令和5(わ)356 強盗殺人、有印私文書偽造・同行使、詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年8月1日 福岡地方裁判所 小倉支部
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判決文本文8,773 文字)

令和6年8月1日宣告令和5年(わ)第356号、第263号、第379号、第442号、第451号強盗殺人、有印私文書偽造・同行使、詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用被告事件判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。 福岡地方検察庁小倉支部で保管中の「お引出し用(払戻請求書)」1通(令和6年領第336号符号428)及び「普通預金払戻請求書」1通(令和5年領第1919号符号1)の各偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 分離前相被告人Aと共謀の上、令和5年5月17日、北九州市小倉北区大手町1番1号の北九州市小倉北区役所において、被告人が、情を知らない同区役所職員に対し、真実は、被告人が同市小倉北区(以下省略)に住所を異動した事実がないのに、同所に住所を異動した旨の内容虚偽の住民異動届を提出して受理させ、その頃、情を知らない北九州市市民文化スポーツ局市民総務部区政事務センター職員らをして、同届に基づき、権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳システムにその旨不実の記録をさせ、即時これを北九州市役所が管理するサーバー内に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供し、第2 被告人の実姉であるBから預金通帳等を強取しようと考え、Aと共謀の上、同年6月2日午後零時50分頃から同日午後1時29分頃までの間に、福岡県 遠賀郡(以下省略)のB方において、被告人が、B(当時52歳)に対し、催涙スプレーを噴射し、殺意をもって同人の前頚部を圧迫し、同人の両手首及び両足首を結束バンドで緊縛するなどの暴行を加え、よって、その頃、同所において、同人を頚部圧迫による窒息により殺害した上、同人管理に スプレーを噴射し、殺意をもって同人の前頚部を圧迫し、同人の両手首及び両足首を結束バンドで緊縛するなどの暴行を加え、よって、その頃、同所において、同人を頚部圧迫による窒息により殺害した上、同人管理に係る通帳3冊及び印鑑1個等を強取し、さらに、同人方付近において、同人管理に係る軽四輪乗用自動車1台(時価約1万円相当)を強取し(ただし、Aには殺意がなかった。)、第3 公安委員会の運転免許を受けないで、同日午後2時26分頃、同県中間市(以下省略)付近道路において、前記自動車を運転し、第4 Bから強取した株式会社C銀行D支店発行の同人名義の普通預金通帳及び「E」と刻した印鑑を利用して、預金払戻しの名目で現金をだまし取ろうと考え、Aと共謀の上、同日午後2時43分頃、同市(以下省略)の同支店において、被告人が、行使の目的で、同支店備付けの「お引出し用(払戻請求書)」の「おなまえ」欄に「B」、「金額」欄に「¥738000」などと各記入し、「お届印」欄に前記印鑑を押印し、もってB名義の「お引出し用(払戻請求書)」1通(令和6年領第336号符号428)を偽造した上、その頃、同所において、同支店従業員に対し、同払戻請求書を真正に成立したもののように装い、前記通帳と共に提出して行使し、現金73万8000円の払戻請求をし、同人をして、同請求が正当な権限に基づくものであると誤信させ、よって、その頃、同所において、同人から現金73万8000円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、第5 Bから強取した株式会社F銀行G支店発行の同人名義の普通預金通帳及び前記印鑑を利用して、預金払戻しの名目で現金をだまし取ろうと考え、Aと共謀の上、同日午後2時52分頃、同市(以下省略)の同銀行D支店において、被告人が、行使の目的で、同支店窓口に設置のタブレット端末を 