判決被告人 A 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中160日をその刑に算入する。 理由 (認定した犯罪事実)被告人は,第1 平成15年10月29日午後8時ころ,広島県安芸郡a町(現広島県江田島市a町。以下同じ)bc丁目d番e号所在の飲食店「B」出入口前において,C所有に係る現金9000円及び手提げバッグ1個ほか11点(時価合計約6200円相当)を窃取し,第2 金品窃取の目的で,平成16年3月22日午前3時ころ,広島県安芸郡a町fg丁目h番i号所在のD方に,同所西側勝手口の施錠を合い鍵で開けて侵入し,同所において,E所有又は管理に係る現金約6万9000円及び手提げバッグ1個ほか11点(時価合計約17万7000円相当)を窃取し,第3 金品窃取の目的で,平成16年4月4日午後9時30分ころ,前記D方に,同所西側勝手口の施錠を合い鍵で開けて侵入し,同所において,同人所有に係る現金約7万8250円を窃取し,第4 金品窃取の目的で,平成16年4月28日午前3時ころ,広島県東広島市j町kl番地所在のホテルF10号室(宿泊客G及びH)に,無施錠の同所東側腰高窓から侵入し,同所において,前記G所有に係る現金4万2000円及び前記H所有に係る現金1万円を窃取し,第5 金融業者を装い,知人であるI(当時26歳)から,同人が前妻の借金の保証人であると欺いて,借入金返済名下に金員を詐取しようと企て, 1 平成16年6月2日午後1時50分ころ,広島県安芸郡a町fm丁目n番所在のa公園において,携帯電話で同人方に電話をかけ,同人に対し,「J言うんじゃが,呉のoの方で街金 に金員を詐取しようと企て, 1 平成16年6月2日午後1時50分ころ,広島県安芸郡a町fm丁目n番所在のa公園において,携帯電話で同人方に電話をかけ,同人に対し,「J言うんじゃが,呉のoの方で街金をしとるもんじゃ。あんた,最近,奥さんと離婚したじゃろう。その奥さんが離婚する直前にIさんの運転免許証のコピーをうちへ持って来てIさんを保証人にしてうちから250万円を借りとるんよ。奥さんが借金を返してくれんのんじゃ。Iさんが保証人になっとる以上はIさんが返してくれにゃあいけん。あんたも前に400万円の借金をしとったけえ,分かるじゃろうが。」などと申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,同日午後2時30分ころ,同町fm丁目p番q号付近路上において,同人から情を知らないKを介して,現金10万円の交付を受け, 2 平成16年6月5日午後零時30分ころ,広島県呉市r町s番地のt所在のホテル「L」において,携帯電話で前記Iの携帯電話に電話をかけ,同人に対し,「今日,利息分の5万円を払ってほしいんじゃが。5万円とは言わんけえ,4万円でええわ。今日のところは3万円でええわ。」などと申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,同日午後2時ころ,広島県安芸郡a町fm丁目p番q号付近路上において,同人から情を知らない前記Kを介して,現金3万円の交付を受け,もって,それぞれ人を欺いて財物を交付させ,第6 M(当時80歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平成16年7月3日午後4時ころ,広島県佐伯郡u町v(現広島県江田島市u町v。以下同じ。)w番地xの同女方において,同女に対し,殺意をもって,その頭部等を猿の置物(重量約2.5キログラム)等で多数回殴打するなどし,その頚部を右足で踏みつけて圧迫し,さらに,その頚部を両手で絞め付け,よって,そのころ,同所において 同女に対し,殺意をもって,その頭部等を猿の置物(重量約2.5キログラム)等で多数回殴打するなどし,その頚部を右足で踏みつけて圧迫し,さらに,その頚部を両手で絞め付け,よって,そのころ,同所において,同女を頚部圧迫により窒息死させて殺した上,同女所有の現金約8万円及び札入れほか4点(時価合計6500円相当)を強取したものである。 (法令の適用)罰条判示第1の所為刑法235条判示第2ないし第4の各所為各住居侵入の点いずれも同法130条前段各窃盗の点いずれも同法235条判示第5の1,2の各所為いずれも同法246条1項判示第6の所為同法240条後段科刑上の一罪の処理判示第2ないし第4の各住居侵入と各窃盗いずれも同法54条1項後段,10条(いずれも重い各窃盗罪の刑で処断)刑種の選択判示第6の罪につき無期懲役刑を選択併合罪の処理同法45条前段,46条2項本文(判示第6の罪の無期懲役刑で処断)未決勾留日数の算入同法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件は,内妻との生活費及び遊興費等に窮した被告人が,生活費及び遊興費を獲得する目的で,以前の勤務先である居酒屋の従業員の現金等在中のバッグを窃取し(判示第1),同居酒屋の経営者方に侵入して現金やバッグを窃取し(判示第2,第3),宿泊先のホテルの隣室に侵入して宿泊客の現金を窃取し(判示第4),知人に対して金融業者を装った架空請求をして現金を詐取し(判示第5),以前居住していたアパートの家主宅で家主を殺害して現金等を強取した(判示 のホテルの隣室に侵入して宿泊客の現金を窃取し(判示第4),知人に対して金融業者を装った架空請求をして現金を詐取し(判示第5),以前居住していたアパートの家主宅で家主を殺害して現金等を強取した(判示第6),窃盗,住居侵入,詐欺及び強盗殺人の事案である。 2 本件各犯行に至る経緯は以下のとおりである。 (1) 強盗殺人の被害者Mを知るまでの経緯被告人は二人姉弟の長男として広島県佐伯郡u町で出生し,a中学校を卒業後,広島県立a高校へ進学したが,入学後1週間位で,勉強が面白くないという理由で退学し,平成9年3月ころから実父が勤務する建設会社で土木作業員として勤務し始め,平成10年10月7日に婚姻し,2人の男児をもうけたが,長男が出生したころから,妻に無断で外出や外泊をするようになり,さらに,別の女性を内妻として,妻と別居し,平成14年10月7日に協議離婚した。また,被告人は,平成13年夏ころに前記内妻を乗せてドライブ中に交通事故を起こしてからは,理由を付けては仕事をさぼり,物事に我慢できなくなるとすぐに立腹して暴力を振るうようになった。さらに,被告人は,内妻の交際を巡って,平成13年11月ころに傷害事件を起こして逮捕され,同月21日にN簡易裁判所で罰金刑を受けた。 被告人は,妻と別居後,広島県佐伯郡u町y(現広島県江田島市u町y)にアパートを借りて,内妻と生活していたが,被告人は,このころから,自己の収入を顧みず,自動車を購入するなどの浪費を重ね,同アパートの家賃は払わず,さらに,遊興費が足りなくなると,消費者金融業者から借金したりしていた。そして,前記アパートの大家から,家賃滞納を咎められるとともに,前記傷害事件に関して素行を非難されたことから,同アパートを退去せざるを得なくなり,内妻の父の紹介で,M(以下「M」という。)が経営す そして,前記アパートの大家から,家賃滞納を咎められるとともに,前記傷害事件に関して素行を非難されたことから,同アパートを退去せざるを得なくなり,内妻の父の紹介で,M(以下「M」という。)が経営する,広島県佐伯郡u町vのOアパート(以下「Oアパート」という。)に入居した。 そして,被告人は,Mには家賃収入による現金があり,同人方縁側には金庫が置かれていることやMが一人暮らしをしていることなどを知った。 (2) Oアパート退去までの経緯被告人は,平成14年2月ころ,前記内妻との間に一女をもうけたが,そのころから,消費者金融業者から厳しい取立てをうけるようになり,同年4月4日にP地方裁判所Q支部に破産を申し立て,同年5月7日に破産宣告を受け,同年8月13日に免責決定を受け,いずれも確定した。 