令和2(ネ)299 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月10日 広島高等裁判所 その他 山口地方裁判所 下関支部 平成30(ワ)99
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判決文本文27,493 文字)

主文 1 原判決中,控訴人Aに関する部分を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人は,控訴人Aに対し,2億0344万4665円及びうち1億9026万5213円に対する平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 控訴人Aのその余の請求を棄却する。 2 控訴人B及び同Cの本件控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審を通じて,これを5分し,その2を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 4 この判決は,第1項⑴に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人Aに対し,3億4318万9579円及びうち3億3001万0127円に対する平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,控訴人Bに対し,440万円及びこれに対する平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人は,控訴人Cに対し,440万円及びこれに対する平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は被控訴人の負担とする。 6 仮執行宣言第2 事案の概要(以下,略語は,原判決の例による。) 1 事案の要旨等本件は,被控訴人運転の普通乗用自動車が横断歩道を歩行中の控訴人Aに衝突 した交通事故(本件事故)について,控訴人Aが,被控訴人に対し,民法709条及び自賠法3条に基づき既払金控除後の損害賠償金の残金4億0924万1458円(なお,症状固定後の治療費につき,一部請求)と確定遅延損害金1317万9452円との合計額4億2242万0910円及び上記残金に対する不法行 既払金控除後の損害賠償金の残金4億0924万1458円(なお,症状固定後の治療費につき,一部請求)と確定遅延損害金1317万9452円との合計額4億2242万0910円及び上記残金に対する不法行為の日(本件事故の日)である平成20年5月20日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,同控訴人の父母である控訴人B及び同Cが,被控訴人に対し,民法709条,710条に基づく損害賠償金440万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。 原審は,控訴人らの請求を控訴人Aにつき1億3929万3345円及びうち1億2611万3893円に対する遅延損害金の支払を求める限度で,同B及び同Cにつき,それぞれ220万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却した。 これに対し,控訴人らが控訴した。また,控訴人Aは,当審において,損害額について症状固定後の治療費の全額を主張した上,請求の総額を減縮して前記第1の2のとおりとした。 2 前提事実次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,これらの補正後の原判決の「事実及び理由」の第2の1⑸記載の前提事実を「前提事実⑸」といい,その余の前提事実についても,この例による。)。 ⑴ 原判決4頁15行目の「負い,」の後に「少なくとも,」を加える。 ⑵ 原判決5頁4行目の「通院実日数81日」を「通院実日数82日」と改める。 ⑶ 原判決6頁3行目から4行目にかけての「通院実日数519日」を「通院実日数517日」と改める。 3 争点 ⑴ 控訴人Aの損害額⑵ 控訴人B及び同Cの損害額 4 争点に対 ⑶ 原判決6頁3行目から4行目にかけての「通院実日数519日」を「通院実日数517日」と改める。 3 争点 ⑴ 控訴人Aの損害額⑵ 控訴人B及び同Cの損害額 4 争点に対する当事者の主張⑴ 控訴人Aの損害額(以下,特記しない限り,1円未満の端数は切り捨てる。)(控訴人らの主張)後記5のとおり控訴人らの当審における補充主張を付加するほかは,次のとおりである。 ア治療関係費 2200万3134円(次のないしの合計額)治療費 1927万6535円控訴人Aは,本件事故による負傷のため,前提事実⑸アないしキのとおり入通院したほか,D医療センターに平成21年4月20日から同月29日まで(10日),平成21年6月23日から同月24日まで(2日),それぞれ入院し(同センターでの入院日数合計は243日,全医療機関等での総入院日数は344日),医療機関等で治療を受けた。上記治療費は,合計1927万6535円である。 交通費 174万7557円控訴人B及び同Cは,控訴人Aの入通院に付き添い,自家用車(ガソリン代1kmあたり15円)を利用して医療機関等に通院した。本件事故当時に控訴人らが居住していた住居から医療機関等までの交通費ないし通院付添交通費は,駐車代及び高速代を含めると,次のaないしgのとおりで,その合計は上記金額となる。これらは,控訴人Aの損害に当たる。 aD医療センター 35万9816円(次のないし⒞の合計) 上記センターの移転前(平成21年4月14日まで)8976円(=片道1.6㎞×15円×2×187日)⒝ 上記センターの移転後(平成21年4月15日以降)2万4840円(=片道6.0㎞×15円×2×138日) ⒞ 駐車場代 32万 6㎞×15円×2×187日)⒝ 上記センターの移転後(平成21年4月15日以降)2万4840円(=片道6.0㎞×15円×2×138日) ⒞ 駐車場代 32万6000円bE病院 41万2919円(次の合計)交通費 12万3819円(=片道27.7㎞×15円×2×149日)高速代 27万6900円駐車場代 1万2200円cF病院 1万5080円(次の合計)交通費 4080円(=片道27.2㎞×15円×2×5日)高速代 9100円駐車場代 1900円dG病院 1万0056円(次の合計)交通費 3456円(=片道28.8㎞×15円×2×4日)高速代 6600円eH療育センター 80万7852円(次の合計)交通費 26万9952円(=片道29.6㎞×15円×2×304日)高速代 53万7900円fI病院 10万7712円(次の合計)交通費 4万1292円(=片道44.4㎞×15円×2×31日)高速代 5万9320円駐車場代 7100円gJ治療所 3万4122円(=交通費片道2.2㎞×15円×2×517日)入院雑費 51万6000円(=1500円×総入院日数344日)装具費 21万5022円控訴人Aは,本件事故による負傷のため,有限会社Kが作成した装具を 装着した。上記金額は,その装具費用である。 介護用具レンタル費用 24万8020円控訴人らは,本件事故による負傷のため,株式会社Lから介護用具をレンタルしなければならなかった。上記金額は,そのレンタル費用である。 イ入院付添費 584万8000円(=8500円×総入院日数344日×2人)控訴人Aは,一時意識不明の重体となっただけでなく, ルしなければならなかった。上記金額は,そのレンタル費用である。 イ入院付添費 584万8000円(=8500円×総入院日数344日×2人)控訴人Aは,一時意識不明の重体となっただけでなく,前提事実⑷のとおり,重篤な傷病を受傷し,高次脳機能傷害等の重篤な症状が継続した。そのため,控訴人B及び同Cは,2人で24時間常に見守り,付き添う必要があった。この場合の1日1人当たりの入院付添費は,上記金額が相当である。 ウ通院・自宅付添費 2007万9000円控訴人Aは,一人で外出することができず,24時間の援助及び見守りが必要な状態であった。そのため,控訴人B及び同Cは,2人で同Aに付き添う必要があった。控訴人B及び同Cの付添いの労苦に鑑みると,通院付添看護費は一人当たり日額2000円に,自宅付添費は二人で日額7000円とするのが相当である。