平成29年8月17日判決言渡平成26年(行ウ)第231号損害賠償請求事件(住民訴訟)(甲事件)平成28年(行ウ)第1号損害賠償等請求事件(住民訴訟)(乙事件) 主文 1 本件各訴えのうち,次の部分を却下する。 (1) 富田林市と被告補助参加人一般社団法人富田林医師会との間の保健医療事業委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして,被告補助参加人P1,同P2及び同P3に対して損害賠償請求を求める部分(2) 平成20年度から平成25年度までの上記保健医療事業委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして,P4及び被告補助参加人一般社団法人富田林医師会に対して損害賠償請求を求める部分 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用及び補助参加によって生じた訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件被告は,P4,被告補助参加人一般社団法人富田林医師会,同P1,同P2及び同P3に対し,5315万8000円及びこれに対する平成27年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 2 乙事件(1) 被告は,P4,被告補助参加人一般社団法人富田林医師会,同P2及び同P3に対し,3827万2650円及びうち1874万7300円に対する平成28年1月16日から,うち1952万5350円に対する同年7月22日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 (2) 被告は,平成28年度以降の重複された初診料相当分及び事務費を支払ってはならない。 第2 事案の概要 1 事案の要旨富田林市は,被告補助参加人一般社団法人富田林医師会(以下「参加人医師会」という。)との間で年度ごとに保健医療事業委託契約(以下「本件各委託 ってはならない。 第2 事案の概要 1 事案の要旨富田林市は,被告補助参加人一般社団法人富田林医師会(以下「参加人医師会」という。)との間で年度ごとに保健医療事業委託契約(以下「本件各委託契約」といい,年度ごとに「平成20年度本件委託契約」などという。)を締結し,参加人医師会に所属する医師らに乳幼児に対する予防接種事業(以下「予防接種事業」という。)等を委託し,委託料(以下「本件各委託料」といい,年度ごとに「平成20年度本件委託料」などという。)を支払っていた。 本件各委託契約では,予防接種事業に関し,接種するワクチンの本数ごとに初診料又はこれに相当する費用(以下「本件各初診料」という。)及び事務費又はこれに相当する費用(以下,本件各初診料と併せ「本件各初診料等」といい,年度ごとに「平成20年度本件初診料等」などという。)を支払うものとされ,ワクチンの同時接種の場合に2本目以降のワクチンに係る本件各初診料等(以下「本件各同時接種分初診料等」といい,年度ごとに「平成20年度本件同時接種分初診料等」という。)が支払われた。 本件は,富田林市の住民である原告が,被告を相手に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,①富田林市に本件各委託契約を締結させ本件各同時接種分初診料等を支払わせたのは,参加人医師会,参加人医師会の会長であった被告補助参加人P1(以下「参加人P1」という。)及び被告補助参加人P2(以下「参加人P2」という。)並びに参加人医師会の感染症対策委員会委員長であった被告補助参加人P3(以下「参加人P3」といい,被告補助参加人らを「参加人ら」という。)の共同不法行為であり,参加人らに対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,(①-a)平成20年度分から平成25年度分までの損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方で を「参加人ら」という。)の共同不法行為であり,参加人らに対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,(①-a)平成20年度分から平成25年度分までの損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方である参加人 らに対し,上記各年度分の本件各同時接種分初診料等相当額5315万8000円及びこれに対する不法行為後である平成27年1月24日(被告に対する甲事件訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を求め(甲事件),(①-b)平成26年度分及び平成27年度分の損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方である参加人医師会,参加人P2及び参加人P3に対し,平成26年度本件同時接種分初診料等相当額1874万7300円及びこれに対する不法行為後である平成28年1月16日(被告に対する乙事件訴状送達日の翌日)から,平成27年度本件同時接種分初診料等相当額1952万5350円及びこれに対する不法行為後の同年7月22日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を求め(乙事件),②本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして,(②-a)平成20年度分から平成25年度分までの本件各委託契約締結の当該職員である富田林市長P4(以下「P4」という。),相手方である参加人医師会及びその余の参加人らに対し,上記(①-a)と同額の支払請求を求め(甲事件),(②-b)平成26年度分及び平成27年度分の当該職員であるP4,相手方である参加人医師会並びに参加人P2及び参加人P3に対し,上記(①-b)と同額の支払請求を求める(乙事件)とともに,同項1号に基づき,③平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等の支出が違法であるとして,その差止めを求める(乙事件)住民訴訟である。 