被告人は,前記傷害事件を起こしたことなどから会社に居づらくなり,平成14年5月25日に前記建設会社を退職し,しかも破産したことから新たな借入が不可能となったにもかかわらず,自己の生活態度を見直すことはなく,同年7月ころから就職した建設会社で同僚の財布から現金をくすねたり,M方に無施錠の勝手口から侵入して現金2万円等をくすねしたりし,さらに,同年8月ころには,判示第5の被害者の実母から,判示第5の被害者の無謀運転を原因とするトラブルに巻き込まれたなどと嘘を言って現金30万円を得たりしていた。そして,多額の現金を所持していることを訝った内妻から入手先について問い質されると,逆上して内妻に暴力を振るったりしていた。また,被告人は,平成14年8月ころには,同僚から現金をくすねたことが発覚して,同年7月に就職したばかりの建設会社を退職せざるを得なくなった。 被告人は,Oアパートでも家賃を滞納したことなどから,平成14年10月ころにOアパートを退去して広島県安芸郡a町 すねたことが発覚して,同年7月に就職したばかりの建設会社を退職せざるを得なくなった。 被告人は,Oアパートでも家賃を滞納したことなどから,平成14年10月ころにOアパートを退去して広島県安芸郡a町の実家に戻り,内妻及び内妻との間の子供とともに生活を始めたが,依然として定職に就くことはなく,平成15年2月になってようやく新たな建設会社で稼働するようになったものの,遊興費に窮して同僚の財布から数回にわたり現金をくすねたため,同年5月ころに退職に追い込まれ,さらに,これらのことを咎めた内妻に暴力を振るったりしたことから,ついに内妻に愛想を尽かされて,同年7月中旬ころに実家に逃げ帰られてしまった。 (3) 判示第1の犯行までの経緯被告人は,その後,平成15年8月ころから,判示第2の住居侵入及び判示第3の被害者(以下「D」という。)が経営する居酒屋「B」(以下「B」という。)でアルバイトを開始した。 一方で被告人は,同年9月ころから,同年2月ないし3月ころに当時の就労先で知り合ったR(以下「R」という。)と交際を始め,「B」でのアルバイト終了後にRと待ち合わせて一緒に遊んだ後,一緒にラブホテルに宿泊して翌日午後にRを実家に送るという生活を繰り返すようになったが,Rや友人に見栄を張りたいという一心から,毎月数万円のアルバイト代しか収入がないにもかかわらず遊興費等を全額負担し,すぐに資金に行き詰まって,同年10月ころには,友人であるS及びTの2人(以下「Sら」という。)に依頼して消費者金融業者から合計230万円を借りさせるに至った。ところが,大金を手にした被告人は,気が大きくなってさらに濫費を重ね,同月のうちに上記230万円を使い切ってしまい,それでも従前と同様の生活を維持するために,Rから合計18万円を借りたほか,同月29日に判示第1の犯行を敢行し 告人は,気が大きくなってさらに濫費を重ね,同月のうちに上記230万円を使い切ってしまい,それでも従前と同様の生活を維持するために,Rから合計18万円を借りたほか,同月29日に判示第1の犯行を敢行し,その窃取金等は遊興費に費消した。 (4) 判示第2ないし第4の各犯行までの経緯① 被告人は,前記230万円の借金を返済しようとしなかったため,平成15年11月上旬ころに暴力団組員U(以下「U」という。)を通じてSらから返済を迫られ,一時はRを保証人にしてその場を逃れたものの,さらに返済を迫られたが,自己の生活を見直すことはなく,借金返済資金と遊興費を獲得するため,同月には,「B」店内で客の財布から現金を抜き取ったり,Dが経営するアパートで入居者の財布をくすねたりしたほか,Rの母親から合計40万円を借りてRとの遊興費に充てた。 しかし,このころ,「B」従業員の間で,店内での窃盗事件の犯人が被告人であるとの噂が広まったため,被告人は,「B」で就労し続けることは困難であると考えるようになり,退職後も窃盗ができるように,D方勝手口の合い鍵を作った。 その後,Uからの督促が激しくなってきたため,被告人は,対応を協議するためRと頻繁に連絡を取るようになり,さらに,Rとラブホテルを拠点として生活するようになったが,Uからさらに激しく督促されるようになったことから,ついに,R及びその両親から合計約660万円を借りて前記友人からの借金を完済した。