主文 1 被告が,訴外Aに対する宇都宮地方裁判所昭和53年(ヨ)第37号事件の不動産仮差押決定に基づき同年2月23日別紙物件目録1ないし3記載の各土地についてした仮差押は,これを許さない。 2 被告が,訴外Aに対する宇都宮地方裁判所昭和53年(ヨ)第75号事件の不動産仮差押決定に基づき同年4月14日別紙物件目録4記載の土地についてした仮差押は,これを許さない。 3 被告が,訴外Aに対する東京法務局所属公証人B作成の平成13年第455号執行力ある債務弁済契約公正証書に基づき平成14年2月6日別紙物件目録1ないし4記載の各土地についてした強制執行は,これを許さない。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 本件について当裁判所が平成14年3月29日にした強制執行停止決定はこれを認可する。 6 前項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文第1ないし第3項に同旨第2 事案の概要本件は,原告が,別紙物件目録1ないし4記載の各土地(以下「本件各土地」と総称し,個別にいうときは「本件土地1」などという。)につき,仮差押及び強制執行を行った被告に対し,本件各土地は,いずれも自己の所有地であると主張して第三者異議を申し立てた事案である。 1 争いのない事実(1) 被告は,昭和53年2月23日,本件土地1ないし3につき,Aに対する当庁昭和53年(ヨ)第37号事件の不動産仮差押決定に基づき,仮差押した。 (2) 被告は,昭和53年4月14日,本件土地4につき,Aに対する当庁昭和53年(ヨ)第75号事件の不動産仮差押決定に基づき,仮差押した(以下,上記(1)の仮差押とともに「本件仮差押」ともいう。)。 (3) 被告は,平成14年2月6日,本件各土地につき,Aに対する東京法務局所属公証人B作 号事件の不動産仮差押決定に基づき,仮差押した(以下,上記(1)の仮差押とともに「本件仮差押」ともいう。)。 (3) 被告は,平成14年2月6日,本件各土地につき,Aに対する東京法務局所属公証人B作成の平成13年第455号執行力ある債務弁済契約公正証書に基づき強制執行をし,差押えた(以下「本件差押」という。)。 (4) 本件各土地は,現在,原告が所有している。 2 争点及び争点に対する当事者双方の主張(1) 本件仮差押の時点で,本件各土地を原告が所有していたか。 (原告の主張)本件各土地は,Aが都市計画法に基づく開発許可を受けて開発した土地に設置された公共施設である道路及び緑地であるところ,同法39条及び40条2項並びに原告とAとの事前協議により,工事完了公告の日の翌日(本件土地1ないし3については昭和48年5月23日,本件土地4については昭和51年6月5日)に,原告がその所有権を取得している。 (2) 被告は,いわゆる背信的悪意者と評価されるか。 (原告の主張)本件各土地は,被告の仮差押の前後において,基本的な形状に変化はなく,開発計画の当初から,他の部分から明確に区別され,本件各土地を含む団地の開発のため不可欠な公共施設用地として確保されていた。本件各土地が公共施設用地であることは誰の目にも明らかな事実であり,被告がこのことを知らなかったはずはない。 また,被告は,平成10年3月にくい打ちをしているが,被告は本件各土地が公共施設であることを知悉しながらくい打ちを行ったのであって,被告は,かかる強行な方法により自らの要求を実現しようとしており,被告が,本件各土地を仮差押した時点でも,公共施設用地であることを知った上で,仮差押を行ったというべきである。 そもそも,団地の分譲が進んでいった後,開発業者の所有名義として残っ ようとしており,被告が,本件各土地を仮差押した時点でも,公共施設用地であることを知った上で,仮差押を行ったというべきである。 そもそも,団地の分譲が進んでいった後,開発業者の所有名義として残っている土地が公共施設用地である可能性が高いこと自体公知の事実であり,そのような危険性がある以上,単に不動産登記簿上だけではなく,現況を確認し,仮差押するのが相当である。被告は,債務者のAと同一のグループに属する関連企業であり,団地開発がどのような手順で行われるか,団地内の土地には,道路及び緑地などの公共施設用地が含まれていることについては十分認識していたことは明らかである。本件各土地の実情につき知悉していたはずである。 本件土地4については,これに接道する土地について,被告の当時の取締役(現清算人)が,昭和53年2月20日建築確認申請をし,同月23日に建築確認を受けている。また,被告の代表者も,昭和53年8月19日,宇都宮市清原台a丁目b番cの土地を取得し,昭和55年1月5日には売却している。