平成26年6月10日判決言渡平成25年(行ケ)第10313号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年5月29日判決 原告株式会社門林 原告有限会社エル山本 上記2名訴訟代理人弁理士眞下晋一 被告山崎産業株式会社 訴訟代理人弁理士高良尚志 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2013-800046号事件について平成25年10月18日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)被告は,平成18年9月20日に出願(特願2006-254890号)され,平成24年3月9日に設定登録された,発明の名称を「高吸水高乾燥性パイルマット」とする特許第4942437号(以下「本件特許」という。 請求項の数は8である。)の特許権者である。 原告らは,平成25年3月22日,特許庁に対し,本件特許の請求項全部について無効にすることを求めて審判の請求(無効2013-800046号事件)をした。特許庁は,平成25年10月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月26日,原告らに送達した。 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は,次のとおりである(甲 件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月26日,原告らに送達した。 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は,次のとおりである(甲10。以下,請求項1ないし8に係る発明を順に「本件特許発明1」,本件特許発明2」などといい,これらを併せて「本件特許発明」という。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件特許明細書」という。なお,別紙1の図面は本件特許明細書に記載された図面である。)。 「【請求項1】基布と多数のパイルを備えてなり,前記各パイルの基部が基布に結合された状態で,前記多数のパイルが基布上に配設されているパイルマットであって,前記各パイルは,略円柱形状をなし,0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントが,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり,前記パイルの略円柱形状外周面は,前記各フィラメントの先端部により形成され,前記パイルの先端部は,パイルを構成する放射状に配された前記フィラメントの先端部により形成された略凸曲面状をなし,前記パイルは,略円柱形状をなすパイルの各円形状横断面において内方に向かうほど前記非吸水性のフィラメントが高密度状態となり,前記先端部においても内方に向かうほど前記非吸水性のフィラメントが高密度状態となって,毛管現象により内方に向かう吸水力が作用するよう構成されていることを特徴とする高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項2】上記パイルが,0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が,そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項1記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 ルの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が,そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項1記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項3】上記基布が吸水性繊維からなる請求項1又は2記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項4】上記フィラメントが,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントである請求項1乃至3の何れかに記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項5】上記パイルの軸線方向長さが5乃至80mmである請求項1乃至4の何れかに記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項6】上記パイルの軸線方向長さが15乃至50mmである請求項1乃至4の何れかに記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項7】マット上で上記パイルにより吸水するためのものである請求項1乃至6の何れかに記載の高吸水高乾燥性パイルマット。 【請求項8】足拭用のものである請求項1乃至6の何れかに記載の高吸水高乾燥性パイルマット。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,本件特許発明は,いずれも,Aの陳述書(甲1。以下「甲1陳述書」という。)及び商品カタログ「2005 SPRING&SUMMERSELKONCARPET&RUGCOLLECTION」(甲2。以下「甲2カタログ」という。)に記載された商品「デゼルト」の構成から把握できる発明(以下「引用発明」という。)及び登録実用新案第3108152号公報(甲4。 以下「甲4公報」という。)に記載された発明(以下「甲第4号証記載の発明」という。)から,当業者が容易に発明できたとはいえない,というものである。 上記の結論を導くに当たり 2号公報(甲4。 