- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告が原告に対し公正取引委員会平成○年(判)第○号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反事件について平成19年9月7日付けでした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 第2事案の概要原告は,鋼橋上部工工事の請負業を営む会社であるが,被告から,他の事業者と共同して,日本道路公団発注の鋼橋上部工工事について受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,日本道路公団発注の鋼橋上部工工事の取引分野における競争を実質的に制限し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条6項に規定する不当な取引制限に該当する行為をしたとして,被告から,平成18年3月24日,私的独占の禁止及()び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律平成17年法律第35号附則2条のなお従前の例によるとする規定により,改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)48条の2第1項。 の規定に基づき課徴金の納付を命じられたことに対し,同年4月21日同条第5項の規定に基づく審判手続の開始の請求をし,これにより,独占禁止法49条2項の規定により審判が開始され,被告は,平成19年9月7日,原告に対する課(「」。)徴金の対象となる工事は別紙課徴金算定対象物件一覧以下別紙一覧というの工事名記載のとおりであり,独占禁止法7条の2第1項の売上額は別紙一覧の,,合計欄記載のとおり合計54億4329万5144円であるとして原告に対し課徴金3億2659万円を同年11月7日までに国庫に納付することを命ずる審- 2 -決をした(以下「本件審決」という。 。) 計欄記載のとおり合計54億4329万5144円であるとして原告に対し課徴金3億2659万円を同年11月7日までに国庫に納付することを命ずる審- 2 -決をした(以下「本件審決」という。 。)本件は原告が別紙一覧の番号4中部横断自動車道α橋鋼上部工工事以,,()(下「本件工事」という)は原告とa株式会社(以下「a」という)が共同企。 。 業体(以下「本件JV」という)として受注したところ,受注後aが破産した。 ため,発注者との間で新たにa分も引き受ける契約を締結して工事を完成させたのであるから,上記引き受け分は独占禁止法違反行為による工事でなく,したがって,原告の独占禁止法7条の2第1項の違反行為に基づく売上額となるのは,本件工事全体の売上額12億1800万円のうち当初から原告の工事分とされた7億3204万1902円だけであり,原告に対する課徴金の額は2億9744万円であるとして,本件審決の取消しを求めた事案である。 争いのない事実(1)原告は,他の事業者と共同して,日本道路公団が支社,建設局及び管理局において一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により鋼橋上部工工事として発注する工事(以下「日本道路公団発注の鋼橋上部工工事」という)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき。 るようにすることにより,公共の利益に反して,日本道路公団発注の鋼橋上部工工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。 原告の違反の実行期間は平成14年5月30日から平成17年3月31日までであり,原告の上記違反に係る工事は別紙一覧記載のとおりであった。 (2)別紙一覧番号4の中部横断自動車道α橋(鋼上部工)工事(本件工事)については,平成16年6月15日に入札が行われ,発注者と本件JVの構成員(原告及 に係る工事は別紙一覧記載のとおりであった。 (2)別紙一覧番号4の中部横断自動車道α橋(鋼上部工)工事(本件工事)については,平成16年6月15日に入札が行われ,発注者と本件JVの構成員(原告及びa)との間で,同月16日付けで請負代金額を12億1800万円とする契約が締結された(以下「原契約」という。 。),,,(3)aは平成16年9月28日破産宣告を受け破産管財人は原告に対し同年10月22日付けの書面により,本件工事の続行が不可能であることを伝えて本件JVから脱退する旨届出をした。 - 3 -そこで,原告は発注者との間で,同年11月26日付けで,本件工事の請負人を本件JVの構成員から原告のみに変更する工事変更請負契約を締結し(査6。以下「本件変更契約」という,原告は工事を完成させた。 。)(4)被告は,平成17年9月29日,原告を含む違反行為を行った事業者らに対し,独占禁止法48条2項の規定に基づき勧告をしたところ,原告はこれを応諾したため,被告は,同年11月18日,上記勧告と同趣旨の審決をした。 (5)被告は,平成18年3月24日,原告に対し,独占禁止法48条の2第1項の規定に基づき課徴金の納付を命じたところ,原告は同条5項により審判手続の開始を請求したため,被告は,同年5月29日審判手続開始決定をし,審判手続を経て,平成19年9月7日本件審決をした。 