1 令和5年7月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第11286号 損害賠償請求事件(第1事件)令和4年(ワ)第9132号 債務不存在確認請求事件(第2事件)口頭弁論終結日 令和5年5月15日判 決5 第1事件原告兼第2事件被告 株式会社ボスケシリコン (以下「原告」という。) 10第2事件被告株式会社KIT (以下「第2事件被告」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士岡本成史同児谷創記15 第1事件被告兼第2事件原告 株式会社マルカン (以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士上田裕康20同下尾裕主 文1 被告は、原告に対し、1億7325万円及びこれに対する令和3年11月11日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告の原告及び第2事件被告に対する請求をいずれも棄却する。 253 訴訟費用は、第1事件及び第2事件を通じて、すべて被告の負担とする。 2 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求1 第1事件主文第1項同旨52 第2事件(1) 被告と第2事件被告間において、被告と原告及び第2事件被告との間の令和2年6月10日付け知的財産実施許諾契約(人用)に基づく被告の第2事件被告に対する補償金債務1920万円が存在しないことを確認する。 (2) 被告と原告間において、被告と原告との間の令和2年6月10日付け商品売10買契約(人用サプリメント)に基づく被告の原告に対する支払債務1920万円が存在しないことを確認する。 第2 事案の概要1 訴訟物(1 告と原告との間の令和2年6月10日付け商品売10買契約(人用サプリメント)に基づく被告の原告に対する支払債務1920万円が存在しないことを確認する。 第2 事案の概要1 訴訟物(1) 第1事件15原告の、被告に対する、原告、第2事件被告(以下、両名を併せて「原告ら」という。)、被告及びレナトスジャパン株式会社(以下「レナトス」という。)との4者間で締結した知的財産実施許諾契約(後記甲1契約)に基づく未達補償金1億7325万円及びこれに対する支払期日の翌日である令和3年11月11日から支払済みまで民法(以下、特段明記しない限り、平成29年法律第2044号による改正後のものをいう。)所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払請求(2) 第2事件被告の、ア 第2事件被告に対する、被告、レナトス及び原告らとの4者間で締結した25人用サプリメントの製造に関する知的財産実施許諾契約(後記乙3契約)に3 おける、ケイ素製剤等の最低購入計画量が未達となった場合に負うべき未達補償金支払債務1920万円の不存在確認請求イ 原告に対する、原告との間で締結した人用サプリメントの商品売買契約(後記乙4契約)における、乙3契約所定の最低購入計画量が未達となった場合の上記未達補償金と同額の金員の支払債務の不存在確認請求52 前提事実(争いのない事実及び証拠〔各枝番を含む。なお、証拠番号は明記しないものは第1事件のものである。〕により容易に認定できる事実)(1) 当事者等ア 原告原告は、水素発生用材料、及びそれを含有する医薬品、医薬部外品、サプ10リメント、健康食品、化粧品、ペットフード、飼料、肥料等の製造、開発、販売、企画、マーケティング及びそれらに関する無体財産権及びノウハウの 用材料、及びそれを含有する医薬品、医薬部外品、サプ10リメント、健康食品、化粧品、ペットフード、飼料、肥料等の製造、開発、販売、企画、マーケティング及びそれらに関する無体財産権及びノウハウの取得、貸与、使用許諾、寄付、コンサルティング等を目的とする株式会社である。 イ 第2事件被告15第2事件被告は、半導体、セラミック、その他の固体に対する表面化学処理の研究開発並びにその表面化学処理技術を応用した製品の製造、販売、保守管理等を目的とする株式会社である。 ウ 被告被告は、愛玩動物用の用品の製造及び輸出入並びに販売等を目的とする株20式会社である。 エ レナトスレナトスは、人及び動物を対象とした用品・飲料品・食品の輸出入、製造及び販売を目的とする株式会社であり、被告のグループ会社である。 (2) 本件特許25ア 第2事件被告代表者と第2事件被告は、発明の名称を「固形製剤、固形製4 剤の製造方法及び水素発生方法」とする特許(特許第6467071号。