判決平成14年6月5日神戸地方裁判所平成14年(わ)第238号常習累犯窃盗被告事件 主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,(1)平成2年3月5日高知地方裁判所で常習累犯窃盗罪により懲役2年6月に,(2)平成9年12月15日洲本簡易裁判所で窃盗罪により懲役1年6月に,(3)平成11年9月29日田辺簡易裁判所で建造物侵入,窃盗罪により懲役2年にそれぞれ処せられ,いずれもその後各刑の執行を受けた((1)の刑は平成4年7月26日執行終了)ものであるが,更に常習として,平成14年2月26日午前1時45分ころ,神戸市a区bc丁目d番e号所在のAのお堂内から,B管理にかかる現金約160円を窃取したものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)弁護人は,被告人が賽銭を盗もうと思ってお堂の扉の一部を壊したことは間違いないが,現金約160円を窃取していないだけでなく,物色行為を開始する前に現行犯逮捕されていて,窃盗の実行の着手にも至っていないのであるから,被告人は無罪である旨主張し,被告人も当公判廷においてはこれに沿う供述をする。 しかしながら,前掲各証拠によれば,被告人は,お堂の扉の下部を壊し,そこから手を突っ込んで賽銭を盗もうと思い,お堂の扉の下部にはめられていた金属製の板をはずし,その奥の木製の板を割って手が差し入れられるようにしていることが認められるのであって,そのお堂の大きさや構造,壊された扉の部分と賽銭のあった場所との位置関係等を考え併せると,すでに賽銭に対する占有侵害の具体的危険が発生していたとみるべきであるから,被告人の公判供述のいうとおりであったとして 大きさや構造,壊された扉の部分と賽銭のあった場所との位置関係等を考え併せると,すでに賽銭に対する占有侵害の具体的危険が発生していたとみるべきであるから,被告人の公判供述のいうとおりであったとしても,すでに窃盗の実行の着手があったことを認めることができる上,被告人が現金約160円を窃取したことについても,以下のとおり間違いがないと認めることができる。 すなわち,前掲各証拠によれば,Bは,本件お堂を管理していたものであるが,お堂がこれまでに何度も賽銭泥棒による被害を受けており,本件前日の平成14年2月25日午後3時ころには,お堂の扉の下部に張り付けていた金属製の板が外されているのを見つけたことから,賽銭箱の周りに散らばっていた賽銭はそのままにしておいて,賽銭箱の中の賽銭をあらかじめ抜き取っておいたこと,Bは,賽銭泥棒を捕まえようと考え,同日午後10時30分ころから,お堂に隣接する飲食店内から見張っていたところ,翌26日午前1時40分ころ,お堂の扉の辺りで板を突き破るような音がし,お供物台がずらされ,その台と扉との間に人影が見えたことから,賽銭泥棒と思い警察に通報したこと,その約2分後にお堂に臨場した警察官によって,お堂の扉の前でうずくまっていた被告人が逮捕され,お堂の扉が前示のとおり壊されていたこと,Bがその逮捕直後にお堂内を確認したところ,前日賽銭箱の周りに散らばっていることを確認した賽銭のうち,扉の壊されたところから手の届く辺りのものがなくなっていたこと,被告人は,現行犯逮捕された当時,ズボンのポケットと小銭入れに入れたものを併せて,100円硬貨1枚,10円硬貨9枚,5円硬貨7枚,1円硬貨15枚の合計240円を所持していたことが間違いのない事実として認められるから,これらの事実からは,被告人が,お堂の扉を壊してから警察官が臨場する 円硬貨1枚,10円硬貨9枚,5円硬貨7枚,1円硬貨15枚の合計240円を所持していたことが間違いのない事実として認められるから,これらの事実からは,被告人が,お堂の扉を壊してから警察官が臨場するまでの約2分間に,扉の壊されたところから手の届く辺りにあった賽銭を窃取したものであることが推認できるというべきである。 なお,弁護人は,被告人以外の者が,磁石等を用いた器具を利用して,賽銭箱の周りに散らばっていた賽銭を盗んだ可能性がある旨主張するが,上記の各硬貨がその材質からみて磁石にひっつくとは思われないし,被告人以外の者がこれらの賽銭を盗んだことを窺わせるような形跡は存しないのであるから,弁護人のいうような可能性はないというべきである。 そして,警察官作成の現行犯人逮捕手続書(甲1)によれば,被告人が,警察官の質問に一旦は金は盗んでいないと言ったものの,「賽銭盗んでいないのか。」と聞かれて,「すいません盗みました。」