以下「甲4公報」という。)に記載された発明(以下「甲第4号証記載の発明」という。)から,当業者が容易に発明できたとはいえない,というものである。 上記の結論を導くに当たり,審決が認定した引用発明の内容,引用発明と本件特許発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア引用発明の内容「基布と多数のパイルを備えてなり,各パイルの基部が基布に結合された状態で,多数のパイルが基布上に配設されている綿100%からなるモールマットであって,各パイルは,略円柱形状をなし,綿フィラメントが,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり,パイルの略円柱形状外周面は,各綿フィラメントの先端部より形成され,パイルの先端部は,パイルを構成する放射状に配された綿フィラメントの先端部により形成された略凸曲面状をなし,パイルは,略円柱形状をなすパイルの各円形状横断面において内方に向かうほど綿フィラメントが高密度状態となり,先端部においても内方に向かうほど綿フィラメントが高密度状態になるモールマット。」イ一致点「基布と多数のパイルを備えてなり,各パイルの基部が基布に結合された状態で,多数のパイルが基布上に配設されているパイルマットであって,各パイルは,略円柱形状をなし,フィラメントが,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり,パイルの略円柱形状外周面は,各フィラメントの先端部より形成され,パイルの先端部は,パイルを構成する放射状に配されたフィラメントの先端部により形成された略凸曲面状をなし,パイルは,略円柱形状をなすパイルの各円形状横断面において内方に向かうほどフィラメントが高密度状態となり, ,パイルを構成する放射状に配されたフィラメントの先端部により形成された略凸曲面状をなし,パイルは,略円柱形状をなすパイルの各円形状横断面において内方に向かうほどフィラメントが高密度状態となり,先端部においても内方に向かうほどフィラメントが高密度状態になるパイルマット。」ウ相違点 相違点1「フィラメントが,本件特許発明1においては,「0.05乃至0. 8デニールの非吸水性のフィラメント」であるのに対し,引用発明においては,「綿フィラメント」である点。」 相違点2「略円柱形状をなすパイルが,本件特許発明1においては,「毛管現象により内方に向かう吸水力が作用するよう構成されている」のに対して,引用発明においては,そのような構成を備えるか不明である点。」第3 原告ら主張の取消事由審決は,次のとおり,相違点1及び2についての容易想到性の判断を誤ったものであるので,違法なものとして取り消されるべきである。 1 取消事由1(相違点1に関する判断の誤り) 審決は,引用発明は,綿の素材感を提供するために綿100%で形成したものであるから,引用発明の綿フィラメントに代えて,甲4公報記載のマットのパイル糸の素材の繊維である非吸水性のポリエステル及びナイロンで構成される1デニール未満の極細繊維を採用する動機付けを見いだすことはできず,両者を組み合わせて相違点1に係る構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない旨判断している。 しかし,室内マットにおいて綿以外の合成繊維を使用することは従来から行われている(甲4【0002】)。また,モール糸の飾り糸として,綿などの紡績糸,及び,ポリエステルなどのフィラメント糸のいずれを使用することも,本件特許の出願前における周知の事項である は従来から行われている(甲4【0002】)。また,モール糸の飾り糸として,綿などの紡績糸,及び,ポリエステルなどのフィラメント糸のいずれを使用することも,本件特許の出願前における周知の事項である(例えば,特開平1-97229号公報(甲11)3頁左上欄2行目ないし5行目,特開2006-219771号公報(甲12)【0002】)。しかも,フィラメントの材料が異なる場合でも同じ機械を用いて製造可能である。したがって,引用発明の飾り糸を,甲4公報記載の1デニール未満の非吸水性の極細繊維からなる飾り糸に置き換えることは,モール糸の飾り糸として周知の材料を単に選択したものにすぎず,技術的な阻害要因は何ら存在しない。 さらに,甲第4号証記載の発明は,吸水機能以外に,従来の綿などの天然繊維からなるマット等に比べて室内マットの肌触り性を向上させることも課題とするものであり(甲4【0004】),実際に肌触り性が良好であることから,吸水性が要求されない場所で使用する室内マットとしても好適に利用可能である(甲4【0009】)。他方,引用発明はラグであり,例えば玄関先等において使用されることから,肌触り性については当業者に周知の課題である。したがって,引用発明と甲第4号証記載の発明とは,肌触り性を向上させるという共通した技術課題を有する。 以上によれば,引用発明に接した当業者が,肌触り性を向上させるために,引用発明の綿フィラメントに代えて,甲第4号証記載の発明のパイル糸の素材の繊維である非吸水性のポリエステル及びナイロンで構成される1デニール未満の極細繊維を採用することは,容易になし得ることである。 2 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り) 審決は,引用発明において毛管現象による吸水機能を具備するために,引用発明のパイルに代え 細繊維を採用することは,容易になし得ることである。 