2 関係法令等の定め の支払請求を求める(乙事件)とともに,同項1号に基づき,③平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等の支出が違法であるとして,その差止めを求める(乙事件)住民訴訟である。 2 関係法令等の定め(1) 予防接種法及び予防接種法施行令等ア定義(ア) 予防接種とは,疾病に対して免疫の効果を得させるため,疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを,人体に注射し,又は接種することをいう(予防接種法2条1項)。 (イ) A類疾病とは,ジフテリア,百日せき,急性灰白髄炎,麻しん,風 しん,日本脳炎,破傷風,結核,Hib感染症,肺炎球菌感染症(小児がかかるものに限る。),ヒトパピローマウイルス感染症等をいう(予防接種法2条2項)。 なお,A類疾病は,平成25年法律第8号による改正(以下「平成25年改正」という。)前は一類疾病といい(同改正前の同項),同疾病はジフテリア,百日せき,急性灰白髄炎,麻しん,風しん,日本脳炎,破傷風,結核等である。 (ウ) B類疾病とは,インフルエンザなどをいう(予防接種法2条3項)。 なお,B類疾病は,平成25年改正前は二類疾病といい(同改正前の同項),同疾病はインフルエンザである。 (エ) 定期の予防接種とは,予防接種法5条1項による予防接種等をいう(同法2条4項)。 イ市町村長が行う予防接種市町村長は,A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて,当該市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し,保健所長の指示を受け期日又は期間を指定して,予防接種を行わなければならない(予防接種法5条1項。平成25年改正前の同法3条1項)。 ウ費用の支弁等(ア) 予防接種法の定めるところにより,予防接種を行うために要する費用は,市町村の支弁とする(同法25条1項。平成 ない(予防接種法5条1項。平成25年改正前の同法3条1項)。 ウ費用の支弁等(ア) 予防接種法の定めるところにより,予防接種を行うために要する費用は,市町村の支弁とする(同法25条1項。平成25年改正前の同法21条1項)。 (イ) 予防接種法5条1項による予防接種を行った者は,予防接種を受けた者又はその保護者から,政令の定めるところにより,実費を徴収することができる。ただし,これらの者が,経済的理由により,その費用を負担することができないと認めるときはこの限りでない。(以上につき,予防接種法28条。平成25年改正前の同法24条) (ウ) 上記(イ)の実費とは,薬品費,材料費及び予防接種を行うため臨時に雇われた者に支払う経費をいう(予防接種法施行令33条1項,平成25年政令119号による改正前の同令33条)。 (2) 定期接種実施要領「予防接種法第5条第1項の規定による予防接種の実施について」(平成25年3月30日付け健発0330第2号厚生労働省健康局長通知。以下「本件通知」という。乙4)は,予防接種法5条1項の規定に基づいて市町村長が行う予防接種の実施については,定期接種実施要領(乙5)によることとしている。そして,同要領には,以下の記載がある。 ア乳幼児や主に小学生が接種対象となっている定期接種(ジフテリア,百日せき,破傷風,急性灰白髄炎,麻しん,風しん,日本脳炎,結核,Hib感染症,小児の肺炎球菌感染症又は水痘)については様式第二予防接種予診票(乳幼児・小学生対象。丙6の1)を,インフルエンザの定期接種については様式第五インフルエンザ予防接種予診票を,それぞれ参考にして予診票を作成すること。なお,予診票については,予防接種の種類により異なる紙色のものを使用することなどにより予防接種の実施に際して混同を は様式第五インフルエンザ予防接種予診票を,それぞれ参考にして予診票を作成すること。なお,予診票については,予防接種の種類により異なる紙色のものを使用することなどにより予防接種の実施に際して混同を来さないよう配慮すること。(以上につき,第1の9(1))イ 2種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種(混合ワクチンを使用する場合を除く。)は,医師が特に必要と認めた場合に行うことができること(第1の17(2))。 (3) 富田林市予防接種事業実施要綱(乙6,7)ア予防接種法28条に定める定期接種における実費の徴収(上記(1)ウ(イ))については,インフルエンザ以外は行わず,富田林市が上記実費を負担する(11条1項,別表第4)。 イ富田林市は,予防接種法5条1項に定める予防接種の対象者以外の一定の対象者に対して,同市独自の行政措置としての予防接種を実施しており (4条3項,7条,別表第2),その費用は同市が負担する(8条)。 3 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠(枝番を付されているものについては特記しない限り全枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 当事者等ア当事者(ア) 原告は,富田林市の住民である。 (イ) 被告は,富田林市の執行機関である。 