立て上げたなどということはない。 コ被告ダイコーは,平成11年8月11日にL分会と団体交渉をしたことはなく,同日は単なる顔合わせであった。なお,この顔合わせは午後7時からであったが,K部長は,Jf支部のQ書記長(当時)に,原告が被告Aに対して暴行事件を起こしたことを電話で伝えており,被告ダイコーが本件暴行事件について原告に秘匿したなどということはない。 サ被告ダイコーが原告に対して退職を強要したとか,原告と被告Aの示談交渉を妨害したとか,L分会の分会員に対して脱退工作をしたなどという事実はない。 (4) 争点(4)(原告の賃金額の算定方法)について(原告の主張)ア被告ダイコーにおいては,毎月1日から月末までの期間について賃金計算をし,当月分を翌月15日に支払うこととなっている。 原告は,平成12年8月4日,自宅付近で,逃走中の窃盗犯人を現行犯逮捕した際に右脚アキレス腱断裂の重傷を負い,同年10月26日まで入院・休業していた。この間の休業は欠勤扱いとなっていたため,同年8月分,同年9月分の賃金はマイナス支給であった。 イしたがって,本件解雇が無効とされた場合の原告の賃金額については,同年5月分,同年6月分,同 いた。この間の休業は欠勤扱いとなっていたため,同年8月分,同年9月分の賃金はマイナス支給であった。 イしたがって,本件解雇が無効とされた場合の原告の賃金額については,同年5月分,同年6月分,同年7月分の3か月分の平均を算出するのが相当である。 上記3か月に原告に支払われた賃金は,平成12年5月分が30万1799円,同年6月分が33万2879円,同年7月分が31万6528円であり,平均すると賃金月額は31万7068円となる。 (被告ダイコーの主張)ア原告に対して支払われた平成12年5月分,同年6月分,同年7月分の賃金額は,原告の主張するとおりであるが,労働基準法12条によれば,平均賃金は,算定事由発生日以前の3か月間における賃金の総額をその期間の総日数で除して算出されるのであり,当該3か月間に業務上の負傷・疾病等による休業等の期間がある場合には,その期間は除外されるにすぎない。そして,当該期間中に自己都合の休業等が多く,賃金総額が異常に少なかったような場合のために,労働日当たりの賃金の60パーセントが最低保障とされている。 イ原告は,平成12年8月は4日しか稼動しておらず,同年9月及び同年10月は全く稼動していないが,これは,上記アの除外される場合に当たるものではないから,原告は計算方法を誤っている。 (5) 争点(5)(被告らは,原告に対して,共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うか)について(原告の主張)ア被告らの共同不法行為(ア) 過大な損害賠償請求と処罰要求a 被告Aは,原告に胸倉をつかまれる暴行を受けたのを奇貨として,長期間休業して休業補償その他の損害賠償を詐取しようと企て,また,原告を日ごろから嫌悪していたことから,原告に対する社内懲戒処分,解雇処分の実現を図って原告を懲らしめようとして,本来通院加療 して,長期間休業して休業補償その他の損害賠償を詐取しようと企て,また,原告を日ごろから嫌悪していたことから,原告に対する社内懲戒処分,解雇処分の実現を図って原告を懲らしめようとして,本来通院加療が必要でないにもかかわらず,平成11年8月11日から同年12月13日まで約4か月間に及ぶ治療を継続し,原告に対してその間の休業補償,治療費等の請求をなし,かつ,実際には傷害を負っていないにもかかわらず,捜査当局に対して,原告に対する傷害罪による処罰を強く求めたものである。 b 被告ダイコーは,L分会の弱体化を目的として,本件暴行事件の事実関係を原告に確認することなく,一方的に被告Aの言い分に加担し,被告Aの治療の長期化と休業及び刑事告訴をしょうようし,被告Aに対し,治療費,生活費,弁護士費用等をすべて立て替えるなどして,前記aの被告Aの原告に対する損害賠償請求行為,刑事処罰要求行為をほう助した。 c 上記のように,被告Aと被告ダイコーは,本件暴行事件を刑事事件化することに共同の利益を見いだし,その目的に向かって協力し合ったのである。 (イ) 不当解雇前記のとおり,被告ダイコーは,正当な解雇理由がないのに原告を解雇した。そして,被告Aは本件暴行事件について告訴するなどして,これをほう助したものである。 イ被告らの責任と原告の損害(ア) 被告Aは,ささいなトラブルを誇張して傷害事件として原告を虚偽告訴し,さらには,そもそも休業治療の必要もないのに4か月間の長期にわたり休業して,これを基に損害として請求する態度を示しているが,これは詐欺の予備的行為に該当する。 (イ) 被告ダイコーは,被告Aの虚偽告訴の虚偽性を知っていたか,あるいは知り得る立場にあったにもかかわらず,これを利用し被告Aに対して告訴をしょうようし,L分会長である原告の放逐 に該当する。 (イ) 被告ダイコーは,被告Aの虚偽告訴の虚偽性を知っていたか,あるいは知り得る立場にあったにもかかわらず,これを利用し被告Aに対して告訴をしょうようし,L分会長である原告の放逐を画策したが,これは明白な不当労働行為である。 (ウ) 被告A,被告ダイコーの上記各行為はいずれも民法709条の不法行為に該当するところ,原告は,これにより刑事被疑者として警察署,検察庁に呼び出され長時間の取調べを受け,結成したばかりのL分会長の任を辞し,本件解雇に至るなど,多大な精神的苦痛を被った。これに対する慰謝料としては,200万円が相当である。 (被告Aの主張)ア本件暴行事件の経緯については,前記(1)(被告Aの主張)において述べたとおりであるところ,そもそも,多少の大げさな表現は被害者に特有のものというべきであり,被告Aが本件暴行事件の針小棒大化を図ったなどということはない。 イ被告Aが要した治療費,生活費,弁護士費用などは,被告ダイコーから借りているものであり,本件が解決した段階で返済することとなっているものである。 ウ被告ダイコーが原告を解雇するに当たって,その解雇の決定に被告Aが関与するなどということはあり得ない。 エ誤解に基づいて一方的に暴行をした者が,謝罪するどころか,慰謝料の請求をすること自体,極めて非常識である。 (被告ダイコーの主張)ア前記のとおり,被告ダイコーは,本件暴行事件について適切な対応をしており,被告Aに告訴をしょうようしたなどということもないし,治療費等の貸付も特に異常な対応というものではない。 イ前記のとおり,本件解雇には合理的な理由があり,不当解雇ではない。 (6) 争点(6)(被告ダイコーは,原告に対して,不法行為に基づく損害賠償責任を負うか)について(原告の主張)ア 。 イ前記のとおり,本件解雇には合理的な理由があり,不当解雇ではない。 (6) 争点(6)(被告ダイコーは,原告に対して,不法行為に基づく損害賠償責任を負うか)について(原告の主張)ア被告ダイコーの原告に対する不法行為(配車差別)(ア) 被告ダイコーは,原告に対して,本件暴行事件以降,配車差別を行い,長距離運転(大阪,神戸,清水)の配車回数を減らした。本件暴行事件前後の原告の長距離運転の配車回数は別表「原告の主張」欄記載のとおりであり,本件暴行事件前10か月間の配車回数の平均は1か月当たり3.7回であるのに,本件暴行事件後10か月間の配車回数の平均は1か月当たり2.3回であり,原告の長距離配車回数が減少した。 (イ) 上記の配車差別は,L分会の分会長であった原告に対する故なき不利益取扱いであり,不当労働行為を構成するものであるが,同時に不法行為も構成するものである。 なお,被告ダイコーは,原告が,配車差別の実態を明らかにするために原告と同経験年数の従業員の賃金及び配車先を開示するよう求めたのに対し,不必要である旨申し立てた。このような被告ダイコーの訴訟追行態度にかんがみれば,仕事が全般的に減少したとか,他の同僚も賃金が減少したなどという主張を考慮する余地はない。 (ウ) 原告の賃金額は,L分会結成前10か月間(平成10年10月から平成11年7月まで)の平均が1か月当たり32万7101円であったのに対し,L分会結成後10か月間(平成11年8月から平成12年7月まで)の平均が1か月当たり31万3387円となっており,これは,1か月当たり1万3714円の賃金減額となったことを示している。そして,水揚げ額を基礎に算出される職能手当と生産時間外手当につき,上記同様1か月当たりの平均を算出すると,L分会結成前後で,1か月当たり93 たり1万3714円の賃金減額となったことを示している。