2 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り) 審決は,引用発明において毛管現象による吸水機能を具備するために,引用発明のパイルに代えて,甲第4号証記載の発明におけるパイル糸を適用したとすると,植糸した該パイル糸は,カット及び/又はループの形態となると認められるから,引用発明に甲第4号証記載の発明を組み合わせたとしても,本件特許発明1のような「フィラメントがパイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状に密接され」ることにより「毛管現象により内方に向かう吸水力が作用」するものとはならず,相違点2に係る本件特許発明1となるとはいえない,本件特許発明1を特定するために必要な事項である「0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントが,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設」されてなることにより,「毛管現象により内方に向かう吸水力が作用する」という格別顕著な効果を奏する旨判断している。 しかし,甲第4号証記載の発明は,良好な肌触り性を得るためにパイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を採用したものであり(甲4【0009】,【0012】),パイル形状(例えば,カットパイルやループパイル)については,肌触り性に特段の影響を与えるものではない。 一方,引用発明のパイルは,外周面が綿フィラメントの先端部により形成されており,肌触り性に影響を与えるのは主として綿フィラメントであるから,引用発明の肌触り性を向上させるためには,あえてパイル形状を変更する必要はなく,引用発明のパイル形状のまま綿フィラメントを甲第4号証記載の極細繊維に置換することで,所望の肌触り性を得ることができる。 したがって,引 させるためには,あえてパイル形状を変更する必要はなく,引用発明のパイル形状のまま綿フィラメントを甲第4号証記載の極細繊維に置換することで,所望の肌触り性を得ることができる。 したがって,引用発明において,パイル形状を変更することなく綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えることは,当業者が容易に想到 することができる。 審決が顕著な効果を奏するとした本件特許発明1の構成は,引用発明の綿フィラメントを,肌触り性に着目して甲4公報記載の極細繊維に置き換えた場合に必然的に得られる効果にすぎない。 しかも,甲第4号証記載の発明は,極細繊維間の毛管現象によりパイル糸の内方への吸水力が作用するものであり(甲4【0009】),また,極細繊維の先端部同士の間を開放することで吸水性を高めることを示唆するものである(甲4【0021】)。そして,引用発明は,綿フィラメントの外方側の先端部が開放されていることから,肌触り性を高めるために引用発明のモールマットにおける綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置換した当業者が,吸水性に関する甲4公報の上記記載を参酌して,このモールマットをバスマット等の吸水マットに適用しようと試みることは,容易になし得る。 そして,この場合には,吸水マットのパイルにおいて,毛管現象により内方に向かう吸水力が当然に作用する。 3 取消事由3(本件特許発明2ないし8に関する判断の誤り)審決の本件特許発明2ないし8についての判断は,いずれも本件特許発明1についての判断を引用するものである。そして,前記1及び2記載のとおり,本件特許発明1に関する審決の相違点の判断に誤りがある以上,本件特許発明2ないし8に関する審決の判断も誤りである。 4 被告の主張について本件特許発明において,「フィラメ 及び2記載のとおり,本件特許発明1に関する審決の相違点の判断に誤りがある以上,本件特許発明2ないし8に関する審決の判断も誤りである。 4 被告の主張について本件特許発明において,「フィラメント」の語は,いずれも「飾り糸」の素材の意味では使用されておらず,「飾り糸」と同じ意味で使用されているので,あえて被告の主張するような狭い意味に限定して解釈すべき理由は存在しない。 したがって,引用発明の「綿フィラメント」と,本件特許発明の「非吸水性のフィラメント」とは,「フィラメント」である点において共通する,とした審決の判断に誤りはない。 第4 被告の反論次のとおり,審決の判断の結論に誤りはない。 1 審決の一致点及び相違点の認定について引用発明におけるモール糸の飾り糸(綿フィラメント)は,「吸水性が良好な単繊維である綿繊維を多数撚って紡いだ綿紡績糸」である。また,本件特許発明における「フィラメント」は,モール糸における飾り糸を意味するものではなく,素材としての「単繊維としての連続長繊維」を意味するものである。 そして,引用発明の「綿紡績糸の飾り糸」と,本件特許発明1の「非吸水性の飾り糸」とは,「飾り糸」である点において共通する。 したがって,本件特許発明1と引用発明との一致点及び相違点1は次のとおり認定されるべきである。 一致点「基布と多数のパイルを備えてなり,各パイルの基部が基布に結合された状態で,多数のパイルが基布上に配設されているパイルマットであって,各パイルは,略円柱形状をなし,飾り糸が,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり,パイルの略円柱形状外周面は,各飾り糸の先端部より形成され,パイルの先端部は り糸が,パイルの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり,パイルの略円柱形状外周面は,各飾り糸の先端部より形成され,パイルの先端部は,パイルを構成する放射状に配された飾り糸の先端部により形成された略凸曲面状をなし,パイルは,略円柱形状をなすパイルの各円形状横断面において内方に向かうほど飾り糸が高密度状態となり,先端部においても内方に向かうほど飾り糸が高密度状態になるパイルマット。」 相違点1「飾り糸が,本件特許発明1においては,「0.05乃至0.8デニールの非吸水性の単繊維としての連続長繊維」であるのに対し,引用発明においては,「吸水性が良好な短繊維である綿繊維を多数撚って紡いだ高い吸水性を有する綿紡績糸」である点。」 