平成18(行コ)110 所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第134号,差戻前の控訴審・当庁平成15年(行コ)第7号,上告審・最高裁判所平成16年(行ヒ)第86号,第87号)

裁判年月日・裁判所
平成18年9月13日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文20,430 文字)

- 1 -主文1(1)一審原告の控訴に基づき,原判決中,一審被告が平成10年3月31日付けで一審原告に対してした,平成6年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び重加算税賦課決定(ただし,原判決主文第2項が取り消すこととしている加算税額438万1500円を超える部分を除く)に関する部分を取り消す。 。 (2)上記更正処分の部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 前項の部分に関する訴訟の総費用は,一審被告の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨(差戻し前控訴審のもの) 一審原告原判決を次のとおり変更する。 (1)一審被告が平成10年3月30日付けでした一審原告の平成6年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定を取り消す。 (2)一審被告が平成10年3月31日付けでした一審原告の平成6年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 一審被告(1)原判決中,一審被告の敗訴部分を取り消す。 (2)一審原告の請求をいずれも棄却する。 第2事案の概要 本件は,一審原告が,平成6年8月本件譲渡資産を売却し,同年7月本件買換資産を取得し直ちに居住の用に供したことから,これらの不動産の売却,取得に伴う税務処理を含めて平成6年分の所得税の確定申告手続をA税理士(以下「A」又は「A税理士」という)に委任したのであるが,同税理士が,税務署職員と共謀して架空経。 費を計上するなどした内容虚偽の納税申告書を作成,提出して過少申告を行っていたことが発覚し,その後に,一審原告が租税特別措置法(ただし,平成7年法律第55号による改正前のもの。以下「措置法」という)36条の6第1項所定の買換特例。 (以下「本件買換特例」とい 告を行っていたことが発覚し,その後に,一審原告が租税特別措置法(ただし,平成7年法律第55号による改正前のもの。以下「措置法」という)36条の6第1項所定の買換特例。 (以下「本件買換特例」という)の適用を前提とした修正申告(以下「本件修正申。 告」という)をしたところ,一審被告から,平成10年3月30日付けで,本件修。 正申告により一審原告が新たに納付すべきこととなった税額に対し過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「第一次決定処分」という)を受け,さらに,。 同月31日付けで,本件買換特例の適用を否認した額での更正処分(以下「本件更正処分」という)及び本件更正処分により一審原告が新たに納付すべきこととなった。 税額に対し重加算税の賦課決定処分(以下「第二次決定処分」という)を受けたた。 め,一審原告がこれらの処分はいずれも違法であると主張して,その取消しを求めた(ただし,本件更正処分については,修正申告額である708万8300円を超える部分の取消しを求めた)事案である。 本件の争点は,以下のとおりであった。 ①第一次決定処分について,その取消しを求める訴えが,不服申立前置の要件を欠- 2 -く不適法なものといえるか否か。 ②第一次決定処分及び第二次決定処分の重加算税賦課との関係において,一審原告が,国税通則法68条1項に規定する「隠ぺい又は仮装」の行為をしたといえるか否か。 ③第一次決定処分の過少申告加算税賦課との関係において,一審原告の修正申告書の提出が,国税通則法65条5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。 ,,④第一次決定処分の過少申告加算税賦課との関係において一審原告の過少申告が国税通則法6 あったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。 ,,④第一次決定処分の過少申告加算税賦課との関係において一審原告の過少申告が国税通則法65条4項に規定する「正当な理由がある」と認められるか否か。 ⑤本件更正処分との関係において,国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等」に該当するか否か。 ⑥本件更正処分との関係において,本件買換特例の適用の是非に関し,措置法36条の6第2項で準用する同法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情がある」と認められるか否か。 ⑦本件更正処分及び第二次決定処分との関係において,本件買換特例の適用を認めなかったことが禁反言の法理に反して違法であるといえるか否か。 本件の経過(1)原審は,以上の争点について次のとおり判示して,第一次決定処分中の重加算税賦課決定のうち加算税額99万1000円を超える部分及び重加算税を賦課した第二次決定処分のうち加算税額438万1500円を超える部分を取り消し,一審原告のその余の請求を棄却した。 ア第一次決定処分の取消しを求める訴えは,国税通則法115条1項の定める不服申立前置の要件を欠いているが,本件においては,同項3号にいう正当な理由があるときに該当するから,上記訴えは適法である(争点①)。 イ国税通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為を納税者以外の者が行った場合であっても,納税者本人の行為と同視できる場合には,納税者に対して重加算税を課することができるが,本件においては,A税理士の不正行為を一審原告の行為と同視することは相当でないから,上記にいう隠ぺい又は仮装の行為があったと認めることはできない(争点②)。 ウ一審 加算税を課することができるが,本件においては,A税理士の不正行為を一審原告の行為と同視することは相当でないから,上記にいう隠ぺい又は仮装の行為があったと認めることはできない(争点②)。 