令和6(ネ)10069 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月8日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和4(ワ)22517
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判決文本文28,992 文字)

令和7年10月8日判決言渡 令和6年(ネ)第10069号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第22517号) 口頭弁論終結日令和7年7月28日判決 控訴人 日本製紙クレシア株式会社 同訴訟代理人弁護士 三村量一 同早田尚貴 同高橋綾 同宮澤真志 同訴訟代理人弁理士 片山健一 同補佐人弁理士 土井伸次 同寺本光生 被控訴人 大王製紙株式会社 同訴訟代理人弁護士 片山英二 同大月雅博 同訴訟代理人弁理士 加藤志麻子 同訴訟代理人弁護士 黒田薫 同梶並彰一郎 同訴訟代理人弁理士 石原俊秀 同訴訟代理人弁護士 野中啓孝 同訴訟代理人弁理士 角渕由英 同訴訟代理人弁護士 小幡久樹 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙物件目録記載の各製品を製造し、譲渡し、又は譲渡の申出をしてはならない。 3 被控訴人は、その占有に係る前項の製品を廃 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙物件目録記載の各製品を製造し、譲渡し、又は譲渡の申出をしてはならない。 3 被控訴人は、その占有に係る前項の製品を廃棄せよ。 4 被控訴人は、控訴人に対し、3300万円及びこれに対する令和4年9月21日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。また、原判決中の「原告」、「被告」はそれぞれ「控訴人」、「被控訴人」に読み替える。) 1 本件は、発明の名称を「トイレットロール」とする特許(特許第6735251号。本件特許1)、「ロール製品パッケージ」とする特許(特許第6590596号。本件特許2)及び「トイレットロール」とする特許(特許第6186483号。本件特許3)に係る特許権(本件各特許権)を有する控訴人が、原判決別紙物件目録記載1ないし3の製品(各被控訴人製品)は、本件特許1 の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明1)及び本件特許3の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明3)の技術的範囲に属するものであり、原判決別紙物件目録記載1の製品(被控訴人製品1)及び同目録記載3の製品(被控訴人製品3)は、本件特許2の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された発明(本件発明2)の技術的範囲にも属するものであるから、 被控訴人が各被控訴人製品を製造、譲渡及び譲渡の申出をすることは、控訴人 の本件各特許権を侵害すると主張して、被控訴人に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、各被控訴人製品の製造、譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、3300万円及びこれに対する不法行為の後であ 、特許法100条1項及び2項に基づき、各被控訴人製品の製造、譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、3300万円及びこれに対する不法行為の後である令和4年9月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の 支払を求めた事案である。 原判決は、各被控訴人製品は、本件発明1の構成要件のうちの一つ(構成要件1B「前記エンボスのエンボス深さが0.05~0.40mm」)、及び本件発明3の構成要件のうちの一つ(構成要件3F「前記エンボスパターンの深さが、0.01mm以上0.40mm以下である」)を充足しないから、本件発明 1及び3の技術的範囲に属するとは認められず、被控訴人製品1及び3は、本件発明2の構成要件のうちの一つ(構成要件2E「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、」)を充足せず、本件特許2の特許請求の範囲に記載された構成と均等なも のともいえないから、本件発明2の技術的範囲に属するとは認められないと判断し、控訴人の請求をいずれも棄却したので、控訴人が原判決を不服として控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり控訴人の当審における補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実 及び理由」の記載を省略する。)第2の1ないし3(2頁18行目から52頁26行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 本件発明1及び本件発明3に関する原判決の認定判断の誤りア本件発明1の技術的意義等 以下のと 目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 本件発明1及び本件発明3に関する原判決の認定判断の誤りア本件発明1の技術的意義等 以下のとおり、本件明細書1の記載及び本件発明1の解決課題等から導 かれる「エンボス深さ」の技術的意義からすれば、本件発明1の「エンボス深さ」の測定に当たっては、まず一つのエンボスにおける最も深い位置(最深部)と、当該エンボス周辺において最も高い位置(最高部)を特定した上、最深部と最高部の差分を求め、これを「エンボス深さ」とすべきであり、断面曲線を取得することは必要でない。 (ア) すなわち、本件明細書1において、エンボス深さの測定方法については、「エンボス深さDは、形状測定レーザマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。」(【0021】。以下、明細書の段落は、【】内の番号により特定する。)としか記載がなく、これ以外には何らの方法も指定されていない。したがって、「エンボス深さ」を測定するに当 たっては、「(形状測定レーザ)マイクロスコープ」を用いてエンボスの高低差を測定すれば足り、それを超えて、原判決がいうような特定の方法によらなければならない理由はない。 【0022】ないし【0024】には、X-Y平面上の高さプロファイルからエンボスの最長部aを見分け、この最長部aを横切る線分A- Bを引くことで、エンボス高さプロファイル(断面曲線)を得ることができ、当該断面曲線からP1、P2を認定することでエンボス深さを測定し、さらに最長部aに垂直な方向での最長部bについても同様にエンボス深さを算出し、大きい方の値を採用するという測定方法が記載されている。 しかし、【0022】の冒頭に「まず、図4に示すよ 定し、さらに最長部aに垂直な方向での最長部bについても同様にエンボス深さを算出し、大きい方の値を採用するという測定方法が記載されている。 しかし、【0022】の冒頭に「まず、図4に示すように、」との文言があることからも明らかなように、上記測定方法は、あくまで、エンボスの典型例として、図4に示されるような円又は楕円形状のエンボスにおけるエンボス深さを測定する場合を想定した例示的な記述であり、他の形状のエンボスについてまで、断面曲線からP1、P2を認定する方 法によりエンボス深さを測定しなければならないとするものではない。 すなわち、エンボスの形状が円又は楕円の場合は、最長部が(最も深いと思われる)中心部を通ることになるため、最長部上で断面曲線を取得し、当該断面曲線上で深さを測定することが簡便であり、かつ当該断面曲線上で求めたP1、P2を面積の算出においてそのまま利用することでエンボス深さの測定と面積の測定を簡便に行うことができるが、他の 図形の場合、必ずしも最長部上に最も深い地点が存在するわけではないから、最長部において断面曲線を取得し、当該断面曲線上で深さを測定する合理性はない。したがって、上記測定方法は、円又は楕円以外のエンボス形状の場合にまで妥当するものではなく、最長部aは、あくまで「エンボス1個当たりの面積」を算出する際にのみ必要となる項目と解 すべきである。 (イ) 本件発明1の解決課題は、紙の坪量を下げるというアプローチによることなく、シートの使用感が担保され、かつ、シート及びロールの柔らかさに優れる長巻のトイレットロールを提供することにあり、本件発明1の技術的意義は、本件発明1が規定しているシートやロールの各特性 を相互に調整するというアプローチによって上記課題を解決する点 かさに優れる長巻のトイレットロールを提供することにあり、本件発明1の技術的意義は、本件発明1が規定しているシートやロールの各特性 を相互に調整するというアプローチによって上記課題を解決する点にある。 