令和5(行ケ)10101 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月25日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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令和6年4月25日判決言渡 令和5年(行ケ)第10101号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和6年3月14日判決 原告 BacooardApps株式会社 同訴訟代理人弁理士坂本寛 被告 Y 同訴訟代理人弁護士増島雅和 同佐々木奏 同高石秀樹 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が無効2022-800078号事件について令和5年8月2日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 特許権の設定登録 訴外クリプトモールオーユーは、令和2年6月15日、被告の発明に係る、発明の名称を「鑑定証明システム」とする特許出願(特願2020-103179号)をし、令和3年6月4日、特許権の設定の登録を受けた(特許第6894033号、請求項の数は7、甲8。以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」と、その明細書を「本件明細書」という。その特許公報は別紙1のとおりである。)。 本件特許の特許請求の範囲の記載は別紙1に記載のとおりである(その請求項1ないし請求項7に記載の各発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明7」といい、これらを併せて「本件各発明」という。)。 被告は、令和4年7月13日、特定承継により本件特許権の移転を受けた(甲9)。 ⑵ 原告による無効審判請求 原告は、令和4年9月7日、本件特許につき特許庁に無効審判請求をした。 件各発明」という。)。 被告は、令和4年7月13日、特定承継により本件特許権の移転を受けた(甲9)。 ⑵ 原告による無効審判請求 原告は、令和4年9月7日、本件特許につき特許庁に無効審判(無効2022-800078号。以下「本件無効審判」という。)を請求した。 特許庁は、令和5年8月2日、結論を「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月16日、原告に送達された。 ⑶ 本件訴訟の提起原告は、令和5年9月6日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨等⑴ 本件無効審判の請求人である原告は、本件明細書の発明の詳細な説明の記 載は、当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件各発明についての特許は、特許法(以下「法」という。)36条4項1号に規定する要件を満たさないから、法123条1項4号に該当し、無効とされるべきであると主張した。 ⑵ 本件審決の理由は、別紙2審決書(写し)記載のとおりである。原告の主 張に対する判断の要旨は、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1 の各構成要件及び本件発明2ないし7で特定された事項に対応する記載があり、当該記載は、当業者であれば、本件各発明の「鑑定証明システム」に係る物を作り、使用することができる程度に明確かつ十分なものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たしており、法123条1項4号に該当するものではなく、無効とすべきものであるとはいえない というものである。 なお、本件発明1の特許請求の範囲の記載を、以下のとおり、分説して検討する。 「A:バッグ、カバン、衣類、時計、美術工 のではなく、無効とすべきものであるとはいえない というものである。 なお、本件発明1の特許請求の範囲の記載を、以下のとおり、分説して検討する。 「A:バッグ、カバン、衣類、時計、美術工芸品、自動車等の鑑定証明が必要とされる製品の鑑定証明システムであって、 B:秘密鍵α₁、製品情報を含む情報を記録した小型記録媒体(a₁)が貼着または組み込まれた前記製品、および秘密鍵β₁、製品情報を含む情報を記録した小型記録媒体(b)が貼着または組み込まれたギャランティカードを用いて鑑定証明が行われ、C-1:前記製品の製品情報、前記製品がユーザーへ渡るまでの各流通段 階における取引情報の各情報を、ブロックチェーンデータとして記録する専用プラットフォームと、C-2:前記製品情報および前記取引情報を、製造メーカー・製造者および流通業者が、前記ブロックチェーンデータに書き込むために使用されるアプリケーション[A]と、 C-3:前記ユーザーが前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むために使用されるアプリケーション[B]と、C-4:を備え、D:前記製造メーカー・製造者および前記流通業者が、前記アプリケーシ ョン[A]を用いて、前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロッ クチェーンデータに書き込み、E:前記ユーザーが、前記製品に付与された前記秘密鍵α₁、および前記ギャランティカードに付与された前記秘密鍵β₁を使用し、前記アプリケーション[B]を用いて、前記製品の前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むことにより、前記製品 の鑑定証明を行うことを特徴とする、F:鑑定証明システム。」 3 原告の主張する取消事由 製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むことにより、前記製品 の鑑定証明を行うことを特徴とする、F:鑑定証明システム。」 3 原告の主張する取消事由⑴ 取消事由1(実施可能要件の判断の誤り)⑵ 取消事由2(実施可能要件の判断の論理構成の誤り) ⑶ 取消事由3(実施可能要件の判断の理由不備(理由不存在)等)⑷ 取消事由4(本件発明1の認定・解釈の誤り)第3 当事者の主張 1 取消事由1(実施可能要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕 ⑴ 本件明細書の発明の詳細な説明には、「前記ユーザーが、前記製品に付与された前記秘密鍵α₁、および前記ギャランティカードに付与された前記秘密鍵β₁を使用し」(構成要件E)及び「前記製品の鑑定証明を行うことを特徴とする、鑑定証明システム」(構成要件E、F)を具現すべき機能・装置について記載されておらず、その具現すべき機能等を出願時の技術常識に基づいて も当業者が理解できない。 本件明細書の段落【0021】の記載によれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、アプリケーション[B]10を用いて使用され得るとも解される。しかし、段落【0022】におけるアプリケーション[B]10の説明では、アプリケーション[B]10が、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用するための機 能を有するとは記載されていない。このため、段落【0021】及び【00 22】の記載からは、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁が、アプリケーション[B]10を用いて使用されるのか一義的に明らかとはいえないし、仮に、アプリケーション[B]10を用いて使用されるとしても、アプリケーション[B]10が、「ユーザーが秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」を具現するために 使用されるのか一義的に明らかとはいえないし、仮に、アプリケーション[B]10を用いて使用されるとしても、アプリケーション[B]10が、「ユーザーが秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」を具現するためにどのような機能等を有しており、どのような情報処理が行われるのか不明であ る。 