主文 1 被告は,A市に対して,2億7431万7442円及びこれに対する平成11年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨主文同旨 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告らの請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者ア原告らは,A市(以下,単に「市」ともいう。)の住民である。 イ被告は,平成14年4月までA市長であった。 (2) 財務会計行為ア A市長であった被告は,平成11年6月ころ,市の火葬場を含む斎場 (以下「本件斎場」という。)を建設するための用地として,牧場を経営するB(以下「牧場主」という。)ほか5名から,別紙1物件目録1~21の土地(以下「本件各土地」といい,個別には「本件1土地」などという。)を合計6億2777万0761円で買い受け,同年8月20日までにその代金のうち4億7057万0761円を支出した。 イ A市長であった被告は,平成11年6月ころ,牛舎移転に伴う損失補償として,牧場主と,3億4849万7278円(内訳は,建物補償費2億7060万2345円,工作物補償費6469万3063円,立木庭木類補償費7万8330円,動産補償費783万0090円,移転雑費529万3450円)を支払う旨の損失補償契約を締結し,同年7月30日にその補償費のうち2億3469万7278円を支出した。 ウ A市長であった被告は,平成11年6月ころ,立木補償費として,Bほか5名と,518万6600円を支払う旨の損失補償契約を締結し,同年7月30日にこれを支出した。 エ A市長であった被告は,平成11年6月ころ,近隣2工場に対する損失補償として,C株式会社との間で13 名と,518万6600円を支払う旨の損失補償契約を締結し,同年7月30日にこれを支出した。 エ A市長であった被告は,平成11年6月ころ,近隣2工場に対する損失補償として,C株式会社との間で1332万3450円の,D株式会社との間で673万2600円の,各損失補償契約を締結し,同年7月30日にこれらを支出した。 (3) 財務会計行為の違法性ア上記(2)ア~エの支出負担行為及び支出に共通する違法性被告は,牧場主所有にかかるE地区の牛舎地(以下「本件牛舎地」といい,同所にある牛舎を「本件牛舎」という。)を含む本件各土地を斎場建設地と決定するに際して,以下のとおり,市長の裁量権を逸脱濫用して,本件各土地以外の立地場所を排除し,意図的に本件各土地での立地を誘導した。 (ア) 被告は,複数の市議会議員から「移転補償等余分な費用を要して高く付くはずだ。」との指摘を受け,これを覆すために,虚偽の内容の別紙2「(仮称)A市斎場建設に伴う用地単価比較表」を急きょ作成して,本件牛舎地がどこよりも安く付くと説得し,市議会の議決を引き出した。 (イ) 被告は,市議会に広い用地買収を認めさせるために,市の目標人口が10万人であるにもかかわらず,「A市は15万人都市を目標としている。」と市議会で述べ,人口15万人規模の本件斎場の建設を認めさせた。 (ウ) 本件牛舎地に本件斎場を建設することは,被告がE区役員に持ちかけて協力させたものであったのに,被告は,市議会において「迷惑施設をお引き受けいただく地元の皆さんの決めたこと。」と虚偽の説明をした。また,長年,火葬場を抱えてきたF住民からの地元における新斎場施設建設の要望やその他の協力申出も退けた。 (エ) 被告は,E区で行われたアンケートの結果が本件各土地における斎場建設計画に不利に作用すると知り,地元出身の職員を きたF住民からの地元における新斎場施設建設の要望やその他の協力申出も退けた。 (エ) 被告は,E区で行われたアンケートの結果が本件各土地における斎場建設計画に不利に作用すると知り,地元出身の職員を使って圧力をかけ,地元の自主的・民主的な取組みを踏みにじった。 (オ) 被告は,本件各土地の所有者や牧場主が行うべき調査や設計委託を市費で行った。 (カ) 被告は,牧場主との間で,「斎場整備事業に伴う用地・補償等に関する協定書」(以下「本件協定書」という。)を締結したが,その中で密かに,次のとおり,裁量権を逸脱濫用する合意をした。 a 市議会における審議前に,土地買収額及び損失補償額を前払いする約束をした。 b 市議会の承認なしに,本件牛舎地とは関係のない牧場主の所有物件に対する補償として1億3000万円を補助金として上乗せするとの約束をした。 c 市が,牧場主に代わって保安林解除義務を負うことを認めた。 d 本件牛舎地の更地での引渡しが,少なくとも2年以上先であることを承認した。 (キ) 平成11年6月の市議会において,上記協定書の存在を隠し,議員からの「斎場建設はいつころか。」との質問に対し,「明年度中には着工できればと考えておりますけれど,もう少し県と具体的な詰めをさせていただいて,時間的な展望が見えた段階で具体的に申し上げたい。」と答え,来年度には斎場建設工事に着工できると事実誤認させて,本件各土地買収の決議をさせた。 (ク) 被告は,本件牛舎の移転先であるGの土地付近にオオタカが営巣していることを知りながら,市議会において,「Hの会のI支部員Jさんが,「オオタカは確認できなかった。営巣していても保安林解除や牛舎建設工事に差し支えない。」と言ったからオオタカの調査はしない。」と発言した。その後,被告は,Jから上記事実はないと抗議を受け,全国 が,「オオタカは確認できなかった。営巣していても保安林解除や牛舎建設工事に差し支えない。」と言ったからオオタカの調査はしない。」と発言した。その後,被告は,Jから上記事実はないと抗議を受け,全国の研究者からも抗議が届いたため,調査をする方針に変更したが,なお「オオタカは移転先から離れている。」などの虚偽の発言を続けた。 さらに,市による調査中に,牧場主による保安林の伐採が行われた。 イ上記(2) アの支出負担行為及び支出の違法性について(ア) 買収の必要性被告が購入した本件各土地のうち,本件1・14~21土地は,本件斎場建設のために不要なものであった。 当時見込まれていたA市の将来人口はせいぜい10万人程度であり,本件斎場の規模もこれを前提としたものとすべきであった。「第4次A市総合計画・ハーモニープランA21・1991-2000」によると,「長期予測として15万人程度が将来の人口の限度と考えられる」との記載もある(31頁)が,「10万人都市に向けて都市規模の拡大が見込まれ・・・10万人都市に適応する住居環境の整備を・・・」との記載もあり(30頁),また,「ハーモニープランA21・第4次A市総合計画後期基本計画・1996-2000」でも「計画目標人口を100,000人と想定します。」と記載されており,実際にも平成13年3月1日時点では8万5416人,平成14年3月1日時点では8万5377人にすぎなかった。 そうであるのに,被告は,市議会において「15万人都市が目標だ。」との発言を繰り返し,本件斎場を人口15万人規模のものにし,市税収入がわずか100億円前後であるのに,26億円余をつぎ込もうとしたもので,裁量権を濫用したというべきである。 (イ) 買収価格a 別紙3の【仮3】のとおり,本件各土地のうち,本件1~7・9~13土地は雑種 100億円前後であるのに,26億円余をつぎ込もうとしたもので,裁量権を濫用したというべきである。 (イ) 買収価格a 別紙3の【仮3】のとおり,本件各土地のうち,本件1~7・9~13土地は雑種地であり1平方メートル当たり1万3600円,本件8土地は宅地であり1平方メートル当たり1万6640円,本件14~21土地は山林であり1平方メートル当たり3000円として買収金額を算出すべきであったのに,本件5土地を除いては,これより高い単価に基づいて買収金額を算出しており,高額にすぎ,違法である。 b 原告の依拠したK不動産鑑定士(以下「K鑑定士」という。)作成の平成11年3月5日付け不動産鑑定評価書(以下「K第2鑑定」という。)の問題点(a) K第2鑑定は,固定資産税評価額から想定される本件各土地価格と大きく乖離していた。 一般に市町村は,適正税額決定のため,3年ごとに不動産鑑定士による課税標準宅地の現況評価を求めており,これに比準して評価を行い,その7割を課税評価額としている。したがって,固定資産評価額に7分の10を乗じた金額は,正常な取引価格の参考となる。 本件各土地の平成12年度の固定資産評価額合計7150万2 197円に7分の10を乗じると1億0214万5996円となるが,K第2鑑定はこの6倍以上の6億2777万0761円であり,相当性を欠く。 (b) K第2鑑定は,E工業団地の用地買収のための不動産鑑定における価格と大きく乖離している。 E工業団地は,本件各土地と隣接した場所にあるところ,その用地買収の際に実施された不動産鑑定(以下「L鑑定」という。)によると,平成6年当時,宅地で1平方メートル当たり1万3300円,平成8年4月当時,山林で1平方メートル当たり320 あるところ,その用地買収の際に実施された不動産鑑定(以下「L鑑定」という。)によると,平成6年当時,宅地で1平方メートル当たり1万3300円,平成8年4月当時,山林で1平方メートル当たり3200円であった。 そして,A市による実際の買収価格は,山林で1平方メートル当たり3000円とL鑑定よりも低く,また,バブル経済崩壊以降,一貫して土地価格の下落が続いていたことを考慮すると,L鑑定よりも低い価格が適正価格となると考えられる。 しかし,K第2鑑定は,L鑑定よりも大幅に高額であり,相当性を欠く。 (c) 本件各土地から最も近いI県地価調査基準地の地価は,平成10年当時,1平方メートル当たり1万2800円で,さらに下落傾向にあった。基準地は,小学校の近くの農村集落の一角の住宅敷地であり,宅地としての成熟度は高い場所である。 