と賽銭を窃取したことを自白し,そのズボンの右ポケットから小銭を出したことが認められ,また,被告人の検察官調書(乙9)及び警察官調書(乙2ないし6)によれば,被告人は,捜査段階においては,その後も一貫して賽銭を窃取したことを認めていたのみならず,被告人の警察官調書(乙5,6)によれば,本件犯行前に缶ジュースを飲みたいと思って小銭入れを見たところ80円くらいあったのを思い出したとして,現行犯逮捕された当時所持していた240円のうち約160円が盗んだものである旨,それまでの供述を訂正していることが認められるのであるから,前記の間違いがないと認められる事実と考え併せると,被告人が,捜査段階における供述において,賽銭約160円を盗んだ旨いうところは十分信用に値するというべきである。 被告人の当公判供述は,お堂の扉の下部の金属製の板をは 認められる事実と考え併せると,被告人が,捜査段階における供述において,賽銭約160円を盗んだ旨いうところは十分信用に値するというべきである。 被告人の当公判供述は,お堂の扉の下部の金属製の板をはずし,木製の板を壊したものの,賽銭を窃取する前に逮捕された旨いうものであるが,上記のような小銭ばかりを小銭入れのほかズボンのポケットにも分けて入れていたことを合理的に説明できていないのであるから,先にみたような事実関係や被告人の捜査段階における自白の経緯やその内容等に照らすと,その信用性は乏しいというほかない。 以上のとおりであうから,被告人が判示のとおり賽銭約160円を窃取したことは間違いがないと認めることができる。 (累犯前科)被告人は,(1)平成8年6月4日松山地方裁判所西条支部で詐欺罪により懲役1年に処せられ,平成9年5月14日その刑の執行を受け終わり,(2)その後犯した窃盗罪により,平成9年12月15日洲本簡易裁判所で懲役1年6月に処せられ,平成11年5月14日その刑の執行を受け終わり,(3)その後犯した建造物侵入,窃盗罪により,平成11年9月29日田辺簡易裁判所で懲役2年に処せられ,平成13年11月14日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙12)並びに上記各裁判の調書判決謄本(乙21)及び判決書謄本(乙22,23)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示所為は盗犯等の防止及処分に関する法律3条,2条(刑法235条)に該当するところ,被告人には前記の各前科があるので刑法59条,56条1項,57条により同法14条の制限内で4犯の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人を懲役2年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数 項,57条により同法14条の制限内で4犯の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人を懲役2年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中50日をその刑に算入し,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人にこれを負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,窃盗の常習累犯者である被告人がA神社の賽銭を窃取したという事案であるが,被告人は,判示の累犯前科を含め,これまでに窃盗罪や常習累犯窃盗罪等で何度も懲役刑の執行を受けた前科があるにもかかわらず,前刑の建造物侵入,窃盗罪による懲役2年の刑の出獄後3か月余りにして,またもや本件犯行に及んだものであって,被告人の窃盗の常習性は顕著であること,お堂の扉を壊すためのバール等を用意するなど,犯行は計画的であること,実際にお堂の扉を壊すなど,犯行の態様は悪質であって,被害は盗まれたものに止まらないことなどを併せ考えると,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ない。 しかしながら,本件犯行による被害は少額であること,被告人は出所後研ぎ師の仕事をしていたものの,研ぎ石が盗まれ仕事ができなくなり所持金も底をついたことから本件を犯したものであること,被告人は現在64歳と相当の年齢であること,被告人は,賽銭を盗むには至っていないと弁解しているものの,盗みをしようとしたことについては反省の態度を示していることなどの,被告人のために酌むべき事情もある。 (検察官の科刑意見・懲役3年)よって,主文のとおり判決する。 平成14年6月5日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣 6月5日 神戸地方裁判所第12刑事係 甲裁判官森岡安廣
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