そして,水揚げ額を基礎に算出される職能手当と生産時間外手当につき,上記同様1か月当たりの平均を算出すると,L分会結成前後で,1か月当たり9316円の減額となっているのであり,上記1万3714円の大部分が,配車差別による影響であることが分かる。 イ被告ダイコーの不当労働行為意思の存在上記配車差別が,被告ダイコーの不当労働行為意思に基づくものであることは,前記(3)(原告の主張)で述べた被告ダイコーの不当労働行為の経過から明らかであり,上記配車差別はこの不当労働行為意思に基づくものである。 ウ損害原告は,上記配車差別によって,精神的苦痛を被ったが,その慰謝料としては50万円が相当である。 (被告ダイコーの主張)ア労働組合法上の不当労働行為救済制度は,仮に不当労働行為があった場合には,それを是正し除去して,不当労働行為がなかった状態にするという原状回復を旨とする制度であるから,民法上の損害賠償が成立するとすれば,そのような原状回復がなされても,まだ損害が残っていることが主張,立証されなければならない。 原告は,配車差別の結果,原告に50万円の損害が発生したと主張するが,原告に具体的にどのような損害が発生したのかは明らかではない。仮に,配車差別により50万円の実損が生じたなら,だれとの間でどのような差別があったかなど,その詳細が明らかにされなければならない。このような観点からすると,原告の主張は,主張自体失当といわざるを得ない。 イ平成10年10月から平成12年7月までの原告に対する長距離運転の配車回数は,別表「被告ダイコーの主張」欄記載のとおりであり,回数の変動は長距離運送受注の変動(減少)によるものである。また,荷主から運賃の値下げ要請が次々とあり,従業員一 原告に対する長距離運転の配車回数は,別表「被告ダイコーの主張」欄記載のとおりであり,回数の変動は長距離運送受注の変動(減少)によるものである。また,荷主から運賃の値下げ要請が次々とあり,従業員一人当たりの売上げ自体も減少している。 原告の主張する賃金の低下は,経済社会情勢の変動や時代の流れ等による賃金低下であり,配車差別によるものだというのは原告の邪推にすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実前記争いのない事実等及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) L分会の結成等被告ダイコーにおいては,平成11年6月ころから,従業員間で労働組合結成の話が出始め,Jf支部との協議を経て,同年7月27日に従業員32名でL分会を結成した。そして,原告は,L分会の分会長に就任した(甲33,44,原告本人)。 (2) 本件暴行事件に至る経緯ア原告と被告Aは,共に被告ダイコー従業員であるが,原告の方が先に入社した先輩であった。両者は,被告Aの入社当初は特に問題のない関係であったが,被告Aの入社後数か月して,原告は被告Aを嘘つきだと思うようになり,また,他人の車両にいたずらするなどの話を聞いたことから,信頼のおけないやつだと考えていた。また,原告が被告Aに対して上記のような感情を抱いており,同被告を「A」と呼び捨てにして呼ぶようになったこともあり,被告Aも原告に対して不愉快な感情を抱いていた(甲14,24,25,原告本人,被告A本人)。 イ平成11年8月11日,被告Aが午前中の業務を終えて被告ダイコーの3番車庫に車両をとめて待機していたところ,午後零時ころに同車庫に同僚のRが来て車両をとめ,その後原告が同駐車場に来て車両をとめた。そのときの被告Aの車両と原告の車両の距離は100メートルほど離れていた。 上 車両をとめて待機していたところ,午後零時ころに同車庫に同僚のRが来て車両をとめ,その後原告が同駐車場に来て車両をとめた。そのときの被告Aの車両と原告の車両の距離は100メートルほど離れていた。 上記車庫で,被告AとRは雑談をしていたが,その際,被告AはRに対して「車の調子が悪い。」などと言っていた。そして,被告Aは,被告ダイコーに連絡をした上,車両の修理のために,Rよりも二,三分前に上記車庫を出て,日産自動車の修理工場に向かった。 しかし,日産自動車の修理工場が閉まっていたため,被告Aは,被告ダイコーの指示を仰いだ上,被告ダイコーの修理工場兼給油所であるT整備に行ったが,盆明けにならないと修理ができないと言われたため,車両をT整備に置いて,T整備に給油に来る同僚の車両に同乗させてもらうべく,T整備で待っていた(甲16,17)。 ウ被告Aが3番車庫を出てから間もなく,車庫で待機している車両は被告ダイコー本社へ戻るよう,被告ダイコーから指示が出て,車庫で待機していた従業員らは被告ダイコー本社駐車場へ向かった。 車庫で待機している従業員に対し,上記のように本社へ戻るように指示が出た場合には,従業員間でその旨を教え合っており,原告も,他の従業員から,被告ダイコー本社へ戻るよう指示が出ている旨を聞き,本社へ向かったが,その際,被告Aが先に3番車庫を出ていったことにつき,本社へ戻る指示を聞きながら,皆に教えずに戻っていったものと誤解して,被告Aに対し立腹した。 Rは,3番車庫を出た後,T整備に向かい,同所で給油をしたが,その際,同僚の車両を待っていた被告Aに,同乗させてもらうよう依頼されたため,被告Aを助手席に同乗させて,被告ダイコー本社へ戻った(甲16,17,24,25,原告本人)。 エ原告は,被告ダイコー本社へ戻った後,被告Aが日報を た被告Aに,同乗させてもらうよう依頼されたため,被告Aを助手席に同乗させて,被告ダイコー本社へ戻った(甲16,17,24,25,原告本人)。 エ原告は,被告ダイコー本社へ戻った後,被告Aが日報を持って本社事務所に向かっているのを見つけ,被告Aに対して「お前バックがかかっていたのを知っていたんだろう,何で教えなかったんだ。」と言いながら,同人の胸倉をつかんで揺さぶるなどの本件暴行に及んだが,被告Aは「知らないよ。」と言って,何ら抵抗しなかった。そして,原告は被告Aの胸倉から手を離したが,その後更に暴行を加えるということはなく,被告Aは本社事務所に入っていった(甲24,原告本人。なお,具体的な暴行の態様については,後記2(1)で検討する。)。 (3) 本件暴行事件後の経緯等ア本件暴行事件の直後,被告Aは,本社事務所でD課長代理に対し,「Fに殴られた。何もしていないのにいきなりやられた,怖くて会社に来れない。」などと訴えた。その後,B課長が被告Aの話を聞くと,最初は殴られたと言っていたのが,胸倉と腕をつかまれた,腕がしびれている,首が回らん,何もしてないのに一方的にやられたなどと話をした。そこで,B課長はI社長に連絡をし,病院に連れていくようにとの指示を受けて,被告Aを病院に連れていった。病院に行く際,被告AはB課長に「首が動かん。」などと言っていた(甲18ないし20,証人K,被告ダイコー代表者本人)。 イ被告Aは,本件暴行事件当日,C病院のG医師の診察を受け,頚部捻挫,左前腕部挫傷,左橈骨神経不全麻痺の診断を受けた(乙1)。同日の診察の際,被告Aは,G医師に,「喧嘩をして,左前腕と頚部をつかまれて体を揺すられた。」と申告し,頚部痛と左前腕痛,指の痛みを訴えた。 しかし,同被告の左前腕に腫脹は認められず,また,レントゲン検査において ,被告Aは,G医師に,「喧嘩をして,左前腕と頚部をつかまれて体を揺すられた。」と申告し,頚部痛と左前腕痛,指の痛みを訴えた。 しかし,同被告の左前腕に腫脹は認められず,また,レントゲン検査においても異常はなく,投薬で様子をみることとされた(甲9)。 ウ被告Aは,本件暴行事件当日,C病院で受領した診断書を添えてa署に傷害の被害届を提出したが,その際,被害の模様として,「会社の先輩にいきなり首と左腕をつかまれて,強く3回くらい揺さぶられてしまいけがをさせられてしまいました。」と申告した(甲13)。 そして,被告Aは,上記被害届をなした後,自分の車を運転して帰宅した(被告A本人)。 エ同日,被告ダイコーとL分会との間で,同分会結成後初めての団体交渉打合せ会が開かれた。この打合せ会には,被告ダイコーからの出席者としてI社長,K部長,B課長の3名も出席しており,L分会からはQ書記長,Jf支部副委員長であったN,L分会長であった原告ほか1名が参加したが,この席上で本件暴行事件について被告Aが病院に行った事実や被害届を出した事実につき,話題となることはなかった。また,同月25日にも,団体交渉が行われたが,その際にも本件暴行事件が話題となることはなかった(甲77,82,証人K,原告本人)。 