2 取消事由1(相違点1に関する判断の誤り)について たとえ一部の材料が異なる場合に所定の条件下で同じ機械を用いて目的物を製造可能であるという事実があったとしても,そのことが発明を行うことの容易性に直ちに結び付くものではない。 肌触り性は,繊維製のマットに限らず人が触れる状態で使用される繊維製品全般における普遍的な課題である上に,甲4公報の記載も漠然とした内容であり,上記課題は甲4公報に記載されている具体的な発明に基づくものではない。原告らの主張は,普遍的な課題において共通し,漠然とした解決手段において当てはまり得ることにより発明の進歩性が否定されるという主張に帰し,発明の本来の課題及びその解決手段とは無関係な理由により広く発明の進歩性を否定することができるという結果を招くものであり失当である。 また,原告らが主張する肌触り性の課題は,本件特許発明の客観的な課題(本来の課題)とは無関係の事後分 理由により広く発明の進歩性を否定することができるという結果を招くものであり失当である。 また,原告らが主張する肌触り性の課題は,本件特許発明の客観的な課題(本来の課題)とは無関係の事後分析的なものにすぎず,甲4公報の記載は漠然とした内容であるから,本件特許発明1の容易想到性を基礎付けるものではない。 また,甲4公報には,従来の綿などの天然繊維からなるマット等に比べて室内マットの肌触り性を向上させる旨の記載はない。繊維製品の肌触りの評価については,好みの問題や主観的な面が大きく,綿のような天然素材に対して根強い志向があることにも照らすと,肌触りについて,引用発明のような綿100%のものと甲第4号証記載の発明のようにポリエステル及びナイロンを用いたパイルマットの間に上下や優劣があると一概にいうことはできない。引用発明は,肌触り性を含めて綿の素材感を提供するという課題にこだわって綿100%で形成したマットであるから,その素材として,甲第4号証記載の発明において用いられているポリエステルやナイロンのような合成繊維の採用を考慮することは考えられない。 原告らの指摘する甲4公報【0009】の記載も漠然とした内容であり,このような記載を考慮しても本件特許発明1の構成が容易想到であるとはいえない。 3 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り)について 原告らの指摘する甲4公報【0009】の記載は漠然とした内容であり,このような記載を考慮しても,相違点2に係る本件特許発明1の構成が容易想到であるとはいえない。 甲4公報における,ソフトな肌触りを有し吸水性が高いという記載は,合成繊維(極細繊維を含む。)が軸線方向に沿うパイル糸により形成されたカットパイル及びループパイルについてのものであり,し 甲4公報における,ソフトな肌触りを有し吸水性が高いという記載は,合成繊維(極細繊維を含む。)が軸線方向に沿うパイル糸により形成されたカットパイル及びループパイルについてのものであり,しかも,そのパイル糸の太さについて,「800デニール以上の太さとするのは,ソフトタッチと高い吸水性という本考案の十分な効果を得るためである。」とされている。 したがって,上記の構成を採用せずに,単に,これらとは全く構造が異なる引用発明のモール糸によるパイルの飾り糸(吸水性が良好な短繊維である綿繊維を多数撚って紡いだ高い吸水性を有する綿紡績糸)を,肌触り性を考慮して甲4公報記載の非吸水性のポリエステル及びナイロンで構成される1デニール未満の極細繊維(すなわち単繊維)に置き換えることが当業者にとって容易であるとはいえない。 本件特許発明は,略円柱形状をなすパイルの外周面部及びパイルの先端部の略凸曲面状部の全体が,吸水性に優れると共に水分を吸収した状態においても比較的乾燥した状態を維持しやすく,べとつき感が生じにくいという作用効果を有する。 これに対し,引用発明の構造上,パイルの内方に向かって毛管現象による強い吸水力が作用するとは考えられないし,引用発明において,パイルが吸水した状態においては,略円柱形状をなすパイルの外周面を形成する飾り糸の先端部は,綿紡績糸であるため水分を保持した状態を維持し,使用者にとってはべとつき感が生じるものとなる。 また,甲4公報には,吸水性が高く,かつ,吸水した状態でべとつき感が生じにくいパイルについての記載や示唆は見当たらず,かえって,【0022】には,高い吸水性とべとつき感が生じにくいという相反する課題を同一のパイルで解決することは困難であることが示唆されている。 さ パイルについての記載や示唆は見当たらず,かえって,【0022】には,高い吸水性とべとつき感が生じにくいという相反する課題を同一のパイルで解決することは困難であることが示唆されている。 さらに,甲4公報【0021】の記載は,原告らの主張するように,極細繊維の先端部同士の間を開放することで吸水性を高めることを示唆するものではないし,本件特許発明1の作用効果を示唆するものではない。 したがって,本件特許発明の作用効果は,引用発明と甲第4号証記載の発明に基づいて容易に予測し得たものではなく,審決の判断に誤りはない。 4 取消事由3(本件特許発明2ないし8に関する判断の誤り)について前記1ないし3と同様の理由により,審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告ら主張の各取消事由にはいずれも理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(相違点1に関する判断の誤り)について 引用発明について甲1陳述書及び甲2カタログに記載された商品「デゼルト」の構成からは,前記第2の3ア記載の引用発明を把握することできるものと認められる。 そして,甲2カタログには,「デゼルト」につき,「生活空間にあるベーシックカラー・・・を使ったラグシリーズ。素材感にこだわり,シンプルなデザインに仕上げました。」との記載がある。そして,「デゼルト」の説明として「アクセントラグ」,「ホットカーペット」などの記載がある(甲2)。