令和5(ネ)4 本訴損害賠償等・反訴請負代金等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月14日 大阪高等裁判所 破棄自判 大阪地方裁判所 令和2(ワ)7462
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判決文本文64,897 文字)

令和5年(ネ)第4号本訴損害賠償等・反訴請負代金等請求控訴事件令和6年3月14日大阪高等裁判所第13民事部判決 本判決で用いる略語別紙2「略語一覧表」記載のとおり 主文 1 第1審原告らの本件各控訴に基づき、原判決主文2項を次のとおり変更する。 (1) 第1審被告らは、第1審原告Aに対し、連帯して2874万2422円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2) 第1審被告らは、第1審原告Bに対し、連帯して2853万0072円及 びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (3) 第1審被告らは、第1審原告Cに対し、連帯して110万円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4) 第1審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 2 第1審被告土屋ホームの本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審、本訴反訴を通じ、第1審原告ら及び第1審被告土屋ホームに生じた費用の5分の1並びに第1審被告YKKに生じた費用の10分の3を第1審原告らの負担とし、第1審原告らに生じた費用の10分の3及び第 1審被告YKKに生じたその余の費用を第1審被告YKKの負担とし、その余は第1審被告土屋ホームの負担とする。 4 この判決は、主文1項(1)から(3)までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 第1審原告らの控訴の趣旨 1 原判決中、第1審原告ら敗訴部分を取り消す。 2 第1審被告らは、第1審原告Aに対し、連帯して3810万2422円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5 1 原判決中、第1審原告ら敗訴部分を取り消す。 2 第1審被告らは、第1審原告Aに対し、連帯して3810万2422円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 第1審被告らは、第1審原告Bに対し、連帯して3787万0072円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を 支払え。 4 第1審被告らは、第1審原告Cに対し、連帯して440万円及びこれに対する令和元年11月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 第1審被告土屋ホームの控訴の趣旨 1 原判決中、第1審被告土屋ホーム敗訴部分を取り消す。 2 第1審原告Aの本訴請求のうち申込金返還請求を棄却する。 3 第1審原告Aは、第1審被告土屋ホームに対し、1947万4914円及びこれに対する令和元年12月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 第3 事案の概要 1 事案の要旨(1) 基本的事実関係第1審原告夫妻は本件建物のリフォーム工事を計画し、同Bは、夫である同A名義で、第1審被告土屋ホームに対して本件建築申込みをして本件申込金10万円を支払った後、本件建物において、同土屋ホームとの間で本件リフォー ム工事に関する本件各契約を締結し、第1審原告Aは本件建築申込み及び本件各契約を追認した。 第1審被告土屋ホームは、本件リフォーム工事において、同YKKが製造して引き渡した本件製品(商品名「上げ下げロール網戸XMW」)を本件建物2階の本件窓(腰高窓)に設置した。本件リフォーム工事が一部を残して完成し、 第1審原告家族が本件建物での生活を開始してから間もなく、同夫妻の娘であ るD(当時6歳)は 」)を本件建物2階の本件窓(腰高窓)に設置した。本件リフォーム工事が一部を残して完成し、 第1審原告家族が本件建物での生活を開始してから間もなく、同夫妻の娘であ るD(当時6歳)は、第1審原告らの外出中、本件製品に付属する本件コード(網戸の昇降をするための操作コード〔以下「コード」と「ひも」を同義で用いる。〕)が首に絡まって縊死した(本件事故)。 本件事故後、第1審原告Aは、本件建築申込み及び本件各契約について本件クーリングオフをした。 (2) 本訴第1審原告らは、第1審被告YKKが製造した本件製品の欠陥(設計上又は指示・警告上の欠陥)及び同土屋ホームの従業員の注意義務違反(本件製品の選定、使用方法の説明等に関する注意義務違反)により本件事故が発生したと主張して、同YKKに対しては製造物責任法3条1項に基づき、同土屋ホーム に対しては民法715条1項又は709条に基づき、損害賠償金及びこれに対する令和元年11月18日(本件事故日)から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めている。 また、第1審原告Aは、法定書面が交付されていないからクーリングオフ行使期間は進行しておらず、本件クーリングオフは有効であると主張して、第1 審被告土屋ホームに対し、特商法9条6項に基づき、本件申込金の返還及びこれに対する令和2年5月1日(支払期日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 (3) 反訴第1審被告土屋ホームは、第1審原告Aに対し、本件各契約に基づき、本件 申込金を控除した残代金及びこれに対する令和元年12月1日(約定支払期日の翌日)から支払済みまで約定の年6%の割合による遅延損害金の支払を求めている。これ Aに対し、本件各契約に基づき、本件 申込金を控除した残代金及びこれに対する令和元年12月1日(約定支払期日の翌日)から支払済みまで約定の年6%の割合による遅延損害金の支払を求めている。これに対し、第1審原告Aは、本件各契約は本件クーリングオフにより解除された旨主張している。 2 原審の判断及び各控訴の提起 原審は、本件製品に欠陥があったとも、第1審被告土屋ホームの従業員に注意 義務違反があったとも認められないから、本件事故の発生について第1審被告らは損害賠償責任を負わないと判断するとともに、本件クーリングオフは有効であると判断した。そして、原審は、本訴について、第1審原告Aの本件申込金返還請求を認容して(原判決主文1項)、第1審原告らの損害賠償請求をいずれも棄却し(原判決主文2項)、反訴について、第1審土屋ホームの代金請求を棄却し た(原判決主文3項)。 