オ被告Aは,平成11年8月12日,a暑において取調べを受け,その際,本件暴行の態様について,「原告が左手で被告Aの胸倉を力一杯握って引き上げ,右手で被告Aの左腕を握りしめ外側か内側のどちらかにひねり回した。」,「暴行の時間は1分間弱で,その後原告は自分から手を離したが,被告Aは「俺は手を出さんから好きにやってくれ。」と原告に言った。」などと供述した(甲14)。 また,同日,被告ダイコー本社駐車場において,本件暴行事件について被告Aを立会人とする実況見分が が,被告Aは「俺は手を出さんから好きにやってくれ。」と原告に言った。」などと供述した(甲14)。 また,同日,被告ダイコー本社駐車場において,本件暴行事件について被告Aを立会人とする実況見分が行われた(甲27の1)。 カ B課長は,平成11年8月13日にa署で取調べを受けたが,その際,被告Aについて「仕事はまじめだが,人のことを事務所内等で大声でワーワー言う人だから,同僚には好かれていない。」と供述する一方,原告について「仕事はまじめで責任感の強い人」,「今まで会社や同僚間で問題を起こしたことは聞いたことがない。」などと供述した(甲20)。なお,同月12日から同月15日までは,被告ダイコーは盆休みであった(原告本人,証人K)。 キ D課長代理は,平成11年8月16日,a署で取調べを受けたが,その際,被告Aについて「仕事ぶりはまじめだが,協調性に欠ける人物」,原告について「最近はものの言い方や態度が横柄になったが,仕事はまじめにやってくれる男」とそれぞれ供述した。さらに,本件暴行事件について,「同僚間のことで会社としても穏便に済ませたいが,Aがどうしても被害届を出して処罰してもらうと言っており,会社としてはAの意思をくんで刑事事件として処理してもらうことになった。」と供述した。そして,この取調べの際,D課長代理は原告及び被告Aの履歴書を持参して,a署に提出した(甲18)。 ク I社長は,平成11年8月20日にa署で取調べを受けたが,その際,「本件暴行事件の報告を受け,被告Aを病院に連れていくよう指示をしたが,その後,B課長から,被告Aに10日間の診断書が出た,被告Aは原告に首を絞められた,などの報告を断片的に受けた。」,「当日午後4時30分ころに会社へ戻ったが,B課長と被告Aは警察へ行っているとのことであった。」,「その後被告Aから直接 の診断書が出た,被告Aは原告に首を絞められた,などの報告を断片的に受けた。」,「当日午後4時30分ころに会社へ戻ったが,B課長と被告Aは警察へ行っているとのことであった。」,「その後被告Aから直接事情を聞いたが,原告と被告Aとの間に行き違い,勘違いがあったことは理解できたものの,詳しい原因等は分からなかった。」,「本件暴行事件後,取調べまでの間に,原告から事情を聞いたことは一切ない。」,「傷害事件を起こした原告については,今後役員会を開催して処分を考えている。」などと供述した。また,被告Aについて,「まじめで会社の規律を守る全く問題のない社員」と供述する一方,原告については「上司の前ではまじめを装っているが,社外に出ると服装の乱れ等があり,会社の規律を守らない。」などと供述した(甲19)。 ケ原告は,平成11年8月26日にa署で取調べを受けたが,このとき,初めて本件暴行事件が刑事事件となっていることを知った。 原告は,この取調べにおいて,本件暴行の態様について,「被告Aの胸倉を両手で持って強く前後に二,三回揺さぶった。」と供述した。この暴行態様に関する供述は,その後の検察庁における取調べにおいても,特段の変遷はない(甲24ないし26,原告本人)。 コ K部長は,本件暴行事件後,被告ダイコー社内で,本件暴行事件につき,「A君が大変なことになっているんだわ。腕がはれ上がって首が回らず,半身が麻痺しとるんだわ。」などと言っていた(甲29)。 サ Q書記長らは,平成11年8月26日ころ,被告ダイコーを訪れ,被告ダイコーに対し,原告の雇用を継続するよう要請した。これに対し,K部長は,「司法の裁きを待って,それから対応する。」と応答した(証人K)。 シ被告ダイコーは,平成11年9月4日になって,初めて原告から事情聴取をした(証人K,被告ダイコー 要請した。これに対し,K部長は,「司法の裁きを待って,それから対応する。」と応答した(証人K)。 シ被告ダイコーは,平成11年9月4日になって,初めて原告から事情聴取をした(証人K,被告ダイコー代表者本人)。 ス被告Aは,平成11年9月22日までC病院に通院したが,その訴える症状に特に変化はなかった。そして,同日の診察の際,G医師は,被告Aの診療録に「診断書は1回に2週間以上はかかない」と記載しており,被告Aから2週間を超える通院加療ないし休業を要する旨の診断書を要求されたものと推認される(甲9)。 被告Aは,L分会が転院を要求するなどしたこともあって,上記平成11年9月22日の診察を最後に,C病院からE病院に転院した(甲9,10,証人K,原告本人)。 セ被告Aは,平成11年9月27日,E病院のH医師の診察を受け,頚部捻挫,左肩捻挫,左腕神経叢不全麻痺の診断を受けた(乙5)。同日の診察の際,被告Aは,「同年8月11日に他人に左腕,頚部を強くひねられ,以後左腕に疼痛,しびれが起こった。」旨申告し,握力検査の結果,右手58キログラム,左手4キログラムであった。 その後,被告Aの訴える症状に特に変化はなかったが,左手の握力は,平成11年11月15日の診察の際には42キログラム,同月29日の診察の際には57キログラムであった(甲10)。 ソ被告Aは,C病院及びE病院において数度にわたり通院加療・休業を要する旨の診断書の発行を受け,結局,平成11年8月15日から同年12月13日までの120日間休業し,その間,給与は支払われず,賞与も減額となった(乙1ないし9,12,13)。被告Aが上記両病院での治療期間中に要した治療費等は,文書料を含めて15万2493円である(乙10の1ないし14,11の1ないし12)。 被告Aは,上記 となった(乙1ないし9,12,13)。被告Aが上記両病院での治療期間中に要した治療費等は,文書料を含めて15万2493円である(乙10の1ないし14,11の1ないし12)。 被告Aは,上記のように約4か月にわたって治療・休業したが,被告ダイコーに治療期間が長い理由等を詳しく聞かれたことはなかった。また,この間,被告Aは,治療費や生活費を被告ダイコーから借りていた(証人K,被告A本人)。 タ(ア) G医師は,平成11年12月2日,原告代理人から被告Aの病状,治療経過等につき質問され,以下のような回答をした(甲7)。 a 被告Aは,「腕を押された,ひねられた。」などと言って外来診察に来たが,診察の際,外見的には被告Aの腕部分にはれや発赤は認められなかった。念のため,該当部分をレントゲン撮影したが,全く異常はなかった。しかし,被告A本人が痛みを訴えるので,本人の意向に従い,投薬治療のみを施した。診断の根拠は被告Aの自己申告のみである。 b その後も,被告Aは「痛みが取れない。」と言って,何回か通院をしたが,外見的に変化もないので,治療の必要もないと感じていた。しかし,本人が希望するので,投薬だけは続けた。 また,被告Aから「1か月の診断書を書いてくれ。」との要求があったが,G医師は「それはできない。」と言って治療期間を短くした。 c 初診時の状況から,1か月も2か月も治療期間が長引くことは,医学的常識から外れており,被告Aの訴えには大きな疑問がある。 その後,E病院に転院したとのことであるが,転院の必要性については疑問があり,また,いまだに治療を続けているとすれば,医学的常識に反している。 d 被告Aは,以前にも,自動販売機に触れた際に,手がしびれたなどといって来院し,「1か月の診断書を出してくれ。」などと要求したことがあった いまだに治療を続けているとすれば,医学的常識に反している。 d 被告Aは,以前にも,自動販売機に触れた際に,手がしびれたなどといって来院し,「1か月の診断書を出してくれ。」などと要求したことがあった。 (イ) G医師は,平成12年3月30日,C病院で検察官の取調べを受け,「本件暴行事件当日,被告Aを診察した際,同人の首や左腕に特に外傷は認められなかった。」,「被告Aは左前腕がはれていると言ったが,はれているといえばはれているのかなと思う程度であったので,当日のカルテには「腫脹がない。」と記載したものであり,レントゲン撮影でも特に異常はなかった。」,「被告Aが痛みを訴えたため,本人依頼により,約10日間の安静加療を要する見込みとの診断書を出した。」