【DRY-RUN】主 文 一、 原判決中、被告人A、同B、同C、同D、同E、同Fに関する部 分を破棄する。 二、 被告人Aを懲役一年四月に処する。 原審における未決勾留日数中二五〇日
主文 一、原判決中、被告人A、同B、同C、同D、同E、同Fに関する部分を破棄する。 二、被告人Aを懲役一年四月に処する。原審における未決勾留日数中二五〇日を右の本刑に算入する。この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 三、被告人Bを懲役一年六月に処する。原審における未決勾留日数中三二〇日を右の本刑に算入する。 四、被告人Cを懲役一年四月に処する。原審における未決勾留日数中二四〇日を右の本刑に算入する。この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 五、被告人Dを懲役一年四月に処する。原審における未決勾留日数中二〇〇日を右の本刑に算入する。この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 六、被告人Eを懲役一年二月に処する。原審における未決勾留日数中二一〇日を右の本刑に算入する。この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 七、被告人Fを懲役一年に処する。原審における未決勾留日数中二一〇日を右の本刑に算入する。 八、被告人G、同Hの本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人ら及び弁護人らのぞれそれ連名による作成名義の各控訴趣意書並びに主任弁護人太田惺及び弁護人野村政幸作成の各控訴趣意補充書に記載してあるとおりであり(ただし、弁護人らの控訴趣意第二点は撤回した。)、弁護人の控訴趣意に対する答弁は、検察官沖永裕作成の答弁書に記載されたとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、つぎのとおり判断する。弁護人らの控訴趣意第一点及び第二点並びに被告人らの控訴趣意第二点ないし第 察官沖永裕作成の答弁書に記載されたとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、つぎのとおり判断する。 弁護人らの控訴趣意第一点及び第二点並びに被告人らの控訴趣意第二点ないし第五点について。 論旨は要するに、(1)原審は、国選弁護人が辞任届を提出し、公判期日に出廷しないままで実質審理をした点において、憲法三七条三項、刑訴法三六条の解釈を誤り、被告人らに弁護人の実質的かつ有効な弁護を受ける権利を失わせた重大な訴訟手続の法令違反がある。(2)仮に、国選弁護人の地位が消滅するには裁判所の解任行為が必要であると解するとしても、本件において原審が辞任届を提出している国選弁護人を解任しなかつたのは違法である。(3)また原審が、辞任届を提出した国選弁護人について辞任理由を調査し、被告人に不利益な事実を国選弁護人に陳述させたことは違法である。以上の各点において、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があるというのである。 そこで記録を調査して検討すると、原審において選任せられたI、J、K及びLの各国選弁護人は、昭和四六年三月一五日の第五回公判期日を経過した同月二九日に原審に対し辞任届を提出したのであるが、原審は辞任の理由について事実の取調をしたうえ、右の辞任には正当な理由が認められないので解任しない旨を弁護人及び被告人らに告知し、同年四月一五日の第六回公判期日以後は、弁護人不出廷のまま実質審理を行ない、判決に至つたこと、並びに前記の国選弁護人が辞任届を提出するに至つた前後の原審における審理の経過は、原判決が「本件の審理経過と国選弁護人の不出頭問題について」と題する部分で説示しているとおりであることが認められる。 <要旨第一>ところで、現行制度の下においては、裁判所によつて選任せられた国選弁護人は、裁判 の審理経過と国選弁護人の不出頭問題について」と題する部分で説示しているとおりであることが認められる。 <要旨第一>ところで、現行制度の下においては、裁判所によつて選任せられた国選弁護人は、裁判所の解任行為によら</要旨第一>なければ、原則としてその地位が消滅することはなく、また正当な理由かなければ辞任の申出をすることができないものであつて(弁護士法二四条参照)、しかもその正当理由の有無の判断は、選解任権を有する裁判所がすべきものと解せられる。所論は、国選弁護人の地位は、被告人のために結ばれる裁判所と弁護人との間の公法上の契約によつて発生すると解すべきであり、その地位の消滅もまた原則として弁護人の辞任によつて発生し、正当理由の有無の判断は当該弁護人においてすべきものであつて、裁判所が立入つて調査すべきものではない旨主張するが、いずれも独自の見解であつで採用てきない。 そして、原審が辞任届を提出した前記の各国選弁護人につき辞任の理由について調査した結果及び記録によつて認められる本件の審理経過等を総合すれば次のことが認められる。すなわち、原審において、被告人らはあくまで統一公判ないしこれに代るべき形態の審理方式をとることを裁判所に要求し、原審のとつたグループ別審理をはじめ公判運営上の措置に服しようとせず、弁護人らの弁護活動に対しても不満をいだいて不信頼の意思を表明した。それで右弁護人らとしては、被告人らの右の要求を実現させえないのになおその任に留まるならば、被告人らの希望しない形における裁判の進行に協力することになるので、それでは結局被告人に対する敵対行為になるとして、裁判所に対して辞任を申出たのであつた。 しかしながら、審理方式等の決定は、元来裁判所の権限に属することがらであり、その他の訴訟手続についても、裁判所の判断が示された以上 する敵対行為になるとして、裁判所に対して辞任を申出たのであつた。 しかしながら、審理方式等の決定は、元来裁判所の権限に属することがらであり、その他の訴訟手続についても、裁判所の判断が示された以上、当事者に不満があつても、法律上の不服申立方法によらない限り、それに従つて次の手続に進まなければならないことは、いうまでもないところである。ところが、記録によれば、原審がこの点に関し再三にわたつて被告人らに注意を与えたにも拘らず、被告人らは、法廷において際限もなく同趣旨の議論をくりかえし、また国選弁護人らに対しても、原審裁判長の訴訟指揮に従つて法廷に留まつた弁護人らの行動等を微温的であるとして強く非難し、その結果国選弁護人を辞任せざるを得ない状況に追い込み、原審がとつたグループ別審理方式及びその他の公判運営上の措置を不満として、そのような形態による審理をあくまで阻止しようとしたことが認められる。 以上のような諸事情にかんがみると、前記国選弁護人らの辞任の申出に正当な理由が認められないとしてこれを解任しなかつた原審の措置に、所論のような違法があると認めることはできない。また国選弁護人が辞任届を提出し、出廷しなかつたのは、被告人らの責に帰すべき事由によるもので、それによつて生ずる不利益は被告人らがみずから甘受せざるを得ないものとして、弁護人不出廷のまま実質審理を行ない判決するに至つた原審の措置は、必要的弁護事件でない本件においては、やむをえなかつたものというほかはない。すなわち、被告人らが、原審のとつたグループ別審理方式をはじめその他の公判運営上の措置を不満として、そのような形態による裁判の進行をあくまで阻止しようとして、国選弁護人らを辞任せざるを得ない状況に追い込み、その結果弁護人らが出廷しなくなつたとしても、それは被告人らがみずがら望んだと 不満として、そのような形態による裁判の進行をあくまで阻止しようとして、国選弁護人らを辞任せざるを得ない状況に追い込み、その結果弁護人らが出廷しなくなつたとしても、それは被告人らがみずがら望んだところと言わざるをえない。 したがつて、このような事情の下において、原審が弁護人不出廷のままで審理判決したからといつて、被告人の弁護人依頼権の保障を無視した措置があるということはできない。 記録を精査しても、所論のように、原審が強権的な訴訟指揮をし、そのために国選弁護人が辞任するに至つたものとは認めることができず、所論にかんがみ、さらに記録を検討し、当審における事実取調の結果を併せ検討しても、右の結論を覆えすことはできない。 