K第2鑑定は,本件各土地が上記基準地よりも2倍以上高額であるとするものであり,相当性を欠く。 (d) K第2鑑定は,本件各土地を混合住宅地域(人口密集地で,戸建て住宅以外に商店,集合住宅,ビル等が混在している地域)の土地と比準して鑑定している。しかし,本件各土地のうち宅地部分は,農家住宅地又は熟成度の極めて低い工業地とみるべきである。 また,K第2鑑定は,「業務混合地域」なる概念を用いているが,かかる概念はK鑑定士独自の見解にすぎない。 (e) 市の説明によると,平成8年11月ころ,K鑑定士に評価してもらい4.9億円と鑑定評価された(以下「K第1鑑定」という。)が,その後,大型スーパーが進出するなど周辺の環境が変わり,平成11年2月1日に再鑑定したところ,1. 4億円増の6.3億円になったとのことである。しかし,大型スーパーの進出は,平成8年11月時点で知り得たことであり,K鑑定士はその変化要因を検討した上で4.9億円 年2月1日に再鑑定したところ,1. 4億円増の6.3億円になったとのことである。しかし,大型スーパーの進出は,平成8年11月時点で知り得たことであり,K鑑定士はその変化要因を検討した上で4.9億円と鑑定したはずであり,K第2鑑定は極めて信頼性に欠ける。 c 本件各土地は,大半がいわゆる雑種地であるのに,現況を21筆のうち12筆を宅地,7筆を山林,2筆を雑種地と認定して,K鑑定士に不動産鑑定を依頼し,それを前提として買収に及んだ。 ウ上記(2)イの支出負担行為及び支出の違法性について(ア) 立木庭木類補償費及び移転雑費について立木庭木類補償費7万8330円及び移転雑費529万3450円については,その金額は争わない。 (イ) 建物補償費及び工作物補償費についてa 保安林解除申請書に添付された新築工事見積書(甲99の1・2)によると,移転先における牛舎の新築工事は2億7000万円(消費税を含まず)であり,これを基に建物補償費及び工作物補償費を算出すると,以下のとおり,合計1億6334万4339円が相当であって(別紙4参照),被告主張の金額は高額にすぎる。 ① 移転先建設費270,000,000円② ①に含まれる諸経費率0.1③ 諸経費率0.197④ 消費税率0.05⑤ 移転前後の建物床面積比率 4,410/10,386=0.427⑥ 取壊し工事比率0.24①÷(1+②)×(1+③)×(1+④)×⑤×(1+⑥)=163,344,339b 財団法人I県建設技術センター(以下「建設技術センター」という。)の損失補償評価算定書(以下「本件算定書」という。)の問題点本件算定書には,当然あるべき図面が欠落している,計算式が誤っている,引用されている文書が欠落している,実際の建物よりも高額な単価を使用している,建物の構造を誤っ 下「本件算定書」という。)の問題点本件算定書には,当然あるべき図面が欠落している,計算式が誤っている,引用されている文書が欠落している,実際の建物よりも高額な単価を使用している,建物の構造を誤っているなど多くの誤りがあり,信用性を欠く。また,本件算定書には手書きで訂正された部分もあり,改ざんの疑いさえある。 (ウ) 動産補償費について動産補償費は441万9582円が相当であり(別紙4参照),被告主張の金額は高額にすぎる。籾殻180立方メートル,古タイヤ30立方メートルの補償として250万円が計上されているが,それらが移動に値するものとは考えられない。 エ上記(2)ウの支出負担行為及び支出の違法性について補償の対象とされた立木は,買収不要な北側斜面の土地にあるものであり,損失補償は不要である。 オ上記(2)エの支出負担行為及び支出の違法性について損失を算定することはできないものであり,市は損失補償する法的義務を負わないものであった。 (4) 市の被った損害被告による上記支出負担行為及び支出により,市の被った損害は2億8973万3841円であり,その計算方法は次のとおりである。最終の支出日は平成11年8月20日である。 ① 用地買収額合計 627,770,761円② ①の未払額 157,200,000円③ ①の適正額 267,641,147円④ 牧場に対する損失補償費 348,497,278円⑤ ④の未払額 113,800,000円⑥ ④の適正額 173,135,701円⑦ 立木補償費 5,186,600円⑧ ⑦の適正額 0円⑨ 近隣2工場損失補償費 20,056,050円⑩ ⑨の適正額 0円(①-②-③)+( 費 5,186,600円⑧ ⑦の適正額 0円⑨ 近隣2工場損失補償費 20,056,050円⑩ ⑨の適正額 0円(①-②-③)+(④-⑤-⑥)+(⑦-⑧)+(⑨-⑩)=289,733,841円(5) 住民監査請求の前置ア原告らは,平成11年3月1日,A市監査委員に対して,本件斎場建設計画を中止し,これに関連する契約及び協定等を取り止め,公費の支出を差し止めることをA市長に勧告することを求める住民監査請求を行った。 イ A市監査委員は,平成11年4月28日,上記アの監査請求を理由がないとして棄却した。 ウ原告らは,上記イの監査結果を不服として,平成11年5月19日,本件訴えを津地方裁判所に提起した。 (6) よって,原告らは,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)に基づき,A市に代位して,損害額2億8973万3841円の内金2億7431万7442円及びこれに対する平成11年8月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否及び反論(1) 請求原因(1),(2)の事実は認める。 (2)ア請求原因(3)アの事実は否認する。 (ア) 地方公共団体が土地を取得する場合,取得するかどうか,またその価格等の意思決定については,当該団体の長の権限に属する事項として,その裁量権に委ねられている(地方自治法138条の2,147条)。 (イ) そして,土地の取引は,社会的・経済的な要因に由来する複雑多岐な要素によって制約され,当該取引における当事者の個別的,主観的な事情等の条件に影響される性質がある。したがって,地方公共団体が取得する場合であっても,その対価の決定について当該団体の長に認 雑多岐な要素によって制約され,当該取引における当事者の個別的,主観的な事情等の条件に影響される性質がある。したがって,地方公共団体が取得する場合であっても,その対価の決定について当該団体の長に認められる裁量の範囲は,売主の意向,取得の必要性,代替地の有無等の事情を踏まえ,相当に広範なものになると解すべきである。 a 本件斎場は,市の長年の懸案であった公共施設であり,それまで何度か候補地が上がったものの,地元の反対や地権者の確定が困難であるなどの事情があり,建設地の選定が難航していたところ,E地区の住民の協力と同意を得ることができ,やっとその建設地として同地区内に存する本件牛舎地及びその周辺(本件各土地)が決定されたものである。その際,E区との協定により,本件牛舎地に斎場を建設する代わりに,同地区内の保安林に牛舎建設を移転することとなったものである。 b このように,本件斎場用地の取得は市にとって極めて必要性の高いものであり,1日も早くその建設の着手を要するものであった。そして,斎場という施設の性質上,その候補地は自ずから限定されざるを得ないという制約があった。そのような中で,E地区の協力とともに,地権者,特に牧場主の理解を得なければならないものであった。したがって,買収金額の決定においても,通常の売買とは異なる個別の事情が反映されざるを得ない事情があったのである。 c このような事情の下で,被告は当時のA市長として,本件斎場用地として本件各土地を買収するに際し,専門家による鑑定評価を得た上,その結果に基づいて,本件各土地の買収金額及び物件移転補償費を決定したのである。これらの金額は,専門家の鑑定を経た上,議会の承認を得て決定された適正なものであって,何らその過程に違法不当な瑕疵は存しない。 d また,原告らが主張するように,被告が議会を欺 費を決定したのである。これらの金額は,専門家の鑑定を経た上,議会の承認を得て決定された適正なものであって,何らその過程に違法不当な瑕疵は存しない。 d また,原告らが主張するように,被告が議会を欺き虚偽の説明をした事実などなく,そのほか不動産鑑定評価及び物件移転補償額を水増しするよう指示した事実もない。 (ウ) 以上のとおりであり,本件各土地を買収するに至る被告の行為に,裁量権の逸脱濫用はなかったというべきである。 イ請求原因(3)イの事実は否認する。 (ア) 原告らが不要と主張する森林は,斎場の周囲に必要とされる緑地帯となるべき土地であって,不要な土地ではない。また,原告らが雑種地として評価している土地は,既に牛舎の敷地として利用されている以上,当然,宅地として評価されるべきものである。 (イ) 原告らが主張する宅地の単価1平方メートル当たり1万6640円は鑑定に基づくものではなく,また実際の取引事例もない。雑種地の単価1平方メートル当たり1万3600円は,工業団地用地の買収時になされたL鑑定(甲103の1)に基づくものであるが,これは後述のとおり,本件斎場用地として買収された牛舎地とは土地の種別等が異なり,採用することはできない。山林の単価1平方メートル当たり3000円についても同様である。 (ウ) 本件各土地の買収金額についてa 被告は,K第2鑑定に基づき本件各土地を買収したが,後述のとおり,同鑑定の結果を不合理であるとして退ける理由はなく,これに基づいて本件各土地を買収した被告に裁量権の逸脱濫用の違法はない。もっとも,買収当時,既にE工業団地の買収に際して行われていた鑑定があったのであるから,その鑑定結果も比較検討して買収金額を決めるべきであったといえなくはない。