また,「デゼルト」を撮影した写真(甲5の3)によれば,「デセルト」に付されたタグに,「Cottonテイスト」と記載されていることが認められる。 なお,商品カタログ「VERGER(ヴェルジェ)2004 FALL&W 写真(甲5の3)によれば,「デセルト」に付されたタグに,「Cottonテイスト」と記載されていることが認められる。 なお,商品カタログ「VERGER(ヴェルジェ)2004 FALL&WINTER」(甲3。以下「甲3カタログ」という。)には,「entrance」の項目に,「心のこもったおもてなしの一歩に」,「お客さまを迎える気持ちを足ざわりのやわらかい1枚のマットで伝えられたら。そんな思いでセレクトしました。」と記載された上で,「綿100%」の商品として「綿モールインテリアマット」(「デゼルト」と同様の商品である(甲1)。)が記載されていることが認められる。 本件特許発明1と引用発明の一致点及び相違点について被告は,引用発明におけるモール糸の飾り糸(綿フィラメント)は,「吸水性が良好な単繊維である綿繊維を多数撚って紡いだ綿紡績糸」であるとか,本件特許発明における「フィラメント」は,モール糸における飾り糸を意味するものではなく,素材としての「単繊維としての連続長繊維」を意味するものである旨主張し,本件特許発明1と引用発明の一致点及び相違点1は審決における認定とは異なる旨主張する。 しかし,前記第2の2及び上記において認定したところに照らすと,本件特許発明1及び引用発明は,いずれも,その具体的な素材はともかく,「フィラメント」を有する点で一致することは明らかである。そして,本件特許発明1における「フィラメント」が「0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメント」であるのに対し,引用発明においては「綿フィラメント」であり,これらが相違することもまた明らかである。 そして,前記第2の2認定の本件特許発明の内容と前記認定の引用発明の内容とを対比すると,両者の間には,審決の認定した一致点及び ラメント」であり,これらが相違することもまた明らかである。 そして,前記第2の2認定の本件特許発明の内容と前記認定の引用発明の内容とを対比すると,両者の間には,審決の認定した一致点及び相違点が存在するものと認められる。 そうすると,審決の一致点及び相違点1の認定自体に誤りがあるということはできない。 甲4公報についてア甲4公報には以下の記載がある(甲4。なお,図面は別紙2参照。)。 「【考案の名称】極細繊維室内マット」 「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】基布にパイル糸を植糸した室内マットであって,該パイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を使用した極細繊維マット。 【請求項2】基布にパイル糸を植糸した室内マットであって,基布上において,カット及び/又はループのパイル形状を一定間隔で形成するように,タフト機又は工業用ミシン機等によって,パイル糸が植糸され,該パイル糸の素材の繊維として,ポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を使用した極細繊維マット。 【請求項3】基布に800デニール以上の太さのパイル糸を植糸した室内マットであって,該パイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される1デニール未満の極細繊維を30%以上含み,植糸した該パイル糸のパイル形状が,カット及び/又はループよりなる極細繊維マット。」 「【考案の詳細な説明】【技術分野】【0001】本考案は,ポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を素材とするパイル糸を,基布にタフト機または工業用ミシン機等で植糸して形成する極細繊維マットに関する。 【背景技術】【0002】従 ,ポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を素材とするパイル糸を,基布にタフト機または工業用ミシン機等で植糸して形成する極細繊維マットに関する。 【背景技術】【0002】従来,トイレマットやキッチンマットなどの室内で使用されるマット(敷物)といえば,アクリル繊維をはじめとする合成繊維マットや,綿をはじめとする天然繊維マットが知られている。 一方で,近年の需要者は柔らかな風合いを求める傾向にあり,また水廻りに使用されるマットでは同時に吸水性も求められている。」 「【考案が解決しようとする課題】【0004】しかしながら,合成繊維自体は吸水性に乏しいため,特殊吸水機能を持たせた糸,あるいは特殊吸水加工を施した糸を使用したものを除き,通常の合成繊維マットに高い吸水性を期待することはできない。また,天然繊維マットの場合では天然繊維自体に吸水性はあるものの乾燥が遅いという問題があった。さらに,従来の合成繊維や天然繊維によるマットでは,近年需要者が求める柔らかな風合いやソフトな肌触りを満足させることはできなかった。 一方,上記特許文献1は,極細繊維の毛先を垂直に起毛させ,主として極細繊維の靴底汚れ落とし効果に着目した靴拭きマットに関するものであって,極細繊維をキッチンマットやバスマット等の室内マットに利用したものではない。 そこで,本考案は上記問題点に鑑み,室内マットとして,ソフトタッチと高い吸水性を備えた極細繊維マットを提供するものである。」 「【考案の効果】【0009】本考案によれば,パイル糸の素材の繊維に極細繊維を含んでおり,毛細管現象により速やかにパイル糸表面の水分がパイル糸側面及び底面に向けて吸水されるため,もともと吸水性に乏しい合成繊維を使用しながら,従来の合成繊 糸の素材の繊維に極細繊維を含んでおり,毛細管現象により速やかにパイル糸表面の水分がパイル糸側面及び底面に向けて吸水されるため,もともと吸水性に乏しい合成繊維を使用しながら,従来の合成繊維マットに比較して非常に高い吸水性を発揮するマットを提供することが可能となる。