ウ一審原告は,修正申告書の提出に先立ち,その申告に係る国税についての調査があったことにより,平成6年分の所得税について更正があるべきことを予知していたと認められる(争点③)。 エ一審原告のした修正申告における納付すべき税額の計算の基礎となった事実が,過少の税額を記載した確定申告の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,正当な理由があったとは認められない(争点④)。 オ客観的に偽りその他の不正の行為によって税額を免れた事実が存在する場合には,国税通則法70条5項の適用があり,本件においては,一審原告の不正行為の認識の有無にかかわらず,同項の適用があるから,一審原告の平成6年- 3 -分の所得税に係る更正は,その法定申告期限の日から7年を経過するまで行うことができる(争点⑤)。 カ措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情」とは,天災その他本人の責めに帰することのできない事由により,確定申告書の提出又は確定申告書に買換特例の適用を受けようとする旨の記載をし若しくはそのための必要資料を添付することが不可能であったと認められるような客観的事情を指し,本件においては,一審原告にやむを得ない事情が存したと認めることは困難であるから,本件買換特例の適用を認めることはできない(争点⑥)。 キ本件買換特例の適用を認めなかったことが,禁反言の原則に反するとはいえない(争点⑦)。 ク以上によれば,第一次決定処分のうち過少申告加算税の賦課決定部分は適法であるが,重加算税の賦課決定部分は,隠ぺい又は仮装の事実が認められない点において違法である。 るとはいえない(争点⑦)。 ク以上によれば,第一次決定処分のうち過少申告加算税の賦課決定部分は適法であるが,重加算税の賦課決定部分は,隠ぺい又は仮装の事実が認められない点において違法である。しかし,重加算税の賦課は,過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでおり,修正申告が更正を予知してされたものでないときに該当せず,修正申告により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が,確定申告の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があるとは認められないから,第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分は,国税通則法65条1項,2項の規定を適用して算出した合計額103万7000円から,同処分のうち過少申告加算税賦課決定部分の金額4万6000円を差し引いた99万1000円の限度では適法と認められる。 次に,本件更正処分は,更正の期間制限に反せず,本件買換特例の適用も認められないから,適法である。 さらに,第二次決定処分は,重加算税賦課部分については違法であるが,第一次決定処分と同様,過少申告加算税の賦課要件を満たしているから,国税通則法65条1項,2項の規定を適用して算出した合計額438万1500円の限度では適法と認められる。 (2)差戻し前の控訴審は,次のとおり判示して,原判決中,本件更正処分及び第二次決定処分に係る部分を変更し,本件更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び第二次決定処分の全部を取り消し,一審原告のその余の控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却した。 ア前記の争点①,争点②,争点③,争点④についての判断は,原判決と同一である。 イ本件更正処分には,国税通則法70条5項の適用はなく,同条1項の定める3年の期間制限を超えてされたものであるから,違法である(争点⑤) ②,争点③,争点④についての判断は,原判決と同一である。 イ本件更正処分には,国税通則法70条5項の適用はなく,同条1項の定める3年の期間制限を超えてされたものであるから,違法である(争点⑤)。 ウ以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件更正処分のうち修正申告額を超える部分は取り消されるべきであり,また,本件更正処分を前提としてされた第二次決定処分も違法であることが明らかである。 (3)差戻し前の控訴審判決に対し,一審被告が敗訴部分の破棄を求めて上告受理の申立てをし,一審原告も敗訴部分の破棄を求めて附帯上告受理の申立てをした- 4 -ところ,最高裁判所は,本件を上告審として受理した上,一審被告の上告受理申立ての理由中,事実認定についての経験則違反をいう点(理由書のうち,第1の4(1)ウ及び第2の4)を排除する旨の決定をした。その上で,次のとおり判示して,上記控訴審判決中,第一次決定処分に関する部分(ただし,一審判決が取り消すこととしている重加算税賦課決定のうち加算税額99万1000円を超える部分を除く)を破棄し,同部分についての一審判決を取り消した上,第一。 次決定処分の全部を取り消し,また,本件更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び第二次決定処分に関する部分(ただし,一審判決が取り消すこととしている加算税額438万1500円を超える部分を除く)。 を破棄した上,同部分についての本件を当庁に差し戻し,さらに,一審被告のその余の上告を棄却した。 ア国税通則法68条1項は,本来的には,納税者自身による隠ぺい又は仮装の行為の防止を企図したものと解されるが,納税者以外の者が隠ぺい又は仮装の行為を行った場合であっても,それが納税者本人の行為と同視することができるときには,形式的にそれが納税者自身 る隠ぺい又は仮装の行為の防止を企図したものと解されるが,納税者以外の者が隠ぺい又は仮装の行為を行った場合であっても,それが納税者本人の行為と同視することができるときには,形式的にそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課が許されないとすると,重加算税制度の趣旨及び目的を没却することになる。しかし,本件においては,A税理士の不正行為をもって納税者である一審原告本人の行為と同視することはできず,一審原告につき国税通則法68条1。 ,項所定の重加算税賦課の要件を満たすものということはできないそうするとこれと同旨の差戻し前控訴審の判断は是認することができる。 イ本件におけるA税理士の不正行為は,国税通則法70条5項にいう偽りその他不正の行為に当たることはいうまでもない。そして,同項の文理及び立法趣旨にかんがみれば,同項は,納税者本人が偽りその他不正の行為を行った場合,,に限られず納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行いこれにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用されるものというべきであり,A税理士が不正行為に及ぶことについて一審原告に認識等がなかったとしても,同項の適用は免れない。また,同項の文理及び立法趣旨からすれば,同項の適用範囲は,偽りその他不正の行為によって免れた税額に相当する部分のみに限られるものではなく,偽りその他不正の行為により全部又は一部の税額を免れた当該国税の全部が更正の対象となるから,偽りその他不正の行為により免れた税額に相当する部分について修正申告がされたとしても,当該年分の当該国税に更正すべき税額があるときは,延長された7年の除斥期間内であれば,なお更正をすることができるものである。そうすると,平成6年分の所得税の法定申告期限から7年を経過する前の平成10年3月31日 該国税に更正すべき税額があるときは,延長された7年の除斥期間内であれば,なお更正をすることができるものである。そうすると,平成6年分の所得税の法定申告期限から7年を経過する前の平成10年3月31日付けでされた本件更正処分は,国税通則法70条5項所定の除斥期間内にされたものということができる。 ウ以上と異なる差戻し前控訴審の判断には,国税通則法70条5項の解釈適用の誤りがある。もっとも,本件修正申告に当たって新たな隠ぺい又は仮装の行為が行われたことはなく,本件更正処分に基づいて納付すべき税額に関しても重加算税の賦課要件がないことは明らかであるから,第二次決定処分のうち過- 5 -少申告加算税額相当分を超える部分を取り消すべきものとした点は,結論において相当ということができる。 これに対し,本件更正処分のうち修正申告額を超える部分及び第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分までを取り消すべきものとした差戻し前控訴,。 ,審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるそして本件更正処分及びこれに伴う過少申告加算税賦課の適否,具体的には,本件買換特例の適用に関する措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情」の有無等につき更に審理を尽くさせるため,上記部分について本件を差し戻す。 エ国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認められる場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。本件において,A税理士のした不正行為は通常想定し難いものであり,一審原告としては適法な確定申告手続を行ってもらうことを前提に必要な納税資金を提供していたという事情があるだけではなく, 相当である。本件において,A税理士のした不正行為は通常想定し難いものであり,一審原告としては適法な確定申告手続を行ってもらうことを前提に必要な納税資金を提供していたという事情があるだけではなく,税務署の職員が収賄の上,不正行為に積極的に共謀加担した事実があって,課税庁の職員のこのような積極的な関与がなければ不正行為は不可能であったともいえるから,過少申告加算税の賦課を不当とすべき極めて特殊な事情が認められる。したがって,本件修正申告によりその納付すべき税額の計算の基礎となった事実が確定申告において税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認められる。 そうすると,これと異なり,第一次決定処分のうち過少申告加算税賦課決定及び重加算税賦課決定中の過少申告加算税額相当分を適法であるとした差戻し前控訴審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 (4)以上の経過を辿った結果,一審原告の本件請求のうち第一次決定処分の取消しを求める請求は,その全部を取り消すべきものとした本件上告審判決により確定した。また,第二次決定処分の取消しを求める請求は,一審判決が取り消すこととしている過少申告加算税額相当分438万1500円を超える部分について,一審被告の上告を棄却した本件上告審判決により確定した。したがって,差戻し後の当審に係属している請求は,本件更正処分のうち修正申告額である708万8300円を超える部分及び第二次決定処分のうち上記加算税額相当分438万1500円の各取消しを求めるものとなる。 そこで,審判の対象として残された上記の各請求に関する争点は,前記の争点⑤(本件更正処分との関係において,国税通則法70条5項の適用があるか否か,争点⑥(本件更正処分との関係において,本 となる。 そこで,審判の対象として残された上記の各請求に関する争点は,前記の争点⑤(本件更正処分との関係において,国税通則法70条5項の適用があるか否か,争点⑥(本件更正処分との関係において,本件買換特例の適用に関する。)措置法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情がある」と認められるか否か,争点⑦(本件更正処分及び第二次決定処分との関係において,本件買。)換特例の適用を認めなかったことが禁反言の法理に反して違法であるといえるか否か)である。また,差戻し後の当審において,当事者双方は,第二次決定処。 分のうち過少申告加算税額相当分につき,国税通則法65条4項に規定する「正- 6 -当な理由がある」と認められるか否かという点を巡って主張を行った。 しかし,争点⑤については,本件上告審判決が差戻し前の控訴審判決を破棄するに当たり,本件更正処分は国税通則法70条5項所定の除斥期間内にされたものということができると判断していることから,差戻し後の当審は,その判断に拘束される。したがって,差戻し後の当審における争点は,上記の争点⑥及び争点⑦,更に上記の「正当な理由」を巡る新たな争点ということになる。 