そして,通院付添看護費は通院実日数(992日)を,自宅付添費は症状固定日までの総治療期間(2929日)から入院日数(344日)を控除した期間(2585日)とすると,通院・自宅付添費は次の,のとおりで,その合計は上記2007万9000円となる。 通院付添看護費 198万4000円(=2000円×992日)自宅付添費 1809万5000円(=7000円×2585日)エ症状固定後の治療費 17万8500円(=3500円×51回)控訴人Aは,本件事故による後遺障害によって,手関節や足関節が硬直するようになった。更なる状況悪化を防止するには,定期的にマッサージを受ける必要があったため,同控訴人は,平成29年10月1日までに上記回数にわたってJ診療所にてマッサージを受けた。 オ将来治療費等 1061万6314円(次の×)年額 82万4280円(次のaないしcの合計) 平成29年10月1日までに上記回数にわたってJ診療所にてマッサージを受けた。 オ将来治療費等 1061万6314円(次の×)年額 82万4280円(次のaないしcの合計)aH療育センター心理外来での治療費 3万5760円(=2980円×12回)控訴人Aは,本件事故により高次脳機能障害(認知困難,記憶困難,注意困難,課題遂行困難),歩行困難及び左上肢巧緻運動困難の後遺症が残存し,上肢を使用した日常動作や歩行に困難が生じており,被控訴人から十分な謝罪もないことから,多大な不安やストレスを感じている状態に対応するための,毎月1回程度,H療育センター心理外来でのカウンセリング治療を継続している。 なお,控訴人Aは,症状固定後も,毎月2回程度,H療育センターの眼科において,右手のみによるパソコン使用訓練,点字訓練,スマートフォン操作等の日常生活動作訓練(なお,視覚障害者の日常生活にとってIT機器の利用は必要不可欠である。)及び歩行訓練を受けているが,これらについては,Q市の医療費助成があるため,自己負担はない。 b 差額ベッド代及びおむつ代 77万5404円(=52万2720円+25万2684円)控訴人Aは,てんかんの後遺症のため,24時間常時の付添看護が必要で,てんかんの重積発作で容態が急変することもあり,その場合には,病室で気管挿管を行い,人工呼吸器を装着する場合もあるため,てんかんの重積発作による入院時には個室での入院が必要となる。これに要する差額ベッド代の年額は,上記の52万2720円となる。 控訴人Aは,本件事故のため頻尿の症状が残存しており,日常的に成人用おむつの使用が必要となる。これに要するおむつ費用の年額は,上記の25万2684円である。 cM 1万3116円 は,本件事故のため頻尿の症状が残存しており,日常的に成人用おむつの使用が必要となる。これに要するおむつ費用の年額は,上記の25万2684円である。 cM 1万3116円 控訴人Aは,平成30年8月以降,週1回程度,Mにて施術を受けている。Q市からの費用補助を控除した施術費用の年間自己負担額は,上記のとおりである。 ライプニッツ係数 12.8795(=19.3427-6.4632)控訴人Aは症状固定時に25歳であるところ,厚生労働省大臣官房統計情報部「簡易生命表<女>平成28年」によれば,この年齢の平均余命は62.53年で,87歳に相当する。そこで,本件事故時から計算して,控訴人Aが上記年令に達するまでの年数70年に対応する係数19.3427から,症状固定時までの年数8年に対応する係数6.4632から控除した数値を用いる。 カ将来通院交通費 1087万6451円控訴人Aの後遺症の内容や程度に鑑みると,将来も継続して前記オの通院治療を行うことが必要であって,自家用車の利用によるガソリン代等が必要となる。また,J治療所への通院には自家用車の利用を予定しているところ,後記キのとおり,控訴人Bが67歳に達するまでの間は,控訴人B及び同Cの近親者による付添介護となり,控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間は職業付添人による付添介護となるから,控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間は介護事業所による同行援護サービス料金(片道250円)及び福祉有償運送サービス料金(1回5960円)が必要となる。 以上を踏まえると,医療機関等ごとの将来通院交通費は次のないしのとおりで,その合計は上記1087万6451円となる。 鍼灸整骨院分 327万8393円a 必要となる。 以上を踏まえると,医療機関等ごとの将来通院交通費は次のないしのとおりで,その合計は上記1087万6451円となる。 鍼灸整骨院分 327万8393円aJ診療所への控訴人B及び同Cの付添いによる通院分 20万7366円(次の合計)ガソリン代 3366円(=2.2km×2×15円×51回) 通院付添費 20万4000円(=2000円×2人×51回)bM分 307万1027円前記オcの通院については,今後とも,同様の回数で継続することが見込まれるところ,その額は次の,⒝のとおりで,その合計は上記金額となる。 控訴人Bが67歳に達するまでの間 96万8189円(次のⅰ×ⅱ)ⅰ 年額 20万0064円(次の合計)ガソリン代 8064円(=片道5.6km×2×15円×48回)通院付添費 19万2000円(=2000円×2人×48回)ⅱ ライプニッツ係数 4.8394(=12.5611-7.7217)本件事故時から計算して,控訴人Bが67歳に達するまでの年数16年に対応する係数12.5611から,平成30年までの年数10年間に対応する係数7.7217を控除した数値を用いる。 ⒝ 控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間210万2838円(次のⅰ×ⅱ)ⅰ 年額 31万0080円(=(片道250円×2+5960円)×48回)ⅱ ライプニッツ係数 6.7816(=19.3427-12.5611)本件事故時から計算して,控訴人Aが前記オのとおり87歳に達するまでの年数に対応する係数19.3427から,控訴人Bが67歳に達するまで 数 6.7816(=19.3427-12.5611)本件事故時から計算して,控訴人Aが前記オのとおり87歳に達するまでの年数に対応する係数19.3427から,控訴人Bが67歳に達するまでの年数16年に対応する係数12.56 11を控除した数値を用いる。 N医療センター分 296万4340円控訴人Aはてんかんの症状をコントロールするため,毎月1回(年間12回)程度,N医療センターの脳神経外科に通院し,服薬による治療を要しており,今後とも継続する見込みである。その額は,次のa,bのとおりで,その合計は上記金額となる。 a 控訴人Bが67歳に達するまでの間 82万6509円(=×⒝) 年額 13万5540円(次の合計)ガソリン代 3万0420円(=片道84.5km×2×15円×12回)高速道路料金(甲ICから乙ICまで)5万7120円(=2380円×2回×12回)通院付添費 4万8000円(=2000円×2人×12回)⒝ ライプニッツ係数 6.0979(=12.5611-6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Bが67歳に達するまでの年数16年に対応する係数12.5611から,控訴人Aの症状固定時までの年数8年に対応する係数6.4632を控除した数値を用いる。 b 控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間213万7831円(=×⒝)年額 31万5240円(次の合計)同行援護サービス及び福祉有償運送サービスの利用料金25万8120円(=2万1510円×12回)高速道路料金(aのとおり) 5万7120円⒝ ライプニッツ係数 6.7816(前記b⒝ⅱ) H療育センター分 サービスの利用料金25万8120円(=2万1510円×12回)高速道路料金(aのとおり) 5万7120円⒝ ライプニッツ係数 6.7816(前記b⒝ⅱ) H療育センター分 463万3718円(次のa,bの合計) a 控訴人Bが67歳に達するまでの間 141万1102円(=×⒝)年額 23万1408円(次の合計)ガソリン代 3万1968円(=片道29.6km×2×15円×36回)高速道路料金 5万5440円(770円×2×36回)通院付添費 14万4000円(=2000円×2人×36回)⒝ ライプニッツ係数 6.0979(前記a⒝)b 控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間22万2616円(=×⒝)年額 47万5200円(次の合計)福祉有償運送サービスの利用料金 10万8000円(=片道1500円×2×36回)同行援護サービス 31万1760円(=8660円×36回)高速道路料金 5万5440円(=770円×2×36回)⒝ ライプニッツ係数 6.7816(前記b⒝ⅱ)キ将来介護費 1億7718万1804円本件事故により,控訴人Aには,重篤なてんかん症状等多くの後遺症が残存し,1年間に3回程度救急搬送を要するてんかん発作が起きている。