さらに、本件明細書の段落【0036】の記載によれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、端末[B]6を用いて使用され得るとも解されるが、端末[B]6(スマートフォン6-1)が有する機能に関して、本件明細書の段落【0023】におけるスマートフォン6-1の説明では、スマートフォン6-1 が、秘密鍵の読取以外に、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用するための機能を有するとは記載されていない。このため、段落【0036】及び【0023】の記載を総合すると、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁が、端末[B]6を用いて使用されるのか一義的に明らかとはいえないし、仮に、端末[B]6を用いて使用されるとしても、端末[B]6が、「ユーザーが秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁ を使用し」を具現するためにどのような機能等を有しており、そこでどのような情報処理が行われるのか不明である。 本件明細書の段落【0039】の記載によれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、本件各発明の鑑定証明システムが使用するものと解されるが、「ユーザーが秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」を具現するために、本件各発明の鑑定 証明システムにおけるどの構成要素が、どのような機能等を有しており、どのような情報処理が行われるのか不明である。また、段落【0039】の記載によれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、要鑑定製品1の製品情報及び取引情報を読み込む際に使用され得るとも解されるが、読み込みに用いられるアプリケーション[B]についての段落【0 落【0039】の記載によれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、要鑑定製品1の製品情報及び取引情報を読み込む際に使用され得るとも解されるが、読み込みに用いられるアプリケーション[B]についての段落【0022】の説明では、アプリケー ション[B]10が、製品情報等を読み込む際に秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を 使用するための機能を有するとは記載されていない。専用プラットフォームについても同様である。このため、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、要鑑定製品1の製品情報及び取引情報を読み込む際に使用され得るとしても、アプリケーション[B]又は専用プラットフォームが、「ユーザーが秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」を具現するためにどのような機能等を有しており、どのよ うな情報処理が行われるのか不明である。 また、本件発明1の「前記製品の鑑定証明を行うことを特徴とする、鑑定証明システム」(構成要件E、F)についても、本件明細書には、「鑑定証明」が「製品が模造品でなく真正品であることの証明」(段落【0002】)であることの記載はあるものの、本件明細書には、本件各発明の「鑑定証明シス テム」が、「製品が模造品でなく真正品であることの証明を行う」ためにどのような機能等を有しており、どのような情報処理を行うのか、「前記製品の前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むこと」を除いて一切記載されておらず、不明である。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、「鑑定証明システム」と いう「物」の発明において、構成要件E及びFを具現すべき機能・装置等について記載されておらず、不明瞭であり、その具現すべき装置を出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないから、当業者が本件各発明に係る鑑定証明システムと 成要件E及びFを具現すべき機能・装置等について記載されておらず、不明瞭であり、その具現すべき装置を出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないから、当業者が本件各発明に係る鑑定証明システムという「物」を作り、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、実施可能要件を満たさない。 したがって、本件審決の実施可能要件についての判断は誤りである。 ⑵ 本件審決が「例えば・・・想定できる」として挙げる「例」(本件審決14頁28行目ないし34行目)についても、本件明細書には記載されておらず、技術常識ともいえないから、その「例」自体も実施可能とはいえない。 しかも、本件審決の「例」では、二つの秘密鍵を「アプリケーション[B] を用いるために必要なパスワード」としているが、秘密鍵は、暗号化/復号 化のための暗号鍵であることが技術常識であり、パスワードとして用いられるものではない。そうすると、秘密鍵をパスワードとして使用することは、技術常識に照らすと、通常の使用方法ではなく、特殊な使用方法といえるから、パスワードとして使用することについての記載がない本件明細書の発明の詳細な説明は、「例」の部分について実施可能要件違反である。 仮に、パスワードを設定する「物」について、本件審決が「例」として挙げる秘密鍵「ABCD」及び「1234」の存在自体を知り得たとしても、転々流通する製品をどのユーザーが入手し、その製品の秘密鍵「ABCD」及び「1234」をどのユーザーが有しているのか知り得ないから、二つの秘密鍵「ABCD」及び「1234」を有するユーザーに、「ABCD123 4」というパスワードが設定された適切なアプリケーション[B]を、ダウンロードにより入手させることはできない。よっ つの秘密鍵「ABCD」及び「1234」を有するユーザーに、「ABCD123 4」というパスワードが設定された適切なアプリケーション[B]を、ダウンロードにより入手させることはできない。よって、「例」の部分について実施可能要件違反である。 ⑶ 仮に、本件審決が想定する上記「例」が実施可能であるとしても、本件発明1に含まれる当該「例」以外の部分(特に、秘密鍵をパスワードとして使 用するのではなく暗号鍵として使用する場合)について、どのように作り、使用することができるのかにつき、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、当業者が理解すらできないため、当業者は本件発明1に係る物を作り、使用することができない。そもそも、暗号鍵である秘密鍵によっていったい何を暗号化/復号化するのか不明であるし、暗号化/復号化をす ることが、「アプリケーション[B]」、「読み込み」及び「鑑定証明を行う」等と、どのような関係にあるのかも不明であり、実施可能要件違反がある。 〔被告の反論〕⑴ 本件各発明は、コンテンツ(製品情報及び取引情報)につき、アプリケーション[B]を用いてブロックチェーンに記録されたコンテンツを取り出す ために、二つの秘密鍵(α、β)を使用することでアプリケーション[B] を用いることができるようになる発明である。比喩的にいえば、二つの秘密鍵(α、β)を、アプリケーション[B]を用いる際の本人照合手段としてのパスワードのような機能を実現するものとして用いている。 本件各発明は、鑑定証明が必要とされる製品(要鑑定製品)に貼着又は組み込まれた小型記録媒体(a₁)に記録された「秘密鍵α₁」と「ギャランテ ィカード」に貼着又は組み込まれた小型記録媒体(b)に記録された「秘密鍵β₁」を用いて鑑定 製品(要鑑定製品)に貼着又は組み込まれた小型記録媒体(a₁)に記録された「秘密鍵α₁」と「ギャランテ ィカード」に貼着又は組み込まれた小型記録媒体(b)に記録された「秘密鍵β₁」を用いて鑑定証明を行うものであるから(構成要件B)、鑑定証明には、少なくとも上記二つの「秘密鍵」がそれぞれ独立して管理される別のものに配置されていることが必要であり、これにより、秘密鍵α₁が記録された「要鑑定製品」を何らかの理由で所持しているだけでは鑑定証明を行うこと ができず、秘密鍵β₁が記録された「ギャランティカード」も所持していることにより初めて鑑定証明を行うことができるため、「要鑑定製品の新製品または中古品を購入したユーザーのみが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる」(本件明細書の段落【0008】)ものであるところ、一つの「秘密鍵」を「要鑑定製品」に、もう一つの「秘密鍵」を「ギャランティカード」 に配置することにより、二つの「秘密鍵」がそれぞれ配置され、独立して管理される「要鑑定製品」及び「ギャランティカード」の両方を持つユーザーのみが、鑑定証明を行うことができることにしたものである(段落【0008】、【0009】及び【0039】)。 