土地売買や建物建築において,相当期間の準備段階が先行することは周知の事実であり,本件仮差押に近接した時期に,建築確認や土地取得がなされている以上,被告の役員が本件各土地を訪れていないはずはなく,現地を見れば,その形状からも本件各土地が公共施設用地であることは明白であり,被告自身も知悉していたという外ない。 また,原告は,宇都宮地方裁判所に対し,被告を相手方として,平成10年(ワ)第361号所有権移転本登記手続承諾請求事件を提起し,同裁判所は,平成11年1月19日,本件各土地について,工事完了公告の日の翌日に,原告が所有権を取得したことを認定し,原告が全面勝訴の結果となっており,これに対し,被告は控訴せず,同判決は確定した。 原告は,昭和62年 月19日,本件各土地について,工事完了公告の日の翌日に,原告が所有権を取得したことを認定し,原告が全面勝訴の結果となっており,これに対し,被告は控訴せず,同判決は確定した。 原告は,昭和62年に本件土地1及び2につき参加差押をしているが,これは担当官の過誤によるものであり,後日,錯誤で抹消されている。 以上からして,本件差押の時点はもちろん,本件仮差押の時点においても,被告は,原告の所有権取得につき背信的悪意者であったことは明らかであり,原告は,被告に対し,登記なくして,その所有権を対抗できる。 よって,原告は,本件仮差押及び本件差押の排除を求める。 (被告の主張)本件各土地が含まれている甲団地の概要は,総面積140万ないし160万㎡,区画数約3500戸,計画人口約1万3000人,総費用約90億円という大規模なものであり,Aの債権者である被告は,その膨大な所有資産の中から,担保が設定されておらず,差押,仮差押のない物件を不動産登記簿上で調査をし,本件各土地につき仮差押をした。 本件各土地については,当時,分譲予定地と公共施設予定地との分筆はなされておらず,不動産登記簿上区画整理されているわけではなく,地目は山林となっており,現況は判然としない状態であった。実際に,Aは,本件土地4を分筆して,一部を宅地にして分譲するために,被告に仮差押を取り下げて欲しい旨の要請をしてきたことがあるし,原告も,Aの固定資産税滞納を理由に,昭和62年7月1日に,本件土地1及び2に参加差押をしており,同年の時点で,現況の道路ないし緑地という公共施設用地の確認ができない状態であったことは明らかである。更に,本件土地1及び2については,現在でも地目が公園となっており,道路と緑地の分筆ができていない。 原告指摘の被告の取締役は,当時,非常勤の取 地の確認ができない状態であったことは明らかである。更に,本件土地1及び2については,現在でも地目が公園となっており,道路と緑地の分筆ができていない。 原告指摘の被告の取締役は,当時,非常勤の取締役に過ぎず,Aに対する仮差押申請という緊急時には立ち会っていない。 したがって,被告に,背信的悪意など考えられる状態ではなかった。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 証拠(甲1ないし11の3の2,24,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件各土地は,Aが都市計画法に基づく開発許可を受けて開発した甲団地内に所在すること,不動産登記簿上,本件土地1ないし3の地目は公園とされ,本件土地4のは公衆用道路とされていること,現況も,道路ないしは緑地となっていること,原告及びAとの間では,道路及び公園は,無償で原告に移管される旨の事前協議がなされ,さらに,道路,公園及び緑地は工事完了検査に合格した時点で無償で,原告に移管されるとの協定がなされていること,原告が被告に対し提起した,本件各土地の所有権移転本登記手続承諾請求事件において,本件各土地の原告の所有権取得原因として,都市計画法39条及び40条2項並びにこれらの規定を前提とする原告とAとの事前協議が,宇都宮地方裁判所において認定され(当庁平成10年(ワ)第361号),被告は,控訴することなく,かかる判決が確定していることが認められる。 以上,本件各土地の現況がいずれも道路あるいは緑地となっていることからすれば,本件各土地は,いずれも,工事完了公告の日の翌日に原告に所有権が移管される公共施設であったと解するのが相当である。 (2) そして,弁論の全趣旨によれば,工事完了の公告の日は,本件土地1ないし3は昭和48年5月22日であり,本件土地4は,昭和51年6月4日 移管される公共施設であったと解するのが相当である。 (2) そして,弁論の全趣旨によれば,工事完了の公告の日は,本件土地1ないし3は昭和48年5月22日であり,本件土地4は,昭和51年6月4日であることが認められるから,結局,本件各土地は,いずれも本件仮差押の時点で,原告が所有していたと認めることができる。 