これに対し、第1審原告らがその敗訴部分(本訴損害賠償請求棄却部分)を不服として上記第1記載のとおりの各控訴を提起し、第1審被告土屋ホームがその敗訴部分(本訴申込金返還請求認容部分及び反訴請求棄却部分)を不服として上記第2記載のとおりの控訴を提起した。 3 争点【本件事故について】(1) 第1審被告YKKの製造物責任の有無(本件製品の欠陥の有無)(本訴請求関係)(2) 第1審被告土屋ホームの使用者責任又は不法行為責任の有無(本訴請求関 係)(3) 過失相殺の可否(本訴請求関係)(4) 因果関係及び損害(本訴請求関係)【本件クーリングオフについて】(5) 本件クーリングオフの有効性(本訴及び反訴請求関係) (6) 本件各契約に基づく代金額及び支払期日の到来の有無(反訴請求関係) 4 争 【本件クーリングオフについて】(5) 本件クーリングオフの有効性(本訴及び反訴請求関係) (6) 本件各契約に基づく代金額及び支払期日の到来の有無(反訴請求関係) 4 争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張は、別紙7「当事者の主張」記載のとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 後掲証拠(枝番のある書証は特記しない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論 の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1) 当事者等ア第1審原告A(昭和56年11月生)と同B(昭和52年6月生)は平成21年に婚姻し、平成22年5月に息子である同Cを、平成25年6月に娘であるDをそれぞれもうけた。令和元年11月18日当時、第1審原告Cは 9歳(小学3年生)で、Dは6歳(幼稚園年長。身長約105cm・体重約17kg)であった。(甲2、29、99)イ第1審被告YKKは、窓及びサッシを含む建築材料の製造・販売等を行う株式会社である。(乙37)ウ第1審被告土屋ホームは、住宅のリフォーム工事等を行う株式会社である。 (甲89)(2) 本件事故ア Dは、令和元年11月18日月曜日、幼稚園の休園日であったため、本件建物2階において1人で留守番をしていたところ、午後3時35分頃、小学校から帰宅した第1審原告Cにより、本件窓に設置された本件製品に付属す る本件コードで首を懸垂した状態で発見され、救急搬送された病院で死亡が確認された(本件事故)。(甲79、80、弁論の全趣旨)イ死体検案の結果、Dの死亡原因は縊死であり、死亡推定時刻は令和元年11月18日午後2時30分頃と判断された。同時刻頃、第1審原告夫妻は勤務先に出勤し、同Cは小学校に登校しており、同B 全趣旨)イ死体検案の結果、Dの死亡原因は縊死であり、死亡推定時刻は令和元年11月18日午後2時30分頃と判断された。同時刻頃、第1審原告夫妻は勤務先に出勤し、同Cは小学校に登校しており、同Bの両親は本件建物1階に 在宅していたが本件事故に気付かなかった。(甲3、79、80、弁論の全趣旨)(3) 本件製品及びその設置状況等ア本件窓に設置された本件製品(商品名「上げ下げロール網戸XMW」)は、第1審被告YKKが平成31年2月に製造し、令和元年9月2日に販売及び 引渡しをしたものである。本件製品は、一般住宅に設置することを目的とし て製造・販売されていたものであり、平成19年以降、年間約25万セットが出荷されていた。(甲7、乙4、34、弁論の全趣旨)本件製品は、別紙3の写真(本件建物とは別の場所に設置された本件製品を撮影したもの)のとおり、窓枠の内側に固定して設置され、網戸が不要な場合には網戸を巻き上げて上部のケースに収納できる仕様になっており、網 戸を昇降させるための本件コードが付属していた。(乙4、7)本件製品は、従来の一般的な網戸と比べて、網戸が不要な場合に網戸を収納できるほか、窓の室内側に設置されるため、開閉時に外側に開く窓にも設置できることに特徴があった。また、本件製品は、他の収納できるタイプの網戸(アコーディオン式網戸等)と比べて、ガイドレールに網戸が密着する ため、防虫効果が高いことに特徴があった。(乙2、4、弁論の全趣旨)イ本件コードは、別紙4の写真のとおり、直径数mm のプラスチック製ボールを等間隔に配置したボールチェーンの形状となっていた。本件コードは約175cm の周長を有し、本件製品が窓に設置されると、別紙6の図面のように下部に垂れ下がってループを形成した。(甲 チック製ボールを等間隔に配置したボールチェーンの形状となっていた。本件コードは約175cm の周長を有し、本件製品が窓に設置されると、別紙6の図面のように下部に垂れ下がってループを形成した。(甲4、78、乙4、7) ウ第1審被告YKKは、本件製品の出荷時に、本件クリップと本件タグを本件リングでつないだもの(別紙5の写真の形状)を透明なビニール製小袋に入れて同梱していたほか、施工業者向けの本件施工説明書を同梱していた。 (甲5、7、乙22、弁論の全趣旨)本件タグには、別紙5の写真のとおり、片面に「ご使用上の注意」として 「操作ひもがお子様の首や体に巻きつくなど、思わぬ事故の原因となりますので、ご使用には十分ご注意ください」との記載とともに、コードが首から脇の下にかかった状態で泣いた様子の乳児のイラストがあり、その裏面には、「クリップの使い方」として「この部品は、操作ひもをまとめるクリップです操作しない時は、お子様の手の届かない位置で操作ひもをまとめてくだ さい」との記載とともに、本件クリップにより本件コードをまとめた様子を 表したイラストがあった。(甲5)また、本件施工説明書は、冒頭に「本説明書は、必ず取付される方にお渡しください。お施主様向けの取扱説明書は、必ずお施主様にお渡しください。」との記載があり、最後に、取付工事の最終工程として、「ボールチェーンにクリップを取付けてください。」との記載と、その横に、本件コードに通った本 件リングによって本件クリップ及び本件タグが本件コードにぶら下がっている様子を表したイラストがあった。(甲15)エ本件製品については、本件製品のみを対象とした使用者向けの取扱説明書は存在せず、各種の窓・ドア関連製品を掲載した「お施主様向け取扱説明書使い方&お手入 子を表したイラストがあった。(甲15)エ本件製品については、本件製品のみを対象とした使用者向けの取扱説明書は存在せず、各種の窓・ドア関連製品を掲載した「お施主様向け取扱説明書使い方&お手入れガイドブック窓・ドア編」と題する約300頁の冊子(本 件取扱説明書)中に本件製品の使用方法等が記載されていた。その表紙には「販売店・工務店・建築会社の皆様へこの取扱説明書は施工後、お施主様に必ずお渡しください。」と記載されていたが、第1審被告YKKは、本件取扱説明書を本件製品に同梱していなかった。(甲7、86、乙22、弁論の全趣旨) 本件取扱説明書には、各製品に共通する安全上の注意を記載した部分において、「操作ひも(ボールチェーン)についての注意事項」として、「注意」の表示が付された上で、「小さなお子様が操作ひも(ボールチェーン)を体や首に巻き付けて遊ばないようご注意ください。窒息などの事故につながるおそれがあります。」