審判手続において争点となったのは,本件工事に対する課徴金の計算の基礎となる売上額が,当初の原告の担当工事に係る7億3204万1902円だけなのか,途中でaが破産したことにより原告が担当することになったaの担当工事に係る分を加えた12億1800万円なのかであった。 (6)なお,原告の売上額合計が別紙一覧のとおり54億4329万5144円であるとして独占禁止法7 とにより原告が担当することになったaの担当工事に係る分を加えた12億1800万円なのかであった。 (6)なお,原告の売上額合計が別紙一覧のとおり54億4329万5144円であるとして独占禁止法7条の2第1項,第4項の規定を適用すると,同条第1項の課徴金の額は3億2659万円となる。 本件審決の要旨(1)本件JVの構成員である原告とaは,原契約書に添付された中部横断自動車道α橋(鋼上部工)工事共同企業体協定書(以下「協定書」という)。 に従い,本件工事を共同連帯して請け負うことを発注者と合意しており,また,協定書には,各構成員は,本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと(協定書10条)並びに工事途中において脱退した構成員がある場合には,残存構成員が協同連帯して当該工事を完成させるも- 4 -のとし,その場合には脱退者の出資割合は当然に残存構成員に移転することが定められており(協定書16条2項,3項,18条,これによれば,原)契約は,原告及びaが当事者として本件工事全体を連帯して請け負い,本件工事の完成債務を負担した契約といえる。 (2)原告は,aが破産宣告を受けて本件JVから脱退したことに伴い,原契約の約定に従い単独で契約の履行をすることを確認した上で,発注者との間で工事変更契約書を取り交わしたものであり,これによれば,工事変更契約書は,原契約の約定のとおり原告が契約を履行することを明確にするために,。 とり交わしたものであって原契約の内容を実質的に変更したものではない(3)共同企業体により契約が履行された場合には,共同企業体内部において担当工事部分の取り決めがされ,請負代金も各構成員がいわゆるJV比率で按分した額を取得するとい を実質的に変更したものではない(3)共同企業体により契約が履行された場合には,共同企業体内部において担当工事部分の取り決めがされ,請負代金も各構成員がいわゆるJV比率で按分した額を取得するという実態を踏まえ,請負代金額全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決められた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の売上額とするのが相当であるが,本件においては,実行期間中にaが本件JVから脱退し,原契約の約定に従って原告が単独で本件工事を完成し,請負代金を受領すべきこととなったのであるから,請負代金の全額をもって原告についての売上額と解すべきである。 (4)したがって,本件工事に係る売上額は,aの担当工事に係る部分を加えた12億1800万円となり,原告に対する課徴金は全体として3億2659万円となる。 本訴における争点及び双方の主張(1)本件工事に対する課徴金の計算の基礎となる売上額は,当初の原告の担当工事に係る分である7億3204万1902円か,途中でaが破産したことにより原告が担当することになったaの担当工事に係る分を加えた12億1800万円か。 (原告の主張)- 5 -ア共同企業体の場合に課徴金を算定する場合には,請負代金額全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって契約額とすべきである。 本件工事について原告が受注した請負金額は7億3204万1902円であり,残りの4億8595万8098円はaが請け負ったものである。 イ本件変更契約によって原告の請負契約の金額が増額した場合に増額された金額を売上額とするためには,変更契約が違反行為による受注の当然の帰結であることが必要である。 ウ共同企業体の場合に他人が負っていた工事部分を引き受けるということは主体の変更 した場合に増額された金額を売上額とするためには,変更契約が違反行為による受注の当然の帰結であることが必要である。 ウ共同企業体の場合に他人が負っていた工事部分を引き受けるということは主体の変更にほかならず,主体の変更の場合は,変更自体が違反行為の内容になっていない限りは,変更後の契約は違反行為の実行期間において締結した契約に含まれないというべきである。 本件における主体の変更は,aの破産決定による共同企業体からの脱退を契機として,発注者から原告に対して契約引受の意思確認が行われ,原告が自らの意思により発注者と変更契約を締結したものである。この引受けは何らカルテルによるものではなく,カルテルの当然の帰結ともいえないから,変更契約は平成17年政令第318号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「施行令」という)。 6条の契約ということはできない。 エ本件審決は,共同企業体の場合は共同企業体の構成員が工事全体につき施工する債務を連帯して負担していることを理由として,共同企業体の構成員である2社のうちの1社が脱退し,残りの1社が脱退者の工事を引き受け,工事全体を施工した場合も工事全体の債務を負っていたのであるから契約に変更があったとはいえないとしている。 