,「被告Aの言う痛みは,一,二週間でなくなるものと思っていた。」,「そのほかに他覚的症状はなかった。」などと供述した(甲22)。 チ(ア) H医師は,平成11年12月20日,原告代理人から被告Aの症状,治療経過等につき質問され,以下のような回答をした(甲8)。 a 被告Aは,「後ろから腕をひねって,腕がしびれている。C病院に通院していたが,治らないので診察に来た。」と言って来院した。症状としては,外見的には異常がなく,レントゲン撮影でも,他覚的所見は得られなかった。ただ,腕がしびれるというので,握力検査をしたところ,4キログラムという低い数値を示したが,本人が力を入れなければ,このような数値になることはある。 いずれにせよ,被告Aが痛みを訴えるので,同人の意向に従い,湿布薬を処方し,診断書も同人の訴えにより記載した。 b その後,被告Aは,毎週1回程度通院し,握力検査の数値は最近では60キログラム以上を示し,通常人と変わらなくなった。 cH医師は,同年10月末ころに,被告Aに対して「外見的に より記載した。 b その後,被告Aは,毎週1回程度通院し,握力検査の数値は最近では60キログラム以上を示し,通常人と変わらなくなった。 cH医師は,同年10月末ころに,被告Aに対して「外見的には症状もないので,仕事に早く復帰したらどうか。」と言ったが,被告Aは,「車の運転の仕事で,レバーの操作ができない。会社も完治してから復職するようにと言っている。」などと答えた。 そこで,H医師は,被告Aに「それじゃあ,一度会社の人を連れてきてください。」と言ったが,結局,会社の人は来なかった。 d 医師としては,患者本人が痛みを訴える以上,二,三か月は様子をみるほかない。他院での初診から数か月後に転院してくるような場合には,取りあえずは患者本人の訴えに耳を傾けるほかない。 (イ) H医師は,平成12年3月30日,E病院で検察官の取調べを受け,「被告Aには外傷等はなく,はれや出血等の他覚的症状は何もなかった。」,「握力検査の数値が低かった点については,本人が力を入れない以上何キロになっても不思議ではなく,可動域の制限がある点についても,本人がそれ以上動かないと言えば,本当にそれ以上動かないかどうかは分からない。」,「被告Aの痛みとしびれの訴えがあったため,同人の依頼により診断書を出した。」,「診断書は,会社を休むのに必要だとの被告Aの依頼を受けて出した。」,「平成11年11月ころ,被告Aに仕事に復帰したらどうかと言ったところ,同人は,車のシフトレバーの操作ができない,会社は完治してから復職するようにと言っていると答えたため,会社の人を連れてくるように促したが,結局連れてこなかった。」などと供述した(甲23)。 ツ被告Aは,平成12年3月18日,検察庁において取調べを受けたが,その際,本件暴行の態様について,前記オ記載のa暑での供述 うに促したが,結局連れてこなかった。」などと供述した(甲23)。 ツ被告Aは,平成12年3月18日,検察庁において取調べを受けたが,その際,本件暴行の態様について,前記オ記載のa暑での供述とほぼ同様の供述をした。ただし,暴行の時間については,1分間弱ではなく,数秒間であった旨訂正した。また,検察官から,原告が胸倉をつかんで揺さぶったのではないかと聞かれ,「よく思い出してみると,揺さぶられた覚えがある。」と答えた。さらに,原告は両手で胸倉をつかんだのではないかとの検察官の問いに対し,被告Aは「断定はできないものの,両手でつかんだのではないと思う。」と答えた。 加えて,治療経過につき,「本件暴行当日は,首も少しは痛かったが,首の痛みは1日くらいで治まっており,痛みが長引いたのは左腕である。」,「C病院に行った際には,首にはれやあざ等はなかったが,左腕が少しはれていた。」,「その後,K部長からE病院への転院を勧められ,C病院からE病院に転院した。」などと供述した(甲16)。 (4) 本件訴訟前の交渉経緯等ア原告は,被告Aに対し,平成11年9月8日付けで,代理人弁護士を介して,本件暴行についての謝罪の意を表すとともに,事実関係についての原告と被告Aの主張が食い違っていることから,暴行と因果関係のある範囲で損害賠償の示談をしたい旨の申入れをしたが,これに対して,被告Aは,同月10日付けで,いまだ療養中であり,示談の段階ではない,原告が事実を認めて謝罪をすることが先決である旨の返答をした(甲1,2)。 イ原告は,被告Aに対し,同年10月29日付けで,代理人弁護士を介して,本件暴行の態様からして,被告Aの治療が3か月以上に及ぶのはあり得ないことである,被告Aの症状は専ら同人の愁訴によるものとの疑いが強いとした上で,過剰濃厚治療 月29日付けで,代理人弁護士を介して,本件暴行の態様からして,被告Aの治療が3か月以上に及ぶのはあり得ないことである,被告Aの症状は専ら同人の愁訴によるものとの疑いが強いとした上で,過剰濃厚治療の場合の治療費,休業補償等を支払う意思はない旨通知した。これに対して,被告Aは,同年11月2日付けで,暴行事件の態様は被告Aの主張しているとおりであり,被告Aが不必要に治療を長引かせているような発言は残念の一言に尽きる旨の返答をした(甲3,4)。 ウ被告Aは,同年12月24日付けで,原告に対し,代理人弁護士を介して,原告が被告Aと直接交渉しないようにしてほしい,被告Aの損害賠償については今後の後遺症の様子をみた上で話をしたい旨の通知をした。これに対し,原告は,平成12年1月17日付けで,被告Aに対する慰謝料は5万円程度が相当と考えている,被告Aの告訴内容が事実に反しており,この点につき原告の方から慰謝料請求をすることを検討中である旨の返答をした(甲5,6)。 エなお,上記ア,イ記載の被告Aの返答は,被告Aが,K部長にどのような回答をすべきか相談した上,K部長がその原案を作成して,これを被告Aが書き写すという方法で作成されたものである(証人K,被告A本人)。 (5) 本件暴行事件に係る刑事事件の経過ア名古屋区検察庁は,平成12年7月10日付けで本件暴行事件につき,原告を暴行罪で名古屋簡易裁判所に起訴した。その公訴事実の概略は,原告が,被告Aに対して,両手でその胸倉をつかんで前後に揺さぶる暴行を加えた,というものである(甲11)。 イそして,名古屋簡易裁判所は,本件暴行事件につき,平成12年7月12日付けで,原告を罰金10万円に処する旨の略式命令を発した(甲12)。 (6) 原告の仮の地位を定める仮処分申立て原告は,本件解雇後,当庁 古屋簡易裁判所は,本件暴行事件につき,平成12年7月12日付けで,原告を罰金10万円に処する旨の略式命令を発した(甲12)。 (6) 原告の仮の地位を定める仮処分申立て原告は,本件解雇後,当庁に仮の地位を定める仮処分及び賃金仮払仮処分の申立てをなし(当庁平成12年(ヨ)第995号),当庁裁判官は,原告の申立てをおおむね認容する決定をした(丙事件の甲1)。その後,原告は丙事件を提起した。 2 争点について(1) 争点(1)(本件暴行事件の態様並びに被告Aの損害の程度及び本件暴行との間の相当因果関係の存否)についてア本件暴行の態様についての被告Aの供述内容等(ア) 本件暴行事件を目撃した者はなく,本件暴行の態様を認定するに当たっては,前記認定事実を前提に,基本的には原告及び被告Aの刑事事件の捜査段階における供述及び各本人尋問の結果を検討するほかない。そこで,以下,被告Aの捜査段階における供述及び本人尋問の結果を検討する。 a 被告Aは,本件暴行の態様につき,原告が左手で被告Aの胸倉をつかみ,右手で同人の左腕をつかんだ上,胸倉をつかんでいた左手で同人を強く揺さぶり,同時に左上腕部をつかんでいた右手を強くひねった旨主張する。 b この点,前記認定のとおり,被告Aは,本件暴行事件の直後,B課長に対し,「Fに殴られた。何もしていないのにいきなりやられた,怖くて会社に来れない。」などと訴えていたのが,その後,「胸倉と腕をつかまれた。腕がしびれている。首が回らない。」などと申し立てるに至ったのであるが,この段階では腕をひねられたなどということには全く言及していない。また,その後のC病院における診察の際には,「喧嘩をして,左前腕と頚部をつかまれて体を揺すられた。」とG医師に訴え,同日a暑に被害届を出した際も,「会社の先輩にいきなり首と左腕を 全く言及していない。また,その後のC病院における診察の際には,「喧嘩をして,左前腕と頚部をつかまれて体を揺すられた。」とG医師に訴え,同日a暑に被害届を出した際も,「会社の先輩にいきなり首と左腕をつかまれて,強く3回くらい揺さぶられてしまいけがをさせられてしまいました。」