記印鑑を利用して、預金払戻しの名目で現金をだまし取ろうと考え、Aと共謀の上、同日午後2時52分頃、同市(以下省略)の同銀行D支店において、被告人が、行使の目的で、同支店窓口に設置のタブレット端末を操作するなどして、「口座番号」欄に「(口座番号省略)」、「金額」欄に「¥290,000」な どと各記載された「普通預金払戻請求書」1通を、同窓口に設置されたプリンターで印字させ、同請求書の「おなまえ」欄に「B」と記入し、「お届出印」欄に同支店従業員をして前記印鑑を押印させ、もってB名義の「普通預金払戻請求書」1通(令和5年領第1919号符号1)を偽造した上、その頃、同所において、前記従業員に対し、同払戻請求書を真正に成立したもののように装い、前記通帳と共に提出して行使し、現金29万円の払戻請求をし、同人をして、同請求が正当な権限に基づくものであると誤信させ、よって、その頃、同所において、同人から現金29万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 (事実認定の補足説明)以下、A、その娘であるH及び息子であるIを総称して「J家」という。 1 被告人がBを殺害したかについて(判示第2関係)⑴ 弁護人は、被告人の公判供述に基づき、被告人はBの前頚部を圧迫しておらず、同人を殺害していない旨主張する。 ⑵ この点について最も重要な証拠は、Bの遺体の解剖を担当したK医師の供述を含む関係各証拠により認められる、Bの遺体の状況である。すなわち、関係各証拠によれば、Bが令和5年6月2日(以下、月日は特に断りのない限り令和5年のことを指す。)朝から同月3日朝頃までの間に前頚部を圧迫され、頚部圧迫に基づく窒息により死亡したこと、同月5日に同人の遺体が同人方で発見された際、その両手首及び両足首がそれぞれ結束バンドで緊縛されていたことが認 朝から同月3日朝頃までの間に前頚部を圧迫され、頚部圧迫に基づく窒息により死亡したこと、同月5日に同人の遺体が同人方で発見された際、その両手首及び両足首がそれぞれ結束バンドで緊縛されていたことが認められる。生きている者が手足を緊縛された場合、手先・足先のうっ血や皮下出血、緊縛による圧迫部辺縁の出血(辺縁性出血)が生じたり、圧迫を解除しようと体を動かすことによる皮膚のめくれが生じたりするはずであるが、Bの両手首及び両足首にはそのような損傷はなかった。そうすると、Bは、死亡直前又は死亡後に手足を緊縛されたものと推認できる。 また、Bの血液からは0.012µg/㎖という日常ではあり得ない高濃度の カプサイシンが検出され、一方で、同人の尿から検出されたカプサイシンンの濃度は0.002µg/㎖である。カプサイシンの血中半減期が約24分であること、尿中濃度が血中濃度の6分の1と低値であることからすれば、Bは、何らかの異常な事態により多量のカプサイシンを摂取した後、血中のカプサイシンが尿中に十分に移行する間もない短時間のうちに死亡したことも推認できる。 他方、被告人は、同月2日昼頃にB方を訪れ、同人と口論になった後、同人の顔面にカプサイシン入りの催涙スプレーを噴射し、同人の両手首及び両足首をそれぞれ結束バンドで緊縛したことを認めており、これらの事実は客観的証拠によっても裏付けられている。 以上の事実を総合すると、Bは、被告人から催涙スプレーを噴射され、その直前又は直後に前頚部を何者かによって圧迫され、これにより死亡する直前又は死亡した後に被告人に手足を緊縛されたということになるが、このような事実経過からすれば、Bの前頚部を圧迫したのが被告人以外の者であったとは考えられない。 この点についてAは、被告人がB方を立ち去った数分後にA 告人に手足を緊縛されたということになるが、このような事実経過からすれば、Bの前頚部を圧迫したのが被告人以外の者であったとは考えられない。 この点についてAは、被告人がB方を立ち去った数分後にAに対して電話で「かっとなってBの首を絞めた」旨発言したと供述し、この通話が終了した数分後にAと電話で話したHは、その際に同旨の話をAから聞いた旨供述している。これらの供述は、Hがその通話中である午後2時14分に絞め技による失神についてのウェブサイトを閲覧した履歴と整合し、十分に信用できる。