平成27(行コ)215 各所得税更正処分取消等,各更正の請求拒否通知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成24年(行ウ)第459号ないし第468号。以下,各事件をそれぞれ「原審459号事件」などという。)

裁判年月日・裁判所
平成28年2月17日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文6,308 文字)

平成28年2月17日判決言渡平成27年(行コ)第215号各所得税更正処分取消等,各更正の請求拒否通知処分取消請求控訴事件 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,他の出資者らと共に組合契約を締結して民法上の組合を組成した上,同組合の業務執行者に組合員による出資金及び金融機関からの借入金により購入した航空機を航空会社に対し賃貸させ,これにより利益を図るという航空機リース事業に参加していた被控訴人らが,同事業の清算の際に,それぞれ①上記借入金の一部について,金融機関から債務の免除を受けたことによって得た経済的利益(以下「本件ローン債務免除益」という。)及び②上記業務執行者に対して支払うべき手数料の一部について,上記業務執行者から債務の免除を受けたことによって得た経済的利益(以下「本件手数料免除益」といい,本件ローン債務免除益と併せて「本件各免除益」という。)が発生したことについて,それぞれ各処分行政庁から,本件各免除益がいずれも雑所得又は不動産所得に該当するとして更正処分又は更正をすべき理由がない旨の通知及び過少申告加算税賦課決定を受けたため,本件各免除益はいずれも一時所得に該当すると主張して,控訴人に対し,これらの処分の全部又は一部の取消しを求めた事案である。 原審が被控訴人らの請求をいずれも認容したので,控訴人が各控訴した。 関係法令の定め,前提事実,控訴人が主張する更正等の根拠と適法性並びに争点及び当事者の主張の要旨については,下記2のとおり原判決を補正し,下 の請求をいずれも認容したので,控訴人が各控訴した。 関係法令の定め,前提事実,控訴人が主張する更正等の根拠と適法性並びに争点及び当事者の主張の要旨については,下記2のとおり原判決を補正し,下記3のとおり控訴人の当審における主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正(1) 原判決4頁8行目から同9行目にかけての「Aの関連会社である」を「Aの関連会社であって,本件について業務執行者として指名された」に改める。 (2) 同頁20行目の「B Inc.」を「カナダ法人であるB Inc.」に改める。 (3) 原判決6頁14行目の「平成10年4月24日,」の次に「フランス法に基づいて設立された金融機関であるCD支店」を加える。 (4) 原判決7頁21行目の「平成14年5月頃,」の次に「英国における大手旅行会社傘下のチャーター便航空会社であるE」を加える。 (5) 原判決11頁9行目の「平成19年3月5日,」の次に「Aの子会社であるF Limited に対し,」を加える。 (6) 原判決13頁8行目の「原告G通知処分」を「被控訴人H通知処分」に改める。 3 控訴人の当審における主張(1) 本件ローン債務免除益は,不動産所得に該当する。 (2) そもそも所得税法26条の不動産所得には,不動産等の貸付けの対価たる性質を有するもの又はこれに代わるものに限らず,不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき付随収入も含まれると解すべきである。そして,その具体的な判断をするに当たっては,本体を成す貸付業務の遂行との関連性の強さを考慮すべきである。 本件ローン債務免除益の元となる債務の発生原因は,本件航空機を購入す るために必要となった本件 的な判断をするに当たっては,本体を成す貸付業務の遂行との関連性の強さを考慮すべきである。 本件ローン債務免除益の元となる債務の発生原因は,本件航空機を購入す るために必要となった本件借入金である。本件組合は,本件航空機を貸し付けることによって本件組合事業を営んでいたのであるから,本件ローン契約に基づく本件借入金の借入れ(経済的利益)は,本件組合事業(航空機の貸付業務)を営むに当たり必要不可欠の行為であった。したがって,本件借入金に係る返済債務は,本件航空機の貸付業務の遂行と密接に関連して発生したものであるから,本件ローン債務免除益もまた,不動産等の貸付業務の遂行と強い関連性が認められる。 また,本件ローン債務免除益のうち,ノン・リコース条項の適用によって生じた部分(417万4562.71ドル)は,そもそもノン・リコース条項が本件航空機の売却代金が下落したときのリスクヘッジの手段として設定されたものであって,本件航空機の売却代金が本件借入金の元本を下回り,ノン・リコース条項が適用されることによって利益を得る(それ以上の追加負担を回避する。)ということは,本件組合事業の仕組み上,当然に予定された結果であるといえる。よって,ノン・リコース条項の適用によって生じた経済的利益は,本件組合事業に係る収益構造に不可分一体のものとして組み込まれていると評価できる。 