このような本件各発明の技術的意義に鑑みれば、①要鑑定製品に貼着又は 組み込まれた小型記録媒体(a₁)に記録された「秘密鍵α₁」に相当するパスワードと、②「ギャランティカード」に貼着又は組み込まれた小型記録媒体(b)に記録された「秘密鍵β₁」に相当するパスワードとにより、両方が正しく揃ったときに、アプリケーション[B]を用いることが許可され、ブロックチェーンに記録されているコンテンツ(製品情報及び取引情報)を取 り出すことできるという発明を知った後は、当業者はこれを容易に実施でき に、アプリケーション[B]を用いることが許可され、ブロックチェーンに記録されているコンテンツ(製品情報及び取引情報)を取 り出すことできるという発明を知った後は、当業者はこれを容易に実施でき るものである。 ⑵ 原告の主張は、どのような情報処理が行われるのか、具現すべき機能・装置等について本件明細書には記載されておらず、不明瞭であるということを繰り返しているだけである。 二つの秘密鍵(α、β)を使用することでアプリケーション[B]を用いる ことができるようになることを実現するために「どのような情報処理が行われるのか」については、本件審決が示した「例」のように、当業者が理解できるものであり、IT分野の当業者であれば、これを実施する(物を作り、使用する)ことに過度の試行錯誤を要しないから、実施可能要件に違反しない。 本件各発明における「秘密鍵」とは、「製品情報および取引情報をブロックチェーンデータから読み込むためのアプリケーション[B]を用いるための」秘密にされている(一般公開されていない)鍵であり、「製品情報および取引情報をブロックチェーンデータから読み込むための」秘密鍵ではない。 2 取消事由2について(実施可能要件の判断の論理構成の誤り) 〔原告の主張〕本件審決は、本件明細書に記載されておらず技術常識でもない「例」をも想定した上で、本件発明1と本件明細書の発明の詳細な説明との「対応」を形式的に示しているのみで、本件明細書の発明の詳細な説明について、本件発明1に係る物を作り、使用することができるか否かについて具体的な検討を一切す ることなく、本件発明1の各構成要件に対応する本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者であれば、明確かつ十分に理解し得るものであるとの判断をした。 とができるか否かについて具体的な検討を一切す ることなく、本件発明1の各構成要件に対応する本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者であれば、明確かつ十分に理解し得るものであるとの判断をした。 しかし、その判断は、専ら、本件明細書とは別の書面である、本件特許の特許請求の範囲が「理解できる」との判断に依拠するものであり、実施可能要件が判断されるべき明細書の発明の詳細な説明については、特許請求の範囲に 「対応」する記載が形式的に存在することをもって、実施可能要件を満たして いるとの結論を導いている。 したがって、本件審決の採用する論理構成は、①特許請求の範囲の記載が「理解できる」ものであって、②発明の詳細な説明に対応する記載が形式的に存在すれば、③本件明細書の発明の詳細な説明に本件発明1に係る物を作り、使用することができる程度に、明確かつ十分な記載があるとするものであり、その 論理構成においては、「本件発明1に係る物を作り、使用することができる」かどうかについて、本件明細書の発明の詳細な説明の記載についての実質的な検討・判断を省略した独自の論理構成を採用するものである。 そうすると、本件審決の論理構成は誤りであり、本件審決には取り消すべき違法がある。 〔被告の反論〕原告の主張は、本件審決が第6の2⑵(本件審決14頁3行目ないし15頁16行目)において、本件発明1を認定し、当業者が具体的な実施態様の例を理解可能であり、本件発明1に係る物を作り、使用することが出来る程度に明確かつ十分な記載があると判断しただけでは足りないと主張するものである。 しかしながら、本件審決は、本件各発明を審決が示した「例」のように当業者が理解できるものであり、IT分野の当業者であれば、これを実施する(物を作り、 だけでは足りないと主張するものである。 しかしながら、本件審決は、本件各発明を審決が示した「例」のように当業者が理解できるものであり、IT分野の当業者であれば、これを実施する(物を作り、使用する)ことに過度の試行錯誤を要しないから実施可能要件に違反しないと判断したものであり、本件審決の論理構成に誤りはない。 3 取消事由3(実施可能要件の判断の理由不備(理由不存在)等) について 〔原告の主張〕上記2の取消事由2〔原告の主張〕で主張したように、本件審決は、本件発明1と本件明細書の発明の詳細な説明との「対応」を形式的に示しているのみで、本件明細書の発明の詳細な説明について、本件発明1に係る物を作り、使用することができるか否かについて具体的な検討をしていない。 したがって、本件審決は、その理由(法157条2項4号)を、判断の根拠 を示し証拠による認定事実に基づいて具体的に明示することなく、その結論を導いている。 すなわち、本件審決には、結論のみあってそれに対応する理由が存在しないから、理由不備(理由不存在)、審理不尽又は判断遺脱などの手続上の瑕疵が存在する。本件審決における理由不備等の瑕疵は、本件審決の結論に影響を及ぼ すことが明らかであるから、本件審決には取り消すべき違法がある。 〔被告の反論〕原告は、本件審決に実施可能要件について審理不尽、判断遺漏及び理由不備の違法があると主張する。 しかし、本件審決は、第6の2⑵(本件審決14頁3行目ないし15頁16 行目)において、本件発明1を正しく認定し、当業者が具体的な実施態様の例を理解可能であり、本件各発明に係る物を作り、使用することができる程度に明確かつ十分な記載が明細書の発明の詳細な説明にあると判断しているから、審理不尽、 を正しく認定し、当業者が具体的な実施態様の例を理解可能であり、本件各発明に係る物を作り、使用することができる程度に明確かつ十分な記載が明細書の発明の詳細な説明にあると判断しているから、審理不尽、判断遺漏及び理由不備の違法はあり得ない。 4 取消事由4(本件発明1の認定・解釈の誤り) について 〔原告の主張〕⑴ 本件発明1の構成要件Eにおける「秘密鍵α₁・・・および・・・秘密鍵β₁を使用し」(以下「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」という場合がある。)と「アプリケーション[B]を用いて」との相互関係の解釈の誤り本件審決は、「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」と、「アプリケーション [B]を用いて」との相互関係に関し、本件審決の第6の2⑵において、「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、アプリケーション[B]を用いるために使用される二つの秘密鍵である」(本件審決の14頁25行目ないし同頁27行目)と解釈しているが、特許請求の範囲に基づくものではなく、誤りである。 構成要件Eは、「前記ユーザーが、前記製品に付与された前記秘密鍵α₁、 および前記ギャランティカードに付与された前記秘密鍵β₁を使用し、アプリ ケーション[B]を用いて、・・・」と特定されているにすぎないから、その文言に従って解釈すれば足り、それ以上に限定して解釈したり、特許請求の範囲に記載されていない事項を導入して解釈したりすることは許されない。 本件審決は、第6の2⑵(本件審決14頁3行目ないし15頁16行目)において、構成要件Eの解釈として、特許請求の範囲に記載されていない「(使 用)することによって」「(用いる)ことができる」という事項を導入して解釈している。かかる解釈は、特許請求の範囲に基づくものではなく、これも誤りである。 さ 求の範囲に記載されていない「(使 用)することによって」「(用いる)ことができる」という事項を導入して解釈している。かかる解釈は、特許請求の範囲に基づくものではなく、これも誤りである。 さらに、本件審決は、「(使用)することによって」「(用いる)ことができる」という解釈を前提として、「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁は、アプリケーショ ン[B]を用いるために使用される二つの秘密鍵である」という解釈を導いているが、その前提が誤っているばかりか、ここでも、本件特許の特許請求の範囲に記載されていない「(用い)るために(使用)される」という事項を導入しており、誤りである。 