令和元年9月17日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第24717号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年7月17日判決 原告 生活地図株式会社 上記訴訟代理人弁護士 服部誠 同藤松文 同松本卓也 上記補佐人弁理士 蟹田昌之 被告 株式会社ゼンリン 上記訴訟代理人弁護士 弓削田博 同神田秀斗 同平田慎二 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成30年6月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,発明の名称を「住宅地図」とする特許権(第3799107号)について特許権者から専用実施権の設定を受けた原告が,被告が制作し,インターネット上でユーザに利用させている電子地図は前記特許権の請求項1の発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,民法709条に基づき,1億円(一部請求)及びこれに対する不法行為後の日である平成30年6月16日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) 達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)原告は,情報処理サービス業,情報提供サービス業等を業とする株式会社で ある。 被告は,住宅地図,各種地図,地図関連商品等の企画,作成及び販売等を業とする株式会社である。 原告は,以下の特許権(以下,「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。)について,特許権者(有限会社エン企画)から,平成22年9月7日 に専用実施権の設定を受けた(甲1,23)。その後,本件特許権は,平成28年4月28日に特許料不納により消滅した(甲1)。 特許番号特許第3799107号発明の名称住宅地図出願日平成8年10月15日 登録日平成18年4月28日本件特許権の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明」という。また,本件特許権に係る明細書及び図面を「本件明細書」と総称する。)。 「住宅地図において,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住 宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物の ポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図を構成し,該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し,付属として索引欄を設け,該索引欄に前記地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した,ことを特徴とする住宅地図。」 本件発明は,以下のとおり,分説することができる(以下,分説 地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した,ことを特徴とする住宅地図。」 本件発明は,以下のとおり,分説することができる(以下,分説された構成要件の符号に従い,「構成要件A」などと表記する。)。 A 住宅地図において,B 検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地 のみを記載すると共に,C 縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図を構成し,D 該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し,E 付属として索引欄を設け,F 該索引欄に前記地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地を前記地図 上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した,G ことを特徴とする住宅地図。 被告は,遅くとも平成25年7月までに,ユーザの携帯端末のブラウザが,被告指定のウェブサイトから住宅地図情報を受信し,これを同端末のディスプ レイに表示することができるようにしたプログラム(以下,このプログラムを「被告地図プログラム」といい,被告地図プログラムによってユーザ端末のディスプレイに表示された地図を「被告地図」という。)を制作し,被告地図プログラムを「ゼンリン住宅地図スマートフォン」と称するサービスとして,ユーザに対し,インターネット上において有料で提供している(甲3,7,乙1)。 被告地図には,ユーザ端末のディスプレイの右下に表示されるスケールバー の表示が「10m」「20m」「30m」「50m」「60m」「70m」「200m」「500m」「2km」「10km」「20km」「90km」の12種類の地図がある(甲4ないし スケールバー の表示が「10m」「20m」「30m」「50m」「60m」「70m」「200m」「500m」「2km」「10km」「20km」「90km」の12種類の地図がある(甲4ないし6,24の1,24の2,争いのない事実。以下,そこで表示される距離に応じ,「縮尺レベル「50m」の被告地図」などということがある。)。 原告は,このうち縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が本件発明の技術的範囲に属すると主張している。 3 争点 被告地図プログラムによってユーザ端末のディスプレイに表示された縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての文言侵害の有無(主 位的主張)(争点1)ア 「住宅地図」(構成要件A及びG)の充足性(争点1-1)イ 「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載」(構成要件B)の充足性(争点1-2) ウ 「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」(構成要件C)の充足性(争点1-3)エ 「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し」(構成要件D)の充足性(争点1-4)オ 「付属として索引欄を設け」(構成要件E)の充足性(争点1-5) カ 「該索引欄に前記地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した」(構成要件F)の充足性(争点1-6) 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての均等侵害の成否(予備的主張)(争点2) 被告による縮尺レベル「50m」「60m」「70m」 足性(争点1-6) 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての均等侵害の成否(予備的主張)(争点2) 被告による縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の「生産」 (特許法2条3項1号)の有無又は間接侵害の成否(争点3)本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)ア乙12に基づく進歩性欠如の有無(争点4-1)イ乙13の1に基づく進歩性欠如の有無(争点4-2)ウ明確性要件違反の有無(争点4-3) エサポート要件違反の有無(争点4-4)損害の数額(争点5) 4 争点に対する当事者の主張被告地図プログラムによってユーザ端末のディスプレイに表示された縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての文言侵害の有無(主 位的主張)(争点1)ア 「住宅地図」(構成要件A及びG)の充足性(争点1-1)(原告の主張)「住宅地図」とは目的とする住宅を探し出すことができる地図をいうところ(本件明細書の【0003】【0007】【0039】。以下,本件明 細書の段落については,単に「【0003】」などと示す。),被告地図は住宅が記載された地図であるから,構成要件Aを充足する。 被告は,本件特許の請求項1に「各ページを適宜に分割して区画化し」,「付属として索引欄を設け」とあるのは,紙の書物であることが前提となっているから,構成要件A「住宅地図」には電子媒体に記録された住宅地 図(以下「電子住宅地図」という。)を含まないと主張するが,電子住宅地図が「ページ」や「索引欄」を備えることは本件特許の出願日当時の技術常識であった。そして,本件発明に電子住宅地図が含まれることは,本件明細書の記載( 図」という。)を含まないと主張するが,電子住宅地図が「ページ」や「索引欄」を備えることは本件特許の出願日当時の技術常識であった。そして,本件発明に電子住宅地図が含まれることは,本件明細書の記載(「この地図データは住所入り電子住宅地図として適宜の媒体に記憶される。そして,必要に応じて,プロッタ等を用いて印刷出力 される」【0017】,「本実施の形態における住宅地図,但しこの場合は 電子化されているほうの住所入り電子住宅地図」【0033】,「同図の住所入り電子住宅地図12は,上述した本発明に係る住所のみが入った電子住宅地図である」【0035】等)からも明らかである。 また被告は,本件発明の課題は大型化・大冊化による高価格で携帯に不便な住宅地図を小型で廉価なものにすることであるところ,電子住宅地 図には同課題は存在しないと主張するが,電子住宅地図においても,地図の縮尺が低く鳥瞰性に欠ける場合は,例えば何度も画面をスクロールする手間が生じるなど,同様の問題は生じ得る。 さらに被告は,出願経過において全戸氏名入り電子住宅地図の作成方法に係る発明(請求項7ないし11。以下,本件特許の出願時に添付された 明細書記載の特許請求の範囲を「旧請求項」という。)が特許請求の範囲から削除されたことから,電子住宅地図は本件発明の範囲から除外された旨主張するが,これらの請求項の削除に伴って削除されたのは【0014】ないし【0016】であり,【0033】ないし【0038】は削除されずに維持されている。【0033】ないし【0038】に記載された 全戸氏名入り電子住宅地図は,パソコンのキーボードから氏名を入力すれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコンの表示装置に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて, れた 全戸氏名入り電子住宅地図は,パソコンのキーボードから氏名を入力すれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコンの表示装置に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点滅する地図であり(【0037】),画面上に全戸氏名を表示する電子住宅地図ではなく,全戸氏名をデータとして保有している電子住宅地図を 指す。 そうすると,全戸氏名入り電子住宅地図は,構成要件Bの「一般住宅及び建物については居住人氏名や建物の名称の記載を省略し」の要件を充足し,本件発明の一実施形態であるから,本件発明には電子住宅地図が含まれる。 (被告の主張) 特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載に照らせば,本件発明は,電子住宅地図を印刷出力した紙媒体としての住宅地図であり,電子住宅地図を含むものではないから,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Aを充足しない。 すなわち,本件発明は,「付属として索引欄を設け」,「各ページを適宜 に分割して区画化し」ており,紙の書物であることが前提となっている。 