と記載されていた。「注意」の表示は、取扱いを誤った場 合に使用者が通院加療の必要な傷害を負うことが想定される危害の程度を意味し、取扱いを誤った場合に使用者が死亡又は重傷を負うことが想定される危害の程度を意味する「警告」より一段階低い危険性を示すものであった。 (甲7、86)また、本件取扱説明書中の本件製品の使用方法に関する部分は2頁の分量 であり、当該部分には、「ご使用上の注意」として、「操作ひも(ボールチェ ーン)がお子様の首や体に巻きつくなど、思わぬ事故の原因となりますので、ご使用には十分ご注意ください。操作をしない時は、お子様の手の届かない位置で操作ひもをクリップでまとめてください。」と記載され、その横に本件タグの両面にあるものと同じ2種類のイラストがあった。(甲86 使用には十分ご注意ください。操作をしない時は、お子様の手の届かない位置で操作ひもをクリップでまとめてください。」と記載され、その横に本件タグの両面にあるものと同じ2種類のイラストがあった。(甲86)オ本件事故当時、本件製品は、本件建物2階のリビング南側の本件窓に設置 されていた。本件窓の下端は床から約90cm の高さであり、身長約105cmのDが本件窓付近の床に立った場合の位置関係は別紙6の図面のとおりとなり、本件コードに手は届くが、床に立った状態のままでは本件コードにより形成されるループに首が入ることはなかった。ただし、本件事故当時、本件窓から80cm 以内の距離に、本件テーブル及び座面の高さ約40cm の本 件椅子が配置されており、Dが本件椅子の上に立つと、本件コードにより形成されるループに首が入る可能性があった。(甲33、67、78、弁論の全趣旨)また、本件建物2階のリビング南側には、本件窓と同じ形状の窓がもう1つ設置されており、この窓にも本件製品が設置されていた。本件事故当時、 本件窓ともう1つの窓の室内側には、突っ張り棒を使用してカーテンが設置されていた。(甲14、78、丙11、第1審原告A・同B各本人)(4) 本件各契約の締結及び本件事故に至る経緯ア第1審原告夫妻は、同Bの実家である本件建物から自転車で約5分の距離にある賃貸マンションに居住していた。第1審原告夫妻は、Dが小学校に入 学する令和2年4月の完成を目途として、本件建物2階をリフォームして二世帯住宅とし、本件建物1階に居住する同Bの両親と同居することを計画した。(甲80、第1審原告B本人)平成31年2月上旬頃、第1審原告Bは、リフォーム業者を紹介するウェブサイトであるホームプロを通じて、第1審被告土屋ホームを含む複数の の両親と同居することを計画した。(甲80、第1審原告B本人)平成31年2月上旬頃、第1審原告Bは、リフォーム業者を紹介するウェブサイトであるホームプロを通じて、第1審被告土屋ホームを含む複数の業 者にリフォーム工事の現地調査等を依頼した。(甲43、80、証人E、第 1審原告B本人)イ平成31年2月9日、第1審被告土屋ホームの従業員(神戸支店の営業担当)であるEは本件建物を訪問し、第1審原告Bから、希望するリフォーム工事の内容や予算額等を聴取するとともに、同夫妻には当時8歳の息子と5歳(幼稚園児)の娘がいることを聞いた。Eは、同年3月8日及び同月30 日に本件建物を訪問して、作成したリフォーム計画等を第1審原告Bに説明した後、同Bとの間でメールをやり取りし、概算見積りを無料で作成することなどを連絡した。(甲80、81、丙14、21、36、証人E)令和元年5月20日、Eは本件建物を訪問し、第1審原告Bに対し、外構工事や照明器具等を除く本件リフォーム工事の代金を1506万6000 円(消費税込み)とする概算見積書を渡した。(甲40、80、丙14)同月24日、第1審原告Bは、Eに対し、外部から本件建物2階に直接出入りできる外階段設置を同Aが希望しているので、外構工事(外階段設置や敷地内の既存建物解体等)を含めて全部で1800万円程度に収めることはできないかを尋ねるメールを送信し、Eから、費用については現状では頑張 るとしか言えないが、最大限努力するので第1審被告土屋ホームにリフォーム工事を任せてほしい旨の返信があった。(甲136)同月29日、第1審原告Bは、Eから紹介されたイオン銀行に対し、本件リフォーム工事費用として、同A名義での1990万円の住宅ローンの事前審査をインターネットで申し込 旨の返信があった。(甲136)同月29日、第1審原告Bは、Eから紹介されたイオン銀行に対し、本件リフォーム工事費用として、同A名義での1990万円の住宅ローンの事前審査をインターネットで申し込み、同月30日、申告内容に基づく事前審査 では同額の融資が可能であるが、必要書類を添付した正式申込みでは審査結果が異なる可能性がある旨の連絡を受けた。また、第1審原告Bは、イオン銀行から、リフォーム代金額に応じた本件建物の持分を同Bの父親から同Aに移転しないと贈与税が発生すること及び住宅ローンの正式審査は持分の移転後になることの連絡を受け、同年6月9日までに、Eに対してその旨を メールで連絡した。(甲58の1、甲80、101、102、137、丙19) ウ令和元年6月10日、第1審原告Bは大阪市所在のLIXILのショールームを訪問し、キッチンや浴室等の水回り製品についてEから説明を受けた。 説明に引き続いて行われた打合せにおいて、Eは、第1審原告Bに対し、リフォーム工事の話を進めていくためには前金を支払う必要があると述べるとともに、申込金10万円及び予定工事高1800万円などと記載された本 件建築申込書を示して、同A名義で署名押印するよう求めた。第1審原告Bは、リフォーム工事の申込みをすることを予期しておらずためらったが、Eから工事内容はいくらでも変更できると言われたため、本件建築申込書に同A名義で署名押印し、第1審被告土屋ホームに対して本件建築申込みをした。 その後、第1審原告Aは、同Bによる本件建築申込みを追認した。(甲20、 80、107、第1審原告A・同B各本人)本件建築申込書には、「申込着手金は別途請負契約締結時に請負代金の一部に充当処理させていただきます。」、「会社は申込着手金受領後、敷地・ (甲20、 80、107、第1審原告A・同B各本人)本件建築申込書には、「申込着手金は別途請負契約締結時に請負代金の一部に充当処理させていただきます。」、「会社は申込着手金受領後、敷地・当該建物等の調査、実測、建築基準法等の法的調査、建築プラン作成等を経て、申込者と協議の上請負代金を確定し請負契約を締結いたします。」などと記 載されていた。(甲20)同月11日、第1審原告Bは、ホームプロのウェブサイト上で、第1審被告土屋ホームとの成約及び工事完成保証申込みを連絡した。(甲104、105、丙36、37)同月19日、第1審原告Bは、同A名義で第1審被告土屋ホームに対して 本件申込金10万円を支払った。(甲80、第1審原告B本人)エ令和元年6月15日及び同月21日、Eは本件建物を訪問し、第1審原告Bとの間で、本件リフォーム工事の内容について打合せをした。