イ P4及び参加人ら(ア) P4は,平成20年度本件委託契約締結時から現在に至るまで,富田林市長の地位にある者である。 (イ) 参加人医師会は,医道の高揚,医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り,もって社会福祉を増進することを目的とする一般社団法人である(弁論の全趣旨)。 (ウ) 参加人P1は,平成21年度から平成23年度までの間,参加人医師会の会長であった(甲1の1~1の3 向上を図り,もって社会福祉を増進することを目的とする一般社団法人である(弁論の全趣旨)。 (ウ) 参加人P1は,平成21年度から平成23年度までの間,参加人医師会の会長であった(甲1の1~1の3)。 (エ) 参加人P2は,平成24年度以降,参加人医師会の会長である(甲1の4~1の6,弁論の全趣旨)。 (オ) 参加人P3は,参加人医師会の定期予防接種等を含む感染症対策の主任であり,かつ,感染症対策委員会の委員長である(甲5)。 (2) 本件各委託契約ア本件各委託契約の締結富田林市は,保健医療事業等の実施に関する協定(乙2,3)を受けて,平成20年度から平成27年度までの各4月,参加人医師会会員医師の代理人である同医師会との間で,当該年度の予防接種事業等を委託し,当該 月の委託事務に係る本件各委託料を翌々月末までに支払う旨の本件各委託契約を締結した(甲1,3,乙15~17)。 イ本件各委託料本件各委託料は,ワクチンの本数ごとに以下の各費目の一部又は全部を加算したものであり,このうち,本件各初診料等は,各①の部分(本件各初診料)及び各②の部分である。また,本件各委託契約では,本件各委託料について,単独接種と同時接種とで異なる定めはない。 (ア) 平成24年度まで(甲2の1~2の3,弁論の全趣旨)ワクチン代,①初診料(2700円),初診加算,注射料,育児栄養指導料,手技加算及び②事務費(100円)(イ) 平成25年度(甲2の4)ワクチン単価,接種料(①初診料相当分(2700円),初診加算相当分,注射料,生物製剤加算,BCG接種加算及び②事務費(150円))(ウ) 平成26年以降(甲2の5,33,弁論の全趣旨)a 技術料,ワクチン管理料,②事務費(150円)b 上記aのうち技術料は,平成25年度本 算,BCG接種加算及び②事務費(150円))(ウ) 平成26年以降(甲2の5,33,弁論の全趣旨)a 技術料,ワクチン管理料,②事務費(150円)b 上記aのうち技術料は,平成25年度本件委託料(上記(イ))のうち①初診料相当分(2700円),初診加算相当分,注射料,BCG接種加算をワクチンに応じて組み合わせた項目である(弁論の全趣旨)。 (3) 予防接種事業の実施等予防接種事業により各年度に予防接種を受けた人数及び接種されたワクチンの本数は以下のとおりであり,これらに係る本件各委託料の支出は翌年度の5月末日までに終了した。 ア平成20年度から平成25年度まで(甲3)(ア) 予防接種を受けた人数 1万3592人 (イ) 接種されたワクチンの本数 3万2577本イ平成26年度(甲22,弁論の全趣旨)(ア) 予防接種を受けた人数 1万0412人(イ) 接種されたワクチンの本数 1万6990本ウ平成27年度(甲35)(ア) 予防接種を受けた人数 9662人(イ) 接種されたワクチンの本数 1万6513本(4) 甲事件に係る住民監査請求及び訴えの提起ア原告は,平成26年8月27日,平成20年度から平成25年度までの本件各同時接種分初診料等に関する住民監査請求(以下「本件住民監査請求」という。)をした(甲7)。富田林市監査委員は,同年10月24日,本件各委託契約に基づく支出のうち,上記請求日の1年前より前の部分を却下し,その余の部分を棄却する旨の決定をした(甲4の1)。 イ原告は,平成26年11月7日,甲事件に係る訴えを提起した(顕著な事実)。 (5) 乙事件に係る住民監査請求及び訴えの提起ア原告は,平成27年10月8日,平成26年度本件同時接種分初診料等の支出に対する措置 年11月7日,甲事件に係る訴えを提起した(顕著な事実)。 (5) 乙事件に係る住民監査請求及び訴えの提起ア原告は,平成27年10月8日,平成26年度本件同時接種分初診料等の支出に対する措置及び平成27年度以降の本件各同時接種分初診料等の支出の差止めを求める旨の住民監査請求をした(甲21)。富田林市監査委員は,同年12月4日,上記住民監査請求を棄却する旨の決定をした(甲24)。 イ原告は,平成28年1月4日,平成26年度本件同時接種分初診料等相当額の損害賠償請求と平成27年度以降の本件各同時接種分初診料等の支出の差止めを求めて乙事件に係る訴えを提起し,平成27年度本件同時接種分初診料等の支出がされたことから,請求2乙事件のとおり,訴えを変更した(顕著な事実)。 4 争点(1) 参加人らに対する損害賠償請求を怠る事実についてア本案前の争点(ア) 監査請求期間制限の有無-いわゆる真正怠る事実か不真正怠る事実か(争点①)(イ) 損害賠償請求を怠る事実に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無(争点②)イ本案の争点(ア) 共同不法行為の成否(争点③)(イ) 参加人らの各責任の有無(争点④)(ウ) 損害(争点⑤)(2) 本件各委託契約についてア本案前の争点本件各委託契約に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無(争点⑥)イ本案の争点(ア) 本件各委託契約締結の違法性(争点⑦)(イ) P4及び参加人らの責任の有無(争点⑧)(ウ) 損害(争点⑨)(3) 支出の差止めについて平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等支出の違法性(争点⑩) 5 争点に関する当事者の主張(1) 争点①(監査請求期間の制限の有無-真正怠る事実か不真正怠る事実か)(原告の主張)ア本件 28年度以降の本件各同時接種分初診料等支出の違法性(争点⑩) 5 争点に関する当事者の主張(1) 争点①(監査請求期間の制限の有無-真正怠る事実か不真正怠る事実か)(原告の主張)ア本件各委託契約は,参加人医師会会員医師が同時接種をする場合にワクチンごとに本件各初診料等を請求することができるという不合理なものであり,富田林市は同契約に基づき本件各委託料を支払ったことによって損 害を受けた。