このような重積発作は不規則に生じる上に,適切な救命措置を行わなければ生命に危険が生じるため,24時間の援助及び見守りが必要となる。控訴人B及び同Cが同Aの介護を行う意向であるが,控訴人Bが67歳を過ぎると,同居家族2名による24時間365日の付添介護を維持できなくなり,控訴人Cと職業付添人の2名でも同様の付添介護を行うことは現実的に困難で Cが同Aの介護を行う意向であるが,控訴人Bが67歳を過ぎると,同居家族2名による24時間365日の付添介護を維持できなくなり,控訴人Cと職業付添人の2名でも同様の付添介護を行うことは現実的に困難である。控訴人B,同Cともに持病を有し,今後,経年により持病が悪化していくことも見込まれるから,控訴人Bが67歳になった時には,控訴人B及び同Cによる付添介護から職業付添人による付添介護に切り替えることにな る可能性が高い。控訴人B及び同Cによる介護費用は日額1人当たり1万2000円,職業付添人による介護は3交代制で,日額5万円とするのが相当であるから,控訴人Aの将来介護費は,次の,のとおりとなり,その合計は上記1億7718万1804円となる。 控訴人Bが67歳に達するまでの間5341万7604円(=a×b)a 年額 876万円(=1万2000円×2人×365日)b ライプニッツ係数 6.0979(前記カa⒝) 控訴人Bが67歳に達してから同Aが87歳に達するまでの間1億2376万4200円(=a×b)a 年額 1825万円(=5万円×365日)b ライプニッツ係数 6.7816(前記カb⒝ⅱ)ク家屋改造費 284万0240円控訴人Aは,本件事故による後遺障害(運動制限,記憶障害等による空間認識能力の低下)の影響で,入浴後に,本件事故前のように速やかに体の拭き上げを行うことができなくなった。その結果,体温管理のために,浴室にヒーターを入れる必要等が生じ,家屋改造を余儀なくされ,その費用として284万0240円を支出した。 ケ入通院慰謝料 494万6666円コ後遺障害逸失利益 5741万3939円基礎収入 486万8600円現在の日本の障害者法制は,障害者権利条約の基本理 84万0240円を支出した。 ケ入通院慰謝料 494万6666円コ後遺障害逸失利益 5741万3939円基礎収入 486万8600円現在の日本の障害者法制は,障害者権利条約の基本理念に基づいているところ,国家機関の一翼を担う裁判所が障害者の逸失利益を算定するに当たっても,上記基本理念である「他の者との平等を基礎とし」なければならない。また,障害者の受ける制限が社会に由来するという認識に立ち,障害のある子供も,他の子供と同様に能力や可能性を秘めた人格ある主体 であることを原則とし,障害者に,障害のない者と平等の機会が与えられ,合理的配慮のもとその能力を有効に発揮して働くことのできる社会が実現できることを前提として,逸失利益を算定することが法の要請である。 障害のある年少者の基礎収入額を障害者の賃金統計によるべきであるとの主張は,我が国の障害者法制の基本理念と相容れないだけでなく,現実の平均賃金に相当な格差があったとしても,社会制度の進展状況を踏まえつつ,子供の持つ無限の発達可能性及び就労可能性を考慮しないものといえる。このような考え方は,障害のある年少者に対する不当な差別と偏見に基づくものであって,絶対に許されるべきものではない。 社会制度の進展状況を踏まえつつ,あるべき社会を念頭に,未就労の年少者の無限の発達可能性及び就労可能性を踏まえて,あえて現実の平均賃金の男女格差を無視するという現在の裁判実務を前提とすると,障害のある年少者の逸失利益の算定についても,健常の年少者と同様に,原則として,賃金センサスの男女計,全年齢,学歴計の平均賃金を基礎収入として算定すべきである。 加えて,一般企業における障害者の雇用が拡大しているだけでなく,著しい技術革新や職業訓練制度の整備等によって,障害を有していても健常者 全年齢,学歴計の平均賃金を基礎収入として算定すべきである。 加えて,一般企業における障害者の雇用が拡大しているだけでなく,著しい技術革新や職業訓練制度の整備等によって,障害を有していても健常者と変わらぬ稼働能力を発揮することができる。また,控訴人Aは,多くの優れた資質を有していただけでなく,これらを発揮して学業面にとどまらず,様々な分野でも優れた成果を発揮してきた上に,本件事故前には,障害者の枠にとらわれずに,大学への進学だけでなく,一般の企業や教員への就職を望み,これらに向けた具体的な行動を取り,これを実現するための能力と努力ができる資質を有していた。 これらによれば,控訴人Aが将来健常者と同一の労働環境で同一の就労条件で稼働する具体的可能性があったといえ,健常の年少者と同様の賃金を得られたといえる。 したがって,控訴人Aの基礎収入は,平成28年賃金センサス第1巻第1表の男女計,学歴計,全年齢の平均賃金と同程度とすべきで,上記金額を下らない。 労働能力喪失率 100%控訴人Aの後遺症の内容,程度,とりわけ後遺障害等級3級3号に該当する「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの」自体が同控訴人の労働能力を100%喪失させるものであることを踏まえると,もともとの視覚障害にかかわらず,本件事故による労働能力喪失率は100%である。 また,控訴人Aの既存障害を理由に,基礎収入額や素因減額,労働能力喪失率の限定をすることはできない。 ライプニッツ係数 11.7927(=18.2559-6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Aが67歳に達するまでの年数50年に対応する係数18.2559から,症状固定時までの年数8年に対応する係数6.4632を控除した数値を用いる。 サ 6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Aが67歳に達するまでの年数50年に対応する係数18.2559から,症状固定時までの年数8年に対応する係数6.4632を控除した数値を用いる。 サ後遺障害慰謝料 4000万円シ小計 3億5198万4048円ス既払金合計5317万2973円前提事実(8)のとおり,控訴人Aは,本件事故による人身損害等について,被控訴人が加入していた自賠責保険や任意保険の保険金として,上記金額の支払を受けた。この額は,仮執行宣言付きの原判決に基づく仮払額を含まない。 セ弁護士費用 3119万9052円(=(3億5198万4048円-5317万2973円+1317万9452円)×10%)控訴人Aは平成29年3月2日に自賠責損害賠償額3000万円を受領 したところ,いわゆる「確定遅延損害金」の請求方式(自賠責保険金を弁護士費用以外の損害額元本に充当するが,自賠責保険金が充当された損害額に対する自賠責保険金受領までの遅延損害金を加算して請求する方式)に基づくと,自賠責損害賠償額総額に対する同額受領までの確定遅延損害金は,1317万9452円である。これまでの控訴人Aの損害額3億5198万4048円から既払額5317万2973円を控除した後,上記確定遅延損害金1317万9452円を加算した上で,この1割を弁護士費用として算定する。 ソ合計 3億3001万0127円(=シ+セ-ス)(被控訴人)次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の3⑴の「(被告の主張)」に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決16頁23行目の「争わない。」