(甲80、丙14、第1審原告B本人)同月29日、Eは本件建物を訪問し、第1審原告Bに対し、内外部改修工 事の各項目及びその金額を記載した合計1418万3704円(消費税込み) の価格書と、外装工事の各項目及びその金額を記載した合計129万8000円(消費税込み)の見積書を渡すとともに、それぞれの工事に対応する本件契約書1及び2を示して、同A名義で署名押印するよう求めた。第1審原告Bは契約を締結することを予期しておらず、印鑑も持参していなかったため、一旦持ち帰って同Aと相談してよいかと尋ねたが、Eからこの場で署名 押印してほしいと更に求められたため、いずれは第1審被告土屋ホームとの間で契約を締結するものと考えていたこともあり、自宅に印鑑を取りに戻った。その上で、第1審原告Bは、本件建物において、本件契約書1及び2に同A名義で署名 られたため、いずれは第1審被告土屋ホームとの間で契約を締結するものと考えていたこともあり、自宅に印鑑を取りに戻った。その上で、第1審原告Bは、本件建物において、本件契約書1及び2に同A名義で署名押印し、第1審被告土屋ホームとの間で本件契約1及び2を締結した。その後、第1審原告Aは、同Bによる本件契約1及び2の締結を 追認した。(甲41、72、79、80、丙1、2、第1審原告A・同B各本人)オ令和元年6月29日の本件契約1及び2締結までに、Eは、本件契約1に基づき実施する内外部改修工事において、リビング南側に腰高窓を2つ設置し、そのいずれにも第1審被告土屋ホームが標準として採用している網戸で ある本件製品を設置することを決めた。Eは、本件製品にはループを形成する本件コードが付属しており、子供の首が引っ掛かる危険性があることに加え、第1審原告夫妻には幼稚園児の娘がいることを認識していたが、設置する窓が子供の首が引っ掛かる高さにはないので、上記の危険性は低いと考えていた。(甲17、丙14、22、証人E) そのため、Eは、本件契約1及び2の締結に当たり、第1審原告Bに対し、本件窓に本件製品を設置することや本件製品には上記危険性があることを説明せず、同Bに渡した内外部改修工事に係る価格書にも本件製品に関する記載をしなかった。(甲17、41、80、第1審原告B本人)カ令和元年7月5日、第1審原告Bは、本件建物において本件リフォーム工 事について打合せをした際、Eから、本件建物の持分移転登記手続のための 司法書士を紹介された。第1審原告Bは、本件建物及びその敷地の価格を不動産業者に査定してもらうなどした上で、司法書士の助言に基づき、本件建物及びその敷地の持分10分の3を同Bの父親から同Aに 司法書士を紹介された。第1審原告Bは、本件建物及びその敷地の価格を不動産業者に査定してもらうなどした上で、司法書士の助言に基づき、本件建物及びその敷地の持分10分の3を同Bの父親から同Aに移転することとし、同年8月7日、E及び司法書士が本件建物を訪問して同年6月25日付け売買を原因とする持分移転登記手続書類を作成し、同年8月9日に登記手 続を終えた。(甲58、60、70、80、第1審原告B本人、弁論の全趣旨)キ令和元年8月24日、Eは本件建物を訪問し、第1審原告Bに対し、エクステリア工事(外構工事)の各項目及びその金額を記載した合計362万4500円(消費税込み)の見積書と、カップボード(食器棚)工事に関する24万6510円(消費税込み)の見積書を渡すとともに、それぞれの工事 に対応する本件契約書3及び4を示して、同A名義で署名押印するよう求めた。これを受けて、第1審原告Bは、本件契約書3及び本件注文書4に同A名義で署名押印し、第1審被告土屋ホームとの間で本件契約3及び4を締結した。その後、第1審原告Aは、同Bによる本件契約3及び4の締結を追認した。(甲73、74、丙3、4、第1審原告A・同B各本人) ク令和元年8月26日、第1審被告土屋ホームは本件リフォーム工事を開始し、従業員であるFは、Eが作成したリフォーム計画に基づく施工を担当した。(甲17、丙26、証人E)同年9月21日、同月29日及び同年10月5日、第1審原告夫妻は、本件リフォーム工事施工中の本件建物においてEらと打合せを行い、その際、 本件建物2階のリビング南側に設置する窓の位置についても協議したが、網戸(本件製品)について話が及ぶことはなかった。(甲79、第1審原告A本人)同月19日、Eは、第1審原告Aに対し、 、 本件建物2階のリビング南側に設置する窓の位置についても協議したが、網戸(本件製品)について話が及ぶことはなかった。(甲79、第1審原告A本人)同月19日、Eは、第1審原告Aに対し、同月5日の打合せで同Aが選定した照明器具に関する22万2200円(消費税込み)の本件注文書5を示 し、同Aはこれに署名押印して、第1審被告土屋ホームとの間で本件契約5 を締結した。(甲79、丙5、第1審原告A本人)ケ令和元年10月20日、第1審原告Bは、イオン銀行から住宅ローンの正式審査に通らなかったとの連絡を受け、その旨をEにメールで連絡するとともに、他の銀行に住宅ローンを申し込んだが、本件事故までに住宅ローンの審査に通ることはなかった。(甲59、79、80) コ令和元年10月31日までに、第1審被告土屋ホームは、エクステリア工事(外構工事)の一部を残して本件リフォーム工事を完成し、第1審原告Aは工事完了確認書に署名押印した。(丙6~9、14、証人E、第1審原告A本人)同日までに、第1審被告土屋ホームの下請業者は本件窓に本件製品を設置 したが、その際、本件製品に同梱されていた透明なビニール製小袋(本件クリップと本件タグを本件リングでつないだものが入ったもの)を一部破り、破れ目から出した本件クリップの先端部で、ループを形成している本件コードを挟んだ状態としただけで、本件リングを本件コードに通さなかった。本件施工説明書には、本件リングを本件コードに通す方法で本件クリップ及び 本件タグを本件コードに取り付けるよう指示されているにもかかわらず、上記業者がこの指示に従わなかったため、上記小袋は本件リングで本件コードとつながっておらず、容易に本件コードから分離する状態となっていた。Eは、 コードに取り付けるよう指示されているにもかかわらず、上記業者がこの指示に従わなかったため、上記小袋は本件リングで本件コードとつながっておらず、容易に本件コードから分離する状態となっていた。Eは、同日、本件建物2階の内部を写真撮影した際、上記状態の本件製品についても撮影した。(甲15、87、88、112~115、丙11、13、2 6、38)サ令和元年11月2日、Eらは、本件建物2階において、第1審原告夫妻との間で、本件リフォーム工事の施工内容の確認に加え、エクステリア工事や本件各契約に基づく代金支払方法についての打合せをした。 (甲79、80、丙14、証人E、第1審原告A・同B各本人) その際、Eらは、第1審原告夫妻に対し、本件製品に付属する本件コード の危険性及び本件クリップの使用方法等について説明せず、同夫妻は、本件事故に至るまで本件クリップ及び本件タグの存在を認識していなかった。 (甲79、80、第1審原告A・同B各本人)シ令和元年11月15日、第1審原告家族は本件建物2階に転居した。その際、本件リフォーム工事により設置された諸設備に関する取扱説明書を入れ たクリアファイルが本件建物2階のシステムキッチンに置いてあったが、本件製品に関する本件取扱説明書は含まれておらず、第1審被告土屋ホーム及びその下請業者は、第1審原告夫妻に対して本件取扱説明書を渡さなかった。 (甲71、80、弁論の全趣旨)第1審原告家族は、本件建物2階に転居後、リビングに配置された本件テ ーブルで食事をしたほか、同Aは、同月16日、本件テーブルにおいて所得税の年末調整関係の書類作成をした。(甲71、94、第1審原告A・同B各本人)ス令和元年11月18日朝、第1審原告夫妻は勤務先に出勤し、同Cは か、同Aは、同月16日、本件テーブルにおいて所得税の年末調整関係の書類作成をした。(甲71、94、第1審原告A・同B各本人)ス令和元年11月18日朝、第1審原告夫妻は勤務先に出勤し、同Cは小学校に登校した。Dは休園日であったため、第1審原告Bは、D用の朝食を本 件テーブル上に準備し、同Bの両親にDの面倒を見るよう頼んだ上で出勤した。Dは、本件テーブルで朝食を食べて、第1審原告Bの両親とともに買い物に行った後、本件建物2階において1人で過ごし、本件テーブルで昼食を食べた。その後、午後2時30分頃に本件事故が発生した。(甲3、78、80、99、第1審原告B本人) 同日の午後7時頃に警察が本件建物2階内部の写真撮影を行った際、本件コードには本件クリップ及び本件タグが装着されておらず、本件テーブル上には、第1審原告家族用のランチョンマット4枚が敷かれ、Dが朝食及び昼食を食べた後の食器等や、Dが第1審原告Bの両親に買ってもらった小物等に交じって、本件クリップと本件タグを本件リングでつないだものが入った 透明なビニール製小袋2つ(本件窓及びもう1つの窓に設置された本件製品 用のもの)が離れた位置に無造作に置かれていた。(甲78、99、第1審原告B本人)(5) 本件事故後の経緯ア令和元年11月18日、第1審被告土屋ホームは、第1審原告AからEへの電話により本件事故の発生を知った。また、第1審被告YKKは、同月2 2日、販売店からの連絡により本件事故の発生を知り、同月29日、本件事故が発生したことを消費者庁に報告し、消費者庁から経済産業省に対して重大製品事故通知がされた。NITEは、経済産業省からの指示を受け、第1審被告YKKから本件取扱説明書等の資料の提供や説明を受けるなどして、本件事 を消費者庁に報告し、消費者庁から経済産業省に対して重大製品事故通知がされた。NITEは、経済産業省からの指示を受け、第1審被告YKKから本件取扱説明書等の資料の提供や説明を受けるなどして、本件事故に関する調査を実施した。(甲7、79、133、乙34、35、6 0~62、弁論の全趣旨)令和2年2月5日、NITEは、上記調査の結果、本件製品の使用状況が不明なことから本件コードが首に絡んだ原因の特定には至らなかったが、本件JIS規格の要求事項を満たしていることから、製品に起因しない事故と推定されると判断した。その後、同年8月4日に開催された製品事故判定委 員会では、本件製品は、設置状況も含め本件JIS規格の要求事項を満たしていると考えられるが、本件製品を確認できず、本件事故発生場所の詳細な状況が不明なため、本件コードが首に絡んだ原因を特定できなかったことから、製品起因か否かを含め、本件事故原因の特定には至らなかった旨判断され、その旨が公表された。(甲133、乙39) イ令和2年4月15日に発出した内容証明郵便により、第1審原告Aは、第1審被告土屋ホームに対し、本件建築申込みに係る契約及び本件各契約を特商法9条1項に基づき解除する旨の意思表示(本件クーリングオフ)をした。 (甲21)(6) ブラインド等のコードによる子供の縊頸事故の発生とそれに対する安全対 策等 ア子供は発達段階に応じて様々な探索行動等をするところ、7~8歳頃になって因果関係を理解できるようになるまで潜在的なリスクを評価できず、身体の動きを制御する能力も未発達であるため、大人が予期できない探索行動等をするなどした際に不慮の事故に遭うことがある。(甲8、10、24)家庭内にブラインド等(ブラインド及びロールス きず、身体の動きを制御する能力も未発達であるため、大人が予期できない探索行動等をするなどした際に不慮の事故に遭うことがある。(甲8、10、24)家庭内にブラインド等(ブラインド及びロールスクリーン)のコードやカ ーテンのタッセル(カーテンをまとめる布やひも)が存在する場合、子供がコード等に触れたり遊んだりした際に、コード等が子供の首に絡まる事故が発生することがあり、その場合には気道閉塞による窒息や酸素欠乏による神経障害が発生し、15秒以内に気絶して2~3分で脳虚血により死亡に至る可能性がある。(甲10、11、23、24) ブラインド等による子供の縊頸事故は、世界的には昭和20年頃から報告されるようになり、OECD(経済協力開発機構)が平成28年に実施した調査では、平成8年以降、世界15か国で250例以上の死亡事故が報告されていた。(甲11、24)日本では、従前、家庭内にブラインド等が設置されることが少なかったた め、欧米に比べると、ブラインド等のコードによる縊頸事故が少なかった。 しかしながら、近年では日本においても家庭内にブラインド等が設置されるようになってきたため、ブラインド等のコードによる子供の縊頸事故が発生するようになっており、消費者庁が平成28年に実施した調査では、平成19年以降、ブラインド等のコードにより0~6歳の子供に合計10件の縊頸 事故が発生し、うち3件は死亡事故であった。(甲10、11、25、28)イ平成26年2月、東京都商品等安全対策協議会は、「ブラインド等のひもの安全対策」と題する報告書(東京都報告書)を作成・公表した。その作成過程において、平成25年10月に同協議会が子供のいる家庭を対象とするアンケート調査を実施した結果、①子供のいる家庭の約3割がブラインド等 と題する報告書(東京都報告書)を作成・公表した。その作成過程において、平成25年10月に同協議会が子供のいる家庭を対象とするアンケート調査を実施した結果、①子供のいる家庭の約3割がブラインド等 を所有しており、その半数以上が4年以上使用していること、②ブラインド 等を購入する際に重視した項目として安全性と回答した者は1割に満たず、警告表示はなかった又は覚えていないという回答が約8割、安全器具は付属していなかった又は覚えていないという回答が6割弱であり、ひもを高い位置でまとめるクリップを毎回使用するという回答は約6割にとどまり、ヒヤリ・ハットを含む事故が発生するまで危険を感じていなかったという回答も 約55%あったこと、③ブラインド等のひもによるヒヤリ・ハットを含む事故を経験したという回答が約15%あり、事故が発生した年齢は3歳以下が多いが、6歳での事故もあること、④ヒヤリ・ハットを含む事故が生じたブラインド等のひもの高さは0cm と100cm 以上が多く、100cm 以上の場合はソファやベッド等にいた状態で事故が起きていることなどが判明した。 (甲10、28)その上で、東京都報告書は、日本において平成19年~平成25年に、ブラインド等のひもが0~6歳の子供の首に絡まる事故が7件発生し、うち死亡事故が1件であることや、日本及び海外における安全対策、上記アンケート調査結果等を紹介した上で、①商品にクリップ等の安全器具が付属してい ても、それを使用していない人の割合が高いことから、安全器具と一体化した商品の開発・普及を図ったり、ひもがない・ループが小さいなど安全性の高い商品の開発・普及を図ったり、既に使用されている商品に対応する安全器具の普及の促進を図ったりすることを事業者団体に要望し、②業界 商品の開発・普及を図ったり、ひもがない・ループが小さいなど安全性の高い商品の開発・普及を図ったり、既に使用されている商品に対応する安全器具の普及の促進を図ったりすることを事業者団体に要望し、②業界による統一基準の策定やJIS規格化等を国及び事業者団体に要望し、③ループ状 のひもには縊頸の危険があることや、子供はひもで遊びやすいのでひも状のものをリビング等にできる限り設置せず、ブラインド等の近くにはソファ等を設置しないことなどを消費者に積極的に注意喚起するよう国及び事業者団体等に要望した。(甲9、10)ウ平成26年7月、立川ブラインドを含むブラインド製造業者4社から成る 日本ブラインド工業会は、東京都報告書を踏まえて「日本ブラインド工業会 の実施基準」(本件実施基準)を制定した。本件実施基準は、製品安全対策として、平成27年6月末までに順次、①ループコード式操作の製品に対するクリップの標準装備(クリップをコードに装着した状態で出荷すること)、②コード式操作の製品に対する解除装置(セーフティジョイント)の標準装備(生後6か月の乳幼児の体重を想定した6kg の荷重でループが分離する解 除装置をコードに装着すること)を実施することとした。また、安全意識向上策として、平成17年から実施している事故防止表示(「警告コードやチェーンが体に巻き付いたり、引っかかるようなことをしないでください。 事故の恐れがあります。」との記載及び子供の首にコードがかかっているイラスト)に加え、家具の配置に関する事故防止表示を順次実施していくこと とした。(甲32)エ平成28年6月、消費者庁は「ブラインド等のひもの事故に気を付けて! -平成22年から平成26年までに3件の死亡事故-」と題する文書を公表し、平成19年以降 と とした。(甲32)エ平成28年6月、消費者庁は「ブラインド等のひもの事故に気を付けて! -平成22年から平成26年までに3件の死亡事故-」と題する文書を公表し、平成19年以降、ブラインド等のひもにより0~6歳の子供に合計10件(うち3件は死亡事故)の縊頸事故が発生しているなどとして、ひもがな いなどの安全性の高い商品を選択したり、クリップ等で子供の手が届かない位置にひもをまとめたり、子供が登る可能性があるソファ等をひもの近くに設置しないようにしたりするよう注意喚起をした。(甲11)平成28年6月及び平成30年6月、東京都生活文化局は文書を公表し、家庭内のブラインド等のひも等が子供の首に絡まって窒息する事故が発生 しているとし、ひもがないなどの安全性の高い製品の選択、安全器具(クリップ・解除装置・チェーン固定具等)の活用及び家具の配置に対する注意を呼び掛けた。(乙29、30)オ平成29年12月20日、家庭用室内ブラインドに付属するコードに関する子供の安全性について本件JIS規格が制定された。本件JIS規格は、 ①通常状態の室内ブラインドに付属するコードが可接域(通常状態の室内ブ ラインドにできるだけ接近して直立した子供が伸ばした手がコードに触れられる領域)に存在しないこと、又は②可接域にコードが存在する場合に、そのコードによって形成される全てのループが、㋐一定の荷重によって、子供の頸部への荷重が解放される機能(30N〔ニュートン〕以下の荷重によって分離されるコード等)を持つこと、㋑子供の頭部が挿入可能なループを 形成しないこと、若しくは㋒ギヤ式ブラインド(本件製品のように、コードによりギヤ等を回転駆動させることで昇降操作をするブラインド)に限り、コードを子供の手の届かない高 頭部が挿入可能なループを 形成しないこと、若しくは㋒ギヤ式ブラインド(本件製品のように、コードによりギヤ等を回転駆動させることで昇降操作をするブラインド)に限り、コードを子供の手の届かない高さに保持できる手段を持つことなどのいずれかを満たすことを要求事項としている。(乙1)上記㋒の要求事項については、コードを子供の手の届かない高さに保持す る手順が取扱説明書に記載されており、かつ、コードを子供の手の届かない高さに保持しないことによるリスクに関する注意表示及びその説明について取扱説明書に記載されていることが確認できた場合は適合と判定するとされている。取扱説明書には、使用者が理解しやすいイラストを含めたコードを使用する上での禁止事項及び注意事項、子供の手が届かない高さにコー ドを保持する手段が使用者に委ねられている場合には、使用者の行動を促すための事項を記載するとされており、その例が附属書D(参考)に示されている。また、全ての要求事項に適合したコードには、室内ブラインド本体又は室内ブラインドに付属したタグ等の見やすい箇所に、容易に消えない方法で、使用者が理解しやすいイラストを含めたコードを使用する上での禁止事 項及び注意事項等を表示するとされており、その例が附属書D(参考)に示されている。(乙1)附属書(参考)は、JIS規格の理解等を助けるための参考情報等を記載したものであり、規定の一部になるものではなく、要求事項を記載してはならないとされている。本件JIS規格の附属書D(参考)には、表示及び取 扱説明書の禁止事項及び注意事項の例として、「警告コードやチェーンが 体に巻き付いたり、引っかかるようなことをしないでください。事故の恐れがあります。」と記載されている。(乙1、58)本件JIS 止事項及び注意事項の例として、「警告コードやチェーンが 体に巻き付いたり、引っかかるようなことをしないでください。事故の恐れがあります。」と記載されている。(乙1、58)本件JIS規格の解説には、コードを子供の手の届かない高さに保持できる手段を持つとする要求事項は、製造業者側からすると、子供の安全確保のための製造コストを最も低く抑えることができるが、消費者による対策の実 施が必要となることから、確実性が低い安全対策となるものの、この規定がない場合、一部のコードにおいて子供の安全対策が野放し状態となり、今後、対策を考案することもなくなってしまうため、この要求事項でしか子供の安全性を確保できないコードへの適用に限定して規定したが、将来的には室内ブラインド製品による安全対策に改善していくよう、課題の積み残しを明確 化した旨の記載がある。(乙1)カ令和元年12月頃、消費者庁は、本件事故を受けて、ウェブサイト上で、「ロール式網戸の操作用のひもに注意!」として、ロール式網戸やブラインド等の操作ひもによる縊頸事故について注意喚起をした。(乙36)しかしながら、その後もブラインド等のコードによる子供の縊頸事故は発 生し続けており、令和2年10月には3歳7か月の子供がブラインドのコードによる縊頸により死亡し、同年12月には1歳10か月の子供がロールカーテンのコードによる縊頸により救急搬送され、令和3年4月には3歳の子供がロールカーテンのコードによる縊頸により死亡し、令和5年1月には3歳の子供がブラインドのコードによる縊頸により死亡している。