したがって,同市は同契約の締結やこれに基づく本件各委託料の請求に関与した参加人らに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有している。 イ上記アの損害賠償請求権の成否については,富田林市の財務会計行為である本件各委託契約の内容を検討せざるを得ないものではあるが,本件各委託契約締結行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かを判断しなければならない関係にはなく,本件各委託料が不当に高額であり,これによって同市に損害が生じたか否かを判断すれば足りる。以上のとおり,上記損害賠償請求権の行使を怠る事実は,財務会計行為の違法とは無関係ないし異なる要因により生じる実体法上の請求権の行使を怠る事実(真正怠る事実)であり,地方自治法242条2項は適用されない。 (被告及び参加人ら(以下「被告ら」という。)の主張)原告が主張する怠る事実は,本件各委託契約の締結という財務会計行為の違法性を判断しなければその当否を決することができない。そうすると,原告が主張する損害賠償請求権の行使を怠る事実はいわゆる不真正怠る事実であり,監査請求期間の制限が及ぶ。 (2) 争点②(損害賠償請求を怠る事実に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無)(原告の主張)本件は診療報酬点数表(診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第1医科診療報酬 2) 争点②(損害賠償請求を怠る事実に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無)(原告の主張)本件は診療報酬点数表(診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第1医科診療報酬点数表をいう。以下同じ。)という市民にとってなじみのない専門的な資料を根拠として本件各初診料等の不当性を覆い隠していたものである。また,本件各委託契約は,参加人医師会が,契約当事者として締結したものか,同医師会会員医師らの代理人として締結したものなのか不明確である。そうすると,原告が平成26年になって初めて本件各同時接種分初診料等について住民監査請求をしたことには正当な理由が 認められる。 (被告らの主張)ア本件住民監査請求は,対象となる本件各委託契約から1年の監査請求期間を徒過した。 イ原告は,本件住民監査請求について,監査請求期間を徒過したことに正当な理由がある旨主張する。しかし,診療報酬点数表によって報酬が算定されていることは周知されているし,富田林市の住民であれば,同市と参加人医師会が本件各委託契約を締結して対価を支払っていたことは容易に知ることができた。また,本件各委託契約の内容,予防接種を受けた人数,ワクチンの本数,単価,本件各委託料の内訳等は情報公開請求等で入手可能な資料によって確認できた。そうすると,同市の住民は本件各委託契約の締結時に同契約を知ることができるし,これに基づく支出の時点において同支出を知ることができた。したがって,原告の主張する正当な理由は認められない。 (3) 争点③(共同不法行為の成否)(原告の主張)以下のとおり,本件各初診料等は不合理なものであるから,契約締結に当たっての積算から本件各同時接種分初診料等の支払までの参加人らの一連の行為は共同不法行為である。 ア本件各初診 (原告の主張)以下のとおり,本件各初診料等は不合理なものであるから,契約締結に当たっての積算から本件各同時接種分初診料等の支払までの参加人らの一連の行為は共同不法行為である。 ア本件各初診料等は診療報酬点数表を基に積算されている。そして,同表では,同一の保険医療機関で複数の傷病について同時に初診を行った場合には初診料は1回に限り算定される(甲15,38)。したがって,同時接種の場合に本件各初診料等を2回以上積算することは許されない。 また,予防接種は健康保険法上の療養の給付に当たらない診療(以下「自由診療」という。)ではある。しかし,同じ自由診療であるインプラントなどと比べると,予防接種はより公益性及び社会的意義があるし,本 件各委託契約は随意契約であるから競争原理が働かない。したがって,自由診療であることを理由に本件各同時接種分初診料等を積算することは許されない。 イ診療報酬点数表における初診料と本件各初診料とでは,予定している行為の内容は何ら変わらない。注射料やワクチン代金は別途本件各委託料に含まれており,同時接種の際の予診や問診等は一般の医師が有していない高度の専門性や技術を要するものではなく,診療報酬点数表の初診料に対応する医療行為と変わらない。 ウ堺市(甲11)や岸和田市(甲12)では2種類以上のワクチンを同時接種する場合には初診料相当額を重複して請求できないように配慮している。このように,他市では既に改善されたにもかかわらず,同様の対応をしていない本件各委託料は不当に高額である。 (被告らの主張)本件各初診料等は適正かつ相当であるから,不法行為は成立しない。 ア予防接種は自由診療であるから,診療報酬点数表によって診療報酬額が決められているわけではない。そこで,富田林市は,参加人医師会と協 件各初診料等は適正かつ相当であるから,不法行為は成立しない。 