なお、国選弁護人のした辞任の申出に正当な理由があるか否かは、裁判所において判断すべきものである以上、裁判所がその辞任理由について調査をすることはその職務に属するところであり、また必要に応じて、辞任の申出をした国選弁護人から直接その辞任理由を聴取しうることも当然のことである。記録によれば、原審が国選弁護人に直接面接して行つた事実の取調は、右の目的のために必要な限度において、事件の実体に関しない事項について行なわれたものであり、国選弁護人が職務上知り得た事件の秘密等については何ら触れなかつたことが明らかである。また右の事実取調の結果判明した事情を原審が量刑の資料とした形跡も認められないから、原審がした右の事実取調に、所論のような違法があるということはできない。 以上のいずれの点においても、原審のとつた措置に所論のような違憲、違法の点があるとは認めることができない。そこで論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第三点について。 論旨は要するに、原審は、私選弁護人がいずれも辞任届を提出し、かつ被告人らから国選弁護人の があるとは認めることができない。そこで論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第三点について。 論旨は要するに、原審は、私選弁護人がいずれも辞任届を提出し、かつ被告人らから国選弁護人の選任が請求されていたにも拘らず、第一回公判期日に関する限り右辞任は効力がないとして、弁護人不在のまま開廷し、審理を行なつた点において、憲法三七条三項、刑訴法三六条に違反し、被告人らをして弁護人の実質的かつ有効な弁護を受ける権利を失わせた重大な訴訟手続の法令違反があり、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 そこで検討すると、本件においては、当初被告人全員につき三名の私選弁護人(M、N、O)が選任され、なお一部の被告人に対しP及びQの各私選弁護人が選任せられていたところ、昭和四五年六月一二日の第一回公判期日の直前である同月一〇日から右公判期日の当日までに、前記五名の私選弁護人が特段の理由を示すことなく相次いで全員辞任届を提出し、他方被告人らは、右公判期日の直前日である同月一一日(一部の被告人は同月一二日)に国選弁護人選任請求書を提出したのである。これに対して原審は、原判決中「本件の審理経過と国選弁護人の不出頭問題について」と題する説示部分の三項に掲げているような理由によつて、公判期日が切迫しているのに正当な理由なく行なつた弁護人の辞任は、右公判期日が終了するまではその効力を生じないものと解して、弁護人不出廷のまま第一回公判期日を開き、人定質問に代るべき手続を行ない、なお起訴状朗読までの手続を行なつたことが記録上明らかである。 <要旨第二>ところで、公判期日が切迫した時期において、正当な理由がなく弁護人が辞任するようなことは、訴訟の進</要旨第二>行に著しい支障を来たし、訴訟関係人に多大の迷惑を及ぼすこと等を考えれば、弁 <要旨第二>ところで、公判期日が切迫した時期において、正当な理由がなく弁護人が辞任するようなことは、訴訟の進</要旨第二>行に著しい支障を来たし、訴訟関係人に多大の迷惑を及ぼすこと等を考えれば、弁護人の職責上許されるべきことではない。しかし、そうであるからといつて、弁護人不在のまま公判審理を行なうことが訴訟法上許されるか否かは、被告人の弁護人選任権の観点から、また別個の考察を必要とすることである。すなわち、右の辞任が、訴訟の進行を妨げるためにされたもので、かつその弁護人を選任した被告人の責に帰すべき事由によるものといえるかどうか、弁護人不在による訴訟上の不利益を被告人に帰せしめてよいかどうか、その公判期日にはいかなる手続を行なおうとするのか等について慎重に検討したうえで、決定しなければならない。 ところが本件においては、記録によれば、弁護人らが前記のように第一回公判期日が切迫した時期に辞任したことは、被告人らの主張する審理方式に関するいわゆる統一公判の要求を貫徹し、原審が行なおうとしていたグループ別の審理を阻止するために、被告人らと通じてとつた手段ではないかと見られてもやむを得ない事情が認められる。