しかも、本件審決は、前記「例」の想定において、「(使用し)て初めて・・ (用い)ることができる」という事項をさらに導入している。「例」の想定は特許請求の範囲の記載の解釈とはいえないし、この「例」が、解釈において参酌されることを意図したものであるとしても、当該「例」は、本件明細書には記載されておらず、参酌の根拠を欠いており、誤りである。 ⑵ 本件発明1の構成要件Eにおける「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」と、 「前記製品の前記製品情報及び前記取引情報を前記ブロックチェーンデータから読み込むことにより」ないし「前記製品の鑑定証明を行う」との相互関係の解釈の誤り本件審決は、本件発明1の構成要件Eにおける「秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し」と、「前記製品の前記製品情報及び前記取引情報を前記ブロックチ ェーンデータから読み込むことにより」ないし「前記製品の鑑定証明を行う」 との相互関係に関し、「本件発明1の構成要件Eの、アプリケーション[B]を用いて、製品の製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むことにより、製品の鑑定 明を行う」 との相互関係に関し、「本件発明1の構成要件Eの、アプリケーション[B]を用いて、製品の製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むことにより、製品の鑑定証明を行うことについても、二つの秘密鍵を使用することによってアプリケーション[B]を用いることができれば、そのアプリケーション[B]によって、製品の製品情報及び取引情報をブロック チェーンデータから読み込むことができるということにすぎず、その結果、二つの秘密鍵を有する者、すなわち、アプリケーション[B]を用いることができたユーザーのみが、ブロックチェーンデータに書き込まれた製品の製品情報及び取引情報を読み込むことにより、製品の鑑定証明を行うことができるということを理解できる。」(本件審決14頁35行目ないし15頁8行 目)という解釈を示しているが、特許請求の範囲に基づくものではなく、誤りである。 構成要件Eは、「前記ユーザーが、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し、前記アプリケーション[B]を用いて、前記製品の前記製品情報及び前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むことにより、前記製品の鑑 定証明を行うことを特徴とする」旨が特定されているにすぎない。構成要件Eには、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁がブロックチェーンデータ及び鑑定証明と、「(直接の)関係がない」ことを示す文言はない。 そして、構成要件Eには、「前記ユーザーが、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し、前記アプリケーションを用いて、前記製品の前記製品情報および前記 取引情報をブロックチェーンデータから読み込む」とするものであるから、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁はブロックチェーンデータと「関係がある」ものを包含していると文言上解釈できる。 さらに、構成要件Eには「 引情報をブロックチェーンデータから読み込む」とするものであるから、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁はブロックチェーンデータと「関係がある」ものを包含していると文言上解釈できる。 さらに、構成要件Eには「前記ユーザーが、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁を使用し、・・・により、前記製品の鑑定証明を行うことを特徴とする」ものであ るから、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁が鑑定証明と「関係がある」ものを包含し ていると文言上解釈できる。 したがって、構成要件Eは、その文言に従って、「関係がある」ものを含むよう解釈すれば足り、「関係がない」と限定して解釈することは許されない。 よって、本件審決の特許請求の範囲の記載の解釈は誤りである。 ⑶ 本件発明1の秘密鍵がアプリケーション[B]を用いるために必要なパス ワードであるとの想定・解釈の誤り本件審決は、本件発明1の「秘密鍵」という事項に関し、第6の2⑵において、前記「例」を示している(本件審決14頁28行目ないし34行目)。 しかし、本件審決は、「秘密鍵」の技術的意味の解釈を誤っている。秘密鍵は、暗号化/復号化のための暗号鍵であることが技術常識(甲1~5)であ り、パスワードとして用いられるものではない。 本件審決は、本件発明1の秘密鍵がアプリケーション[B]を用いるために必要なパスワードであるとの想定をもって、限定的に特許請求の範囲の記載の解釈をしているものと解されるが、技術常識に反する解釈であり、誤りである。 ⑷ 小括以上のように、本件審決における本件発明1の認定・解釈は誤りであり、この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決には取り消すべき違法がある。 〔被告の反論〕 ⑴ 特許請求の範囲の文言の自然な解釈(法70条1項)本 りであり、この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決には取り消すべき違法がある。 〔被告の反論〕 ⑴ 特許請求の範囲の文言の自然な解釈(法70条1項)本件発明1は「鑑定証明システム」の発明であり、「秘密鍵(α、β)」は、構成要件B及びEのみに出てくるところ、構成要件Eを見ると、本件各発明は、「秘密鍵(α、β)」を使用することで、アプリケーション[B]を用いて、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むことによ り、製品の鑑定証明を行う発明である。 すなわち、本件発明1は、「秘密鍵(α、β)」を使用することで、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むためのアプリケーション[B]を用いることができて、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込む。これに対し、構成要件Dを見ると、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータに書き込む場面においては「秘密鍵(α、 β)」は登場せず、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータに書き込むことと、「秘密鍵(α、β)」とは特許請求の範囲の記載の文言上無関係である。 各構成要件を引用しながら分析すると、以下のとおりである。 すなわち、構成要件C-2及びDは、「アプリケーション[A]を用いて、 前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータに書き込み、」との特許請求の範囲の記載であるから、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータに書き込むためのツールは、「アプリケーション[A]」のみである。したがって、特許請求の範囲の記載上、書き込む時には秘密鍵を使わない。この点については、一般に、ブロックチェーンデータへの書き込 み/ブロックチェーンデータからの読み込み [A]」のみである。したがって、特許請求の範囲の記載上、書き込む時には秘密鍵を使わない。この点については、一般に、ブロックチェーンデータへの書き込 み/ブロックチェーンデータからの読み込みと、「公開鍵」・「秘密鍵」とは本来的に別の技術であることとも整合する。 次に構成要件C-3及びEを検討すると、構成要件C-3は「前記ユーザーが前記製品情報および前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込むために使用されるアプリケーション[B]」であるから、ブロックチ ェーンデータからの読み込みを行うツールは、「アプリケーション[B]」のみであり、「秘密鍵」がブロックチェーンデータからの読み込みを行うツールであるというものではない。