ア予防接種は自由診療であるから,診療報酬点数表によって診療報酬額が決められているわけではない。そこで,富田林市は,参加人医師会と協議し,厚生労働省が総務省に対して地方交付税を要求する際に用いる予防接種費用の接種単価を参考にして本件各委託料の単価を決めた。厚生労働省が用いた上記接種単価では,単独接種と同時接種は区別されていなかった。 イ本件各初診料等の性質は,予防接種を実施する際に必要な一連の業務に対する対価であり,技術料と呼ぶべきものである。そして,予防接種は,単独接種及び同時接種のいずれについても,本件通知及び定期接種実施要領に基づいて,高度な医学的知見を有する医師による専門的な判断及び技術を必要とする多岐にわたる業務であり,診療報酬点数表の初診料に対応する医療行為とは異なる性質の業務である。また,同時接種の2本目以降 のワクチンに関する業務内容は,単独接種と比べて簡略化されるものではない。 ウ本件各委託料は,富田林市の自主財源から過大な支出がないように配慮して決定され,近隣自治体と比べても低額である。 (4) 争点④(参加人らの各責任の有無)(原告の主張)参加人医師会は本件各委託契約の当事者として,参加人P1及び同P2は本件各委託契約締結時の同医師会の会長として,同P3は同医師会の感染症対策委員会委員長として,それぞれ本件各委託契約の締結等に関与した。そして,参加人らは,国の諮問機関で同時接種の費用の在り方が検討され,富田林市議会でも本件各初診料等について問題点が指摘されたこと,また,堺市及び岸和田市では同時接種の場合における接種費用が見直されたことを知っていたか十分知り得る立場にあった。したがって,参加人らは,本件各委託契約の内容を改め について問題点が指摘されたこと,また,堺市及び岸和田市では同時接種の場合における接種費用が見直されたことを知っていたか十分知り得る立場にあった。したがって,参加人らは,本件各委託契約の内容を改めるなどして本件各同時接種分初診料等が支払われないようにすべきであったのに,これをしなかった。 (被告らの主張)上記(3)(被告らの主張)で主張したとおり,本件各委託料は不当に高額なものではなく,本件各委託契約は適法である。参加人医師会が同契約に基づいて本件各初診料等を請求することやその請求に応じて富田林市が本件各初診料等を支払うことは不法行為とはならず,参加人らには不法行為責任は生じない。 (5) 争点⑤(損害)(原告の主張)富田林市は,本件各委託契約に基づき,本件各同時接種分初診料等を支払ったことにより,同支払額相当額の損害を被った。詳細は以下のとおりである。 ア平成20年度から平成25年度まで(甲事件)平成20年度から平成25年度までの間の損害額は,接種されたワクチンの本数(3万2577本)から接種された乳幼児数(1万3592人)を控除した数(1万8985)に,本件初診料等(2800円)を乗じた,5315万8000円である。 イ平成26年度及び平成27年度(乙事件)(ア) 平成26年度の損害額は,接種されたワクチンの本数(1万6990本)から接種された乳幼児数(1万0412人)を控除した数(6578)に,初診料相当分及び事務費の合計額(2850円)を乗じた1874万7300円である。 (イ) 平成27年度の損害額は,接種されたワクチンの本数(1万6513本)から接種された乳幼児数(9662人)を控除した数(6851)に,初診料相当分及び事務費の合計額(2850円)を乗じた1952万5350円である 損害額は,接種されたワクチンの本数(1万6513本)から接種された乳幼児数(9662人)を控除した数(6851)に,初診料相当分及び事務費の合計額(2850円)を乗じた1952万5350円である。 (被告らの主張)損害の発生及びその数額については争う。 (6) 争点⑥(本件各委託契約に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無)本争点に関する当事者の主張は,上記(2)と同様である。 (7) 争点⑦(本件各委託契約締結の違法性)(原告の主張)上記(3)(原告の主張)の内容に照らせば,本件各委託契約の締結は,地方財政法4条1項に反し,違法である。 (被告らの主張)本件各委託契約は随意契約(地方自治法234条2項,同法施行令167条の2第1項第2号)であり,その要件を満たす。そして,上記(3)(被告らの主張)の内容に照らせば,本件各委託料は不当に高額なものではな く,適法である。 (8) 争点⑧(P4及び参加人らの責任の有無)(原告の主張)ア P4の不法行為責任P4は,本件各委託契約締結時に富田林市長の地位にあった。そして,P4は,平成24年9月の富田林市議会で本件各初診料等について質問され(甲13),同月18日には大阪府下の市長会議で本件各初診料等の問題点を改善する旨の発言をした(甲14)。また,富田林市監査委員は,平成25年3月26日付け住民監査請求監査結果報告書(甲4の2)において,本件各委託契約を見直す必要があると指摘した。したがって,P4は,遅くとも平成24年には上記問題点を認識し,本件各委託契約の内容を改めるなどして本件各同時接種分初診料等が支払われないようにすべきであったのに,これをしなかった。 イ参加人らの不法行為責任上記(4)(原告の主張)のとおり(被告らの主張)上記 容を改めるなどして本件各同時接種分初診料等が支払われないようにすべきであったのに,これをしなかった。 イ参加人らの不法行為責任上記(4)(原告の主張)のとおり(被告らの主張)上記(4)(被告らの主張)のとおり,本件各委託契約は適法であり,P4及び参加人らが不法行為責任を負うことはない。 (9) 争点⑨(損害)本争点に関する当事者の主張は,上記(5)と同様である。 (10) 争点⑩(平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等支出の違法性)(原告の主張)上記(7)(原告の主張)のとおり,本件各委託契約は違法であり,これに基づく本件各同時接種分初診料等の支出は違法である。 (被告らの主張)上記(7)(被告らの主張)のとおり,本件各委託契約は適法であり,本件 各同時接種分初診料等の支出も適法である。 第3 当裁判所の判断 1 参加人らに対する損害賠償請求を怠る事実について(1) 争点①(監査請求期間の制限の有無-真正怠る事実か不真正怠る事実か)についてア判断枠組み監査請求期間について定めた地方自治法242条2項は,原則として怠る事実を対象とする住民監査請求については適用されないが,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象として住民監査請求がされた場合には,当該行為のあった日又は終わった日を基準として同項を適用すべきである(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。しかし,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規 日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。しかし,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にない場合には,当該怠る事実を対象としてされた監査請求については,同項は適用されないと解するのが相当である(最高裁判所平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁参照)。 イ参加人らに対する損害賠償請求権について富田林市職員措置請求書(甲7)によれば,本件住民監査請求は,参加人らが秘密裏に本件各同時接種分初診料等が生じる本件各委託契約を富田林市に締結させ,同市に本件各同時接種分初診料等の支払をさせて,同支払額相当額の損害を生じさせたという共同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象に含んでいると認められる。そして,上記怠る事実について監査を遂げるためには,監査委員は,参加人らについて上記 各行為が認められ,それが不法行為法上違法の評価を受けるものであるかどうか,これにより富田林市に損害が発生したか否かを確定すれば足りる。 そうすると,監査委員は,上記不法行為法上の評価に当たって,本件各委託契約の内容や本件各初診料等が不当に高いものであったか否かを検討する必要があるものの,これらが財務会計法規に違反しているか否かを判断する必要までは認められない。したがって,上記怠る事実に係る参加人らに対する損害賠償請求権は,本件各委託契約の締結等が財務会計法規に違反して違法,無効であるからこそ発生するものではない。 以上によれば,参加人らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実には,監査請求期間の制限は及ばない。 (2) 争点③(共同不法行 違法,無効であるからこそ発生するものではない。 以上によれば,参加人らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実には,監査請求期間の制限は及ばない。 (2) 争点③(共同不法行為の成否)についてア認定事実掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 本件各委託料(前記前提事実(2)イ)は,各契約時の診療報酬点数表所定の初診料,初診加算額,注射実施料,事務費等の各費目又は複数の費目の合計額とおおむね一致する。また,平成25年度本件委託料(同(2)イ(イ))のうち初診料相当分,初診加算相当分,注射料,生物製剤加算及び事務費の合計額は,厚生労働省が総務省に対して地方交付税要求時に用いている定期の予防接種の問診料等と一致する。(以上につき,乙14,弁論の全趣旨)。 (イ) 厚生労働省厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会は,平成24年5月23日,予防接種制度の見直しに関する提言をした。同提言には,接種費用のうち問診料等について,今後,委託契約価格の実態について地方自治体への調査を実施するなど,適切な問診料等の水準の在り方について検討する必要性がある旨の指摘がある。(以上につき,甲4の2,乙14,丙1) (ウ) 定期の予防接種の費用については,平成25年改正前は一類疾病及び二類疾病の2割から3割程度を地方交付税で手当てしていたが,同改正後はA類疾病の9割及びB類疾病の2割から3割程度を地方交付税で手当てすることとなった(丙1)。 (エ) 平成25年度本件委託料は,富田林市の近隣市(松原市,羽曳野市,藤井寺市,河内長野市,東大阪市,八尾市及び柏原市をいう。以下同じ。)と比べて,5種類のワクチンが近隣市平均額より0.25%から4.35%高く,7種類のワクチンが同額より0.28% 原市,羽曳野市,藤井寺市,河内長野市,東大阪市,八尾市及び柏原市をいう。以下同じ。)と比べて,5種類のワクチンが近隣市平均額より0.25%から4.35%高く,7種類のワクチンが同額より0.28%から11.62%低かった(甲2の4)。 (オ) 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会は,平成28年10月7日に第17回部会を開催した。同部会では,同時接種の2本目以降のワクチンの接種費用について,20の政令指定都市には1本目と同額とするところや同額を足した上で一部を割り引くところがあるなどと紹介されたほか,これに関する意見交換が行われた。