また,本件明細書の記載(【0002】【0003】【0005】【0010】【0017】【0039】)からすれば,本件発明は,大型で大判であり,高価格で携帯に不便であった紙で印刷された住宅地図を,小型化・小判化することにより,廉価で取り扱いやすい住宅地図を提供することを 目的とするものである。他方,電子住宅地図であれば,地図が電子情報として媒体に保存されており,地図を自由に拡大縮小して表示できるから,大型化・大冊化という課題は存在せず,携帯に不便であるとか,高価格になるということはないから,本件発明が解決しようとする課題は存在しない。 また,旧請求 由に拡大縮小して表示できるから,大型化・大冊化という課題は存在せず,携帯に不便であるとか,高価格になるということはないから,本件発明が解決しようとする課題は存在しない。 また,旧請求項には,①住宅地図の発明(旧請求項1ないし6)及び②全戸氏名入り住宅地図作成方法の発明(旧請求項7ないし11)が記載されていたが,平成11年10月21日付け手続補正書に係る手続補正により,上記②は特許請求の範囲から削除され,それに合わせて,【0014】ないし【0016】も削除された。 このような出願経過に照らせば,本件発明は,印刷された紙媒体としての住宅地図のみを対象としており,電子住宅地図はその範囲から除外されていたといえる。 原告は,【0033】ないし【0038】に記載された電子住宅地図に係る実施例は本件発明の実施形態である旨主張するが,本件発明は,「検 索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物について は居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載する」ものであるから(構成要件B),全ての住宅に氏名を記載した住宅地図ではない。他方,【0033】ないし【0038】に記載された実施例は,全ての住宅に氏名を記載した住宅地図であるから,構成要件Bを充足しておらず,本件発明の実施形態ではない。 イ 「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載」(構成要件B)の充足性(争点1-2)(原告の主張)構成要件B「検索の目安となる公共施設や著名ビル等」とは,目的とす る建物を探し出すための目安となる建物をいうところ(【0003】【0007】【0039】),縮尺レベ )(原告の主張)構成要件B「検索の目安となる公共施設や著名ビル等」とは,目的とす る建物を探し出すための目安となる建物をいうところ(【0003】【0007】【0039】),縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,表示された住宅及び建物のうち公共施設及び主要なマンション等を除く一般住宅及び建物については名称の記載が省略され,住宅及び建物のポリゴン(地図上で建物等を示す多角の囲い図形)のみが記載される から,構成要件Bを充足する。 「検索の目安となる公共施設や著名ビル等」といえるかどうかは,目的とする建物を探し出す過程で必要な情報に該当するかどうかにより判断されるから,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図において名称が省略されなかった建物が目的とする建物を探し出す過程で必要 な情報に該当するのであれば,同被告地図は構成要件Bを充足するといえる。また,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図において,上記必要な情報に該当する名称の一部が記載されていないとしても,上記必要な情報に該当する名称のうちいずれを選択して記載するかは住宅地図作成者の判断事項であるから,構成要件充足性の判断に影響を与 えない。 (被告の主張)縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図においては,●(省略)●というルールに従って,名称の記載を省略する物件を決定しており,記載を省略する対象を「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物」に限定しているものではなく,一般の建物であっても名称が 省略されていないものが存在するし,目安となる建物であっても記載が省略されているものが存在するから,「公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名 一般の建物であっても名称が 省略されていないものが存在するし,目安となる建物であっても記載が省略されているものが存在するから,「公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し」を充足しない。 また,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,建物名称の記載が省略された建物について,コンビニのマークなどのさまざまな情報 が記載されているから,「住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載する」を充足しない。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Bを充足しない。 ウ 「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」(構成要件C)の充足性(争点 1-3)(原告の主張)「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」とは,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除いた住宅及び建物についてはその名称を省略しポリゴンと番地のみを記載することにより,全ての住人氏名や建物名称 が記載された地図に比べて縮尺を圧縮し,広い鳥瞰性を備えることをいうところ(【0002】【0003】【0007】【0008】【0010】等),縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,全ての住人氏名や建物名称が記載された地図に比べてポリゴンを小さくすることで,同地図に比較して縮尺率が高い縮尺レベルの地図であるから,構成要 件Cを充足する。 被告は,構成要件Cの「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」とは,少なくとも縮尺率が1/5000よりも高い地図を意味すると主張するが,構成要件Cの文言上,縮尺は限定されておらず,また本件明細書にも,被告の主張のとおり限定解釈する根拠となり得る記載はない。 (被告の主張) 「縮尺を圧縮して広い鳥 意味すると主張するが,構成要件Cの文言上,縮尺は限定されておらず,また本件明細書にも,被告の主張のとおり限定解釈する根拠となり得る記載はない。 (被告の主張) 「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」とは,本件明細書の記載(【0002】【0010】【0030】)及び本件特許の出願経過における原告の主張を参酌すれば,縮尺が1000分の1から1500分の1であった従来の住宅地図を大幅に圧縮したものであり,少なくとも縮尺率が1/5000よりも高い地図を意味することは明らかである。 電子住宅地図である被告地図は,表示物の縮小率が個々のユーザ端末の描画性能等に依拠するため,縮尺を定義することは困難であるが,あえて定義するならば,縮尺レベル「60m」の被告地図の縮尺は,1/2833(1. 7cm/60m)ないし1/3333(2cm/60m)である。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は縮尺 率が1/5000よりも低い地図であるため,構成要件Cを充足しない。 エ 「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し」(構成要件D)の充足性(争点1-4)(原告の主張)「ページ」とは,住宅地図の全部または一部を表示した部分をいい,「区 画化」とは,ページを任意の形で区分することをいうところ(【0017】【0018】【0031】【0032】),電子住宅地図における区画化とは,画面に表示されたところの地図が任意の形で区分されていることを指す。 被告地図では,携帯端末の通信をオフの状態に切り替えて地図表示画面をスクロールさせると地図表示されない部分が現れ,このことは,被告地 図が「適宜に分割して区画化」されていることを示している。 また,被告地図は,● 態に切り替えて地図表示画面をスクロールさせると地図表示されない部分が現れ,このことは,被告地 図が「適宜に分割して区画化」されていることを示している。 また,被告地図は,●(省略)●全部または一部に区分されていることを示している。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Dを充足する。 これに対し,被告は,「区画化」とは,ユーザの目に見える形で仕切る ことを意味すると主張するが,以下に述べるとおり,誤りである。 a 構成要件Dは「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し」と規定しており,その文言上,線などによりユーザが区画を認識できるように区切る構成に限定していない。 b 本件明細書の記載(【0021】【0039】)を見ても,「区画化」は 必ずしもユーザの目に見える形で仕切る構成に限定されていない。 c 前記のとおり,本件発明に係る住宅地図は,紙媒体に記録された住宅地図だけではなく,電子住宅地図もその技術的範囲に含む発明であるところ,電子住宅地図において,索引欄の任意の番地を選択すれば,当該番地を含む区画を中心とする地図が当該番地を中心として自 動的に表示されるのであるから,電子住宅地図における「区画化」が必ずしもユーザの目に見える形で仕切ることを意味するものでないことは,本件発明の出願時における技術常識であった。 d 本件明細書(【0033】【0037】)は,本件発明の実施形態として,コンピュータが自動的に区画を探し出し,当該区画を画面中央に 配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示している照)。このような構成を備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置をわ 配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示している照)。このような構成を備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置をわかりやすく探せるように仕切り線を設ける必要はなく,本件特許出願時の技術常識を知る当業者においても,同様に理解され たといえる。 (被告の主張)本件明細書の記載(【0018】【0023】【0028】【0032】【0039】)及び特許請求の範囲の「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載」との記載(構成 要件D,E及びF)からすれば,「区画化」とは,記号番号を付したり,番地と対応する区画を一覧的に示したりすることができる区画を作成することが可能となるように,検索すべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることである。そして,本件発明は,全ての建物が所在する番地について,掲載ページと当該ページ内で分割された該当区画を 一覧的に対応させて掲載した索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引欄を用いて,検索対象の建物が所在する地番に対応する,ページ及び当該ページにおける複数の区画の中の該当区画を認識した上で,当該ページの該当区画内において,検索対象 の建物を検索することが想定されている。