そればかりでなく、本件が必要的弁護事件ではないこと、弁護人不在のままで行われた公判手続か、人定質問に代るべき手続と起訴状の朗読だけであり、実質審理は行われなかつたこと、さらに国選弁護人が後に選任せられ、その後の公判期日に裁判官の交代による公判手続の更新が行われていることが認められるので、これ等の事情をあわせ考えると、原審の手続には、所論の指摘する判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとは認めることができない。 それで論旨は、理由がない。 弁護人らの控訴趣意第四点及び被告人らの控訴趣意第一点について。 論旨は要するに、原審 決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとは認めることができない。 それで論旨は、理由がない。 弁護人らの控訴趣意第四点及び被告人らの控訴趣意第一点について。 論旨は要するに、原審は、被告人ら及び原審弁護人らの統一公判及び統一折衝の要求を無視して審理判決をした点において、憲法三一条、三二条、三七条一項、二項、刑訴法一条、三一三条一項に違反し、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 そこで記録を調査して検討すると、被告人らを含むいわゆる昭和四四年R事件で起訴された五百数十名は、いわゆる統一弁護団の三名の私選弁護人を選任し、統一公判を要望していたが、公訴を受理した東京地方裁判所は、起訴状の訴因からみても、時と場所及び対象を異にし、内容も多岐にわたるR事件の特殊性といわゆるS事件等の経験等にかんがみ、適正規模によるグループ別審理が相当であるとの見地から、裁定合議委員会において、検察官及び一部弁護人から提出された案を参照のうえ、起訴状記載の犯行時間、場所、職業を主な基準として、立案作成したうえ、裁判官会議の議を経たグループ分けにより、事件を各部に配点したこと、及び原審は、このようにして配点された被告人ら八名のほか原審相被告人六名に対する事件を併合して審理し、判決(二名は分離)したことが認められる。 そして現行刑法の個人責任の原理や刑事裁判の制度目的のほか、裁判所の人的物的諸要素等を勘案すると、被告人らが要求したいわゆる統一公判を排し、前記のような見地から適正規模によるグループ別審理が適当であるとして配点された被告事件につき併合審判した原審の手続は相当であつて、刑訴法三一三条一項による合理的裁量の範囲を逸脱した違法があるということはできず、その他所論のような違憲、違法を認めるべき点は何ら存しない。 ま 告事件につき併合審判した原審の手続は相当であつて、刑訴法三一三条一項による合理的裁量の範囲を逸脱した違法があるということはできず、その他所論のような違憲、違法を認めるべき点は何ら存しない。 また記録によれば、被告人らのために選任された国選弁護人は、他のグループの国選弁護人らとともに、裁判所に対し、審理方式等に関し、いわゆる代表者法廷案なるものを提示して統一折衝を求め、裁判官の有志との数回にわたる協議が行われたけれども、弁護側が検察官側の立証に先んじて被告事件の総論についての立証を行なうことを主張したため、訴訟法の建前上採択し難いとの意見が裁判所側に強く、原審も同様の見解のもとに右提案を拒否したことが認められる。しかし、原審が右のような理由によつて、弁護人側の右提案を拒否したことに、所論のような違憲、違法の点があることは認めることができない。 さらに記録によれば、被告人ら及び原審弁護人らは、しばしば原審に対し、審理方式や訴訟指揮権及び法廷警察権の行使等に関して、いわゆる事前折衝を求めたが、原審はその申入れに応じなかつたことが認められる。所論は、大量起訴にかかる同一事件の場合は、審理方式等に関して統一折衝を行なうことが慣行となつていたのに、原審はこれを無視したというのであるが、前記のような事項は、本来、訴訟の運営に責任を負う裁判所がその権限により決すべきことがらであるから、被告人、弁護人の意見を聴くことは格別、被告人、弁護人との折衝によつて決めるべき性質のものではない。