と被害申告しており,いずれも腕をひねられたという点には触れていないばかりか,後になると,当初言っていた胸倉ではなく首をつかまれた旨の申告となっている。 c 被告Aが,本件暴行の態様について腕をひねられた旨主張したのは,本件暴行事件の翌日にa暑で取調べを受けたときからであり,その供述内容は,前記認定のとおり「原告が左手で被告Aの胸倉を力一杯握って引き上げ,右手で被告Aの左腕を握りしめ外側か内側のどちらかにひねり回した。」,「暴行の時間は1分間弱で,その後原告は自分から手を離した。」というものであったが,その後の検察庁での取調べの際には,暴行時間につき数秒間と訂正するに至っている。 d そして,検察庁での取調べから1年程度しか経過していないにもかかわらず,本件訴訟における被告A本人尋問の中では,「覚えてない」,「分かりません」といった答えが多く,検察庁では行った暴行を受けた状況の再現もできないなど,その供述内容は極めてあいまいである上,原告がつかんだ部位につき,当初は左肩の下辺りと供述したのが,その後手首の少し上辺りをつかまれた旨に変わるなど供述が変遷している。さらに,当該部位を代理人に示すに当たり,左腕ではなく右腕を指すなど,単に勘違いとして理解するのは困難な供述状況が見られる。 e その一方で,腕をひねられた方向につき,被告Aは,刑事事件の捜査段階においても内側か外側か分からないと供述していたのに,本件訴訟における本人尋問では,突如外側へひねられたことを思い出した旨 る。 e その一方で,腕をひねられた方向につき,被告Aは,刑事事件の捜査段階においても内側か外側か分からないと供述していたのに,本件訴訟における本人尋問では,突如外側へひねられたことを思い出した旨供述するに至った。 (イ) 上記のように,本件暴行の態様に関する被告Aの供述は,あいまいな点が多い上,変遷も激しく,真に自己の記憶に従って供述しているかは多大な疑問がある。 このような被告Aの供述状況に加え,同人が主張する本件暴行の態様は,人間の両手の動きとして不自然であること,後記イのとおり,被告Aの症状に関しては客観的所見がなく,専ら被告Aの愁訴のみによって通院治療がなされていることなどを合わせ考えると,被告Aの本件暴行の態様についての主張は到底採用できない。 イ被告Aの負った傷害の存否及びその程度について(ア) 診断書の記載と他覚的所見についてa 被告Aは,本件暴行により,腕がはれ,痛みとしびれがあった上,揺さぶられたことにより胸に赤いまだらが残ったなどと主張する。 b しかし,まず,被告Aの胸に赤いまだらが残っていたなどという事実は,C病院及びE病院の診療録上,全く記載はない。 c そして,腕の痛みやしびれについては,前記認定のとおり,G医師もH医師も,被告Aの愁訴があるのみで,他に客観的所見がない旨供述しており,診断書を発行したのも,被告Aの愁訴があったためであるとしている。 d 結局,本件暴行によって被告Aがその主張する傷害を負ったとの根拠となるのは,被告Aの愁訴のみであり,これを裏付ける客観的所見は何もないものといわなければならない。 そして,本件暴行の態様が仮に被告Aが主張するとおりのものであったとしても,4か月間もの間,痛みやしびれが持続するような傷害の結果を生じたというのは,不自然というほかなく(G医師も一,二週間で痛みやし して,本件暴行の態様が仮に被告Aが主張するとおりのものであったとしても,4か月間もの間,痛みやしびれが持続するような傷害の結果を生じたというのは,不自然というほかなく(G医師も一,二週間で痛みやしびれはなくなるものと考えた旨供述している。),被告Aの愁訴をもって同人の主張する傷害の結果を認定することはできない。 e また,被告Aは,本件暴行事件当日にC病院に行く際は,車を運転することもできないとしてB課長に連れていってもらったのに,同日,被害届を提出して帰宅する際は自分で車を運転して帰ったのであり,被告Aの愁訴自体も容易に信用することはできないというべきである。 (イ) 一方,①C病院における初診時に被告Aの指輪が外れずに看護婦に石けんを使用して外してもらった事実(乙19),②E病院における被告Aの握力検査の結果,③H医師の平成12年10月20日付け診断書(乙18)に「X線は軽度の変形を確かめ」との記載があることなどの各事実が認められるが,①については,指輪が外れなかったのが本件暴行によって指がはれていたなどの原因によるものとまで認めることはできず,②についても,握力検査の結果は測定する本人の力の加え具合でいかようにもなることはH医師が供述しているところであって,握力検査の結果を直ちにはれなどの客観的所見と同視することはできない。また,③については,H医師は,被告Aの治療経過につき前記認定のとおり,客観的所見が全くないことを前提として,被告Aに対して会社の人を連れてくるようにとまで言っているのであり,これが同医師の所見であるというべきであって,従前の診断書に何ら記載のない「X線に軽度の変形がある」旨の記載がされた診断書が,被告Aが治療を終えてから10か月程度経過した後になって突如として発行されたからといって,その記載が被告Aのいう て,従前の診断書に何ら記載のない「X線に軽度の変形がある」旨の記載がされた診断書が,被告Aが治療を終えてから10か月程度経過した後になって突如として発行されたからといって,その記載が被告Aのいう本件暴行による傷害の結果に沿う客観的所見に該当するものと認めることはできない。 ウ以上に対し,原告は,本件暴行の態様について,当初から「両手で胸倉をつかんで二,三回揺さぶった」旨供述しているところ,その態様について特段不自然な点はない。なお,原告は,a暑における取調べの際に,本件暴行の態様を詳しく覚えていないなどと供述している部分がある一方で,被告Aの左腕を握ったかもしれず,その時のけがかもしれないと,被告Aに傷害を負わせたことを認めるかのような供述をしている部分があるが(甲24),具体的にどのように握ったかについては全く触れられておらず,非常に抽象的な推測を述べたものにすぎないというべきである。そして,原告はその後一貫して「腕をひねってはいない」旨の供述をしていることや,前記被告Aの供述の変遷の不自然性などにかんがみると,本件暴行の態様は,原告が被告Aの胸倉を両手でつかんで,二,三回揺さぶったというものであり,暴行の時間は数秒間であったと認めるのが相当である。 結局,本件暴行事件の実態は,①原告の一方的な誤解(被告Aがバックがかかっていることを皆に知らせずに一人だけ本社に戻ったとの誤解)に端を発し,②原告が被告ダイコー本社駐車場において,いきなり「お前バックがかかっていたのを知っていたんだろう,何で教えなかったんだ。」と言いながら,一方的に被告Aの胸倉を両手でつかんで,二,三回揺さぶる暴行を加えた,③その暴行の時間は数秒間であり,この間,被告Aは何ら抵抗をしなかったというものであることになる。 なお,被告Aは,本件暴行の後,原告から「お前な 胸倉を両手でつかんで,二,三回揺さぶる暴行を加えた,③その暴行の時間は数秒間であり,この間,被告Aは何ら抵抗をしなかったというものであることになる。 なお,被告Aは,本件暴行の後,原告から「お前なんか盆明けには出てこれんようにしてやる。」と脅迫された旨主張するが,本件暴行の態様は上記のとおり,胸倉をつかんで揺さぶるというものであり,この後原告が更に暴行を加えたなどということもないことからすると,原告が被告Aに対して出勤できなくなるような傷害を負わせようという意思を有していたとは認められず,原告が「盆明けに出てこれんようにしてやる。」などという発言をしたとは考え難い上,上記のとおり被告Aの供述の信用性が乏しいことも考慮すると,原告が上記のような発言をしたと認めることはできない。 エそして,前記認定のとおり,本件暴行事件当時,原告と被告Aはお互いに悪感情を抱いていたことからすると,被告Aの主張する本件暴行の態様及び傷害の結果は,原告に対する悪感情及び被害者意識から,事実が誇張されたものと推認される。 オ以上からすると,前記ウの態様の暴行によって,被告Aがその主張するような傷害を負ったものとは到底認められず,このような傷害を負ったことを前提にした被告Aの治療費等の実費並びに通院慰謝料及び休業損害の請求は理由がない。 カ次に,被告Aの原告に対する本件暴行による慰謝料請求について検討すると,原告のなした本件暴行が,刑法上の暴行罪に該当する違法な行為であることは明らかである。