令和2(行コ)242 相続税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月27日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-92287.txt

判決文本文5,736 文字)

- 1 -令和3年4月27日判決言渡令和2年(行コ)第242号 相続税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第546号) 主文1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が平成30年5月28日付けで亡Aに対してした,被相続人Bの相続に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 処分行政庁が平成30年5月28日付けで控訴人Cに対してした,被相続人Bの相続に係る相続税の更正処分のうち納付すべき税額909万8500円を超える部分及び同処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 4 処分行政庁が平成30年5月28日付けで控訴人Dに対してした,被相続人Bの相続に係る相続税の更正処分のうち納付すべき税額541万9800円を超える部分及び同処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要等(略称は,原判決のものを用いる。)1 本件は,被相続人B(本件被相続人)の相続人である亡A,控訴人C及び控訴人Dが,本件被相続人の相続(本件相続)により取得した財産の価額を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56ほかによる国税庁長官通達。 平成26年4月2日付け課評2-9ほかによる改正前のもの。評価通達)の定 - 2 -める評価方法により評価して本件相続に係る相続税(本件相続税)の申告をしたところ,処分行政庁が,本件相続に係る相続財産のうち一部の土地及び建物の価額について評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして,亡A,控訴人C及び控訴人Dに対し,本件相続税の各更正処分(本件各更正処分)及びこれら 続財産のうち一部の土地及び建物の価額について評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして,亡A,控訴人C及び控訴人Dに対し,本件相続税の各更正処分(本件各更正処分)及びこれらの処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)をしたことから,亡A,控訴人C及び控訴人Dがこれを不服として,本件各更正処分(控訴人C及び控訴人Dに対する各更正処分については各修正申告に係る納付すべき税額を超える部分)及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。亡Aは,原審の口頭弁論終結後判決言渡前に死亡したところ,同人の妻である控訴人Eが亡Aの訴訟手続を受継した。 原審は,亡A,控訴人C及び控訴人Dの請求をいずれも棄却したため,控訴人らがこれを不服として控訴した。 2 関連法令等の定め,前提事実,本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被控訴人の主張,争点及び争点に関する当事者の主張は,後記3のとおり当審における控訴人らの補充的主張を付加するほかは,原判決の「第2 事案の概要」の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決14頁5行目から6行目にかけての「鑑定評価基準」を「不動産鑑定評価基準」に改め,同20頁24行目の「本件不動産について,」を削る。 3 当審における控訴人らの補充的主張租税平等主義に照らせば,特定の納税者や財産についてのみ評価通達に定める評価方法以外の方法によって財産の価額を評価することは,原則として許されないところ,評価通達による評価が納税者間の租税負担の実質的な公平を図るための原理原則である以上,原則に対する例外を適用するには極めて慎重であるべきであり,納税者にとって予測可能性のある明確な基準がなければならない。本件各更正処分においては,そのような基準は明らかにさ めの原理原則である以上,原則に対する例外を適用するには極めて慎重であるべきであり,納税者にとって予測可能性のある明確な基準がなければならない。本件各更正処分においては,そのような基準は明らかにされておらず,本件各更正処分は,国民の租税に対する予測可能性を著しく失 - 3 -わせる不当なものであり,租税法律主義の趣旨に反し,評価通達6の適用に関する行政庁の裁量の範囲を著しく逸脱するものであるから,違法である。 ⑵ 評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格とのかい離の存在は,一般的な現象であり,全国の大都市圏には本件不動産よりも路線価と取引価格との間のかい離率が高い事例は極めて多数存在する。国税庁の調査によれば,いわゆるタワーマンションにつき,全国の20階以上の住戸343物件を調査し,平均すると,相続税の評価額が市場価格の3分の1程度にとどまっていたことが明らかになっている。このように評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格との間にかい離がある事例が多数存在する以上,かい離があることは,本件通達評価額によらないことが相当と認められる特別の事情を基礎づける事実にはなり得ないというべきである。また,本件不動産は,その形状や収益性に特殊性はなく,特別の事情を基礎づける事実は存在しない。 さらに,将来相続が発生し,相続税を支払うことになると予測される者が,そのための対策を取って,法令の範囲内で,できるだけ支払う税金の額を抑えようとするのは当然であり,そのような節税目的があることを,特別の事情を基礎づける事実とすべきではない。そもそも,本件被相続人は,昭和51年以来不動産賃貸業を営んできたのであり,本件不動産の購入は,平成22年以降追加物件の購入を検討してきた経過の一環であって,相続税対策のためではない。 ⑶ 本件鑑定評価は,更地価格の は,昭和51年以来不動産賃貸業を営んできたのであり,本件不動産の購入は,平成22年以降追加物件の購入を検討してきた経過の一環であって,相続税対策のためではない。 ⑶ 本件鑑定評価は,更地価格の算出の際に開発法を適用していないこと,積算価格試算のための取引事例比較法において採用された取引事例1が不適当であること,公示価格との均衡を欠いていること,積算価格を求める際に用いられた市場性修正率の根拠が不明であること,更地価格の算出に際して土地残余法を適用しなかったこと,土地建物一体の収益還元法において算定根拠が不明な賃料単価が設定され,その結果本件鑑定評価における運営収益が現実の平均的な運営収益を大幅に上回っていることに照らし信用性がない。 - 4 -したがって,本件鑑定評価額は,本件不動産の客観的な交換価値を示すものではなく,これに基づいてされた本件各更正処分等は違法である。