- 1 -平成24年(う)第1021号詐欺被告事件平成24年12月13日東京高等裁判所第4刑事部判決 主文 原判決を破棄する。 被告人両名をそれぞれ懲役1年6月に処する。 被告人両名に対し,原審における未決勾留日数中各180日をそれぞれその刑に算入する。 理由 第1 控訴趣意に対する判断 1 本件各控訴の趣意は,検察官猪俣尚人提出の控訴趣意書(検察官八木宏幸作成名義)記載のとおりであり,これに対する答弁は,被告人荒井の弁護人武谷元作成の答弁書及び被告人山口の弁護人小室太一作成の答弁書各記載のとおりであるから,これらを引用する。 2 論旨は要するに次のとおりである。 (1) 本件各公訴事実は,平成23年7月27日付け起訴状記載の公訴事実及び同年9月14日付け追起訴状記載の公訴事実のとおりである。 すなわち,「被告人両名は,携帯電話機販売店からプリペイド式携帯電話機をだまし取ろうと考え,共謀の上,平成23年6月4日午後2時55分頃から同日午後6時26分頃までの間,東京都新宿区(以下省略)株式会社X新宿店所在の株式会社Y新宿店において,同店店長a に対し,真実は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機をそれぞれ自ら利用するように装って,被告人荒井が自己を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方を,被告人山口が自己を契約- 2 -者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方をそれぞれ申し込み,前記a に,被告人両名が同社の 及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方を,被告人山口が自己を契約- 2 -者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方をそれぞれ申し込み,前記a に,被告人両名が同社の規定に従い,購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信させ,よって,その頃,同所において,前記a から,同社との間の役務提供契約に係るプリペイド式携帯電話機4台(販売価格合計7920円)の交付を受け」(平成23年9月14日付け追起訴状記載の公訴事実),「被告人両名は,携帯電話機販売店からプリペイド式携帯電話機をだまし取ろうと考え,共謀の上,平成23年6月5日午後0時32分頃から同日午後3時10分頃までの間,東京都新宿区(以下省略)株式会社X新宿店所在の株式会社Y新宿店において,同店店長a に対し,真実は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機をそれぞれ自ら利用するように装って,被告人山口が同人を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方を,被告人荒井が同人を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方をそれぞれ申し込み,前記a に,被告人両名が同社の規定に従い,購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信させ,よって,その頃,同所において,前記a から,同社との間の役務提供契約に係るプリペイド式携帯電話機4台(販売価格合計7920円)の交付を受けた」(平成23年7月27日付け起訴状記載の公訴事実)というのである。 (2) 原判決は,本件各公訴事実に対し,被告人両名 約に係るプリペイド式携帯電話機4台(販売価格合計7920円)の交付を受けた」(平成23年7月27日付け起訴状記載の公訴事実)というのである。 (2) 原判決は,本件各公訴事実に対し,被告人両名が第三者に譲渡する目的でプリペイド式携帯電話機を購入したことは認めつつ,「a 店長において,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信したとは認められないし,被告人両名において,購入するプリペ- 3 -イド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するように装ったとも認められない」として,被告人両名に無罪を言い渡した。 (3) しかしながら,本件各公訴事実は,原審で取り調べられた証拠によって優に認定できる。ところが,原判決は,携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(以下「携帯電話不正利用防止法」という。)の立法経緯や立法趣旨を不当に解釈した結果,a 店長の証言の信用性を否定した上,信用性の全く認められない被告人荒井の弁解に依拠して事実を誤認し,無罪を言い渡したものである。このような認定が論理則,経験則等に反することは明らかであって,その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,到底破棄を免れない。 以上のとおりである。 3 そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を合わせて検討する。 (1) 原判決の判断の要旨原判決は,「a 店長において,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信したとは認められないし,被告人両名において,購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するように装ったとも認められない」 譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信したとは認められないし,被告人両名において,購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するように装ったとも認められない」旨判断説示し,本件各公訴事実についてはいずれも犯罪の証明がないことに帰すると結論づけている。 その判断の要旨は次のとおりである。 ア a 店長の認識について原判決は,まず,本件各販売に際してのa 店長の認識について検討し,a 店長において被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信したとは認められないとした理由を,次のとおり- 4 -説示している。 (ア) a 店長において,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を自ら利用すると誤信したわけでないことは,次の2点から明らかである。すなわち,①a店長は,被告人ら3名(被告人両名及びb の3名)が仲間だと認識し,また,この3名が暴力団関係者ではないかとの印象を持っていたことからすれば,この3名が2日間で合計10台ものプリペイド式携帯電話機を購入しようとしている状況に直面しているにもかかわらず,購入するプリペイド式携帯電話機を全て自ら利用するものと誤信したと考えるのは極めて不合理である。②a 店長も,「被告人らが自ら利用するわけではなく,被告人らが水商売などを経営していて,購入するプリペイド式携帯電話機を店のスタッフである女の子たちに貸し与えるなどの可能性はあると思った」などと証言している。 (イ) a 店長において,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することはないと誤信したかを検討してみても,a 店長は,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することはないと信じたからこそ販売したのであり,第 ペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することはないと誤信したかを検討してみても,a 店長は,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することはないと信じたからこそ販売したのであり,第三者に譲渡するつもりであると分かっていれば販売しなかったと証言しているが,次の3点を考慮すると,その証言を額面どおりに受け取ることはできない。すなわち,①a 店長が法律上問題ないと思っていた具体例として挙げているのは,従業員とはいえ契約者本人とどのような関係にあるかも分からない者にプリペイド式携帯電話機を貸し与えてしまう行為であり,その後そのプリペイド式携帯電話機が誰によって利用されるのかが分からなくなってしまう可能性があるという意味では,携帯電話不正利用防止法で禁止されている無断譲渡そのもの,あるいは,限りなくそれに近い態様のものである。②法令及び約款上どのような場合にプリペイド式携帯電話機の無断譲渡が許され,また,どのような場合に譲渡が承諾されるのかについてのa 店長の認識は極めて不正確である。③少なくともa 店長- 5 -にとっては,プリペイド式携帯電話機の販売に際し,第三者に譲渡する意図がないかどうかは販売の可否を決するほど重要な事柄ではなかったというべきである。 イ欺罔行為の有無について原判決は,以上の判断も踏まえて被告人両名の行為,すなわち,自己名義でプリペイド式携帯電話機の購入を申し込み,その際,自己名義の身分証を使用した上,「Z総合確認書(プリペイドサービス)」と題する書面(「総合確認書」)に署名した行為につき検討し,被告人両名において購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するように装ったとも認められないとした理由を,次のとおり説示している。 (ア) プリペイド式携帯電話機について 名において購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するように装ったとも認められないとした理由を,次のとおり説示している。 (ア) プリペイド式携帯電話機については,次の3点からみて,契約者本人が利用すべきことが契約上も法令上も当然の前提として要請されているとは到底いえない。すなわち,①携帯電話不正利用防止法は,親族又は生計を同じくする者に対しては携帯音声通信事業者の承諾を得ずに携帯電話機を譲渡することを許容しているほか,携帯電話機を個人的・一時的に貸与することなども禁じていない。②Z株式会社においては,プリペイド式携帯電話機を1人の名義で5台まで販売することを許容し,しかも,複数台同時に購入しようとする客に対しその理由を聞くよう指導することもしていない。③a 店長自身,被告人ら以外の者が利用することを想定しながら,合計10台ものプリペイド式携帯電話機を販売している。 (イ) 次の2点からみて,被告人両名が,購入するプリペイド式携帯電話機を自ら利用するかのように振る舞っていたとは認められない。