このような技術理解は、構成要件C-2及びDに「秘密鍵」が登場しておらず、ブロックチェーンデータへの書き込み時には「秘密鍵」は無関係であり書き込み用アプリケーション[A]を用いる以 上、ブロックチェーンデータからの読み込み時においてもそれとパラレルに 読み込み用アプリケーション[B]を用いるという対応関係で整理されるから、最も自然で合理的な解釈である。 そうすると、構成要件Eの「前記ユーザーが、前記製品に付与された前記秘密鍵α₁、および前記ギャランティカードに付与された前記秘密鍵β₁を使用し、前記アプリケーション[B]を用いて、前記製品の前記製品情報およ び前記取引情報を、前記ブロックチェーンデータから読み込む」という特許請求の範囲の記載は、製品情報及び取引情報を、アプリケーション[B]を用いてブロックチェーンデータから読み込むことを意味しており、「秘密鍵α₁、および・・・秘密鍵β₁を使用し、」は、文脈上直後の「前記アプリケーション[B]を用いて、」に係り、二つの秘密鍵( [B]を用いてブロックチェーンデータから読み込むことを意味しており、「秘密鍵α₁、および・・・秘密鍵β₁を使用し、」は、文脈上直後の「前記アプリケーション[B]を用いて、」に係り、二つの秘密鍵(α、β)を使用することで アプリケーション[B]を用いることができるようになるという意味である。 ⑵ 本件特許の出願時の技術常識「公開鍵」・「秘密鍵」方式は、①公開鍵で暗号化して秘密鍵で復号化するという方式と、逆に、②秘密鍵で暗号化して公開鍵で復号化するという方式がある。①で保護される情報は電子データ自体であり用途は暗号通信である のに対し、②で保護される情報は本人性及び非改竄性であり用途は電子署名である。 このような「公開鍵」・「秘密鍵」の出願時の技術常識を考慮して上記特許請求の範囲の記載の解釈をすると、二つの秘密鍵を使用することでアプリケーション[B]を用いることができるようになるというのであるから、本件 各発明における「秘密鍵」の使い方は、アプリケーション[B]を用いる許可を得る為の本人照合手段であり、比喩的にいえばパスワードのような機能を実現する為に、②秘密鍵で暗号化して公開鍵で復号化するという方式で、本人性(ギャランティカードの所持者であること)を照合しているものである。 すなわち、ユーザーが、製品及びギャランティカードに貼着または組み込 まれた小型記録媒体に記録された「秘密鍵(α、β)」を使用して、秘密鍵α、βを用いてデジタル署名を目的として作成する本人性保証のために暗号化される任意の文字列を暗号化し、専用プラットフォームに保存されている「公開鍵」を用いて復号化することで、コンテンツ(製品情報、取引情報等)の非改竄性及び本人性が保証され、ユーザーにアプリケーション[B]を用い 字列を暗号化し、専用プラットフォームに保存されている「公開鍵」を用いて復号化することで、コンテンツ(製品情報、取引情報等)の非改竄性及び本人性が保証され、ユーザーにアプリケーション[B]を用い る許可が与えられ、製品情報及び取引情報を、アプリケーション[B]を用いてブロックチェーンデータから読み込むことができ、製品の鑑定証明を行うことができる。このことが、構成要件Eに記載されている。 本件発明1は、「秘密鍵」を製品とともに製造業者、流通業者、ユーザーと転々流通するものとし、最終的にユーザーが上記の方式により製品を鑑定証 明できるようにした発明であり、アプリケーション[B]を用いる許可を得るための本人照合手段として、「秘密鍵」を、比喩的にいえばアプリケーション[B]を用いる際のパスワードのような機能を実現するために用いたものである。この意味で、本件発明1は、「秘密鍵」の技術的意味を本来の技術常識と異なる意味で用いているわけではないものの、典型的な事例とは異なる 用い方をしているものである。それでも、製造業者、流通業者などが「秘密鍵」を盗むなどという事態を想定しない性善説に立てば、本件発明1のような方式でも実質的な問題は生じないし、ユーザーが製品を転売するときに、製品及びギャランティカードを移転することで、新しいユーザーも製品の所持者/所有権者という本人確認が「秘密鍵」により可能となり便利であると いう利点もあるため、本件発明1の方式を採用したものである。 ⑶ 発明の詳細な説明及び図面の考慮(法70条2項)以上のような特許請求の範囲の記載解釈は、本件明細書中の発明の詳細な説明及び図面とも整合する。 すなわち、発明の詳細な説明及び図面を精査しても、製品情報及び取引情 報をブロックチェーンデータに書き込むと 特許請求の範囲の記載解釈は、本件明細書中の発明の詳細な説明及び図面とも整合する。 すなわち、発明の詳細な説明及び図面を精査しても、製品情報及び取引情 報をブロックチェーンデータに書き込むときに「秘密鍵」を使うという記載 はない。本件明細書中の実施例を見ても、「本発明の鑑定証明システムは、複雑な流通経路を辿って流通したり、インターネットを通じて販売されたりする要鑑定製品の新製品または中古品を購入したユーザーが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる。」(段落【0037】)という基本の発明を前提とした上で、「さらに、本発明の鑑定証明システムは、製造メーカー・製 造者および流通業者(物流業者、卸売り業者、小売業者等)が、要鑑定製品の製品情報および取引情報を、専用プラットフォームのブロックチェーンデータに順次書き込んでいくことにより、製品情報および取引情報を正確に記録でき、また、製品情報および取引情報が改竄されることを完全に防止することができるため、鑑定証明の信頼性を更に高めることができる。」という発 明であるから(段落【0038】)、「製品情報および取引情報を正確に記録でき、また、製品情報および取引情報が改竄されることを完全に防止することができる」という効果は、ブロックチェーンによる効果である(段落【0010】及び【0013】同旨)。 本件明細書には、以上のようなブロックチェーン技術による製品情報及び 取引情報の正確性が担保されるという発明を前提とした上で、「さらに、本発明の鑑定証明システムは、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁を使用して、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報 定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁を使用して、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことにより、要鑑定製品1およびギャランティカ ード2を所有する真のユーザー4だけが、鑑定証明を行うことができる。」(段落【0039】)という発明であると説明しているから、二つの「秘密鍵」により、「要鑑定製品1およびギャランティカード2を所有する真のユーザー4だけが、鑑定証明を行うことができる」という効果を得られる(段落【0008】、【0009】及び【0012】同旨)。 以上のとおり、本件明細書には、ブロックチェーン技術により「製品情報 および取引情報を正確に記録でき、また、製品情報および取引情報が改竄されることを完全に防止することができる」とともに(段落【0038】)、二つの「秘密鍵」により、「要鑑定製品1およびギャランティカード2を所有する真のユーザー4だけが、鑑定証明を行うことができる」ことが説明されており(段落【0039】)、特許請求の範囲の文言の自然な解釈と完全に合致 する。なお、本件明細書の発明の課題欄においては、「ユーザーのみが信頼性の高い鑑定証明を簡単に行える方法について鋭意検討し、本発明を成したものである。」(段落【0009】)という説明に続いて「さらに、本発明では、製造メーカー・製造者および流通業者が、製品情報および取引情報を、専用プラットフォームのブロックチェーンデータに書き込むことにより、製品情 報および取引情報が改竄されることを完全に防止し、鑑定証明の信頼性を更に高めている。」(段落【0010】)と説明されており、ブロックチェーン技術による製品情報及び取引情報の とにより、製品情 報および取引情報が改竄されることを完全に防止し、鑑定証明の信頼性を更に高めている。」(段落【0010】)と説明されており、ブロックチェーン技術による製品情報及び取引情報の非改竄性担保と、二つの秘密鍵によりユーザーだけが鑑定証明が行えるという本人性担保とを峻別しており、両者をそれぞれの技術(ブロックチェーン技術と「公開鍵」・「秘密鍵」方式)により 担保するという本件発明1を、正しく開示しているものである。 