【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 第一 当事者の申立 一 控訴人 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却
主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 第一 当事者の申立 一 控訴人 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二 被控訴人 主文同旨 第二 当事者の主張 次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからここにこれを引用する。 (当審における控訴人の主張) 1 原判決は、公務起因性が認められるには、公務と発症等との間に相当因果関 係が認められることを要するとしながら、「即ち、公務なければ疾病、死亡がない といえる関係、または、それが同種の結果発生の客観的可能性を一般的に高める事 情にあると判断されること」と判旨している。これは条件関係があれば公務起因性 を認めるとするもので、相当因果関係の理論にはそぐわない理論である。 また、相対的有力原因説が正当であることは、原審において主張したとおりであ るところ、これによると、本件におけるように病的素因、基礎疾病が存する場合に 公務起因性を肯定するには、少なくとも病的素因、基礎疾病が公務による影響の加 わる以前には脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症するような自然的増悪の状態 になかったことが認定されなければならないのに、原判決はこのような認定、判断 をしないで公務起因性を肯定している点で不当である。 このように、原判決は相当因果関係の内容に関する点で不十分な判断をしてい る。 2 脳動脈瘤は、はっきりした誘因なく、自然に日常の血圧、血流の負荷等によ って成長して、時、所を選ばずいつでも破裂するものであり、脳動脈瘤の成長、破 裂に過労や心理的負荷(ストレス)の継続が影響するとの見解は、最新の医学的経 験則によっても肯定されてはいないのである。しかるに、原判決は、これらの医学 ずいつでも破裂するものであり、脳動脈瘤の成長、破 裂に過労や心理的負荷(ストレス)の継続が影響するとの見解は、最新の医学的経 験則によっても肯定されてはいないのである。しかるに、原判決は、これらの医学 的経験則あるいは見解の対立を全く無視して、一方的に、公務遂行による過労及び 心理的負荷(ストレス)によって脳動脈瘤破裂を生じたと認定しており、この証明 に関する点においても不当である。 3 脳血管疾患の公務上外認定については、労働者災害補償保険に関しては、昭 和六二年一〇月二六日付基発第六二〇号労働省労働基準局長通達「脳血管疾患及び 虚血性疾患等の認定基準について」が出され、また、国家公務員災害補償法に関し ては、同年同月二二日付人事院事務総局職員局長通知「脳血管疾患及び虚血性心疾 患等の公務上の災害の認定について」が出されている。 これらの認定基準は、脳血管疾患が公務上の災害と認定されるには次の要件を充 たすものでなければならないとしている。 「1」 次のイ又はロの公務による明かな過重負荷を発症前に受けたことが認め られること。 イ 職務に関連して発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に 遭遇したこと。 ロ 日常の職務に比較して、特に質的に又は量的に過重な職務に従事したこと。 「2」 過重な負荷を受けてから症状の出現までの時間的経過が、医学上妥当な ものであること。 この認定基準は、継続的な心理的負荷(ストレス)及び一般的な疲労の蓄積につ いては、これを基準として取り上げていない。この認定基準に合致しない態様によ る脳血管疾患の発症について公務起因性を肯定するためには、医学経験則上納得し 得るに足りる特別事情が個別的に認定されなければならないというべきである。 しかるに、原判決は、発症直前にも、また発症前一週間以内にも過重負荷の認め られない本 を肯定するためには、医学経験則上納得し 得るに足りる特別事情が個別的に認定されなければならないというべきである。 しかるに、原判決は、発症直前にも、また発症前一週間以内にも過重負荷の認め られない本件について、何等医学経験則上納得し得るに足りる特別事情を認定する ことなく、公務上と判断しているのであって、この新しい認定基準によって要求さ れる認定、判断の方法に関する配慮を欠いている。 