すなわち,①同一店舗から2日間で1人4台ものプリペイド式携帯電話機を購入するという行為自体,契約者本人以外の者の利用を示唆する行為といえる。②特に被告人荒井においては,購入する携帯電話機の色を決めるに際して,店員のc に対し,「自分で使うんじゃないから別に何色でもいい。」と言ったというのであり,第三者に利用させることを- 6 -前提とする言動すらあったといえる。 (ウ) 自己名義の身分証を使用した事実や「総合確認書」に署名した事実を捉えて,被告人両名において購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するよう装ったなどといえないことも明らかである。 (2) 当裁判所の判断 」に署名した事実を捉えて,被告人両名において購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するよう装ったなどといえないことも明らかである。 (2) 当裁判所の判断以上のとおり,原判決は,そもそも被告人両名がいずれも詐欺罪にいう人を欺く行為つまり欺罔行為をしたとは認められないと判断して,被告人両名を無罪としたものである。 ところで,本件各公訴事実記載の欺罔行為は,いずれも要するに,被告人両名が,共謀の上,それぞれ,携帯電話機販売店である株式会社Y新宿店(携帯音声通信事業者であるZ株式会社の代理店の立場にあることが関係証拠により認められる。)の店長a(a 店長)に対し,本当は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図(要するに,第三者に無断譲渡する意図)であるのにこれを秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機を自ら利用するように装って,自己を契約者とする(携帯音声)通信サービス契約(携帯音声通信サービスすなわち携帯音声通信役務の提供を内容とする契約)の締結及びプリペイド式携帯電話機の購入を申し込み,もって人を欺いて財物(プリペイド式携帯電話機)を交付させようとした,というものである。これに対して,原判決は,前述した理由により被告人両名がいずれもこの欺罔行為をしたとは認められないと判断したのであるが,この原判決の判断は経験則等に照らして不合理といわざるを得ず,是認できない。以下,説明する。 ア第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名義で携帯電話機を購入することの法的な意味合いについて原判決は,プリペイド式携帯電話機を契約者本人が利用すべきことは,契約上も- 7 -法令上も当然の前提として要請されているとは到底いえない旨を説示し 電話機を購入することの法的な意味合いについて原判決は,プリペイド式携帯電話機を契約者本人が利用すべきことは,契約上も- 7 -法令上も当然の前提として要請されているとは到底いえない旨を説示しているので,この点に鑑み,まず,第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名義で携帯電話機を購入することの法的な意味合いについて検討しておくことにする。 (ア) 携帯電話不正利用防止法は,プリペイド式携帯電話機を含めた携帯電話機の不正利用の防止等を図るため,携帯電話機(プリペイド式携帯電話機を含む。)を購入した契約者に対し,当該携帯電話機を親族等(親族又は生計を同じくしている者)以外の第三者に譲渡する場合にはあらかじめ携帯音声通信事業者の承諾を得ることを義務づけ(同法7条1項),この承諾を得ないで親族等以外の第三者に携帯電話機を譲渡する行為を禁止している。そして,携帯音声通信事業者の1つであるZ株式会社においても,本件当時既に契約約款で同様の義務を契約上の義務として定め,この義務に違反する無断譲渡行為を不正行為として取り扱っていたことは,関係証拠により明らかである。 (イ) また,携帯電話不正利用防止法は,携帯音声通信事業者に対し,携帯電話機(プリペイド式携帯電話機を含む。)を購入しようとする者との間で携帯音声通信サービス契約を締結する際に本人確認を行うことを義務づけ(同法3条),さらに,携帯電話機の譲渡等に基づき契約者の名義を変更する際にも,譲受人等につき本人確認を行うことを義務づけ(譲渡時本人確認。同法5条),この確認を行った後でなければ譲渡の承諾をしてはならない旨を定めている(同法7条2項)。そして,これらの本人確認は媒介業者等に行わせることができるものとされ(同法6条),携帯音声通信事業者は当該媒介業者等に対して必要かつ適切な監督を行わな してはならない旨を定めている(同法7条2項)。そして,これらの本人確認は媒介業者等に行わせることができるものとされ(同法6条),携帯音声通信事業者は当該媒介業者等に対して必要かつ適切な監督を行わなければならないとされている(同法12条)。これを受けて,Z株式会社においても,同法上の媒介業者等に当たる代理店に対し,「統一審査基準」と題する文書を配布するなどして,携帯電話機の販売に際しては本人確認を徹底するよう指導し,契約約款にも,購入申込者につき本人確認ができないときは申込みを承諾しないこ- 8 -とがある旨,さらに,携帯電話機を譲り受けようとする者につき本人確認ができないときは譲渡の承諾(承認)をしない旨の定めを置いていたことは,関係証拠により明らかである。 (ウ) このような法律上の規制措置及びこれを受けての携帯音声通信事業者であるZ株式会社における取扱状況等を踏まえてみれば,本人確認の求めに応じて自己名義の身分証を提示するなどして,自己名義で携帯電話機(プリペイド式携帯電話機を含む。)の購入及びこれに伴う携帯音声通信サービス契約の締結(この2つをまとめて「携帯電話機の購入等」ともいう。)を申し込む行為は,申込みをした本人が,携帯音声通信事業者との契約及びその前提となる法令に従い,購入する携帯電話機を第三者に無断譲渡することなく自ら利用する意思であること,要するに,自らの責任において正当に利用する意思であることを表しているものと理解すべきである。既に述べたところから明らかなように,携帯電話機を購入した契約者が,これを第三者に無断譲渡することなく自ら利用すべきことは,契約上も法令上も当然の前提として要請されているのであって,関係証拠に照らせば,このことは本件当時既に周知の事実となっていたものとみてよいといえる。また,そもそも,携帯 ことなく自ら利用すべきことは,契約上も法令上も当然の前提として要請されているのであって,関係証拠に照らせば,このことは本件当時既に周知の事実となっていたものとみてよいといえる。また,そもそも,携帯電話機の購入等を申し込む行為は,携帯音声通信役務の提供に係る継続的な契約関係を成立させることを目的とするものであることからしても,上述した理解が経験則等に合致した通常の見方であるといえる。 そして,自己名義で携帯電話機の購入等を申し込んだ者が,真実,購入する携帯電話機を第三者に無断譲渡することなく自ら利用する意思であるのかどうか,換言すれば,本当は第三者に無断譲渡する意図であるのに,その意図を秘しているのかどうかという点は,申込みを受けた携帯音声通信事業者あるいはその代理店が携帯電話機を販売交付するかどうかを決する上で,その判断の基礎となる重要な事項といえる。関係証拠によれば,本件当時既にZ株式会社においても,自己名義で携帯- 9 -電話機の購入等を申し込んだ者が第三者に無断譲渡する意図であることが分かっていれば,その申込みに応じて携帯電話機を販売交付することはしないという取扱いをしていたことが認められる(なお,a 店長の認識については後述するが,上記認定を直ちに左右するものではない。)。 以上検討したところからすると,第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名義で携帯電話機の購入等を申し込む行為は,その行為自体が,交付される携帯電話機を自ら利用するように装うものとして,詐欺罪にいう人を欺く行為つまり欺罔行為に当たると解することができる。 (エ) これに対し,原判決は,携帯電話機を第三者に無断譲渡することを禁止した携帯電話不正利用防止法の規定が契約者の親族等に対する譲渡を禁止対象から除外しており,また,個人的・一時的な貸与も禁止されていない これに対し,原判決は,携帯電話機を第三者に無断譲渡することを禁止した携帯電話不正利用防止法の規定が契約者の親族等に対する譲渡を禁止対象から除外しており,また,個人的・一時的な貸与も禁止されていないこと,さらに,Z株式会社においては,プリペイド式携帯電話機を1人の名義で5台まで販売することを許容し,しかも,複数台同時に購入しようとする客に対しその理由を聞くよう指導することもしていないことなどを指摘して,プリペイド式携帯電話機を契約者本人が利用すべきことは,契約上も法令上も当然の前提として要請されているとは到底いえない旨説示しているが,是認することができない。 すなわち,携帯電話不正利用防止法が,親族等に対する譲渡や個人的・一時的な貸与を行為の性質に鑑みて規制せず,これらを行うかどうかを契約者本人の責任に委ねていることは確かにそのとおりである。しかしながら,既に検討したとおり,携帯電話機を購入した契約者において,これを第三者に無断譲渡することなく自ら利用すべきことが契約上も法令上も当然の前提として要請されているというのは,要するに,購入した携帯電話機を自らの責任において正当に利用すべきことが要請されているとの趣旨であるから,親族等に対する譲渡や個人的・一時的な貸与は,この要請に何ら反するものではない。また,プリペイド式携帯電話機についてのみ- 10 -以上と異なる理解をすべき理由も特に見当たらないといえる。 なお,原判決が指摘するとおり,関係証拠によれば,Z株式会社では,本件当時プリペイド式携帯電話機を1人当たり5台まで(ただし,同時申込みは2台まで)販売することを許容していたこと,また,代理店に対しても,この台数制限の範囲内で販売する限り,複数台の携帯電話機の購入等を同時に申し込んだ者にその理由等を聞くよう指導していなかったことが認 台まで)販売することを許容していたこと,また,代理店に対しても,この台数制限の範囲内で販売する限り,複数台の携帯電話機の購入等を同時に申し込んだ者にその理由等を聞くよう指導していなかったことが認められる。しかし,このような取扱いは,携帯電話機を複数台利用したいとの正当な需要が存在するであろうことも考慮しつつ,自己名義で購入した大量の携帯電話機を直ちに転売するなどの不正行為がなされるのを未然に防止するための自主的な規制を設けたものと解されるところである(なお,関係証拠によれば,Z株式会社では,その後プリペイド式携帯電話機の販売台数制限を強化し,1人当たり2台を上限としていることが認められる。)。そうすると,携帯音声通信事業者においてこのような取扱いをしていることからみても,やはり携帯電話機を購入した契約者本人が自らこれを利用すべきことは当然の前提として要請されているといえるのであり,原判決の指摘は当たらないというべきである。 