しかし,L鑑定は,平成6年に行われたものであり,E工業団地の造成 業団地の買収に際して行われていた鑑定があったのであるから,その鑑定結果も比較検討して買収金額を決めるべきであったといえなくはない。しかし,L鑑定は,平成6年に行われたものであり,E工業団地の造成が進んだ平成11年当時の本件各土地周辺の状況は相当変化していたと考えられる。したがって,被告がこの点を検討せず,鑑定評価の結果をそのまま採用したからといって,その決定が違法であるとまで認めることはできない。 b また,本件各土地の買収は,市の長年の懸案であった斎場建設のためであり,その取得の必要性は極めて高かった。しかも買収対象地で,牧場を経営している牧場主の協力も不可欠であったことなどの事情に照らせば,実際の買収価格が通常の取引価格(適正価格)に比べ高くなったとしても,やむを得ない事情があったというべきである。 (エ) 適正価格と買収価格の差上記(ウ)bのとおり,適正価格と実際の買収価格との間に一定の幅が許されるべきである。本件の個別的な事情を考慮すれば,少なくとも適正価格の5割までの幅が許されるべきと考える。原告ら主張の3億3112万1237円を本件各土地の適正価格と仮定しても,その5割増しの金額は約4億9650万円であり,既払額4億7057万0761円はこの範囲内である。 したがって,仮に原告ら主張の金額が適正価格であるとしても,被告が現に支出した金額は,上記のとおり,許容範囲内であり,被告に広範な裁量権が認められていること等を考慮すると,被告が裁量権を逸脱濫用しているということはできない。 (オ) 不動産鑑定評価についてaK第2鑑定について(a) K第2鑑定は,本件各土地のうち現況宅地の部分(実測1万8419.56平方メートル,以下「現況宅地部分」という。)の更地価格を1平方メートル当たり2万7400円,現況林地の部分(実測3139 (a) K第2鑑定は,本件各土地のうち現況宅地の部分(実測1万8419.56平方メートル,以下「現況宅地部分」という。)の更地価格を1平方メートル当たり2万7400円,現況林地の部分(実測3139.01平方メートル,以下「現況林地部分」という。)の更地価格を1平方メートル当たり5500円と評価している。 (b) 本件各土地の特性K第2鑑定は,本件各土地近隣地域の地域特性を分析して,当時,整備が進んでいたE工業団地に隣接していることから,その直接的な影響により工場地等としての利用が進むものと見込まれるため,現況宅地部分の最有効利用は再整備を前提とした中規模工場用地として,現況林地部分については中規模工場用地としての利用可能性を内包する低熟成度宅地見込地と判定している。 そして,同鑑定は,標準画地の価格(標準価格)を定めるに当たり,現況宅地部分の地域特性は市街地外縁部から近郊ゾーンの業務混在地域であるとし,現況林地部分の地域特性は市街地近郊の里林地ゾーンを同一供給圏とする地域として,同様の特性を有する取引事例を採用している。 (c) そして,上記取引事例との比較のほか,収益還元法及び公示価格を考慮した上で,標準価格を求め,これに対して,本件各土地の個別的要因に基づく比較検討を行った結果,上記(a)のとおりの評価結果を導いている。 b 取引事例の選択について(a) K第2鑑定が現況宅地部分の地域特性としている業務混在区域とは,農家の辺縁に山林,田畑,工場,倉庫等が混在しており,比較的成熟度の低い地域である。 しかし,本件各土地の隣接地では,E工業団地の造成が相当程度に進んでおり,幹線道路ともいうべき幅員12メートルの市道がまもなく完成する予定であった。本件各土地は,このような地域にある土地であり,E工業団地が完成すれば,工業用地としての利用が 造成が相当程度に進んでおり,幹線道路ともいうべき幅員12メートルの市道がまもなく完成する予定であった。本件各土地は,このような地域にある土地であり,E工業団地が完成すれば,工業用地としての利用が見込まれる土地でもあった。したがって,価格時点では熟成度が低かったとはいえ,将来的には,熟成度の高い工場用地として利用されることが期待されていた。 (b) K第2鑑定は,このような業務混在地域を地域特性として有する事例として,D1~6の取引事例を採用している。これらの事例は,いずれも国道沿いの住宅地又は工業団地に隣接し,商業ないし工業施設が混在する地域である。同鑑定は,これらの取引事例における価格に地域格差を考慮して試算価格を算出して比準価格を得て,さらに収益還元法による収益価格と公示価格を基にした規準価格と比較検討した結果,現況宅地部分の標準価格として1平方メートル当たり3万0800円を得ている。 (c) 原告らは,K第2鑑定による取引事例の選択を不合理であると主張し,M不動産鑑定士(以下「M鑑定士」という。)の意見書(甲131)においても,事例分析が不十分であるとされている。 しかし,平成6年にE工業団地の用地買収のための鑑定を行ったL鑑定においても,取引事例地の説明は,K第2鑑定と同様に簡潔にしか記載されていない。M鑑定士の意見書は,事例地の正確な所在が不明であるといっているが,K第2鑑定では図面を添附して,事例地の位置を指示しているので所在は明らかである。そのほか,K第2鑑定とL鑑定の記載を比較しても,前者の記載が説明不十分であるということはできない。 c 近隣の取引事例(買収事例)を採用しなかった点について(a) 原告らは,本件各土地からわずか600メートルの近い場所に,A市土地開発公社により買収された土地があるにもかかわらず,これを きない。 c 近隣の取引事例(買収事例)を採用しなかった点について(a) 原告らは,本件各土地からわずか600メートルの近い場所に,A市土地開発公社により買収された土地があるにもかかわらず,これを鑑定評価の取引事例として採用してこなかったことが不合理であると主張する。 (b) しかし,これらの土地は平成6年から平成11年にかけて,E工業団地の用地として買収されたものであり,買収当時は,熟成度の低い宅地見込み地であった。 M鑑定士作成に係る不動産鑑定評価書(以下「M鑑定」という。甲132)においても,市道沿いに低工業用地,畑及び林地が混在する地域とされている。しかも,平成6年の買収当時,道路幅員は約4.5メートルしかなく,未舗装であった。また,集落や市の中心街から離れており,道路事情が良くないとされている。さらに,平成6年に買収された土地は土砂採取場となっており,これらの土地がそのまま宅地利用の不可能な土地であったことは明らかである。 (c) これに対して,現況宅地部分は,既に造成が進みつつあるE工業団地に隣接し,幅員約12メートルの舗装された幹線道路(市道)の完成も間近であったもので,既に牛舎地として宅地利用がなされていたものである。このように,工場誘致がなされれば工業地域として発達することが見込まれ,舗装された幹線道路の完成により市街地やN国道で結ばれるO方面までも広域的な需要が見込まれる土地であった。 このように,本件各土地は,工業団地用地として買収された土地とは,道路条件,熟成度,市場性等の価格形成要因が全く異なるものであった。 なお,M鑑定士の意見書では,本件牛舎は違反建築物であるから,その敷地は宅地とはいえないと指摘している。しかし,本件牛舎が違反建築物であるかどうかは知らないが,仮にそうであったとしても現に宅地として利用されてい 士の意見書では,本件牛舎は違反建築物であるから,その敷地は宅地とはいえないと指摘している。しかし,本件牛舎が違反建築物であるかどうかは知らないが,仮にそうであったとしても現に宅地として利用されている以上,宅地であることに変わりはない。 (d) さらに,E工業団地の積算価格は,用地取得費,工事費等を考慮すれば,1平方メートル当たり3万0800円と計算されており,現況宅地部分の評価額である1平方メートル当たり2万7400円に近似しており,K第2鑑定による評価額が著しく高いということはできない。 (e) 以上のとおり,L鑑定の対象となった土地は,E工業団地の開発前の,しかも幹線道路の整備がなされていないときに評価対象とされたものであり,これに対し,開発が相当程度進み,幹線道路が完成した後の本件各土地とは土地の地域特性が全く異なるというべきであり,K第2鑑定がこれを取引事例として採用しなかったとしても不合理ではない。 d 基準地「A-18」を採用しなかった点について(a) 原告らは,K第2鑑定が本件各土地からわずか900メートルの地点にある基準地A-18(E字P1231番地)の基準価格を採用しなかったことが不合理であると主張している。 (b) しかし,上記基準地は,純然たる農家集落地域に存する土地であるのに対し,現況宅地部分は,最有効利用が再整備を前提とした中規模工場用地であり,その地域特性としては,市街地外縁部から近郊ゾーンの業務混在地域に属する土地である。両者は,地域的な種別及び価格形成要因が異なる。また,M鑑定においても,上記基準地は,県道沿いに古くからある農家集落が連担する地域とされている。これに対し,本件各土地は,平成11年3月当時,造成が進むE工業団地に隣接しており,間もなくE工業団地中央線(幅員12メートル)に面することになるとい 古くからある農家集落が連担する地域とされている。これに対し,本件各土地は,平成11年3月当時,造成が進むE工業団地に隣接しており,間もなくE工業団地中央線(幅員12メートル)に面することになるという立地条件を備えていたのである。 (c) 確かに,一般論としては,宅地の価格が1番高く,その次に宅地見込地,農地,林地の順で低くなる傾向はある。そして,同じ宅地であっても,住宅地と工場地を比較した場合,工場地の価格水準は周辺住宅地より低くなる。 (d) この点,本件各土地の地域特性は業務混在区域であり,本件各土地は農家集落の辺縁にあって,山林,田畑,工場,倉庫等が混在している比較的成熟度の低い地域に属する宅地であるから,一般論としては,上記(c)のとおり,農家集落に属する宅地より価格水準は低くなるとも考えられる。 