以下「本件特許A」という。また、本件特許Aの発明を「本件特許発明A」という。)に係る特許権を共有している(乙1の1)。 イ 第2事件被告代表者と第2事件被告は、発明の名称を「経口製剤、飼料、サプリメント、食品添加物、健康食品」とする特許(特許第65086645号。以下「本件特許B」といい、本件特許Aと総称して「本件各特許」という。また、本件特許Bの発明を「本件特許発明B」といい、本件特許発明Aと総称して「本件各特許発明」という。)に係る特許権を共有している(乙1の2)。 (3) 甲1契約の締結10●(省略)●(4) 甲2契約の締結●(省略)●(5) 乙3契約の締結●(省略)●15(6) 乙 を共有している(乙1の2)。 (3) 甲1契約の締結10●(省略)●(4) 甲2契約の締結●(省略)●(5) 乙3契約の締結●(省略)●15(6) 乙4契約の締結●(省略)●(7) 被告の購入状況ア 被告は、甲1契約に基づき、●(省略)●の間にシリコン製剤●(省略)●(甲1契約所定の最低計画購入量)を購入したが、以後、契約所定の「220年目」に相当する間に、本件物質及び本件製品を全く購入しなかった。 イ 被告は、乙3契約及び乙4契約に基づき、●(省略)●のシリコン製剤を購入したが、その後、本件口頭弁論終結までに各契約所定の「3年目」の最低計画購入量●(省略)●の本件物質及び本件製品を購入しておらず、後記のとおり、その意思がないことを明らかにしている。 25(8) 原告の支払の催告、債権存在の主張等(確認の利益)5 ア ●(省略)●これに対し、被告は、原告に対し、答弁書をもって、本件補償条項1は錯誤により無効であると主張するともに、事情変更の法理の適用により、本件補償条項1を解除する旨の意思表示をし、同答弁書は令和4年1月27日に原告に到達した。 5イ 被告は、令和4年10月20日付け第2事件訴状をもって、原告らに対し、錯誤を理由として本件補償条項2及び本件保証条項を取り消す旨の意思表示をするとともに、乙3契約及び乙4契約所定の「3年目」の●(省略)●を購入しない旨を原告らに通知し、同訴状は同年11月4日、原告らに到達した。 10これに対し、原告らは、本件補償条項2及び本件保証条項の合意に係る意思表示に錯誤はなく、購入未達分に関する乙3契約に基づく未達補償金支払債務及び乙4契約に基づく支払保証債務が存在すると主張している。 3 争点 らは、本件補償条項2及び本件保証条項の合意に係る意思表示に錯誤はなく、購入未達分に関する乙3契約に基づく未達補償金支払債務及び乙4契約に基づく支払保証債務が存在すると主張している。 3 争点(1) 本件補償条項1の合意において、被告に錯誤があったか(争点1)15(2) 本件補償条項1につき、事情変更の法理により被告が補償金の支払を免れるか(争点2)(3) 本件補償条項2及び本件保証条項の合意において、被告に錯誤があったか(争点3)(なお、被告は、当初、錯誤無効、解除又は錯誤取消しの各対象を甲1契約、乙203契約及び乙4契約の全体である旨の主張をしていたが、その後、上記各対象を本件補償条項1、本件補償条項2及び本件保証条項であると主張した。)第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(本件補償条項1の合意において、被告に錯誤があったか)について【被告の主張】25(1) 腸内のpH値及び本件物質の効能に関する要素の錯誤について6 被告は、甲1契約の締結前、原告らから、令和元年5月15日付け資料を示されるなどして、本件物質が人体に取り込まれると腸内で水素が発生し、人体に有害なヒドロキシルラジカル(活性酸素の一種)を消去する旨の説明を受け、人及び犬猫を中心とする動物において同様の効果が得られるとの合理的な期待を抱いた。そして、被告は、原告らからの説明もあって、人の腸内のpH値5が「7.5~8.9程度のアルカリ域」にあってペット及び人の腸内環境及び腸内における水素発生機序が概ね同様であることを前提に、これらの腸内のpH値の基準値を8.3であると解した上で、当該腸内環境において本件物質が水素を持続的に発生させ、発生した水素がヒドロキシルラジカルを除去し、ペットや人の健康促進に資することになると これらの腸内のpH値の基準値を8.3であると解した上で、当該腸内環境において本件物質が水素を持続的に発生させ、発生した水素がヒドロキシルラジカルを除去し、ペットや人の健康促進に資することになると考え、原告らに当該考えを示した上10で、甲1契約を締結し、本件物質を用いたペットフード及びペット用サプリメントを製造販売した。 