平成24年12月25日宣告 平成24年第721号 主 文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 神戸地方検察庁で保管中のはさみ1本(平成24年領第1766号符号1)を没収する。 理 由罪となるべき事実 被告人は,第1 常習として,平成24年5月8日午前6時40分頃,神戸市a区b通c丁目d番e号のf6階通路で,騒音苦情の通報により同所に臨場し,被告人から事情聴取をするなどの公務に当たっていた兵庫県A警察署B課C交番勤務のD(当時43歳)に対し,右肩をDの右胸付近に打ち当てて体当たりする暴行を加え,もって同人の職務の執行を妨害した。第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,同年9月16日午後4時48分頃,同市g区h町i丁目j番k号のlビル先歩道上で,刃体の長さ約9cmのはさみ1本(主文掲記のもの)を携帯した。証拠の標目省略なお,判示第1の公務執行妨害について,被告人は,警察官のDに対して同判示の行為に及んだ際には騒音についてのDとのやり取りは一応終わっており,人工透析を受けに行かなければならない事情も説明していたもので,Dの公務は終わっていた旨公判廷で供述し,弁護人も,これと同旨の主張をするほか,仮に公務中だったとしても,人 り取りは一応終わっており,人工透析を受けに行かなければならない事情も説明していたもので,Dの公務は終わっていた旨公判廷で供述し,弁護人も,これと同旨の主張をするほか,仮に公務中だったとしても,人工透析を受けに行く準備のために自宅に戻ろうとした被告人を不必要に制止していたDの行為は,要保護性を欠き,いずれにしても被告人は無罪である旨主張する。そこで検討すると,証人Dの証言等によれば,本件当時,Dは,騒音苦情があり現場に向かえとの指令を受け,被告人宅に架電した後,同判示マンションに臨場すると,被告人がマンション前に立っており,Dに通報者は誰かと詰め寄ってきたが,Dがそれは答えられないなどと返答したこと等に被告人は立腹し,当時の自宅のあった上記マンション6階の通路で「誰が言うたんや。」などと怒鳴ったり壁を足蹴りしたりしたこと,そのためDは,マンション住人への迷惑を避けるべく,被告人とエレベーターホール付近まで一緒に移動したが,被告人が右手でDの左肩を1回突いてきたこと,これに対しDは,被告人に,次に暴行に及べば公務執行妨害で逮捕する旨警告したが,被告人は収まらず,その頃に住人の1人が顔を出してきたこともあって,Dは,更に騒ぎや住人の迷惑となる事態を避けるため被告人を上記ホール付近に留めるべく被告人の前に立ち塞がっていたこと,そして,その直後に被告人が同判示の行為に及んだこと,以上の各事実が認められる。また,被告人の捜査段階の供述(信用性が争われていない部分)によれば,被告人がDと大声でやり取りをしていたなか,前記6階のm号室の50代位の男性住人が通路に出てきて,被告人に対し「うるさい,静かにせい。」と言い,これに対し被告人が「おどれ誰に口聞いとんや。」と言い返しながらm号室に近づこうとしたところ,Dに制止されたというのであり 位の男性住人が通路に出てきて,被告人に対し「うるさい,静かにせい。」と言い,これに対し被告人が「おどれ誰に口聞いとんや。」と言い返しながらm号室に近づこうとしたところ,Dに制止されたというのであり,この内容は,上記認定事実とよく整合していてその信用性に格別の疑義はない。そして,同じく被告人の捜査段階の供述によれば,被告人はなおも上記住人のところに文句を言いに行こうとして,立ちふさがるDに対し判示第1の暴行に及んだ,というのである。弁護人及び被告人は,この上記暴行に及んだ理由の部分の供述の信用性を争い,人工透析を受けに行く準備のため自宅に戻ろうとしてDに体当たりしたものである旨主張・供述するが,この主張等は,公判段階で突如出てきたものである上,上記暴行の件は,被告人が病院に入らなければならないという午前8時半の2時間近くも前のことであり(被告人の供述によれば自宅から病院への所要時間は約15分である。),被告人自身,午前7時頃に病院に行く準備を始めるつもりであったというのであるし(弁1),上記主張等の内容は,被告人と上記住人との上記いざこざの直後のものとしては,如何にも不自然で唐突なものであって,にわかに採用できない。 一方,上記住人のところに文句を言いに行こうとして上記暴行に及んだ旨の被告人の捜査段階の供述は,上記いざこざとの流れも極めて自然で無理がなく,十分信用できるというべきである。そうすると,Dは当時,更に騒ぎや住人の迷惑となる事態を避けようとして被告人の前に立ち塞がっていたものであるとともに,被告人もそのことを重々承知していたと認められるから,冒頭の被告人の供述と弁護人の主張は,いずれも前提を欠き,Dの上記行為の公務性と要保護性は共に十分認められるし,その公務性についての被告人の認識にも欠けるところはない。ま たと認められるから,冒頭の被告人の供述と弁護人の主張は,いずれも前提を欠き,Dの上記行為の公務性と要保護性は共に十分認められるし,その公務性についての被告人の認識にも欠けるところはない。また,弁護人は,判示第1の常習暴行についてその常習性の部分を争うが,被告人には下記の各累犯前科等があることなども踏まえると,上記常習性の認定にも疑義はない。累犯前科省略法令の適用 省略量刑の理由被告人は,公務員や私人の言動等に対し短絡的に立腹し暴行に及んだ犯行に係る前記各累犯前科等のときと同様,第1では前記のとおりの経緯で,また第2では近隣住民と口論になって激昂しコンビニではさみを買って,いずれも極めて安易に各犯行に及んだもので,被告人の粗暴性及び規範意識の低さは誠に顕著であり,各犯行で警察官や上記住民に被告人への配慮等が欠けていた面があるとしても,酌むべき点は乏しい。そして,第1の公務執行妨害については公判になって供述を変えるなど反省が不十分であるし,再犯のおそれも懸念される。被告人の刑責には重いものがあるが,他方,第1の暴行の態様は軽いこと,その暴行に及んだ点と第2ではさみを買いに行き不法に携帯した点の安易さについては反省の情を示していること,人工透析が必要な状態にあることなどの酌むべき事情もあり,これらの諸点も併せ考慮して,主文の刑とした。求刑 懲役3年,はさみの没収 平成24年12月25日 神戸地方裁判所第1刑事部 裁 判 官西森英司 裁 判 官西森英司
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