イ被告人両名が本件各公訴事実記載の欺罔行為をした事実を認定できることについて以上の理解を前提として,本件の事実関係を具体的にみていくと,以下に述べるとおり,被告人両名が本件各公訴事実記載の欺罔行為をした事実は優に認められる。 (ア) まず,関係証拠によれば,被告人両名が,いずれも交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に無断譲渡する意図であったことは,優に認めることができる。この点については,原判決も,被告人荒井の原審公判供述等により,被告人荒井が,知人からプリペイド式携帯電話機を最低でも10台用意するよう頼まれてこ- 11 -れを了承し,被告人山口ほか1名に協力を求めたとの事実を,前提事実として認定説示しているところである。被告人山口は,原審公判において,第三者に無断譲渡する意図があったことを否認し てこ- 11 -れを了承し,被告人山口ほか1名に協力を求めたとの事実を,前提事実として認定説示しているところである。被告人山口は,原審公判において,第三者に無断譲渡する意図があったことを否認し,自分で使用するために購入しただけである旨弁解しているが,被告人荒井の供述に反する上記弁解が信用できないことも原判決が説示するとおりである。現に,被告人山口が交付されたプリペイド式携帯電話機全ての処分を直ちに被告人荒井に委ねていることなど,証拠上明らかな事実経過に照らしてみても,被告人山口が被告人荒井とともに交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に無断譲渡する意図を有していたことは優に認定できる。なお,本件当時被告人荒井と同じ暴力団に所属していたb(被告人荒井が原審公判で協力を求めたと供述していたもう1人の人物。ただし,被告人荒井自身はb の名前を出していなかった。)も,当審公判において,被告人荒井から協力してほしい旨頼まれて自己名義でプリペイド式携帯電話機を2台購入したこと,かつて同じ暴力団に所属していた先輩(d)にも協力を依頼して被告人荒井を紹介したこと,この話は被告人荒井が誰かに頼まれて自分に持ち掛けてきたことなど,上記認定に沿う証言をしている。 (イ) さらに,関係証拠によれば,被告人両名が,それぞれ携帯電話機の購入等を申し込むに際し,第三者に無断譲渡する意図を秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機を自ら利用するように装ったとの事実も,優に認めることができる。 すなわち,関係証拠によれば,被告人両名は,本件各公訴事実記載の日時場所において,a 店長に対し直接あるいは他の店員を介して,それぞれ携帯電話機の購入等を申し込んだ際,本人確認の求めに応じて自己名義の身分証(被告人荒井においては住民基本台帳カード,被告人山口においては運転免 て,a 店長に対し直接あるいは他の店員を介して,それぞれ携帯電話機の購入等を申し込んだ際,本人確認の求めに応じて自己名義の身分証(被告人荒井においては住民基本台帳カード,被告人山口においては運転免許証)をそれぞれ提示した上で,「総合確認書」(利用時注意事項を含む各種注意事項の内容を確認し,了承した旨を記載した書面)にそれぞれ署名し,契約申込書をそれぞれ自己名義で作成- 12 -した事実が認められる。なお,この関係でも,原判決は,以上の事実と概ね同様の事実を前提事実として認定説示している。 以上のように本人確認の求めに応じて自己名義の身分証を提示するなどして自己名義で携帯電話機の購入等を申し込んだ被告人両名の行為は,既に検討したとおり,申込みをした本人が,携帯音声通信事業者との契約及びその前提となる法令に従い,購入する携帯電話機を第三者に無断譲渡することなく自ら利用する意思であること,要するに,自らの責任において正当に利用する意思であることを表しているものと理解すべきである。そうすると,被告人両名が,いずれも交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に無断譲渡する意図であったのに,このように自己名義で携帯電話機の購入等を申し込んだとの事実それ自体から,第三者に無断譲渡する意図を秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機を自ら利用するように装ったとの事実も,優に認めることができるというべきである。 (ウ) これに対し,原判決は,被告人両名が,購入するプリペイド式携帯電話機を自ら利用するかのように振る舞っていたとは認められない旨判断しているが,その理由として,まず,同一店舗から2日間で1人4台ものプリペイド式携帯電話機を購入するという行為自体,契約者本人以外の者の利用を示唆する行為といえる旨を説示している。 このうち「契約者本人以外の の理由として,まず,同一店舗から2日間で1人4台ものプリペイド式携帯電話機を購入するという行為自体,契約者本人以外の者の利用を示唆する行為といえる旨を説示している。 このうち「契約者本人以外の者の利用を示唆する行為」との説示部分が意味するところは必ずしも明確ではないが,同じ店舗から2日間で1人4台のプリペイド式携帯電話機を購入するなどした被告人両名の行為を全体としてみれば,本当に自ら利用する意思であるのかどうかについて,行為の相手方から怪しまれかねない面があったことは確かである。