すると,被告人は,Rらから容易に大金を引き出せたことから,Rらを金づるとすればよいと考えるようになり,平成15年12月末限りで「B」を辞めた。Rは,両親から被告人との交際を反対されたことから,平成16年1月末ころに実家に戻りアルバイトを始めた。 被告人は,その後もRの両親に隠れてRと会っていたが,収入がなかったことから, 「B」を辞めた。Rは,両親から被告人との交際を反対されたことから,平成16年1月末ころに実家に戻りアルバイトを始めた。 被告人は,その後もRの両親に隠れてRと会っていたが,収入がなかったことから,Rとの遊興費やRの両親への返済資金を得るため,前記合い鍵を使って窃盗を敢行することを決意し,判示第2の犯行を敢行したほか,D方に2回入り込んで現金をくすね,また,M方にも1回入り込んで現金約3万円をくすねた。 ② Rは,平成16年3月上旬ころに妊娠していることが判明したため,アルバイトを辞め,それが両親に発覚して実家に居づらくなったことから,同月下旬に家出をして被告人とラブホテルで生活し始めたが,被告人は,少しでもRと一緒にいたいと考えて仕事に就かず,生活費や遊興費をD方やM方での窃盗等で確保しようと考え,まず,合い鍵を確保しているD方を狙って判示第3の犯行を敢行した。 ③ Dは,判示第3の犯行の被害をきっかけに,平成16年4月中旬ころに同人方の鍵を交換し,さらに警察に被害を届け出た。これを知った被告人は,侵入盗を断念し,今度は詐欺を企て,同月中旬ころに,防犯カメラを設置してやるなどと嘘を言ってDから現金8万円を得たが,その後は同人から詐取することができず,当時宿泊していたラブホテルの隣室利用者が入浴した隙を狙って判示第4の犯行を敢行し,窃取金はRとの生活費に費消した。 (5) 判示第5の犯行までの経緯被告人は,前記ラブホテルの宿泊料金を付け払いにしていたが,平成16年5月中旬ころには付けが数十万円となったために付け払いを拒絶され,即時払いを求められるようになったことから,a町での窃盗に便利な広島県呉市r町のラブホテルに移って宿泊し始め,D方での犯行がうまく行かないことからM方で窃盗を敢行することとし,M方でMの隙を突いて現金17ないし18万円入 うになったことから,a町での窃盗に便利な広島県呉市r町のラブホテルに移って宿泊し始め,D方での犯行がうまく行かないことからM方で窃盗を敢行することとし,M方でMの隙を突いて現金17ないし18万円入りの封筒を窃取したが,翌日になってM方に電話した際に現金窃取を指摘されたため,これを認めて謝罪し,当分はM方での窃盗を断念せざるを得なくなった。 しかし,上記ラブホテルでは付け払いが利かず,宿泊代等の生活費に日額約1万5000円が必要であったため,知人から現金を詐取することを企て,判示第5の犯行を敢行した。また,被告人は,自己の先輩からも,同人が同人の友人の借金の保証人になっていると嘘を言って現金を詐取した。 (6) 判示第6の犯行までの経緯① 判示第5の犯行などに成功した被告人ではあったが,被害者らが警察に被害申告することを危惧して,同人らに対する犯行を続けることは見送ることとしたが,他に犯行の標的を思いつかなかったことから,再びMを狙うこととし,平成16年6月12日ころ,M方に赴いて,Mを欺いて家を留守にさせようとしたが失敗し,侵入盗は困難と考えて,Mから現金を詐取することとし,家賃を滞納したままOアパートを逃げ出したと聞いている被告人の知人V(以下「V」という。)が警察に捕まったので弁護士費用が要ると騙して現金を詐取しようと考えた。そして,被告人は,同月17日ころ,M方付近で,警察官及び弁護士を装ってM方に数回電話をかけ,「VがMさんに弁護士費用を貸してもらえないかと言っている。弁護士費用は40万円必要であり,A君に渡してほしい。」などと述べ,さらに,OアパートのもとVの部屋に覚せい剤があったかのような演技をして,Vが本当に逮捕されたようにMに思いこませ,弁護士費用名下に現金40万円を詐取した。 ② さらに被告人は,前記詐取の際に,Mの息 らに,OアパートのもとVの部屋に覚せい剤があったかのような演技をして,Vが本当に逮捕されたようにMに思いこませ,弁護士費用名下に現金40万円を詐取した。 ② さらに被告人は,前記詐取の際に,Mの息子が暴力団組員から脅されて困っていると聞き及んだことから,これを解決してやると偽ってその手数料名下に金員を詐取することを企て,前記詐取の2日ほど後にM方に電話して,Mの息子が実際に暴力団組員から脅されて困っていることを確認した上,知人の暴力団組員に依頼して解決してやると持ちかけたところ,Mからそれを依頼された。これを聞いて,金が手に入ると有頂天になった被告人は,平成16年6月20日ころに,広島市内でRの衣服を購入するなどして前記詐取金などを費消してしまい,同年7月3日には,所持金がわずか4000円になり,Mから現金を得られなければその日の宿泊料金も支払えない状況となっていた。 ③ 被告人は,暴力団組員が圧力をかけているようにみせるためにM方に何度か無言電話をした後,同年6月28日ないし29日ころ,M方に電話をかけて,同年7月3日にM方を訪問することにし,同日午後零時過ぎころ,Rとともに宿泊先のラブホテルを自動車で出発してM方に向かい,M方付近の駐車場に自動車を止めてRを自動車内で待たせ,徒歩でM方に向かった。 被告人は,M方のインターホンを押したところ,玄関の方からMが呼んだため,玄関へ向かい,玄関土間に置かれていた椅子に座って,「息子さんのことを調べてみた。電話でも言ったように,W組とX建設がつるんどる。W組のやくざは本当にたちが悪いけえ,何をするか分からん。無言電話がようけ,あるじゃろ。僕の知り合いも苦労しとるが,何とかなると思う。」と言うと,Mは,「何とかなりゃええんじゃが,変な感じがする。この前から無言電話がかかるし,恐ろしいよ。」と不 分からん。無言電話がようけ,あるじゃろ。僕の知り合いも苦労しとるが,何とかなると思う。」と言うと,Mは,「何とかなりゃええんじゃが,変な感じがする。この前から無言電話がかかるし,恐ろしいよ。」と不安げな表情で話した。そこで,被告人は,Mをさらに不安がらせるために,ズボンの右ポケットに入れていた携帯電話を操作してM方に無言電話をかけ,Mが電話に出た直後に切った。 被告人は,Mがすぐに金を出してくれることを期待したが,Mは,被告人の意に反して,弁護士費用名下に40万円を出させた件の話をし始め,「この前,あんたが来る前にかかってきた電話で弁護士さんと刑事さんの声の感じが似とる。」「あんたが来だして,おかしいことがよう起きる。」と言いだしたため,「そんなことないじゃろう。」と言い逃れたが,訪問から1時間経っても金を出しそうな状況にはならず,被告人は,一旦自動車に戻ってRに,「あと30分くらいだから待っといてね。」と声を掛けて,M方に戻った。 すると,Mは,弁護士費用名下に40万円を詐取した際に用いた人物名を記載したメモを示し,「これ見てみんさい。あんたから聞いた人の名前書いたんじゃが,どうしても同じ人みたいな感じがする。」と指摘した。これを聞いて,被告人は,真相がMに発覚しているのではないかと思い,このままでは金を詐取できなくなると焦りを覚え,携帯電話を用いてM方に無言電話をかけ,それに被告人自らが出て相手を怒鳴りつけるような演技をしたり,玄関から携帯電話でM方に電話をかけて,居間で電話を取ったMに対し暴力団組員を装って脅しをかけたり,携帯電話で知人の暴力団組員に電話をかけて相談しているような演技をしたりしたが,Mは,一向に現金を渡そうとせず,被告人は,詐欺を暗に指摘されたこともあって,次第に苛立ちを覚え始めた。 ④ そして,Mは,前記(5) 暴力団組員に電話をかけて相談しているような演技をしたりしたが,Mは,一向に現金を渡そうとせず,被告人は,詐欺を暗に指摘されたこともあって,次第に苛立ちを覚え始めた。 ④ そして,Mは,前記(5)の窃盗の件を取り上げて,「あのお金はいつ返してくれるん。」