以上のとおり、本件発明1は、コンテンツ(製品情報及び取引情報)をアプリケーション[B]を用いてブロックチェーンデータから読み込むことを意味しており、「秘密鍵α₁、および・・・秘密鍵β₁を使用し、」は、文脈上直後の「前記アプリケーション[B]を用いて、」に係り、二つの秘密鍵(α、 β)を使用することでアプリケーション[B]を用いることができるようになることを意味する。 ⑷ 原告の主張に対する反論これに対し原告は、本件審決における本件発明1の認定は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、本件審決の挙げる「例」も特許請求の範囲 の記載に文言を追加して解釈しているとする。 しかし、法70条1項は、あくまで、特許請求の範囲の記載を自然に解釈して定めるのであって、一字一句補完してはならないという規定ではない。 しかも、法70条2項は、「前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定しており、発明の詳細な説明及び図面を考慮して特許 請求の範囲の記載を解釈するものとしているから、特許請求の範囲の記載の解釈の際に一字一句補完してはならないことはありえず、発明の詳細な説明及び図面を考慮して特 詳細な説明及び図面を考慮して特許 請求の範囲の記載を解釈するものとしているから、特許請求の範囲の記載の解釈の際に一字一句補完してはならないことはありえず、発明の詳細な説明及び図面を考慮して特許請求の範囲の記載を自然かつ合理的に解釈するとされている。 本件発明1を発明の詳細な説明及び図面を考慮して自然かつ合理的に特許 請求の範囲の記載を解釈するならば、被告が主張している特許請求の範囲の記載の解釈が正しく、本件審決もこれと同じであるから、本件発明1の認定に誤りはない。 加えて、原告は、本件審決が行った本件発明1の認定を論難しているだけであり、これに代わる解釈を示している訳でもなく、主張の趣旨が不明であ る。 原告は、構成要件Eに関する主張もするが、本件発明1の構成要件Eは、製品情報及び取引情報をアプリケーション[B]を用いてブロックチェーンデータから読み込むことを意味しており、「秘密鍵α₁、および・・・秘密鍵β₁を使用し、」は、文脈上直後の「前記アプリケーション[B]を用いて、」 に係り、二つの秘密鍵(α、β)を使用することでアプリケーション[B]を用いることができるようになるという日本語である。 確かに、二つの秘密鍵(α、β)は、製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むためのアプリケーション[B]を用いるためのいわゆるパスワード的な役割を果たすものとしてブロックチェーンデータ及び 鑑定証明と間接的な関係はある。構成要件Eはそのことを規定しており、原 告が主張するように、二つの秘密鍵(α、β)を使って直接製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むという規定ではない。 さらに、原告は、「本件発明の秘密鍵がアプリケーション[B]を用いるために必要なパスワード 秘密鍵(α、β)を使って直接製品情報及び取引情報をブロックチェーンデータから読み込むという規定ではない。 さらに、原告は、「本件発明の秘密鍵がアプリケーション[B]を用いるために必要なパスワードであるとの想定・解釈」が限定的にクレーム解釈をしており誤っていると主張する。 しかし、本件審決は「秘密鍵」が「パスワード」であると限定解釈したものではない。本件審決は、あくまで、「2つの秘密鍵(α、β)」は、「製品情報および取引情報をブロックチェーンデータから読み込むためのアプリケーション[B]を用いるための」秘密にされている(一般公開されていない)鍵であるところ、一つの典型的な例としていわゆるパスワード的な役割を果 たすものとして想定しているにすぎない。 原告は、「秘密鍵は、暗号化/復号化のための暗号鍵であることが技術常識(甲1~5)であり、パスワードとして用いられるものではない」と主張するが、法70条1項及び2項から、本件発明1を発明の詳細な説明及び図面を考慮して自然かつ合理的に特許請求の範囲の記載を解釈すると、本件発明 1における「秘密鍵」とは、「製品情報および取引情報をブロックチェーンデータから読み込むためのアプリケーション[B]を用いるための」秘密にされている(一般公開されていない)鍵であり、「製品情報および取引情報をブロックチェーンデータから読み込むための」秘密鍵ではないことが明らかである。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載から認められる本件各発明の技術的意義等本件明細書には、別紙1のとおりの記載があるところ、バッグ、カバン、衣類、時計、美術工芸品、自動車等の鑑定証明が必要とされる製品(要鑑定製品)の鑑定証明システムに関し(【技術分野】、段落【0001】)、従来の技術では、 ギャ 載があるところ、バッグ、カバン、衣類、時計、美術工芸品、自動車等の鑑定証明が必要とされる製品(要鑑定製品)の鑑定証明システムに関し(【技術分野】、段落【0001】)、従来の技術では、 ギャランティカードと製品とを紐付けるものは、製品に刻印された品番だけで あることから、鑑定証明を十分に行うことができず(段落【0004】)、また、製品情報の読み出しに際し、パスワードを設定しない場合には、要鑑定製品の流通業者、ユーザー以外の第三者も製品情報を知ることが可能となり、要鑑定製品が真正品であるか否か、要鑑定製品等の製造年月日が新しいか否か等のユーザーが知られたくない製品情報を第三者が取得可能となり(段落【000 5】)、さらに、パスワードを設定した場合には、要鑑定製品が複雑な流通経路を辿るうちにパスワードが不明となり、必要な場合に鑑定証明が行えなくなる可能性が高くなるとの問題(段落【0005】)があった。 そこで、本件各発明は、複雑な流通経路を辿って流通したり、インターネットを通じて販売されたりする要鑑定製品の新製品又は中古品を購入したユー ザーのみが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる鑑定証明システムを提供することを課題とする(【発明が解決しようとする課題】、段落【0008】)。 そして、その課題を解決するため、本件各発明の構成を採用することにより、複雑な流通経路を辿って流通したり、インターネットを通じて販売されたりす る要鑑定製品の新製品又は中古品を購入したユーザーのみが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができ(【発明の効果】、段落【0012】)、また、製品情報及び取引情報を相互補完しながら正確に記録することもでき、さらに、製品情報及び取引情報が改竄されることを完全に防止できるため、 簡単に行うことができ(【発明の効果】、段落【0012】)、また、製品情報及び取引情報を相互補完しながら正確に記録することもでき、さらに、製品情報及び取引情報が改竄されることを完全に防止できるため、鑑定証明の信頼性を更に高めることができるという効果を奏する(段落【0013】)、と するものである。 2 取消事由1(実施可能要件の判断の誤り)について⑴ 判断基準法36条4項1号に規定する実施可能要件については、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、 過度の試行錯誤を要することなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施 できる程度に明確かつ十分に記載されているかを検討すべきである。 ⑵ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載構成要件E、Fに関する発明の詳細な説明には、【発明を実施するための形態】として、以下の記載がある(下線は判決で付記)。 「図1は、本発明の鑑定証明システムで取り扱われる、複雑な流通経路を 辿って流通したり、インターネットを通じて販売されたりする要鑑定製品1、およびこれと共に販売され、流通するギャランティカード2を示す模式図である。 要鑑定製品1には、秘密鍵α₁、製品情報(商品名、品番、製造メーカー・製造者、製造場所、製造年月日等)を含む情報を記録した小型記録媒体(a₁)1aが貼着または組み込まれており、また、ギャラン ティカード2には、秘密鍵β₁、製品情報を含む情報を記録した小型記録媒体(b)2aが貼着または組み込まれている。小型記録媒体(a₁)1a、小型記録媒体(b)2aとしては、要鑑定製品1およびギャランティカード2の形状、構造、大きさ等に応じて、マイクロチップ、QRコード(登録商標)、電子透かし等の小型記録媒体を適 記録媒体(a₁)1a、小型記録媒体(b)2aとしては、要鑑定製品1およびギャランティカード2の形状、構造、大きさ等に応じて、マイクロチップ、QRコード(登録商標)、電子透かし等の小型記録媒体を適宜用いることができる。」