確かに,発注者と本件JVとの間の平成16年6月16日付け工事請負契約によれば,原告とaは発注者に対し本件工事を共同連帯してすること- 6 -を約束しており,これからすると,契約論としては,原告は当初の連帯責任を果たしたともいえる。 しかし,独占禁止法は,課徴金の算定については請負代金全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の「売上額」と算定するという考え方をとっている。そうであるならば,いった 算定については請負代金全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の「売上額」と算定するという考え方をとっている。そうであるならば,いったんJV比率が定められた以上,通常の場合と同様にその後の契約変更による売上げの増減は,契約の変更とすべきであり,しかも,本件においては変更後の契約は違反行為によるものではない。 オ共同企業体の場合,当初契約の契約金額でなく,JV比率,共同企業体内部で取り決められた各構成員の請負代金取得額を売上額としながら,その後本件のような変更が生じた場合には,民法の解釈により当初契約の契約金額とするのは平等原則(憲法14条)の趣旨にも反する。 カしたがって,本件においては,変更契約により原告が引き受けたa分4億8595万8098円を原告の売上額に加えることはできない。 (被告の主張)ア確かに,共同企業体方式によって請負契約が締結された場合,課徴金を算定するに当たっては,請負代金額全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の「売上額」とするのは相当である。 しかしながら,そのことから直ちに,契約締結後,共同企業体の他の構成員の担当部分を施工することが契約主体の変更であり,それについては施行令6条の「実行期間内において締結した契約」に含まれないなどということにはならない。 イ本件変更契約は,原告が原契約上の本件工事全体の完成債務を単独で履行することを確認する趣旨で締結されたもので原契約の変更ではない。原- 7 -告は,原契約の締結によって発注者との関係で本件工事全体をaと連帯して請け負い,本件工事全体について完成債務を負担していたのであり,aが破産宣告を受けて本件JVから脱退した場合には契約上当 7 -告は,原契約の締結によって発注者との関係で本件工事全体をaと連帯して請け負い,本件工事全体について完成債務を負担していたのであり,aが破産宣告を受けて本件JVから脱退した場合には契約上当然に原告がa担当部分についても完成義務を負う。原告は原契約の履行としてa担当部分の工事をしたに過ぎない。 ウ本件においては契約主体の変更はないし,原告は違反行為に基づいて締結された原契約に基づき,a担当部分の工事を施工したのであるから,a担当部分の本件工事請負代金も,違反行為に係る役務の対価というべきである。 エしたがって,本件においては,変更契約により原告が引き受けたa分4億8595万8098円を売上額に加えた12億1800万円が原告の売上額となる。 (2)本件審決の審理手続に違法があるか。 (原告の主張)本件審決は,原告にとっても,審判の相手方であった審査官にとっても全くの不意打ちである。すなわち,審査官は,実行期間内に生じた契約の一部変更により当初の契約によって定められた金額が変更された場合には,当該変更後の契約金額が施行令6条の「契約により定められた対価の額,すな」わち課徴金の計算の基礎となる売上額となり,本件において原告の売上額は変更契約の金額となると契約の変更を前提に主張し,一方,原告は,契約の変更ではあるが,契約主体の変更があったもので,別の契約であると主張するなど,契約の変更を前提に審理されていたのに,本件審決は,変更契約は原契約の約定どおり原告がこれを履行することを明確にすることを確認したもので,原契約の内容を実質的に変更したものではないとした上,本件工事請負代金全額をもって原告の売上額に当たると認定した。本件審決は,原告にとって不意打ちである。 - 8 -これによって,原告は防御の機会を奪われた。このような不意 したものではないとした上,本件工事請負代金全額をもって原告の売上額に当たると認定した。本件審決は,原告にとって不意打ちである。 - 8 -これによって,原告は防御の機会を奪われた。このような不意打ちをもたらす判断は,適正手続の保障(憲法31条)に反し,許されない。 (被告の主張)本件事実関係について,原契約の履行とみるか,契約の変更とみるかは民法の解釈,適用に関する事項であり,審判官にその判断につき権限があるというべきである。また,本件で審査官が主張した事実関係,発注者と原告及びaとの間の工事請負契約書(査1,原告とaとの間の工事共同企業体協)定書(査2,意思確認書(査5,工事変更請負契約書(査6)の文言か))らすると,本件は契約の変更という以前にそもそも原契約の履行であると認定されるべきことについて十分予測できたというべきであるから,本件審決の認定が審判手続全体の経過からみて原告に防御の機会を閉ざしていたということはできない。 第3当裁判所の判断 争点(1)(原告の売上額)について(1)本件審決が認定した事実は以下のとおりである(独占禁止法80条1。 