このような本件発明1の技術的意義、及び本件明細書1の【0018】、【0020】の記載から明らかなとおり、「エンボス深さ」は、シートの柔らかさを向上させ、風合い(使用感)に優れるシートにするために規 定される特性である。シートの柔らかさや風合い(使用感)は、トイレットロールを購入した消費者がこれを実際に使用する際に体感する特性であるから、「エンボス深さ」は消費者が体感する実際の数値を基に算出されなければ技術的に意味がない。このような「エンボス深さ」の意義からすれば、「エンボス深さ」の測定に当たっては、まず一つのエンボス におけるもっとも深い位置(以下「最深部」という。)と当該エンボス周 辺において最も高い位置(以下「最高部」という。)を特定した上、最深部と最高部の差分を「エンボス深さ」とすべきである。原判決が認定したような、最長部a及びbを横切る線分上の断面曲線に限って深さを測定し、当該深さの大きい方を当該エンボスのエンボス深さとすることは、真のエンボス深さではなく、いわば疑似的なエンボス深さをもって測定 しているにすぎず、それによって消費者が当該トイレットロールを実際に使用する際に体感するシートの特性の指標とすることはできないから、原判決のように測定方法を限定的に解釈することは許されない。 そして、エンボスの高低差、すなわち最深部と最高部の差分という観点で「エンボス深さ」を測定するにあたっては、断面曲線を取得するこ とは必要とされない。なぜなら、【0021】に明示されている「マイクロスコープ の高低差、すなわち最深部と最高部の差分という観点で「エンボス深さ」を測定するにあたっては、断面曲線を取得するこ とは必要とされない。なぜなら、【0021】に明示されている「マイクロスコープ」は、高低差を平面上に色で表す前提として、所定範囲内の各地点について高低差を全て数値化できているため、断面曲線を取得することなく直接的にエンボスの最深部と最高部を特定することができ、それらの差分としての「エンボス深さ」を測定することができるからで ある。 このことは、物の形状測定方法に関する技術常識に照らしても明らかである。すなわち、本件明細書1の【0022】以下に記載されているような断面曲線を取得することにより物の形状を測定する方法は、JISB0601において「線粗さ測定」として定義されているのに対し (甲58)、断面曲線を取得することなく面の最高部と最深部を測定する方法は、2012年に制定されたISO25178-2において「面粗さ測定」(表面性状)として定義されている(甲59、60)。 (ウ) 以上に述べたところによれば、本件明細書1の記載及び本件発明1の解決課題等から導かれる「エンボス深さ」の技術的意義からすれば、本 件発明1の「エンボス深さ」を測定するに当たっては、「(形状測定レー ザ)マイクロスコープ」を用いてエンボスの高低差を測定することのほかに何らの測定方法の限定はなく、「(形状測定レーザ)マイクロスコープ」を用いて一つのエンボスにおける最も深い位置(最深部)と当該エンボス周辺において最も高い位置(最高部)を特定した上、最深部と最高部との差分を求め、これを「エンボス深さ」とすべき(いわゆる「面 粗さ測定」)であり、最深部と最高部の特定をするに当たっては、最長部aの認定や断面曲線の取得(い 高部)を特定した上、最深部と最高部との差分を求め、これを「エンボス深さ」とすべき(いわゆる「面 粗さ測定」)であり、最深部と最高部の特定をするに当たっては、最長部aの認定や断面曲線の取得(いわゆる「線粗さ測定」)を行う必要はないというべきである。 イ本件発明3の技術的意義等本件発明3の「エンボスパターンの深さ」についても、本件発明1と同 様に、最深部と最高部の差分を求め、これを「エンボスパターンの深さ」とすべきであり、断面曲線を取得することは必要でない。 すなわち、本件発明1と同様、本件発明3の解決課題は、紙の坪量を下げるというアプローチによることなく、シートの使用感が担保され、かつ、シート及びロールの柔らかさに優れる長巻のトイレットロールを提供す ることにあり、本件発明3の技術的意義は、本件発明1が規定しているシートやロールの各特性を相互に調整するというアプローチによって、上記課題を解決する点にある。 そして、本件発明1と同様、本件発明3についても、本件明細書3には、「マイクロスコープ」を用いてエンボスパターンの高低差を測定すること のほかは何らの限定も存在せず(【0045】)、「エンボスパターンの深さ」を測定するに当たっては、「マイクロスコープ」を用いてエンボスパターンの高低差を測定することのほかに何らの測定方法の限定はない。そして、【0047】以下に記載された測定方法は、あくまでエンボスの典型例として円又は楕円のエンボスにおけるエンボス深さを測定する場合を想定 した記述であり、他の形状の場合にまで、断面曲線からP1、P2を認定 する方法によりエンボス深さを測定することが必要となるものではないこと、上記1で述べた本件発明3の技術的意義からすれば「マイクロスコープ」を用いて最深部 、断面曲線からP1、P2を認定 する方法によりエンボス深さを測定することが必要となるものではないこと、上記1で述べた本件発明3の技術的意義からすれば「マイクロスコープ」を用いて最深部と最高部との差分を求めてこれを「エンボスパターンの深さ」とすべきであり、また最深部と最高部の特定をするに当たって最長部aの認定のみならず断面曲線の取得の必要もないことも、本件発明 1と同様である。 ウ控訴人は、控訴審において新たに各被控訴人製品のエンボス深さを測定し、その結果を提出している。上記ア及びイのとおり、本来、面粗さ測定をすべきであり、線粗さ測定を行う必要はないが、以下の(ア)ないし(エ)のとおり、面粗さ測定及び線粗さ測定のいずれによっても、各被控訴人製品 のエンボス深さは、構成要件1Bにおける「0.05~0.40mm」及び構成要件3Fにおける「0.01mm以上0.40mm以下」との数値範囲をいずれも充足する。 (ア) 甲62は、各被控訴人製品のエンボス深さを「表面粗さ計測」を用いて測定した結果である。また、甲62には、「1.7mm四方」及び「1. 9mm四方」で測定されたエンボスと、「1.5mm四方」で測定されたエンボスが一致していない箇所があったところ、この点を正しく測定したものが甲77である。甲62及び甲77によれば、各被控訴人製品の「エンボス深さ」は0.15mmないし0.22mmであり、いずれも構成要件1Bの「0.05~0.40mm」及び構成要件3Fの「0. 01mm以上0.40mm以下」の各数値範囲を満たす。そして、甲62は、本件明細書1記載の「(形状測定レーザ)マイクロスコープ」であるKEYENCE社製「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」の後継品である同社製「ワンショット3D す。そして、甲62は、本件明細書1記載の「(形状測定レーザ)マイクロスコープ」であるKEYENCE社製「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」の後継品である同社製「ワンショット3D 測定機VR-6100(甲63)を用いて「エンボス深さ」を測定したものであり、本 件明細書1記載の測定方法(前記ア(ア))に従っている。 甲62の「面粗さ測定」は、断面曲線を取得することなくマイクロスコープを用いて直接的に最深部と最高部を特定してその差分を求めたものであるが、甲64の「線粗さ測定」では、念のため、エンボスの中心を通るような放射線状の4本の断面曲線を取得し、当該断面曲線上においてP1、P2を認定する方法によっても「エンボス深さ」を測定した。 当該測定結果によれば、断面曲線を取得する方法により測定された「エンボス深さ」は0.13~0.17mmであり、当該方法による測定結果であっても、構成要件1B及び構成要件3Fの各数値範囲を満たす。 加えて、甲64で取得した断面曲線の中には、対角線上で取得した断面曲線も含まれているところ、当該断面曲線における「エンボスパターン の深さ」は0.09mm~0.17mmであるから、仮に四角形の対角線を最長部aと認定し、対角線上で取得した断面曲線を用いた場合でも、上記数値範囲を満たす。 (イ) 甲72は、小さいスケールの成分を除去した面粗さによるエンボス深さの実験結果報告書である。甲72では、Sフィルタを適用することで 800μm(0.8mm)より小さなスケールの(ノイズや粗さに相当する)成分を除去し、エンボス深さに相当するスケールの(うねりに相当する)成分を取得して評価したものである。