そして,本件ローン債務免除益のうち,本件ローン債務免除行為によって生じた部分(300万ドル)についていうならば,本件各組合員は,本件ローン債務免除行為がされるであろうこと(すなわち,本件ローン債務免除益を確実に得られるであろうこと)を前提として,本件組合事業の終了(本件組合の解散)に同意したものであるし,このような同意がなければ,本件融資銀行も本件ローン債務 こと(すなわち,本件ローン債務免除益を確実に得られるであろうこと)を前提として,本件組合事業の終了(本件組合の解散)に同意したものであるし,このような同意がなければ,本件融資銀行も本件ローン債務免除行為をしなかったことが推認される。このように,本件ローン債務免除行為が,本件組合事業(航空機の貸付業務)の終了という重大な意思決定を行うに当たっての前提事情とされていたことなどを考慮すれば,本件ローン債務免除行為を本件組合事業から切り離して評価することは妥当でなく,本件ローン債務免除行為は本件組合事業と密接に関 連してされたものといえる。よって,上記300万ドルの返還債務の免除という経済的利益もまた,不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき付随収入に含まれると解すべきである。 (3) 以上のことから,本件ローン債務免除益は,不動産所得に該当するというべきであるから,これを主位的に主張し,雑所得に該当する旨を予備的に主張することとする。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの請求をいずれも認容すべきものと判断する。その理由は,下記2のとおり原判決を補正し,下記3のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正(1) 原判決20頁13行目の「不動産所得,」を削る。 (2) 同頁15行目から同16行目にかけての「一時所得に該当するか否か,」を次のとおり改める。 「不動産所得(控訴人の主位的主張),一時所得(被控訴人らの主張),又は雑所得(控訴人の予備的主張)のいずれに該当するかが問題となる。雑所得に該当するためには,不動産所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得であることが要件となり(所得税 得(被控訴人らの主張),又は雑所得(控訴人の予備的主張)のいずれに該当するかが問題となる。雑所得に該当するためには,不動産所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得であることが要件となり(所得税法35条1項),一時所得に該当するためには,除外要件との関係で,不動産所得に該当しないことが要件となることから(同法34条1項),本件ローン債務免除益については,まず,控訴人の主位的主張に係る不動産所得に該当するか否かを検討すべきことになるが,この点については,後記3記載のとおり,不動産所得に該当しないものと認められる。次いで,一時所得に該当するか否かについて判断するためには,」(3) 原判決29頁1行目の「一時所得に該当しないこと」を「不動産所得及 び一時所得のいずれにも該当しない所得であること」に改める。 3 控訴人の当審における主張に対する判断(1) 控訴人は,当審において,本件ローン債務免除益についての主張を変更し,主位的には不動産所得に該当すると主張し,雑所得に当たるとの従前の主張を予備的なものとした。 (2) この点について,控訴人は,本件各更正処分等に対する不服申立手続において,本件ローン債務免除益は雑所得に当たるとしてきた(被控訴人I請求に対して,日野税務署長がした被控訴人I更正処分だけは不動産所得に該当するとしていたが,その異議申立棄却決定及び審査請求棄却裁決では,雑所得とされている。)。また,第1審の訴訟手続においても同様であり,原判決20頁13行目から同15行目まででは,本件ローン債務免除益が不動産所得以外の所得であることは当事者間に争いがないと判示している。 ところが,控訴人は,当審に至って,主位的主張として本件ローン債務免除益は不動産所得に該当すると主張を変更したのであるが,理由附記が求められ 得であることは当事者間に争いがないと判示している。 ところが,控訴人は,当審に至って,主位的主張として本件ローン債務免除益は不動産所得に該当すると主張を変更したのであるが,理由附記が求められる根拠が処分適正化機能と争点明確化機能にあることからすると,このような理由の差し替えないし主張の変更が望ましいものでないことは明らかである。しかも,控訴審においてそれをするのは,手続保障原則に照らしても適切なものとはいい難いというべきである。 他方,最高裁昭和56年7月14日第三小法廷判決・民集35巻5号901頁は,明確な留保を付した上ではあるが,理由の差し替えを認めている。 これは,その理由の差し替えを認めても,納税者が課税処分を争うについて格別の不利益を受けるものではない場合に,新たな主張をすることが許されるとしたものと解される。本件については,本件ローン債務免除益をめぐる事実関係に変わりはなく,その所得区分が争われていたところ,被控訴人らはこれを一時所得と主張し,控訴人は雑所得と主張していたところ,控訴人がその主張を主位的に不動産所得に変更するというものであるから,上記判 例に照らすと,このような主張変更が許されないとまではいえない。 