項,2項)ア本件工事について,平成16年6月15日に入札が行われ,発注者と本件JVの構成員である原告及びaとの間で,同月16日付けで請負代金額を12億1800万円とする原契約が締結された(査1。 )イ原契約において,原告及びaは,発注者に対し,原契約書に添付された協定書に従い,本件工事を共同連帯して請け負うことを約束した。 ウ本件協定書には,各構成員は,本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと並びに工事途中において脱退した構成員がある場合及び構成員のうちいずれかが工事途中 約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと並びに工事途中において脱退した構成員がある場合及び構成員のうちいずれかが工事途中において破産した場合には,残存構成員が当該工事を完成させるものとし,この場合には,脱退者- 9 -(,,の出資割合は当然に残存構成員に移転すること協定書16条2項3項18条)が定められている(査2。 )エ原契約締結後,平成16年9月28日aが破産宣告を受け,同年10月22日付けの書面によって,同社破産管財人が原告に対し,本件工事の続行が不可能であることを伝えて本件JVから脱退する旨届け出て,aは本件JVから脱退した。 原告は,本件工事の原契約の約定に従い原告が単独でその契約の履行を続行することを確認した上で(査5,同年11月26日付けで発注者と)の間で,本件工事の請負人を本件JVの構成員から原告のみに変更する工事変更請負契約書を取り交わした(査6。 )被告が本件審決において認定した上記事実はこれを立証する実質的な証拠があると認められる(独占禁止法80条1項,2項。 )(2)ところで,本件審決は,共同企業体により契約が履行された場合には,共同企業体内部において担当工事部分の取り決めがされ,請負代金も各構成員がいわゆるJV比率で按分した額を取得するという実態を踏まえ,請負代金額全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決められた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の売上額とするのが相当であるが,本件においては,実行期間中にaが本件JVから脱退し,原契約の約定に従って原告が単独で本件工事を完成し,請負代金を受領すべきこととなったのであるから,請負代金の全額をもって原告についての売上額と解すべきで,結局,原告の本件 にaが本件JVから脱退し,原契約の約定に従って原告が単独で本件工事を完成し,請負代金を受領すべきこととなったのであるから,請負代金の全額をもって原告についての売上額と解すべきで,結局,原告の本件工事に係る売上額は,aの担当工事に係る部分を加えた12億1800万円である旨判断した。 これに対し,原告は,共同企業体の場合に他の構成員がすべきであった工事部分を引き受けるということは,契約主体の変更で,新たな契約の締結であるところ,本件において本件変更契約の締結は違反行為となっていないから,原告が引き受けたaの担当工事に係る部分の代金4億8595万809- 10 -8円は,独占禁止法7条の2第1項の実行期間内の原告の売上額とすることはできず,これを加えた12億1800万円を課徴金の基準となる原告の売上額ということはできない旨主張する。 (3)そこで検討するに,独占禁止法7条の2第1項は,不当な取引制限をした違反行為者に対し,違反行為の実行としての事業活動の期間(実行期間)における商品又は役務の売上額の一定割合の課徴金を課するとした上,課徴金の額については「実行期間における当該商品又は役務の政令で定める方,法により算定した売上額に100分の6(小売業については100分の2,卸売業については100分の1とする)を乗じて得た額に相当する額の課。 徴金を国庫に納付することを命じなければならない」とし,これを受けた。 施行令5条は,売上額の算定方法につき「法第7条の2第1項(略)に規,定する政令で定める売上額の算定の方法は,次条で定めるものを除き,実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額を合計する方法とする(以下,略」と定め,また,施行令6条1項は「法第7条の2第1。 ),項に規定する違反行為が実行期間において受注する商品 期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額を合計する方法とする(以下,略」と定め,また,施行令6条1項は「法第7条の2第1。 ),項に規定する違反行為が実行期間において受注する商品又は役務のみに係る場合において,実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額の合計額と実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異を生ずる事情があると認められるときは,同項に規定する売上額の算定の方法は,実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする」と定めている。 。 