(甲69、 120~122)(7) ブラインド等のコードに関する諸外国の規制ア平成30年1月、米国では、米国規格協会が窓カバー製品(ブラインド コードによる縊頸により死亡している。(甲69、 120~122)(7) ブラインド等のコードに関する諸外国の規制ア平成30年1月、米国では、米国規格協会が窓カバー製品(ブラインド等)の安全に関する米国安全基準を承認した。米国安全基準は、ストック品(既製品)について、①コードを有しないこと、②約20cm 以下のコードしか有 しないこと、③子供がコードに触れることができないことのいずれかを採用 しなければならないとしている。また、カスタム品(オーダーメイド品)については、上記①~③を満たさないことを許容する代わりに、安全器具(コードの固定具)を使用するとともに、子供の縊頸に対する警告及びイラストを製品本体及びコードに装着するタグに表示しなければならないとしている。(甲130、131、乙54、弁論の全趣旨) イ平成31年4月、カナダでは、米国安全基準は不十分であり縊頸事故の危険性が残るとして、全ての室内用窓カバー製品(ブラインド等)のコードについて、ループを形成する場合には、1歳児の頭を通過しないように周長が44cm を超えてはならないとする規制が制定された。なお、この規制には、発効まで2年間の猶予期間が設けられた。(甲49) (8) 第1審被告YKKによる安全対策等ア平成26年8月頃、第1審被告YKKは、東京都報告書を踏まえて、本件製品を含め、コードを有する製品の安全対策について検討した。その検討においては、平成24年11月に生後6か月の子供が自宅でブラインドのコードに首を引っ掛けて窒息死した事故が生じていたことから、6か月児の体重 7.8kg(80N)を基準として検証した結果、本件製品を含む全ての製品で破壊荷重が80N以上となり(本件製品の破壊荷重は440N〔約45kg 死した事故が生じていたことから、6か月児の体重 7.8kg(80N)を基準として検証した結果、本件製品を含む全ての製品で破壊荷重が80N以上となり(本件製品の破壊荷重は440N〔約45kg〕)、幼児の首が引っ掛かった場合は窒息の可能性があるので安全対策が必要であると判断した。その上で、安全対策について、ループレス化は現行商品の対策として速効性に欠けること、解除装置は、約40Nの荷重で外れる 部品であれば安全対策として有効とされているが、日常の開閉操作時を想定した検証では最大73Nの荷重がかかったため、約40Nの荷重で外れる部品では日常の開閉操作に支障があることを理由に、コードを子供の手の届かない位置でまとめるクリップを防護措置とし、使用上の注意及びクリップの使用方法を記載したタグを同梱することを決めた。(乙20、21、弁論の全 趣旨) イ平成29年3月頃、第1審被告YKKは、高窓用オペレーター(開閉操作装置)のループレス化について、他社との共同開発を開始し、同年10月頃には、社内展示会において高窓用ループレスオペレーターを展示し、平成30年3月には同製品に係る特許を共同出願した。(乙44~46)同年8月頃、第1審被告YKKは、本件製品を含む収納式網戸のループレ ス化について、網戸の製造・販売等を行っているセイキとの共同開発を開始し、令和2年12月、収納式網戸のループレス機構に関する特許を共同出願した。(乙49、50)ウ本件事故後、第1審被告YKKは、同種事故防止のため、①令和元年12月18日生産分から、本件クリップ及び本件タグを本件コードに取り付けて 出荷するようにし、②令和2年1月発行分から、本件施工説明書の「ボールチェーンにクリップを取付けてください。」との記載を「ボールチェ 産分から、本件クリップ及び本件タグを本件コードに取り付けて 出荷するようにし、②令和2年1月発行分から、本件施工説明書の「ボールチェーンにクリップを取付けてください。」との記載を「ボールチェーンにクリップが取付いていることを確認してください。」に変更し、③同年4月13日生産分から、本件タグの「ご使用上の注意」及び「クリップの使い方」の表示をいずれも「警告」に変更し、イラストを乳児の首にコードがかかっ たものに変更して「窒息などの事故につながるおそれがあります。」との記載を加え、本件コードのまとめ方に関する動画等を閲覧できるウェブサイトにつながる二次元コードを記載するなどし、④同月から、本件取扱説明書の記載を本件タグと同様に変更した。(甲7)令和3年2月、第1審被告YKKは、子供の縊頸事故に対する安全対策と して、同年4月以降に販売する本件製品を含む上げ下げロール網戸について、一本ひも仕様のループレスに全面的に切り替えていくことを発表した。(甲51)(9) 各企業による安全対策等ア平成26年4月、ブラインドの製造・販売等を行っている立川ブラインド は、クリップを製品に同梱するのではなく、コードに装着した状態でブライ ンドを出荷することに変更した。(甲12)イ令和元年9月時点で、セイキは、ループを形成するコードを有する上げ下げロール網戸のほかに、アコーディオン式網戸(網戸を折り畳みながら上下のガイドレールに沿って左右に開閉するもの)、横引きロール網戸(左又は右の窓枠に収納ケースを設置し、上下のガイドレールに沿って網戸を巻き取る もの)、スプリング式ロールアップ網戸(上の窓枠に収納ケースを設置し、ばねの力で網戸を巻き上げるもの)を販売しており、これらの網戸にはいずれもループを形成する イドレールに沿って網戸を巻き取る もの)、スプリング式ロールアップ網戸(上の窓枠に収納ケースを設置し、ばねの力で網戸を巻き上げるもの)を販売しており、これらの網戸にはいずれもループを形成する操作コードは付属していなかった。(甲34~36)ウ令和元年9月時点で、LIXILは、本件製品と同様の上げ下げロール網戸について、①施工業者向けの取付説明書には、取付工事の最終工程として、 「コードクリップで操作ひもを束ねます。お子さまの手が届かない位置で束ねて留めてください。」との記載と、その下に、背伸びした子供の手が届かない位置でクリップによりコードがまとめられているイラストを掲載し、②コードをまとめるクリップ、タグ(「警告」との表示があり子供の首にコードがかかっているイラストが記載されているもの)及び使用者向け取扱説明書 (クリップの使用方法について上記取付説明書と同じ文言とイラストが掲載されたもの)を入れたビニール製小袋を製品に同梱していた。(甲84、乙22) 2 事実認定の補足説明(1) 令和元年11月2日にEらと第1審原告夫妻との間で行われた本件リフォ ーム工事の施工内容の確認等(上記1(4)サ)に関し、第1審原告らは、その際に同夫妻がEらから本件製品に付属する本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等について説明を受けた事実はなく、本件事故に至るまで本件クリップ及び本件タグの存在を認識していなかった旨主張し、同夫妻の供述及び陳述書(甲79、80、99、125、第1審原告A・同B各本人)はこれに 沿っている。 