本件の前提事実,上記各争点に関する当事者双方の主張は,後記4項のとおり当審における主張差戻し前の控訴審における主張も含むを付加するほか原判決事(。),「実及び理由」の「第2事案の概要」の1項,2項,並びに3項のうち(被告の本,案の主張(2)のイ・ウ・エ,同じく(原告の主張(3)のイ・ウ及び(4)の))イに記載されたとおりであるから,これを引用する。 当審における主張(1)争点⑥(本件買換特例の適用に関して,措置法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情がある」と認められるか否か)について。 (一審 おりであるから,これを引用する。 当審における主張(1)争点⑥(本件買換特例の適用に関して,措置法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情がある」と認められるか否か)について。 (一審原告の主張)住替えによる居住水準の向上等を図るという住宅政策上の配慮から設けられた買換特例の趣旨にかんがみると,実体的に特例が適用できる場合に,単に期限内に手続を取れなかったというだけでその適用を排除することは,納税者にとって過酷な事態を生じさせるから,買換特例の適用を排除するほどの責任を納税者に負わせることが妥当でない場合は,やむを得ない事情の存在を認め,特例を適用して納税者を救済することが立法趣旨に沿うものといえる。また,買換特例の制度は,いずれ課税されるものを繰り延べるだけで,決して免税されるわけではないから,納税者を保護すべき場合を厳格に解する必然性は小さい。 ,「」,,この点からするとやむを得ない事情の解釈について原判決のように天災その他本人の責めに帰することのできない客観的事情を指し,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情はこれに該当しないとすることは,狭きに失する解釈であり,申告する者について,一般の納税者として通常要求される程度の注意を払ったとしても,なお確定申告書の提出又は記載若しくは添付を行うことが不可能であったといえる事情があって,本件買換特例の適用を認めないことが不当,酷である場合をいうものと解すべきである。 ,,本件において国が資格を付与した税理士に申告を依頼したにもかかわらずその税理士と現職の統括国税調査官が共謀して不正申告を行うことは,通常要求される程度の注意を払ったとしても,一審原告はもちろん,一般人にとって予測することは困難である。しかも,一審原告は,租税についての専門的知識を有しない一 査官が共謀して不正申告を行うことは,通常要求される程度の注意を払ったとしても,一審原告はもちろん,一般人にとって予測することは困難である。しかも,一審原告は,租税についての専門的知識を有しない一般納税者にすぎず,専門家を信頼して申告の依頼をしたとしてもあながち不合理ではない。一審原告にとって,専門家であるA税理士の不正申告のために,納税者を保護するための本件買換特例の適用を受けられなくなるというのは極めて酷であり,かつ,一審原告が本件買換特例について確定申告書の提出又は記載若しくは添付を行うことが不可能であったといえるから,や- 7 -むを得ない事情が存したものというべきである。 仮にやむを得ない事情について,原判決が示すような解釈をしたとしても,一審原告は,専門家であるA税理士が示す税額に関して専門知識に基づいて正当に処理がされたものであると理解したのであり,その選任監督に過失があったとはいえないこと,一審原告が利得を得ているわけではなく,脱税の認識もないこと,適正な金額の納税申告を行えなかった原因として,徴税側である税務署職員が不正に関与し,A税理士と通謀して脱税行為を行った上,一審原告から預かった金員を詐取していることに照らすと,本件においては,正しく天災と同等に評価すべき納税者本人の責めに帰することのできない客観的な事情が介在し,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情を超えていたといえるから,やむを得ない事情が存したというべきである。 (一審被告の主張)買換特例の制度は,個人の住宅の住替えによる居住水準の向上等を図るという住宅政策上の観点から創設された特例であるが,どのような手続,要件の下に優遇を認めるかは立法政策の問題であり,当該措置が例外的な優遇措置であることに照らせば,法が定めた手続,要件については安易にこれを拡張 策上の観点から創設された特例であるが,どのような手続,要件の下に優遇を認めるかは立法政策の問題であり,当該措置が例外的な優遇措置であることに照らせば,法が定めた手続,要件については安易にこれを拡張するような解釈は許されない。措置法36条の6第2項が準用する同法36条の2第4項は,大量的な事務処理が要求される租税行政の執行の特殊性にかんがみ,早期に税額の確定を図る趣旨から,本件買換特例の適用を受けようとする者の譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に,本件買換特例の適用を受けようとする旨の記載があり,かつ,本件添付書類の添付がある場合に限りその適用をする旨規定しており,修正申告書に本件買換特例に関する所定事項の記載がされるなどしていても,確定申告書にそれらが欠けていれば,手続要件を欠くものとして本件買換特例の適用は認められない。これに対し,確定申告において選択権行使の意思表示をしない納税者は,原則どおり長期譲渡所得課税を受けることになるが,このことにより納税者が特に不利益を被るものでもない。 以上に照らせば,措置法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情がある」と認められる場合とは,上記の法の趣旨の例外として,所定の措置を採らないにもかかわらず,特例の適用を受けることを承認することがその趣旨に反しない場合に限られるのであるから,そのような客観的事情がある場合,即ち天災その他本人の責めに帰することのできない事由がある場合を指し,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情はこれに該当しないと解すべきである。