甲72によっても、各被控訴人製品のエンボス深さは、構成要件1Bにおける「0.05 さに相当する)成分を除去し、エンボス深さに相当するスケールの(うねりに相当する)成分を取得して評価したものである。甲72によっても、各被控訴人製品のエンボス深さは、構成要件1Bにおける「0.05~0. 40mm」及び構成要件3Fにおける「0.01mm以上0.40mm 以下」との数値範囲をいずれも充足する。 また、甲84は、甲72と同一の測定方法(面粗さ)に基づき外部機関により測定された各被控訴人製品のエンボス深さの測定結果であり、同様に、上記各構成要件の数値範囲を充足するとの結果である。 (ウ) 甲73は、線粗さによるエンボス深さの実験結果報告書である。甲7 3では、カットオフ値λc の低域フィルタを適用することで800μm (0.8mm)より小さな波長の(ノイズや粗さに相当する)成分を除去し、エンボス深さに相当する波長の(うねりに相当する)成分を取得して評価したものである。甲73によっても、各被控訴人製品のエンボス深さは、構成要件1Bにおける「0.05~0.40mm」及び構成要件3Fにおける「0.01mm以上0.40mm以下」との数値範囲 をいずれも充足する。 (エ) 甲85は、甲73と同一の測定方法(線粗さ)に基づく外部機関による測定を示すものであるが、甲73と同様の結果を示している。 甲86及び甲87では、念のため、縦、横に加え、対角線に平行ないし略平行な方向についても線分を引き、それがエンボスを横切る長さが 最長となる箇所及びそれと直交する方向で最長となる箇所についてもエンボス深さを測定したところ、その値はいずれもエンボス深さについて定めた本件特許の構成要件を充足した。したがって、最長部についておよそ採り得る全ての解釈を前提としても、各被控訴人製品はエンボス深さ要件を充足する。 ころ、その値はいずれもエンボス深さについて定めた本件特許の構成要件を充足した。したがって、最長部についておよそ採り得る全ての解釈を前提としても、各被控訴人製品はエンボス深さ要件を充足する。 エ仮に、「エンボス深さ」の測定において最長部aにおける断面曲線の取得が必要であると解釈したとしても、控訴人が原審で提出している甲10報告書及び甲51報告書によって、「エンボス深さ」が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することは立証されている。 すなわち、甲10報告書は、常に横の辺を最長部aとしているわけでは なく、略正方形を水平方向と垂直方向に横切る線をいくつも引くことで、どの線が最も長くなるか(最長部に該当するか)を測定している。 また、甲51報告書については、エンボスを付与されたシートは、通常、エンボスの周縁に隣接する部分が嵩高くなることから、周縁部分の凹凸を比較することで、概ねのエンボス範囲を特定することができる。仮に、P 1、P2の位置を特定する際に、断面曲線上の中央付近、すなわち平面上 のエンボスの中央付近に位置する「上に凸となる曲率極大点」をP1又はP2とした場合、エンボスの半分についてしか深さを測定していないこととなり、周縁に2か所存在するはずの最高値(嵩高くなっている部分)のうちの片方を捨象してエンボス深さを算定することとなるから、真の「エンボス深さ」を測定できていないことになる。エンボスの中央付近に「上 に凸となる曲率極大点」が存在するとしても、あくまでシートの嵩高さは最深部と最高部の差分に起因するものであるから、当該中央付近の「上に凸となる曲率極大点」を捨象しても、シートの嵩高さにより実現されるシートの柔らかさや風合いについて消費者の体感には影響がない。したがって、P1、P2の特定 因するものであるから、当該中央付近の「上に凸となる曲率極大点」を捨象しても、シートの嵩高さにより実現されるシートの柔らかさや風合いについて消費者の体感には影響がない。したがって、P1、P2の特定の際は、断面曲線の中央付近に位置する「上に凸と なる曲率極大点」は捨象し、エンボス周縁付近の「上に凸となる曲率極大点」のみを対象とすべきである。このようにP1、P2の特定を行うとすると、一部のエンボスの断面曲線において、たまたまエンボス周縁付近が「上に凸」であることが分かりにくいものがあるとしても、他のエンボスに対して行った測定結果により各被控訴人製品におけるエンボス深さの 数値は客観的に明らかとなっている。そして、被控訴人商品につき、周縁の位置がより分かりやすい画像(甲67)の測定結果から明らかなとおり、各被控訴人製品におけるエンボスの周縁は特定可能である。 以上によれば、甲10報告書及び甲51報告書に関する原判決の説示の内容はいずれも誤りであり、控訴人測定方法が本件明細書1に記載された エンボス深さの測定方法といえないことの根拠とならない。甲10報告書及び甲51報告書によって、「エンボス深さ」が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することは立証されている。 ⑵ 本件発明2に関する原判決の認定判断の誤りア本件発明2の構成要件2Eの「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」 において「ほぼ長円」であることが要求されるのは、スリットを切抜き、 片部を上方に折り返してパッケージを把持できる開口を備えた状態(開口状態)での指掛け穴であり、構成要件2Eが規定するのは、把持部に「(開口状態において)ほぼ長円となる指掛け穴が形成されていること」と「その指掛け穴が(くりぬきタイプではなく)スリット状であること」であ 態)での指掛け穴であり、構成要件2Eが規定するのは、把持部に「(開口状態において)ほぼ長円となる指掛け穴が形成されていること」と「その指掛け穴が(くりぬきタイプではなく)スリット状であること」であって、切り抜かれる前のスリット自体の平面的な形状が問題となるものでは なく、被控訴人製品1及び3は、開口状態で「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」を有する。 すなわち、本件発明2において、「スリット状の指掛け穴」との文言は、穴の全周が最初から打ち抜かれている「くり抜きタイプ」の指掛け穴と区別する趣旨で、穴の周の一部に非切抜部を設けて片部を残した、いわば「ス リットタイプ」であるような指掛け穴を指すものとして用いられていると理解すべきである。 本件明細書2の【0012】において、「購入者がロール製品パッケージ200を運搬する際に指掛け穴2のスリットを切抜き」と記載されており、「スリット状の指掛け穴を切抜き」と記載されていないことからも分かる とおり、スリット自体はあくまで切り抜かれることによって指掛け穴を形成するための構成にすぎない。したがって、「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」において「ほぼ長円」であることが要求されるのは、あくまでスリットを切抜き、片部を上方に折り返してパッケージを把持できる開口を備えた状態(開口状態)での指掛け穴であり、切り抜かれる前のスリ ット自体の平面的な形状が問題となるものではない。 原判決は、切り抜かれる前のスリットそのものが「指掛け穴」であるとの解釈を採る根拠として、「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴が形成されており」とのクレームの文言上、「指掛け穴」は既に「形成されて」いるものでなければならないことを挙げるが、スリットの切り抜き前にお いても、閉口状態のスリット のスリット状の指掛け穴が形成されており」とのクレームの文言上、「指掛け穴」は既に「形成されて」いるものでなければならないことを挙げるが、スリットの切り抜き前にお いても、閉口状態のスリットタイプの指掛け穴は既に形成されているもの であるから、当該文言は原判決の解釈の裏付けとはならない。 この点は、本件発明2における構成要件2Eの技術的意義からも明らかである。すなわち、本件発明2は、「長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運びやすく、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ 難く、さらに持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供を目的とするもの」(【0005】)であるところ、構成要件2Eの「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴…が形成されて」は、「購入者がロール製品パッケージ200を運搬する際に指掛 け穴2のスリットを切抜き、非切抜部を固定端とする片部を上方に折り返すと、折り返し部がU字形に屈曲するので鋭い端面が生じず、指が痛くならない。」(【0012】)ことを実現するための構成である。