昭和30(う)535 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和30年11月8日 仙台高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役壱年に処する。      押収に係るレンコート一枚(証第一号)コーモリ傘一本(証第二号)は いずれもこれを没収する。 押収に係る開襟長

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判決文本文3,456 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役壱年に処する。 押収に係るレンコート一枚(証第一号)コーモリ傘一本(証第二号)はいずれもこれを没収する。 押収に係る開襟長袖シヤツ二枚(託第三、四号)は被害者Aに還付する。 原審又び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 本件公訴事実中第二の(2)及び第二の(3)の各窃盗未遂の事実はいずれも被告人は無罪。 理由 弁護人遠藤周蔵の陳述した控訴趣意は、記録中の同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。 控訴趣意第一について。 原判決挙示の証拠中、原判示第九の事実に関するものは、被告人の原審公判廷における供述、被告人の司法警察員に対する昭和三十年七月十九日附供述調書、B及びCの各司法警察員に対する供述調書だけであるが、これらの証拠を綜合すると、被告人が原判示六月十五日原判示C方に行つたのは、同人に嫁している被告人の叔母Bに会うためであること、被告人は同家縁側に行つて腰を下して休んでいたが、たまたまCの母が附近を通つたので、当時被告人は拘置所を出たばかりで、顔を見られることを恥じ、見られることを避けるんめ、縁側に上り、そこにおいてあつた簟笥の附近に行き、しばらくそこにいたが、そのうちに、人に騒がれて逃去つたものであること、が明かである。尤も、被告人は前記司法警察員に対する供述調書で、右の如くC方の縁側に上つてから後物を盗む考えになり(その前はその考えがなかつた)、その後前記の如く逃去るまで暫時の間、その考えを実行すべく様子を窺つていた旨供述しているが、それとて、盗む考えを実行すべく何等か特段の行為に出たというのではなく、隣室の人の様子などに注意して窃取の機会を窺つていたというに過ぎないのである 考えを実行すべく様子を窺つていた旨供述しているが、それとて、盗む考えを実行すべく何等か特段の行為に出たというのではなく、隣室の人の様子などに注意して窃取の機会を窺つていたというに過ぎないのである(右供述調書中には「(家)の中に入つて箪笥の処まで近付き、盗む心算でしたが、人通りも多く又隣りの部屋で主人と妻が話して仲々其の部屋から出そうもなく、前に申上げた通り結局盗む余裕がなく、そのうち奥さんに発見されたので逃出したのであります」との供述があるが、記録によれば、簟笥は縁側に置いてあつたのであり、このことを併せ考え、右供述中「簟笥の処まで近付き」という部分は、前後の趣旨不明で、少くとも、簟笥の前に行く迄に既に盗む考えになり、それを実行すべく、簟笥の処まで近付いたということには解されない。)。されば、原判決挙示の証拠を以ては、被告人は窃盗の決意を以て簟笥の附近に居り、その決意実行の機を窺つていたということを認め得るに止まり、窃盗の決意をした後、れを実現すべく簟笥に近ずいたということは認め得ず、その他何等か他人の財物の事実上の支配を侵すにつき密接な行為をしたもの、即ち窃盗の事行に着手したものであることは之を認めることができないのである。果して然らば、原判決は窃盗の着手に関する法律解釈を誤つて、既に上記の程度でも窃盗着手があるものと解したか、そうでなければ証拠理由不備の違法をおかしたもので、前者とすれば、その違法が判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は結局理由がある。 控訴趣意第二について。 <要旨>窃盗犯人が、その窃取した現金を以て買受けた物は、犯罪行為に因つて得た物の対価として得た物に外なら</要旨>ず、それが刑法第十九条第一項第四号第三号に該当し、同条第二項の要件を備える場合には、之を没収し得べきことは疑 取した現金を以て買受けた物は、犯罪行為に因つて得た物の対価として得た物に外なら</要旨>ず、それが刑法第十九条第一項第四号第三号に該当し、同条第二項の要件を備える場合には、之を没収し得べきことは疑いがない。