しかし、本件訴訟を通じて、実際の腸内のpH値は、「pH7.5~8.9程度のアルカリ域」にはなく、ペット(犬猫)が最大でもpH7.7弱(大部分はpH7.5より酸性寄り)、人が最大でもpH7.5程度(大部分はpH7. 150より酸性域)にあり、シリコン製剤を摂取したペット又は人の体内において持続的に水素が発生することはなく、ヒドロキシルラジカルが除去されることはない。 被告は、このような実際の腸内のpH値や本件物質の効能について認識していれば、甲1契約を締結することはなかったから、甲1契約の締結、ひいては、20本件補償条項1の合意について、被告に錯誤があった。 そして、シリコン製剤を用いた被告が製造販売した商品は健康食品であるところ、シリコン製剤が体内で持続的に水素を発生させ、発生した水素がヒドロキシルラジカルを除去し、これによりペット及び人の健康を増進させることは、健康食品としての最低限の機能であり、消費者への訴求力の観点からも不可欠25の前提である。また、仮に、水素量に関係なく、シリコン製剤がヒドロキシル7 ラジカルを消滅する効果があるとしても、その機序を説明することはできない以上、消費者において、機序の説明のない健康食品を購入する動機はない。そうすると、上記錯誤は要素の錯誤にあたる。 (2) 海外販売に関する要素の錯誤について被告は、シリコン製剤の購入予定量につき、当初は年間5トン程度と 序の説明のない健康食品を購入する動機はない。そうすると、上記錯誤は要素の錯誤にあたる。 (2) 海外販売に関する要素の錯誤について被告は、シリコン製剤の購入予定量につき、当初は年間5トン程度と想定し5ていたが、原告らから、平成30年8月20日に少なくとも3年間、年間10トン必要であると説明され、その後、第2事件被告代表者からシリコン製剤を使用した製品の海外向け販売に賛成するとの意向を示され、本格的に海外販売について検討を始めた。被告は、平成31年1月29日、第2事件被告代表者に対して、シリコン製剤の独占販売権の付与を求めたところ、独占販売権付与10には4年間で100トン以上の購入数量が必要であるとの返事を受けた。そして、被告は、はるかに市場規模の大きい海外市場での販売を踏まえると最終的に100トンを消化できると判断し、購入予定量を100トン以上とすることを前提とした上で、第2事件被告代表者に対し、平成31年2月26日付けで「海外向けペット市場」への「輸出」を明記した書面を提示した。また、被告15は、同年4月26日に原告らから提示された「知的財産実施許諾契約書(案)」中の「海外における実施権は、別途契約を行う」との記載につき、海外販売が許容されることの確認を求めている。 他方、原告らは、甲1契約の締結直前には、海外販売を可能とする提案(本件物質の添加物を減じる提案)をし、第2事件被告代表者は、令和元年9月2206日には、レナトスによるシリコン製剤含有商品の海外展開を楽しみにしているとの意向を示している。 すなわち、原告らと被告は、本件物質又はこれを利用した製品を海外向けにも販売することを前提として、甲1契約所定の最低計画購入量を合意した。 しかし、甲1契約締結後、被告において、米国及び中国向けの販売の検討を 告らと被告は、本件物質又はこれを利用した製品を海外向けにも販売することを前提として、甲1契約所定の最低計画購入量を合意した。 しかし、甲1契約締結後、被告において、米国及び中国向けの販売の検討を25始めると、原告ら側の事情により米国向け輸出に必要なアメリカ食品医薬品局8 の安全基準合格証の取得手続を進められず、原告らが中国向け輸出において候補となった商社からの本件物質の「製造工程」の開示要求に応じなかったことなどから、本件物質等を上記二国へ輸出できないことが判明し、専ら原告ら側の都合により上記最低計画購入量を海外向け販売で費消できない状況となった。 5そうすると、甲1契約所定の最低計画購入数量の合意の前提に重大な錯誤があり、同数量を前提とする本件補償条項1の合意についても要素の錯誤がある。 【原告の主張】(1) 腸内環境及び本件物質の効能に関する要素の錯誤についてア ●(省略)●10よって、同契約は、腸内における水素発生量(腸内pH値に関する前提)等及び本件物質の効能等をいずれも保証したものではなく、「動物実験から得られた効果」を前提にした上で締結されたものである。 