(以上につき,丙11)イ共同不法行為の成否について(ア) 予防接種は,保険診療ではないから,診療報酬点数表が直接適用されるものではなく,本件各委託料は契約当事者間の合意によって定められるものである。 その上で,まず,本件各委託料について検討すると,本件各委託料は,診療報酬点数表上同様の名称の各費目の点数とおおむね一致し,ワクチン単価を除いた部分は定期の予防接種に係る地方交付税要求時の接種単価とも一致している(上記認定事実(ア))。また,平成25年度本件委託料は過半数のワクチンについて近隣市の平均額より低額であって,これを上回るものも最高で近隣市の平均額の105%弱程度にとどまっており(同(エ)),他の年度も特段これと異なる事情はうかがわれない。 そうすると,本件各委託料が不当に高額であるとは認められない。 次に,同時接種の2本目以降のワクチンの接種費用について検討すると,平成25年改正前の段階では,国の審議会で費用負担の在り方について検討の必要があると指摘されたものの(同(イ)),現在でも費用負担の在り方に関する議論は継続中であり,費用負担に係る方向性が示され ,平成25年改正前の段階では,国の審議会で費用負担の在り方について検討の必要があると指摘されたものの(同(イ)),現在でも費用負担の在り方に関する議論は継続中であり,費用負担に係る方向性が示されるまでに至っていない(同(オ))。また,全国の20の政令指定都市においても,同時接種の2本目以降のワクチン接種費用の在り方は様々であり,同費用を1本目と同額とする都市もあれば,費用を足した上で一部を割り引く都市もあることが認められる(同(オ))。そして,同時接種の場合には,それぞれのワクチン接種の可否判断等2本目以降のワクチンについて省略できない事務や医学的判断等も存在する(後記(イ)c,d)。このような費用の対価の内容や国の検討状況及び他の自治体のワクチン接種費用の実態等を考慮すると,本件各委託契約締結時において,同時接種の2本目以降のワクチンの接種費用を1本目と同額とする合意が不当なものとはいえない。 以上のとおり,本件各委託料は不当に高額であるとは認められないし,同時接種の2本目以降のワクチンの接種費用を1本目と同額とする合意が不当なものとはいえない。したがって,本件各同時接種分初診料等を生じさせる本件各委託契約が不合理であるとは認められない。そうすると,富田林市と本件各委託契約を締結し,本件各初診料等を積算し,これを請求して富田林市に支払わせる一連の過程が不法行為法上違法であるとはいえない(なお,本件各初診料等は年度によって名称が異なるが,上記認定判断を左右するものではない。)。 (イ) これに対し,原告は,以下のとおり主張するが,いずれも採用することはできない。 a 原告は,予防接種事業の公益性や社会的意義に照らせば,自由診療 であっても,診療報酬点数表に照らし,同時接種の2本目以降のワクチンについて本件各初診 ずれも採用することはできない。 a 原告は,予防接種事業の公益性や社会的意義に照らせば,自由診療 であっても,診療報酬点数表に照らし,同時接種の2本目以降のワクチンについて本件各初診料を算定することは違法である旨主張する。 しかし,関係法令上,公益性や社会的意義によって自由診療の報酬額に関する合意内容を制限する定めは見当たらず,保険診療の初診と同時接種の予診が同一のものと認める証拠もない。したがって,予防接種事業に公益性等があるからといって,費用負担も保険診療と同一でなければならないとはいえない。 b また,原告は,堺市や岸和田市では同時接種の場合には委託料を減額していること(甲10~12),富田林市内の一部の医療機関は自由診療である成人のインフルエンザ予防接種を非常に低額で行っていること(甲28,29)を指摘し,これらと比較すれば本件各同時接種分初診料等が生じるのは不合理であると主張する。しかし,上記認定事実(オ)で認定し,上記(ア)で説示したとおり,本件各初診料等は合意によって定められるものであり,自治体によって同時接種の2本目以降の接種費用を1本目と同額とするか否かに関する取扱いが分かれていることからすると,原告の指摘する例があるからといって,本件各同時接種分初診料等の金額が不当に高額であるとはいえない。 c 加えて,原告は,富田林市の予診票の記載項目は重複しているし(甲30,31),同時接種の場合には重複する事務を省略しているはずであるから,本件各同時接種分初診料等が生じるのは不合理である旨主張する。しかし,予診票は定期接種実施要領に基づいて作成することが求められており,同要領は予診票の参考様式を示すとともに,予防接種の種類ごとに異なる予診票を用いることを前提としている記載がある(関係法令等の定め(2)ア) 定期接種実施要領に基づいて作成することが求められており,同要領は予診票の参考様式を示すとともに,予防接種の種類ごとに異なる予診票を用いることを前提としている記載がある(関係法令等の定め(2)ア)。そうすると,複数の予診票の記載項目が重複すること自体は工夫の余地がなくはないものの,不合理であるとはいえない。そして,同時接種に際しては,同時接種の可 否を判断すると共に各ワクチンについて接種不適当者か否かを判断することが想定されており(同(2)ア,イ),本件初診料は上記一連の判断に対する対価としての性質を含むものといえる。そうすると,同時接種の場合にはワクチンごとに上記各判断を行うものであるから,同時接種の2本目以降のワクチンごとに上記対価が生じることが不合理であるとはいえない。 d さらに,原告は,学会や医師の団体が示した見解(甲26,27)や参加人P3が予防接種業務について行った説明(甲16~18)によれば,同時接種によるワクチン相互の干渉や副反応頻度の上昇はないとされているし,意見書(甲36)によれば,同時接種には診療報酬点数表の初診料が想定している医療を超える高度な専門的技術は要しないから,同時接種の2本目以降のワクチンごとに本件各初診料が生じるのは不合理である旨主張する。