従って,キッチンマットやバスマットなど,特に水廻りにおいて使用され吸水機能が要求されるマットにおいて有効に活用できる。 また,極細繊維を含んだパイル糸は肌触りが非常にソフトであり,近年の需要者の嗜好を満足させるマットを提供することが可能となる。さらに,肌触りに優れるために,常時の吸水性が必ずしも不要な水廻り以外の用途,例えば室内カーペット等に利用しても十分な効果が期待できるものである。 【考案を実施するための最良の形態】【0010】本考案においては,ポリエステル及びナイロンの合成繊維で構成される極細繊維をパイル糸の素材として使用する。構成比率は,ポリエステルが70~80%,ナイロンが20~30%であることが好ましい。この極細繊維1本あたりの太さは1デニール未満であり,一般的にはマイクロファイバーと称される繊維である。・・・【0012】・・・基布に植糸されるパイル糸のパイル形状は全てカット,全てループ,あるいはカットとループの組み合わせのうちのいずれでもよく,一のマットにおいて,異なるパイル長を組み合わせたり,例えば外周だけパイル糸の植糸密度を上げる等,装飾性の向上の意味からも,パイル目付を部分的に変えることとしてもよい。・・・【0014】本考案に係るマットの用途や製品サイズ,平面形状は種々設定可能であり,バスマット,キッチンマット,トイレマット,などの水廻り関連のマットをはじめとして,便座カバーやトイレットペーパーホルダー,また るマットの用途や製品サイズ,平面形状は種々設定可能であり,バスマット,キッチンマット,トイレマット,などの水廻り関連のマットをはじめとして,便座カバーやトイレットペーパーホルダー,または水廻り用途以外のカーペット製品等,室内で使用される種々のマットとして製造できる。」 「【実施例1】【0015】本考案の第1の実施例を図面を参照しながら説明する。本実施例は極細繊維により構成されるパイル糸を用いて製造したトイレマットに関するものである。 【0016】図1は本考案に使用するパイル糸を示す図,図2は第1の実施例に係るトイレマットの平面図,図3は第1の実施例に係るトイレマットの拡大縦断面図である。 図中,(1)はパイル糸,(2)は極細繊維,(3)は繊維の束,(4)はカットパイル,(5)はループパイル,(6)は外周カットパイル,(7)は裁断部,(8)は基布,(9)は樹脂剤を示す。 【0017】本実施例のトイレマットの製造にあたっては,ポリエステル(約75%)及びナイロン(約25%)で構成される極細繊維をパイル糸の素材として使用する。極細繊維は1本当たりの太さが1デニール未満のものであるが,当初1本あたり3デニールの太さの繊維を,染色加工時の特殊処理により,1デニール未満に割繊されたものである。なお,パイル糸(1)を構成する繊維はすべて極細繊維である。・・・【0018】本実施例に係るトイレマットの製品サイズは,縦60cm,横65cmの大きさで,図2に示すように,カットパイル(4),ループパイル(5),外周カットパイル(6)の部分から形成されており,ループとカットのパイル形状を組み合わせたものである。カットパイル(4),ループパ 2に示すように,カットパイル(4),ループパイル(5),外周カットパイル(6)の部分から形成されており,ループとカットのパイル形状を組み合わせたものである。カットパイル(4),ループパイル(5)の部分は,パイル目付が800g/m2となるようにパイル糸(1)が植えつけられているが,外周カットパイル(6)の部分は,カットパイル(4)の部分よりもパイル長,密度とも大きくなるようにパイル糸(1)が植えつけられている。 カットパイル(4),ループパイル(5),外周カットパイル(6)は,それぞれカット又はループのパイル形状が一定間隔で形成されるように植糸される。カットパイル(4),ループパイル(5)の部分は図3に示すような断面を構成する。基布(8)の厚みは3mmであり,基布表面からのパイル長は,カットパイル(4)が10mm,ループパイル(5)が5mm,外周カットパイル(6)が13mmである。・・・【0021】また,1本あたりの太さが1デニール未満という極細繊維(2)を使用しているために,高い吸水機能を発揮することが可能となる。特に,パイル糸の頂部がカットされているカットパイル(4)や外周カットパイル(6)の部分は,吸水性が高い。・・・【0022】また,パイル形状としてループとカットを組み合わせたり,カットパイルでも外周のカットパイルはパイル長を長くしてパイル目付を増やしたり,といったことが自由にできるため,ファッション性や需要者の嗜好等に対応してさまざまな模様のマットが製造できる。また,吸水性を高めたい部分ではカットパイルの長さを大きくしたり,速乾性を高めたい部分ではループパイルの比率を高くするなど,用途や機能に応じたマットを提供することが可能となる。」 「【実施例2】【0023】本考案に さを大きくしたり,速乾性を高めたい部分ではループパイルの比率を高くするなど,用途や機能に応じたマットを提供することが可能となる。」 「【実施例2】【0023】本考案に係る第2の実施例は,極細繊維を含むパイル糸を用いて製造したバスマットに関するものである。 【0024】図1は本考案に使用するパイル糸を示す図,図4は第2の実施例に係るバスマットの平面図,図5は第2の実施例に係るバスマットの拡大縦断面図である。 図中,(1)はパイル糸,(2)は極細繊維,(3)は極細繊維の束,(4)はカットパイル,(6)は外周カットパイル,(7)は裁断部,(8)は基布,(10)はシート材を示す。・・・【0027】本実施例では,パイル形状がすべてカットパイルであるが,パイル長と植糸密度を調整することにより,図4に示すような模様を形成することができる。また,実施例1と同様に,高い吸水性とソフトな肌触りを発揮するマットを提供することが可能となる。