2 争点(2)について(1) 証拠(甲9の1の1及び2,9の2,10の1の1及び2,10の2,13ないし15,17,24,25,乙5ないし7,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件土地1ないし3の状況は,本件仮差押の時点で,道路及び緑地の公共施設であり,現場の状況では,かかる公共施設と分譲地とを区別できる状態であった。また,本件土地4は,道路の公共施設の部分とその他の部分があったが,道路の部分は明確にその他の部分と区別できる状況であり,その後,道路部分とその他の部分とで分筆がなされ,現在,本件土地は道路の公共施設のみである。 イ Aは,昭和51年5月12日不渡りを出し,同月14日には倒産必至との新聞報道がなされた。その際,被告がAグループの一員とも報道されている。 ウ被告は,Aとの間で,平成10年12月8日に,Aが開発した茨城県下館市の乙団地内で,被告が請け負った住宅の建築費及び住宅機器費について,「債務確認承継書」と題する書面で,Aが被告に対し債務として負担していることを確認した上,平成13年11月8日,かかる債務につき公正証書を作成した。被告が有するAに対するかかる債権は,本件仮差押の被保全権利でもある。 エ被告の取締役は,昭和53年1月20日,甲団地内の本件土地4に接する分譲地を購入し,同地上に建物を建築しているが,その際,本件土地4を道路とした上で同年2月 件仮差押の被保全権利でもある。 エ被告の取締役は,昭和53年1月20日,甲団地内の本件土地4に接する分譲地を購入し,同地上に建物を建築しているが,その際,本件土地4を道路とした上で同年2月20日付けで建築確認を申請している。 (2) 以上,被告はAグループの一員と新聞報道されていること,Aとの間で,実に約20年以上前の債務につき公正証書を作成できていることなどからすれば,被告は,Aとは非常に緊密な関係にあったと認めることができ,かかる緊密な関係からすれば,被告は,甲団地の開発についても一定程度関与し,その進捗状況を把握していたと推認することができる。 そして,上記(1)アのとおり,本件土地1ないし3は,本件仮差押の時点で,道路及び緑地の公共施設であり,本件土地4は道路の公共施設の部分を含んでいたのであるから,被告は,かかる点についても十分に認識していたと推認することができ,被告は,原告の本件土地1ないし3及び本件土地4の道路部分の所有権取得につき,本件仮差押の時点で,既に背信的悪意であったと評価するのが相当である。 (3) この点,被告は,①本件仮差押については,Aの膨大な所有資産の中から不動産登記簿上,調査をしたのみで,現地の状況は把握していない,②本件各土地は,公共施設予定地と分譲予定地との分筆がなされておらず,現況は判然としない状況であったとし,被告は背信的悪意者と評価されるべきではないと主張し,被告代表者もかかる主張に沿う供述をする。 しかしながら,①については,上記(1)イのとおり,Aの倒産の可能性が報道されたのは,昭和51年5月14日である一方,本件仮差押は,いずれも昭和53年になされており,2年間ほど期間があり,Aの所有資産を把握するにあたって現地を見分していないのは不自然というほかなく,ま されたのは,昭和51年5月14日である一方,本件仮差押は,いずれも昭和53年になされており,2年間ほど期間があり,Aの所有資産を把握するにあたって現地を見分していないのは不自然というほかなく,また,上記(2)に説示のとおり,被告はAと緊密な関係にあったから,現地の状況を十分把握できたというべきであり,不動産登記簿上の調査のみで現地の状況を把握していないとの被告代表者の供述を直ちに信用することはできない。また,②については,上記(1)アのとおり,本件各土地は,現在,公共施設に該当しており,当時の本件各土地においても,いわゆる公図上はともかくとして,現場の状況は公共施設が存在し,分譲地と区別することができたのであるから,これまた,被告代表者の供述は信用できず,被告の主張も認められない。 (4) したがって,本件仮差押の時点で,被告は原告の所有権につき背信的悪意者であったから,原告は,登記なくして,その所有権取得を被告に対抗でき,本件各土地になされた本件仮差押は,第三者の所有物になされたものとして排除されるべきである。 (5) 以上からすれば,本件差押の時点でも,被告は背信的悪意者と評価され,原告は,登記なくして,その所有権取得を被告に対抗でき,本件各土地になされた本件差押は,第三者の所有物になされたものとして排除されるべきである。 第4 結論よって,原告の請求は,いずれも理由があるからこれを認容し,当裁判所がなした強制執行停止決定も理由があるからこれを認可し,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第2民事部裁判官宮田祥次(物件目録省略) 田祥次(物件目録省略)
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