被告人は、Aに対しそのような発言をしたことを否定し、弁護人は、J家が口裏を合わせてうそを言うことにより被告人に無実の罪を着せようとしている可能性を指摘するが、事件後それほど間がない午後2時14分の時点において、既にそのような口裏合わせをすることをAとHが想定し、これに沿うウェブサイト閲覧履歴をHが残したというのは無理がある。Aが供述するとおり、被告人から「首を絞めた」という発言があったからこそ、Hが上記の閲覧に至ったと見るのが自然であり、被告人が事件直後頃にそのような発言をしたという事実も、 Bの遺体の状況から導き出される「被告人がBの前頚部を圧迫した」という認定に合致し、これを支えるものである。 これに対し、弁護人は、Bが昼食を摂っていたことを前提にすれば、消化管の内容物の状態からすると同人は同月2日夜頃に殺害された疑いがあり、Aが送信したメッセージの内容からすれば、同人がBに恨みを抱いていた可能性があり、被告人がB方を立ち去った後、Aが同日夜頃にBを殺害した疑いがある旨主張する。しかし、そもそも夜に殺害されたとの仮説は、Bの血液及び尿から検出されたカプサイシンの濃度による「催涙スプレー噴射後短時間のうちに死亡した」との推認と矛盾する上、両手 殺害した疑いがある旨主張する。しかし、そもそも夜に殺害されたとの仮説は、Bの血液及び尿から検出されたカプサイシンの濃度による「催涙スプレー噴射後短時間のうちに死亡した」との推認と矛盾する上、両手首と両足首を縛られたにすぎないBが夜までその状態のままだったという点においても不自然である。Bがその日に昼食を摂っていたかも不明であるし、弁護人が指摘するメッセージの意味も不明確である。したがって、弁護人のこれらの主張は、Bの遺体の状況から導き出される前記認定を覆すものではない。 ⑶ Bの遺体の状況を更に見ると、同人の輪状軟骨が骨折しているものの完全には分離しておらず、気道閉塞が不完全であったと考えられるから、被告人は、Bが窒息に至るまで、その前頚部を相応に強い力で数分間にわたり圧迫したと推認できる。このような行為は、それ自体Bを死亡させる具体的な危険性を有するものであり、被告人が自己の行為に対する認識に欠ける状態にあったことを疑わせる事情はないから、被告人には、Bの前頚部を圧迫していた際に殺意があったと認められる。 2 被告人とAの間の共謀の有無・内容について(判示第2、第4及び第5関係)⑴ 弁護人は、被告人の公判供述に基づき、被告人がBから金目の物を奪い取ろうと考えるに至ったのは、同人の顔面に催涙スプレーを噴射した後であり、同人から金目の物を奪うことや、奪った通帳や印鑑を用いて同人名義の預金の払戻請求書を偽造・行使し、現金を詐取することをAに伝えていなかったから、同人との間に強盗の共謀も有印私文書偽造・同行使、詐欺の共謀もない旨主張 する。 ⑵アしかし、まず、防犯カメラ映像等の客観的証拠や防犯グッズ店の店員の供述により認められ、被告人も認めている事件当日の事実として、被告人が、事件当日の朝、B方に金を借りに行くためにAが する。 ⑵アしかし、まず、防犯カメラ映像等の客観的証拠や防犯グッズ店の店員の供述により認められ、被告人も認めている事件当日の事実として、被告人が、事件当日の朝、B方に金を借りに行くためにAが運転する車に乗り、実際にB方に赴くのに先立ち、5月下旬に一度催涙スプレーやスタンガンを見にA及びHと共に訪れていた防犯グッズ店を再び訪れ、Aから受け取った現金で催涙スプレーを購入し、その後に同人が運転する車でB方の近くまで行き、催涙スプレーや結束バンド等を携帯して車を降り、同人方に赴いた事実がある。 Aは、「事件の前日である6月1日、Bから金を借りに実家(B方)に行くので車に乗せて行ってもらいたいと被告人に依頼されて了承した。」「被告人がB方の近くで車を降りた時、催涙スプレーを多分持って行った。被告人が座っていた助手席に紙袋だけがあったので、催涙スプレーを持って行ったという話をHにした。」「5月25日に被告人の依頼で防犯グッズ店に行く車中で、被告人が、催涙スプレーかスタンガンを買ってBの家に行き、手足を縛ってBから金を取ってくると言った。」旨供述しており、事件当日に被告人がB方に行く際に、被告人が催涙スプレーを持って行った事実を認識していたことを認めている。