マット外周部の外周カットパイル(6)の部分は,内側のカットパイル(4)の部分に比べてパイル目付が2倍であり,特に高い吸水性が期待できる。」イ以上によれば,甲4公報には,「バスマット,キッチンマット,トイレマット,などの水廻り関連のマットをはじめとして,便座カバーやトイレットペーパーホルダー,または水廻り用途以外のカーペット製品等,室内で使用される,基布にパイル糸を植糸した室内マットであって,パイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される1 デニール未満の極細繊維を含み,植糸した該パイル糸のパイル形状が,カット及び/又はループよりなる吸水性の極細繊維マット。」の発明(甲第4号証記載の発明)が記載されているものと認められる。 そして,甲第4号証記載の 細繊維を含み,植糸した該パイル糸のパイル形状が,カット及び/又はループよりなる吸水性の極細繊維マット。」の発明(甲第4号証記載の発明)が記載されているものと認められる。 そして,甲第4号証記載の発明は,吸水性及び肌触り性を備えたマットの提供を課題とし,パイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される1デニール未満の極細繊維を用いることにより,毛細管現象により速やかにパイル糸表面の水分がパイル糸側面及び底面に向けて吸水されるため,もともと吸水性に乏しい合成繊維を使用しながら,従来の合成繊維マットに比較して非常に高い吸水性を発揮するマットを提供することが可能となるものであると認められる。さらに,植糸したパイル糸のパイル形状につき,カット及び/又はループを採用することにより,吸水性を高めたい部分ではカットパイルの長さを大きくしたり,速乾性を高めたい部分ではループパイルの比率を高くするなど,用途や機能に応じたマットを提供することを可能とするものでもあると認められる。 加えて,極細繊維を含んだパイル糸は肌触りが非常にソフトであり,近年の需要者の嗜好を満足させるマットを提供することを可能とするものであるものと認められる。 容易想到性の判断について原告らは,良好な肌触り性は引用発明と甲第4号証記載の発明に共通する課題であり,また,室内マットにおいて綿以外の合成繊維を使用することや,モール糸の飾り糸として,綿などの紡績糸及びポリエステルなどのフィラメント糸のいずれを使用することが本件特許の出願前における周知の事項である以上,引用発明に甲第4号証記載の発明を適用して相違点1に係る構成とすることは容易である旨主張する。 確かに,前記において認定したところに照らすと,マットにおいては需要者の嗜好を満足さ 項である以上,引用発明に甲第4号証記載の発明を適用して相違点1に係る構成とすることは容易である旨主張する。 確かに,前記において認定したところに照らすと,マットにおいては需要者の嗜好を満足させるような良好な肌触り性が求められていることが認められる。 また,室内マットにおいて綿以外の合成繊維を使用することや,モール糸の飾り糸として,綿などの紡績糸及びポリエステルなどのフィラメント糸のいずれを使用することも,本件特許の出願前における周知の事項であると認められる(甲4,11,12)。 しかし,前記1認定のとおり,引用発明は,甲2カタログ掲載の商品及びその商品を説明する内容の甲1陳述書によりその構成が把握されるにとどまり,これらの書証のみからは,引用発明においても肌触り性が課題として存在するのか否かは明らかではない。甲3カタログの記載をみても,同カタログには,「お客さまを迎える気持ちを足ざわりのやわらかい1枚のマットで伝えられたら。」との記載があるので,足触り(肌触り)を考慮した商品が掲載されていることはうかがえるものの,甲3カタログのこの記載のみからは,掲載商品につき更に肌触り性を課題とする技術思想が開示されているとみることは困難である。 また,上記認定のとおり,マットにおいては一般に需要者の嗜好を満足させるような良好な肌触り性が求められているとしても,前記において認定したところに加え,引用発明の基礎となる「デゼルト」は,需要者に向けて現実に販売されている商品であること(甲1,2)に照らすと,引用発明は,肌触りの点を含め,モールマットとして販売するために必要な要素を備えることを前提として,素材を綿100%とすることを選択し,かつ綿100%の素材感を提供することを目的としたものと解される(甲3商品カタログの を含め,モールマットとして販売するために必要な要素を備えることを前提として,素材を綿100%とすることを選択し,かつ綿100%の素材感を提供することを目的としたものと解される(甲3商品カタログの上記記載もこのことを裏付けるものといえる。)。そうすると,引用発明においては,もはや肌触り性を得るために,綿100%以外の素材を使用する必要性を見いだすことはできないものと解される。 したがって,マットにおいて良好な肌触り性が求められており,また,室内マットにおいて綿以外の合成繊維を使用することや,モール糸の飾り糸として,綿などの紡績糸及びポリエステルなどのフィラメント糸のいずれを使用することも本件特許の出願前における周知の事項であったとしても,当業者が,引用発明における綿フィラメントを甲4公報記載のマットのパイル糸の素材の繊維である非吸水性のポリエステル及びナイロンに置き換えることを容易に想到することができたものということはできない。 よって,原告らの上記主張を採用することはできない。 また,引用発明は,甲1陳述書及び甲2カタログの記載内容に照らすと,バスマット等の水廻り用途に用いられるものとは解されないので(甲3カタログの記載を踏まえても同様である。),引用発明が吸水性を課題として有するものとは解されない。したがって,この観点からも,引用発明に甲第4号証記載の発明を組み合わせる動機付けは存在しない。 