しかし,仮に違法な行為が存在しても,損害が発生していない場合に,損害賠償請求が認められる余地がないことはいうまでもないところ,「暴行」といってもその経緯,態様,結果は様々であり,暴行を受けた者が,常に精神的苦痛を負い,それについて慰謝料の請求が認められるものではない。 が認められる余地がないことはいうまでもないところ,「暴行」といってもその経緯,態様,結果は様々であり,暴行を受けた者が,常に精神的苦痛を負い,それについて慰謝料の請求が認められるものではない。 そして,本件暴行の態様は,前記のとおり,胸倉をつかんで揺するという軽微なもので,時間的にも数秒の間に行われたものにすぎないことからすると,本件暴行が原告の一方的な誤解により故意になされた違法行為であることを考慮しても,本件暴行が,原告に損害賠償責任を負わせるほどまでの精神的苦痛を被告Aに被らせたものと直ちにいうことはできない。 また,被告Aは,本件暴行を受けた直後に,D課長代理に本件暴行事件について訴えているものの,その内容は「Fに殴られた。怖くて会社に来れない」とか,「腕がしびれている,首が回らん。」などと暴行態様及び結果につき誇張したものとなっているのであって,この時点で既に胸倉をつかまれて揺さぶられたとの本件暴行の実態を超えた内容となっていることからすると,上記D課長代理に対する訴えは,被告Aの本件暴行による精神的苦痛の存在を表しているものとはいえず,むしろ,被告Aが事実を誇張していること自体が,本件暴行のみによっては,被告Aが慰謝料の支払を必要とするような精神的苦痛を被っていないことを推認させるものということができる。 以上からすると,被告Aの本件暴行による慰謝料請求も理由がない。 (2) 争点(2)(本件解雇は,解雇権の濫用として無効か)についてア本件解雇につき,被告ダイコーは本件暴行事件が就業規則第20条の⑨ないし⑫に該当する旨主張するので,まず,本件暴行事件につき,上記解雇事由の該当性について検討する。 (ア) 就業規則第20条⑨について就業規則第20条⑨は,「懲戒解雇の処分が決定したとき。」と定めているところ,被告 主張するので,まず,本件暴行事件につき,上記解雇事由の該当性について検討する。 (ア) 就業規則第20条⑨について就業規則第20条⑨は,「懲戒解雇の処分が決定したとき。」と定めているところ,被告ダイコーは,本件暴行事件を起こしたことが,就業規則第98条②,同条⑮,同条⑱,同条⑲に該当する旨主張する。 a まず,原告は被告ダイコー本社駐車場において被告Aに対し本件暴行に及んだのであり,これについて原告は罰金10万円の刑事処分を受けたのであるから,本件暴行事件につき就業規則第98条⑮の「刑罰に触れる行為があったとき。」及び同条⑱の「会社内で賭博・暴行その他これに類する行為を行ったとき。」に該当することは明らかである。 b また,本件暴行事件は,被告ダイコーの就業時間中における従業員間の暴行事件であり,これによって被告ダイコーの職場の秩序が一定程度乱されたことは否定できず,本件暴行事件を起こしたことが同条⑲の「集団生活の秩序を乱し,著しく他人の生活に迷惑を及ぼしたとき。」に該当するということができる。 c 一方,同条②は,「正当な理由なく業務に関する上役の指示に反抗し,職場の秩序を乱したとき。」と定めており,単に職場の秩序を乱したことのみをもって同号に該当するということはできない。これに関連して,被告ダイコーは,車庫での待機時は車中で待機する旨の業務命令があり,原告はこれに反したものである旨の主張をし,被告代表者本人尋問の結果中や同人の陳述書には,これに沿う供述ないし陳述がある。しかし,原告本人尋問の結果によれば,他の従業員の車両の誘導やトレーラーの台車を切り離す手伝いなどのために現に車外へ出る実態があったことが認められるのであり,原告が車外へ出ていたことをとらえて,「上役の指示に反抗した」と評価することも相当でない(前記認定のとおり,被告A 台車を切り離す手伝いなどのために現に車外へ出る実態があったことが認められるのであり,原告が車外へ出ていたことをとらえて,「上役の指示に反抗した」と評価することも相当でない(前記認定のとおり,被告AとRは,本件暴行事件当日に3番車庫で雑談をしているが,このときには二人とも車外にいたものと推認される。)。 したがって,本件暴行事件を起こしたことをもって,同条②に該当するとは認められない。 (イ) 就業規則第20条⑩について就業規則第20条⑩は,「事業の都合により止むを得ないとき。」と定めているところ,被告ダイコーは,本件暴行事件を起こした原告を雇用し続けることは事業の運営に著しい不都合を生じると主張する。 しかしながら,被告ダイコーの主張する著しい不都合が具体的にいかなるものを指すのかは明らかではない上,本件暴行事件の態様等は前記(1)判示のとおりであり,原告と被告Aが相互に悪感情を抱いているという状態ではあるものの,本件暴行事件自体は偶発的なもので,暴行の態様も軽微なものにとどまるものであること,原告及び被告Aはいずれも運転業務に従事する者で役職に就いているというわけではなく,被告ダイコー内部での暴行事件が社外に大きな影響を与えるというような立場にあるものではないことなどからすると,原告を解雇しなければならないような被告ダイコーの事業運営上の具体的な不都合を認めることはできない。 したがって,本件暴行事件を起こしたことをもって就業規則第20条⑩に該当するとはいえない。 (ウ) 就業規則第20条⑪について就業規則第20条⑪は,「勤務成績が著しく不良と認められる場合。」と定めているところ,被告ダイコーは,勤務成績には労務提供の態様,方法をも含むとして,本件暴行事件を起こしたことは同号に該当すると主張する。 しかしながら,勤務成績に が著しく不良と認められる場合。」と定めているところ,被告ダイコーは,勤務成績には労務提供の態様,方法をも含むとして,本件暴行事件を起こしたことは同号に該当すると主張する。 しかしながら,勤務成績に労務提供の態様や方法が含まれるとしても,前記認定のとおり,B課長及びD課長代理は,原告について「仕事はまじめにやってくれる」,「仕事はまじめで責任感が強い」などと述べているのであり,本件暴行事件が前記(イ)のとおり偶発的で軽微なものであることを考慮すれば,本件暴行を起こしたという一事のみをもって勤務成績が著しく不良であるということはできない。 なお,被告ダイコーは,原告がこれまでに3件の事故を起こしたことや,トレーラーを客先に放置してタコ釣りに出掛けるなどした旨主張するが,被告ダイコーが主張する原告の事故はいずれも平成7年に起きたものであり(丙3の1ないし12,4の1ないし3,5),その時期的関係から,ここでいう勤務成績に過度に考慮するのは相当でない。また,トレーラー放置の点については,被告ダイコーは始末書の提出も求めていないのであり,この点も勤務成績の検討の際に過度に考慮されるべきものではない。 したがって,本件暴行事件を起こしたことは,就業規則第20条⑪に該当するとはいえない。 (エ) 就業規則第20条⑫について就業規則第20条⑫は,「道路運送法・運行管理上不適当と認めた場合」と定めているところ,被告ダイコーは,本件暴行事件は原告の遵法精神の欠如を示すもので,原告を雇用し続けることは運行管理上不適当であると主張する。 しかしながら,本件暴行事件の経緯や態様については,前記判示のとおりであり,本件暴行事件を起こしたことのみをとらえて,被告ダイコーの運行管理上不都合を生ずるほどの遵法精神の欠如が原告に見て取れるということはできない。 したがって, や態様については,前記判示のとおりであり,本件暴行事件を起こしたことのみをとらえて,被告ダイコーの運行管理上不都合を生ずるほどの遵法精神の欠如が原告に見て取れるということはできない。 したがって,本件暴行事件を起こしたことは,就業規則第20条⑫には該当しない。 イ解雇権の濫用について(ア) 前記アのとおり,本件解雇につき被告ダイコーが主張する解雇事由のうち,就業規則第20条⑩ないし⑫の解雇事由は認められないが,同条⑨及び第98条⑮,⑱,⑲の解雇事由の存在は認められる。しかしながら,就業規則上の解雇事由が存在する場合であっても,使用者は直ちに解雇することが許されるわけではなく,具体的事情に即して当該解雇が客観的に合理性を欠き,社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効となるというべきである。 