したがつて、原審が前記のような事項についての事前折衝の申入れに応じなかつたからといつて、その措置に所論のような違憲、違法があるということはできない。 したがつて論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第五点について。 論旨は要するに、原審は、被告人ら不在のま からといつて、その措置に所論のような違憲、違法があるということはできない。 したがつて論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第五点について。 論旨は要するに、原審は、被告人ら不在のままで審理、判決をした点において、憲法三一条、三二条、三七条一項、二項、刑訴法二八六条に違反し、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 しかしながら、記録によれば、審理方式その他の問題に関し、原審が訴訟関係人の意見をきいたうえ、一定の方針ないし判断を示したのに、被告人らはこれに従わず、勝手な発言をやめようとしなかつたため、裁判長が被告人らに対し発言を禁止してもなおこれに従わない場合に、法廷の秩序を維持するため、被告人に退廷を命じ、訴訟の進行をはかつたのであつて、原審がことさらに発言禁止命令や退廷命令を発し、被告人らの防禦権を無視して被告人不在のまま審理を強行したと見ることはできない。 このような経過に徴すると、原審が被告人ら不在のままで審理、判決をしたことは、まことにやむを得ないところであつて(刑訴法三四一条参照)、原審のとつた右の措置が所論のように違憲、違法であるとは認めることはできない。論旨は、理由がない。 弁護人らの控訴趣意第六点及び被告人らの控訴趣意第六点について。 論旨は要するに、原審は、必要性がないのに公判期日外の証人尋問を行なつた点において、憲法三七条一項、八二条、刑訴法二八一条、一五八条に違反し、同法三七七条三号の審判の公開に関する規定に違反したときにあたるというのである。 しかし、記録によれば、所論指摘の原審における公判期日外の証人尋問は、いずれも証人らの出頭の便宜や立証事項等を考慮したうえ、その必要性があると認めて行なわれたものであつて、原審の右判断に誤りがあるとは認められず、また原審がことさら 審における公判期日外の証人尋問は、いずれも証人らの出頭の便宜や立証事項等を考慮したうえ、その必要性があると認めて行なわれたものであつて、原審の右判断に誤りがあるとは認められず、また原審がことさら公判廷における公開の審理を回避する目的でこれを行なつたと見るべき事情は何ら存しないから、所論違憲、違法の主張は失当であつて、論旨は理由がない。 弁護人らの控訴趣意第七点及び被告人らの控訴趣意第七点について。 論旨は要するに、原審は、被告人らの弁論再開請求を却下した点において、審理不尽の違法があり、かつ刑訴法三一三条一項に違反し、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 しかし、記録によれば、原審は被告人らに対し再三にわたつて主張立証の機会を与えてこれを促したが、被告人らは全くこれに応じなかつたのに拘らず、判決宣告期日として指定された昭和四七年三月一日になつて、弁論再開の申立をしたことが認められるのであつて、このような本件審理の経過にかんがみると、右申立を却下して判決を宣告した原審の措置に所論のような違法があるとは認めることができない。それで論旨は、理由がない。 被告人らの控訴趣意第八点について。 論旨は要するに、原審は被告人らに対し公判調書の閲覧を禁止した点において、被告人らの防禦権を侵した違法があるというのである。 