イ また、被告は、平成30年7月30日及び同年9月12日に原告らからシリコン製剤の提供を受け、被告代表者の飼育する犬への使用や動物病院の複15数の犬猫による臨床試験を実施するなどした結果、●(省略)●ウ なお、本件物質による酸化ストレス低減の機序については、現在も研究が継続されており、その解明には数多くの実験データを取得する必要があり、そのデータが揃うまでの段階の第2事件被告代表者による説明はあくまで仮説にすぎず、その内容が後に修正されることによって効果が否定されるも20のではない。 エ よって、本件補償 要があり、そのデータが揃うまでの段階の第2事件被告代表者による説明はあくまで仮説にすぎず、その内容が後に修正されることによって効果が否定されるも20のではない。 エ よって、本件補償条項1の合意において、被告に被告主張の腸内環境や本件物質の効能に関する錯誤はない。 (2) 海外販売に関する要素の錯誤について原告らが、甲1契約の締結の交渉段階において、本件物質を使用した製品の25海外向け販売を承認した事実はなく、被告が契約締結前に提示した本件予測文9 書等の資料の内容も、国内販売を前提とするものであり、契約前の最終協議においても、原告らは、被告との間で、甲1契約における「最低販売量」(14条)の一部を海外向け販売で費消することを前提しておらず、●(省略)●と明記されている。被告は、甲1契約締結後である令和元年11月29日以降になって、初めて海外販売の具体的な検討を行っている。 5よって、本件補償条項1の合意において、被告に海外販売に関する錯誤はない。 2 争点2(本件補償条項1につき、事情変更の法理により被告が補償金の支払を免れるか)について【被告の主張】10本件各特許発明等を利用した被告の販売製品は、獣医師又は専門店での取扱いを前提としたものであった上、高価であったことから、その販売にあたっては、仲買人を通じた対面営業が非常に重要であり、甲1契約の販売計画策定時点では、このような営業形態を想定していた。 しかし、令和2年初め頃から、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって15対面営業が現実的に実施困難となった。このような未曾有の事態は、原告及び被告において全く想定できておらず、本件補償条項1に定められた補償金の金額が極めて多額であることに照らせば、事情変更の法理が適用される。 が現実的に実施困難となった。このような未曾有の事態は、原告及び被告において全く想定できておらず、本件補償条項1に定められた補償金の金額が極めて多額であることに照らせば、事情変更の法理が適用される。 【原告の主張】被告の販売製品は、獣医師又は専門店での取扱いを前提としたものではない。 20また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、ペットと過ごす時間が増え(いわゆる「巣ごもり需要」)、令和2年におけるペットフード市場は、前年比103.3パーセントとなっているから、上記感染拡大はペット用サプリメントの販売に消極方向に影響することはなく、被告が十分な販売促進活動をしていたとはいい難い。 25本件において、甲1契約成立時に基礎とされていた事情の変更があったと評価10 することに疑問がある上、仮に、事情変更があったとしても、上記事情に照らせば、当初の契約内容をもって被告を拘束することが信義則上著しく不当であるとはいえないから、事情変更の法理は適用されない。 3 争点3(本件補償条項2及び本件保証条項の合意において、被告に錯誤があったか)について5【被告の主張】被告は、上記1【被告の主張】⑴のとおり甲1契約を締結し、その後、同様の認識の下、乙3契約及び乙4契約を締結したから、本件補償条項2及び本件保証条項の合意において、被告に腸内のpH値や本件物質の効能に関する要素の錯誤がある。 10【原告らの主張】上記1【原告の主張】⑴と同様に、被告は、「動物実験から得られた効果」を前提にした上で、乙3契約及び乙4契約を締結しているから、本件補償条項2及び本件保証条項の合意において錯誤はない。 第4 判断151 認定事実証拠(後掲各証拠〔なお、枝番があるものは、枝番を含 、乙3契約及び乙4契約を締結しているから、本件補償条項2及び本件保証条項の合意において錯誤はない。 第4 判断151 認定事実証拠(後掲各証拠〔なお、枝番があるものは、枝番を含む。〕、甲21、甲22、乙13、乙14、P1証人、第2事件被告代表者本人、被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 (1) 甲1契約及び甲2契約の締結に至る経緯等20ア 被告の執行役員であったP1は、日新化成からの紹介を受け、平成30年3月30日、第2事件被告代表者の主宰する大阪大学産業科学研究所の研究室を訪れ、同人からシリコン製剤や本件特許発明A等の説明を受けて関心をもち、翌日、被告代表者と共に上記研究室を再び訪れた。