【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人太田金次郎の上告趣意書は「原審は、上告人は燃料用アルコールを水に稀 釈して「之を飲用すれば人体に生理上の障碍を与へ
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人太田金次郎の上告趣意書は「原審は、上告人は燃料用アルコールを水に稀 釈して「之を飲用すれば人体に生理上の障碍を与へることがあることを認識しなが ら」酒の代用として販売し、為に之を飲用したAはメチールアルコール中毒の為め 間もなく両眼失明を来し又その頃右Aからその一部を買受けて飲用した同町のBは 同中毒の為の死亡した事実を認定し上告人に対し傷害致死並に傷害罪として懲役二 年の判決を下したのである。記録を閲するに原審が証拠として引用した証人Aに対 する予審訊問調書中Aは上告人方に於てアルコールを売捌いてゐる事実を知り(記 録第二三三丁裏)之が購入の為め被告人方に赴き「飲んでみると酒か焼酎かアルコ ールかと云ふことが判りますので、私はアルコールだと云ふことは判つてをりまし た」(記録第二三四丁表九行より同丁裏一行)と陳べてゐる。之に依つて是を観る と、Aは上告人方に於て販売せるものはアルコールであると云ふ明確なる認識を有 したるものであつて、従つてAに於ても斯かるアルコールを酒の代用として飲用す るときは人体に生理上の障碍を与へることがあるといふ認識予見があつたか若しく は認識予見が可能であつたと云ふべきである。而してBはAより買受けたるアルコ ールを飲用の結果、メチールアルコール中毒死を遂げたることは原審の認むる処で あり、Aの結果に対する認識予見ある行為の介入があつて始めて致死なる結果を生 じたのであつて、Bに対するアルコールの販売については上告人の全く関知せざる 処である。然もアルコールの飲用が人体に及ぼす影響は飲用量及び飲用者の健康状 態、年齢、性別等により一定せず、之を飲用するときは必ず人体に生理上の障碍を 与へるとは限らないから、上告人の行為は単に未必的な結果発生の可能力を提供し た が人体に及ぼす影響は飲用量及び飲用者の健康状 態、年齢、性別等により一定せず、之を飲用するときは必ず人体に生理上の障碍を 与へるとは限らないから、上告人の行為は単に未必的な結果発生の可能力を提供し たにとゞまる。従つてAの致死を確定せしめた行為の介入により上告人の行為と致 - 1 - 死の結果との間の因果関係は中断せられたと解するのが相当であるにも拘らず、上 告人を傷害致死罪に問擬するのは法令の適用を誤つた違法の判決であり、破毀を免 れない。」というのであるが、 特定の行為に起因して特定の結果が発生した場合にこれを一般的に観察してその 行為によつて、その結果が発生する虞れのあることが実験法上当然予想し得られる においては、たとえ、その間他人の行為が介入してその結果の発生を助長したとし ても、これによつて因果関係は中断せられず、先きの行為を為した者はその結果に つき責任を負うべきものと解するのが相当である。 本件において被告人は酒の代用として燃料用アルコールを人体に生理上の障碍を 与える虞れのあることを認識しながらAに販売したというのであつて、当時Aから 更にこれを譲受けて飲用する者のあるべきことは一般的に観て当然予想し得られる ところであるから、事実、Aから右アルコールを譲受けて飲用したBがその中毒に よつて死亡した以上、被告人が右Bの飲用の事実を予見したと否とに関係なく、被 告人としてBの傷害致死の結果につき責任を負はねばならない。論旨は理由がない。 尚弁護人伊藤一郎の上告趣意書は法定の期間経過後に提出されたものであるからこ れに対しては判断を示さない。 よつて刑事訴訟法第四百四十六条により主文の通り判決する。 以上は裁判官全員の一致した意見である。 検察官小幡勇三郎関与 昭和二十三年三月三十日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 法第四百四十六条により主文の通り判決する。 以上は裁判官全員の一致した意見である。 検察官小幡勇三郎関与 昭和二十三年三月三十日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 井 上 登 裁判官 庄 野 理 一 - 2 - 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 3 -
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