- 1 - 令和6年8月2日宣告令和6年(わ)第407号判決上記の者に対する過失運転致死被告事件について、当裁判所は、検察官園麻美及び国選弁護人浅水正各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を禁錮2年6月に処する。 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、かねてから糖尿病にり患し、インスリンの注射後には食物等の摂取を行い血糖値を調整する必要があったものであるが、令和6年5月16日午前8時14分頃、普通貨物自動車を運転し、札幌市a区bc条d丁目e番f号所在の駐車場から発進進行するに当たり、運転開始前に自己の身体にインスリンを注射したにもかかわらず、食物等の摂取を行わず、低血糖症状による意識障害に陥る危険があることを認識していたのであるから、自動車の運転を差し控えるべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、意識障害が起こらないものと軽信して運転を開始した過失により、その頃、同所付近において意識障害に陥り、低下した意識状態のまま自車を進行させ、同日午前8時16分頃、同区bg条h丁目i番先道路においてj方面からk方面に向かい時速約40キロメートルで進行中、折から同所先の押しボタン式信号機が設けられた横断歩道上を青信号に従い左方から右方に向かい小走りで横断を開始したA(当時9歳)に自車左前部を衝突させて路上に転倒させ、よって、同人に外傷性肝損傷の傷害を負わせ、同日午前9時38分頃、札幌市(住所省略)所在のB病院において、同人を前記傷害に基づく腹腔内出血により死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)- 2 - 罰条自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文刑種の選択 記傷害に基づく腹腔内出血により死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)- 2 - 罰条自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文刑種の選択 禁錮刑未決勾留日数の算入 刑法21条訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人は、10年以上前に糖尿病を発症し、その後インスリン注射を含む治療を受けてきた。その間、医師等から、インスリン注射後には血糖値が下がることから、意識を失うなどの低血糖症状を防ぐため、注射後に食物等を摂取する必要があることを繰り返し指導されてきている。 他方、被告人は、医師から定期的な通院や治療の継続を指示されていたにもかかわらず、これを度々怠って不定期な通院や自己判断による投薬等を行い、糖尿病症状が悪化し入院することを3度繰り返した。被告人は、血糖値を適切に調整しないことで起こりうる体調の悪化を実感していたといえる。さらに、本件前日には、本件同様、通勤前にインスリンを注射したがその後食物等を摂取せずに運転を開始し、注意力が散漫となって事故を起こしており、被告人が供述するように、インスリン注射後に食物等を摂取しなかったことによる低血糖症状が影響して事故を起こす可能性は十分想起されたと認められる。 そうすると、本件は、インスリン注射後に食物等を摂取せず運転をすれば低血糖症状により意識障害に陥る危険があることは明白であったにもかかわらず、危険を軽視して敢行された身勝手な犯行であり、過失は非常に重大である。 その結果、何ら落ち度のない1名の命が奪われた。大切な家族や友人に囲まれ、幸せな日々を送っていたにもかかわらず、9歳という若さで将来を奪われた被害者の無念さは察するに余りあるものであり、残された家族が厳しい処罰 ら落ち度のない1名の命が奪われた。大切な家族や友人に囲まれ、幸せな日々を送っていたにもかかわらず、9歳という若さで将来を奪われた被害者の無念さは察するに余りあるものであり、残された家族が厳しい処罰感情を抱くのも当然である。 他方、被告人は、自身の軽率な判断やこれまでの自身の糖尿病治療のあり方等を- 3 - 振り返り、今後運転する意向はない旨述べている。また、被害者側には被告人の加入する対人賠償無制限の任意保険によって相応の賠償がなされることが期待される。 その他前科前歴がないことなど被告人にとって有利な事情を斟酌しても、上記の過失の重大さや結果からすれば、主文程度の実刑はやむを得ない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑禁錮4年、弁護人の科刑意見付執行猶予)令和6年8月2日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判官加島一十
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