そして,本件工事が土木工事であり,施行令6条1項の「実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額の合計額と実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異を生ずる事情があると認められるとき」に該当するものであったことは当事者間に争いがない。 - 11 -そうすると,仮に,本件工事を事業者が単独で受注していた場合には,独占禁止法7条の2第1項の「売上額」は,施行令6条1項により,原契約で合意された代金12億1800万円となる。 しかしながら,本件工事は原告とaの共同企業体が受注し,しかも,途中でaが破産し,共同企業体から脱退した上,原告がa分の工事を引き受けたという事情があるので,これを踏まえて検討する必要があるところ,前記認定事実によれば,原契約において,原告及びaは,発注者に対し,本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと並びに工事途中において脱退した構成員がある場合及び構成員のうちい 本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと並びに工事途中において脱退した構成員がある場合及び構成員のうちいずれかが工事途中において破産した場合には,残存構成員が当該工事を完成することを約束し,さらに,その場合には,脱退者の出資割合は当然に残存構成員に移転することが合意されているところ,原契約締結後,平成16年9月28日aが破産宣告を受けて本件JVから脱退し,原告は,発注者に対し原契約の約定に従い単独でその契約の履行を続行することを確認した上で,発注者との間で本件工事の請負人を本件JVの構成員から原告のみに変更する工事変更契約書を取り交わして工事をしたというのであるから,原告は違反行為により締結した原契約に従って義務を履行し,発注者に対し原契約で定められた代金の支払を受けられる地位を取得したというべきで,原告の売上額は原契約で定められた対価である代金12億1800万円と認めるのが相当である。原告は,違反行為により締結された契約により12億1800万円の対価を得たことになり,これに応じた課徴金を課さないというのでは違反行為による利益を原告に得させる結果となるからである。 この点につき,原告は,共同企業体として契約を締結した場合は,施行令6条1項の契約で定められた対価は,原契約の請負代金12億1800万円ではなく,原契約の請負代金額12億1800万円全体をJV比率で按分し- 12 -た額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額(すなわち,原告については12億1800万円のうちの7億3204万1902円,aは4億8595万8098円)であり,かつ,原告がa分を引き受。 けることになった本件変更契約は違反行為による契約ではないから,原 原告については12億1800万円のうちの7億3204万1902円,aは4億8595万8098円)であり,かつ,原告がa分を引き受。 けることになった本件変更契約は違反行為による契約ではないから,原告の実行期間における売上額は,a分を除外した7億3204万1902円である旨主張する。 ,,なるほど共同企業体方式によって請負契約が締結された場合においては各構成員が現実に取得する代金は,JV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額であるところ,課徴金制度の趣旨は,違反行為による不当な経済的利得を違反行為をした事業者から奪うことによって社会的公正を確保するとともに,違反行為の抑止を図り,不当な取引制限禁止の実効性を確保することにあるから,共同企業体方式で請負契約が締結された場合に課徴金を算定するに当たっては,請負代金額全体をJV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負「」,代金取得額をもって各構成員の売上額とするのが相当というべきでありしたがって,共同企業体方式による請負契約締結の場合においては,JV比率で按分した額ないしは共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額を施行令6条1項所定の「契約により定められた対価」と解することになる。 しかしながら,そうだからといって,本件JVと発注者との契約を,原告,,と発注者との契約aと発注者との契約という別個の2本の契約であるとかaが破産して本件JVから脱退した後,原告が発注者と締結した本件変更契約を原告の違反行為による原契約とは関係のない新たな契約ということはできない。 前記のとおり,原告及びaは,発注者に対し,本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行- 13 -に 関係のない新たな契約ということはできない。 前記のとおり,原告及びaは,発注者に対し,本件工事の請負契約の履行及び下請契約その他の本件工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行- 13 -に関し,共同連帯してその責任を負うこと並びに工事途中において脱退した構成員がある場合及び構成員のうちいずれかが工事途中において破産した場合には,残存構成員が当該工事を完成することを約束し,さらに,その場合には,脱退者の出資割合は当然に残存構成員に移転することが合意されていたのであるから,原告及びaは,本件工事全体を連帯して請け負ったというべきであり,また,a脱退後,本件工事の請負人を本件JVの構成員から原告のみに変更するという本件変更契約は原告が原契約上負っている義務を確認したものにすぎないといえるからである。 