そのためには,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用者が該当の区画を認識することができる必要がある。 したがって,「区画化」とは,地図が記載されている各ページについて,記載され について,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用者が該当の区画を認識することができる必要がある。 したがって,「区画化」とは,地図が記載されている各ページについて,記載されている地図を線その他の方法によって目に見える形で仕切り, 複数の区画に分割し,その各区画に記号番号を付すことをいう。 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図には目に見えるような仕切りは存在せず,区分は存在しないから,構成要件Dを充足しない。 原告は,本件発明に係る住宅地図には電子住宅地図を含むと主張するが,本件発明が紙媒体に記録された住宅地図に限られ,全戸氏名入り電子住 宅地図が本件発明の実施形態ではないことは,前記アで述べたとおりで ある。 オ 「付属として索引欄を設け」(構成要件E)の充足性(争点1-5)(原告の主張)「付属として」の「索引欄」は,番地を知って建物を容易に検索できるようにするために設けられた欄をいうところ(【0021】),被告地図は,市 区町村,町,丁目及び番,又は市区町村,町,丁目,番及び号を表示する欄を,被告地図を利用しようとするユーザの携帯端末画面上に掲載させるものであり,同欄が番地を知って建物を容易に検索できるようにするために掲載されていることは明らかである。 また,「付属として索引欄を設け」との文言によれば,地図と索引欄が同時 に表示されるか否か,表示の仕組み,ウェブサイトのURLが同一か否かは,いずれも充足性に影響を与えない。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Eを充足する。 (被告の主張) 索引欄とは,書物の中の字句や事項を一定の順序に排列して,その所在をたやすく探し出すための見出しを ル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Eを充足する。 (被告の主張) 索引欄とは,書物の中の字句や事項を一定の順序に排列して,その所在をたやすく探し出すための見出しを罫で囲んだ部分であり,構成要件Eにおける「索引欄」は,紙媒体に記録された住宅地図における罫で囲んだ部分であるところ,原告が「索引欄」と主張する検索画面は,携帯端末のブラウザ上に表示されたものであるから,「索引欄」に該当しない。 また,被告の提供する「ゼンリン住宅地図スマートフォン」においては,電子住宅地図と検索画面とが同時に端末上に表示されることはなく,検索画面は,電子住宅地図とは別に表示されるものであるから,検索画面は,被告地図に「付属」するものでもない。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成 要件Eを充足しない。 カ 「該索引欄に前記地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した」(構成要件F)の充足性(争点1-6)(原告の主張)被告地図は,検索画面において,地図に記載の全ての住宅建物が所在する 番及び号を掲載するとともに,番については並記された「地図>」というアイコン,号については号番号のアイコン及び号番号に並記された「地図>」というアイコンに,当該番及び号に係る特定の位置情報としての緯度経度情報である「&lon=(経度)&lat=(緯度)」と,スケールバーが「50m」の縮尺レベルの情報である「&zoom=50」を含むURL,スケールバーが「6 0m」の縮尺レベルの情報である「&zoom=60」を含むURL,またはスケールバーが「70m」の縮尺レベルの情報である レベルの情報である「&zoom=50」を含むURL,スケールバーが「6 0m」の縮尺レベルの情報である「&zoom=60」を含むURL,またはスケールバーが「70m」の縮尺レベルの情報である「&zoom=70」を含むURLを,当該各アイコンが選択された場合に,スケールバーがそれぞれ「50m」,「60m」,または「70m」の縮尺レベルの●(省略)●地図であって,当該緯度経度情報に係る地点を含む●(省略)●地図がユーザの携帯端 末画面上に掲載されるよう設定されている。 被告地図においては,上記「地図>」というアイコンが選択された場合,当該「地図>」というアイコンに係る番または号ごとに設定された特定の緯度・経度および特定の縮尺を指定する地図取得要求がなされ,その要求に応じて当該特定の緯度・経度を中心とする,特定の縮尺の画像データが携帯端 末に送信されて,当該携帯端末に当該特定の緯度・経度を中心とする,特定の縮尺の地図が表示される。そうすると,被告地図の「地図>」というアイコンに係る番または号ごとに設定された特定の緯度・経度は,当該特定の緯度・経度を含む複数の画像データ●(省略)●を特定し,特定の縮尺は,縮尺レベルごとに設けられた画像データを特定するといえるから,被告地図の 「地図>」というアイコンに係る番または号ごとに設定された特定の緯度・ 経度及び特定の縮尺は,「前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号」に該当する。さらにいえば,被告地図の「地図>」というアイコンは,当該アイコンに係る番または号ごとに設定された特定の緯度・経度および特定の縮尺を示す記号であるから,被告地図の「地図>」というアイコン自体が「前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号」に該当するといえ る。 したが 設定された特定の緯度・経度および特定の縮尺を示す記号であるから,被告地図の「地図>」というアイコン自体が「前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号」に該当するといえ る。 したがって,被告地図において番および号ごとに,各番および号の右側に「地図>」というアイコンが併記されていることからすれば,被告地図では,番および号が,「前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号」と「一覧的に対応」付けられて掲載されているといえ,構成要件Fを充足する。 (被告の主張)前記オのとおり,被告地図の検索画面は「索引欄」に該当せず,被告地図に付属するものでもないから,構成要件Fの「該索引欄に……掲載した」という構成を充足しない。 「一覧」とは,全体が一目で分かるようにしたものを意味するところ, 被告地図の検索画面においては,所定の表示ボタンなどを適宜選択していかなければ,丁目,番,号は表示されない上に,表示されたとしても一部の番地しか掲載されていないから,「地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地」が「一覧的に」掲載されるものではない。 「地図>」というアイコンには,各番地に対応して設定された特定の地 点へのハイパーリンクが設定されているに過ぎず,アイコンに設定されている情報が検索画面に表示されているわけではない。また,「地図>」というアイコンは,単なるアイコンであり,ページや記号番号ではないことは明らかであるから,アイコンが掲載されているとしても,ページや記号番号までが掲載されていることにはならない。 仮に,アイコンに設定されている見えない情報が検索画面に掲載されて いるという原告主張の解釈を採るとしても,当該情報は,住宅建物の記載ページでもなく,記載区画の記号番号でもないから, 仮に,アイコンに設定されている見えない情報が検索画面に掲載されて いるという原告主張の解釈を採るとしても,当該情報は,住宅建物の記載ページでもなく,記載区画の記号番号でもないから,検索画面において「住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号」は掲載されていない。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は構成要件Fを充足しない。 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての均等侵害の成否(予備的主張)(争点2)(原告の主張)仮に縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が,各ページに線その他の方法及び記号番号を付さずに複数の区画に適宜に分割して区画化し た点において,構成要件Dと相違するとしても,同被告地図は本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 本件明細書の記載(【0002】ないし【0011】,【0030】,【0039】)や公知技術の内容に照らせば,本件発明は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除いた住宅及び建物についてはその名称を省略しポリゴ ンと番地のみを記載することにより,建物名称の文字数などの影響を受けずかつ文字の視認可能性を残したままポリゴン自体を小さくすることができ,これによりすべての住人の氏名や建物の名称が記載された地図に比べて縮尺を相当程度圧縮することができ,1頁により広い範囲を記載することが可能となるため,その結果広い鳥瞰性を備えることを可能とする発明である。 そして,このような構成を規定した構成要件B及びCの前半が本件発明の本質的部分であり,上記相違点は本件発明の本質的部分ではないから,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は第1要件を充足する。 このような構成を規定した構成要件B及びCの前半が本件発明の本質的部分であり,上記相違点は本件発明の本質的部分ではないから,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は第1要件を充足する。 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の構成によっても,コンピュータが利用者に代わって所望の建物を自動で表示することにより, 検索が迅速にできるという本件発明の目的(【0010】)を実現し,記載ス ペースを大きく必要とせず,高い縮尺度で地図を作成でき,迅速な検索が可能という本件発明の作用効果(【0039】)を奏しているから,同被告地図は第2要件を充足する。 電子住宅地図が「区画化」されていること,及び電子住宅地図における「区画化」は必ずしも線などにより区画を表示してユーザが区画を容易に認識で きる構成を意味するものではないこと,すなわち縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の構成は,本件特許の出願当時の技術常識であった。したがって,本件発明の構成要件Dを同被告地図の上記構成に置き換えることは同被告地図の製作時点において容易に想到することができたといえるから,同被告地図は第3要件を充足する。 本件発明の構成要件B及びCの前半は,本件特許の出願時点において容易に推考できたものではないところ,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は本件発明の構成要件B及びCを具備しているから,同被告地図は本件発明の特許出願時における公知技術から容易に推考することができたものではない。 原告は,本件発明の特許出願手続等において縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の上記構成を意識的に除外していない。 (被告の主張)原告は,縮尺レベル「50m」「60m」「70 原告は,本件発明の特許出願手続等において縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の上記構成を意識的に除外していない。 (被告の主張)原告は,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の構成は,該地図を記載した各ページについて,線その他の方法及び記号番号を付さずに複 数の区画に適宜に分割して区画化するものであると主張するが,そもそも同被告地図は,ユーザによって指定された地点を含む領域を,●(省略)●作成されたものであるから,区画化されたものではない。 また同被告地図は,均等の第1要件ないし第3要件を充足せず,一方で,第4要件及び第5要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲に記載された 構成と均等なものということはできない。 本件発明は,居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや,地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以外は住宅番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化した うえで建物の所在する番地と記載ページと記載区画の記号番号を一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供することを可能にするものである。 したがって,「地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化」することは本件発明の本質的部分であり,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」 の被告地図は第1要件を充足しない。 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図において,線その他の方法及び記号番号により,ページにある複数の区画の中で検索対象の建物が所 0m」 の被告地図は第1要件を充足しない。 縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図において,線その他の方法及び記号番号により,ページにある複数の区画の中で検索対象の建物が所在する地番に対応する区画を利用者が認識することはないから,利用者は迅速な検索をすることができないため,本件発明の作用効果を奏せず,第 2要件を充足しない。 電子住宅地図が「区画化」されていること,及び電子住宅地図における「区画化」は必ずしも線などによりユーザに見えるように区画を表示してユーザが区画を容易に認識できる構成を意味するものではないことは,本件特許の出願当時の技術常識ではないので,本件発明の構成要件Dを縮尺レベル「5 0m」「60m」「70m」の被告地図の構成に置き換えることは同被告地図の製作時点において当業者が容易に想到することができたものではないから,第3要件を充足しない。 仮に,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が本件発明の均等の範囲に含まれるのであれば,同様の理由により,同被告地図は本件発 明の特許出願時における公知技術から容易に推考することができたものと いえるから,第4要件を充足する。 のとおり,原告は,本件特許の出願経過において,全戸氏名入り電子住宅地図作成方法の発明(旧請求項7ないし11)を特許請求の範囲から削除しており,本件発明は,印刷された紙媒体としての住宅地図のみを対象としているから,そもそも区画化が想定されない電子住宅地図はその権 利範囲から除外されており,第5要件を充足する。 被告による縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の「生産」(特許法2条3項1号)の有無又は間接侵害の成否(争点3)(原告の主張)ア被告地図は,ユーザの指 5要件を充足する。 被告による縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図の「生産」(特許法2条3項1号)の有無又は間接侵害の成否(争点3)(原告の主張)ア被告地図は,ユーザの指定がある都度,ユーザによって指定された地点を 含む画像データ(ラスターデータ)を,●(省略)●当該画像データをユーザ端末に送信することにより表示されるものであり,ユーザの指定があれば,自動的に,ユーザ端末によって指定された地点を含む画像データを送信してユーザ端末に被告地図が表示されるのであるから,被告が被告地図に係るサービスを開始した時点で,本件発明に係る地図の「生産」(特許法2条3項 1号)は完了したといえる。 また,被告が,ユーザの指定を受けて画像データを生成し,ユーザ端末に送信して,画像データを当該端末画面に表示させる一連の行為をもって,「生産」行為と捉えられる。 イ縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の地図に係る画像データを生成 する地図データであるベクターデータないしサーバ中の当該データが記憶されているメモリ等の記憶蔵置部分は,被告地図の生産にのみ用いるものであるから,特許法101条1号の間接侵害が成立する。 (被告の主張)ア被告地図はユーザの指示によって制作され,ユーザの操作に基づき携帯端 末のブラウザによってディスプレイに表示されるものであるため,被告地図 の制作・表示主体はユーザである。被告は,被告地図を製作するためのプログラムないしサーバを提供しているだけであるから,被告地図を制作,表示しておらず,特許法2条3項1号にいう「生産」を行っていない。 イ原告は,被告地図に係る地図データベースとそれを保存しているサーバは被告地図の生産にのみ用いるものであるから,間接侵害が成 作,表示しておらず,特許法2条3項1号にいう「生産」を行っていない。 イ原告は,被告地図に係る地図データベースとそれを保存しているサーバは被告地図の生産にのみ用いるものであるから,間接侵害が成立すると主張す るが,同データベース及びサーバは,原告が本件特許権を侵害すると主張する縮尺レベル「50m」「60m」「70m」には含まれない縮尺レベルに係る被告地図の生産をも行っており,経済的,商業的又は実用的な他の用途があるから,「その物の生産にのみ用いる物」に該当しない。 また,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図に係る画像デ ータ(ラスターデータ)を生成する地図データであるベクターデータないしサーバ中の当該データが記憶されているメモリ等の記憶蔵置部分は,被告の地図データベースとそれを保存しているサーバ自体ではなく,その生産に用いられるデータないし記憶蔵置部分にすぎない。したがって,ベクターデータないしサーバ中の当該データが記憶されているメモリ等の記憶蔵置部分 の生産は,いわゆる再間接侵害として特許法101条1号所定の間接侵害に該当する余地はない。 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)ア乙12に基づく進歩性欠如の有無(争点4-1)(被告の主張) 乙12記載の発明の内容乙12に係る地図は,平成元年6月に発行・発売された住宅地図であり,次の発明(以下「乙12発明」という。)が開示されている。 a 住宅地図において,b 検索の目安となる建物については,建物名称を記載し,それ以外の 住宅及び建物については,建物のポリゴンと番地と居住人氏名や建物 の名称を記載し,一部の一般住宅及び建物については,居住人氏名や建物の名称の記載を省略すると共に 記載し,それ以外の 住宅及び建物については,建物のポリゴンと番地と居住人氏名や建物 の名称を記載し,一部の一般住宅及び建物については,居住人氏名や建物の名称の記載を省略すると共に,c 縮尺が1500分の1以下の地図を構成し,d 該地図を記載した各ページをアラビア数字とアルファベットとを用いて分割して区画化し, e 付属として番地索引を設け,f 該番地索引に前記地図に記載の全ての住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ,アラビア数字及びアルファベットに一覧的に対応させて掲載した,g 住宅地図。 本件発明と乙12発明の相違点本件発明と乙12発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致する。 a 本件発明は,「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載する」(構成要件B)ものであるとこ ろ,乙12発明は,居住人氏名や建物名称が記載されており,「居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみ」が記載されているわけではなく,かつ,「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物」の意味が不明確であるため,構成要件Bに係る構成を備えているか否か不明である点(以下「相違点 1-1」という。)。 b 本件発明は,「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図を構成」(構成要件C)であるところ,「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図を構成」が不明確であるため,乙12発明は,そのような構成を備えているか否か不明である点(以下「相違点1-2」という。)。 相違点1-1及び同1-2 乙13の1は,昭和9年12月に製作 確であるため,乙12発明は,そのような構成を備えているか否か不明である点(以下「相違点1-2」という。)。 相違点1-1及び同1-2 乙13の1は,昭和9年12月に製作された「火災保険特殊地図赤坂区No.1」であり,赤坂区の一部(現在の「元赤坂一丁目」)を示す住宅地図であり,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を 備えた火災保険特殊地図に係る発明(以下「乙13の1発明」という。)が開示されている。 乙13の1発明は,火災保険特殊地図であり,住宅を調べるために用いられるものであるから,住宅地図の技術分野に属するものであり,住宅を探し出すという機能を奏するものである。そうすると,乙12発明と乙1 3の1発明とは,住宅地図という共通の技術分野に属する発明であって,住宅を探し出すという共通の機能を奏するものであるから,当業者にとって両者の組み合わせを試みることは,通常の創作能力の発揮にすぎない。 また,火災保険特殊地図においては,乙13の1発明のような建物の名 称を省略して記載する地図と,建物の名称を全て記載する地図とが併用されており,このことは,建物の名称を省略するか否かは当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎないことを示している。 したがって,乙12発明において,乙13の1発明を適用して,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居 住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた住宅地図とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 ついては居 住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた住宅地図とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 (原告の主張)乙12発明の内容 乙12発明の構成bは,「全ての居住人氏名や建物名称を省略すること なく,名称を記載する必要がない又は名称が記載できない建物のみ当該建物名称を記載せずに,住宅及び建物の多角形と番地を記載すると共に,」と認定されるべきであり,相違点1-1もこれに従って認定されるべきである。 また構成cは,乙12発明が全ての建物に名前を記載するという従来技 術を用いた地図であることからすれば,「住宅及び建物の多角形について居住人氏名や建物名称を記載するスペースを保ったままで,縮尺が1500分の1以下の地図を構成し,」と認定されるべきであり,相違点1-2もこれに従って認定されるべきである。 