ここで問題となるのは、あくまでスリットが切り抜かれ、片部が上方に折り返された開口状態において上記作用効果が奏されるものかどうかであるから、本件発 明2においては、スリットが切り抜かれ、非切抜部を上方に折り返した開口状態の指掛け穴が「ほぼ長円」であることが求められているものと解すべきである。 以上のとおり、本件発明2の構成要件2Eにおいては、把持部に「(開口状態において)ほぼ長円となる指掛け穴が形成されていること」と「その 指掛け ることが求められているものと解すべきである。 以上のとおり、本件発明2の構成要件2Eにおいては、把持部に「(開口状態において)ほぼ長円となる指掛け穴が形成されていること」と「その 指掛け穴が(くりぬきタイプではなく)スリット状であること」が規定されている。 被控訴人製品1及び3において、原判決別紙写真目録2の赤破線で示されたスリットを切り抜き、片部を折り返した場合、片部はスリットの上に設けられた下方に弧状の熱融着部に沿って折り返され、形成される開口は、 ほぼ長円となるから、被控訴人製品1及び3は「ほぼ長円の一つのスリッ ト状の指掛け穴」を有する。 イ構成要件2Eの「スリット状の指掛け穴」を、切り抜かれる前のスリットを意味するものであると解したとしても、被控訴人製品1及び3には「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」が備わっている。 すなわち、被控訴人製品1及び3のスリットにおいて切り抜かれて指掛 け穴となる部分は主にスリットの中央部であり、スリットの両端部は指掛け穴の形成に寄与していない付加的な構成である。 スリットの上には熱融着部が設けられているところ、この熱融着部は、パッケージを把持する際に把持部に掛かる力により、スリットより上の部分の把持部が裂けてしまう可能性があることを前提として、指掛け穴の上 部輪郭の強度を補うために設けられたものと推測される。したがって、スリットと熱融着部との間の領域が切り抜かれて指掛け穴を形成することは、被控訴人製品1及び3においても意図され、予定されているところである。 そして、スリットの中央部は、上方に対して「弧状」、すなわち円ないし 長円に沿った形状であり、これと下方に弧状である熱融着部を合わせれば「ほぼ長円」の形状となる。 したがって、被控 ある。 そして、スリットの中央部は、上方に対して「弧状」、すなわち円ないし 長円に沿った形状であり、これと下方に弧状である熱融着部を合わせれば「ほぼ長円」の形状となる。 したがって、被控訴人製品1及び3の指掛け穴は、「ほぼ長円のスリット状の指掛け穴」(の両端に付加的な下向きの切れ込みのあるもの)といえ、原判決のように、構成要件2Eの「スリット状の指掛け穴」を、切り抜か れる前のスリットを意味するものであると解したとしても、被控訴人製品1及び3には「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」が備わっている。 ウ本件発明2の構成要件の正しい解釈に従えば、仮に被控訴人製品1及び3が本件発明2の全ての構成要件を文言上充足しないとしても、その相違点は製造時に本件発明2から容易に想到できるものであって、これを含む 構成を控訴人が本件発明2の技術的範囲から意識的に除外したこともな いから、少なくとも均等侵害が成立する。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、後記1のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3(5 3頁1行目から75頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の補正⑴ 原判決54頁9行目の「【図4】、【図5】(a)、(b)」の後に「【図6】」を加える。 ⑵ 原判決59頁16行目末尾に「なお、甲51報告書にいう『断面曲線』は、甲10報告書にいう『輪郭曲線』を指すものとして用いられており、測定断面曲線を意味するものではない。」を加える。 ⑶ 原判決60頁7行目及び同頁19行目の「断面曲線」をいずれも「輪郭曲線(甲51報 甲10報告書にいう『輪郭曲線』を指すものとして用いられており、測定断面曲線を意味するものではない。」を加える。 ⑶ 原判決60頁7行目及び同頁19行目の「断面曲線」をいずれも「輪郭曲線(甲51報告書にいう『断面曲線』)」に改める。 ⑷ 原判決64頁14行目から18行目にかけての「このようなダブルエンボスのトイレットロールにおいては、表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが重なるとは限らず、エンボスの周縁が一致することが保証されていないことから、エンボスの周縁が明確にならず、また、エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る。」を「こ のようなダブルエンボスのトイレットロールにおいては、表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが規則性をもって互い違いに重なるとは限らないから、エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る。」に改める。 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断 ⑴ 本件発明1及び本件発明3に関する原判決の認定判断の誤りの主張につい てア控訴人は、前記第2の3⑴アのとおり、本件明細書1の記載及び本件発明1の解決課題等から導かれる「エンボス深さ」の技術的意義からすれば、本件発明1の「エンボス深さ」の測定に当たっては、一つのエンボスにおける最も深い位置(最深部)と当該エンボス周辺において最も高い位置(最 高部)を特定した上、最深部と最高部の差分を求め、これを「エンボス深さ」とすべきであり、断面曲線を取得することは必要でない旨主張する。 しかし、一般に、トイレットペーパーの表面には繊維塊や繊維のない部分などがあり、トイレットペーパーの表面にエンボスを形成した場合、エンボスの内部やトイレットペーパー表面に は必要でない旨主張する。 しかし、一般に、トイレットペーパーの表面には繊維塊や繊維のない部分などがあり、トイレットペーパーの表面にエンボスを形成した場合、エンボスの内部やトイレットペーパー表面に、微細な凹凸が存在する(本件 明細書1の【0023】)。そして、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載には「エンボス深さ」の定義に関する記載はなく、「エンボス深さ」が上記の微細な凹凸を含むのか否かなど、「エンボス深さ」がどの部分の寸法を意味するのかは、特許請求の範囲の記載からは一義的に明らかであるとはいえない。したがって、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載にある「エ ンボス深さ」の用語の意義は、明細書の記載を考慮して解釈すべきである(特許法70条2項)。 本件明細書1の【0023】には、エンボス深さとして、「図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから『輪郭曲線』Wを計算し、この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの変曲点P1、P2と、変曲点P1、 P2ではさまれる最小値を求め、これを深さの最小値Minとする。変曲点P1、P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。このようにして、エンボス深さD=最大値Max-最小値Minとする。又、変曲点P1、P2のX-Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さとする。なお、『輪郭曲線』は、断面曲線からλc:800μm・・・より短波長の表面 粗さの成分を低減フィルタによって除去して得られる曲線である。」と記 載されており、【0024】には、「同様にして、図5(a)において最長部aに垂直な方向での最長部bについてもエンボス深さDを測定し、最長部aとbの各エンボス深さDのうち、大きい方の値をエンボス深さDとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパー10xの表面 て最長部aに垂直な方向での最長部bについてもエンボス深さDを測定し、最長部aとbの各エンボス深さDのうち、大きい方の値をエンボス深さDとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパー10xの表面10aの任意の10個のエンボス2について行い、その平均値を最終的なエンボス深 さDとして採用する。」