第三 証拠関係(省略) 理 由 一 当裁判所も被控訴人の本訴請求は理由があると考えるところ、その理由は、 次に訂正、付加するほか、原判決理由説示のとおりであるからここにこれを引用す る。 当審における弁論及び証拠調の結果によっても、右引用に係る原判決の認定、判 断を変更する必要を見出さない。 (原判決の訂正) 1 原判決一〇枚目裏一行目の行末の「こ」から同三行目の「事情にある」まで を削除する。 2 原判決一二枚目表一一行目の「課題として、」の次に「「」を挿入し、同裏 一〇行目の「成立に争いのない」の次に「甲第四〇号証、」を挿入し、同一一行目 の「第四〇号証、」を削除する。 3 原判決一三枚目表二行目の「形成」を削除する。 4 原判決一九枚目表二行目の「証人A」を「証人A」と訂正し、同五行目の 「甲」の次に「第五号証、第七号証、」を、同五行目の「第二八号証、」の次に 「第二九号証(ただし、書込み部分を除く。)、」をそれぞれ挿入し、同七行目の 「第五号証、第七号証、」を削除し、同七行目の「第三三号証、」の次に「弁論の 全趣旨により成立が認められる甲第三五号証、」を挿入する。 5 原判決二四枚目裏八行目の「九」を「一五」に改める。 6 原判決二五枚目裏六行目の「一二時間三〇分」を「一一時間」と訂正する。 7 原判決二六枚目表四行目の「三時間三〇分」を 、」を挿入する。 5 原判決二四枚目裏八行目の「九」を「一五」に改める。 6 原判決二五枚目裏六行目の「一二時間三〇分」を「一一時間」と訂正する。 7 原判決二六枚目表四行目の「三時間三〇分」を「三時間」と訂正し、同裏一 一行目の「八、」の次に「九、」を挿入する。 (付加する理由) 1 地公災法三一条所定の公務起因性を肯定するには、死亡、負傷又は疾病と公 務との間に相当因果関係があることを必要とし、その証明の責任はこれを主張する 被控訴人にあり、その証明の程度は高度の蓋然性であることを必要としかつこれを もって足りることは、原判決の判示のとおりである。 <要旨>そして、右の相当因果関係の内容につき、本件に即していえば、それは、 自然的因果関係の存在を前提</要旨>として、使用者である地方公共団体において、 予見し又は客観的にみて予見しえた公務に関する事実によって所属職員の疾病又は 死亡が生じたものと認められることである。原判決の判示に、控訴人が指摘するよ うな条件説をとっているのではないかと疑わせる表現があるが、その趣旨及びこれ に続く具体的な事実の認定、判断を総合して検討すると、原判決も右と同旨の判示 をしているものと解することができる。 右の相当因果関係の判断に際して、基礎疾病と公務とが競合する事案について は、控訴人は公務が相対的に有力な原因であるを要すると主張し、被控訴人は共働 原因をもって足りると主張するが、その主張する基準は相当因果関係の内容を前段 記載のとおり理解したうえ、その一応の基準として位置づけられるが、それは前段 記載の相当因果関係の範囲にある限り正当であるにすぎない。 以上の理由により、当審における控訴人の主張1は採用し難い。 2 脳動脈瘤発生及び破裂の機序については、前記引用に係る原判決一二枚目裏 九行目から同一四枚目表二行目まで る限り正当であるにすぎない。 以上の理由により、当審における控訴人の主張1は採用し難い。 2 脳動脈瘤発生及び破裂の機序については、前記引用に係る原判決一二枚目裏 九行目から同一四枚目表二行目まで記載のとおりに認定できるところ、これによる と、脳動脈瘤の破裂が外的なストレスによって起こることもありうるものといわな ければならず、原判決はこの事実を前提に判断しているのであって、証明の原則に 反するところはない。それゆえ、当審における控訴人の主張2は採用し難い。 3 控訴人主張の内容を持った新しい認定基準がその主張の日に通知されている ことは成立に争いのない乙第二六、第二七号証により認められるけれども、これら の新しい認定基準は行政上の基準とはいえ、民事裁判においても重要な参考とすべ きものではあるが、これによって、民事裁判における証明の原則が変更されるもの でないこと言うまでもない。 原判決は前記1記載の相当因果関係の内容及び証明の原則に従って認定判断して いるのであり、なんら不当な点はない。 したがって、当審における控訴人の主張 3も採用の限りでない。 二 以上の次第で、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないの でこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法九五条、 八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 柳澤千昭 裁判官 東孝行 裁判官 竹中邦夫)
▼ クリックして全文を表示