これを機に、被告は、本件知的財産権を用いたペットフードやペット用サプリメント、人用サ25プリメントの商品化の可否について検討を始めた。 11 イ 第2事件被告代表者は、平成30年7月30日及び同年9月12日、被告に対し、シリコン製剤(A-type●(省略)●)を提供した。なお、原告らは、シリコン製剤の製造を大阪チタニウムテクノロジーズ(以下「大阪チタン」という。)に委託していた。 被告代表者は、提供を受けたシリコン製剤を自ら飼育する犬に投与して効5果を確認した。また、被告は、同年8月以降、提供を受けたシリコン製剤を使用して、動物病院の複数の犬猫に対する臨床試験を実施してその効能の検証を行い、その結果を第2事件被告代表者に連絡しつつ、皮膚炎や皮膚の乾燥の改善等の効果があるとの内容の報告書を作成した(甲4、甲20)。なお、前記臨床試験では、シリコン製剤による変化がみられない動物の症例も10報告されていた。 また、被告は、同年9月から平成31年1月にかけて、本件 との内容の報告書を作成した(甲4、甲20)。なお、前記臨床試験では、シリコン製剤による変化がみられない動物の症例も10報告されていた。 また、被告は、同年9月から平成31年1月にかけて、本件物質を販売した場合の今後3年間の需要数量の検討を進め、この間、大阪チタンとも協議を行い、海外への輸出についての調査の必要性の検討をした(乙7)。 ウ 被告は、コスト面の理由からA-TypeではなくD-Type●(省略)15●のシリコン製剤を対象とすることとし、平成31年1月15日までに、同製剤による臨床試験を第三者に依頼した(甲17)。 エ ●(省略)●これに対し、第2事件被告代表者は、遅くともこの頃までに、P1に対し、大阪チタンにおける設備投資の観点から、合計100トン前後の購入が必要20であると伝えた。 オ P1は、同年2月26日、第2事件被告代表者に対し、「ペットフード市場とSi使用量予測」と題する書面(以下「本件予測文書」という。)をメールで送信した。本件予測文書には、サプリメント及びフードの「Si必要量」につき、「コンシューマーチャネル市場規模」及び「動物病院市場規模」を前25提とする量(3年で合計98.4トン)が記載されていた。(甲5)12 カ 第2事件被告代表者は、本件予測文書を踏まえ、平成31年4月26日、P1に対し、契約締結後3年間の最低購入計画量を合計100トンとする内容を含む「知的財産実施許諾契約書案」(以下「本件契約書案」という。)をメールで提示した。本件契約書案には、●(省略)●と同様の記載がされていた(甲6)。 5キ 第2事件被告代表者は、令和元年5月15日、被告本社において、被告社員に対し、「シリコン製剤による体内水素発生と酸化ストレス性の疾病防止」と題する ●と同様の記載がされていた(甲6)。 5キ 第2事件被告代表者は、令和元年5月15日、被告本社において、被告社員に対し、「シリコン製剤による体内水素発生と酸化ストレス性の疾病防止」と題する資料(乙9。以下「乙9資料」という。)を用いてシリコン製剤に関する説明会を実施し、シリコン製剤からの水素発生反応メカニズムや、マウスに対する動物実験の結果、慢性腎不全等の改善が見られたことから人体に10も効果が期待できるとの説明を行った。 第2事件被告代表者は、その際、被告代表者から、最低購入計画量の2年目以降の量は半年後に決めたいとの要望を受けたが、大阪チタンとの関係で合計100トンの最低購入計画量の変更には応じなかった。 ク P1は、同月22日、第2事件被告代表者に対し、本件知的財産権の通常15「実施権の範囲」について、被告及びレナトスが「販売した…製品がその後の流通過程で、日本国外で販売されることについては、不問とする。」との条項の追記や、最低計画購入量を契約締結後の3年間ではなく4年間で合計100トンとすることなどの修正を求め、契約条件の交渉を続けた。(甲7、甲8)。 20そして、原告ら、被告及びレナトスは、●(省略)●(2) 甲1契約及び甲2契約締結後の事情ア 第2事件被告代表者は、同年9月25日、レナトスから、シリコン製剤含有商品の海外展開及びシリコン製剤を用いた人用サプリメントの製造販売を検討していることを聞き、レナトス及び被告(被告代表者)らに対し、楽25しみにしているとの意見をメールで伝えた。(乙30)13 イ 第2事件被告代表者は、同年10月、被告からの要望を受けて、P1及び第2事件被告代表者と共に、動物用シリコン製剤に関する記者会見を実施した。 