と,被告人に迫り,息子が暴力団から脅されているという話題を避けるようになった。さらに,Mは,被告人に対し,前記内妻の話題を持ち出し,「どうなったん。」と問い,被告人が「もう今は別れていて,違う人と付き合いよる。この人のお腹には子供がいる。」旨答えたところ,「ここに住んどったときにも奥さんと子供がいたのに別れてしもうて。住んどる時に捕まったりしたのに,よう他の人を幸せにできるね。 警察に捕まったことがあるのに,よう幸せになるね。」と述べて被告人を非難した。 持ち金が底をついた状況下で,Mに対する欺罔工作が効を奏せず焦りを覚えていた上,詐欺や窃盗のことを言われて苛立ちが募っていた被告人は,これを聞いて,自分のみならずRの悪口を言われたと思いこみ,逆上して,Mを襲って金庫の鍵の在処を聞き出して金銭を奪い,口封じのためにMは殺害してしまおうと決意した。 被告人は,他人に見られないように,玄関ではなく居間で襲いかかることとし,Mを居間へ移動させるために,ズボン右ポケットに入れていた携帯電話を操作してM方の固定電話へ電話をかけた。被告人は,そのころ,玄関に猿の置物が置かれているのを目にし,同置物でMの頭部を殴打し,金庫のカギの在処を聞き出してからMを殺害しようと企てた。そして,居間の固定電話が鳴り,Mが,「電話じゃ。」と言って立ち上がり,居間の方に歩いて行き,玄関から姿が見えなくなった時点で,携帯電話を左手に持ち替え,右手で猿の置物を掴んで居間の方に向かい,居間において判示第6の犯行を敢行した。 3 前 ゃ。」と言って立ち上がり,居間の方に歩いて行き,玄関から姿が見えなくなった時点で,携帯電話を左手に持ち替え,右手で猿の置物を掴んで居間の方に向かい,居間において判示第6の犯行を敢行した。 3 前記のとおり,被告人は,平成13年ころから,配偶者がいながら別の女性を内妻としたり,愛人や友人と遊興にふけったりするなどの自堕落な生活をしていたものであるが,かかる生活を見直すことなく浪費を続け,他方で,トラブルを起こしては職を転々とし,しかも平成16年に入ってからは何ら定職に就こうとせず,かかる状況下で遊興費用を獲得するべく,自己に関係した人々に対して,次々に金銭をたかったりくすねたりした挙げ句に,本件各犯行を累行したものであり,他人に寄生して享楽にふけろうとするその動機は,極めて自己中心的かつ反社会的なものであって,酌量の余地は全くない。また,自己破産や自分が起こしたトラブルによる退職,配偶者や内妻とのトラブルなど,自己の生活と行動を見直し反省する機会が何度もありながら,生活と行動を全く改めなかった被告人の無反省ぶりと,周辺の人間を次から次へとたかりや窃盗,詐欺等の対象にし,さらには雇い主や家主への忘恩行為までしたという無軌道ぶりには,目を見張るものがあり,犯情極めて悪質であるといわざるを得ない。 また,判示各犯行の態様もいずれも悪質なものである。すなわち,判示第1の犯行は,同僚が店に置いていたバッグを置き引きしたものであって,同僚の信頼を裏切る悪質なものであるし,判示第2及び第3の犯行も,従業員としての信用を逆手に取り,Dから預かった自宅兼酒店のかぎを利用して,予め合い鍵を作って準備して敢行したものであって,計画的かつ背信的で悪質なものである。また,判示第4の犯行も,ホテルの客室へ宿泊客の隙を見て侵入し敢行したという悪質なものであるし,判 かぎを利用して,予め合い鍵を作って準備して敢行したものであって,計画的かつ背信的で悪質なものである。また,判示第4の犯行も,ホテルの客室へ宿泊客の隙を見て侵入し敢行したという悪質なものであるし,判示第5の犯行は,知人に借金歴などがあることに付け込んで,貸金業者に成り済まして架空請求をして金銭を詐取したという相当に狡猾なものであり,「オレオレ詐欺」,「振り込め詐欺」などの名称で呼ばれる架空請求詐欺が社会問題化している近時の状況に照らせば,強い社会的非難を免れない。 