(段落 【0016】)「また、ユーザー4は、アプリケーション[B]10を用いて、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁を使用して、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込 むことができ、これによりユーザーは信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる。この実施形態では、ユーザー4がブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を簡単に読み込めるように、端末[B]6を、スマートフォン6-1としているが、パーソナルコンピュータ等の他の端末も適宜用いることができる。」(段落 【0021】) 「アプリケーション[A]9は端末[A]5にダウンロードされ作動するものであって、これを用いて、製造メーカー・製造者および流通業者(物流業者、卸売り業者、小売業者等)3は、製品情報および取引情報を、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込むことができ、また、アプリケーション[B]10は端末[B]6にダウンロード され作動するものであって、ユーザー4は、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができる。」(段落【0022】)「要鑑定製品1の新製品または中古品を購入したユーザー4は、端末[B]6を用いて、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランテ および取引情報を読み込むことができる。」(段落【0022】)「要鑑定製品1の新製品または中古品を購入したユーザー4は、端末[B]6を用いて、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカ ード2に付与された秘密鍵β₁を使用し、アプリケーション[B]10を用いて、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができる。 これにより、要鑑定製品1およびギャランティカード2を所有する真のユーザーだけが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる。」(段落 【0036】)上記記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ユーザー4は、アプリケーション[B]10を用いて、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁を使用して、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1 の製品情報および取引情報を読み込むことができ」ることが記載されている。 また、上記1のとおりの、「要鑑定製品1およびギャランティカード2を所有する真のユーザーだけが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる」との本件各発明の奏する効果を考慮すると、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ユーザー4が要鑑定製品1およびギャランティカード2を所有す る真のユーザーであるという認証を行った後に、認証されたユーザー4だけ が、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができ」ることも記載されているといえる。 ⑶ 本件特許の出願時の技術常識本件特許の出願時における技術常識を示す文献である甲2(新版 れた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができ」ることも記載されているといえる。 ⑶ 本件特許の出願時の技術常識本件特許の出願時における技術常識を示す文献である甲2(新版暗号技術 入門秘密の国のアリス、2012年〔平成24年〕7月25日第7刷発行)には、「公開鍵信号・・・では、『暗号化の鍵』と『復号化の鍵』を分けます。 送信者は『暗号化の鍵』を使ってメッセージを暗号化し、受信者は『復号化の鍵』を使って暗号文を復号化します。」、「『復号化の鍵』は・・・あなだだけが使うものなのです。ですから、この鍵をプライベート鍵・・・と呼びま す。」「公開鍵で暗号化した暗号文は、その公開鍵とペアになっているプライベート鍵でなければ復号化できません。」、「デジタル署名では、署名の作成と検証とで異なる鍵を使います。署名を作成できるのはプライベート鍵を持っている本人だけですが、署名の検証は公開鍵を使いますので、誰でも署名の検証を行えます」との記載があり、甲1、3、乙2ないし4にもこれと同旨 の記載がある。 そうすると、本件各発明の属する暗号技術分野において、秘密鍵で暗号化し、その秘密鍵と対の関係にある公開鍵で復号化することにより、本人認証を行う公開鍵暗号方式によるデジタル署名技術は、本件特許の出願当時の技術常識であったことが認められる。 ⑷ 判断そうすると、上記⑵の本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、上記⑶の出願当時の技術常識に基づくと、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁及びギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁は、それらと対の関係にある公開鍵と共に、ユーザー4が要鑑定製品1及びギャランティカ ード2を所有する真のユーザーであるという本人認証に使用されることが自 ード2に付与された秘密鍵β₁は、それらと対の関係にある公開鍵と共に、ユーザー4が要鑑定製品1及びギャランティカ ード2を所有する真のユーザーであるという本人認証に使用されることが自 然であると理解できるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、アプリケーション[B]10を用いる許可を得るための本人照合の手段として、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁及びギャランティカード2に付与された秘密鍵β₁で暗号化し、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁と対の関係にある公開鍵で復号化することで本人認証を行うデジタル署名技術により、ユーザー4が要鑑定 製品1及びギャランティカード2を所有する真のユーザーであるという認証がなされ、認証されたユーザー4だけが、専用プラットフォーム8のブロックチェーンデータ8bに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができることが記載されていると理解できる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、本件明細書 の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、構成要件E、Fを含む本件発明1の鑑定証明システムを製造し、使用することができる程度に、明確かつ十分に記載されているものと認められる。 よって、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実 施可能要件を満たしているといえ、本件発明2ないし7についても同様に解される。 したがって、原告の主張する取消事由1は理由がない。 ⑸ 原告の主張に対する判断ア原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴のとおり、本件明細書の発明の 詳細な説明には、構成要件E及びFを具現すべき機能等について記載されておらず、不明瞭であり、出願時の技術常識に 断ア原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴のとおり、本件明細書の発明の 詳細な説明には、構成要件E及びFを具現すべき機能等について記載されておらず、不明瞭であり、出願時の技術常識に基づいてもその具現すべき機能等を当業者が理解できないから実施可能要件を欠く旨を主張する。 