平成19(わ)3024 道路交通法違反,労働基準法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成20年1月25日 大阪地方裁判所
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判決文本文3,840 文字)

- 1 -主文被告人Aを懲役1年に,被告人Bを懲役10月に,被告人株式会社Cを罰金50万円に,それぞれ処する。 被告人A及び同Bに対し,この裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社Cは,長野県(以下略)に本店に置き,一般旅客自動車運送事業等を営む事業主であり,被告人Aは,被告人会社の代表取締役として,被告人会社の自動車運行を直接管理するとともに,その業務全般を統括管理していたもの,被告人Bは,被告人会社の専務取締役かつ運行管理者として,被告人Aを補佐し,被告人会社の自動車運行を直接管理するとともに被告人会社の労働時間管理を統括していたものであるが,被告人A及び同Bは,共謀の上,被告人会社の業務に関し,第1法定の除外事由がないのに,別表記載のとおり,平成19年1月14日から同年2月17日までの間,117回にわたり,上記被告人会社本店事務所等において,労働者Dほか3名に対し,1日8時間の法定労働時間を超え,それぞれ,2時間35分ないし11時間15分の時間外労働をさせた。 第2法定の除外事由がないのに,別表記載のとおり,平成19年1月14日から同月20日までの間,同月21日から同月27日までの間,同月28日から同年2月3日までの間,同月4日から同月10日までの間,及び,同月11日から同月17日までの間,19回にわたり,上記被告人会社本店事務所等において,労働者Dほか3名に対し,1週間40時間の法定労働時間を超え,それぞれ,12時間ないし56時間50分の時間外労働をさせた。 第3被告人会社の運転手であるDが過労のため正常な運転ができないおそれのあ- 2 -る状態で車両を運転することの情を知りながら,平成19年2月17日午前8時30分ころ,上記被告人会社本店事務所におい 被告人会社の運転手であるDが過労のため正常な運転ができないおそれのあ- 2 -る状態で車両を運転することの情を知りながら,平成19年2月17日午前8時30分ころ,上記被告人会社本店事務所において,同人に対し,同日夕刻から長野県を出発して大阪府内までの間を大型乗用自動車(観光バス)を運転して旅客輸送の業務に従事すること等を指示し,同人をして,同月18日午前5時25分ころ,大阪府(以下略)先道路において,過労による仮眠状態のまま同車を運転して走行させ,もって,自動車の運転者に対し,過労等により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転することを命じた。 (証拠の標目)省略なお被告人A及び同Bは当公判廷において判示第3の道路交通法違反罪過,,,(労運転下命)が成立することは争わないものの,その当時,Dが過労等により正常な運転ができないおそれがある状態にあったとは分からなかった旨を供述する。 ,,,,しかしDは判示第3のころは疲れがたまって身体が常にだるい状態にあり乗務中にバスの仮眠席で眠り込んだこともあったと供述していること,Dの勤務実態に関する資料を検討した統括産業医も,判示第3のころのDは疲労が蓄積し,正常な運転ができない状態にあった可能性が高いと述べ,Dの妻も,判示第3のころ,,のDは口数が少なく寝起きが非常に悪くなった旨を供述していることからすると,。 判示第3の当時におけるDは外見上も疲労困憊の状態にあったものと認められるそして,被告人Aは被告人会社の代表者であり,被告人Bは被告人会社の運行管理者であって,いずれもDの勤務実態を知る立場にあった上,判示第3の当日も,Dとは別のバスにそれぞれ乗務して,Dと同様に長野県内から大阪府内に向けて走行していたのである。そうすると,被告人A及び同B 者であって,いずれもDの勤務実態を知る立場にあった上,判示第3の当日も,Dとは別のバスにそれぞれ乗務して,Dと同様に長野県内から大阪府内に向けて走行していたのである。そうすると,被告人A及び同Bともに,Dが疲労困憊により,正常な運転ができないおそれがある状態にあったと認識していたことは認められるというべきである。 - 3 -(法令の適用)省略(量刑の事情),(),。 本件は判示の道路交通法違反過労運転下命労働基準法違反の事案である判示第3のバスを運転していたDは,被告人Aの実子であるところ,慣れないスキーバスの運転を余儀なくされていたため,判示第3のころは疲労困憊の状態にあったものと認められる。