相違点1-1及び1-2 乙13の1発明は火災保険特殊地図であるところ,火災保険特殊地図とは火災保険会社からの依頼によって作製され,耐火建造物や防火建造物といった火災保険会社に意味のある情報を中心に記載されているものであるから,住宅地図とはいえない。 また,火災保険特殊地図である乙13の1発明では,居住者氏名はもと より記載する必要のないものであるから記載していないのであり,居住人氏名や建物名称を「省略」したものではない上,「省略」したうえで「縮尺を圧縮」するという構成も開示されていないから,構成要件B及びCが開示されていない。 したがって,乙12発明と乙13の1発明を結びつけることによって本 件発明に想到することはできない。 イ乙13の1に基づく進歩性欠如の有無(争点 構成要件B及びCが開示されていない。 したがって,乙12発明と乙13の1発明を結びつけることによって本 件発明に想到することはできない。 イ乙13の1に基づく進歩性欠如の有無(争点4-2)(被告の主張)乙13の1発明の内容乙13の1発明は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般 住宅及び建物については居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び 建物のポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた火災保険特殊地図の発明である。 本件発明と乙13の1発明の相違点本件発明と乙13の1発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致する。 本件発明は,「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し,付属として索引欄を設け,該索引欄に前記地図に記載の全ての住建物の所在する番地を前記地図上における前記住建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載した」(構成要件DないしF)のに対して,乙13の1発明は,そのような構成を備えていない点(以下「相 違点2」という。)。 相違点2乙13の1発明と乙12発明とは,住宅地図という共通の技術分野に属する発明であって,住宅を探し出すという共通の機能を奏するものであるから,当業者にとって両者の組み合わせを試みることは,通常の創作能 力の発揮にすぎない。したがって,乙13の1発明において,乙12発明を適用して相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 (原告の主張) のとおり,乙13の1発明は,居住人氏名や建物名称の記載を「省 略」する構成も,「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備え」る構成も開示していないし,そもそも「住宅地図」でもない。 の主張) のとおり,乙13の1発明は,居住人氏名や建物名称の記載を「省 略」する構成も,「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備え」る構成も開示していないし,そもそも「住宅地図」でもない。 したがって,乙12発明と組み合わせることは容易ではなく,仮に組み合わせたとしても本件発明に想到することはできず,被告の主張には理由がない。 ウ明確性要件違反の有無(争点4-3) (被告の主張)構成要件B本件特許の請求項1には「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物」という用語があるが,本件明細書の記載を考慮しても,「検索の目安となる」か否かには何ら客観的な基準が存在しない上, 「著名」の基準も不明確であるし,「等」に何が含まれるかも不明である。 したがって,構成要件Bに係る特許請求の範囲の記載は,発明の技術的範囲が不明確であり,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 構成要件C 本件特許の請求項1には「縮尺を圧縮して広い鳥瞰性を備えた地図」という用語があるが,本件明細書の記載を考慮しても,圧縮される前の縮尺が不明である上に,どの程度の縮尺であれば「縮尺を圧縮」したものといえるのかが不明である。また,「広い鳥瞰性」とあるが,どの程度の広さなのかが不明であり,用語の意味は一義的に明らかでない。 したがって,構成要件Cに係る特許請求の範囲の記載は,発明の技術的範囲が不明確であり,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (原告の主張)構成要件B 「検索の目安となる」か否かは,目的とする建物を探し出す過程で必要な情報か否かにより決せられる。また「著名」とは,世間に名前がよく知られていることを指しており,何ら不 構成要件B 「検索の目安となる」か否かは,目的とする建物を探し出す過程で必要な情報か否かにより決せられる。また「著名」とは,世間に名前がよく知られていることを指しており,何ら不明確ではない。さらに「公共施設や著名ビル等」の「等」には,公共施設や著名ビルではないけれども,検索の目安となる建物が含まれることが明らかである。 構成要件C 「縮尺を圧縮」とは,従来技術である住宅及び建物のすべての名称が記載された住宅地図に比較してより高い縮尺率の地図をいい(【0002】【0003】【0007】等),また,「広い鳥瞰性」とは,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除いた住宅及び建物についてはその名称を省略しポリゴンと番地のみを記載することにより可能となった縮尺の圧 縮により,より広い範囲を同一ページに納められることとなった状態を指すから,不明確とはいえない。 エサポート要件違反の有無(争点4-4)(被告の主張)本件明細書の記載(【0002】【0003】【0005】【0010】【00 39】)からすれば,本件発明は,大型で大判であり,高価格で携帯に不便であった住宅地図を,小型化・小判化することにより,廉価で取り扱いやすい住宅地図を提供することを目的とするものである。被告の主張によれば,本件発明は,電子住宅地図をその範囲に含むものであるところ,電子住宅地図であれば,地図が電子情報として媒体に保存されており,地図を自由に拡 大縮小して表示できるから,大型化・大判化という課題は存在せず,携帯に不便であるとか,高価格になるということはないから,本件発明が解決しようとする課題は存在しない。 したがって,本件発明は,上記課題を認識し得ない構成を一般的に含むものであるから,発明 ,携帯に不便であるとか,高価格になるということはないから,本件発明が解決しようとする課題は存在しない。 したがって,本件発明は,上記課題を認識し得ない構成を一般的に含むものであるから,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記 載された範囲を超えたものであり,サポート要件を充足しない。 (原告の主張)電子住宅地図であっても,従来の電子住宅地図が,建物表示に住所番地ばかりでなく,居住者氏名も全て併記されており,このため,それらの記載を一軒ごとに建物表示の輪郭内に納めるために建物の記載スペースを大きく とる必要があったところ,一般住宅及び建物について居住人氏名や建物名称 の記載を省略することにより,本件発明の課題(【0010】)が解決される。 したがって,電子地図には,本件発明が解決しようとする課題が存在し,本件発明を実施した電子地図により当該課題の解決が可能で,これは当業者が認識できるものであるから,何らサポート要件違反にはならない。 損害の数額(争点5) (原告の主張)被告地図の利用料は1カ月あたり900円,ユーザの人数は5万人を超えるから,1年あたりの売上は5億4000万円を下らない。そうすると,平成24年8月からの約4年間の利益総額は20億円を下らない。 また原告が本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,売上の5%相当額 は下らない。 したがって,特許法第102条3項に基づき,原告が被告から本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は1億円を下らない。 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明及びその意義 本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲2。なお,明白な誤記と思われる箇 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明及びその意義 本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲2。なお,明白な誤記と思われる箇所については修正した。)。 ア発明の属する技術分野 「本発明は,住宅,ビル等の一軒ごとに居住者名や会社名等の対応付けが容易で縮尺率が極めて高い小型な住宅地図に関する。」(【0001】)イ従来の技術「従来の住宅地図には,建物表示に住所番地ばかりでなく,居住者氏名も全て併記されており,このため,それらの記載を一軒ごとに建物表示の輪郭 内に納めるために一軒毎の建物の記載スペースを大きく取る必要があった。 従って,住宅地図の縮尺は,実用上,小さいものでも市街地で1,000分の1から1,500分の1の大きさであることが要求される。また,これに伴って目的とする建物や建物への連絡道路や付近の状況等を一覧できるように,地図帳の大きさも比較的大判サイズのものにする必要があった。」(【0002】) 「また,付属の索引については,住所のうち丁目とそれぞれの丁目に該当するページが掲載されているだけであったから,目的とする建物を探し出すためには,索引によって開いた上記のように大判の広いページの上で,丁目が同一であって番地が異なる多くの建物の中から目的とする建物を探し出す必要があった。さらに上記のように縮尺度の低い縮尺のもとでは一軒毎の 建物の記載スペースが大きいために,同一の丁目に属する建物が数ページにまたがって分布して記載されていることが多く,このため目的とする居住地(建物)を探し出す作業が煩雑で面倒であり迅速さに欠け非能率な作業となって大きな不満を伴うものであった。」(【0003】)「また, がって分布して記載されていることが多く,このため目的とする居住地(建物)を探し出す作業が煩雑で面倒であり迅速さに欠け非能率な作業となって大きな不満を伴うものであった。」(【0003】)「また,従来より住宅地図には氏名と住所を記載することが必須とされて おり,このため,アルバイト生などを雇って一軒一軒尋ね歩かせ,住所,氏名を確認のうえ住宅地図上の当該家屋に新規に書き込み,あるいは修正するなどして,いわゆる人海戦術によって地図の作成を行っていた。このように,氏名の記載に伴う地図作成の繁雑さ及び地図作成後の住所移転に伴う氏名の記載変更作業の繁雑さは並大抵のものではなく,このように毎年行われる 実地調査のための人件費が経費の相当部分を占めて,これが住宅地図の制作費を押し上げる要因となっていた。」(【0004】)「また,このような住宅地図は,住所番地と氏名あるいは建物などが同色で併記されているため雑然としていて見にくく,従って,肉眼でも判別可能な実用性を確保するためには大きく記載しなければならず,ますます縮尺度 を低いものにさせていた。従って,全体として地図の大型化や大冊化を招き, この大型化や大冊化が上記の人件費と相俟って住宅地図を高価格なものとするとともに,携帯に不便なものともしていた。」(【0005】)「この高価格や大型化・大冊化のために,住宅地図は一般には普及せず,官公庁や住宅関係の情報を特に必要とする企業など,ごく一部に使用されるだけの利用率の低いものとなっている。また,同様の理由により,住宅地図 を必要とする企業等においても,携帯による個別的な利用は一般的になされず,その点からも利用率の低いものとなっている。」