Aの供述は、これらの限度においては、被告人が強盗に行くことをAが認識していたという認定に結び付く、同人にとって不利益な事実を承認するものである上、Hの供述とも概ね合致し、事実の流れとして不自然ではなく、信用することができる。5月25日の車中での被告人の発言についてAの上記供述内容を否定する被告人の供述によっても、その信用性は覆らない。 被告人が金を借りに行くと言いつつも催涙スプレーを携帯してB方に赴いている以上、催涙スプレーを噴射して金目の物を奪い取るという事態が起こり得るとい 告人の供述によっても、その信用性は覆らない。 被告人が金を借りに行くと言いつつも催涙スプレーを携帯してB方に赴いている以上、催涙スプレーを噴射して金目の物を奪い取るという事態が起こり得るというのは当然に想定されることであり、Aにおいてそのような事態 に思い至らないというのは常識的に考えてあり得ない。 このように、5月25日の車中で被告人が催涙スプレー等を使った強盗の話をしており、現に事件当日被告人が催涙スプレーを噴射する事態が起こり得る状態になっていたにもかかわらず、Aは被告人を追いかけて止めることなくB方に行かせている。むしろ、5月25日以降事件が発生するまでのAの行動は、被告人がB方に金を借りに行くことを知りながら、被告人から依頼されて、①当日に被告人が着るための黒色ジャージや肩掛けバッグを前日に購入し(被告人はこの事実を否定するが、A及びHの供述等の証拠によって認められる。)、②B方への車での送迎を了承し、③当日に手袋を購入した上、車内で被告人が上記の衣類に着替えていることを認識し、被告人の催涙スプレー購入に必要な現金を渡しただけでなく健康保険証の画像をHに依頼して防犯グッズ店の店員に送信させるというもので、犯行計画が着々と現実のものとなっていくことを認識しながらこれに積極的に寄与するものとなっている。 以上によれば、遅くとも5月25日の時点で、被告人がB方に行って同人に借金を申し込み、同人の対応によっては催涙スプレー等を使って同人の抵抗を排除し金目の物を奪い取る事態になり得ることについて、被告人が認識していたことはもちろん、Aもそのような被告人の意図を知りながらこれを認識・認容し、暗黙のうちに被告人と意思を通じて協力していたと認められる。その場合に想定される金目の物の中から通帳が排除されていたことを疑わ はもちろん、Aもそのような被告人の意図を知りながらこれを認識・認容し、暗黙のうちに被告人と意思を通じて協力していたと認められる。その場合に想定される金目の物の中から通帳が排除されていたことを疑わせる事情はなく、通帳を奪い取った場合には、これを現金化するために、被告人が郵便局や銀行でBに成りすまし、払戻請求書を偽造するなどして預貯金をだまし取ることが必要となるが、そのような手段をとることが想定外であったことを疑わせる事情もない。したがって、5月25日の時点において、被告人とAとの間には、Bの対応によっては強盗、有印私文書偽造・同行使、詐欺の各犯行に及ぶことについて黙示の意思連絡があったと認められ る。 イそして、Aが被告人とそのような意思連絡をしてこれに協力していた理由は、被告人がBから調達する金銭の大半をAないしJ家が得るためであった。 すなわち、そもそも被告人がBから金を借りようとしていた理由は、当時J家が金銭に窮し、被告人も貸金業者からの借入れを断られていた中で、被告人がJ家に融通する金銭を調達するためであり、Aもそのような被告人の意図を認識していた。本件犯行はJ家の利益を図るために行われたものであり、現に被告人がBの預金から引き出した現金のほとんどがAの手に渡ってJ家内で分配されている。このようにJ家の利益を図るための犯行において、Aは前述のとおり、犯行に用いるための道具の準備や犯行現場への送迎等、犯行の実現に不可欠な重要な役割を果たしている。 ウ以上によれば、被告人とAの間には、強盗、有印私文書偽造・同行使、詐欺の各犯行についての共謀が成立していたと認められる。 なお、既に見たとおり、被告人はB方に行く前から、同人の対応によっては催涙スプレー等を用いた強盗に及ぶ意思を有しており、現に催涙スプレーを噴射するな 行についての共謀が成立していたと認められる。 