しかし,本件各土地は,E工業団地に隣接し,幅員12メートルの幹線道路が完成すれば,工場・事務所用地として広域的な需要が見込まれる地域に属していたのに対し,上記基準地の属する農家集落は,古くからの農家が集まっている地縁的,閉鎖的な地域であり,土地の需要は極めて限定されたものとならざるを得ない。したがって,本件各土地は,このような純然たる農家集落地域とは地域特性が異なるものといわざるを得ないのである。 (e) 以上のとおり,K第2鑑定が,上記基準地を鑑定に採用しなかったことが不合理であるとは到底いえない。 eM鑑定との相違について(a) M鑑定は,本件各土地の近隣地域の特性を,農家住宅地又は熟成度の極めて低い工業地域と判定し,E工業団地の外延的発展性も極めて低いと決め付けている。 (b) しかし,E工業団地の発展性が極めて低いという評価は,E工業団地の現状を知った後にいえることであって,本件各土地の価格時点(平成11年3月)当時の状況に基 展性も極めて低いと決め付けている。 (b) しかし,E工業団地の発展性が極めて低いという評価は,E工業団地の現状を知った後にいえることであって,本件各土地の価格時点(平成11年3月)当時の状況に基づくとき,E工業団地の将来の利用状況がどのようになるかは予測し難いことであった。確かに,K第2鑑定も近時の地価動向について,工業地における下落傾向も大きな特徴となっていると指摘しているが,そのことと本件各土地の個別評価とは別である。地価の下落傾向はあくまで一般的,巨視的な状況であって,本件各土地の地域特性を判定するに当たっては,個別的な要素を考慮した評価が行われるべきである。したがって,本件各土地が工業団地及び幹線道路(工業団地中央線)の完成により道路事情が格段に改善されて,周辺地域を含む広域的な需要が見込まれる地域に属するものとして評価したK第2鑑定を不当と非難することはできない。 (c) 結局,M鑑定とK第2鑑定の相違は,本件各土地の地域特性をどう見るかという価値判断に関わる問題であって,その点について両者の見解が異なったとしても,一方が絶対的に正しく,他方が絶対間違っているなどとはいえない。 (d) また,原告らは,K第2鑑定の結果だけを捉えて,本件各土地と同じEにある土地が1平方メートル当たり1万円から1万2500円であるのに対し,本件各土地の価格がその2倍以上の1平方メートル当たり2万7000円であるのは余りに高すぎて不合理であると非難している。 しかし,M鑑定で採用されている事例を見ても,同じEにある土地の間に1.5倍ほどの価格差が認められる。すなわち,M鑑定の事例は,いずれもEの県道沿いに古くからある農家集落が連担する地域に属する土地であるが,基準地の単価が1平方メートル当たり1万2800円であるのに対し,事例1の単価は1平方メート 。すなわち,M鑑定の事例は,いずれもEの県道沿いに古くからある農家集落が連担する地域に属する土地であるが,基準地の単価が1平方メートル当たり1万2800円であるのに対し,事例1の単価は1平方メートル当たり1万8600円,事例2の単価は1平方メートル当たり2万1000円で,基準地の単価の1.45~1.64倍である。本件各土地は,同じくEにある土地であり,熟成度の低い業務混在区域(山林,田畑と工場,倉庫等が混在する地域)である点で,価格水準がやや劣るかもしれないが,E工業団地に隣接し,幅員12メートルの幹線道路に面することとなる点を考慮すれば,M鑑定で挙げられた事例より価格水準が高く評価されても決して不合理ではない。 ウ請求原因(3)ウの事実は否認する。 (ア) 本件牛舎移転に伴う損失補償の金額について本件各土地の買収は,市の長年の懸案であった斎場建設のためであり,その取得の必要性は極めて高かった。しかも買収対象地で,牧場を経営している牧場主の協力も不可欠であったことなどの事情に照らせば,本件牛舎移転に伴う実際の損失補償額がいわゆる適正価格に比べ高くなったとしても,やむを得ない事情があったというべきである。 (イ) 適正価格と実際の損失補償額の差上記(ア)のとおり,適正価格と実際の損失補償額との間に一定の幅が許されるべきである。本件の個別的な事情を考慮すれば,少なくとも適正価格の5割までの幅が許されるべきと考える。原告ら主張の1億8855万2100円を適正価格と仮定しても,その5割増の金額は約2億8282万円であり,既払額2億5993万9928円はこの範囲内である。 したがって,仮に原告ら主張の金額が適正価格であるとしても,被告が現に支出した金額は,上記のとおり,許容範囲内であり,被告に広範な裁量権が認められていること等を考慮すると,被 円はこの範囲内である。 したがって,仮に原告ら主張の金額が適正価格であるとしても,被告が現に支出した金額は,上記のとおり,許容範囲内であり,被告に広範な裁量権が認められていること等を考慮すると,被告が裁量権を逸脱濫用しているということはできない。 (ウ) 原告らは,物件移転補償額が著しく不当に高い金額であるとして,独自の評価による補償額を主張している。 しかし,本件における物件移転補償額は,市が建設技術センターに委託して得られた算定結果(本件算定書)に基づいて決定されたものである。建設技術センターは,I県下の公共団体が行う公共事業に関連して,建物補償調査業務等を行う団体であり,本件もその業務としてなされたものである。その算定は,中部地区用地対策連絡協議会が定める補償基準に基づいて行われているものであり,常に客観的かつ公平な基準に則ってなされるものである。 (エ) 原告らは,本件算定書に対して,数えきれないほどの不可解な矛盾や誤記があるとか,改ざんやねつ造が疑われるとか,被告の指示により補償額の水増しが行われたなどと主張しているが,以下のとおり,それらの指摘は重箱の隅をつつくような間違いを指摘するもの,又は根拠のない憶測,想像若しくは悪意ある仮定に基づくいいがかりにすぎない。 a 用紙の形式,数字の書き方について宛名の形式等が異なるのは,建設技術センター内において表記方法が統一されていなかったためであり,また数字の書き方が異なるのは,ワープロではなくテンプレートで修正したために生じたものであって,ねつ造を疑わせるものではない。 b 調査内訳書(甲75)の記載について調査内訳書に記載されたA棟からJ棟は,いずれも牧場主所有の建物であるが,本件斎場建設に関わるのは,A棟からE棟までの5棟である。その他の建物は,斎場用地ではないが,斎場受入地区で )の記載について調査内訳書に記載されたA棟からJ棟は,いずれも牧場主所有の建物であるが,本件斎場建設に関わるのは,A棟からE棟までの5棟である。その他の建物は,斎場用地ではないが,斎場受入地区であるE地区から,斎場建設予定地以外の牛舎施設についても移転の要望が出されたので,その検討資料とするため,併せて補償額の算定を委託したものである。これらは,当初から2つに分けて委託していたもので,成果品としても別々の損失補償算定書が作成されている。補償額の嵩上げを目論んでいたものではない。 c 建物表示の変更について被告が表示の変更を指示したものであって,問題はない。 d 建物の階数等の間違いについて平家建ての建物を2階建てと記載したのは単なる誤記である。図面では平家建てになっている。 また,建築年次について,Qは市の担当者に確認したと言っているが,市の担当者としても,未登記の建物であれば正確な建築年次は建物の所有者に聞くしかない。 所有者が不正確な記憶に基づいて市の担当者に回答しても,確認する手段はないのである。 用途区分の間違いについては,誤記の可能性があるかもしれないが,上記同様,図面は一致している。 原告らは,建築年次を遅らせれば経過年数が変わり再築補償率が微妙に上がるので,補償額を増やすために企てられた可能性があると主張するが,Qが証言するとおり,再築補償率は単純に経過年数だけで決まるものではなく,建物の種別や構造も関係してくるのであって,年度が新しければ補償率が高くなるというものではない。 e そのほか,原告らは,被告が建設技術センターの理事であったことを捉え,水増し工作をした可能性があるなどと主張するが,全く根拠のない憶測でしかない。 また,建設技術センターが下請業者に丸投げしていたなどと主張するが,現地調査は,Qと下請業者のRが行い あったことを捉え,水増し工作をした可能性があるなどと主張するが,全く根拠のない憶測でしかない。 また,建設技術センターが下請業者に丸投げしていたなどと主張するが,現地調査は,Qと下請業者のRが行い,Qの指示の下にRが測定作業を行っていたのであって,丸投げしていたわけではない。 (オ) 物件移転補償額の算定a 原告らは,建設技術センター作成の本件算定書は信用できないとして,独自の方法により補償額を算定している。しかし,建設技術センターが行った算定は,既に述べたとおり,中部地区用地対策連絡協議会が定める補償基準に基づき行われるものであり,その信用性を疑う余地はない。 b 原告らは,建物補償額について,委託内容と成果物が異なるとか,物件の表示記号が異なるとか,あるいは平家建ての建物を2階建てと記載しているなどの理由を挙げて,本件算定書が信用できないと主張しているが,これらの指摘が失当であることは上記(エ)のとおりである。 c 原告らは,本件算定書の金額に訂正を試みているが,それらは独自の方法で計算しているにすぎず,本件算定書の信用性を覆すものではない。 (カ) 原告らによる補償額算定についてa 原告ら主張の算定方法は,移転先の牛舎施設の建設費を基にして,その床面積が現況の床面積と同じでなければならないという前提に立って,補償額を算定するものである。 しかし,物件移転補償額の算定は,現にある建物等を規準にして行うものであって,建物の所有者が移転先で建てる予定の建物を規準にするものではない。