そうすると,納税者が依頼した税理士の過誤による場合,あるいは税理士が作成した確定申告書を納税者が十分に検討しなかった場合などは,確定申告書の提出又は記載若しくは本件添付書類の添付がなかったことについて,やむを得ない事情がある 理士の過誤による場合,あるいは税理士が作成した確定申告書を納税者が十分に検討しなかった場合などは,確定申告書の提出又は記載若しくは本件添付書類の添付がなかったことについて,やむを得ない事情があると認めることはできない。 本件において,一審原告は,本件委任の前から本件買換特例の存在及び要件を知り,平成6年分の申告納税額を自分なりに試算した上,雪谷税務署に赴いて本件譲渡資産の譲渡に係る所得税の確定申告手続を相談し,同年分の所得税- 8 -の正当な納税額が698万0800円であることを教えられ,しかも,同税務署で確定申告書の下書き等の手直しをしてもらっていた。ところが,一審原告は,A税理士の言葉を安易に信じて,それより約180万円も安い520万円とする方法による本件確定申告手続を選択し,後日,同税理士から確定申告が終了したとの報告を受け,預けていた書類一切の入ったファイルを受け取った,。 ,際にもその中身を点検したり確認したりすることもしなかったそうすると本件確定申告書に本件買換特例の適用を受ける旨の記載がなく,本件添付書類の添付を欠いていることについて,一審原告に落ち度があることは明らかであり,その責めに帰することのできない客観的事情はなく,やむを得ない事情が存すると認めることはできない。 (2)争点⑦(本件買換特例の適用を認めなかったことが禁反言の法理に反して違法であるといえるか否か)について。 (一審原告の主張)B査察官は本件において買換特例の適用を認める旨述べたのであるが,同人は国税局の職員であるから,一審被告の上級官庁である東京国税局が買換特例の適用を認める旨の見解を述べたということができ,そうである以上,行政の一体性からして,禁反言の法理により,B査察官の発言を信じた一審原告について本件買換特例の適用を認めるべきであ 国税局が買換特例の適用を認める旨の見解を述べたということができ,そうである以上,行政の一体性からして,禁反言の法理により,B査察官の発言を信じた一審原告について本件買換特例の適用を認めるべきである。 (一審被告の主張)B査察官が,一審原告に対して,本件買換特例の適用を認める旨の発言をした事実はなく,禁反言の法理をいう一審原告の主張は失当である。 ところで,租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,信義則の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしても,なお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて信義則の適用の是非を考えるべきものである。そして,その特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,①税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,②納税者がその表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したところ,③後にその表示に反する課税処分が行われ,④そのために納税者が経済的不利益を受けることになったかどうか,⑤納税者が税務官庁の表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したことについて,納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない(最判昭和62年10月30日。そして,この場合の「信頼の対象となる公的見解の表示」とは,)租税法律主義における合法性の要請と法的安定性の要請の見地から慎重に決せられるべきであり,租税職員の見解の表示がすべて信頼の対象となるのではなく,原則として一定の責任ある立場の者の正式な見解の表示のみが信頼の対象となるとみるべきである。本件において,一審原告は,査察官が所得税法違反の告発に向けた調査 表示がすべて信頼の対象となるのではなく,原則として一定の責任ある立場の者の正式な見解の表示のみが信頼の対象となるとみるべきである。本件において,一審原告は,査察官が所得税法違反の告発に向けた調査を職務としていること,査察官に更正決定を行うか否かの判断決定権限がないことは十分認識していたはずであり,査察官が査察調査に- 9 -際し,口頭で行った買換特例に関する見解の表示が,信義則の適用において,「信頼の対象となる公的見解の表示」に当たらないことは明らかである。 (3)差戻し後の当審における新たな争点(第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分につき,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由がある」と認められるか否か)について。 (一審原告の主張)仮に一審原告の平成6年分の所得税について本件買換特例の適用を受けられないとしても,一審原告が所得金額を過少に申告したことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」が存する。 まず,第一次決定処分中の過少申告加算税部分と第二次決定処分中の過少申告加算税額相当分とは,同じ平成6年分の所得税の申告について行われた処分であって,確定申告に関わる事情は同一であり,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情が認められ,本件買換特例の適用に関する問題があるか否かによって,正当な理由の存否が異なるものではない。 また,第二次決定処分における過少申告加算税額相当分の対象が本件修正申告に対するものであったとしても,一審原告が修正申告に当たって本件買換特例の適用を前提として計算したのは,東京国税局のB査察官や雪谷税務署のC統括官から,本件買換特例の適用を認める方向での指示を受けたためである。 そうすると,一審原告は,本件買換特例の適用を前提とした税務職員の指導を信じたのであるから,真に納税者の 査察官や雪谷税務署のC統括官から,本件買換特例の適用を認める方向での指示を受けたためである。 そうすると,一審原告は,本件買換特例の適用を前提とした税務職員の指導を信じたのであるから,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があり,過少申告加算税を課することが不当又は酷であるといえる。 