被告人Aは,一般旅客自動車運送業を営む被告人会社の代表者という立場にあり,被告人Bは,被告人会社の役員として運行管理事務を担当していたのであるから,このようなDの疲労状態を認識していた以上,事故を未然に防止して乗客や乗員の安全を確保するために,Dに休養を取らせたり,代わりの運転手を準備するなどの対策を講じるべきであった。しかるに,被告人A及び同Bは,スキーツアーを企画した旅行会社の意向を優先し,被告人会社の収益を確保しようと考えて,Dに対し乗務を命じたのである。被告人A及び同Bの係る行為は,被告人会社の経済的利益を優先させ,旅客運送事業者として最も重視すべき乗客の安全を軽視したものというほかなく,厳しく非難されるべきである。これにより,Dは,多数の乗客乗員を乗せて自動車専用道路を走行中,バスを分離帯やモノレールの支柱に衝突させる事故を起こし,乗務していた弟を死亡させたほか,乗客25名全員に傷害を負わせたもので,結果も重大である。 その上,被告人A及び同Bは,判示第1及び第2のとおり,被告人会社に係るバスの運転手に対し,恒常的 を起こし,乗務していた弟を死亡させたほか,乗客25名全員に傷害を負わせたもので,結果も重大である。 その上,被告人A及び同Bは,判示第1及び第2のとおり,被告人会社に係るバスの運転手に対し,恒常的に時間外労働をさせていた。被告人A及び同Bは,乗客の安全を最優先すべき旅客運送事業者の責任者という職責を省みず,スキーシーズンという書き入れ時であったことも相俟って,被告人会社の利益を優先させ,無謀かつ過酷な時間外労働をさせていたもので,この点の犯情も悪質である。そして,被告人Bは,労働基準監督署や運輸局から,労働基準法違反との指摘を受け,Dが平成19年2月初旬に休暇を取得していたように,判示第3の前ではあるが,乗務日報を改ざんし,被告人Aもこのことを認識していたのであって,労働法規を遵守- 4 -(,,しようとする意思が希薄であったといわざるを得ないなお被告人A及び同Bは当公判廷において,故意に改ざんしたものではないとか,知らなかったなどと供述するが,Dが,判示第3の後に入院していたところ,被告人Bから口裏合わせを指示されたと供述していたことや,被告人A及び同Bが,捜査段階においては,いずれも改ざんの事実を認める供述をしていたことに照らして,信用できない。 。)被告人Aは,被告人会社の代表者であり,被告人会社の運行管理者であった妻の被告人Bを指導監督するべき立場にあった。しかるに,被告人Aは,被告人会社に係るバスの運転手,とりわけ,経験の浅いDが,過酷な勤務を余儀なくされ,疲労困憊の状態にあることを認識しながら,何ら改善策を講じることなく,被告人Bと,,。 ともに判示の各犯行に及んだのであるからその刑事責任は被告人Bよりも重いまた,被告人Bも,違法な超過勤務を継続的にさせていた上,疲労困憊状態にあるDに対し,上記のよう く,被告人Bと,,。 ともに判示の各犯行に及んだのであるからその刑事責任は被告人Bよりも重いまた,被告人Bも,違法な超過勤務を継続的にさせていた上,疲労困憊状態にあるDに対し,上記のように無謀な乗務を命じたのであるから,その刑事責任は軽視できない。 他方,被告人A及び同Bは,取引先であった旅行会社から無理な配車を要求されたために,判示第3の犯行に及んだという側面があり,被告人らにその全責任を負わせるのはやや酷である。また,判示第3の過労運転により生じた事故で負傷した乗客の多くについては,被告人会社が締結していた任意保険契約により相応の賠償がされたと認められる。加えて,被告人A及び同Bは,判示第3の犯行により,それぞれ180日間の運転免許停止処分を受け,被告人会社も,道路運送法に基づく事業停止処分を受けたほか,本件について広く報道されることにより,被告人会社の事業に大きな影響が生じるなど,各被告人ともに相応の社会的制裁を受けたとい。 ,,,えるこのほか被告人A及び同Bともに判示の各罪が成立すること自体は認め当公判廷においても反省の態度を示していること,前科がなく,正式裁判を受けるのは今回が初めてであること,小学生の長男がいることなど,被告人らにとって酌むべき事情もある。 そこで,これらの事情を考慮し,被告人3名に対しては主文のとおりの各刑を量- 5 -,,。 定した上被告人A及び同Bについてはその執行を猶予するのが相当と判断したよって,主文のとおり判決する。 〔求刑被告人Aにつき懲役1年被告人Bにつき懲役10月被告人会社につき罰金50万円〕平成20年1月25日大阪地方裁判所第11刑事部裁判官千賀卓郎 月被告人会社につき罰金50万円〕平成20年1月25日大阪地方裁判所第11刑事部裁判官千賀卓郎

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