平成23(行コ)34 消費税更正処分等取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成21年(行ウ)第57号)

裁判年月日・裁判所
平成24年3月22日 福岡高等裁判所 租税
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判決文本文6,122 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略語は原判決の表記による。) 1 本件は,船腹調整事業を行うA連合会(A)において,その傘下の組合の組合員(本件組合員)による既存の船舶(交付金対象船舶)の解体・撤去等(解撤等)については,Aから,当該船舶のトン数に応じて解撤等交付金が交付される一方で,新たな船舶の建造等については,当該組合員において,その船舶の対象トン数に応じた建造等納付金を納付すべきこととされるとともに,そのうち建造等をする船舶に相当する船種の船舶(納付金免除船舶)を解撤等する者に対しては,これに交付される解撤等交付金相当額を限度に建造等納付金の納付が免除されることとされているところ,暫定措置として,当該組合員が,上記交付金相当額が上記免除限度額を超える場合に生じる余剰トン数等について,これを当該交付金対象認定トン数として留保する(留保対象トン数)などした上,留保対象トン数使用承諾書を発行して,これを他の組合員に使用させることができるようにするとともに,解撤等交付金を受けようとする組合員において解撤等交付金の認定額の20パーセント相当額をAに預託し,その同意の下に,同預託金にかかる債権の譲渡を認める扱いがされていた中で,これを利用して,新たな船舶を建造するに当たり,他の組合員らから留保対象トン数使用承諾書の発行を受けてその留保対象トン数を譲り受ける(本件承諾書取引)とともに,他の組合員ら(その破産管財人を含む。)から預託金預り証書 の譲渡を受けた(本件預託金証書取引)上,所定の免除 使用承諾書の発行を受けてその留保対象トン数を譲り受ける(本件承諾書取引)とともに,他の組合員ら(その破産管財人を含む。)から預託金預り証書 の譲渡を受けた(本件預託金証書取引)上,所定の免除手続を経て新造船舶(2隻)の建造等交付金を納付した被控訴人が,控訴人に対し,上記各取引に係る取得費用はいずれも建造する船舶の営業権に該当するもので課税仕入れといえるから当該取得費用に係る消費税相当額を課税仕入れに係る消費税額に含めて行うべきであるのに,そのように計算された被控訴人の消費税等の申告に対して,上記各取引が消費税法上の課税資産の譲渡等(課税取引)に当たらず課税仕入れには該当しないとして鹿児島税務署長がした平成16年11月1日から平成17年10月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る更正処分等(以下,被控訴人のこの主張に対応する範囲についての処分を「本件処分」ということがある。)は違法であると主張し,消費税の還付すべき税額981万7737円を超え1713万0701円を超えない部分及び地方消費税の還付すべき譲渡割額245万4434円を超え428万2675円を超えない部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(本件処分)の取消しを求めた事案である。 原審は,本件承諾書取引について,これが「資産の譲渡等」(法2条1項8号)であり,「課税資産の譲渡等」(同項9号)であって,これと裏腹の関係にある「課税仕入れ」(同項12号)に該当するとし(争点(1)),本件処分のうち本件承諾書取引を不課税取引であるとした部分につき違法であるとして,消費税の還付すべき税額981万7737円を超え1629万3177円を超えない部分及び地方消費税の還付すべき譲渡割額245万4434円を超え407万3294円を超えない部分並びに過少申告加算税の賦課決定処 の還付すべき税額981万7737円を超え1629万3177円を超えない部分及び地方消費税の還付すべき譲渡割額245万4434円を超え407万3294円を超えない部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち13万1000円を超える部分を取り消した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。なお,被控訴人において,原判決に対して不服の申立てをしていないため,その敗訴部分については審理判断の対象とはならない。 2 前提事実並びに争点及び争点についての当事者の主張 (1) 本件に関係する前提事実並びに争点及び争点についての当事者の主張は,後記(2)で補正し,同(3)で当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2,3のとおりであるから,これを引用する(なお,以下,原判決を摘示ないし引用する場合は,「原判決第2の2」のように表記し,当審において補正があるときは,補正後のものによる。)