被告は、令和元年10月11日、シ )13 イ 第2事件被告代表者は、同年10月、被告からの要望を受けて、P1及び第2事件被告代表者と共に、動物用シリコン製剤に関する記者会見を実施した。 被告は、令和元年10月11日、シリコン製剤を使用した動物用サプリメントの販売を開始し、シリコン製剤を用いたペットフードについては、令和53年3月に販売を開始した。なお、被告の販売したシリコン製剤を用いたペットフード「レナシアプラス」につき、被告は「腸内環境、つまり温度36度の弱アルカリ性(pH8.2~8.4)の水とよく反応する…腸に届いて初めて水と反応し1日中、多量の水素を作り出します。」と説明している。 (乙2、乙21)10ウ 被告は、同年11月28日、ペット用のシリコン製剤含有商品の米国への輸出に関する相談のためにJETRO鳥取事務所を訪問し、同年12月4日には、原告らに対し、シリコン製剤に関する国内、海外特許の出願状況を問い合わせ、同月11日、原告らとペット用シリコン製剤の海外展開について話し合った(甲9ないし11)。 15エ 原告ら、被告及びレナトスは、令和2年6月10日、乙3契約及び乙4契約を締結した。 この交渉中、人用シリコン製剤の最低購入量を決めるに当たり、被告は、第2事件被告代表者に対し、ペット用シリコン製剤と同様、人用シリコン製剤の中国への原料販売の承諾を求めたが、第2事件被告代表者は、ペット用20についても検討すると言っただけで承諾するとは言っていないし、人用にっついても簡単に承諾することはできない旨を返答し、最終的に乙3契約の内容として契約が成立した(甲18)。 オ 第2事件被告代表者は、同月18日付けで、「膵液と類似したpH8.3、36℃の環境下で、1gのシリコン製剤から400ml以上の水素が24時25間以上発生し続け て契約が成立した(甲18)。 オ 第2事件被告代表者は、同月18日付けで、「膵液と類似したpH8.3、36℃の環境下で、1gのシリコン製剤から400ml以上の水素が24時25間以上発生し続ける」、ラットやマウスに対する動物実験の結果、「体内で多14 量の水素を発生させるシリコン製剤が慢性病の悪化やパーキンソン病の進行を抑制する可能性」を見出したことを内容とするプレスリリースを発表し、令和2年6月25日、大阪大学医学部教授らと共に、記者会見を行った(甲19、乙10)。 (3) 米国及び中国への輸出の検討5ア 被告は、本件物質を用いた製品の中国への輸出を検討し、商社を介して中国の企業との交渉を始め、同年4月から5月、当該商社から輸出にあたって必要との理由で本件物質の製造工程の開示を求められ、原告らに開示を求めたが、原告らはこれに応じなかった。 イ 被告は、同年9月頃、本件物質の米国への輸出に必要な大阪チタン名義の10認可申請を求めたが、原告らから海外における模倣品リスク等を理由に拒絶された。また、被告代表者は、同年11月頃、米国において原告らが本件各特許発明に相当する特許登録を受けていないことを知った。 ウ 被告は、上記ア及びイを受け、シリコン製剤及びこれを用いた製品の海外輸出が困難であると判断した。 152 争点1(本件補償条項1の合意において、被告に錯誤があったか)について(1) 腸内のpH値及び本件物質の効能に関する要素の錯誤についてア 甲1契約、乙3契約の内容前記前提事実及び認定事実、乙1によると、●(省略)●であるところ、本件特許Aの特許請求の範囲請求項1は、「結晶子径が1nm以上100n20m以下のシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を含み、且つ水素発生能 、乙1によると、●(省略)●であるところ、本件特許Aの特許請求の範囲請求項1は、「結晶子径が1nm以上100n20m以下のシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を含み、且つ水素発生能を有する経口固形製剤。」というものであり、本件特許発明Bは本件製品のいわゆる用途発明である(なお、本件特許発明Aに係る明細書においては、pH7以上の領域において、シリコン微細粒子が水素を発生させることが記載されている。)。 25そして、具体的な用途や製品は、●(省略)●15 イ 甲2契約、乙4契約の内容●(省略)●契約当事者に明らかにされている。 ウ 検討前記ア、イのとおりの契約内容に照らすと、被告の主張に係る腸内のpH値や本件物質の効能、生体内での作用機序等は、何ら契約書上明記されてお5らず、また契約交渉過程において規範として形成されたとも言えないのであって、そもそも契約の内容となっていないと言わざるを得ない。 