と記載されているから、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載の「エンボス深さ」の用語の意義は、本件明細書1の上記各段落に記載された測定方法によって測定される数値と解すべきである。 上記の「上に凸となる2つの変曲点P1、P2」は、「上に凸となる2つの曲率極大点」を意味するものと認められる(原判決第3の2⑵)。 また、本件明細書1において「エンボスの周縁frの最長部aを求める」(【0022】)、「変曲点P1、P2のX-Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さと規定する。」(【0023】)と記載されているから、P1、P2は、エンボスの周縁に位置する点をもって特定する必要がある。ところで、各被控訴人製品は、ダブルエンボスのトイレットロールであり、表面 と裏面にそれぞれ付されたエンボスが規則性をもって互い違いに重なるとは限らないから、エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る。実際にも、各被控訴人製品のワンショット画像等によれば、各被控訴人製品のエンボスは、エンボス周縁の位置が明確に特定できるようなものではない(補正の上で引用した原判 決第3の2⑹)。そうすると、各被控訴人製品において、エンボスの位置やエンボスの周縁は、トイレットペーパーの平面上の位置に基づいて特定することはできず、実際の輪郭曲線の凹凸の状況を見た上で、隣り合った上に凸となる2つの曲率極大点をエンボスの周縁と認定し、その間 置やエンボスの周縁は、トイレットペーパーの平面上の位置に基づいて特定することはできず、実際の輪郭曲線の凹凸の状況を見た上で、隣り合った上に凸となる2つの曲率極大点をエンボスの周縁と認定し、その間の低いところをエンボスと認定し、そのような周縁上にP1、P2を認定すること となる。仮に、上に凸となる曲率極大点が3つ以上ある場合に、間に曲率 極大点を1つ以上挟んで、その両側の曲率極大点をP1、P2とするようなことがあるならば、間に挟まれた曲率極大点がエンボスの周縁であることもあり得るから、このように定められたP1、P2は、一つのエンボスの周縁上の点をP1、P2と認定したものとは認められず、本件明細書1の上記段落に記載されたとおりにP1、P2を認定したものとは認められ ない。 本件明細書1の上記各段落に上記のとおり「エンボス深さ」の測定方法が記載されているのであるから、測定方法は、それによるべきである。控訴人主張のように、本件明細書1の記載や本件発明1の解決課題等から導かれる「エンボス深さ」の技術的意義を根拠として、本件発明1の「エン ボス深さ」の測定方法について、本件明細書1の上記各段落に記載の方法と異なる方法を用いるべきと解することはできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ控訴人は、前記第2の3⑴イのとおり、本件発明3の「エンボスパターンの深さ」についても、本件発明1と同様に、最深部と最高部の差分を求 め、これを「エンボスパターンの深さ」とすべきであり、断面曲線を取得することは必要でないと主張する。 しかし、本件明細書3においても、「図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Tから『輪郭曲線』Uを計算し、この輪郭曲線Uのうち、上に凸となる2つの変曲点P1、P2 ことは必要でないと主張する。 しかし、本件明細書3においても、「図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Tから『輪郭曲線』Uを計算し、この輪郭曲線Uのうち、上に凸となる2つの変曲点P1、P2を求めて、変曲点P1とP2で挟まれ る最小値を求めることによって、深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1、P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。」(【0049】)、「このようにして、エンボスパターンの深さD=最大値Max-最小値Minとする。また、変曲点P1、P2のX-Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さと規定する。なお、『輪郭曲線』は、断面曲線からλc:8 00μm(但し、λc はJIS-B0601『3.1.1.2』に記載の『粗 さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ』)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。」(【0050】)、「同様にして、図5(a)において最長部aに垂直な方向での最長部bについてもエンボスパターンの深さDを測定し、最長部aとbの各エンボスパターンの深さDのうち、大きい方の値をエンボスパターンの深さ Dとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパーの表面側の任意の10個のエンボスパターンについて行い、その平均値を最終的なエンボスパターンの深さDとして採用する。」(【0051】)と記載されており、本件発明3に係る特許請求の範囲の記載の「エンボスパターンの深さ」の用語の意義は、本件明細書3の上記各段落に記載された測定方法によって測 定される数値と解すべきである。そして、本件明細書3の上記各段落に記載された測定方法は、本件明細書1の前記各段落に記載された測定方法と同じである。 したがって、本件発明1に関する主張と同様、控訴人 定される数値と解すべきである。そして、本件明細書3の上記各段落に記載された測定方法は、本件明細書1の前記各段落に記載された測定方法と同じである。 したがって、本件発明1に関する主張と同様、控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ控訴人は、前記第2の3⑴ウのとおり、控訴審において新たに各被控訴人製品のエンボス深さを測定した結果により、各被控訴人製品のエンボス深さは、構成要件1B及び構成要件3Fの数値範囲を充足する旨主張するので、以下、控訴人が前記第2の3⑴ウ(ア)ないし(エ)において挙げる各測定結果の証拠について検討する。 (ア) 甲62は、「表面粗さ計測」により、エンボスの領域を指定し、領域内の最大山高さ(Sp)と最大谷深さ(Sv)とを直接測定し、その和である最大高さ(Sz)をエンボス深さとするものである。 しかし、甲62は、本件明細書1及び本件明細書3各記載の測定方法とは異なり、λc:800μmより短波長の表面粗さの成分を低減フィル タによって除去しておらず、かつ、輪郭曲線を求めておらず、輪郭曲線 上で上に凸となる曲率極大点P1、P2も求めていない。 このため、甲62における最大山高さ(Sp)及び最大谷深さ(Sv)は、いずれもλc:800μmより短波長の表面粗さの成分を含んだものとなっており、かつ、甲62の最大山高さ(Sp)は、本件明細書1と異なり、曲率極大点P1とP2の深さの平均値とされていないから、甲 62におけるエンボス深さ(最大高さ(Sz))と、本件明細書1における「エンボス深さ」及び本件明細書3における「エンボスパターンの深さ」とは、測定している対象が異なるというべきである。 したがって、甲62でエンボス深さとされているものは、本件明細書1記載の測定方法によるエン 深さ」及び本件明細書3における「エンボスパターンの深さ」とは、測定している対象が異なるというべきである。 したがって、甲62でエンボス深さとされているものは、本件明細書1記載の測定方法によるエンボス深さ及び本件明細書3記載の測定方法 によるエンボスパターンの深さであるとはいえない。 甲64のエンボス深さは、断面曲線として「測定断面曲線」を用いたものであり、本件明細書1の「エンボス深さ」及び本件明細書3の「エンボスパターンの深さ」とは異なり、λc:800μmより短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去した「輪郭曲線」を用いていな いから、甲64におけるエンボス深さと、本件明細書1に記載された「エンボス深さ」及び本件明細書3に記載された「エンボスパターンの深さ」とは、測定している対象が異なるというべきである。 したがって、甲64でエンボス深さとされているものは、本件明細書1記載の測定方法によるエンボス深さ及び本件明細書3記載の測定方法 によるエンボスパターンの深さであるとはいえない。 (イ) 甲72及び甲84は、Sフィルタを適用することで、800μm(0. 8mm)より小さなスケールの成分を除去した上で測定がされている。 「表面粗さ計測」により、エンボスの領域を指定し、領域内の最大山高さ(Sp)と最大谷深さ(Sv)とを直接測定し、その和である最大高 さ(Sz)をエンボス深さとするものである。 