しかしながら、被告人に弁護人がないときは裁判所の規則の定めるところにより、被告人も公判調書を閲覧することができるが(刑訴法四九条)、被告人に弁護人があるときは、公判調書の閲覧は弁護人を通じて行なうべきものであるところ、本件においては、被告人らに付せられた国選弁護人が、前記のとおり、辞任届を提出して公判廷に出廷しなくなつたとしても、右辞任の申出は、被告人らの責に帰すべき事由によるもので、正当な理由に基づ ところ、本件においては、被告人らに付せられた国選弁護人が、前記のとおり、辞任届を提出して公判廷に出廷しなくなつたとしても、右辞任の申出は、被告人らの責に帰すべき事由によるもので、正当な理由に基づくものとはいえないとして、これを解任しなかつた原審の措置に違法があるということができないものである以上、「被告人らに弁護人がないとき」にあたらないから、原審が被告人らに直接公判調書を閲覧する機会を与えなかつたとしても、これが違法であるということはできない。それで論旨は、理由がない。 弁護人らの控訴趣意第八点及び第九点について。 論旨は要するに(1)本件公訴事実中、被告人Bに対する兇器準備結集及び全被告人に対する威力業務妨害の訴因について、いずれも共同正犯として起訴しながら、各起訴状に単に「共謀のうえ」と記載するのみで、共謀の日時、場所、方法及び具体的内容並びに共同正犯者各人の具体的な実行行為の記載がないのは、訴因を明示、特定したことにはならず、刑訴法二五六条三項に違反するのに、原審が公訴を棄却することなく審判したのは、不法に公訴を受理した違法がある。(2)また、原判決は、判示第一及び第三において、それぞれ兇器準備結集及び威力業務妨害の共同正犯の事実を判示するのに、いずれも共謀の日時、場所、方法及び具体的内容並びに共同正犯者各人の具体的な実行行為を示していないので、理由不備又は理由のくいちがいの違法があるというのである。 しかしながら、共同正犯は、二人以上の者が互に協力して自己の犯罪を実現する意思をもつて犯罪を行なうものであつて、互に他人の行為を利用しあう関係にあるため、各正犯者は、自己の行為についてはもちろん他の正犯者の行為についてもその責任を負うもので、結局正犯者全員の行為が各正犯者の責任に帰せられるのである。そこで特定の犯罪を共謀した しあう関係にあるため、各正犯者は、自己の行為についてはもちろん他の正犯者の行為についてもその責任を負うもので、結局正犯者全員の行為が各正犯者の責任に帰せられるのである。そこで特定の犯罪を共謀した以上は、各正犯者において、犯罪の実行行為の分担の有無を問わず、正犯者全員の実行行為についてその責任を負うのであるから、構成要件的な見地からすれば、共謀の事実を記載すれば足りるのであつて、所論主張のように、共謀の日時、場所、方法、具体的内容あるいは各共犯者が分担した具体的な実行行為をいちいち記載する必要はないといわなければならない。したがつて本件各起訴状及び原判示の程度の記載で、訴因の明示、特定あるいは罪となるべき事実の摘示として何ら欠けるところはないから、原審及び原判決に所論のような違法はない。論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第一〇点及び被告人らの控訴趣意第九点について。 論旨は要するに、原判決は、判示第一及び第二において、兇器準備結集及び兇器準備集合の罪の成立を認めているが、(1)刑法二〇八条の二は、その保護法益と構成要件が極めて不明確であるため、政治運動や労働運動に対する弾圧の具として用いられる危険性を内包しており、憲法三一条及び二一条一項に違反し無効である。(2)同条は、暴力団のみに適用されるべきものであるのに、本件に適用したのは誤りである。(3)同条にいわゆる兇器とは、性質上の兇器のみを指し、角材や石などの用法上の兇器は含まれないのに、これらのものが同条の兇器にあたるとした原判決は誤りである。(4)同条にいう共同加害目的は、その加害の対象が常に具体的、確定的であつて、かつ加害の目的は、意欲的でなければならないのに、原判決は加害の対象は抽象的、未確定的で足り、加害の目的は、加害の認識で足りると誤つて解釈していると考えら の加害の対象が常に具体的、確定的であつて、かつ加害の目的は、意欲的でなければならないのに、原判決は加害の対象は抽象的、未確定的で足り、加害の目的は、加害の認識で足りると誤つて解釈していると考えられる。