したがって,第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分についても,一審原告が本件修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が,本件確定申告において税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由がある」と認められる。 (一審被告の主張)国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」の意義について,本件上告審判決の趣旨に照らせば,納税者の主観的な事情や法の不知又は解釈の誤りに基づく場合は含まれず,加えて,過少申告加算税が,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げることを目的として設けられた制度であることからすれば,正当な理由がある場合とは,納税者において当初から適法な期限内申告をする契機が客観的に与えられていなかったような場合に限られると解すべきであり,安易にこれを拡張するような解釈は許されない。 ところで,第一次決定処分は,本件修正申告により新たに納付すべきこととなった税額を基礎として計算されているのに対し,第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分は,一審原告が本件買換特例の適用があることを前提として本件修正申告書を提出したことについて,一審被告が本件買換特例を適用することができないとして行った本件更正処分に基づき,新たに納付すべきこと- 10 -となった税額 例の適用があることを前提として本件修正申告書を提出したことについて,一審被告が本件買換特例を適用することができないとして行った本件更正処分に基づき,新たに納付すべきこと- 10 -となった税額を基礎として計算されている。そして,前記のとおり,一審原告は,平成6年分の所得税について本件買換特例の適用を受けることができないのであるから,本件修正申告は,過少申告であることが明らかである。 この場合に,第二次決定処分の過少申告加算税相当分について国税通則法65条4項の「正当な理由」があるかどうかは,本件更正処分の税額の計算の基礎となった事実について,本件修正申告書において税額の計算の基礎とされて「」,いなかったことに正当な理由があるかどうかにより判断すべきものであり本件修正申告書の提出につきA税理士の関与の事実は認められないから,一審原告の主張は失当である。 また,B査察官やC統括官が本件買換特例の適用を認めるような指示や指導をした事実はないのであって,一審原告が過少申告となる修正申告をしたことについて,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合には当たらない。 したがって,一審原告が本件修正申告書の提出に当たって本件買換特例を適用して納付すべき税額を過少に申告したことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由がある」とは認められない。 第3当裁判所の判断 前記のとおり,差戻し後の当審に係属している請求は,本件更正処分のうち修正申告額である708万8300円を超える部分及び第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分である438万1500円の各取消しを求めるものであるところ,当裁判所は,前記の争点⑥について,本件においては,本件買換特例の適 万8300円を超える部分及び第二次決定処分のうち過少申告加算税額相当分である438万1500円の各取消しを求めるものであるところ,当裁判所は,前記の争点⑥について,本件においては,本件買換特例の適用に関して措置法「」,36条の2第5項に規定するやむを得ない事情があると認められるべきであって本件買換特例の適用を否認した本件更正処分は,上記修正申告額を超える部分において違法であるから取り消されるべきであり,また,本件更正処分を前提とした第二次。 ,決定処分のうち過少申告加算税額相当分も取消しを免れないと判断するその理由は以下のとおりである。 第二次決定処分に至るまでの事実関係前記の前提事実(原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の2項)に加えて,証拠(甲1,2,5,8,乙4,5,原審における一審原告本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (),,,, 一審原告は高校を卒業後セールスウエーターなどの仕事を経験した後信用金庫等において長らく運転手として稼働していた。一審原告には,アパートの家賃収入があったことから,青色申告者として,毎年,不明なところを税務署や不動産屋に尋ねたりしながら,自ら確定申告をしていた。 (2)一審原告は,平成6年8月,株式会社Dに対し,10年を超えて所有していた居住用財産である本件譲渡資産(東京都大田区α×××番1所在の土地建物。 なお,建物は昭和49年12月に建築された)を代金1億4400万円で売却。 する旨の契約を締結した。また,一審原告は,同年7月,Eから,本件買換資産(東京都大田区α×××番2所在の一審原告所有地上に存した借地権付き建物)- 11 -を代金6206万円で買い受ける旨の契約を締結し,同年10月,その所有権を取得して直ちに居住の用に供した 換資産(東京都大田区α×××番2所在の一審原告所有地上に存した借地権付き建物)- 11 -を代金6206万円で買い受ける旨の契約を締結し,同年10月,その所有権を取得して直ちに居住の用に供した。なお,一審原告は,その後,上記建物を取り壊し,同所に新たな建物を建築して居住の用に供している。 (3)一審原告は,本件譲渡資産の譲渡について妻を通して本件買換特例の適用があることを知り,確定申告書や所定の用紙に下書きをするなどして,平成6年分の所得税の申告納税額を380万7000円と試算した上,平成7年2月13日ころ,所得税の確定申告手続の相談のため,上記の下書き等に係る書類を持参して雪谷税務署に赴き,その担当係官から,平成6年度分の本件譲渡資産の譲渡に係る所得税額が698万0800円となることを教えられた。 (4)一審原告は,同日,雪谷税務署からの帰りに親戚の者が経営する喫茶店に立ち寄り,税務署に相談に行ってきたことを話していたところ,客として来店して,,いたA税理士が名刺を差し出すなどして近づきその話に興味を持ったことから事務所を見せてもらいに行くこととなった。そして,一審原告は,A税理士が雪谷税務署のすぐ近くに立派な事務所を構え,また「私は国税局のOBだ「税,」,務署長は私の部下のようなもんだ「偉い人はみんな知っている」などと言う」,A税理士を信用し,本件買換特例の適用の件で税務署に相談に行ってきたことを話した上,雪谷税務署で手直しをしてもらった確定申告書の下書き等の書類を同人に見せた。すると,A税理士が「私に任せなさい,もう少し安くなるから」,と言ったため,一審原告は,安くなるとの言葉にうれしくなり,同人に本件確定申告手続を依頼する決心をした。 (5)一審原告は,平成7年2月14日,上記の下書きも含め,本件譲渡資産 し安くなるから」,と言ったため,一審原告は,安くなるとの言葉にうれしくなり,同人に本件確定申告手続を依頼する決心をした。 (5)一審原告は,平成7年2月14日,上記の下書きも含め,本件譲渡資産の譲渡に係る関係書類等を持参して,A税理士の事務所に赴き,税額と手数料について尋ねたところ,A税理士は「手数料込みで520万円でよい」と答えたが,,どのような方法で税金が安くなるかなどについて説明しなかった。一審原告も,A税理士が述べた金額が雪谷税務署で教えられた納付すべき所得税額より約180万円も低かったものの,何らかの節税方法があるのではないか,あるいは雪谷税務署で教えられた金額が間違っていたのかもしれないと考え,その点をA税理士に尋ねたりはしなかった。一審原告は,同日,委任状に署名して,正式にA税理士に対し本件確定申告手続を委任した上,本件譲渡資産の譲渡に係る関係書類等を交付し,同月17日,同人に支払うべき所得税及び手数料として520万円を支払った。 (6)A税理士は,平成7年3月14日,一審原告の住所欄に「横浜市β××××-110」と虚偽の住所を記載し,長期譲渡に係る一般所得分の必要経費欄に本件譲渡資産の不実の取得費等の名目で「1億4336万6721円」と虚偽の数額を記載するなどした上,長期譲渡所得金額,総所得金額及び納付すべき税額を,。 ,いずれも0円とする本件確定申告書を作成しこれを緑税務署に提出したなお本件確定申告書には,本件買換特例の適用を受ける旨の記載はなく,かつ,本件添付書類も添付されていなかった。その当時,緑税務署個人課税第5部門の統括国税調査官として勤務していたFは,A税理士から,一審原告ほか3名の平成6年度分の譲渡所得に係る所得税の各確定申告につき,架空経費等の計上により譲- 12 -渡所得を過少申告した 税第5部門の統括国税調査官として勤務していたFは,A税理士から,一審原告ほか3名の平成6年度分の譲渡所得に係る所得税の各確定申告につき,架空経費等の計上により譲- 12 -渡所得を過少申告した事実を黙認するなどしてその発覚を未然に防止してもらいたい旨の請託を受け,その謝礼として現金500万円の供与を受けて賄賂を収受し,一審原告らの各確定申告に係る過少申告の事実を黙認し,調査の手が及ばないように取り計らった。A税理士は,一審原告から受領した520万円の全額を自己の用途に費消した。 (),, 一審原告はA税理士がよもや上記のような不正行為を働くことを認識せずそのような疑いを抱くこともなく,同人が適法に確定申告手続を行うものと信頼していた。一審原告は,平成7年3月16日,A税理士の事務所に電話し,確定申告がすべて終了したとの報告を受け,その後,同人から預けていた書類一切の入ったファイルを受け取ったが,中身の点検や確認を一切しなかった。 (8)A税理士は,税務署職員として勤務した後,昭和42,3年ごろ,Gに所属する税理士として登録し,雪谷税務署の前に事務所を構えて開業したが,遅くとも平成元年ころから,現役の税務署職員であったH,Fなどの協力を得て,同人らに賄賂を交付し,税務申告を不正に行って脱税を繰り返すようになっていたところ,平成9年ころ,これらの脱税行為が発覚し,その後,所得税法違反等の罪により懲役刑の実刑判決を受けた。なお,Fも,平成10年6月,上記の加重収賄等の罪により懲役3年の実刑及び1700万円の追徴の判決を受けた。 (9)東京国税局は,上記不正行為の発覚に伴い,平成9年10月14日,一審原告に対する査察調査に着手した。その後,一審原告は,平成10年1月6日,一審被告に対し,本件買換特例の適用を前提として,納付すべき 東京国税局は,上記不正行為の発覚に伴い,平成9年10月14日,一審原告に対する査察調査に着手した。その後,一審原告は,平成10年1月6日,一審被告に対し,本件買換特例の適用を前提として,納付すべき税額を708万8,,「」300円とする本件修正申告書を提出し併せて譲渡内容についてのお尋ねと題する書面に本件買換特例の適用を受ける旨を記載して提出した。また,一審原告は,同年2月10日,所定の関係書類を本件添付書類として一審被告に提出した。 ところで,仮に本件について本件買換特例の適用が認められるとした場合の納付すべき税額は,収入金額が3145万1254円(本件譲渡資産の譲渡代金1億4400万円-本件買換資産の購入代金等1億1254万8746円,本件)譲渡資産の取得費1300万3265円(なお,経過年数19年の建物取得費は610万8700円,土地取得費は689万4565円)と譲渡費用472万2121円の合計が1772万5386円,必要経費が387万1427円(1772万5386円×3145万1254円÷1億4400万円,課税長期譲渡)(,所得金額が2757万9000円3145万1254円-387万1427円千円未満切り捨て,これに対する税額827万3700円(税率30%)とそ)の他の課税総所得金額に対する税額118万9200円との合計額946万2900円から,特別減税額189万2580円(946万2900円の20%)と源泉徴収税額30万9600円を控除した申告納税額が726万0700円(百円未満切り捨て,これから第1期分及び第2期分の予定納税額各8万6200)円の合計額を控除すると708万8300円となる。 (10)一審被告は,平成10年3月30日,本件修正申告書の提出により一審原告が新たに納付すべきこととなった税額7 分の予定納税額各8万6200)円の合計額を控除すると708万8300円となる。 (10)一審被告は,平成10年3月30日,本件修正申告書の提出により一審原告が新たに納付すべきこととなった税額708万8300円に対し,過少申告加- 13 -算税の金額を4万6000円,重加算税の金額を231万3500円とする第一次決定処分を行い,次いで,翌31日,一審原告の平成6年度分の所得税について,本件買換特例の適用を否認し,納付すべき税額を3630万6500円とする本件更正処分を行うとともに,本件更正処分により一審原告が新たに納付すべきこととなった税額2921万8200円に対し,重加算税の金額を1022万3500円とする第二次決定処分を行った。なお,第二次決定処分に係る重加算税賦課決定のうち過少申告加算税額相当分は,国税通則法65条1項,2項,118条3項により438万1500円である。 措置法36条の2第5項に規定する「やむを得ない事情」について前記のとおり,措置法36条の6第2項が準用する同法36条の2第4項は,本件買換特例の適用を受けるためには,当該年分の確定申告書に買換特例の適用を受けようとする旨を記載し,かつ,本件添付書類の添付がある場合に限り適用すると規定しているが,その趣旨は,原判決が判示するとおり,買換特例の制度は,譲渡所得に対,,する課税を免除するものではなく課税の時期を原則どおり当該譲渡の時点とするか買換資産の将来の譲渡時点まで繰り延べるかを納税者の選択に委ねるものであるから,その優遇措置の適用を選択した納税者のみに適用することとし,かつ,その旨を確定申告書に記載し,所定の書類を添付した場合にのみ適用を認めることで,大量の事務処理を旨とする税額確定手続における画一的かつ的確な処理の実現を図ったものであると解される。 こととし,かつ,その旨を確定申告書に記載し,所定の書類を添付した場合にのみ適用を認めることで,大量の事務処理を旨とする税額確定手続における画一的かつ的確な処理の実現を図ったものであると解される。そうすると,その例外規定である措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情」とは,天災その他本人の責めに帰すことのできない客観的な事情があって,買換特例の制度趣旨に照らし,納税者に対してその適用を拒否することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であり,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情はこれに該当しないと解される。 そこで検討すると,本件においては,一審原告は,A税理士から雪谷税務署で教示された金額より約180万円も低い税額を示されながら,何らかの節税方法があるのではないか,あるいは税務署で教えられた金額が間違っていたのではないかなどと勝,,,手に思い込みA税理士に対して税額の根拠等について何ら確認することなくまた一件書類の返却を受けた後も,本件確定申告書の控え等の中身の点検や確認を全くしなかったものであって,このような点に一審原告にも落ち度があったといわざるを得ない。 しかしながら,更に検討すると,一審原告は,租税についての専門的知識を有して,(),いたわけではなく適正な納税申告の実現について公共的使命を負い税理士法1条税理士法上もそれに即した公法的規律を受けている税理士に対して,その言動を信頼し,何らかの適切な節税方法があるのではないかなどと信用してその処理を全面的に委ねたこと,一審原告は,買換特例の適用を当然の前提としてそのすべての関係書類をA税理士に交付したこと,同税理士から求められた520万円を買換特例適用後の所得税及び手数料との認識で同税理士に支払ったこと,同税理士は,本件譲渡資産の譲渡を前提としなが してそのすべての関係書類をA税理士に交付したこと,同税理士から求められた520万円を買換特例適用後の所得税及び手数料との認識で同税理士に支払ったこと,同税理士は,本件譲渡資産の譲渡を前提としながら,買換特例を適用せず,その取得費等につき不実の経費を計上して納付すべき税額を0円とする本件確定申告書を作成提出し,上記520万円を領得したこと,そして,本件においては,A税理士の請託を受けた現職の統括国税調査- 14 -官が脱税行為に関与し,賄賂を収受した上で内容虚偽の本件確定申告書に係る過少申告の事実を黙認し,税務調査の手が及ばないように取り計らうなどして,不正行為の,,,発覚を妨げていたことしかもこうした課税当局の職員の積極的な関与がなければA税理士の脱税行為の遂行は不可能であったことが認められるのであって,このような特別な事情を斟酌すると,本件においては,納税者である一審原告の責めに帰すことのできない客観的な事情があり,本件買換特例の制度趣旨に照らし,その適用を拒否することが不当又は酷になる場合に当たるというべきであって,措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情がある」と認めることができる。 したがって,本件譲渡資産の譲渡に係る長期譲渡所得について,本件買換特例の適用が認められるべきであり,その適用を否認した本件更正処分は,上記修正申告額である708万8300円を超える部分において違法であるから取り消されるべきである。また,本件買換特例の適用を否認した本件更正処分を前提とする第二次決定処分のうち過少申告加算税額(438万1500円)相当分も,取消しを免れない。 第4 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,本件更正処分のうち上記修正申告額を超える部分及び第二次決定処分(ただし,本件上告審判決により確定済みの原判 相当分も,取消しを免れない。 第4 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,本件更正処分のうち上記修正申告額を超える部分及び第二次決定処分(ただし,本件上告審判決により確定済みの原判決主文第2項が取り消すこととしている加算税額438万1500円を超える部分を除く)の各取消しを求める一審原告の本件請求部分はすべて理由があるから,。 これらを認容すべきところ,一審原告の控訴に基づき,原判決のうちこれらに係る請求を棄却した部分を取り消すこととして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官安倍嘉人裁判官内藤正之裁判官後藤健

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