しかし、甲72及び甲84は、甲62と同様に「表面粗さ計測」を用いており、本件明細書1及び本件明細書3各記載の測定方法とは異なり、輪郭曲線を求めておらず、輪郭曲線上で上に凸となる曲率極大点P1、P2も求めていない。甲72及び甲84は、最大山高さ(Sp)を直接測定するものであって、本件明細書1及び本 記載の測定方法とは異なり、輪郭曲線を求めておらず、輪郭曲線上で上に凸となる曲率極大点P1、P2も求めていない。甲72及び甲84は、最大山高さ(Sp)を直接測定するものであって、本件明細書1及び本件明細書3のように輪郭曲 線上の曲率極大点P1とP2の深さの平均値を深さの最大値Maxとするものではないから、甲72及び甲84におけるエンボス深さ(最大高さ(Sz))と、本件明細書1における「エンボス深さ」及び本件明細書3における「エンボスパターンの深さ」とは、測定している対象が異なるというべきである。 したがって、甲72及び甲84でエンボス深さとされているものは、本件明細書1記載の測定方法によるエンボス深さ及び本件明細書3記載の測定方法によるエンボスパターンの深さであるとはいえない。 (ウ) 甲73は、甲64の測定に用いた各エンボスについて、小さい波長の成分を除去した線粗さによるエンボス深さの測定結果とされている。具 体的には、3D画像から、エンボスの周縁形状が略正方形であることを確認したとして、該略正方形の中心を通る縦方向のプロファイル線を1本引き、測定断面曲線を得て、取得した測定断面曲線の傾きを補正するため、「傾き補正(自動補正)」を行った上、計測種別を「うねり」に設定し、カットオフλc0.8mmを適用することで、うねり曲線(本件明 細書1及び本件明細書3にいう輪郭曲線。以下、甲73における「うねり曲線」についても「輪郭曲線」という。)を得て、輪郭曲線から、上に凸となる二つの曲率極大点P1、P2と、曲率極大点P1、P2で挟まれる部分における深さの最小値を求め、これを深さの最小値Minとし、P1、P2の深さの値の平均値を深さの最大Maxとして、エンボス深 さ=最大値Max-最小値Minとし、該略正方形の 2で挟まれる部分における深さの最小値を求め、これを深さの最小値Minとし、P1、P2の深さの値の平均値を深さの最大Maxとして、エンボス深 さ=最大値Max-最小値Minとし、該略正方形の中心を通るプロフ ァイル線をさらに3本(横方向と対角線2本)引き、上記と同様にしてそれぞれのエンボス深さを求め、合計4本の輪郭曲線から求めたエンボス深さの最大値を採用することとされている。 甲73に示された、被控訴人製品1のエンボス4、被控訴人製品2のエンボス5並びに被控訴人製品3のエンボス3及びエンボス10とされ た各エンボスの輪郭曲線は、次のとおりである(赤丸は本判決において付したものである。)。 ① 被控訴人製品1(4ロール)のエンボス4の輪郭曲線 ② 被控訴人製品2(8ロール)のエンボス5の輪郭曲線 ③ 被控訴人製品3(フラワープリント)のエンボス3の輪郭曲線 ④ 被控訴人製品3(フラワープリント)のエンボス10の輪郭曲線 甲73では、輪郭曲線上で緑色又は青色の×印をつけた箇所を曲率極大点P1、P2と特定している。前記アのとおり、エンボス深さを測定する際のP1、P2は、上に凸となる曲率極大点でなければならないと ころ、甲73においてP1、P2として特定された点の中には、その点が上に凸となっていると認められないもの、あるいは、線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明であるものが複数存在する。上記①ないし④においては、各輪郭曲線に赤丸を付けた箇所がこれに該当する。その他、甲73で示された各被控訴人製品の輪郭曲線(上 記①ないし④以外のもの)のうち、P1、P2として特定された点のどちらか一つでも上に凸となっていると認 赤丸を付けた箇所がこれに該当する。その他、甲73で示された各被控訴人製品の輪郭曲線(上 記①ないし④以外のもの)のうち、P1、P2として特定された点のどちらか一つでも上に凸となっていると認められないもの、あるいは線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明なものが含まれる輪郭曲線として、被控訴人製品1のエンボス1の線1、3、エンボス2の線8、エンボス3の線1、2、エンボス5の線1、3、エンボ ス6の線5、7、8、エンボス7の線1、3、4、エンボス8の線5、7、8、エンボス9の線2、4、エンボス10の線5、被控訴人製品2のエンボス1の線1、4、エンボス2の線1、4、エンボス3の線7、8、エンボス4の線1、3、4、エンボス6の線3、4、エンボス7の線7、8、エンボス8の線4、エンボス9の線5、7、8、エンボス1 0の線1、被控訴人製品3のエンボス1の線1、3、エンボス4の線5、6、8、エンボス6の線5、8、エンボス7の線1、3があると認められる。 また、上記各輪郭曲線の中には、甲73においてP1、P2とされた点の間に、上部に凸となっている曲率極大点が存在すると認められるに もかかわらず、それらの点をP1、P2と認定せず、それらの点を挟んでP1、P2を認定しているものがある。上記①ないし④においては、①の線8、②の線7、8、③の線4、④の線5ないし8がこれに該当する。これらの、P1、P2とされた点の間に存在する曲率極大点が、エンボスの周縁でないと認めるに足りる証拠はなく、それらの点を挟んで 認定されたP1、P2は、エンボスの周縁に位置する点をP1、P2と認定するという本件明細書1に記載された方法によってP1、P2を認定したものとは認められない。その他、甲73で示された各被控訴 認定されたP1、P2は、エンボスの周縁に位置する点をP1、P2と認定するという本件明細書1に記載された方法によってP1、P2を認定したものとは認められない。その他、甲73で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点の間に、上部に凸となっている点が存在すると認められるものは、被控訴人製品1のエン ボス1の線3、4、エンボス2の線8、エンボス8の線6、7、エンボス10の線8、被控訴人製品2のエンボス6の線3、4、エンボス7の線8、エンボス9の線7、被控訴人製品3のエンボス4の線7、8、エンボス5の線3、エンボス6の線8である。 各被控訴人製品は、ダブルエンボス、すなわち、トイレットペーパー の表面、裏面の各シートをそれぞれ表面に凹凸を付けるエンボス処理し た後、それぞれのシートの凸部同士を内側にして2枚重ね(2プライ)にしたものであり(原判決第2の1⑸)、各シートのエンボスの凹凸の位置関係を特に調整しないまま上記重ね合わせをしており、このようなダブルエンボスのトイレットペーパーにおいては、表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが規則性をもって互い違いに重なるとは限らないから、 エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る(補正の上で引用した原判決第3の2⑹)。甲73において、P1、P2と特定されている点の中に、上に凸となっているとは認められないもの、あるいは傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明なものが複数存在すること、及び、P1、P2と された点の間に上に凸となっている点が存在する輪郭曲線が存在することも、各被控訴人製品のエンボスの周縁が明確でないことを示しているといえる。 以上を総合すると、甲73でエンボ P1、P2と された点の間に上に凸となっている点が存在する輪郭曲線が存在することも、各被控訴人製品のエンボスの周縁が明確でないことを示しているといえる。 以上を総合すると、甲73でエンボス深さとされているものは、本件明細書1記載の測定方法によるエンボス深さ及び本件明細書3記載の測 定方法によるエンボスパターンの深さであると認められないものが含まれており、甲73において、各被控訴人製品のトイレットロールについてエンボスを10個選んでエンボス深さの測定を行った結果、その測定値が本件発明1の構成要件1Bの範囲内及び本件発明3の構成要件3Fの範囲内であったとしても、各被控訴人製品が構成要件1B及び構成要 件3Fを充足すると認めることはできない。 (エ) 甲85ないし87についても、甲73と同様、曲率極大点P1、P2として特定された点の中に、その点が上に凸となっていると認められないもの、あるいは、線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明であるものが複数存在し、かつ、P1、P2とされた点の 間に、上部に凸となっている点が存在すると認められるにもかかわらず、 このような点をP1、P2として特定していないものがある。 甲85(被控訴人製品1の測定結果のみが記載されている。)