原告らは,牧場主が移転先で安上がりの建物を建てようとしているのだから,補償額もそれに見合うものであればよいと言いたいのであろうが,補償額を算定する際には,将来,所有者が実際にどのような建物を建てるのかなど分からないし,建物の建設費は床面積だけで決まるものでもな ら,補償額もそれに見合うものであればよいと言いたいのであろうが,補償額を算定する際には,将来,所有者が実際にどのような建物を建てるのかなど分からないし,建物の建設費は床面積だけで決まるものでもないから,移転先で建てる建物の床面積が増えたからといって,現況の床面積に合わせて補償額を減らさなければならない理由はない。 b いずれにしても,原告ら主張の算定方法は,通常,建設技術センターが補償基準に基づいて行う補償額算定において採用される方法とは異なる独自のものであって,全く信用できない。 エ請求原因(3)エ,オの事実は否認する。 (3) 請求原因(4)のうち,①,②,④,⑤,⑦,⑨の金額は認め,その余の事実は否認する。 (4) 請求原因(5)の事実は認める。 理由 1 請求原因(1),(2)及び(5)の事実は当事者間に争いがない。 2 本件の経緯等上記争いのない事実に証拠(甲1の1・2,2の1の1~3,2の2の1~18,3の1の1~3,3の2の1~3,4の2の1・2,4の3の1~3,5の1・2,6の1・2,8の1・2,9の1,9の2の1~4,11,12の1,13の1,19,22の1・2,24,26~33,34の1・2,35の3,37の1・2,39,41の2・3,42,46~49,50の1・2,51の1・2,52の1・2,53,55,58,59,61の1・2,62の1~3,63,64,65の1~4,70の1~13,71,72,75,76の1・2,77,79の1~3,80の1~3,81の1~3,82の1の1・2,82の2~7,83の1・2,86の1の1~6,86の2の1・2,87の1の1~4,87の2,87の3の1・2,90の1~3,91の1・2,92の1・2,93,99の1・2,100,108,109,117,132,乙3~5,8,29,33, 6,86の2の1・2,87の1の1~4,87の2,87の3の1・2,90の1~3,91の1・2,92の1・2,93,99の1・2,100,108,109,117,132,乙3~5,8,29,33,37,39,44,証人S,証人T)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1) A市には,昭和37年に建設された火葬炉2基を有する火葬場があったが,老朽化が進むとともに,火葬炉が少ないこと,施設が狭いこと,周辺の宅地化が進み移転の要望が出されたことなどから,その移転改築が長年にわたる懸案事項となっていた。 (2) 被告は,平成6年9月16日,市議会全員協議会に斎場建設計画の素案として,「斎場建設に係る基本的な考え方について」と題する文書を提出し,了承された。被告は,これに基づいて,斎場建設の場所を検討の上,E区に協議を要請した。 (3)アこれに対して,E区は,平成8年2月18日,本件斎場が本件牛舎地へ移転することを了承するとともに,本件牛舎をE区開畑地付近(G)へ移転することを求めることが決定された(甲79の1)。 イしかし,E区区長の諮問機関である「明日のEを考える会」が,平成8年10月ころ,同区の20歳以上の住民を対象にアンケート調査を行ったところ,本件各土地への斎場建設に否定的な意見が多数寄せられるなど,住民の中には異論もあった(甲48,49)。 (4) 市内のU地区(F区を含む。)の区長18人とV地区の区長12人は,平成8年11月,E地区における斎場建設計画が危うくなったとして,被告に対し,Fの火葬場跡地に建設することを要望した(甲9の1)。 (5) 市議会は,平成8年12月20日,斎場建設調査特別委員会(以下「特別委員会」という。)を設置し,斎場建設に関する調査,検討を進めた。 (6) 被告は,平成9年1月20日, 望した(甲9の1)。 (5) 市議会は,平成8年12月20日,斎場建設調査特別委員会(以下「特別委員会」という。)を設置し,斎場建設に関する調査,検討を進めた。 (6) 被告は,平成9年1月20日,特別委員会に,「(仮称)A市斎場建設基本計画(案)」を提出した(以下「本件基本計画」という。甲3の1の1)。 この本件基本計画によると,本件斎場を将来の人口15万人に対応できる規模とすること(敷地面積3万5000平方メートル,建物面積2160平方メートル,火葬炉6基(うち,2基は将来増設)),火葬場に加えて通夜や告別式が開催できる葬祭棟を併設すること,斎場建設事業費は約22億円,関連事業費は約4億5000万円,建設地はEの本件各土地,事業期間は平成7年度から平成11年度末などとされていた。 (7) 被告は,平成9年3月,市議会定例会に,平成9年度一般会計当初予算を提出したが,これには斎場建設関係事業費の一部として,事務費,委託料,用地費,補償費3億6167万4000円(以下「本件事業費」という。)が計上されていた。市議会は,これを可決したが,特別委員会で審議検討中であることから,その結論が得られるまでは執行しないとの条件を付した。 (8) 特別委員会は,平成9年4月21日,執行が凍結されていた本件事業費のうち,本件牛舎地の物件移転補償額算出業務委託料1200万円,築炉メーカー選定業務委託料300万円及び事務費203万2000円に限り予算執行を了承した。 (9) 原告らは,平成9年5月9日,被告に対して,地方自治法74条1項に基づき,本件基本計画に対する賛否を問う市民投票条例の制定を請求し(甲4の3の1~3,55),さらに,同月15日,斎場の建設地について,第1にWダムの土捨て場等の公有地を,第2にXを検討するよう求めた(甲55)。 しかし,市議会は を問う市民投票条例の制定を請求し(甲4の3の1~3,55),さらに,同月15日,斎場の建設地について,第1にWダムの土捨て場等の公有地を,第2にXを検討するよう求めた(甲55)。 しかし,市議会は,同月19日,条例制定請求を否決した(甲77)。 また,市議会は,斎場建築計画の再検討を求める請願を受けた(甲9の2の2)が,これを不採択とした。 (10) 特別委員会は,平成9年5月20日,A市斎場建設室作成の別紙2「(仮称)A市斎場建設に伴う用地単価比較表」で説明を受けた。その際,被告や斎場建設室職員は,用地単価比較表は机上の設計であり,厳密に調査した結果のものではないが,おおよその状況を検討してもらうために作成したものである旨を説明した(甲82の1の1)。 特別委員会は,同日,本件基本計画と本件事業費の予算執行を了承した(甲5の2)。 (11) 市は,それ以降,E区及び牧場主,地権者らと,本件斎場の受入れについて協議を継続した。 (12)ア被告は,平成9年5月27日,建設技術センターとの間で,本件牛舎及びE地区に点在する牧場主所有の牛舎の移転に係る損失補償の算定業務を代金1172万8500円,期限同年9月3日として委託した(甲64,75,乙4)。その後,期限は平成10年3月30日まで延長された。 イ建設技術センターは,平成10年3月30日,上記アの委託を受けて,次のとおり,損失補償評価算定書2冊(本件算定書)を完成し,提出した(甲117)。 (ア) 本件牛舎に関するもの(甲108,乙5)損失補償額合計3億4849万7278円建物補償費2億7060万2345円工作物6469万3063円動産補償額783万0090円移転雑費529万3450円立木,庭木類補償額7万8330円(イ) E地区3か所に点在する牛舎に 60万2345円工作物6469万3063円動産補償額783万0090円移転雑費529万3450円立木,庭木類補償額7万8330円(イ) E地区3か所に点在する牛舎に関するもの(甲87の1の3,109)損失補償額合計1億2967万1448円建物補償費1億0661万2090円工作物1421万6388円動産補償額485万2970円移転雑費389万2480円立木,庭木類補償額9万7520円(13) E区では,平成10年8月29日,「市斎場建設に関する市の回答書・協定書(案)のE区同意について」が議案として提出され,多数決により可決された(甲76の1・2)。 (14) 市は,平成11年1月26日,本件各土地の価格の鑑定をK鑑定士に依頼した(甲93)。 (15) 被告は,特別委員会の承認を得て,平成11年2月20日,E区長との間で,「斎場建設に関する協定書」を取り交わした(甲8の1)。その中で,「A市がA市E字Y地内に斎場を建設するについてA市E区は全面的に協力し同意する。」とされていた。 (16) 市は,平成11年2月22日に開催された市議会全員協議会において,本件各土地の不動産鑑定書の提出を求められたが,いまだK第2鑑定が提出されていなかったにもかかわらず,K第2鑑定があるかに装いながら,牧場主や移転先の地権者らとの交渉の妨げになるとして,これを拒絶した(甲2の2の5,8の1)。 (17) 市は,平成11年3月,市議会に平成11年度一般会計当初予算を提出した。これには,本件斎場の用地取得のための公有財産購入費6億3000万円,牛舎移転等の補償填補及び賠償金3億9900万円を含む斎場建設事業費11億5914万7000円が計上されていた。 市議会は,これを可決した。 (18) 「A 得のための公有財産購入費6億3000万円,牛舎移転等の補償填補及び賠償金3億9900万円を含む斎場建設事業費11億5914万7000円が計上されていた。 市議会は,これを可決した。 (18) 「Aの市政を考える会」を構成する原告らを含む20名は,平成11年3月1日,A市監査委員に対して,本件斎場建設計画の中止,これに関連する契約及び協定等の取り止め,公費の支出の差止めを被告に勧告することを求める住民監査請求を行った(甲2の1の1・2,2の2の1~18)。 (19) K鑑定士は,平成11年3月5日,本件牛舎地のうち,現況宅地を1平方メートル当たり2万7400円,現況雑種地を1平方メートル当たり1万9100円,現況林地を1平方メートル当たり5500円(いずれも同年2月1日時点での価格)とし,本件各土地の鑑定評価額合計を6億2777万0761円とする鑑定書(K第2鑑定)を作成し,市に提出した(乙3,44)。 上記鑑定評価額は,平成10年当時の本件各土地から最も近いI県地価調査基準地(宅地)の地価1平方メートル当たり1万2800円と比較して宅地の評価が2倍以上であった(甲132)ほか,平成8年11月ころにK鑑定士が評価した鑑定額(K第1鑑定)と比較しても約28.5パーセント増加したものであった(甲22の2)。 (20) 被告は,平成11年4月1日,牧場主との間で,次のとおり,「斎場整備事業に伴う用地・補償等に関する協定書」(本件協定書)を取り交わした(甲87の1の1・2)。 土地の引渡時期森林法29条の解除予定通知後18か月以内(3条1項)土地代金 5億2385万7999円(2条2項)代替地の取得市は,用地測量業務等の調査並びに牧場主を申請者とする保安林解除及び開発許可等法的な手続に関する調査等を行う。(6条3項)建物及び工作物等に関する補 億2385万7999円(2条2項)代替地の取得市は,用地測量業務等の調査並びに牧場主を申請者とする保安林解除及び開発許可等法的な手続に関する調査等を行う。(6条3項)建物及び工作物等に関する補償金額 3億4849万7278円(8条1項)立木に関する補償金額 205万9440円(8条1項)補助金市は,E区に点在する牧場主の牛舎施設等の移転統合に関して,損失補償基準に基づき算定した補償金額を上限として補助金を交付する。(9条1項,2項)(21) A市監査委員は,平成11年4月28日,上記(18)の監査請求を理由がないとして棄却した(甲1の1)。 (22) 原告らは,上記(21)の監査結果を不服として,平成11年5月19日,本件訴訟を当裁判所に提起した。 (23) 被告は,平成11年6月14日,A市長として,C株式会社との間で1332万3450円の,D株式会社との間で673万2600円の,土地の損失補償契約を締結した。同金員は,同年7月30日に支出された。 (24) 被告は,平成11年6月21日,A市長として,土地所有者らとの間で次のとおりの仮契約を締結した(下記シの契約については同月23日。甲53)。これらの契約のうち,売買契約については,市議会の議決を経たときに本契約とみなすこととされていた。これらの金員のうち,下記イの内金2億3469万7278円及びウ~シについては同年7月30日,下記アの内金3億6665万7999円については同年8月20日にそれぞれ支出された。 ア牧場主との本件2~8・10~16土地の売買契約代金 5億2385万7999円明渡期限平成12年3月31日代金支払時期 3億6665万7999円遅滞なく1億5720万円土地の引渡後イ牧場主との本件4土地上の建物の移転に係る損失補償契約補償金 3億4849 99円明渡期限平成12年3月31日代金支払時期 3億6665万7999円遅滞なく1億5720万円土地の引渡後イ牧場主との本件4土地上の建物の移転に係る損失補償契約補償金 3億4849万7278円(物件移転料 3億3537万3738円)(その他通常受ける損失の補償金 1312万3540円)移転期限平成12年3月31日代金支払時期 2億3469万7278円本契約とみなしたとき1億1380万円移転後ウ牧場主との本件5・14・15土地上の立木に係る損失補償契約補償金 205万9440円代金支払期限本契約とみなしたときエ本件1・19土地の売買契約代金 5443万5110円明渡期限平成11年7月30日代金支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後オ本件19土地上の立木に係る損失補償契約補償金 46万8400円代金支払期限本契約とみなしたときカ本件17土地の売買契約代金 1293万1105円明渡期限平成11年7月30日代金支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後キ本件17土地上の立木に係る損失補償契約補償金 190万2080円代金支払期限本契約とみなしたときク本件18土地の売買契約代金 375万1440円明渡期限平成11年7月30日代金支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後ケ本件18土地上の立木に係る損失補償契約補償金 40万2440円代金支払期限本契約とみなしたときコ本件20・21土地の売買契約代金 1516万4334円明渡期限平成11年7月30日代金支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後サ本件20・21土地上の立木に係る損失補償契約補償金 35万4240円代金支払期限本契約とみなしたときシ本件9土地の売買契約代金 1763 支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後サ本件20・21土地上の立木に係る損失補償契約補償金 35万4240円代金支払期限本契約とみなしたときシ本件9土地の売買契約代金 1763万0773円明渡期限平成11年7月30日代金支払時期土地の引渡し及び所有権移転登記手続後(25) 被告は,地方自治法96条1項8号,同法施行令121条の2第2項,議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例3条により,予定価格2000万円以上の不動産の買入れには市議会の議決が必要となることから,平成11年6月25日,市議会に,本件各土地を総額6億2777万0761円で取得する議案を追加提案し,K第2鑑定の一部を議題終了後に回収する予定とした上で配付した。その後,質疑答弁が行われ,その中で次の応答がなされた(甲29,41の3,42,83の2)。 「Z議員この斎場の建設ですね,じゃその移転先の,例えばこれは保安林の解除,また牛舎地の移転,それが済んでから初めて建設が開始されまして,大体工期は約1年間かかると,このようにお聞きしてるわけですが,それでは大体っていいますか,このままいきますと順調に進んで,じゃいつ移転するのか,いつ着工になって供用開始というか,市民が利用できるようになるのはいつごろと考えてられるのか,お尋ねしたいと思います。 被告保安林の解除と申しますのは,まず初めにそこで作業をしてもよろしいという,いわゆる予定告示をいただくわけです。そして作業が完了したときに初めて検査があって,そしてその一定の部分について解除告示がなされると,こういうような手続になるわけであります。 したがって,我々としては作業にかかれるのは,その予定告示をいただくと,ですからこういうことでこういう工事の仕方をして,こんなふうになりますという されると,こういうような手続になるわけであります。 したがって,我々としては作業にかかれるのは,その予定告示をいただくと,ですからこういうことでこういう工事の仕方をして,こんなふうになりますということでお願いをするのを,なるべく早く図面も完了させて,いろんな測量も終わって,そして手続,具体的なそういう手続にいきたいと思っておりますけれども,今もいろんな手順を一つ一つこれから詰めていく段階にあります。したがって,県のあることでございますから,そう時間的にどうだというようなことは申し上げられませんけれども,予定告示をいただくまでには,少なくとも具体的な作業に入りましてから半年ぐらいはかかるんじゃないかと,こういうぐあいに思っております。 したがって,私どもとしては,その具体的なそういう手続作業にはなるべく早く入っていきたいと,こう思っておりまして,したがって明年度中には着工できればと,こういうぐあいに考えておりますけれども,具体的にいましばらくそういう展望の持てるお答えをさしていただくには,もう少し県と具体的に詰めをさしていただいて,そして時間的な展望が見えました段階で具体的にどんな時期と,こんなふうに申し上げたいと思いますけれども,我々としては将来からの目標に向かって基本的には進めていきたいと,こう思っておりますので,もうしばらく具体的な県との詰めが煮詰まってきますまで,その辺の時間的な問題はお答えはご容赦いただきたいと,こう思います。」「a議員それから次に,今日の財産取得のこの議案ですが,いわゆる6億2700万円の金額が上がっておりますが,これは先ほど鑑定いただいた書類の中で鑑定書の内容どおりであるわけでありますが,ここにいわゆる契約するに当たって相手方との条件等,お互いにあると思うんですが,例えばこれを支払う代わりに更地にしていつ これは先ほど鑑定いただいた書類の中で鑑定書の内容どおりであるわけでありますが,ここにいわゆる契約するに当たって相手方との条件等,お互いにあると思うんですが,例えばこれを支払う代わりに更地にしていつくれるんであるとか,更地にいつやって市に提供されるのか,あるいはそれについては牧場の地権者の方からこの値段で契約するけども,例えば保安林解除してくれることが条件であるとか,そういったお互いの条件があると思うんですが,その条件があればおっしゃっていただきたい。特にこの土地を更地にして市がいつもらえることになるのか,その辺のところもお尋ねしたいと思います。 b助役すべての土地について仮契約をしております。仮契約の内容は本年度末ということになっております。そういった中での契約でございます。 特定の条件ていうのは契約の中でうたっていない,一般的な用地の取得条件だと,いろいろのあれが契約に必要な契約事項で契約されていると,このようになっております。 a議員再度確認いたしますが,あの土地を更地にして市が受け取るのは本年度末と,こういうことで,相手からの特段の条件はないと,こういうことですか。 