そして,この点は,行為の相手方であるa 店長において本件各公訴事実記載のとおり誤信したとの事実を認定できるかどうか,つまり,a店長の認識の問題に深く関わることも確かである。すなわち,関係証拠によれば,- 13 -a 店長は,被告人両名及びb に対し2日間で合計10台のプリペイド式携帯電話機を販売交付した事実が認められる。a 店長は,原審公判において,被告人ら3名が皆怖そうな人たちで,水商売とかを経営していて,その店のスタッフに貸すために購入するのではないかと思っていた旨証言する一方で,被告人らが第三者に譲渡するつもりであると分かっていたら,販売はしなかった旨証言している(当審公判における証言も同旨である。)。このa 店長の証言について,原判決は,そのまま信用することができない旨を判断説示しているところ,所論が指摘するところを逐一検討しても,この点に関する原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理であるとまではいえない。要するに,a 店長は,被告人両名の意図に薄々感づいていながら販売交付したのではないかとの合理的疑いは残るといえる。 この点について更に補足すると,関係証拠によれば,a 店長は,1日目に被告人両名及びb に対してそれぞれ2台ずつ,2日目に 々感づいていながら販売交付したのではないかとの合理的疑いは残るといえる。 この点について更に補足すると,関係証拠によれば,a 店長は,1日目に被告人両名及びb に対してそれぞれ2台ずつ,2日目に被告人両名に対してそれぞれ2台ずつ,合計10台のプリペイド式携帯電話機を販売していることに加え,1日目に店員のc を介して合計6台のプリペイド式携帯電話機を被告人山口に一括交付した時点で,被告人ら3名が,それぞれ自己の用途に使用する目的でこれらを購入しているのではなく,互いに意思を通じ合い,何らかの目的をもって,これらをまとめ買いしているのであろうとの認識を有していたことが認められる。a 店長は,被告人らが,経営している店のスタッフに貸すのではないかという可能性しか考えていなかったとして,その目的が正当なものであると信じていたかのように証言しているが,そのように限定して考え,無関係の第三者に無断譲渡する目的を有している可能性を考えなかったことについて合理的理由が説明されているとはいえない。なお,a 店長は,当審公判に至り,1日目の時点では,被告人ら3名がそれぞれ自分で使うと思っていた旨証言するが,a 店長自身の従前の供述内容等に照らして,その信用性には疑問がある。その他,所論が種々指摘するところを検討しても,この- 14 -点に関するa 店長の証言をそのまま信用することはできないとした原判決の判断が不合理であるとまではいえない。このようにみてくると,a 店長は,被告人両名が第三者に無断譲渡する意図であることに薄々感づいていながら,たとえそうであったとしても構わないとの意思でプリペイド式携帯電話機を販売交付したのではないかとの合理的疑いを払拭できない。つまり,a 店長が被告人両名にプリペイド式携帯電話機を販売交付したのは錯誤によるものであると としても構わないとの意思でプリペイド式携帯電話機を販売交付したのではないかとの合理的疑いを払拭できない。つまり,a 店長が被告人両名にプリペイド式携帯電話機を販売交付したのは錯誤によるものであると認めるには合理的疑いが残るといえる。 しかしながら,このことは,a 店長において被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信したとの事実を認定できない,つまり,詐欺既遂罪の成立を肯認できないということを意味するにとどまり,被告人両名が欺罔行為をした事実を認定できるかどうかの判断を直ちに左右するものとはいえない。すなわち,被告人両名は,前述のとおり,本人確認の求めに応じてそれぞれ自己名義の身分証を提示するなどした上で,それぞれ自己名義で携帯電話機の購入等を申し込んでいることに加えて,その申込みに係る携帯電話機の台数をみても,前述したZ株式会社における販売台数制限の範囲内で,1日にそれぞれ2台ずつ,2日間でそれぞれ合計4台ずつの申込みをしたにとどまることなどに照らすと,被告人両名の行為により,携帯音声通信事業者あるいはその代理店の担当者が,正当な携帯電話機の購入等の申込みであると誤信する具体的危険性は十分にあったと認められ,その危険性すらなかったとみるのは,経験則等に照らして不合理といわざるを得ない。したがって,被告人両名の行為は,第三者に無断譲渡する意図を秘し,交付される携帯電話機を自ら利用するように装ったものであるとみて,これが欺罔行為に当たると認定することに合理的疑いを差し挟む余地はないといえる。 そうすると,原判決が,a 店長の認識の問題について,a 店長は本件各公訴事実- 15 -記載のとおり誤信したとは認められない旨を判断するにとどまらず,被告人両名の行為は「契約者本人以外の る。 そうすると,原判決が,a 店長の認識の問題について,a 店長は本件各公訴事実- 15 -記載のとおり誤信したとは認められない旨を判断するにとどまらず,被告人両名の行為は「契約者本人以外の者の利用を示唆する行為」といえるなどとして,被告人両名の欺罔行為自体が認められないと判断したのは,明らかに行き過ぎであって,経験則等に照らしてみても不合理といわざるを得ず,是認できない。 (エ) 原判決は,また,被告人荒井が,購入する携帯電話機の色を決めるに際し,店員c に対し「自分で使うんじゃないから別に何色でもいい。」