そして,判示第6の犯行は,重量が約2.5キログラムもあり鈍器として威力十分な猿の置物と,外周部がステンレス製で,中に水が入っていたことを併せれば同じく鈍器として威力十分であったと考えられるガラス魔法瓶を使用して,人体の枢要部であるMの頭部を何度も殴りつけたり,手で首を締め付けたり首を足で踏みつけたりしたという危険極まりないものである。被告人は,Mへの詐欺が失敗しMからこれまでの悪行をなじられるや逆上して強盗殺人を決意し,固定電話に出ていたMの後頭部を上記猿の置物でいきなり殴りつけ,頭から血を流しながら逃げるMを追いかけて,襟を掴んで居間へ引きずり戻し,無抵抗のMの顔面を手拳で数回殴打して金庫の鍵の在処を述べるよう迫り,Mが苦しみながらこれに答えるや,もはや生かしておく必要はないと,躊躇することなく,上記ガラス魔法瓶でMの頭部を思い切り殴りつけ,倒れたMの胸部や腹部を蹴りつけ,さらにガラス魔法瓶を頭部目がけて投げつけ,Mがぐったりとなったにもかかわらず,なおも止めを刺すべく首を締め付け,Mが動かなくなるや,Mが再び動き出さないように両手両足をタオルで縛り付け,その後金庫から金銭を奪取した後にも,Mが確実に死んでいるか確かめに行き,Mが存命しているのを知るや,約80キログラムもある Mが動かなくなるや,Mが再び動き出さないように両手両足をタオルで縛り付け,その後金庫から金銭を奪取した後にも,Mが確実に死んでいるか確かめに行き,Mが存命しているのを知るや,約80キログラムもある自己の全体重をかけてMの首を1ないし2分も足で踏みつけ,さらに念を入れてMの首を手で締め付け,Mが痙攣して動かなくなった後も2ないし3分間も首を絞め続け,もってMを殺害したものであり,何としてでもMの殺害を完遂しようと,極めて執念深く残忍非道な攻撃を加えたもので,他人の生命を一顧だにしない被告人の冷酷さには戦慄を覚えざるを得ない。しかも被告人は,本件第6の犯行後に,暴力団組員らしき人物がMやその遺族を狙っているかのような電話を警察署にかけるなどの捜査攪乱工作をしているなど,犯行後の情状も極めて悪質である。 Mは,アパートの家賃収入を得ながら悠々自適の老後生活を送っていたところ,最も安心できる場所である自宅で被告人に襲われ,なす術もないまま前記の執拗かつ残虐な攻撃を受け続け,ついには頚部を締め付けられて生命を奪われたものであり,Mが受けた肉体的苦痛や恐怖,無念の思いは察するに余りある。そして,Mの遺族らも,優しい母である被害者を突然に奪われたものであって,その悲嘆は大きい。しかるに,被告人は,これに対し何らの慰藉の措置を講じておらず,被害者の遺族らが極刑を求めるのは当然である。また,判示第1ないし第5の犯行の被害金額は合計で50万円を超えており,この損害も軽視し得ない。 しかも,被告人には,傷害,暴行等による罰金前科3犯があり,判示第1ないし第5の犯行が,約8か月の短期間に累行されたものであって,被告人には金品窃取ないし詐取についての強い常習性が認められるものであり,判示第6の犯行も詐欺がうまくいかずに居直って敢行したものであって上記常習性がエス ,約8か月の短期間に累行されたものであって,被告人には金品窃取ないし詐取についての強い常習性が認められるものであり,判示第6の犯行も詐欺がうまくいかずに居直って敢行したものであって上記常習性がエスカレートしたという側面があることは否めず,前記2に判示した経緯を併せれば,被告人の規範意識は著しく鈍磨しており,今後の改善更生の見通しにも厳しいものがあるといわざるを得ない。 以上によれば,被告人の刑事責任は極めて重大である。 4 一方,被告人は,本件各犯行をすべて自白しており,反省の念を示していること,判示第6の犯行は計画的なものではないこと,被告人には懲役前科はないことなど,斟酌すべき事情も存する。 5 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑無期懲役)平成17年3月4日広島地方裁判所呉支部裁判長裁判官渡邉了造裁判官鵜飼裕充裁判官宮本博文
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