を「D医療センターでの平成21年4月20日から同月29日まで,平成21年6月23日から同月24日までの各 張)」に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決16頁23行目の「争わない。」を「D医療センターでの平成21年4月20日から同月29日まで,平成21年6月23日から同月24日までの各入院は争い,その余は争わない。」と改める。 イ原判決17頁12行目末尾で改行し,次のように加える。 「 総入院日数は,控訴人らの主張する344日のうち,332日の限度で認め,これを超える分は知らない。」ウ原判決17頁21行目の「将来治療費」を「将来治療費等」に改める。 ⑵ 控訴人B及び同Cの損害額原判決の「事実及び理由」の第2の3⑵に記載のとおりであるから,これを引用する。 5 当審における控訴人らの補充主張⑴ 逸失利益ア障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)36条の3は,事業者に障害者の均等な待遇確保や障害者が能力を発揮する につき支障となっている事情を改善するため,過重な負担とならない限り必要な措置を講じることを義務付けている。控訴人Aは,障害のない者と同等の賃金を得る潜在的能力を有していたから,障害者雇用促進法が遵守されている社会を前提とする限り,事業者が講じる措置と併せて,就労可能年数の全期間において,全労働者の平均賃金と同程度の収入を得た可能性が高い。 事業者が障害者雇用促進法に基づく必要な措置を講じても障害を持たない者と同程度の稼働能力に達しない,又はその能力を有効に発揮させるために必要な措置が事業者にとって過重な負担となるような事情は存しない。障害者の就労が促進されている現在の社会環境によれば,障害の有無も,原則として労働能力にかかわらない属性である。 また,現在の損害賠償実務では,現実には男女間の賃金格差が解消されていないにもかかわらず,女子年少者の逸失利益を男女計 社会環境によれば,障害の有無も,原則として労働能力にかかわらない属性である。 また,現在の損害賠償実務では,現実には男女間の賃金格差が解消されていないにもかかわらず,女子年少者の逸失利益を男女計の全労働者平均賃金を基に算定している以上,同様に障害の有無による現実の就労格差・賃金格差を考慮すべきではない。したがって,現時点で障害の有無による就労格差や賃金格差が存することは,基礎収入を全労働者平均賃金から減額する理由たり得ない。障害の有無や性別の有無を考慮することは,出自や肌の色を考慮することと同様,合理的な理由のない差別である。 イ控訴人Aが就労可能年齢に達した平成23年には,視覚障害者用IT機器が普及し,上記各種機器の利用助成に関する制度も整備され,これらを適切に使いこなすための就労支援訓練の場が整備されるなど,視覚障害者が潜在的稼働能力を発揮し得る社会環境は十分に整っていた。視覚障害者でも事務職の中核作業であるパソコン作業が可能である以上,事業主に要請される配慮は,被用者の適性に応じた仕事内容の振分けに止まり,過重な負担ではなかった。実際に,社会福祉法人日本盲人福祉委員会による「平成29年視覚障害者の就労に関する実態調査研究事業」(甲89)によれば,企業従業員としての事務作業,専門的職業,教員,国や地方自治体の公務員及び独立行 政法人などの行政関連団体の職員の職種に従事する視覚障害者は,50. 8%に上り,その収入に関しても視覚障害のない者の平均賃金より低い状態にはない。 控訴人Aは,小学生の頃からパソコンに習熟しており,音声ソフトを使用しながら,ブラインドタッチで文章を作成することができており,元々有していたパソコンの技能や習得能力に加え,視覚障害者用のIT機器が急速に発達を続けたことからすれば,就労可能年齢に達 声ソフトを使用しながら,ブラインドタッチで文章を作成することができており,元々有していたパソコンの技能や習得能力に加え,視覚障害者用のIT機器が急速に発達を続けたことからすれば,就労可能年齢に達した平成23年の段階で障害を持たない者と同様の就労を行うことに支障はなかった。 ⑵ 将来介護費控訴人Aのてんかん発作のコントロールは不良であり,重積発作が24時間365日いつ発症するか分からず,救命措置が迅速かつ適切に行われない場合,生命身体に重大な危険が生じるおそれがあるから,介護サービスの提供には特別の注意と緊急時の対応を必要とする。 自動車運転中,入浴中,就寝中などに重積発作が起きた場合には,迅速かつ適切な救命措置は困難であって,付添人が1名では救命措置と救急搬送の手配・誘導の両方を行うことも困難である。介護者の睡眠等の休息も必要であるから,重積発作に迅速かつ適切な対応をするためには,常時2名の付添人が必要であり,近親者介護であれば2名の体制,職業付添人であれば3交代制で24時間の介護及び見守りが必要であって,特に入浴時や外出時には2名の配置を要している。 そして,控訴人B及び同Cによる介護体制は,両名が家族として同居していることを前提としており,控訴人Bが67歳を過ぎた後,同Cと職業付添人の2名体制で同様の付添介護を行うことは困難である。また,控訴人Bには心房細動及び糖尿病の持病が,同Cには糖尿病及び後縦靭帯骨化症の持病がそれぞれあり,今後,長年にわたり24時間,365日の付添介護を続けることは困難である。したがって,控訴人Bが67歳を過ぎて付添介護ができなくなるま では,控訴人B及び同Cの2人体制,控訴人Bが67歳に達した後,控訴人Aが87歳に達するまでの間は,職業付添人による3交代制24時間の付添介護が必要で 歳を過ぎて付添介護ができなくなるま では,控訴人B及び同Cの2人体制,控訴人Bが67歳に達した後,控訴人Aが87歳に達するまでの間は,職業付添人による3交代制24時間の付添介護が必要である。 ⑶ 症状固定後の治療費及び将来治療費控訴人Aは,左上肢巧緻性障害,歩行困難等の後遺障害のため,J治療所の施術を受け,手関節,足関節等の可動性に改善がみられており,柔道整復師もリハビリ治療を行わないと関節の拘縮が生じるとの所見を出している。平成30年7月からは,医師の同意に基づき,Q市内の鍼灸整骨院であるMに通院し,上肢及び下肢の関節可動の維持及び改善を中心としたリハビリ治療を行っている。したがって,柔道整復による施術費は,本件事故と相当因果関係のある損害に当たる。 後遺症として残存したてんかんについても,症状固定後の治療が,継続している。 ⑷ 家屋改造費家屋改造費の主張に係る改造は,浴室の改装であり,浴槽を広く浅くすること,浴室の床を柔らかい素材のものとすること,浴室と脱衣所との間の段差をなくすことなどを内容としている。控訴人Aは,本件事故により,てんかんの症状及び歩行困難の後遺障害があり,入浴中に重積発作が起きた場合には溺水の危険があるほか,浴室の段差などで転倒する危険性もあり,これに対応するための改装は,本件事故と相当因果関係のある損害に当たる。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,控訴人Aの請求は2億0344万4665円及びうち1億9026万5213円に対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,控訴人B及び同Cの各請求は原審と同様にいずれも損害賠償金220万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,次のとおりである 理由がなく,控訴人B及び同Cの各請求は原審と同様にいずれも損害賠償金220万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,次のとおりである。 1 争点⑴(控訴人Aの損害額)について後記3のとおり控訴人らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは,次のとおりである。 ⑴ 治療関係費 2196万9012円次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1⑴に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決21頁13行目冒頭から15行目末尾までを次のように改める。 「⑴ 治療関係費 2196万9012円治療関係費のうち,治療費1927万6535円,装具費21万5022円及び介護用具レンタル費用24万8020円については,いずれも当事者間に争いがない。