以上の各点において、原判決には法令の解釈適用に誤りがあつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 しかしながら、刑法二〇八条の二は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであり、またその構成要件が極めて不明確な概念を内容とするものということはできないから、同条が憲法三一条及び二一条一項に違反する旨の所論は、その前提を欠き失当である(昭和四五年一二月三日最高裁判所第一小法廷決定、刑集二四巻一三号一七〇七ページ参照)。また同条は、これが適用される対象については何ら限定を設けていないので、本件に適用することが違法、不当とはいえないし、同条にいう兇器は、所論のように性質上の兇器に限られるとは解されず、本件の角材や石が同条の兇器にあたるとした原判決の認定に誤りがあるとは記録上認められない。また同条にいう共同加害の目的は、所論のように、その加害の対象が常に具体的、確定的でなければならず、かつ加害の目的は意欲的でなければならないとは解されず、また原判決が、この点に関し、所論のような解釈のもとにされたものとは認められないので、所論はその前提を欠き失当といわなければならない。そこで以上の各点において、原判決には所論のような違法はないので、論旨はいずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第一一点及び被告人らの控訴趣意第一〇点の(三)について。 論旨は要するに、威力業務妨害罪の「業務」には公務は含まれないと解すべきであるのに、Tの輸送業務が右の業務にあたるとした原判決には、法令の解釈適用 及び被告人らの控訴趣意第一〇点の(三)について。 論旨は要するに、威力業務妨害罪の「業務」には公務は含まれないと解すべきであるのに、Tの輸送業務が右の業務にあたるとした原判決には、法令の解釈適用に誤りがあつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。 しかしながら、Tは、その職員が法令により公務に従事する者とみなされるが、その行なう事業ないし業務は、運輸を目的とする鉄道事業その他これに関連する事業ないし業務であつて、民営鉄道のそれと何ら異なるところはないこと等に徴すれば、Tの行なう事業ないし業務は、刑法二三四条にいう「業務」に含まれると解するのが相当である(昭和四一年一一月三〇日最高裁判所大法廷判決、刑集二〇巻九号一〇七六ページ参照)。したがつてTの輸送業務が、右法条にいう「業務」にあたるとした原判決に所論のような違法はない。 論旨は、理由がない。 被告人らの控訴趣意第一〇点の(二)について。 論旨は要するに、原判決は、判示第三において威力業務妨害の事実を認定しているが、(1)本件当日、西武新宿駅周辺を機動隊が包囲しており、学生らの集団が同駅からaへ集団示威運動のために向かうことができなかつたため、やむなくT線路上を経て新宿駅方面へ向かつたものである。(2)証拠によれば、原判示の時間内に、TU線及びV線に学生集団が立入つて滞留していなかつたことが明らかである。(3)U線やV線の電車、列車の運行が停止したのは、T当局が治安警備当局の指示を受け、通知運転システムによつてみずからの判断でしたものであつて、学生集団が新宿駅構内に立入つたために運行業務が阻害されたものではない。(4)学生集団は午後四時一三分ころから四時三二分までの間に検挙されており、原判示のように、午後四時一六分ころから少くとも午後五時二六分までの 駅構内に立入つたために運行業務が阻害されたものではない。(4)学生集団は午後四時一三分ころから四時三二分までの間に検挙されており、原判示のように、午後四時一六分ころから少くとも午後五時二六分までの間に新宿駅を着発すべき多数の電車、列車の運行を停止させたものとはいえない。以上の各点において、原判決は事実を誤認したものであるというのである。 そこで記録を精査して検討すると、原判決挙示の証拠によれば、原判示の右事実認定を十分肯認することができる。