と言ったとの事実を認定し,被告人荒井には,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に利用させることを前提とする言動すらあった旨判断している。この判断の前提となる事実認定に関し,原判決は,被告人荒井の供述に反する証拠が見当たらないことを理由に,被告人荒井の供述どおりの発言があったと認定するほかないとしているが,この原判決の認定も是認できない。 すなわち,この点につき,被告人荒井は,原審公判において,第三者に譲渡する目的で携帯電話機を購入することが違法であるとは知らなかったので,罪の意識は全くなかった旨弁解するとともに,女性店員から携帯電話機の色は何色がいいかと聞かれた際に,「自分で使うんじゃないから別に何色でもいい。」と言った旨供述している。しかし,被告人荒井自身が原審公判で供述するところをみても,被告人荒井は,自分たちの名義で調達した携帯電話機を知人に渡したら,その後誰の手に渡って何に使われるか分からず,振り込め詐欺などに悪用されることもあるのではないかと不安を感じたことから,いったんは断ったものの,その知人に対する義理もあったので最終的に調達役を引き受けたというのであり,また,当初は協力するのを渋っていた被告人山口に れることもあるのではないかと不安を感じたことから,いったんは断ったものの,その知人に対する義理もあったので最終的に調達役を引き受けたというのであり,また,当初は協力するのを渋っていた被告人山口に対しても,小遣いをやるからと言ってその了解を得たというのである。そして,被告人荒井は,原審公判において,携帯電話機の調達を自分に依頼してきた知人について,「自分と同じような立場」つまり暴力団関係者であるとだけ述べて,その氏名等を明かさず,また,自ら協力を依頼したb につい- 16 -ても,その氏名等を明かさなかった。こうした被告人荒井自身の供述内容及び供述状況に照らせば,被告人荒井が,第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名義で携帯電話機の購入等を申し込んだ自分たちの行為の違法性を認識していたことは明らかである(なお,b は,当審公判において,被告人荒井に協力して自己名義で2台を調達したことで1台当たり約5000円の利益を得た旨証言しており,こうした利得に結び付く行為であるということも,その行為の違法性について被告人荒井が認識していたことを裏付ける事情といえる。)。このように,自分たちの行為の違法性を認識しながら,その行為に及ぶ際に,敢えてその場で聞かれもしないのに取って付けたように「自分で使うんじゃない」などと発言するというのは,およそ考え難いところであり,このような発言をしたことを殊更強調する被告人荒井の供述は,甚だ不自然というほかない。被告人山口が供述するところやa 店長が供述するところをみても,この点に関する被告人荒井の供述に沿う内容は見当たらない。そうすると,この点に関する被告人荒井の供述は,信用性に欠けるものとみるほかないのに,その供述に反する証拠が見当たらないとの理由により,その供述どおりの発言があったと認定した原判決の判断は, ない。そうすると,この点に関する被告人荒井の供述は,信用性に欠けるものとみるほかないのに,その供述に反する証拠が見当たらないとの理由により,その供述どおりの発言があったと認定した原判決の判断は,経験則等に照らして不合理といわざるを得ず,是認できない。 なお,b も,当審公判において,被告人荒井の上記供述とよく似た趣旨の証言,すなわち,被告人山口とともに携帯電話機の購入等の申込みをする際に,a 店長らに「俺らが使うんじゃないから一番安いやつでいいんだ。」という話をした旨の証言をしている。しかし,このb の証言も,被告人荒井の上記供述と同様,信用性に欠けるものとみるほかない。 (オ) 以上のとおりであって,被告人両名が本件各公訴事実記載の欺罔行為をした事実は優に認められるのに,これが認められないとした原判決の判断は経験則等に照らして不合理といわざるを得ず,是認できない。 - 17 - 4 結論よって,原判決には,被告人両名が本件各公訴事実記載の欺罔行為をした事実を認定しなかった点で事実の誤認があり,この事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,この限度で論旨は理由がある。 第2 破棄自判そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して被告事件について更に判決する。 (罪となるべき事実)被告人両名は,携帯電話機販売店からプリペイド式携帯電話機をだまし取ろうと考え,共謀の上,第1 平成23年6月4日午後2時55分頃から同日午後6時26分頃までの間,東京都新宿区(以下省略)株式会社X新宿店所在の株式会社Y新宿店において,同店店長a に対し,真実は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図で 株式会社X新宿店所在の株式会社Y新宿店において,同店店長a に対し,真実は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機をそれぞれ自ら利用するように装って,被告人荒井が自己を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方を,被告人山口が自己を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方をそれぞれ申し込み,前記a