以上のとおりであって,本件工事における原告の売上額は原契約で定められた対価である12億1800万円と認めるのが相当であり,原契約におけるa分を原告の売上額に加えることはできないとの原告の上記主張は理由がない。 ,,,,,なお原告は共同企業体の場合当初契約の契約金額でなくJV比率共同企業体内部で取り決められた各構成員の請負代金取得額を売上額としながら,その後本件のような変更が生じた場合には,民法の解釈により当初契約の契約金額とするのは平等原則(憲法14条)の趣旨に反する旨主張するが,本件のような変更が生じた場合,残された構成員が取得できる請負代金額は増加するのであるから,その者の課徴金額が増加することとなるのは,違反行為による利益を奪うという課徴金の制度に沿うものであり,不合理ではなく,原告の上記主張も理由がない。 争点(2)(審決の手続的違法)について原告は,本件審判の審理においては,審査官は実行期間内に生じた契約 益を奪うという課徴金の制度に沿うものであり,不合理ではなく,原告の上記主張も理由がない。 争点(2)(審決の手続的違法)について原告は,本件審判の審理においては,審査官は実行期間内に生じた契約の一部変更により当初の契約金額が変更された場合には,変更後の契約金額が施行令6条の「契約により定められた対価の額」となるから,原告の売上額は変更契約の金額となると主張し,一方,原告は契約主体の変更があったもので,一部変更とは違うと主張し,双方とも契約の変更があることを前提として審理が- 14 -されていたのに,本件審決は,原契約の変更はないとして本件工事請負代金全額をもって原告の売上額に当たると判断したから,本件審決は原告の防御の機会を奪ってされたものというべきで,このような不意打ちをもたらす判断は,適正手続の保障(憲法31条)に反し許されない旨主張する。 確かに,本件審判においては,審査官は,本件において契約は変更され,原告の施行令6条1項所定の「契約の対価」は変更後の代金額である12億1800万円であると主張し,原告は,本件JVの構成員である原告とaそれぞれについて,受注分の契約額について発注者との間で契約関係が生じることを前提に,本件変更契約は主体の変更で新たな契約であり,違反行為による契約ではないから変更契約により原告が取得した代金は独占禁止法7条の2第1項の売上額,すなわち施行令6条1項所定の「契約の対価」には当たらないと主張していたところ,本件審決は,双方の上記各主張は排斥して,原契約は,本件JVの構成員である原告及びaが当事者として本件工事全体を連帯して請け負い,本件工事の完成債務を負担した契約で,本件変更契約は原契約の内容を実質的に変更したものではないとした上で,本件においては原契約の請負代金額の全額をもって原告の売上額と 件工事全体を連帯して請け負い,本件工事の完成債務を負担した契約で,本件変更契約は原契約の内容を実質的に変更したものではないとした上で,本件においては原契約の請負代金額の全額をもって原告の売上額と判断した。 しかしながら,本件審判において,審査官は,原告は原契約によりaと連帯,,して本件工事を完成させる義務を負っていたためaが破産により脱退した後原告が単独で工事を完成させることになり,これを受けて本件変更契約が締結されたのであるから,施行令6条にいう「契約に定められた対価の額」は,変更後に原告が行うことになった工事全体に対する対価の額であるとか,本件変更契約は,本件違反行為の実行としての事業活動において締結された原契約の主要部分である当事者すなわち請負人を変更するものであるが,原契約が存在しなければ締結し得ないほどの関係にあるから,本件変更契約が本件違反行為に係る契約であることは明白である旨主張しているところ,本件審決は,原契約が本件JVの構成員である原告及びaが当事者として本件工事全体を連帯し- 15 -て請け負い,本件工事の完成債務を負担した契約であることを重視し,請負代金額の全額をもって原告の売上額としたものであるから,本件審決の内容は基本的には審査官の主張に沿うものであり,本件審決が原告にとって不意打ちであるとか,本件審決に手続上の違法があるということはできない。 結論 以上のとおりであって,本件工事に対する課徴金の計算の基礎となる売上額は,12億1800万円であり,また,本件審決の審理手続に違法があるとはいえない。そして,前記のとおり,原告の本件工事の売上額が上記金額であれば,独占禁止法7条の2第4項により課徴金は3億2659万円となるから,本件審決に違法はない。 よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却す 前記のとおり,原告の本件工事の売上額が上記金額であれば,独占禁止法7条の2第4項により課徴金は3億2659万円となるから,本件審決に違法はない。 よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第3特別部裁判長裁判官宮崎公男裁判官土屋文昭裁判官辻次郎裁判官山本博- 16 -裁判官森邦明
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