なお、既に見たとおり、被告人はB方に行く前から、同人の対応によっては催涙スプレー等を用いた強盗に及ぶ意思を有しており、現に催涙スプレーを噴射するなどして、それほど時間がない中で通帳等を奪っているから、催涙スプレーの噴射も含め、判示第2の各暴行はいずれも財物奪取に向けられたものと認められる。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人が、金銭に窮していたJ家に融通するための金銭を調達する目的で、Aと共に、虚偽の住民異動届を提出し(判示第1)、これにより不正に入手した健康保険証を用いて貸金業者から金を借りようとしたが失敗したため、実姉である被害者から金を借り、あるいは被害者の対応によっては催涙スプレーを噴射するなどして金目の物を奪い取るために被害者方を訪れ、結局被害者を殺害して通帳や印鑑、自動車等を強取した上(判示第2)、その自動車を無免許で運転して(判示第3)郵便局や銀行に行き、被害者に成りすまして不正に合計100万 円余りの預金の払戻しを受けた(判示第4及び第5)という事案である。 量刑の中心となる判示第2の強盗殺人についてみると、被告人は、Aと共に、計画的に犯行用具を準備したり犯行現場への送迎について打ち合わせたりした上、被害者に対し、催涙スプレーの噴射や結束バンドでの緊縛といった暴行を加えるのみならず、頚部を相応に強い力で数分間にわたり圧迫して殺害している。金銭を得るという目的を達成するために被告人なりに考えられた計画的犯行であり、暴行の態様は執拗で残虐である。 被害者は、被告人がパチンコによる借金を理由に失踪する前、被告人に金を貸しており、その返済を受けていなかったものの、被告人が放棄した子らの養育を引き受け、働きながら育て上げたというのである。被害者は被告人から感謝され チンコによる借金を理由に失踪する前、被告人に金を貸しており、その返済を受けていなかったものの、被告人が放棄した子らの養育を引き受け、働きながら育て上げたというのである。被害者は被告人から感謝されることはあっても悪感情を向けられる筋合いはないはずであり、なおも被害者から金を得ようとした被告人によって命を奪われたというのはあまりに理不尽である。被害結果は甚大であり、被害者の兄が公判廷において厳しい処罰感情を述べているのも当然である。被告人自らが得た金銭的利益こそわずかであるものの、その犯情は極めて重いというほかない。 2 弁護人は、被告人はAに搾取され、利用されていた被害者的な立場にあったことが考慮されるべきである旨主張する。確かに、被告人は、職場で知り合ったAに対し、20年間にわたって合計5800万円余りを送金しており、本件各犯行も被告人がJ家に金を融通するために行われたものであることに照らせば、Aの存在が本件各犯行に与えた影響は否定できない。しかし、被告人はAから脅されていたわけではなく、自らの意思でAとの付き合いやホームレス生活を続け、借金や家族の問題から逃避していたことがうかがわれる。Aの思惑はさておき、被告人が自らの意思に反してAへの服従を余儀なくされる立場にあったとは評価できない。実際、被告人は本件各犯行に及ぶことを主体的に決断した上、自ら積極的に犯行用具を準備するなどしているのであり、本件各犯行、特に強盗殺人に関して、Aとの関係を量刑上特段被告人に有利に考慮すべき理由は見いだせない。 なお、弁護人は、被告人には知的障害や発達障害がある可能性が否定できないとも主張するが、本件各犯行は全体を通じて相応に計画的で巧妙なものであり、このような本件各犯行に及んだ被告人について、責任非難を減少させるほどの知的水準の低さ 害や発達障害がある可能性が否定できないとも主張するが、本件各犯行は全体を通じて相応に計画的で巧妙なものであり、このような本件各犯行に及んだ被告人について、責任非難を減少させるほどの知的水準の低さは見られない。 3 以上によれば、被告人に前科・前歴がないこと、犯罪事実の一部を認めていること等を踏まえてもなお、酌量減軽には程遠く、主文の刑が相当と判断した。 (検察官の求刑無期懲役及び主文同旨の没収)(弁護人の科刑意見強盗殺人罪が成立しないことを前提に懲役5年)令和6年8月1日福岡地方裁判所小倉支部第2刑事部 裁判長裁判官武林仁美 裁判官松浦佑樹 裁判官町田哲哉

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