そこで,以下,本件解雇が権利の濫用として無効であるか否かを検討する。 (イ) まず,本件暴行事件は,就業時間中に,被告ダイコー構内で,偶発的とはいえ,原告の誤解に端を発して生じたものであり,しかも,無抵抗であった被告Aに対して一方的に暴行に及んだことからすると,本件暴行に至る経緯について原告に酌むべき点は乏しい。また,被告Aと示談ができず,現在本件訴訟にまで発展するに至っている。 (ウ) しかし,本件暴行自体は,前記のとおり,胸倉をつかんで二,三回揺さぶるという程度にとどまるもので,数秒間の出来事であり,また,原告の手が被告Aから離れた後,更に暴行を加えようとしたなどという事情もないのであり,その暴行の態様は軽微なものというべきである。 (エ) また,被告Aは,前記(1)のとおり,事実を誇張して被害届を出すなどしており,前記認定の本件訴訟に至る前の交渉経緯に照らすと,これが原告・被告A間で示談に至らなかった要因の一つ べきである。 (エ) また,被告Aは,前記(1)のとおり,事実を誇張して被害届を出すなどしており,前記認定の本件訴訟に至る前の交渉経緯に照らすと,これが原告・被告A間で示談に至らなかった要因の一つであると考えられ,示談ができていないことなどの事後の経緯については原告のみを非難することは相当でない。 (オ) さらに,前記のような本件暴行の経緯及びその態様や原告は被告ダイコーに勤務する多数の運転手のうちの一人にすぎないこと,原告には本件暴行事件以前に被告ダイコーにおいて暴行事件を起こした前歴がないことを前提にすれば,本件暴行事件によって被告ダイコーの職場秩序が乱されたといっても,これを過度に評価すべきではない。そして,被告ダイコーの就業規則第98条ただし書は,「情状により降格,又は出勤停止処分とする場合もある。」と規定していることからすれば,解雇によらずとも被告ダイコーの職場秩序の回復を図ることは十分可能であるというべきである。 (カ)a 被告ダイコーは,本件暴行が,就業時間中に,業務に関連して,被告ダイコー構内で,無抵抗の被告Aに対してなされたことからすると,被告ダイコーの職場秩序に与える影響は大きく,本件解雇は正当である旨の主張をし,被告代表者もこれに沿う供述をする。しかし,前記のとおり,本件暴行事件が被告ダイコーの職場の秩序を一定程度乱すものであることは否定できないが,本件のような従業員間の暴行事件が,被告ダイコーの職場の秩序に対して与える影響は,その暴行事件に至った経緯や暴行の態様,生じた結果等によりおのずと異なるものというべきであり,被告ダイコーが主張するような抽象的な事情のみを取り上げて解雇の正当性を判断すべきではない。 b この点,被告ダイコーは,本件暴行事件への対応につき,司法判断を待ってから判断する旨L分会に対して伝えて ダイコーが主張するような抽象的な事情のみを取り上げて解雇の正当性を判断すべきではない。 b この点,被告ダイコーは,本件暴行事件への対応につき,司法判断を待ってから判断する旨L分会に対して伝えているところ,司法判断,すなわち本件暴行事件に係る刑事事件においては,原告は暴行の限度で起訴され,罰金刑に処せられているところ,これは被告Aの主張する暴行の態様,被害の程度と照らし合わせてみると著しくかい離しているものであり,被告ダイコーが,上記司法判断の具体的内容を踏まえて,本件解雇の決定に際し考慮したり,本件暴行事件の態様等につき真相を解明しようとしたりした形跡はない。かえって,I社長は,原告から事情を聞いていない段階で,a署において「今後原告を処分することを考えている」旨の供述をしており,上記「司法判断を待って」との被告ダイコーの言い分とは整合しない。 また,被告ダイコーが原告から事情聴取をしたのは,平成12年9月4日が初めてであり,それまでの間,被告ダイコー関係者らがa署で取調べを受けるなどしているのに,原告から事情を聴取しようとすることもなかったのである(原告本人,被告ダイコー代表者本人)。このような被告ダイコーの対応からすると,被告ダイコーは本件暴行の態様や結果につき,被告Aの言い分のみをうのみにしているというほかなく,その対応が偏ぱであるとの批判を免れない。 これに対し,K部長やI社長は,本件暴行事件後には盆休みがあったため,原告の事情聴取が遅れた旨証言ないし供述するが,被告ダイコーは,そもそも「当日,原告からも事情を聞こうと思ったが,同人は帰宅してしまっていた。」旨主張しているところ,本件暴行事件当日中にはL分会との打合せ会で原告と会う機会があったのであるから,いずれ事情聴取をする旨告げるなど,本件暴行事件が刑事事件になったこと は帰宅してしまっていた。」旨主張しているところ,本件暴行事件当日中にはL分会との打合せ会で原告と会う機会があったのであるから,いずれ事情聴取をする旨告げるなど,本件暴行事件が刑事事件になったことを前提に原告に話をすることは十分可能だったはずであるのにこれをしておらず,本件暴行事件が直接交渉事項に関連しないとしても,明らかに上記主張と矛盾する対応をとっているというほかない。 なお,証人Kは,上記打合せ会の前にQ書記長に対して本件暴行事件のことを電話で伝えた旨証言するが,Q書記長がこれに対して「分かりました。」とだけ返答するのみであったなどとは到底考えられず,同証人の証言をたやすく信用することはできない。 c 本件暴行事件の真相は前記(1)のとおりであるところ,被告ダイコーは,被告Aが4か月もの間通院・休業するに至ったことについて何ら疑いを持とうとせず,K部長は客観的に認められない胸の赤いまだらがあったなどと証言し,暴行の態様についても,I社長がa署において「Aは首を絞められたと報告を受けた。」などと供述するなど,本件暴行事件に対する被告ダイコーの調査,対応は余りにもずさんなものであったというほかない。 d そして,上記のように本件暴行事件の実態の解明についてずさんな対応しかしていない状況において,原告の処分を決定するに際し,被告ダイコーの幹部会では懲戒解雇か普通解雇かという話が出ただけで,他の処分について検討された形跡はない(被告ダイコー代表者本人)。 ウ以上のとおり,本件暴行事件の経緯及び暴行の態様からすると,本件暴行事件について原告に懲戒解雇事由,普通解雇事由は存在するものの,解雇によらずとも被告ダイコーの職場秩序の回復を図ることは十分可能であって,他の懲戒手段(出勤停止等)を超えて解雇まですることの合理性は乏しいというべきであり 解雇事由,普通解雇事由は存在するものの,解雇によらずとも被告ダイコーの職場秩序の回復を図ることは十分可能であって,他の懲戒手段(出勤停止等)を超えて解雇まですることの合理性は乏しいというべきであり,上記の被告ダイコーのずさんな対応をも考慮すると,本件解雇は客観的に合理的な理由を有するものとはいえず,社会通念上相当とは認められない。 したがって,本件解雇は被告ダイコーの解雇権の濫用というべきであるから,争点(3)の本件解雇の不当労働行為性について判断するまでもなく,本件解雇は無効である。 (3) 争点(4)(原告の賃金額の算定方法)についてア原告の賃金支給額につき,平成12年5月分が30万1799円,同年6月分が33万2879円,同年7月分が31万6528円であることについては当事者間に争いがない。ところで,甲32の2ないし4によれば,上記3か月の各賃金額にはそれぞれ1万円の通勤手当が含まれていることが認められるが,本件解雇がなければ原告が支給を受けられたであろう賃金額を算定する場合,実費補償的性格を有すると認められる通勤手当についてはこれを除外するのが相当である。 そうすると,通勤手当を除外した上記3か月の賃金の平均月額は30万7068円((29万1799円+32万2879円+30万6528円)÷3。円未満切り捨て)となる。 したがって,前記のとおり本件解雇が無効である以上,被告ダイコーは原告に対して1か月当たり30万7068円の賃金を支払う義務を負うと認めるのが相当である。 イこれに対し,被告ダイコーは,本件解雇の直前3か月間の給与支給額を基礎に平均賃金を算出すべきであると主張するが,本件は,本件解雇が無効である場合に,原告が支給を受けるべき賃金額が問題となっているものであり,これは,解雇予告手当等,労基法上の平均賃 の給与支給額を基礎に平均賃金を算出すべきであると主張するが,本件は,本件解雇が無効である場合に,原告が支給を受けるべき賃金額が問題となっているものであり,これは,解雇予告手当等,労基法上の平均賃金の概念を基礎に算出することとされているものではない。