(【0006】)「そして,住宅地図の利用においては,一般に,目的とする建物を探し 必要とする企業等においても,携帯による個別的な利用は一般的になされず,その点からも利用率の低いものとなっている。」(【0006】)「そして,住宅地図の利用においては,一般に,目的とする建物を探し出す過程で必要な情報は,公共施設や著名ビル等の一部例外を別にすれば専ら住宅の番地であり,この住宅の番地が目的とする建物に検索が近づいている か否かを判別するための手掛かりとなる。氏名は目的とする建物が見つかったとき更なる確認のために必要とされることはあっても,必須不可欠なものではない。のみならず,検索中における付近の建物の住人の氏名は不要なばかりか,総じて,検索に対して妨害的に作用するものである。実際,氏名は漢字やかなで表記されるため,住宅地図上の建物輪郭内に必要とするスペー スの割合が大きく,結果的に,数字である住所番地はその片隅に小さく記載されざるを得ないから,記載情報を読み取る際の人間の習性として,検索中は,住所番地ばかりでなく付近の不要な文字(氏名) まで読み取ることになり迅速な検索の支障になっている。」(【0007】)「更に,現存の住宅地図の作成では,例えば一軒一軒表札を見て居住者の 氏名を記入するため,電話帳に電話番号を掲載しない住民その他氏名の公表を希望しない住民についても住宅地図を登載してしまうこととなる。このため,プライバシーの保護という点からも問題を有している。」(【0008】)「本発明の課題は,上記従来の実情に鑑み,住宅,ビル等の一軒ごとに居住者名や会社名等の対応付けが容易であり,縮尺率が高く小型で廉価であり, 内容が最新,正確,且つプライバシーに配慮したものであり,検索が迅速に できる住宅地図を提供することである。」(【0010】)ウ課題を解決するための手段「先ず,請求 あり, 内容が最新,正確,且つプライバシーに配慮したものであり,検索が迅速に できる住宅地図を提供することである。」(【0010】)ウ課題を解決するための手段「先ず,請求項1記載の発明の住宅地図は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については住人氏名や建物名称の記載を省略し住所及び建物のポリゴンと番地のみを記載すると共に,縮尺を圧縮 して広い鳥瞰性を備えた地図を構成し,該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化し,付属として索引欄を設け,該索引欄に上記地図に記載の全ての住居建物の所在する丁目,番地及び号を上記地図上における上記住居建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載して構成される。」(【0011】) 本件各発明の意義前記によれば,本件発明の意義は以下のとおりであると認められる。 従来の住宅地図は,建物表示に住所番地だけでなく建物名称及び居住者氏名も全て併記されていたため,これらを記載するためのスペースを確保するために住宅地図の縮尺を高くすることができず,そのため,地図の大きさも比較的 大きくする必要があるとともに,地図に氏名が記載されることによるプライバシー侵害や利用者の検索への支障を生じたり,地図の更新作業のための調査に膨大な労力と人件費がかかったりするという課題があった。また,住宅地図に付されている索引についても,住所のうち丁目と,それぞれの丁目に該当するページが掲載されているだけであったため,同一の丁目の中で番地が異なって いる多くの建物の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,検索の目安となる建物を除く建物名称や居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより小判で,薄い,取り扱い いる多くの建物の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,検索の目安となる建物を除く建物名称や居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや,地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地図を提供することを可能にするととも に,地図上に公共施設や著名ビル等以外の住宅及び建物は番地のみを記載し, 地図のページを適宜に分割して区画化したうえで,全ての住宅及び建物の所在する番地を当該番地の記載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供する。 2 争点1-4(構成要件D「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画化 し」の充足性)後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告地図プログラムは,会員登録をしたユーザが,被告が指定するウェブサイト(http://以下省略)にアクセスし,所定の操作をするなどすると,ユーザの端末にインストールされているWebブラウザを介して,ユーザ端 末のディスプレイに地図を表示できるようにしたプログラムである(乙1,2)。 ユーザの端末の画面に表示された被告地図は,画面の右側に「-」「+」のアイコン,画面の右下にスケールバー,画面の下側に「検索」「中心住所」「ルート確認」「お気に入り」の各アイコンが表示される(甲4,16,2 4の1,24の2)。 イ被告地図プログラムにより表示される被告地図には,前記アのスケールバーの表示が「10m」「20m」「30m」「50m」「60m」「70m」「200m」「500m」「2km」「10km」「20km イ被告地図プログラムにより表示される被告地図には,前記アのスケールバーの表示が「10m」「20m」「30m」「50m」「60m」「70m」「200m」「500m」「2km」「10km」「20km」「90km」の12段階の地図がある(甲4ないし6,24の1,24の2,争いのない事実)。 被告地図は,上記のスケールバーの表示が同じ地図であっても,表示するユーザの端末ごとに端末の画面の大きさが異なることなどから縮尺率を特定することはできないが,スケールバーの表示が「60m」である縮尺レベル「60m」の地図は,1/2833ないし1/3333程度の範囲の縮尺となることがある(乙6,弁論の全趣旨)。 ウ被告地図のうち,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の住宅地図は, ポリゴンとして表示された住宅及び建物の一部につき名称の記載がなく,丁目,番地及び号が記載されている。また上記各住宅地図の画面には,画面を仕切る線等は存在せず,また画面上の特定の区画を示す記号番号も付されていない(甲4,24の1,24の2)。 エユーザが,被告指定のウェブサイトにアクセスし,表示地点及び縮尺の指 定を行うと,●(省略)●ユーザの携帯端末に送信される(乙2)。●(省略)●(乙2)。なお,ベクターデータとは,現実世界に存在する地物をポイント(点),ライン(線)及びポリゴン(面)の3つの要素で表現したデータであり,ラスターデータとは,行と列の格子状(グリッド状)に並んだセル(ピクセル)で構成されるデータである(乙11の1,11の2)。 被告地図では,端末のインターネット接続を遮断した上で,表示画面をスクロールして新たな領域を表示させようとすると,地図表示がされない部分が現れる(甲5,争いのない事実)。また,同様にイ 被告地図では,端末のインターネット接続を遮断した上で,表示画面をスクロールして新たな領域を表示させようとすると,地図表示がされない部分が現れる(甲5,争いのない事実)。また,同様にインターネット接続を遮断した状態で,画面右側の「-」と「+」のアイコンを操作して縮尺を縮小・拡大しようとすると,地図表示がされない(甲6,争いのない事実)。 オユーザが前記アの「検索」のアイコンを選択すると,被告地図の表示が消えて検索画面が表示される。 ユーザが,同検索画面において,特定の町名を指定すると,同町のすべての丁目が番号の若い順に表示されると共に,各丁目の表示の右側に「地図>」とのアイコンが表示される。 さらにユーザが丁目を選択すると,当該丁目のすべての番地が番号の若い順に表示されると共に,各番地の表示の右側に「地図>」とのアイコンが表示される。同アイコンには,各番地に対応して設定された特定の地点へのハイパーリンクが設定されており,ユーザが同アイコンを選択すると,当該アイコンの左側に表示された住所を中心とした被告地図が表示される。なお, その際の縮尺は,検索画面に移行する直前に表示されていた地図の縮尺と同 一である。 さらにユーザが番地を選択すると,当該番地のすべての号が番号の若い順に表示されると共に,各号の表示の右側に「地図>」とのアイコンが表示される。同アイコンには,各号に対応して設定された特定の地点へのハイパーリンクが設定されており,ユーザが同アイコンを選択すると,当該アイコン の左側に表示された住所を中心とした被告地図が表示される。なお,その際の縮尺は,検索画面に移行する直前に表示されていた地図の縮尺と同一である。(以上,甲4,12ないし16,争いのない事実,弁論の全趣旨 左側に表示された住所を中心とした被告地図が表示される。なお,その際の縮尺は,検索画面に移行する直前に表示されていた地図の縮尺と同一である。(以上,甲4,12ないし16,争いのない事実,弁論の全趣旨) として,以下の記載がある。なお,以下の図1ないし5は,それぞれ,別紙本件明細書図1な いし5である。 ア 「図1は,一実施の形態における番地(住所の地番及び号)のみを記載した住宅地図のページの一例を示す図である。同図に示す地図1は,3本の縦線2と,1本の横線3により,8つの区分に仕切られている。上段の区分は左から右へ第1区分,第2区分,第3区分及び第4区分として夫々区分の中 央に括弧付きの番号が(1),(2),(3)及び(4)と付記されている。下段には,上記に続く区分番号が同様に区分の中央に(5),(6),(7)及び(8)と付記されている。これらの区分番号は,その区分を拡大して示すページの番号であり,例えば第4区分の番地付きの詳細図は,その区分番号(4)で示す4ぺージに掲載されている。この地図の図形は,原画,イメージスキ ャナ,ベクトルデータ変換装置,ポリゴン(多角の囲い図形)変換装置,及びコンピュータを用いて作成し,後述する番地データや一部の名称(テキストデータ)は,手作業による入力によって付加する。この地図データは住所入り電子住宅地図として適宜の媒体に記憶される。そして,必要に応じて,プロッタ等を用いて印刷出力される。」(【0017】) イ 「図2は,上記一例として示したページの第4区分を拡大して示すページ 即ち4ページを示している。同図に示す拡大地図4は,5本の仕切り線5によって上下に6つの区画に仕切られて(分割されて)いる。それらの区画には,左外側に,上から1,2,…6と区画番号が付記 即ち4ページを示している。同図に示す拡大地図4は,5本の仕切り線5によって上下に6つの区画に仕切られて(分割されて)いる。それらの区画には,左外側に,上から1,2,…6と区画番号が付記されている。この拡大地図4が,検索対象となる住宅地図であり,図1の地図1は,検索対象の居所を検出した後,その探し当てた住所付近の全体像を知るために利用される 俯瞰図である。」(【0018】)ウ 「図3は,説明上の便宜のため,図2の拡大地図4の第6区画を更に拡大して示している。図3に示すように,第6区画は,左方にこの辺一帯の地名である「丙原」の字名(あざな)6が記載されている。そして,やや右方に集中して,住宅その他の建造物(以下,これらを建物という)が,ポリゴン で表され,公共施設の「○×公民館」の記載7の他には,一般住宅及び建物について居住人氏名や建物名称の記載が省略されている。建物には黒点が打たれて単に番地のみが付記されている。」(【0019】)エ 「このように番地の記載位置が1つの区画内で順不同であるのは,番地が地形や道路を境界にして区割りされる行政区画に従って付与されているた めであり,単純に方形に仕切って形成される地図の区画には順序よく収まらないことからきている。