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。 その理由は,以下のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審における控訴人らの補充的主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「第3 当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 2原判決25頁26行目の「考慮するため,」を「考慮するので,」に改める。 ⑵ 原判決28頁15行目の「本件不動産」を「不動産」に改める。 ⑶ 原判決29頁20行目から21行目にかけての「以外の評価方法」を削る。 ⑷ 原判決30頁19行目の「ア」を「ア及び」に改める。 3 当審における控訴人らの補充的主張に対する判断控訴人らは,どのような場合に評価通達に定める評価方法以外の方法によって財産の価額を評価するかについての基準が明らかではなく,本件各更正 る。 3 当審における控訴人らの補充的主張に対する判断控訴人らは,どのような場合に評価通達に定める評価方法以外の方法によって財産の価額を評価するかについての基準が明らかではなく,本件各更正処分は,国民の租税に対する予測可能性を著しく失わせる不当なものであり,租税法律主義の趣旨に反し,評価通達6の適用に関する行政庁の裁量の範囲を著しく逸脱するものであると主張する。 しかし,相続税法22条は,特別の定めのあるものを除くほか,相続等により取得した財産の価額は当該財産の取得の時における時価によると定めているところ,この時価については当該財産の客観的交換価値をいうものと解され,課税要件は明確である。もっとも,課税実務は,相続財産の客観的交換価値を個別に評価する方法を採ると,その評価方式,基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることがあり得るし,また,課税庁の事務負担が重くなって課税事務の迅速な処理に支障を来すおそれがあることなどから,あらかじめ定められた評価方法により画一的に財産の評価を行うこと - 5 -により納税者間の公平、納税者の便宜,徴税費用の節減を図るために評価通達を定めたものである。したがって,租税平等主義の観点に照らして,租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな場合についてまで,評価通達の定めにより評価すべきものではないし,そのような場合について評価通達の定めによらないで個別に財産を評価したとしても租税法律主義に違反するということはできない。なお,控訴人らは,予測可能性を問題とするところ,亡Aは,相続税を減少させる目的で本件不動産を相続開始時の直前に15億円で購入しているのであるから,評価通達の定めによる評価額と現実の取引価格との間に著しいかい離があることは十分認識していたというべきであり,現 を減少させる目的で本件不動産を相続開始時の直前に15億円で購入しているのであるから,評価通達の定めによる評価額と現実の取引価格との間に著しいかい離があることは十分認識していたというべきであり,現実の取引価格によって課税されることについて予測可能性がなかったということはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 ⑵ア 控訴人らは,評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格との間にかい離がある例は多数存在するから,かい離の存在は本件通達評価額によらないことが相当と認められる特別の事情を基礎づける事実にはなり得ないと主張する。 しかし,本件不動産の本件通達評価額は,本件鑑定評価額の2分の1にも達しておらず,金額にして5億円以上も少ないから,そのかい離の程度は著しいといわざるを得ないところ,本件全証拠によってもこのような著しいかい離の存在が一般的であると認めることはできない。控訴人らの主張するタワーマンションについての相続税評価額と市場価格のかい離に関する調査例は,賃貸用の中層共同住宅地である本件不動産とは事例を異にするものであって,これをもって本件不動産と同種の不動産について評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格との間に大幅なかい離が生じているのが一般的であると推認することもできない。 イ 控訴人らは,本件不動産は形状や収益性に特殊性はなく,本件通達評価 - 6 -額によらないことが相当と認められる特別の事情を基礎づける事実は存在しないと主張する。 しかし,本件不動産の形状や利用形態は競合する物件が少なく,収益性が見込めるものであることは,亡Aも購入を決断するに際して着目した点であり(乙41別紙15),本件通達評価額と本件鑑定評価額との間に大幅なかい離が生じることになった要 は競合する物件が少なく,収益性が見込めるものであることは,亡Aも購入を決断するに際して着目した点であり(乙41別紙15),本件通達評価額と本件鑑定評価額との間に大幅なかい離が生じることになった要因の一つと考えられる。したがって,本件不動産に特殊性がないということはできない。 ウ 控訴人らは,相続に際し,節税対策をとることは当然であり,本件被相続人が節税目的で本件不動産を購入したとしても,そのことが特別の事情を基礎づけるものではないと主張する。 しかし,本件不動産の購入及びそのための借入れは3億円を超える相続税の圧縮効果を生じさせるものであるところ,亡Aがかかる相続税の圧縮を認識し,これを期待して15億円を借り入れ,本件不動産を購入したことは,租税負担の実質的な公平という観点から見た場合,本件通達評価額によらないことが相当と認められる特別の事情を基礎づける事実に当たるというべきである。 エ 控訴人らは,本件被相続人が本件不動産を購入したのは不動産賃貸業の一環であり,相続税対策のためではないと主張する。 しかし,亡Aが,本件相続に係る相続税の負担を軽減する方法について千葉銀行F支店の担当者らに相談し,その方策として,紹介された本件不動産を購入することになった経緯は,証拠(乙40の1,乙41)から優に認められるところであり,本件不動産の購入が相続税対策のためであったことは明らかである。 オ したがって,控訴人らの上記各主張はいずれも採用することができない。 ⑶ 控訴人らは,本件鑑定評価は種々の点に照らして信用性がなく,本件鑑定評価額は本件不動産の客観的な交換価値を示すものではないと主張する。 - 7 -しかし,本件鑑定評価について控訴人らが指摘する点を考慮しても,本件鑑定評価の採用した手法に なく,本件鑑定評価額は本件不動産の客観的な交換価値を示すものではないと主張する。 - 7 -しかし,本件鑑定評価について控訴人らが指摘する点を考慮しても,本件鑑定評価の採用した手法による本件不動産の算定が不合理であるということができないことは,引用に係る原判決が説示するとおりであり,控訴人らの上記主張はいずれも採用することができない。 第4 結論よって,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官 足 立 哲 裁判官 河 本 晶 子 裁判官 堀 田 次 郎

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る