b助役あの契約の中に特段の条件はうたわれておりません。 a議員いろいろと保安林の問題,心配する問題もありますが,契約内容の中に本年度末に更地で市が受け取るということであれば,それで一応安心するわけでありますけれども,そういうことで本年度末には更地で受け取って,あと保安林解除等の問題でありますが,早く,一日も早く工事に着手するように,これは市民総意の要望でございますのでお願いしたい。」そのほか,市が県の許可を得ないまま保安林内でボーリング調査を行ったことも問題となった。 しかし,結局,本件各土地を総額6億2777万0761円で取得する議案は,賛成15票,反対4票で いしたい。」そのほか,市が県の許可を得ないまま保安林内でボーリング調査を行ったことも問題となった。 しかし,結局,本件各土地を総額6億2777万0761円で取得する議案は,賛成15票,反対4票で可決された(甲6の2)。 (26) I県担当者は,平成11年6月当時,保安林の解除には公益上必要であることが要件とされているところ,本件牛舎は個人の施設であり,公益の施設には当たらないとして,保安林解除は困難との見解を示していた(甲6の1,83の2)。 (27) 平成11年7月ころ,本件牛舎の移転先として予定されているG付近において,絶滅危惧種のオオタカの営巣が疑われた。そこで,市は,同年8月12日,Hの会会員のJの協力を得て確認調査を始めた。 (28) 被告は,平成11年8月31日,I県知事に対し,本件牛舎の移転のために,A市Gの保安林の指定の解除に関する事前相談書を提出し,平成12年8月4日,一部を差し替えた(甲26,59)。 (29) A市土地開発公社は,平成12年1月26日,本件牛舎の移転先とするために,Gの土地約2万3700平方メートルを約4000万円で購入した(甲37の1・2)。 (30) Aの市政を考える会は,平成12年2月9日,林野庁長官に対し,保安林の指定を解除しないことを求める要望書を,I県知事に対しては,保安林解除に向けた手続を行わないことを求める要望書を提出した(甲33)。 (31) 被告は,平成12年2月16日,市議会全員協議会で,Hの会会員のJから本件牛舎の移転先ではオオタカは確認されなかったと報告を受けており,問題ない旨を発言した。 Jは,同月17日,被告に対して,オオタカのものらしい巣が見つかったのが営巣時期を過ぎた8月であったため,翌年の調査を提言しただけであり,その後にオオタカの営巣が明らかになった旨報告していると た。 Jは,同月17日,被告に対して,オオタカのものらしい巣が見つかったのが営巣時期を過ぎた8月であったため,翌年の調査を提言しただけであり,その後にオオタカの営巣が明らかになった旨報告しているとして,抗議するとともに,謝罪と訂正を要求した(甲32)。 (32) Aの市政を考える会は,平成12年2月19日,環境庁長官及びI県知事に対し,保安林に営巣するオオタカの保護を求める要望書を提出した(甲34の1・2)。 (33) 被告は,平成12年3月14日,牧場主との間で,上記(24)アの売買契約における土地の明渡期限,上記(24)イの損失補償契約における移転期限について,同月31日を平成13年3月31日に変更するとの契約を締結した(甲61の1・2)。 (34) 被告は,平成12年5月19日,I県知事に対して,Gにおけるオオタカの調査に関する中間報告を行った(甲51の1)。 (35) 平成12年7月30日,本件牛舎の移転先の保安林の約50本が何者かによって伐採されているのが見つかった(甲50の1)。 原告cらは,平成12年10月2日,保安林の伐採が森林法に違反するとして,被疑者氏名不詳のままA警察署長に告発した(甲62の1・2)。 (36) 被告は,平成13年3月23日,農林水産大臣あてのGの保安林解除申請書を,I県伊賀県民局に提出した(甲72,99の1・2)。これによると,牛舎の新築工事は,牛舎6棟,堆肥舎2棟,事務所1棟及び倉庫1棟を建設するというもので,工事費用は消費税込みで2億8350万円とされていた。 (37) 農林水産大臣は,平成13年11月26日付けで,保安林の指定の解除に関する予定通知を行い,I県は,同年12月4日に解除予定告示を行った(甲90の2・3)。 (38) 被告は,平成14年4月,A市長選挙で再選を目指したが落選し,dが新市 付けで,保安林の指定の解除に関する予定通知を行い,I県は,同年12月4日に解除予定告示を行った(甲90の2・3)。 (38) 被告は,平成14年4月,A市長選挙で再選を目指したが落選し,dが新市長となった。 (39) 牧場主は,平成14年4月13日,被告に対して,平成11年4月1日付け協定書による土地明渡期限を,解除告示後24か月以内と改めてほしいとの要望書を提出した(甲87の1の4)。 (40) d市長は,平成14年9月8日,特別委員会の承認を得て,同月11日,E区長との間で,上記(15)の平成11年2月締結にかかる「斎場建設に関する協定書」について,斎場建設の位置を本件牛舎地からE工業団地内に変更する変更協定書を取り交わした(甲86の2の1)。 (41) d市長は,平成14年9月19日,市議会に対して,斎場建設予定地をE工業団地4号地(E字e4538番2,地積1万5341平方メートル)に変更することを提案し,その理由として,牧場主から上記(39)のような要望があることから,変更により事業期間の短縮が見込まれること,その他事業費の削減,用地確保の容易性及び立地地区の建設同意等を挙げた(甲86の1の1~6)。そして,本件協定書の存在が初めて明らかにされた(甲87の1の1,87の3の1・2)。 市議会特別委員会は,平成14年10月8日,d市長の変更提案を了承した(甲86の2の2)。 (42) d市長は,平成14年10月16日,農林水産大臣に対して,牧場主から上記(39)の要望があり斎場建設事業が大幅に遅延するため,斎場の建設場所を変更することにしたとして,保安林の解除申請を取り下げた(甲90の1)。 (43) 農林水産大臣は,平成14年10月30日,上記(42)の取下げを受けて,上記(37)の保安林解除予定通知を取り消した(甲90の2)。 として,保安林の解除申請を取り下げた(甲90の1)。 (43) 農林水産大臣は,平成14年10月30日,上記(42)の取下げを受けて,上記(37)の保安林解除予定通知を取り消した(甲90の2)。 3 そこで,請求原因(3)アについて検討する。 (1) 上記2の認定事実によれば,従来の火葬場には,①老朽化が進み度々修理が必要となっていた,②市の人口に比して火葬炉が少なく,A市民が近隣の地方公共団体の火葬場を利用しなければならないことがあった,③付近の宅地化が進み,地元住民から移転の要望があったなどの問題があり,また,火葬場自体が一般的にはいわゆる迷惑施設(付近に設置されることが望まれない施設)であるとの特殊性もあるから,火葬場を早期に住宅地域からある程度離れた場所へ移転又は新設する強い必要性があったと認められる。 そして,本件斎場の設置場所の検討に当たっては,その施設の特殊性から,地元住民の意向及び土地の買収を要する場合は地権者の意向を第一に考慮せざるを得ず,加えて,本件斎場を利用することになる市民及び近隣地方公共団体の住民からの交通の便,設置に要する費用及び期間,他に進行中の事業や計画との関係等を総合的に考慮することが必要となるのであって,当該地方公共団体の首長である被告に広範な裁量権があったというべきである。 しかし,それと同時に,議会には地方自治法96条1項に列挙された事項に関する議決権が与えられており,地方公共団体の意思決定のうち基本的なもの及び重要なものについて,執行機関の行政執行に対して事前又は事後の監視,統制という機能を発揮することが予定され,特に,地方自治法96条1項8号に規定する財産の取得又は処分に関しては,地方公共団体の財産の状態に重要な変動をもたらす行為であるために,その適否について,議会の判断に係らしめているから,被告 定され,特に,地方自治法96条1項8号に規定する財産の取得又は処分に関しては,地方公共団体の財産の状態に重要な変動をもたらす行為であるために,その適否について,議会の判断に係らしめているから,被告は,市議会に対して,売買の対象となる不動産及びその価格のみならず,売買の目的や必要性,引渡の時期等の契約の付帯条項等についても,誠実に説明すべき責務があり,これらの説明に重大な誤りや欠落がある場合には,当該財産の取得又は処分に関する契約について審議されたとはいえず,この議会の議決がないと評価すべきものと解される。 (2) しかるに,本件各土地のあるE区では,上記2(3)ア,(11),(13),(15)のとおり,平成8年2月18日に本件牛舎地での斎場建設の受入れが決定され,その後さらに協議が進み,平成10年8月29日のE区臨時総会において「斎場建設に関する協定書」の締結が可決され,平成11年2月20日,被告とE区長との間で「斎場建設に関する協定書」が取り交わされていることからすると,地元住民及び地権者の了解が得られていたということができる。もっとも,上記2(3)イのとおり,平成8年10月ころ反対の声があったこともうかがえるが,それが地元住民の全体的かつ継続的なものであるとは認められず,かかる事態はいずれの場所で建設する場合にも多かれ少なかれ起こるものであるから,このことをもって,了解が得られていないとはいえない。 そして,被告は,①本件各土地は交通の便が良い,②買収交渉の相手方である本件各土地の所有者が明らかとなっている,③本件各土地は集落から比較的離れていて人目に付きにくい,④本件各土地は既に造成されており平坦地が確保できるなどの事情を考慮し,本件牛舎の移転に伴う損失補償の支払が必要になることも前提として,本件各土地での斎場建設を決定したと れていて人目に付きにくい,④本件各土地は既に造成されており平坦地が確保できるなどの事情を考慮し,本件牛舎の移転に伴う損失補償の支払が必要になることも前提として,本件各土地での斎場建設を決定したというのであるから,被告による本件斎場の設置場所の選定自体に裁量権の逸脱濫用があったということはできない。 