このように番地の配置が順不同であると,近傍の番地が直ちには検索の目安にならないから,従来のように,これに氏名が記載されていては,氏名の記載が視野の邪魔になって,目的とする番地の建物を目視によって探し出すことが容易ではない。同図のように氏名の記載がなく 番地の記載だけであると,たとえ番地の記載が順不同であっても目的とする番地の建物を目視によって探し出すことは容易である。本実施の形態においては,番地を知って建物を容易に検索できるように付属として地図に 地の記載だけであると,たとえ番地の記載が順不同であっても目的とする番地の建物を目視によって探し出すことは容易である。本実施の形態においては,番地を知って建物を容易に検索できるように付属として地図に索引欄を設けてある。」(【0021】)オ 「図4は,索引欄の一例を示す図表である。同図は例として字名(都市部 では町名)と,その字名の中に含まれる住宅の番地(以下,住宅番地という), そして,その住宅番地の建物が掲載されている地図の頁とその区割りが一覧的に対応させて記載されている。」(【0022】)カ 「同図に示す索引欄には字名は甲原,乙原,及び丙原の3つが示されている。字名が甲原の最初の住宅番地は「8~14-5」となっており,これに対応する頁は「1」,区割りは「4」となっている。これは甲原の8番地,9 番地,…,14番地5号までが,1頁の第4区画に掲載されていることを表している。」(【0023】)キ 「住宅番地「8~14-5」の「~」は中間の番地の記載を省略したことを表している。すなわち,1頁の第4区画に掲載されている番地の最も小さい番地及び号が「8」(号はない)であり,最も大きい番地及び号が「14 - 5」であることを表している。したがって,甲原の「○池△太郎」が9番地に居住していることが電話帳で分かれば,9番地は「8~14-5」の範囲内に含まれるから,1頁を開いて第4区画を探せばよいことになる。」(【0024】)ク 「また,図3の拡大図に示す4頁の第6区画の字名「丙原」地区に掲載さ れている番地は,図4の索引欄では,字名「丙原」の欄の一行目の中欄に,住宅番地「30~70」,頁「4」,区画「6」として,上述した30,32,33,35,52,53-1,55,56,57,60,61,64,65, ,図4の索引欄では,字名「丙原」の欄の一行目の中欄に,住宅番地「30~70」,頁「4」,区画「6」として,上述した30,32,33,35,52,53-1,55,56,57,60,61,64,65,66,69及び70番地が示されており,さらに8行目の中欄に,住宅番地「1539~1821-3」,頁「4」,区画「6」として,上述した153 9,1539-2,1804,1808,1812,1813-1,1813-2,1814,1821-3及び1821-2番地が示されている。」(【0027】)ケ 「これによって,丙原の「×垣○次郎」の住宅を探すときは,電話帳で丙原地区のページを調べ,×垣○次郎を探し出し,そこに電話番号と共に記載 されている所番地,例えば「丙原52番地」によって,図4の索引欄の字名 「丙原」,住宅番地「30~70」,頁「4」,区画「6」から,図2に示す4ページの検索用地図4の第6区画内を探して,52番地の建物8(図3の拡大図参照)を探し当てることができる。」(【0028】)コ 「尚,図2に示した検索用地図4では,区画を縦6段にして,横方向に区画割りを行っていないが,都市部など建物が混み合うところでは更に横方向 に区画を設けるようにしてよい。」(【0031】)サ 「図5は,図2と同じ検索用地図4を縦横に仕切って合計24区画に分割した例を示している。このように縦横に区画する場合は,横方向の区画には例えば図のようにA,B,C,Dのように英文字を用いて区画記号を付記するようにし,図4の索引欄には,区画記載欄に「1A」,「6C」のごとく縦 の区画番号と横の区画記号を記載する。これによって24区画内の番地を各区画に対応させて記載することができる。」(【0032】)シ 「尚,官公庁や住宅関係の企 に「1A」,「6C」のごとく縦 の区画番号と横の区画記号を記載する。これによって24区画内の番地を各区画に対応させて記載することができる。」(【0032】)シ 「尚,官公庁や住宅関係の企業では,今まで通り氏名入りの住宅地図を必要とする場合も考えられる。そのような場合でも,本実施の形態における住宅地図,但しこの場合は電子化されているほうの住所入り電子住宅地図と, これも電子化されている電話帳などとによって,全戸氏名入りの住宅地図を作成することができる。」(【0033】)ス 「図6は,その全戸氏名入り電子住宅地図の作成方法を示す図である。同図に示す電子データベース11は,一般に市販されている例えばCD-ROMに納められている型の電子電話帳である。或は市販のスキャナを用いて電 話帳の各ページを読み取り,これも市販のイメージ/テキスト変換ソフトを用いて上記読み取ったページイメージをテキストデータに変換して自前の電子電話帳を予め作っておいてもよい。」(【0034】)セ 「そして,同図の住所入り電子住宅地図12は,上述した本発明に係る住所のみが入った電子住宅地図である。同図に示すように,パソコン(パーソ ナルコンピュータ)13により上記の電子電話帳11と住所入り電子住宅地 図12を読み込み,所番地(住所地番及び号)をキーとして,電子電話帳11の氏名データと,住所入り電子住宅地図12のポリゴンデータとを連結する。これによって,全戸氏名入り電子住宅地図14を生成する。」(【0035】)ソ 「図7は,上記の全戸氏名入り電位住宅地図14のデータ構成を示す図で ある。同図に示すように,全戸氏名入り電子住宅地図14は,所番地データ15を連結キーとして,一方には住所入り電子住宅地図12のベクトル地図データ( 名入り電位住宅地図14のデータ構成を示す図で ある。同図に示すように,全戸氏名入り電子住宅地図14は,所番地データ15を連結キーとして,一方には住所入り電子住宅地図12のベクトル地図データ(ポリゴンデータ等)16が対応し,他方には電子電話帳11の氏名データ17が対応してテーブルが作成される。この全戸氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のハードディスク,書込み読出し自在のCD-RO M,複数枚のフロッピーディスク等に格納して保存される。」(【0036】)タ 「この全戸氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のキーボードから氏名を入力すれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコン13の表示装置に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点滅する。また,当該地区の適宜な範囲の地図をプロッタで印刷 出力することもできる。」(【0037】)構成要件Dの「適宜に分割して区画化」についてア特許請求の範囲の「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF) に照らせば,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページの特定の部分に記号番号を付し番地とこれに対応するページの特定の部分を一覧的に示したりすることができるよう,検索すべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は,地図上に公共施設や著名ビル等 以外の住宅及び建物は番地のみを記載するなどし,全ての建物等が所在する 番地について,記載ページと当該ページ内で分割された区画のうち当該番地が記載された区画を一覧的に対応させて掲載した索 以外の住宅及び建物は番地のみを記載するなどし,全ての建物等が所在する 番地について,記載ページと当該ページ内で分割された区画のうち当該番地が記載された区画を一覧的に対応させて掲載した索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引欄を用いて,検索対象の建物等が所在する地番に対応する,ページ及び当該ページにおける複数の 区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区画内において,検索対象の建物等を検索することが想定されている。そのためには,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうすると,本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件発明 の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号により,検索対象の建物等が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でどの区画であるかを認識することができる形でページを分割することをいうといえる。 また実施の形態において,本件 発明を実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明細書図2」及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図においては,いずれも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示されたうえで,そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて複数の区画に分割されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付され ている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物が掲載されているペ 号が付され ている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物が掲載されているページ番号及び区画番号を把握し,それらの情報を基に,該当ページ内の該当区画を認識して,その該当区画内を検索することにより,目的とする建物を探し出すことが記載されてい る(【0028】)。ここでは,上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に 従った実施の形態が記載されているといえる。 加えて,本件明細書には,本件発明の「区画化」の用語を定義した記載はなく,【0017】ないし【0032】及び別紙「本件明細書図1」ないし「本件明細書図5」で記載された実施形態以外には本件発明の実施形態の具体的記載はない。なお,後記イのとおり,本件明細書の【0033】【00 37】に記載された地図は,本件発明の実施形態を記載したものとはいえない。 したがって,本件明細書における発明の実施の形態に係る記載からしても,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号により,検索対象の建物等が所在する区画が,ペー ジ内に複数ある区画の中でどの区画であるかを認識することができる形でページを分割することをいうと解される。 イこれに対し,原告は,本件明細書(【0033】【0037】)は,本件発明の実施形態として,コンピュータが自動的に区画を探し出し,当該区画を画面中央に配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電 子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示しており,このような構成を備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置を分かりやすく探せるように仕切り線を設ける必要 が直接認識できる電 子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示しており,このような構成を備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置を分かりやすく探せるように仕切り線を設ける必要はないから,「区画化」もまたユーザが目に見える形で仕切る構成に限定されない旨主張する。 