をその旨誤信させて,プリペイド式携帯電話機をだまし取ろうとしたが,前記a において,被告人両名の意図に薄々感づき,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信するに至らなかったため,その目的を遂げなかった第2 平成23年6月5日午後0時32分頃から同日午後3時10分頃までの間,- 18 -前同所において,前記a に対し,真実は,あらかじめ携帯音声通信事業者であるZ株式会社の承諾を得ないで,交付されるプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘し,交付されるプリペイド式携帯電話機をそれぞれ自ら利用するように装って,被告人荒井が自己を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方を,被告人山口が自己を契約者とする通信サービス契約の締結方及びプリペイド式携帯電話機2台の購入方をそれぞれ申し込み,前記a をその旨誤信させて,プリペイド式携帯電話機をだまし取ろうとしたが,前記a において,被告人両名の意図に薄々感づき,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信するに至らなかったため,その目的を ろうとしたが,前記a において,被告人両名の意図に薄々感づき,被告人両名が購入するプリペイド式携帯電話機を第三者に譲渡することなくそれぞれ自ら利用するものと誤信するに至らなかったため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)省略(累犯前科)被告人荒井は,(1)平成14年11月1日東京地方裁判所で覚せい剤取締法違反罪により懲役1年6月(3年間執行猶予,平成16年4月13日その猶予取消し)に処せられ,(2)平成16年3月19日東京地方裁判所で覚せい剤取締法違反,傷害,住居侵入,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺罪により懲役3年6月に処せられ,平成19年3月11日(2)の刑の執行を,平成20年9月11日(1)の刑の執行をそれぞれ受け終わり,(3)その後犯した窃盗罪により平成21年10月15日さいたま地方裁判所熊谷支部で懲役1年8月に処せられ,平成23年5月7日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は,検察事務官作成の前科調書(原審乙A5)及び(3)の前科に係る判決書謄本(原審乙A7)によって認める。 - 19 -被告人山口は,(1)平成19年9月10日水戸地方裁判所下妻支部で傷害罪により懲役8月(4年間執行猶予,平成21年5月13日その猶予取消し)に処せられ,(2)平成21年4月28日水戸地方裁判所下妻支部で建造物侵入罪により懲役8月に処せられ,同年11月28日(2)の刑の執行を,平成22年6月8日(1)の刑の執行をそれぞれ受け終わったものであって,これらの事実は,検察事務官作成の前科調書(原審乙B6)によって認める。 (法令の適用)被告人両名の判示各所為はいずれも刑法60条,250条,246条1項に該当するところ,被告人両名にはそれぞれ前記の前科があるので,被告人荒井については同法59条 よって認める。 (法令の適用)被告人両名の判示各所為はいずれも刑法60条,250条,246条1項に該当するところ,被告人両名にはそれぞれ前記の前科があるので,被告人荒井については同法59条,56条1項,57条により判示各罪の刑にそれぞれ3犯の加重をし,被告人山口については同法56条1項,57条により判示各罪の刑にそれぞれ再犯の加重をし,被告人両名の判示各罪はそれぞれ同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条によりいずれも犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人両名をそれぞれ懲役1年6月に処し,被告人両名に対し,同法21条を適用して原審における未決勾留日数中各180日をそれぞれその刑に算入し,原審及び当審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させないこととする。 (量刑の理由)被告人両名は,それぞれ判示のとおりの累犯前科を有するのに,出所後短期間で本件各犯行に及んでいる。犯行の経緯,動機に酌むべきものはない。また,本件のような不正な手段で調達した携帯電話機を利用する振り込め詐欺等の悪質な犯罪が後を絶たないことに鑑みると,被告人両名の行為は,一般予防の見地からも厳しい非難を免れない。その他,本件各犯行当時の生活状況等に照らしてみても,被告人両名の刑事責任は軽くないというべきである。 - 20 -他方で,本件各犯行がいずれも未遂にとどまることなども十分考慮して,被告人両名に対し,主文のとおりの刑を量定した。 よって,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官小川正持裁判官任介辰哉裁判官小川賢司) 小川正持裁判官 任介辰哉裁判官 小川賢司
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