この点,原告は,別紙2の「(仮称)斎場建設に伴う用地単価比較表」は虚偽の内容であると主張するが,もともとこの比較表は時間的な制約もあって厳密な調査を経て作成されたものではないという事情があり,上記2(10)のとおり,本件斎場の立地条件についてのおおまかな傾向を把握するための資料であること自体は議会において説明されていることからすると,それが正確でないとしても,本件各土地における斎場建設の違法性を基礎付けるものとはいえない。なお,原告らは,本件各土地の有効敷地面積が1万3500平方メートルであることを前提に,修正した総事業費をこれで除して1平方メートル当たりの用地単価を算出しているところ(甲85の1),本件斎場の周囲にある山林は本件斎場に必要なもので一体として機能するものであるから,山林も含めて1平方メートル当たりの用地単価を算出し,これを比較することは特段不合理とはいえない。 原告らは,「被告は,市議会に広い用地買収を認めさせるために,市の目標人口が10万人であるにもかかわらず,「A市は15万人都市を目標としている。」と議会で述べ,人口15万人規模の斎場の建設を認めさせた。」と主張する。確かに,本件斎場は,他の地方公共団体の有する火葬場や斎場に照らして規模の大きいものであったことはうかがえるが,A市の人口や増加見込みについては市議会議員も把握できるのであるから虚偽の説明により市議会議員が誤解して議決したということはできないし,厚生省生活衛生 て規模の大きいものであったことはうかがえるが,A市の人口や増加見込みについては市議会議員も把握できるのであるから虚偽の説明により市議会議員が誤解して議決したということはできないし,厚生省生活衛生局企画課の監修した「火葬場の施設基準に関する研究」を基に計画されているのであって,本件基本計画において計画された本件斎場の規模がA市民及びこれを利用する可能性のある近隣の地方公共団体の住民の人数に比して,違法性を帯びるほどに過大ということはできない。 原告らは,「本件牛舎地の立地は,被告がE区役員に持ちかけて協力させたものであったのに,被告は,議会において「迷惑施設をお引き受け戴く地元の皆さんの決めたこと」と虚偽の説明をした。また,長年火葬場を抱えてきた東町住民からの地元における新斎場施設建設の要望やその他の協力申出も退けた。」と主張する。しかし,本件牛舎地を建設予定地とすることについて,被告ら市側とE区のいずれから発案されたかは結局のところ不明であるといわざるを得ず,またE区がこれを了承していること自体はそのとおりなのであって,被告の説明が虚偽と断定することはできない。また,上記2(4)のとおり,F区付近の区長30名が,平成8年11月ころ,Fに斎場を建設することを要望したことは認められるが,それがF区住民の総意であるかやその意思が継続的なものであるかは不明であって,E区との協議が既に進行していた時期であることを考慮すると,Fを建設地から外したことに裁量権の逸脱はない。 原告らは,上記2(3)イに関して,「被告は,E区で行われたアンケートの結果が本件計画に不利に作用すると知り,地元出身の職員を使って圧力をかけ,地元の自主的・民主的な取組みを踏みにじった。」と主張するが,被告が何らかの圧力をかけたことを認めるに足りる証拠はない。 原告らは,「被告 画に不利に作用すると知り,地元出身の職員を使って圧力をかけ,地元の自主的・民主的な取組みを踏みにじった。」と主張するが,被告が何らかの圧力をかけたことを認めるに足りる証拠はない。 原告らは,「被告は,本件各土地の所有者や事業主が行うべき調査や設計委託を市費で行った。」と主張するが,仮にこれが違法であるとしても,その違法は当該調査や設計委託に要した費用にかかる財務会計行為に関するものであって,本件で問題とされる財務会計行為の違法性には影響を与えない。 原告らは,上記2(27),(31)に関して,「被告は,本件牛舎の移転先付近にオオタカが営巣していることを知りながら,市議会において,オオタカは確認できなかったなどと虚偽の発言を繰り返した。」と主張するが,オオタカの営巣が問題となったのは平成11年7月以降のことであるところ,本件基本計画は平成9年1月に明らかにされ,本件各土地の売買仮契約や損失補償契約は平成11年4月から同年6月にかけて締結され,本件各土地の取得に関する市議会の議決は同月25日になされているのであって,遡って違法性を基礎付けるものとは認められない。 (3) しかし,被告は,上記2(20),(24)のとおり,平成11年4月1日,本件牛舎地の引渡時期を森林法29条の解除予定通知後18か月以内とし,E区に点在する牧場主の牛舎施設等の移転統合に関して,市が保安林解除申請手続を行うこと,損失補償基準に基づき算定した補償金額を上限として補助金を交付することを内容に含んだ本件協定書を取り交わし,その後の同年6月21日,本件牛舎地の明渡期限を本件協定書と異なる平成12年3月31日とする売買仮契約書を締結している。そして,上記2(33),(39)のとおり,牧場主が平成14年4月13日被告に対して,平成11年4月1日付け協定書による土地明渡期限を 書と異なる平成12年3月31日とする売買仮契約書を締結している。そして,上記2(33),(39)のとおり,牧場主が平成14年4月13日被告に対して,平成11年4月1日付け協定書による土地明渡期限を,解除告示後24か月以内と改めてほしいとの要望書を提出していることからすると,被告は売買仮契約書を締結しているにもかかわらず,実際には本件協定書に従った契約の履行を進めようとしたものと認められる。 それにもかかわらず,被告は,平成11年6月25日の市議会において,本件協定書の存在を秘匿しており,a議員が明渡期限を2度確認したのに対し,b助役をして本年度末(平成12年3月31日)であり,その他に条件は付されていないと虚偽の答弁をさせ,被告はその場にいながらこれを訂正していない。 また,被告は,平成11年6月25日の市議会において,保安林解除手続につき,保安林に建てられるのが個人の経営する牛舎であることから,森林法26条2項の規定する「公益上の理由により必要が生じた」との要件に該当しない可能性が高く,I県担当者からも解除は困難であるとの指摘を受けており,仮に解除の可能性があるとしても相当長期間の協議,折衝が必要となり,さらに本件斎場の建設開始には保安林解除予定通知後18か月を要することを知りながら,「明年度(平成12年度)中には着工できれば」などと実現不可能なことを述べ,早期に本件斎場の建設が可能であるかのように偽った。 しかるところ,上記(1)のとおり,A市では火葬場を含む斎場が早期に建設されることが求められていたし,また,上記2(41)のとおり,事後的に本件協定書の存在を明らかにされた市議会特別委員会が亀井市長による斎場建設予定地をE工業団地4号地に変更するとの提案を了承していることからすると,市議会としては,①本件牛舎の移転には上記のとおりの 本件協定書の存在を明らかにされた市議会特別委員会が亀井市長による斎場建設予定地をE工業団地4号地に変更するとの提案を了承していることからすると,市議会としては,①本件牛舎の移転には上記のとおりの条件が付されており,しかもその達成が決して容易なのものではないこと,②E区に点在する牧場主の牛舎施設等の移転統合に関する補助金の支出が必要となることが明らかにされていれば,平成11年6月25日に本件各土地取得を議決しなかった可能性が極めて大きかったと認められる。 そうとすると,被告は,市議会に対して,売買の対象となる本件各土地の売買契約に付帯する条項を誠実に説明しなかったというに止まらず,売買仮契約書と実質的に異なる本件協定書を取り交わしながら,売買仮契約書を前提とする議決を求めたものであって,被告の説明には重大な誤り及び欠落があり,本件各土地取得に関する契約の審議がなされたとはいえず,この議会の議決はないものと評価すべきである。 したがって,本件各土地の売買仮契約は,議会の議決がないと評価されるからいまだ本契約とならず,これによる売買代金の支出は違法であるといわざるを得ない。 また,本件各土地への本件斎場建設を前提とした本件牛舎の移転に伴う損失補償契約,立木補償契約,近隣2工場に対する損失補償契約の締結及びこれらの契約に基づく支出は,本件各土地の売買仮契約が本契約となったことを前提とするものであるから,これらもすべて違法であるというべきである。 そして,被告には,本件各土地の売買代金の支出,本件牛舎の移転に伴う損失補償契約,立木補償契約,近隣2工場に対する損失補償契約の締結及びこれらの契約に基づく支出につき,故意があると認められる。 4 請求原因(4)について本件各土地の代金として4億7057万0761円,本件牛舎の移転に伴う損失補償として2億 る損失補償契約の締結及びこれらの契約に基づく支出につき,故意があると認められる。 4 請求原因(4)について本件各土地の代金として4億7057万0761円,本件牛舎の移転に伴う損失補償として2億3469万7278円,立木補償として518万6600円,近隣2工場に対する損失補償として2005万6050円,合計7億3051万0689円が平成11年8月20日までに支出されたことは当事者間に争いがなく,このすべてが市の被った損害となる。 5 結論以上によれば,原告らの請求は,理由があるからこれを認容すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官内田計一裁判官上野泰史裁判官後藤誠
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