以上によれば,相違点1についての審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り)について 容易想到性の判断について前記1認定のとおり,甲第4号証記載の発明は,ポリエステル及びナイロンの合成繊維で構成される1デニール未満の極細繊維をパイル糸の素材として使用する て 容易想到性の判断について前記1認定のとおり,甲第4号証記載の発明は,ポリエステル及びナイロンの合成繊維で構成される1デニール未満の極細繊維をパイル糸の素材として使用することに加え,基布に植糸されるパイル糸のパイル形状を,全てカット,全てループ,又はカットとループの組合せとすることにより,毛管現象により速やかにパイル糸表面の水分がパイル糸側面及び底面に向けて吸水される作用効果を得るものである。したがって,甲第4号証記載の発明におけるパイル形状は,上記の形状のいずれかを採用することが前提とされるものと解される。そうすると,引用発明に甲第4号証記載の発明の構成を組み合わせたとしても,そのパイル形状は,上記の形状のいずれかとなるものであって,本件特許発明1と引用発明との相違点2に係る構成となるものではない。 原告らの主張について原告らは,引用発明において,パイル形状を変更することなく綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えることは,当業者が容易に想到することができる旨主張する。 しかし,前記1認定のとおり,引用発明において,綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えること自体,当業者において容易に想到することができるものではない以上,原告らの上記主張を採用することはできない。 仮に,原告らの主張するように,引用発明の綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えた場合であっても,甲1陳述書及び甲2カタログ等から把握される引用発明と本件特許発明1との間に前記1認定の構成上の一致点が存在することは認められるものの,上記甲号各証から把握される引用発明の構成それ自体からは直ちに,引用発明の略円柱形状をなすパイルが,本件特許発明1におけるように「毛管現象により内方に向かう吸水力が作用 在することは認められるものの,上記甲号各証から把握される引用発明の構成それ自体からは直ちに,引用発明の略円柱形状をなすパイルが,本件特許発明1におけるように「毛管現象により内方に向かう吸水力が作用するよう構成されている」かどうかは判然としないというほかないし,上記甲号各証にも,引用発明が上記の構成を備えるものかどうかについては何ら記載がない。 そうすると,引用発明において,パイル形状を変更することなく綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えたとしても,これにより本件特許発明1と引用発明との相違点2に係る構成となるものと認めることはできない。 また,原告らは,甲4公報【0021】の記載は,極細繊維の先端部同士の間を開放することで吸水性を高めることを示唆するものであり,引用発明は,綿フィラメントの外方側の先端部が開放されていることから,肌触り性を高めるために引用発明における綿フィラメントを甲4公報記載の極細繊維に置き換えた当業者が,吸水性に関する甲4公報の上記記載を参酌して,このモールマットをバスマット等の吸水マットに適用しようと試みることは,容易になし得る旨主張する。 しかし,原告らの主張するような置換えが容易に想到することができるものではないことは上記認定のとおりである。しかも,甲4公報【0021】の記載は,甲第4号証記載の発明のカットパイルの吸水性が高いことを示すにとどまるものであり,甲4公報【0022】には,吸水性を高めたい部分ではカットパイルの長さを大きくすべきことが記載されていることに照らすと,甲4公報【0021】の記載が直ちに,極細繊維の先端部同士の間を開放することで吸水性を高めることを示唆するものとは認め難い。しかも,甲4公報の上記各記載に照らすと,引用発明を吸水マットに適用すべく甲4公報【00 21】の記載が直ちに,極細繊維の先端部同士の間を開放することで吸水性を高めることを示唆するものとは認め難い。しかも,甲4公報の上記各記載に照らすと,引用発明を吸水マットに適用すべく甲4公報【0021】の記載を踏まえた場合,引用発明のパイルの形状をカットパイルとするのが自然であると解され,相違点2に係る構成となるものではない。 よって,原告らの上記各主張を採用することはできない。 以上によれば,相違点2に関する審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件特許発明2ないし8に関する判断の誤り)について前記1及び2において認定したところと同様の理由により,本件特許発明2ないし8に関する審決の判断に誤りはない。 4 まとめ以上によれば,本件特許発明は引用発明及び甲第4号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない,とした審決の判断の結論に誤りはなく,原告ら主張の各取消事由はいずれも理由がない。また,他に審決に取り消すべき違法もない。 第6 結論よって,原告らの請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂 一裁判官西理香裁判官神谷厚毅 別紙1図1(模式的正面図)S:基布A:パイルマットF:フィラメントC:芯糸P:パイルPa:先端部図2(パイルの模式的拡大横断面図)P:パイルF:フィラメント S:基布A:パイルマットF:フィラメントC:芯糸P:パイルPa:先端部図2(パイルの模式的拡大横断面図)P:パイルF:フィラメント図3(モール糸によりパイルを形成する工程の一部を示す模式図)S:基布F:フィラメントC:芯糸M:モール糸R:ループ部別紙2図31:パイル糸4:カットパイル5:ループパイル8:基布
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