確かに,本件明細書には,全戸氏名入り電子住宅地図として「戸番地(住 所地番及び号)をキーとして,電子電話帳11の氏名データと,住所入り電子住宅地図12のポリゴンデータとを連結する。」(【0035】),「この全戸氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のキーボードから氏名を入力すれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコン13の表示装置に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点 滅する。」(【0037】)との記載がある。 しかし,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,上記【0037】記載の動作に対応する構成の記載はない。また,本件明細書には,「公官庁や住宅関係の企業では,今まで通り氏名入りの住宅地図を必要とする場合も考えられる。そのような場合でも,…全戸氏名入りの住宅地図を作成することができる。」(【0033】)との記載があるところ,上記記載中の「今まで 通り氏名入りの住宅地図」とは,「建物表示に住所番地ばかりではなく,居住者の氏名も全て併記」された「従来の住宅地図」(【0002】)を指すと解されること,【0037】の全戸氏名入り電子住宅地図14においては,利用者がパソコン13のキーボードから氏名を入力することによりその人物が居住する建物を検索する場合,マークの付された建物に表示された氏名 を視認することによって検索の目的とする建物との同一性を確認するものと理解できることからす 氏名を入力することによりその人物が居住する建物を検索する場合,マークの付された建物に表示された氏名 を視認することによって検索の目的とする建物との同一性を確認するものと理解できることからすると,全戸氏名入り電子住宅地図14は,「全戸」の氏名が表示された地図であるものと認められる。そうすると,全戸氏名入り電子住宅地図14は,構成要件Bの「検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名及び建物名称の記載を 省略し」の構成を備えていない。 したがって,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14は,本件発明の実施形態に含まれるとは認めることはできない。なお,本件発明の出願経過によれば,本件特許出願の願書に最初に添付した明細書(乙8の2,8の3)記載の特許請求の範囲は旧請求項1ないし11からなり,旧請求項7 ないし11には,「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の記載があり,発明の詳細な説明中の【0014】ないし【0016】に旧請求項7ないし11を引用した記載部分があったが,同年10月21日付けの手続補正(乙9)により,旧請求項1の文言を補正し,旧請求項2ないし11及び【0014】ないし【0016】を削除する補正がされたこと,上記補正 後の請求項1は,拒絶査定不服審判請求と同時にされた平成13年6月7日 付けの手続補正により本件発明の特許請求の範囲記載の請求項1と同一の記載に補正されたこと(乙10)に照らすと,本件明細書の【0033】ないし【0038】記載の全戸氏名入り電子住宅地図14に関する記載は,平成11年10月21日付けの手続補正により削除された旧請求項7ないし11記載の「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の実施形態で あると認められる。 電子住宅地図14に関する記載は,平成11年10月21日付けの手続補正により削除された旧請求項7ないし11記載の「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の実施形態で あると認められる。 以上によれば,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14が本件発明に含まれることを前提とする原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件発明に係る住宅地図は,紙媒体の住宅地図だけではなく,電子住宅地図もその技術的範囲に含む発明であるところ,電子住宅地図におい て,索引欄の任意の番地を選択すれば,当該番地を含む区画を中心とする地図が当該番地を中心として自動的に表示されることは技術常識であったから,「区画化」が必ずしもユーザの目に見える形で仕切ることを意味するものでないとも主張する。 しかしながら,本件明細書には,当該番地を含む区画を自動で検索・表示 する構成は何ら開示されておらず,かえって,従来技術においては,番地付近の不要な文字(氏名)は,記載情報を読み取る際の人間の習性からこれらの情報まで読み取ることとなって迅速な検索の支障となっていたのに対し,本件発明においては,氏名の記載がないことによって視野の邪魔がなくなり,目的とする番地の建物を目視によって探し出すことが容易になったこと (【0007】【0021】),本件特許の実施形態における検索速度を測定した試験結果によれば,従来の氏名入りの住宅地図と比較しておよそ十倍の速度で検索できることが判明したこと(【0029】)が記載されており,本件発明に係る地図は,それが紙媒体又は電子媒体いずれに記録されるものであるかにかかわらず,番地の検索行為は使用者が目視で行うことが前提とされ ているといえる。 したがって,本件発明の「区画化」は それが紙媒体又は電子媒体いずれに記録されるものであるかにかかわらず,番地の検索行為は使用者が目視で行うことが前提とされ ているといえる。 したがって,本件発明の「区画化」は,利用者が認識できる形で仕切ることを意味する。本件発明が電子住宅地図を含むか否か,電子住宅地図において索引欄の任意の番地を選択すれば当該番地を含む区画を中心とする地図が当該番地を中心として自動的に表示されるとの技術常識が存在したか否かは,「区画化」に係る前記解釈に影響を与えるものとはいえない。 原告は,被告地図において,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当すると主張した上で,被告地図は,●(省略)●から成り,画面表示される部分は複数のタイルから構成されるから構成要件Dの「適宜に分割して区画化」を充足すると主張する。 しかしながら,仮に,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当するとしても,前記のとおり,上記各被告地図においては,画面を仕切る線等は存在せず,また画面上の特定の区画を示す記号番号も付されていないのであり,利用者は,線その他の方法及び記号番号により,ページにある複数の区画の中で, 検索対象の建物が所在する地番に対応する区画を認識することができるとはいえない。 また,被告地図において画面表示される画像データ(ラスターデータ)が●(省略)●から構成されるとしても,,ユーザは,端末のインターネット接続を遮断して新たな地図データが受信されない状態にしな い限り●(省略)●の範囲を認識しない。また,同画像データに個々のタイルを特定する記号番号が付されていたと認めるに 端末のインターネット接続を遮断して新たな地図データが受信されない状態にしな い限り●(省略)●の範囲を認識しない。また,同画像データに個々のタイルを特定する記号番号が付されていたと認めるに足りる証拠もないから,ユーザは●(省略)●する記号番号を認識することはない。 したがって,被告地図においては,線その他の方法及び記号番号により,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在する地番に対応する区画 を認識することができるとはいえない。そうすると,前記に照らし,被告地 図において,「各ページ」が,「適宜に分割して区画化」されているとはいえない。 これらによれば,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図について,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」がされているとは認められない。 小括 以上によれば,その余の構成要件の充足性を判断するまでもなく,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての文言侵害(主位的主張)は認められない。 3 争点2(縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図についての均等侵害の成否) 原告は,仮に縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が,各ページに線その他の方法及び記号番号を付されていない点において構成要件Dと相違するとしても,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,均等の成立要件(第1要件ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張する。 本件発明の技術的意義は,検索の目安となる建物を除く建物名称や居住者氏名の記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供すること 本件発明の技術的意義は,検索の目安となる建物を除く建物名称や居住者氏名の記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや(構成要件B及びC),地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以 外の住宅及び建物は番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化したうえで,全ての建物等の所在する番地を,当該番地の記載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供すること(構成要件DないしF)を可能にする点にあるものと認められる。 で認定したとおり,地図を記 載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に見える形で複数の区画に仕切られていないため,ユーザが所在番地の記載ページ及び区画の記号番号の情報から検索対象の建物等の該当区画を探し,区画内から建物を探し出すことができないから,迅速な検索が可能であるということはできない。 したがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発 明の本質的部分を備えているものとは認めることができず,同被告地図の相違部分は,本件発明の本質的部分でないということはできないから,均等の第1要件を充足しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等 なものとは認められないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。 3 小括以上によれば,縮尺レベル「50m の被告地図は,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。 3 小括 以上によれば,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。 第4 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官安岡美香子 裁判官佐藤雅浩 (別紙)本件明細書図1 本件明細書図2(別紙) (別紙)本件明細書図3 本件明細書図4(別紙) 本件明細書図5(別紙)
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