で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点のどちらか一つでも上に凸となっていると認められないもの、あるいは線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明であるも のが含まれる輪郭曲線として、エンボス1の線2、3、エンボス2の線6、7、エンボス3の線1、2、3、エンボス4の線6、7、エンボス5の線1、3、エンボス6の線6、7、エンボス8の線6、7、エンボス9の線2、エンボス1 として、エンボス1の線2、3、エンボス2の線6、7、エンボス3の線1、2、3、エンボス4の線6、7、エンボス5の線1、3、エンボス6の線6、7、エンボス8の線6、7、エンボス9の線2、エンボス10の線6、7があると認められる。 甲85で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2とし て特定された点の間に、上部に凸となっている点が存在するのは、エンボス1の線3、エンボス2の線7、エンボス3の線3、エンボス4の線7、エンボス7の線3、エンボス8の線6、エンボス10の線6であると認められる。 甲86(被控訴人製品1の測定結果のみが記載されている。)で示され た各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点のどちらか一つでも上に凸となっていると認められないもの、あるいは線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明であるものが含まれる輪郭曲線として、エンボス1の図1の最長部a、図11の最長部b、エンボス2の図2の最長部a、エンボス3の図3の最長部a、 図13の最長部a、b、エンボス4の図4の最長部b、図14の最長部a、エンボス5の図15の最長部b、エンボス6の図6の最長部a、図16の最長部a、b、エンボス7の図17の最長部b、エンボス8の図8の最長部a、図18の最長部b、エンボス9の図19の最長部b、エンボス10の図10の最長部a、図20の最長部a、bがあると認めら れる。 甲86で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点の間に、上部に凸となっている点が存在すると認められるものは、エンボス1の図1の最長部a、エンボス2の図2の最長部a、図12の最長部b、エンボス3の図3の最長部a、エンボス4の図4の最長部b、エンボス7の図7の最長部 っている点が存在すると認められるものは、エンボス1の図1の最長部a、エンボス2の図2の最長部a、図12の最長部b、エンボス3の図3の最長部a、エンボス4の図4の最長部b、エンボス7の図7の最長部a、エンボス8の図8の最長部a である。 甲87で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点のどちらか一つでも上に凸となっていると認められないもの、あるいは線が傾斜途中にあってエンボス周縁の曲率極大点であるのか不明であるものが含まれると認められる輪郭曲線として、被控訴人 製品1のエンボス1の対角線b、縦横a、エンボス3の対角線b、エンボス4の対角線a、b、縦横a、エンボス5の対角線a、エンボス6の対角線a、b、縦横a、エンボス7の対角線a、b、エンボス8の対角線a、縦横a、エンボス9の縦横a、エンボス10の対角線a、b、縦横a、被控訴人製品2のエンボス1の対角線b、縦横a、エンボス2の 対角線a、エンボス3の対角線b、縦横a、エンボス4の対角線a、b、縦横a、エンボス5の対角線a、b、縦横b、エンボス6の対角線b、縦横a、エンボス7の対角線a、b、縦横b、エンボス8の対角線a、b、縦横a、エンボス9の対角線a、縦横a、エンボス10の縦横a、被控訴人製品3のエンボス2の縦横a、エンボス3の対角線a、縦横a、 エンボス4の対角線b、縦横b、エンボス5の縦横a、エンボス6の縦横a、b、エンボス7の縦横a、エンボス8の縦横a、エンボス10の縦横aがあると認められる。 甲87で示された各被控訴人製品の輪郭曲線のうち、P1、P2として特定された点の間に、上部に凸となっている点が存在すると認められ るのは、被控訴人製品1のエンボス1の対角線a、エンボス4の対角線 a、エンボス7の対 線のうち、P1、P2として特定された点の間に、上部に凸となっている点が存在すると認められ るのは、被控訴人製品1のエンボス1の対角線a、エンボス4の対角線 a、エンボス7の対角線b、エンボス8の対角線b、被控訴人製品2のエンボス4の対角線a、縦横b、エンボス5の対角線a、エンボス6の対角線a、縦横b、エンボス7の縦横b、エンボス9の対角線b、被控訴人製品3のエンボス5の対角線b、エンボス6の対角線b、エンボス9の縦横a、エンボス10の対角線a、縦横aである。 以上によれば、甲85ないし87についても、これらの資料においてエンボス深さとされているものは、本件明細書1及び本件明細書3各記載の測定方法によるエンボス深さであると認められないものが含まれており、甲85ないし87において、各被控訴人製品のトイレットロールについてエンボスを10個選んでエンボス深さの測定を行い、その測定 値が本件発明1の構成要件1Bの範囲内及び本件発明3の構成要件3Fの範囲内であったとしても、各被控訴人製品が構成要件1B及び構成要件3Fを充足すると認めることはできない。 (オ) 上記(ア)ないし(エ)の説示によれば、控訴人が前記第2の3⑴ウ(ア)ないし(エ)において挙げる各測定結果の証拠によっても、各被控訴人製品 のエンボス深さが構成要件1B及び構成要件3Fの数値範囲を充足すると認めることはできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 エ控訴人は、前記第2の3⑴エのとおり、「エンボス深さ」の測定において最長部aにおける断面曲線の取得が必要であると解釈したとしても、控訴 人が原審で提出している甲10報告書及び甲51報告書によって、「エンボス深さ」が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することは立 長部aにおける断面曲線の取得が必要であると解釈したとしても、控訴 人が原審で提出している甲10報告書及び甲51報告書によって、「エンボス深さ」が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することは立証されている旨主張する。 しかし、甲10報告書は、記載された輪郭曲線の図がどの製品に関するものであるのか、記載された各測定においてどのような輪郭曲線が得られ たのか、どの点をP1、P2としたのかが、いずれも不明であるから、甲 10により、各被控訴人製品の「エンボス深さ」が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することが立証されていると認めることはできない。 また、甲51報告書において、P1、P2と特定された点の間に上に凸となる点が存在することは、上に凸となる曲率極大点をP1、P2として特定していない点において、本件明細書1及び本件明細書3に記載された 測定方法と異なるとともに、各被控訴人製品のエンボスの周縁が甲51報告書において特定されたとおりであるのかについて疑問を生じさせる事実であると認められる。そして、甲51報告書において上に凸となっていない点をP1、P2としている箇所も存在することなど、補正の上で引用した原判決第3の2⑹が挙げる諸事情も考慮すれば、甲51報告書による 測定により、各被控訴人製品が構成要件1B及び構成要件3Fを充足することが立証されていると認めることもできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 控訴人は、仮に、P1、P2の位置を特定する際に、断面曲線上の中央付近、すなわち平面上のエンボスの中央付近に位置する「上に凸となる曲 率極大点」をP1又はP2とした場合、エンボスの半分についてしか深さを測定していないこととなり、周縁に2か所存在するはずの最高値(嵩高くな 面上のエンボスの中央付近に位置する「上に凸となる曲 率極大点」をP1又はP2とした場合、エンボスの半分についてしか深さを測定していないこととなり、周縁に2か所存在するはずの最高値(嵩高くなっている部分)のうちの片方を捨象してエンボス深さを算定することとなるから、真の「エンボス深さ」を測定できていないことになると主張する。しかし、前記2⑴アで述べたとおり、各被控訴人製品は、ダブルエ ンボスのトイレットロールであり、表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが規則性をもって互い違いに重なるとは限らないから、エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る。