。 (2) 原判決の補正ア 5頁25行目の「年々漸減され」を,「その交付申請時の解撤等交付金単価(年々漸減され,平成18年4月1日以降は見直しが行われることとされている。)を適用して算出され」と改める。 イ 13頁7行目の「納付金免除船舶として使用することができる権利,地位」を,「解撤等交付金対象船舶を納付金免除船舶に振り替えて使用することができる権利,地位,ないしAの建造承認を停止条件とする新船建造資格という債権類似の権利」と改める。 ウ 16頁9行目末尾に改行の上,次を加える。 「また,本件承諾書取引については,契約書上,「売主の所有に係る内航船舶の一般貨物権利」(乙1),「売主が所有する」「内航船舶代替建造引当資格」の「留保トン数」(乙2)なるものが明記されており,本件承諾書取引の目的物を,Bが有して 契約書上,「売主の所有に係る内航船舶の一般貨物権利」(乙1),「売主が所有する」「内航船舶代替建造引当資格」の「留保トン数」(乙2)なるものが明記されており,本件承諾書取引の目的物を,Bが有していた「船舶(C)に係る一般貨物権利」及びDが有していた「船舶(E)の内航船舶代替建造引当資格の留保トン数」とされているが,これによっても,本件承諾書取引における譲渡の対象が,Aに対する債権ないし債権類似の権利,ないし,Aの建造承認を停止条件とする新船建造資格という債権類似の権利などということはできない。」(3) 当審における控訴人の予備的主張(争点(1)に関して)(控訴人) ア本件承諾書取引が「資産の譲渡等」に当たるとしても,「金銭債権」(法6条1項,法別表第1の2号及び施行令9条1項6号)の譲渡として,非課税取引に当たり,「課税仕入れ」(法2条1項12号)には,該当しない。すなわち,留保対象トン数の使用による建造等納付金の免除の法的性質は,本件組合員が新造船舶を建造するに当たり,Aに対して建造等納付金を支払う代わりに,解撤等交付金支払請求権を自働債権,建造等納付金の納付義務に対応する債務を受働債権として,その対当額で相殺することによって建造等納付金の納付義務を免れるというものであるところ,留保トン数の第三者使用による建造等納付金の免除の法的性質もこれと変わるところはないから,本件承諾書取引は,建造等納付金の納付義務を免れることを停止条件とする解撤等交付金支払請求権という金銭債権の譲渡契約である。したがって,本件承諾書取引は,金銭債権の譲渡として,非課税取引に該当する。 イ控訴人が上記予備的主張を行うことが,信義則・禁反言の法理に照らして許されないということはない。 (被控訴人)ア本件承諾書取引は,建造等納付金 債権の譲渡として,非課税取引に該当する。 イ控訴人が上記予備的主張を行うことが,信義則・禁反言の法理に照らして許されないということはない。 (被控訴人)ア本件承諾書取引は,建造等納付金の納付義務を免れることを停止条件とする解撤等交付金支払請求権という金銭債権の譲渡を目的とするものではない。 本件承諾書取引は,Aの建造承認を停止条件として,Aに対する新船建造の認可を受ける必要なもの全般を内容とする,いわば新船建造資格という債権類似の権利を目的としている。使用承諾書は,金銭債権としての解撤等交付金支払請求権の譲渡証明書ではない。 イ控訴人が本件承諾書取引を非課税取引であると主張することは,売主に対して消費税等の課税をしていないことから,信義則・禁反言の法理に照らし,許されない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件預託金証書取引は,「資産の譲渡等」(法2条1項8号)のうち,預託金返還請求債権という金銭債権の譲渡(法6条1項,法別表1の2号及び施行令9条1項6号)(非課税取引)であって,「課税資産の譲渡等」(法2条1項9号)には該当しないが(争点(2)),本件承諾書取引は,「資産の譲渡等」(同項8号)であり,「課税資産の譲渡等」(同項9号)であって,これと裏腹の関係にある「課税仕入れ」(同項12号)に該当するから(争点(1)),本件処分のうち,本件預託金証書取引を非課税取引であるとして行った課税処分に係る部分については適法であるが,本件承諾書取引を不課税取引であるとして行った課税処分に係る部分については違法であるから,後者に係る部分については取り消されるべきものと判断する。 そのように判断する理由は,後記2のとおり補正し,同3のとおり,当審における控訴人の予備的主張に対して判断を加えるほかは,原判決 から,後者に係る部分については取り消されるべきものと判断する。 