証拠(甲99ないし102,乙4の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,本件事故による負傷のため,D医療センターに平成21年4月20日から同月29日まで(10日),平成21年6月23日から同月24日まで(2日),それぞれ入院したことが認められる。これを前提事実⑸の入院日数に加えると,同センターにおける入院日数は合計243日となり,全医療機関等における日数は総計344日となる。この入院総日数について,1日1500日の割合による入院雑費を求めると,51万6000円となる。」イ原判決21頁19行目の冒頭から22頁7行目末尾までを次のように改める。 「ア D医療センター 35万9816円控訴人Aの本件事故による受傷状況や入通院当時の年齢等の事情(前提事実⑴,⑷)に加えて,同控訴人の入院について,医師から近親者の付添指示があったこと(甲3の2,3,5,10,11)に照らせば, 控訴人Aの本件事故による受傷状況や入通院当時の年齢等の事情(前提事実⑴,⑷)に加えて,同控訴人の入院について,医師から近親者の付添指示があったこと(甲3の2,3,5,10,11)に照らせば,入通院に近親者の付添いが必要であったと認められる。また,入通院の状況(前提事実⑸ア)並びに証拠(甲3の1ないし13,甲18,19, 103,104,乙4の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人B又は同Cが入通院(入院243日,通院82日)に付き添うために自宅からD医療センターまで自家用車を利用したこと,同センターに附設された駐車場を利用し,その利用料金として合計32万6000円を支払ったこと,控訴人らの自宅から同センターまでの距離が平成21年4月14日までは片道約1.6㎞,同月15日の同センター移転後は片道約6.0kmであったこと,入通院の日数は移転前187日,移転後138日であったことが認められる。 以上によれば,同センターに関する付添交通費は,控訴人らの主張のとおり,35万9816円であったと認める。」ウ原判決25頁5行目から8行目末尾までを次のように改める。 「 証拠(甲86,甲87の1ないし6)によれば,J治療所での施術実施には医師も同意していたことは認められるが,医師から施術を受けるよう指示があったとは認めるに足りない。また,本件事故による控訴人Aの受傷状況につき,医学的に施術の必要性や有効性があったとも認めるに足りない。」エ原判決25頁13行目冒頭から17行目末尾までを次のように改める。 「 以上によれば,本件事故と相当因果関係のある交通費(近親者交通費)は,171万3435円となる。これに治療費1927万6535円,装具費21万5022円,介護用具レンタル費用24万8020円及び入院 以上によれば,本件事故と相当因果関係のある交通費(近親者交通費)は,171万3435円となる。これに治療費1927万6535円,装具費21万5022円,介護用具レンタル費用24万8020円及び入院雑費51万6000円を加えると,本件事故と相当因果関係のある治療関係費は2196万9012円となる。」⑵ 入院付添費 343万2000円次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1⑵に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決25頁18行目の「335万4000円」を「343万2000円」 と改める。 イ原判決26頁8行目の「合計148日」を「合計160日」に改める。 ウ原判決26頁9行目の「332日」を「344日」に改める。 エ原判決26頁11行目の「335万4000円」を「343万2000円」と改める。 オ原判決26行目12行目から14行目までを次のように改める。 「 {6500円×(160日=344日〔総入院日数〕-184日(両親による付添いが必要な入院日数)×1名}+{6500円×184日(両親による付添が必要な入院日数)×2名}=343万2000円 」⑶ 通院・自宅付添費 1839万6750円(次のア,イの合計)ア通院付添費 94万8000円(=2000円×474日)前記⑴において補正して引用した原判決の認定判断によれば,控訴人Aの医療機関への通院に当たっては,近親者が付き添う必要があり,控訴人B又は同Cがその付添いをしたことが認められる。その際の近親者付添いの費用は1回2000円を下らないというべきである。 前提事実⑸によれば,実通院日数(ただし,前記⑴のとおり,J治療所分を除く。)は,重複分を除くと474日となる。 イ自宅付 近親者付添いの費用は1回2000円を下らないというべきである。 前提事実⑸によれば,実通院日数(ただし,前記⑴のとおり,J治療所分を除く。)は,重複分を除くと474日となる。 イ自宅付添費 1744万8750円(=6750円×2585日)日額 6750円証拠(甲20,31,33,34,49,62ないし64,98,114,乙4の2,原審控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,日常生活に介助を要する上,本件事故による負傷で生じた不規則なてんかん発作に備える必要があって,意識障害を伴わない複雑部分発作は月3ないし10回程度に及んでおり,特に年1ないし3回程度にはとどまるが,重積発作が発生したときには直ちに救命措置(気道確保等)を講じないと生命の危険があり,実際,重積発作でしばしば救急搬送されて入院してい ること,1人の介助者が救命措置を講じながら,救急車搬送の手配をすることは困難があること,医師も,控訴人Aにてんかんの重積発作が起こった場合,付添人一人が付きっ切りで救命処置を講じなければ命を落とす可能性があり,同時に救急搬送の手配をする余裕はなく,他に1名,救急搬送の手配をする者が必要である旨の意見を記載した回答書(甲98,114)を作成していること,介護サービスを利用する際も介護スタッフから万が一の事態が生じた場合の不安を懸念する声が上がり,控訴人B及び同Cが不在である時,安全な場所への移動が難しい入浴時や外出時は,2人の態勢をとっており,関係行政当局もこれを容認していることが認められる。ただ,てんかんの重積発作に備えた付添いは,見守りを中心とするもので,重積発作の頻度が高いともいえないから,一定の精神的緊張を常時伴うものではあるが,その負担が重いとまではいえない。これらの事情を勘案すると,本件に 積発作に備えた付添いは,見守りを中心とするもので,重積発作の頻度が高いともいえないから,一定の精神的緊張を常時伴うものではあるが,その負担が重いとまではいえない。これらの事情を勘案すると,本件における付添いの負担を損害賠償額として評価するに当たっては,1名による入院付添いの場合の一般的な日額6000円と1名による通院付添いの場合の一般的な日額3000円との中間値である日額4500円の1.5倍に相当する日額6750円とみるのが相当である。 日数症状固定日までの総治療期間2929日のうち,入院日数344日を控除すると,自宅付添費の対象となる日数は2585日となる。 ⑷ 症状固定後の治療費 0円次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1⑷に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決28頁19行目末尾の後に「証拠(甲86,甲87の1ないし6,甲92)によれば,J治療所での施術実施には医師も同意し,本件事故後に発症した頸腕症候群及び腰痛症に伴う疼痛緩和の効果が生じていることも認められる。」と加える。 イ原判決28頁25行目の「さらに」から29頁1行目の「明らかではない。」までを次のように改める。 「さらに,施術の効果は,疼痛の緩和にとどまり,それ以上の医学的効果が生じているわけではない。」と改める。 ⑸ 将来治療費等 998万6815円(=ア×イ)ア年額 77万5404円(次のないしの合計)H療育センター心理外来での治療費 0円証拠(甲10,49,甲105の1,2,甲106,甲107の1ないし12,甲117,原審控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,本件事故により高次脳機能障害(認知困難,記憶困難,注意困難,課題遂行困難),歩行困難及び左上肢巧 ,甲106,甲107の1ないし12,甲117,原審控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,本件事故により高次脳機能障害(認知困難,記憶困難,注意困難,課題遂行困難),歩行困難及び左上肢巧緻運動困難の後遺症が残存し,上肢を使用した日常動作や歩行に困難が生じたため,症状固定後もH療育センターにて,眼科での右手のみによるパソコン使用訓練,点字訓練,スマートフォン操作等の日常生活動作訓練及び歩行訓練のため月2回程度の通院をしていること(治療費はQ市の医療費助成制度により自己負担がない。),同センターの心理外来で多大な不安やストレスを感じている状態に対応するための月1回程度のカウンセリング治療のための通院をしていること(治療費は1回2980円)が認められる。眼科での訓練は,日常生活における動作等を可能とするための訓練として,その成果が生じると見込まれる期間までの分は必要かつ相当なものということができる。他方,心理外来でのカウンセリング治療は,特に精神疾患を発症しているとまでは認められないこと,精神的苦痛に対しては別途慰謝料が認められることに照らすと,損害賠償の対象となる独立の損害項目に当たるとまでは認めるに足りない。 差額ベッド代及びおむつ代 77万5404円(=差額ベッド代52万2720円+おむつ代25万2684円) 証拠(甲10,甲93の1ないし8,甲94,甲95の1ないし26,甲108,113,乙4の2,乙6の3)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,てんかんの後遺症のため,てんかんの重積発作で容態が急変し,病室で気管挿管を行って,人工呼吸器を装着する場合もあり,そのため,てんかんの重積発作により入院治療が必要な際は,個室での入院を要すること,平成28年11月29日から平成29年11月22日までは差額ベッ 気管挿管を行って,人工呼吸器を装着する場合もあり,そのため,てんかんの重積発作により入院治療が必要な際は,個室での入院を要すること,平成28年11月29日から平成29年11月22日までは差額ベッド代として約1年間に上記52万2720円を要したこと,本件事故の後遺症のため,頻尿の症状が残存しており,日常的に成人用おむつの使用を要し,おむつ費用として1年間に上記25万2684円を要することが認められる。 M 0円証拠(甲110の1ないし28)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aは,平成30年8月以降,Mにて鍼灸の施術を受けていることは認められるが,この施術が医師の指示に基づくものとは認めるに足りる証拠はなく,症状固定後の既往の治療費に関する前記⑷の認定判断にも照らせば,将来の治療費等としての必要性,相当性を認めるに足りない。 イライプニッツ係数 12.8795前記第2の4⑴の控訴人らの主張のオのとおり認める。 ⑹ 将来通院交通費 324万0748円(次のアないしウの合計)ア鍼灸整骨院分 0円前記⑷,⑸の認定判断に照らせば,鍼灸整骨院(J治療所及びM)に関する通院費用の必要性,相当性は認めるに足りない。 イ N医療センター分 254万3402円証拠(甲10,甲95の1ないし26,甲113,乙4の2)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人Aはてんかんの後遺症が残存しているため,その症状をコントロールするため,月1回程度(年間12回程度),N医療センター の脳神経外科に通院して,服薬による治療を受けるため,交通費の負担を要することが認められる。 また,前記⑶イの認定判断のとおり,重積発作に備えた見守りと万が一の場合に救急搬送手配を行う必要に照らせば,重積発作に備えた見守りと万が一の を受けるため,交通費の負担を要することが認められる。 また,前記⑶イの認定判断のとおり,重積発作に備えた見守りと万が一の場合に救急搬送手配を行う必要に照らせば,重積発作に備えた見守りと万が一の場合の救急搬送手配を含む通院付添いは,付添者が2名とも就労可能年齢67歳に達しない者である必要があるとはいえず,うち1名が就労可能年数を超えたからといって直ちに困難になるとはいえないこと,控訴人Cも自動車を運転できること(当審第2回口頭弁論期日における控訴人らの陳述)に鑑みれば,控訴人B及び同Cが共に67歳以上に達する時期,すなわち年下である控訴人C(昭和42年10月生)が67歳に達する令和16年(甲22)までは,控訴人B及び同Cによる通院付添いが可能と考えられる。なお,控訴人B及び同Cは,それぞれ持病を抱えていることがうかがえるが(甲83ないし85),上記判断を左右するほどに重篤なものであることを認めるに足りる証拠はない。 また,近親者付添費用の日額については,前記⑶イに説示したところを踏まえると,1名による付添費用2000円の1.5倍に相当する3000円と評価するのが相当である。この額は,通院回数を年間12回として換算すると,年額3万6000円となる。 以上を踏まえ,控訴人Cが67歳に達する前後を区別して,N医療センター分の将来通院交通費を求めると,次の,のとおりとなり,その合計は上記254万3402円となる。 控訴人Cが67歳に達するまで 97万7448円(=a×b)a 年額 12万3540円(次の合計。甲96,97,弁論の全趣旨による。)ガソリン代 3万0420円高速道路料金 5万7120円 近親者付添費用 3万6000円b ライプニッツ係数 7.9120(=14.3752-6.4632)本 よる。)ガソリン代 3万0420円高速道路料金 5万7120円 近親者付添費用 3万6000円b ライプニッツ係数 7.9120(=14.3752-6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Cが67歳に達する令和16年までの年数26年に対応する係数14.3752から,控訴人Aの症状固定までの年数8年に対応する係数6.4632を控除した数値を用いる。 控訴人Cも67歳に達した後 156万5954円(=a×b)a 年額(次の合計。甲109による。)同行援護サービス及び福祉有償運送サービスの利用料金25万8120円(=2万1510円×12回)高速道路料金 5万7120円b ライプニッツ係数 4.9675(=19.3427-14.3752)本件事故時から計算して,控訴人Aが87歳に達するまでの年数70年に対応する係数19.3427から,控訴人Cが67歳に達するまでの年数26年に対応する係数14.3752を控除して得た数値を用いる。 ウ H療育センター分 69万7346円(=×)前記⑸アの認定判断によれば,控訴人Aは,平成28年5月26日の症状固定後も日常生活訓練及び歩行訓練のため,H療育センター眼科に月2回程度通院しており,その成果が生じると見込まれる期間までの分は必要かつ相当なものということができる。その見込みの期間としては,その訓練は容易なものではなく,成果が出るまでは相当長期間を要すると見込まれること,平成28年5月26日の症状固定から既に5年を経過していることに照らすと,症状固定から8年を経過する令和6年までと認めることが相当である。 また,近親者付添費用の日額については,前記イと同様に日額3000円 と評価するのが相当である。この額は,通院回数を年間24 状固定から8年を経過する令和6年までと認めることが相当である。 また,近親者付添費用の日額については,前記イと同様に日額3000円 と評価するのが相当である。この額は,通院回数を年間24回として換算すると,年額7万2000円となる。 以上を踏まえ,H療育センター分の将来通院交通費の年額及びライプニッツ係数を求めると,次のとおりとなる。 年額15万9408円(次の合計。上に説示したことのほか,甲112,弁論の全趣旨により認める。)ガソリン代 3万1968円高速道路料金 5万5440円近親者付添費用 7万2000円ライプニッツ係数 4.3746(=10.8378-6.4632)本件事故時から計算して,令和6年までの年数16年に対応する係数10.8378から,控訴人Aの症状固定までの年数8年に対応する係数6. 4632を控除した数値を用いる。 ⑺ 将来介護費 8904万8685円前記⑶,⑹の認定判断によれば,控訴人Aには,身体の後遺症に加え,てんかんによる不規則な重積発作の危険のため,常時,介護が必要となり,控訴人B及び同Cによる介護と職業付添人による介護が切り替わる時期は,控訴人B及び同Cが共に67歳以上に達する令和16年と見込まれると認められる。 そして,介護費用の日額については,前記⑶イに説示したところを踏まえると,近親者付添人については,1名による一般的な付添費用8000円の1. 5倍に相当する1万2000円,職業付添人については,1名による一般的な付添費用2万円の1.5倍に相当する3万円と評価するのが相当である。 以上を踏まえ,控訴人Cが67歳に達する前後を区別して,将来介護費を求めると,次のア,イのとおりとなり,その合計は上記8904万8685円となる。 ア控訴人Cが67歳に達するまで 当である。 以上を踏まえ,控訴人Cが67歳に達する前後を区別して,将来介護費を求めると,次のア,イのとおりとなり,その合計は上記8904万8685円となる。 ア控訴人Cが67歳に達するまで 3465万4560円(=×) 年額 438万円(=1万2000円×365日)ライプニッツ係数 7.9120(=14.3752-6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Cが67歳に達する令和16年までの年数26年に対応する係数14.3752から,控訴人Aの症状固定までの年数8年に対応する係数6.4632を控除して得た数値を用いる。 イ控訴人Cも67歳に達した後 5439万4125円(=×)年額 1095万円(=3万円×365日)ライプニッツ係数 4.9675(=19.3427-14.3752)本件事故時から計算して,控訴人Aが87歳に達するまでの年数70年に対応する係数19.3427から,控訴人Cが67歳に達するまでの年数26年に対応する係数14.3752を控除した数値を用いる。 ⑻ 家屋改造費 0円原判決の「事実及び理由」の第3の1⑻に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決30頁21行目の「また,」の後に「家屋改造の内容(甲23,88),」を加える。 ⑼ 入通院慰謝料 415万円次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1⑼に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決30頁26行目の「410万円」を「415万円」に改める。 イ原判決31頁2行目の「332日間」を「344日間」に改める。 ウ原判決31頁3行目の「410万円」を「415万円」に改める。 ⑽ 後遺障害逸失利益 4621万4176円(=ア×イ×ウ) 判決31頁2行目の「332日間」を「344日間」に改める。 ウ原判決31頁3行目の「410万円」を「415万円」に改める。 ⑽ 後遺障害逸失利益 4621万4176円(=ア×イ×ウ)ア基礎収入年額391万8880円不法行為により後遺症が残存した年少者の逸失利益については,将来の予測が困難であったとしても,あらゆる証拠資料に基づき,経験則とその良識 を十分に活用して,損害の公平な分担という趣旨に反しない限度で,できる限り蓋然性のある額を算出するように努めるのが相当である。 そこで検討するに,控訴人Aが本件事故の前から抱えていた全盲の視覚障害が労働能力を制限し,又は労働能力の発揮を阻害する事情であることは否定し難く,このことを,本件事故による逸失利益として被控訴人が損害賠償責任を負う額の算定に際して無視することは困難である。 証拠(乙8の1,2,乙9)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故前の控訴人Aと同様の視覚障害のある者の雇用実態は,公的な調査結果によって十分につまびらかになっているとはいい難いものの,厚生労働省による平成25年度障害者雇用実態調査においては,同年10月時点の身体障害者(身体障害のある被調査者の内訳は,視覚障害が8.3%,肢体不自由が43.0%,内部障害が28.8%,聴覚言語障害が13.4%)の平均賃金(超過勤務手当を含む。)は22万3000円であったことが認められ,この額は,当裁判所に顕著な同年の賃金センサス男女計,学歴計,全年齢の平均賃金における「きまって支給する現金給与額」である32万4000円の約7割にとどまっているのであって,身体障害者の中には,職に就くことができず,調査対象とならなかった者も少なくないと推測できることに照らせば,調査対象とならなかった者も含む身体障害者全 4000円の約7割にとどまっているのであって,身体障害者の中には,職に就くことができず,調査対象とならなかった者も少なくないと推測できることに照らせば,調査対象とならなかった者も含む身体障害者全体の収入については,身体障害のない者と比較して差異があるといわざるを得ない。そして,このような身体障害の中でも,両眼の失明は,多くの損害賠償実務で用いられる自賠法施行令別表第2において,労働能力喪失率が最も大きい等級に位置付けられているところである。このような差異が,社会の現状において,又は近い将来において,全面的かつ確実に解消されることを認定するに足りるまでの証拠はない。 他方,証拠(甲42ないし46,59ないし61,65ないし69,72ないし81,89,90,116,乙8の1,2)によれば,我が国における近年の障害者の雇用状況や各行政機関等の対応,障害者に関する障害者雇 用促進法等の関係法令の整備状況,企業における支援の実例,職業訓練の充実,点字ディスプレイ,画面読み上げソフト等のIT技術を活用した就労支援機器の開発・整備,普及等の事情を踏まえると,身体障害者であっても,今後は,今まで以上に,潜在的な稼働能力を発揮して健常者と同様の賃金条件で就労することのできる社会の実現が徐々に図られていくことが見込まれ,活躍の分野もあん摩マッサージや鍼灸に限られず,事務職その他に広がり,現に職場又は家庭において,健常者に劣らない活躍をしている身体障害者も少なくないと認められる。しかも,証拠(甲32,35ないし40,47ないし53,55,甲56の1,2,甲57の1,2,甲59,60,原審控訴人A,原審控訴人C)によれば,こと控訴人Aについては,本件事故時17歳であったこと,平成16年3月にO盲学校小学部を卒業し,同年4月にP盲学校中学部に入 2,甲57の1,2,甲59,60,原審控訴人A,原審控訴人C)によれば,こと控訴人Aについては,本件事故時17歳であったこと,平成16年3月にO盲学校小学部を卒業し,同年4月にP盲学校中学部に入学し,その後2年にわたって同校に在学した後,平成18年4月にO盲学校中学部に転校し,平成19年3月にこれを卒業し,同年4月に同校高等部普通科に入学したこと,上記のとおり在学したP盲学校中学部については,平成30年度の卒業生全員が同校上級部に進学し,高等部普通科や専攻科の生徒が大学や短大に進学し,又は就職している例もあること,控訴人A自身については,上記のとおり高等部に在籍中に職業見学や大学見学に参加したり,詩を多く作ったりするなど,自らの能力の向上と発揮に積極的であったことなどの事情が認められる。これらの事情に照らせば,控訴人Aについては,全盲の障害があったとしても,潜在的な稼働能力を発揮して健常者と同様の賃金条件で就労する可能性が相当にあったと推測される。 そうすると,本件事故前の控訴人Aについては,全盲の視覚障害があり,健常者と同一の賃金条件で就労することが確実であったことが立証されているとまではいえないものの,その可能性も相当にあり,障害者雇用の促進及び実現に関する事情の漸進的な変化に応じ,将来的にその可能性も徐々に 高まっていくことが見込まれる状況にあったと認めることができる。その他の諸事情も総合すると,本件において損害賠償の対象となる控訴人Aの逸失利益の算定に用いる基礎収入としては,同控訴人の就労可能期間を通じ,平成28年賃金センサス男女計,学歴計,全年齢の平均賃金(489万8600円)の8割である391万8880円を用いるのが相当である。 イ労働能力喪失率 100%控訴人Aについて,本件事故後の労働能力喪 センサス男女計,学歴計,全年齢の平均賃金(489万8600円)の8割である391万8880円を用いるのが相当である。 