論旨は窃盗の賍物が金銭以外の物である場合に犯人がその対価として得た物であるならば格別、右賍物が金銭である場合、之を以て買受けた物は、右法条第一項第四号の物に入らないという見解かとも推察されるが、賍物が金銭であると、その他の物であるとによつて、右の点を区別して解釈すべき根拠は何等見出されない。論旨は理由がない。 次に職権を以て調査すると、原判決は判示第十において、被告人が昭和三十年七月二日頃の午前三時頃窃盗の目的で八戸市a町D小字校講堂内等において金品を物色中当直員に発見されたためその目的を逐げなかつた窃盗未遂の事実を認定し、その証拠としてE提出の答申書(記録第九二丁)と、被告人の司法警察賃(記録第一五五丁)並検察官(記録第一八三丁)に対する各供述調書を援用しているのであるが、右各証拠に徴すると、被告人が右原判示日時場所に窃盗の目的でその南側はずれの窓口より侵入し、職員室の方え廊下づたいに曲り角附近まで来たとき人の来る気配を感じ、侵入口より逃げた事実が認められるに過ぎないのであつて、この程度を以てはまだ窃盗の実行に着手したものとは認められない。然らば原判決はこの点においても原判示第九の事実について前段で説示したと同様の違法があるもので破棄を免れない。 そこで弁護人の量刑不当の控訴趣意に対する判断は、後記自判の際示されるので、ここにこれを省略し、刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄し、同法第四百条但書により当裁判所において更に次のとおり判決することとする。 (罪となるべき事実及び証拠の標目)当裁判所の認定した事実は、原判示事 し、刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄し、同法第四百条但書により当裁判所において更に次のとおり判決することとする。 (罪となるべき事実及び証拠の標目)当裁判所の認定した事実は、原判示事実中、第九及び第十の事実を全部削除したほか全部原判示の事実と同じであり、またこれに対する証拠も、右削除した事実に関する証拠(B、Cの各司法警察員に対する供述調書、E提出の答申書、及び被告人の司法警察員並びに検察官に対する各供述調書中右に関する部分)を除くほか、すべて原判決摘録の証拠と同じであるから、いずれもこれを引用する。 なお被告人は昭和三十年八月二十五日仙台高等裁判所で窃盗罪により懲役一年の判決の言渡を受け、該判決は同年九月九日確定したもので、右の事実は被告人に対する前科調書によりこれを認める。 (法令の適用)被告人の原判示所為はいずれも各刑法第二百三十五条(同第八の点は外に同法第二百四十三条)に各該当するところ、いずれも前記確定判決の罪と同法第四十五条後段の併合罪であるから、同法第五十条によりまだ裁判を経ない右各罪につき処断すべく、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条、第十条により犯情の最も重いと認める原判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役一年に処し、押収に係る主文第三項掲記の物件はいずれも原判示第七の犯罪行為に因り得た金員の対価として得た物で被告人以外の者に属しない物であるから、同法第十九条第一項第四号第三号第二項に依りこれを没収し、同第四項掲記の物件は、原判示第一の犯罪の賍物たる生地で仕立てた物で未だその同一性を失わないものと認め、かつ被害者に還付すべき理由が明白であるから、刑事訴訟法第三百四十七条により被害者Aに還付し、原審及び当審における訴訟費用は、同法第百八十一条第一項本文により で未だその同一性を失わないものと認め、かつ被害者に還付すべき理由が明白であるから、刑事訴訟法第三百四十七条により被害者Aに還付し、原審及び当審における訴訟費用は、同法第百八十一条第一項本文により全部被告人をして負担せしむべきものとする。 なお本件公訴事実第二の(2)(原判示第九)の、被告人が昭和三十年六月十五日青森県三戸郡b村大字c字de番地C方に於て窃盗の目的で金品を物色中、Bに発見されたためその目的を遂げなかつた、第二の(3)(原判示第十)の同年七月二日頃窃盗の目的で八戸市a町D小学校講堂内で金品を物色中当直員に発見されたためその目的を遂げなかつたとの各事実は、いずれもこれを認める証明がないので、同法第三百三十六条を適用し無罪の言渡をなすべきものである。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官鈴木禎次郎裁判官細野幸雄裁判官杉本正雄)

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