実際にも、各被控訴人製品のワンショット画像等によれば、各被控訴人製品のエンボスは、エンボス周縁の位置が明確に特定できるようなも のではない(補正の上で引用した原判決第3の2⑹)。そうすると、各被控 訴人製品において、エンボスの位置やエンボスの周縁は、トイレットペーパーの平面上の位置に基づいて特定することはできず、実際の輪郭曲線の凹凸の状況を見た上で、隣り合った上に凸となる二つの曲率極大点をエンボスの周縁と認定し、その間の低いところをエンボスと認定し、そのような周縁上にP1、P2を認定することとなる。仮に、上に凸となる曲率極 大点が三つ以上ある場合に、間に曲率極大点を一つ以上挟んで、その両側の曲率極大点をP1、P2とするようなことがあるならば、間に挟まれた曲率極大点がエンボスの周縁であることもあり得るから、このように定められたP1、P2は、一つのエンボスの周縁上の点をP1、P2と認定したものとは認められず、本件明細書1に記載されたとおりにP1、P2を 認定したものとは認められない。控訴人の上記主張は、P1、P2と認 1、P2は、一つのエンボスの周縁上の点をP1、P2と認定したものとは認められず、本件明細書1に記載されたとおりにP1、P2を 認定したものとは認められない。控訴人の上記主張は、P1、P2と認定した点の間に上に凸となる曲率極大点が存在する態様でP1、P2を認定することを前提とするところ、このようなP1、P2の認定は、本件明細書1及び本件明細書3に記載されたとおりにP1、P2を認定したものとは認められないから、控訴人の上記主張は、採用することができない。 ⑵ 本件発明2に関する原判決の認定判断の誤りの主張についてア控訴人は、前記第2の3⑵アのとおり、本件発明2の構成要件2Eの「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」において「ほぼ長円」であることが要求されるのは、スリットを切抜き、片部を上方に折り返してパッケージを把持できる開口を備えた状態(開口状態)での指掛け穴であり、構成 要件2Eが規定するのは、把持部に「(開口状態において)ほぼ長円となる指掛け穴が形成されていること」と「その指掛け穴が(くりぬきタイプではなく)スリット状であること」であって、切り抜かれる前のスリット自体の平面的な形状が問題となるものではなく、被控訴人製品1及び3は、開口状態で「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」を有する旨主張す る。 しかし、構成要件2Eは、「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、」との記載であり、「指掛け穴」は既に「形成」されているものであるから(原判決第3の6⑴)、その「形成」されている「指掛け穴」が「ほぼ長円の一つ のスリット状」、すなわち、切り抜かれる前のスリ 」との記載であり、「指掛け穴」は既に「形成」されているものであるから(原判決第3の6⑴)、その「形成」されている「指掛け穴」が「ほぼ長円の一つ のスリット状」、すなわち、切り抜かれる前のスリットの形状がほぼ長円であると解釈される。 上記解釈は、本件明細書2に「図1は、本発明の実施形態に係るロール製品パッケージ200の斜視図を示す」(【0010】)と記載されており、当該図1に「ほぼ長円のスリット状の指掛け穴2」として、切り抜かれる 前のスリットの形状がほぼ長円であることが図示されていることにも整合する。 したがって、構成要件2Eの「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」は、切り抜かれる前のスリットの形状がほぼ長円であることを意味すると解すべきである。 なお、仮に控訴人主張のように開口状態の形状を見るとしても、被控訴人製品1及び3の指掛け穴に指を掛けた際にできる開口部の形状は、握る力や指の本数等に応じて変化するものであって、必ずしも長円になるとはいえないから、被控訴人製品1及び3は、開口状態で「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」を充足するとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ控訴人は、前記第2の3⑵イのとおり、構成要件2Eの「スリット状の指掛け穴」を、切り抜かれる前のスリットを意味するものであると解したとしても、被控訴人製品1及び3には「ほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴」が備わっている旨主張する。 しかし、上記アのとおり、構成要件2Eの「指掛け穴」については、切 り抜かれる前のスリットの形状がほぼ長円であると解釈すべきであるところ、被控訴人製品1及び3のスリットは、中央は弧状であるとしても、その両端部はそれぞれ外側に湾曲して下方に向か 、切 り抜かれる前のスリットの形状がほぼ長円であると解釈すべきであるところ、被控訴人製品1及び3のスリットは、中央は弧状であるとしても、その両端部はそれぞれ外側に湾曲して下方に向かい、終端が内側に位置するという形状であるから、スリット自体の形状が「ほぼ長円」であるとはいえない。 被控訴人製品1及び3のスリットの両端部が、指掛け穴の形成に寄与していない付加的な構成であると解すべき根拠は認められず、被控訴人製品1及び3のスリットの形状が構成要件2Eの「ほぼ長円」であるか否かを判断するに際し、被控訴人製品1及び3のスリットの両端部分を考慮しないでよいと解することもできない。また、被控訴人製品1及び3において、 スリットと熱融着部との間の領域が切り抜かれて指掛け穴を形成することが予定されているとは認められず、上記判断に際し、被控訴人製品1及び3のスリットの上の熱融着部を含めてスリットの形状を認定すべきと解することもできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ控訴人は、前記第2の3⑵ウのとおり、仮に被控訴人製品1及び3が本件発明2の構成要件を文言上充足しないとしても、少なくとも均等侵害が成立すると主張する。 特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であ っても、①同部分が特許発明の本質的部分ではなく、②同部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、③上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたもので 効果を奏するものであって、③上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたもので あり、④対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又 は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ) 第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 被控訴人製品1及び3のスリットは、中央部分のみが上方に対して弧状であり、両端部はそれぞれ外側に湾曲して下方に向かい、終端が内側に位置する形状であって、本件発明2の構成要件2Eに規定された「指掛け穴」 の形状と異なるから、構成要件2Eの「指掛け穴」の形状を、被控訴人製品1及び3のスリットの形状に置き換えることに、当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであるとは認められず(原判決第3の7)、上記要件の③を充足しない。 さらに、控訴人は、本件異議申立事件における決定の予告の通知後に、 指掛け穴の形状を構成要件2Eの構成に限定しており、このことからすれば、他の指掛け穴の形状を意識的に除外したものと認められ(原判決第3の7)、上記要件の⑤も充足しない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 3 その他、控訴人が縷々主張する内容を検討しても、当審における上記認定判 断(原判決引用部分を含む。)は左 主文 よって、主文のとおり判決する。 理由 、上記要件の⑤も充足しない。したがって、控訴人の主張は採用することができない。 事実 3 その他、控訴人が縷々主張する内容を検討しても、当審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 争点 4 結論以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則

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