イ労働能力喪失率 100%控訴人Aについて,本件事故後の労働能力喪失率が上記のとおりであることについて,当事者間に争いがない。 ウライプニッツ係数 11.7927(=18.2559-6.4632)本件事故時から計算して,控訴人Aの就労可能年齢67歳までの年数50年に対応する係数18.2559から,症状固定時までの年数8年に対応する係数6.4632を控除して得た数値を用いる。 ⑾ 後遺障害慰謝料 3000万円次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1⑾に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決33頁3行目及び5行目から6行目にかけての「2800万円」を,それぞれ「3000万円」と改める。 イ原判決33頁5行目の「一切の事情」の後に「(特に本件事故における被控訴人の過失の程度は大きいこと,控訴人Aが視覚障害を克服しようとする努力の成果の多くが本件事故で失われたこと,てんかんの重責発作の危険が持続するという後遺障害は特に深刻といえること,控訴人Aの心理面に与えた影響も深刻であること)」と加える。 ⑿ 小計 2億2643万8186円(上記⑴ないし⑾の合計)⒀ 既払金 5317万2973円前提事実⑻のとおり,控訴人Aは,本件事故により被った損害について,合計5317万2973円の支払を受け,うち,自賠責保険3000万円は,平 成29年3月2日に受領した。 ⒁ 弁護士費用 1700万円事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌し,1700万円を相当と認める。 ⒂ 総損害の残元本 1億9026万5213円(=⑿-⒀+⒁)この額 。 ⒁ 弁護士費用 1700万円事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌し,1700万円を相当と認める。 ⒂ 総損害の残元本 1億9026万5213円(=⑿-⒀+⒁)この額について,附帯請求に係る遅延損害金が発生する。 ⒃ 確定遅延損害金 1317万9452円自賠責保険金受領日までの自賠責保険金が充当された損害額に対する確定遅延損害金の額である。 ⒄ 総額 2億0344万4665円(=⒂+⒃) 2 争点2(控訴人B及び同Cの各損害額)について原判決の「事実及び理由」の第3の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人らの補充主張に対する判断⑴ 逸失利益について当審における控訴人らの補充主張は,本件事故による控訴人Aの逸失利益の算定に用いる基礎収入を年額342万9020円とした原審の判断(原判決の「事実及び理由」の第3の1⑽のうち,原判決31頁9行目から32頁21行目の部分)について,原判決の取消しの事由(民訴規則182条)を主張するものと解されるところ,当審の判断は前記1⑽アのとおりで,基礎収入を年額391万8880円と評価するのを相当としている。控訴人らの上記補充主張は,当審の上記判断に沿う限度で採用できるが,これを超えて全部を採用するには及ばない。その理由は,前記1⑽アのとおりであるが,所論に鑑みて補足する。 控訴人らの原審における主張及び当審における補充主張のとおり,障害者雇用の促進,支援機器の開発・普及等,視覚障害があっても,潜在能力を発揮す る環境が整えられつつあることは確かである。しかしながら,差別意識を含む社会的障壁が除かれ,労働能力の発揮に寄与する器材を含む人的,物的態勢が整備されることを前提としても,視覚障害によって労働能力の発揮が相当程度 つつあることは確かである。しかしながら,差別意識を含む社会的障壁が除かれ,労働能力の発揮に寄与する器材を含む人的,物的態勢が整備されることを前提としても,視覚障害によって労働能力の発揮が相当程度阻害されることは否定し難い。そして,人身損害賠償事案において賠償の対象とされる損害は多岐にわたるところ,この中にあって,いわゆる後遺障害による逸失利益は,一定の労働能力を備え,これを発揮して基礎収入を得ることができる者であっても,身体に障害が生ずると,その労働能力の全部又は一部が喪失され,又はその発揮が制約されて,障害が生じなかった場合の基礎収入の全部又は一部が得られなくなることを前提として,その逸失額に相当する損害を賠償するという考え方を出発点としており,そのような身体の障害の中でも,両眼の失明は,前記1⑽アで触れた自賠法施行令において,労働能力喪失率が最も大きい等級に位置付けられているところである。このような損害賠償実務の現状に加え,上記障害があってもなおその労働能力を発揮して健常者と同額の収入を得ることができる社会的状況が確立しているとまでは認められないことを考えると,民法709条等に基づく損害賠償の義務者が責任を負う逸失利益を算定する場面においては,被害者に事故前から労働能力の喪失ないしその発揮の制約となる障害があったことを無視することは困難である。控訴人らの主張に係る出自,性別,肌の色等による差別は,労働能力の喪失ないしその発揮の制約に関わりがなく,専ら不合理な社会的な障壁によって労働の機会が制約されるものであって,本件との比較の対象として相当でない。 そして,既に述べたとおり,現時点において,全盲の視覚障害があることが周囲の配慮,支援機器の利用等で,労働能力の発揮を阻害する事由として無視しうる諸条件が整っているとは認めるに足りな 相当でない。 そして,既に述べたとおり,現時点において,全盲の視覚障害があることが周囲の配慮,支援機器の利用等で,労働能力の発揮を阻害する事由として無視しうる諸条件が整っているとは認めるに足りない。もとより,全盲の視覚障害者の個性やそれを取り巻く環境は多様であって,控訴人Aの本件事故前の経歴,意欲等をも踏まえると,相応の労働能力を発揮していた可能性が否定されるものではないが,民事訴訟においては,逸失利益の算定に用いる基礎収入につい ても,証拠をもってその蓋然性を証明しなければならないところ,例えば,控訴人Aと同等の学歴を経た視覚障害者の収入と賃金センサスの平均年収とを比較する資料等は提出されておらず,本件に提出された全証拠をもってしても,控訴人らの上記主張が証明の域に達しているとはいい難い。 ⑵ 将来介護費について将来介護費についての当審の認定判断は,前記1⑺のとおりであり,控訴人らの補充主張は,これを左右するに足りない。 ⑶ 症状固定後の治療費及び将来治療費について症状固定後の治療費及び将来治療費についての当審の認定判断は,前記1⑷,⑸のとおりであり,控訴人らの補充主張は,これを左右するに足りない。 ⑷ 家屋改造費控訴人Aは,本件事故によって残存したてんかんの症状及び歩行困難の後遺障害のため,単独で入浴することは不可能であるが,前記1⑺のとおり,近親者又は職業付添人による介護費用を要し,この介護の中で,入浴時の介助を受けられることを踏まえると,浴槽の改装が入浴のために特に必要であったとまでは認めるに足りない。 第4 結論以上によれば,控訴人Aの請求は,2億0344万4665円及びうち1億9026万5213円に対する不法行為の日である平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延 ない。 第4 結論以上によれば,控訴人Aの請求は,2億0344万4665円及びうち1億9026万5213円に対する不法行為の日である平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,これと一部異なる原判決中の同控訴人に関する部分は一部失当で,その控訴は一部理由があるから,原判決中,同控訴人に関する部分を上記のとおり変更することとし,控訴人B及び同Cの請求は,いずれも220万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであって,これと同旨の原判決中の控訴人B及び同Cに関す る部分は相当で,控訴人B及び同Cの本件控訴は理由がないから棄却することとし,なお,被控訴人の申立てに係る仮執行免脱宣言については,相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部 裁判長裁判官金子直史 裁判官光岡弘志 裁判官若松光晴

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