そのように判断する理由は,後記2のとおり補正し,同3のとおり,当審における控訴人の予備的主張に対して判断を加えるほかは,原判決第3の1ないし4のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正(1) 26頁7行目の「留保者は,」から,同10行目の「そのためには」までを,「留保者は,Aから直接解撤等交付金の交付を受けるか,又は,これに代えて,新造船舶を建造するに当たって,免除船舶の引当資格に係る解撤等交付金相当額につき,建造等納付金の免除を受けることができるほか,他の本件組合員が新造船舶を建造するに当たって,使用を承諾した留保対象トン数の限度で建造等納付金の免除を受けることができるよう,使用承諾書を発行する手続などを行い(留保対象トン数の第三者使用),これに対して対価を得ることができるところ,建造等納付金の免除を受けるためには」と改める。 (2) 26頁18行目末尾に,次を加える。 「すなわち,本件承諾書取引については,契約書上,目的物として種々の記 載がされているが,これは,本件要領の趣旨に照らすと,留保者である売主(BないしD)がその保有する留保対象トン数を,新船舶建造を計画していた買主(被控訴人)に使用できるようにAとの関係で手続を行い,買主がこれに対価を支払う一方,売主がその譲渡代金により解撤等交付金の回収を図り,買主は留保対象トン数による建造等納付金納付義務の免除によりその負担を軽減しようとの目的の下に行われたことが明らかであるから,本件承諾書取引は,買主である被控訴人が新造船舶を建造するに当たって,留保者である売主が,被控訴人の新造船舶建造認定手続において建造等交付金の免除を受けるべく,Aの手続に協力するという内容であり,これにより,A 引は,買主である被控訴人が新造船舶を建造するに当たって,留保者である売主が,被控訴人の新造船舶建造認定手続において建造等交付金の免除を受けるべく,Aの手続に協力するという内容であり,これにより,Aが要件を満たした申請についてはこれを認定するものと解されるから,留保者が行使する場合と同様,取得者もAに対し,本件権利を行使しうるものというべきである。」(3) 28頁18行目末尾に改行の上,次を加える。 「なお,控訴人は,Aが,建造等納付金免除の手続において,その要件を満たす申請に対して,直ちに免除を認定する義務を負っているとはいえないと主張するが,暫定事業追加措置の定められた経緯等に照らすと,上記手続において裁量があるものとは解されず,また,本件承諾書取引における当事者には,少なくとも事実上の経済的利益があり,それは権利に類似するものというべきであるから,控訴人の上記主張は,上記認定を左右するものとはいえない。」 3 当審における控訴人の予備的主張に対する判断(1) 控訴人は,当審において,留保対象トン数の使用により建造等納付金が免除されることの法的性質につき,解撤等交付金支払請求権を自働債権,建造等納付金納付義務に対応する債権を受働債権として行われる相殺であるとして,本件承諾書取引は,金銭債権の譲渡であると主張する。 (2) しかし,本件承諾書取引において,解撤等交付金支払請求権がどのよう に位置づけられているのかその主張から明らかではない上,本件承諾書取引についての契約書上,留保者の解撤等交付金支払請求権をその譲渡の対象とする旨の文言は見当たらず,そのような趣旨を含むものとは理解し難い。 そして,留保者が,Aから直接解撤等交付金の交付を受けること(解撤等交付金支払請求権の行使)と,自ら新造船舶を建造する際,留保対象 る旨の文言は見当たらず,そのような趣旨を含むものとは理解し難い。 そして,留保者が,Aから直接解撤等交付金の交付を受けること(解撤等交付金支払請求権の行使)と,自ら新造船舶を建造する際,留保対象トン数の限度で建造等納付金の支払義務の免除を受けることとは,手続的にも,制度的にも異なっている。 加えて,解撤等交付金は,その交付申請時の解撤等交付金単価(なお,本件規程上は年々漸減するものとされている。)によってその額が定められている上,平成16年当時は,その支給にも時間を要する事態となっていたところ,これに代えて,本件組合員(留保者)が留保対象トン数使用承諾書を新たに船舶の建造を予定している他の組合員に譲渡することによって解撤等交付金の回収を図ることができ,他方,留保対象トン数使用承諾書の譲受人である新造船舶の建造予定者は,Aに直接建造等納付金を納付するよりも,留保者から当該使用承諾書を譲り受けて建造等納付金の免除を得た方が安価で済むことができることから,留保者及び譲受人の双方がこのような経済的な利益を目指し,使用承諾書を売買する取引が行われる実態が生じたのであり,この経過に照らせば,本件承諾書取引において,解撤等交付金の交付を受ける権利(解撤等交付金支払請求権)それ自体が譲渡の目的とされたものとは解することができない。 したがって,控訴人の上記予備的主張は採用することができない。 4 以上によれば,原判決は正当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官西謙二 裁判官足立正佳 裁判官石山 裁判長 裁判官 西謙二 裁判官 足立正佳 裁判官 石山仁朗

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