しかし、上記⑵ないし⑷で検討したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者において、技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要 することなく特許請求の範囲に記載された本件各発明を実施できる程度 に明確かつ十分に記載されているものと認められる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、本件審決の挙げる「例」は誤りであり、秘密鍵を有するユーザーにパスワードが設定された適切なアプリケーションをダウンロードにより入手させることもできないから、 「例」について実施可能要件違反がある旨を主張する。 しかし、本件審決は、「例」につき、ユーザーが要鑑定製品1及びギャランティカード2を所有する真のユーザーであるという認証について実施可能であることを示す例として示したにすぎず、仮にこの「例」が誤りであったとしても、直ちに本件審決の結論に誤りがあることにはならないか ら、原告の主張は前提を欠くものである。 また、本件明細書の段落【0023】には、「要鑑定製品1の小型記録媒体(a₁)1aに記録された秘密鍵α₁、製品情報を含む情報、および、ギャランティカード2の小型記録媒体(b)2aに記録された秘密鍵β₁、製品情報を含む情報の読み取りは、図2に示すように、パーソナルコンピュ ータ5-1のリーダー5-2や、スマートフォン6-1を接触させて行うこともできる 録媒体(b)2aに記録された秘密鍵β₁、製品情報を含む情報の読み取りは、図2に示すように、パーソナルコンピュ ータ5-1のリーダー5-2や、スマートフォン6-1を接触させて行うこともできるし、NFC(NearFieldCommunication)、RFID(RadioFrequencyIDenticifier)等の近距離無線通信により非接触で行うこともできる。」との記載があり、要鑑定製品1の小型記録媒体(a₁)1a又はギャランティカード 2の小型記録媒体(b)2aから、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁のほかに、製品情報も読み取られているから、この記載に接した当業者であれば、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁ではなく、製品情報に基づいてアプリケーション[B]がダウンロードされると考えることも自然であるということができる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑶のとおり、仮に、本件審決が想 定する上記「例」が実施可能であるとしても、本件発明1に含まれる当該「例」以外の部分について、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、暗号化/復号化をすることが、「アプリケーション[B]」、「読み込み」及び「鑑定証明を行う」等とどのような関係にあるのかも不明であり実施可能要件違反がある旨を主張する。 しかし、上記⑵ないし⑷で検討したとおりであり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者において、技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく特許請求の範囲に記載された本件各発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 取消事由2(実施可能要件の判断の論理 範囲に記載された本件各発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 取消事由2(実施可能要件の判断の論理構成の誤り)について原告は、取消事由2として、本件審決の論理構成は、本件明細書とは別の書面である本件特許請求の範囲が理解できるとの判断に依拠する誤ったものであり、実施可能要件の判断に当たって、本件審決の論理構成には誤りがある旨を主張する。 しかし、本件審決は、「第6 当審の判断」として、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を摘記した上で、本件各発明の技術的意義を明らかにし(第6の1⑴及び⑵)、第6の2において、「物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明 に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。そこで、以下、これを前提に判断する。」(本件審決13頁4行目ないし同頁8行目)との判断の基礎を示した上で、本件各発明の構成要件と本件明細書の発明の詳細な説明の記載の対応関係を検討し(第6の2⑴)、続く第6の2⑵イにおいて、「上記⑴アのとおり、本件発明1の構成要件Eと対応する本件明細書の発 明の詳細な説明の記載は、【0021】、【0022】及び【0036】である。」 (本件審決14頁12行目ないし同頁14行目)、「そうすると、構成要件Eに対応する本件明細書の発明の詳細な説明の上記【0021】、【0022】及び【0036】は、当業者であれば、明確かつ十分に理解し得るものである。」(本件審決15頁9行目ないし同頁11行目)とし、これを基に、同第6の 細書の発明の詳細な説明の上記【0021】、【0022】及び【0036】は、当業者であれば、明確かつ十分に理解し得るものである。」(本件審決15頁9行目ないし同頁11行目)とし、これを基に、同第6の2⑵ウにおいて、「以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者 において、本件発明1に係る物を作り、使用することができる程度に、明確かつ十分な記載があるから、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たしている。」(本件審決15頁13行目ないし同頁16行目)との結論を示したものである。そうすると、本件審決は、本件明細書の発明の詳細な説明(特に、段落【0021】、【0022】及び【0036】) の記載に基づき、実施可能要件を満たす旨を判断する構成を取っているものである。そして、上記2の検討結果によれば、その判断の内容に誤りはなく、本件審決の実施可能要件の判断の論理構成に誤りはない。 したがって、原告の主張する取消事由2は理由がない。 4 取消事由3(実施可能要件の判断の理由不備(理由不存在)・審理不尽)につ いて原告は、取消事由3として、本件審決には、結論のみがあってそれに対応する理由が存在しないから、理由不備(理由不存在)、審理不尽又は判断遺脱などの手続上の瑕疵が存在し、本件審決は取り消されるべきである旨を主張する。 しかし、上記2のとおり、本件審決には、結論に至る過程において、対応する 理由が記載されており、本件審決には、理由不備(理由不存在)、審理不尽及び判断遺脱の違法は存せず、上記2、3によれば、その理由付けにも誤りはない。 したがって、原告の主張する取消事由3は理由がない。 5 取消事由4(本件発明1の認定・解釈の誤り)について原告は、取消事由4として、本件 ず、上記2、3によれば、その理由付けにも誤りはない。 したがって、原告の主張する取消事由3は理由がない。 5 取消事由4(本件発明1の認定・解釈の誤り)について原告は、取消事由4として、本件発明1の構成要件Eについて、特許請求の 範囲の記載の文言に従って解釈すれば足り、それ以上に限定して解釈したり、 特許請求の範囲に記載されていない事項を導入して解釈したりすることは許されないから、本件審決の本件発明1の認定・解釈は誤りである旨主張する。 原告の主張するところの本件審決における本件発明1の認定・解釈の誤りが、本件審決を直ちに違法とするものであるかについて明確ではないものの、被告が主張するとおり、本件発明1の実施可能要件を判断するに当たり、本件発明 1に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することは、法70条1項・2項の規定に基づき当然に行われるべきことであり、原告の主張は前提を欠くものである。そして、前記2ないし4のとおり、本件審決の判断に技術常識に反する点もなく誤りはない。 したがって、原告の主張する取消事由4は理由がない。 6 結論以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 裁判官今井弘晃 裁判官 判官今井弘晃 裁判官水野正則(別紙1特許公報写し、別紙2審決書写し省略)

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