すなわち、前記前提事実のとおりの本件各特許発明の内容及び上記認定事実に係る甲1契約等に至る過程によれば、被告は、平成30年3月に、第2事件被告代表者から、生体内で水素を発生させてヒドロキシルラジカルを除10去するシリコン製剤の研究につき説明を受け、これを用いたペット用及び人用サプリメントの商品化の検討を始め、原告ら(第2事件被告代表者)から提供を受けたサンプルを自ら動物への投与等を行ってその効能に関する被告なりの具体的検証を実施し、その結果甲1契約を締結するに至ったものであるが、その過程を通じ、第2事件被告代表者は、乙9資料(マウスによる15動物実験の結果)の内容をベースに、シリコン製剤が体内で水素を発生させてヒドロキシルラジカルを除去し、各種疾病に対する効能が確認されたことから、 第2事件被告代表者は、乙9資料(マウスによる15動物実験の結果)の内容をベースに、シリコン製剤が体内で水素を発生させてヒドロキシルラジカルを除去し、各種疾病に対する効能が確認されたことから、動物や人にもその効果が期待されると説明していたにとどまり、乙9資料の内容を超えて、効能・効果それ自体を保証したことがないことはもとより、腸内環境として想定すべきpH値の妥当性が問題となったり(なお、20本件特許Aの明細書においては、pH7以上で水素発生能を発揮することが示唆されていることは前記のとおり。)、前記被告による具体的検証の内容が問題となったりしたことはないのであって、本件製剤の用途が基本的に健康食品(サプリメント)であることや本件物質の性能を生かした製品化を行うのは被告であることも考慮すると、被告主張の腸内のpH値や本件物質の効25能に関してそもそも誤信があったとはいえないし、仮に何等かの思い違いが16 あったとしても、その実質は、専ら被告の希望的観測との齟齬をいうものにすぎず、甲1契約等の締結にあたって、被告に要素又は契約の効力に影響を及ぼす動機の錯誤があったとは認められない。 (2) 海外販売に関する要素の錯誤についてア 前記第2の2(3)(前提事実)のとおり、●(省略)●と規定され、文言上、5明確に国内における通常実施権に関する契約であることが明記されている。 この点については、被告の契約交渉担当であったP1すらも、契約書どおり国内の通常実施権に関する合意であるとの認識であったと供述する(P1証人)。 また、甲1契約締結に至る過程では、専ら国内市場における予測需要につ10いて検討がされており、海外市場における予測需要を具体的に検討した事情は見当たらない。 以上に加えて、被告が甲1契約の締結後に初 甲1契約締結に至る過程では、専ら国内市場における予測需要につ10いて検討がされており、海外市場における予測需要を具体的に検討した事情は見当たらない。 以上に加えて、被告が甲1契約の締結後に初めて具体的な海外販売に向けた行動を講じていること、またその過程で第2事件被告代表者から甲1契約において海外販売を承諾していないとの説明があった上でそれについて特15段契約当時の認識との齟齬を表明していないことをも考慮すると、被告自身も甲1契約が海外販売を前提としていたと認識していたとは認められず、被告主張の海外販売に関する錯誤があったと認めることはできない。 イ これに対し、被告は、第2事件被告代表者が、甲1契約締結前に被告による海外販売を容認する発言をしており、国内販売のみならず海外販売を前提20とすると合計100トンのシリコン製剤を消化することができると判断したからこそ、合計100トンを最低計画購入量とする原告らの提案に応じたとか、甲1契約締結後に第2事件被告代表者が海外販売を支持する発言をしていたことなどをもって、甲1契約において、シリコン製剤を用いた製品の海外販売が前提となっていたなどと主張する。 25しかしながら、第2事件被告代表者が甲1契約前に海外販売を容認する発17 言をしたことを認めるに足りる証拠はなく、また仮にそのような発言や、甲1契約後に海外販売を支持する発言があったとしても、前記の甲1契約の文言から認められる実施権の範囲が左右されるとも解されない。被告の主張は、採用の限りでない。 (3) 小括5よって、本件補償条項1の合意において、被告主張の錯誤があったと認めることはできず、これを前提とする無効の抗弁は、理由がない。 3 争点2(本件補償条項1につき、事情変更の法理によ ) 小括5よって、本件補償条項1の合意において、被告主張の錯誤があったと認めることはできず、これを前提とする無効の抗弁は、理由がない。 