すなわち、右証拠ことに所論の指摘する司法警察員W作成の写真撮影報告書中のネガ一八のNo.34、No.35及びネガ一九のNo.1の各写真並びに右各写真の撮影年月日及び撮影場所の記載によれば、原判示の時間中に、T新宿駅付近の線路上に学生集団が立入り滞留していたことが明らかに認められ、また前掲各証拠ことに証人X及び同Yの原審公判廷における各供述によれば、右のように被告人らを含む学生集団が、T新宿駅付近の線路上に立入つて滞留したため、同駅の運転掛であつた右X及びYにおいて、事故の発生を防止するため、午後四時一六分ころから少くとも午後五時二六分までの間、いわゆる通知運転の方法により、同駅を着発すべき多数の電車、列車(少くとも約一二〇本)の運行を停止させたことが認められる。そうだとすると、右のようにTの運行業務が停止したのは、被告人らを含む学生集団が、同駅付近の線路上に立入つて滞留した結果であつて、たとえ被告人らが所論のような時間内に検挙されたとしても、被告人らの行為と右結果との間の因果関係を否定することはできない。また、たとえ本件当時西武新宿駅周辺を機動隊が包囲していたとしても、そのゆえに被告人らの右線路上への立入りがTの輸送業務を妨害したこと従つてまたその刑事責任を否定することはできない。所論にかんがみさ た、たとえ本件当時西武新宿駅周辺を機動隊が包囲していたとしても、そのゆえに被告人らの右線路上への立入りがTの輸送業務を妨害したこと従つてまたその刑事責任を否定することはできない。所論にかんがみさらに記録を精査しても、原判決に所論のような事実誤認があるとは認められない。論旨は、いずれも理由がない。 弁護人らの控訴趣意第一三点並びに被告人らの控訴趣意第一一点及び第一二点について。 論旨は、いずれも原判決の量刑不当を主張するものである。 そこで記録を精査し、かつ当審における事実取調の結果をも参酌して考察すると、被告人らは昭和四四年一〇月二一日のいわゆる国際反戦デーに際し、都内a方面で過激な実力闘争を企て、原判示の各犯行を犯したものであつて、その犯行の動機、目的、規模、態様、社会に及ぼした影響、各被告人の果した役割、犯歴等のほか、被告人らがいずれも本件により相当長期間にわたり勾留されたこと、犯行後の情状、その他の被告人らに対する刑との均衡等、所論の主張を含めて本件に現われた量刑の資料となる一切の事情を検討すると、被告人G及び同Hに対する原判決の量刑は不当に重いということができず、右両名に関する量刑不当の論旨はいずれも理由がない。しかし、その余の被告人らに対する原判決の量刑は、被告人A、同C、同D、同Eについては刑の執行を猶予しなかつた点において、被告人B及び同Fについては刑期の点において、いずれも原判決が量刑事情としてそれぞれ指摘するところを考慮に容れても、なお重きに過ぎ、これらの被告人らに関する量刑不当の論旨は、結局いずれも理由がある。 そこで、被告人G及び同Hの本件各控訴は、いずれも理由がないから刑訴法三九六条により棄却することとし、被告人A、同B、同C、同D、同E、同Fの本件各控訴はいずれも理由があるから、刑訴法三九七条、三八一条 で、被告人G及び同Hの本件各控訴は、いずれも理由がないから刑訴法三九六条により棄却することとし、被告人A、同B、同C、同D、同E、同Fの本件各控訴はいずれも理由があるから、刑訴法三九七条、三八一条により、原判決中、右被告人らに関する部分を破棄したうえ、同法四〇〇条但書によりつぎのとおり判決する。 原判決がその掲げる証拠により認定した事実に、その摘示する法令を適用し、同じく刑の選択及び併合罪の加重(なお、被告人A、同Eについては原判決摘示の確定裁判との関係で、被告人Fについては後記確定裁判との関係で、それぞれ刑法四五条後段、五〇条を加える。)をした刑期範囲内で、それぞれ主文掲記の各刑を量定し、原審における未決勾留日数の算入及び刑の執行猶予につきそれぞれ刑法二一条、二五条一項を適用し、原審及び当審における訴訟費用につき刑訴法一八一条一項但書を適用して各被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。 (確定裁判)被告人Fは、昭和四八年七月二〇日福岡地方裁判所において傷害罪により懲役一〇月(未決勾留日数六〇日算入)に処せられ、右裁判は同四九年六月一一日確定した。 (裁判長裁判官浦辺衛裁判官環直彌裁判官内匠和彦)
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