しかし,同時接種は特に必要と認めた場合に行うことができるとされていること(関係法令等の定め(2)イ)からすると,同時接種の可否の判断が不要になるとはいえない。また,同時接種の2本目以降のワクチンについても,ワクチンごとに接種不適当者か否かの判断を要するから,原告が指摘する点を考慮しても,同時接種の2本目以降のワクチンについて対価が生じる合意が不合理であるとはいえない。 以上に加え,上記(ア)で説示した内容に照らせば,本件各初診料(2700円) ら,原告が指摘する点を考慮しても,同時接種の2本目以降のワクチンについて対価が生じる合意が不合理であるとはいえない。 以上に加え,上記(ア)で説示した内容に照らせば,本件各初診料(2700円)が上記の各判断に対する対価として不合理なほどに高額であるとは認められない。 (3) 小括以上によれば,参加人らに対する損害賠償請求を怠る事実に係る請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 2 本件各委託契約について (1) 参加人医師会を除く参加人らに対する損害賠償請求を求める訴えについて地方自治法242条の2第1項4号は,違法な財務会計行為を行った当該職員又は当該行為に係る相手方に損害賠償請求をすることを求める住民訴訟を規定しているところ,参加人医師会を除く参加人らは,本件各委託契約締結の当該職員又は相手方に該当しない。したがって,同参加人らに対する損害賠償請求を求める訴えは,同法が規定しない訴えであって不適法である。 (2) 争点⑥(本件各委託契約に係る監査請求期間徒過の正当な理由の有無)についてア地方自治法242条2項ただし書は,「正当な理由」があるときは1年の監査請求期間経過後であっても住民監査請求をすることができる旨を定めている。そして,上記正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に住民監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。 イ証拠(甲6,13,37)及び弁論の全趣旨によれば,富田林市の市議 査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。 イ証拠(甲6,13,37)及び弁論の全趣旨によれば,富田林市の市議会議員であった沖利男(以下「沖利男議員」という。)は,富田林市議会の平成24年6月議会及び同年9月議会において,本件各委託契約のうち,同時接種の2本目以降の予防接種について,本件各委託料に本件各初診料等を含むのは妥当ではなく,本件各委託料を見直すべきである旨の質問をし,同年10月頃及び12月頃,同質問やこれに対する富田林市の答弁等を記載した活動報告資料約3万部を配布したことが認められる。以上の事実によれば,富田林市民は,平成24年12月頃までには,富田林市議会の議事録や沖利男議員による活動報告資料を閲覧するなどして,本件各委 託契約の締結等を知ることができたといえる。したがって,富田林市民は遅くとも平成25年1月頃には,平成20年度から平成23年度までの本件各委託契約に係る住民監査請求を行うことが可能であり,また,平成24年度本件委託契約及び平成25年度本件委託契約については契約締結から1年以内に住民監査請求を行うことが可能であったといえる。そうすると,本件住民監査請求(前記前提事実(4)ア)は,平成25年度本件委託契約締結から1年以上経過した平成26年8月27日にされており,上記アにいう相当な期間内にされたとはいえない。 ウしたがって,本件住民監査請求のうち,違法な財務会計行為として平成20年度から平成25年度までの本件各委託契約の締結を対象とする部分は,監査請求期間の制限に反するものであり,甲事件の訴えのうち,本件各委託契約の締結を理由として損害賠償請求を求める部分は,適法な監査請求を経ておらず,不適法であり,却下を免れな 結を対象とする部分は,監査請求期間の制限に反するものであり,甲事件の訴えのうち,本件各委託契約の締結を理由として損害賠償請求を求める部分は,適法な監査請求を経ておらず,不適法であり,却下を免れない。 (3) 争点⑦(本件各委託契約締結の違法性)について上記1(2)において説示した内容に照らせば,平成26年度及び平成27年度の本件各初診料等が不当に高額であるとは認められず,他に平成26年度及び平成27年度の本件各委託契約の締結が地方財政法4条1項に反することをうかがわせる事情は見当たらない。したがって,平成26年度及び平成27年度の本件各委託契約は適法である。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,平成26年度及び平成27年度の本件各委託契約の締結を理由としてP4及び参加人医師会に対して損害賠償請求を求める請求(乙事件)は,いずれも理由がない。 3 争点⑩(平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等支出の違法性)について上記1(2)において説示した内容に照らせば,平成28年度以降の本件各委託契約を違法ということはできない。したがって,平成28年度以降の本件各 同時接種分初診料等の支出の差止請求(乙事件)は,理由がない。 4 結論よって,本件各訴えのうち,主文1項に掲げる部分はいずれも不適法であるから却下し,原告のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山田 明 裁判官岩佐圭祐 裁判官小 林 真由美 裁判官岩佐圭祐 裁判官小林真由美
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