3 争点2(本件補償条項1につき、事情変更の法理により被告が補償金の支払を免れるか)について被告は、甲1契約締結時点では、販売計画において対面営業を重視していたが、10新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、対面営業が困難となったので、契約の基礎となる事情に変更が生じ、事情変更の法理が適用されるべきである旨主張する。 しかしながら、本件記録上、甲1契約締結の際に、被告が対面営業を重視していたことや実際に対面営業による販売が大部分を占めていたと認めるに足りる15証拠はない上、当該事情は専ら被告の営業戦略に関するものであって、これによって原告らが不利益を被る理由にはならないし、被告は上記1(2)ウのとおり、ペットフードについては令和3年3月になって販売を開始しており、その販売に令和2年以降の新型コロナウイルスの感染拡大による影響があるとすることに疑問がある。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってペットと過ごす時間20が増えて需要が高まり、令和2年のペット関連商品の国内市場(ペットフード、ペットケア用品、ペット生活用品)が前年比103.3パーセントであるとする国内市場調査結果(甲16)もあり、上記感染拡大を受けてペット用サプリメント及びペットフードの販売数が一律に減少したと直ちに解することもできない。 よって、事情変更の法理の適用をいう被告の主張(抗弁)は、理由がない。 254 争点3(本件補償条項2及び本件保証条項の合意において、錯誤があったか)18 について上記説示のとおり、乙3契約及び乙4契約の締結にあたっても、被告主張の腸内のpH値及び本件物質の 争点3(本件補償条項2及び本件保証条項の合意において、錯誤があったか)18 について上記説示のとおり、乙3契約及び乙4契約の締結にあたっても、被告主張の腸内のpH値及び本件物質の効能に関する錯誤は認められず、これを前提とする被告の抗弁は、理由がない。 5 小括5(1) 上記検討によれば、締結されたこと自体には争いのない甲1契約等に意思表示の瑕疵はなく、各契約所定の最低購入計画量が未達の場合には、被告は、原告に対して甲1契約の本件補償条項1及び乙4契約の本件補償条項2に基づき、未達補償金支払債務を負い、第2事件被告に対して乙3契約の本件保証条項に基づく保証金支払債務を負うこととなる(なお、第2事件において被告が10問題とする両債務の関係については、本件において特段争点となっておらず不明であるが、訴訟物は各当事者間の個別の債権債務関係であるので、このように判断するに支障はない。)。 (2) そうすると、第1事件に関し、被告は、甲1契約の本件補償条項1に基づき、原告に対し、購入未達分●(省略)●の補償金1億7325万円●(省略)●15及びこれに対する契約で定める弁済期の翌日である令和3年11月11日から民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払債務を負っていると認められる。 また、第2事件について、被告は、乙3契約及び乙4契約所定の「3年目」の最低購入計画量●(省略)●を購入しないことを明らかにしているところ、20被告は、少なくとも購入未達分●(省略)●について、①第2事件被告に対し、本件補償条項2に基づき補償金1920万円●(省略)●の支払債務を、②原告に対し、本件保証条項に基づき、原告に同額の支払債務を負う。 第5 結論よって、第1事件について、原告の請求は理由が 本件補償条項2に基づき補償金1920万円●(省略)●の支払債務を、②原告に対し、本件保証条項に基づき、原告に同額の支払債務を負う。 第5 結論よって、第1事件について、原告の請求は理由があるからこれを認容し、第2事25件について、被告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主19 文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 5裁判長裁判官 松阿彌 隆 10裁判官 島田 美喜子 15裁判官 阿波野 右起 20 (別紙1)甲1契約(抜粋)●(省略)● 5 10 15 20 25 21 (別紙2)甲2契約(抜粋)●(省略)● 5 10 22 (別紙3)乙3契約(抜粋)●(省略)● 5 10 15 20 23 (別紙4)乙4契約(抜粋)●(省略)● 5 20 23 (別紙4)乙4契約(抜粋)●(省略)● 5 10 15
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