そして本件解雇が無効である以上,原告が支給を受ける賃金の額は,現に原告が稼動した場合に支給を受ける賃金額を前提とすべきであるから,原告が休業中であった平成12年8月ないし10月の賃金額を基礎とするのは相当でないというべきである。 ウそうすると,被告ダイコーは,原告に対し,本件解雇がされた月である平成12年11月から本件口頭弁論終結時までに支給日(毎月15日)が到来していた平成15年1月までの27か月分の賃金829万0836円(30万7068円×27)及び同年2月から本判決確定に至るまで毎月15日限り30万7068円の割合による賃金の支払義務を負うというべきである。 しかし,これを超えて本判決確定後の賃金の支払を求める請求については,あらかじめその請求をする必要があると認めるに足りる証拠はなく,訴えの利益を欠くものといわざるを得ない。 (4) 争点(5)(被告らは,原告に対して,共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うか)についてア原告は,被告ダイコーと被告Aが,共謀して,本件暴行事件を殊更に重大事件に仕立て上げ,被告Aの過大な損害賠償請求や本件解雇に至ったものであり,これは共同不法行為に該当する旨主張する。 イそこで,まず,被告Aの処罰要求について検討するに,本件暴行事件の態様は,前記(1)のとおりであるところ,被告Aがこれを傷害事件として被害届をなしたことは,原告に対する不法行為を構成するとまではいえないというべきである。 すなわち,何ら犯罪が存在しないのに,架空の犯罪事実を申 のとおりであるところ,被告Aがこれを傷害事件として被害届をなしたことは,原告に対する不法行為を構成するとまではいえないというべきである。 すなわち,何ら犯罪が存在しないのに,架空の犯罪事実を申告する場合や,真犯人が別に存在することを知り又は知らないことにつき過失があるのに,真犯人ではない者を告訴する場合などは,当該被害届をなす行為自体が名誉毀損等を構成する余地があるが,現に犯罪行為が存在する場合に,一般に被害者が被害状況を誇大化して被害届をなす傾向があることは否定できないところ,本件においては,被告Aが被害届出をなす基礎となった暴行は現に存在しているのであり,これについて被告Aが被害届をすること自体は,被害者の対応として否定されるべきものではない。そして,被告Aの被害届が,暴行態様及び被害の程度につき誇張したものであることは前記(1)のとおりであるが,被告Aが被害の程度等につき誇張したことにより,原告が本来受けるべき処罰と比して特に過大な処罰を受けたなどという事情はなく,刑事処罰は原告の主張する暴行の態様を前提とするものであることも合わせ考えれば,被告Aが被害届をなしたことが,原告に対する不法行為を構成するものとはいえない。 これに対し,原告は本件暴行事件が刑事事件となること自体が不当である趣旨の主張をするが,本件暴行が,軽微とはいえ刑法上の暴行として処罰の対象となることは明らかであり,原告は本件暴行事件について刑事処罰を受けたことを真しに受け止める必要があるといわねばならない。 ウまた,原告は,被告Aが不必要な治療を受け続け,損害賠償請求の拡大化を図ったことが不法行為である旨主張する。 しかし,被告Aが過大な損害賠償請求をしたとしても,原告が当該損害賠償責任を負わないということを超えて,逆に被告Aに対して損害賠償請求をな 請求の拡大化を図ったことが不法行為である旨主張する。 しかし,被告Aが過大な損害賠償請求をしたとしても,原告が当該損害賠償責任を負わないということを超えて,逆に被告Aに対して損害賠償請求をなし得るほどの精神的損害を被ったものとはいい難い。 原告は,被告ダイコーが被告Aに対して,告訴をしょうようし,また,治療費や治療期間中の生活費を貸し付けるなどして,被告Aの告訴,治療の遷延をほう助したと主張するが,本件暴行事件後被告Aが被害届をなすまでの間に,被告ダイコーが被告Aに告訴あるいは被害届を促したとの事実を認めるに足りる証拠はない上,被告Aが告訴をすること自体や治療が遷延したことについて,原告が損害賠償請求をなし得るほどの精神的損害を被ったものといえないことは上記のとおりであるから,いずれにしても被告ダイコーが被告Aの告訴等をほう助したことが共同不法行為を構成する旨の主張も理由がない。 エ原告は,本件解雇は被告ダイコーの不当労働行為であり,これによって精神的苦痛を被ったと主張するが,本件解雇によって生じた損害は,原告の丙事件における地位確認請求及び賃金支払請求が認容されれば,これをもってすべて填補されているというべきであるから,原告の被告ダイコーに対する本件解雇についての損害賠償請求には理由がない。 さらに,原告は,被告Aが本件解雇につき被告ダイコーをほう助した旨の主張をするが,被告Aが被害届をなしたことや治療期間を遷延させたことにつき,原告に対する不法行為を構成するものではないことは前記のとおりであり,また,仮に被告Aが本件解雇につき被告ダイコーをほう助したとしても,上記のとおり,本件解雇によって原告に生じた損害は,地位確認請求及び賃金請求が認容されれば,これをもってすべて填補されているというべきであるから,この点に関する原 き被告ダイコーをほう助したとしても,上記のとおり,本件解雇によって原告に生じた損害は,地位確認請求及び賃金請求が認容されれば,これをもってすべて填補されているというべきであるから,この点に関する原告の請求も理由がない。 (5) 争点(6)(被告ダイコーは,原告に対して,不法行為に基づく損害賠償責任を負うか)についてア原告は,被告ダイコーから配車差別を受けたことにより,精神的苦痛を被ったと主張し,50万円の慰謝料の支払を求めているが,まず,原告の主張によれば,配車差別によって生じた賃金格差は,1か月当たり9316円であるというのであり,これは,原告が主張する原告の各月の賃金支給額等の変動の幅(甲73別紙2によれば,職能手当や生産時間外手当の額でさえ,L分会結成前の10か月間で上記9316円を超える変動の幅がある。)に照らすと,配車差別による格差であるとまで認めることはできず,ほかに配車差別があったことを認めるに足りる証拠はない。 イまた,仮に配車差別がなされた結果,賃金に格差が生じたというのであれば,現に生じた格差について賃金支払請求ないし損害賠償請求をするのならば格別,実損を超えて,上記の程度の賃金格差が生じたという外形的事実のみをもって,原告に精神的苦痛を生ぜしめるとまではいえない。 ウしたがって,原告が配車差別について慰謝料の支払を求める点は理由がない。 3 結論以上の次第で,原告の請求は,被告ダイコーに対して雇用契約上の権利を有することの確認を求め,被告ダイコーのなした解雇の意思表示後本判決確定に至るまでの賃金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,被告Aの請求は理由がないから棄却 度で理由があるからこれを認容し,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,被告Aの請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官橋本昌純 裁判官夏目明徳裁判官大橋弘治別表 │年月 │原告の主張 │被告ダイコーの主張 ││平成10年10月│4回 │4回 ││同年11月 │ 3回 │ 3回 ││同年12月 │ 6回 │ 6回 ││平成11年 1月│ 5回 │ 5回 ││同年 2月 │ 3回 │ 3回 ││同年 3月 │ 3回 │ 3回 ││同年 4月 │ 4回 │ 4回 ││同年 5月 │ 2回 │ ││同年 4月 │ 4回 │ 4回 ││同年 5月 │ 2回 │ 2回 ││同年 6月 │ 4回 │ 4回 ││同年 7月 │ 4回 │ 4回 ││同年 8月 │ 3回 │ 3回 ││同年 9月 │ 3回 │ 3回 ││同年10月 │ 1回 │ 1回 ││同年11月 │ 0回 │ 1回 ││同年12月 │ 4回 │ 4回 ││平成12年 1月│ 3回 │ 3回 ││同年 2月 │ 4回 │ 4回 ││同年 3月 │ 2回 │ 2回 ││同年 4月 │ 3回 │ 3回 ││同年 5月 │ 2回 │ │同年 4月 │ 3回 │ 3回 ││同年 5月 │ 2回 │ 2回 ││同年 6月 │ 3回 │ 3回 ││同年 7月 │ 2回 │ 2回 │

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