また,控訴人は,本件ローン債務免除益が不動産所得に該当しない旨の主張をしていたものであるが,上記主張が法律の解釈適用についての見解の陳述であって,法律適用の前提となる事実に関する陳述でないことを考えると,控訴人の上記主張変更は,裁判上の自白の撤回には当たらないというべきである。 さらに,本件ローン債務免除益をめぐる事実関係に変わりはなく,その所得区分についての適用法律の解釈ないし見解の変更であって,時機に後れた攻撃防御方法で訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。 そ ローン債務免除益をめぐる事実関係に変わりはなく,その所得区分についての適用法律の解釈ないし見解の変更であって,時機に後れた攻撃防御方法で訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。 そこで,以下,控訴人の主位的主張について検討する。 (3) 控訴人は,所得税法26条の不動産所得には,不動産等の貸付けの対価たる性質を有するもの又はこれに代わるものに限らず,不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき付随収入も含まれると主張する。 しかしながら,租税法律主義の原則に照らすと,租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないというべきところ(最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決・民集64巻2号420頁),同条1項は,「不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう。」と定めており,また,所得税法施行令94条1項2号は,不動産所得を生ずべき業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するものについて,その業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,不動産所得に係る収入金額とすると定めている。これらの規定によれば,不動産所得とは,賃貸人が賃借人に対して一定の期間,不動産等を使用収益させる対価として受け取る利益又はこれに代わる性質を有するものと解するのが相当である。 そして,本件ローン債務免除益は,本件融資銀行が本件借入金の残債務を 免除したという本件ローン債務免除行為によって発生したものであるところ,本件融資銀行は,本件航空機の賃借人ではなく,本件航空機を使用収益していたわけではない。確かに,本件ローン契約に基づく本件借入金の借入れが本件組合事業(航空機の貸付業務)を営む たものであるところ,本件融資銀行は,本件航空機の賃借人ではなく,本件航空機を使用収益していたわけではない。確かに,本件ローン契約に基づく本件借入金の借入れが本件組合事業(航空機の貸付業務)を営むに当たり必要な行為であったことは認められるし,本件借入金に係る返済債務が本件航空機の貸付業務の遂行と関連して発生したということもできるが,本件ローン債務免除益は,本件組合が行っていた営利を目的とする継続的行為である本件航空機の賃貸自体によって発生したものではないし,本件航空機を使用収益させる対価又はこれに代わる性質を有するものでもないから,本件ローン債務免除益を不動産所得に該当するものということはできない。 また,控訴人は,本件ローン債務免除益のうち417万4562.71ドルは,ノン・リコース条項の適用によって生じたと主張し,ノン・リコース条項の適用によって生じた経済的利益は,本件組合事業に係る収益構造に不可分一体のものとして組み込まれていると評価できると主張する。しかし,ノン・リコース条項の適用によって生じる法的効果は,被控訴人ら本件各組合員が,本件ローン契約によって生じた本件借入金債務の弁済について,その個人財産をもって責任を負わないということである。他方,本件ローン債務免除行為は,本件組合が本件融資銀行に対して負っていた債務を免れさせるものであるから,本件ローン債務免除益がノン・リコース条項の適用と直接に結び付いているわけではない。したがって,このことを理由に上記417万4562.71ドルに係る免除益が不動産所得に該当するといえるものではない。 (4) よって,控訴人の上記主張は採用できない。 4 以上のとおりであるから,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がない。 よって,主文 主文 よって,主文のとおり判決する。 理由 (4) よって,控訴人の上記主張は採用できない。 事実 4 以上のとおりであるから,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がない。 東京高等裁判所第12民事部 裁判長裁判官杉原則彦 裁判官山口均 裁判官渡邉和義

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