これに対し、第1審被告土屋ホームは、上記の際に、Eらが第1審原告Bに対して本件コードの操作方法を説明するとともに、本件クリップに付属した本件タグを指し示しながら、本件コ 沿っている。 これに対し、第1審被告土屋ホームは、上記の際に、Eらが第1審原告Bに対して本件コードの操作方法を説明するとともに、本件クリップに付属した本件タグを指し示しながら、本件コードが子供の首等に巻き付く危険性やそのような事故発生を防止するために本件クリップが存在することを説明し、同Bが「わー危ない。」と発言するなどした旨主張し、Eの証言及び陳述書(丙14、 証人E)はこれに沿っている。 当裁判所は、第1審原告夫妻の供述等は信用できる一方、Eの証言等は信用性に疑問があるものと判断し、上記1(4)サのとおり認定したものであるが、その理由は以下のとおりである。 (2) 第1審原告夫妻の供述等の信用性について 仮に第1審原告Bが、第1審被告土屋ホームの主張する内容の説明を受けていたとすれば、子供である第1審原告C及びDに危険が及ばないようにするため、ビニール製小袋から本件クリップ及び本件タグを取り出した上で、本件クリップを手に取ったり、本件クリップを本件コードに装着して本件コードをまとめてみたりするのが自然であると考えられる。それにもかかわらず、本件事 故の時点では、本件クリップは本件コードに装着されておらず、本件タグ及び本件リングとともにビニール製小袋に入った状態で本件テーブル上に置かれていたこと(認定事実(4)ス、弁論の全趣旨)からすれば、第1審原告Bが供述等するように、Eらから上記のような説明を受けていないと考えるのが合理的である。 また、上記のとおり、本件事故の時点で、本件クリップと本件タグを本件リングでつないだものが入ったビニール製小袋2つ(本件窓及びもう1つの窓に設置された本件製品用のもの)が本件テーブルの上に置かれていたこと(認定事実(4)ス、弁論の全趣旨)については、①第 グを本件リングでつないだものが入ったビニール製小袋2つ(本件窓及びもう1つの窓に設置された本件製品用のもの)が本件テーブルの上に置かれていたこと(認定事実(4)ス、弁論の全趣旨)については、①第1審被告土屋ホームは、本件訴訟前、本件クリップ及び本件タグが本件窓の窓枠に置かれているのをEらが確認 した旨の説明をしていたこと(甲17、133)、②本件建物2階のトイレに設 置されていた本件製品と同様の上げ下げロール網戸に付属するクリップも窓枠に置かれていたこと(甲79)、③Eが令和元年10月31日に撮影した写真と警察が本件事故当日に撮影した写真では、本件製品の網戸が巻き上げられている位置が異なっており、令和元年10月31日から第1審原告家族の入居までの間に、Eらが動作確認のため本件コードを操作し、その際に本件クリッ プ及び本件タグの入ったビニール製小袋を本件コードから外して窓枠に置いた可能性があること(甲78、丙11、13、38、弁論の全趣旨)、④第1審原告家族は同年11月15日に本件建物2階に入居した後、本件事故までの間、本件テーブル上で食事や書類作成をしており(認定事実(4)シ)、同夫妻が、食事等の邪魔になる上記ビニール製小袋2つを本件テーブルの上に意識的に置 いて管理していたとは考え難いこと、⑤上記ビニール製小袋2つは、Dが使用した食器等に交じって本件テーブル上の離れた位置に無造作に置かれていたこと(認定事実(4)ス)からすると、本件事故当日、上記ビニール製小袋2つは本件窓ともう1つの窓の窓枠にそれぞれ置かれていたところ、Dがこれらに興味を持って手に取り、本件テーブルの上に置いた可能性が十分に考えられるも のの、これを確定することは困難である。ただし、少なくとも上記ビニール製小袋2つが本件テーブル上 ところ、Dがこれらに興味を持って手に取り、本件テーブルの上に置いた可能性が十分に考えられるも のの、これを確定することは困難である。ただし、少なくとも上記ビニール製小袋2つが本件テーブル上に置かれていた状況からすると、第1審原告夫妻がこれらを意識的に管理していたものとは認め難いから、この点も同夫妻の供述と整合するものといえる。 さらに、第1審原告夫妻は、少なくとも第1審被告土屋ホームが説明を行っ たとする令和元年11月2日より前の時点では本件製品及び同種製品の存在を知らず、Eから本件製品を設置することやその危険性について説明を受けていなかったこと(認定事実(4)オ、ク、甲80、第1審原告B本人)に加え、本件クリップ及び本件タグが入ったビニール製小袋は、住宅設備等の部品が入っているような一般的な形状であったこと(甲78、乙51)からすれば、第1 審原告夫妻が、本件リフォーム工事によって全体的に目新しくなった本件建物 2階に入居してから本件事故が発生するまでの短期間に、上記ビニール製小袋が視界に入っても、これに特に注目することなく具体的な認識に至らなかったことも特段不自然とはいえない。なお、第1審原告夫妻は、本件建物2階に入居後、本件窓及びもう1つの窓にカーテンを取り付けているが、これを取り付ける際に本件製品の網戸を昇降させる必要はなかったと認められるから(認定 事実(3)オ、甲78、第1審原告A・同B本人)、同夫妻がカーテンを取り付けた際に本件クリップ及び本件タグについて認識したはずであったともいえない。 これに対し、第1審被告らは、第1審原告Aが本件事故から5日後の令和元年11月23日まで本件クリップ及び本件タグが本件テーブル上に置いてあ るのに気付かなかったというのは不自然であり、同Aの供 これに対し、第1審被告らは、第1審原告Aが本件事故から5日後の令和元年11月23日まで本件クリップ及び本件タグが本件テーブル上に置いてあ るのに気付かなかったというのは不自然であり、同Aの供述等は信用できない旨主張する。しかしながら、自宅内における突然の本件事故によりDが死亡したことによる第1審原告夫妻の心情に思いを致せば、同夫妻がしばらくの間茫然自失状態に陥ったこと(甲125)は何ら不自然ではなく、第1審被告らの上記主張は採用できない。 (3) Eの証言等の信用性についてEは、本件製品の選定に当たって第1審原告夫妻に対して子供の縊頸事故の可能性について説明しなかったこと、本件窓の位置からして本件製品に付属する本件コードに子供の首が引っ掛かる危険性は少ないと思っていたこと、本件コードの危険性及び本件クリップの使用の必要性等について全ての顧客に対 して毎回説明しているわけではないこと、本件クリップで本件コードをまとめる実演はしなかったことなどを証言している。その一方で、Eは、今回は特に必要があると思い、本件コードの危険性及び本件クリップの使用の必要性等について説明した旨の証言をしているところ、上記のように、危険性が少ないと思っており、常に説明するわけではないにもかかわらず、なぜ今回は危険性に ついて説明したのか、特に必要性があると思って説明したとしながら、なぜ本 件クリップを本件コードに装着せず、本件クリップを本件コードでまとめる実演もしなかったのか(これらはごく短時間でできたものと考えられる。)などについて合理的説明がされておらず、Eの証言は全体としての整合性に疑問がある。また、Eが説明したとする本件コードの危険性及び本件クリップの使用の必要性等に関する内容は具体性を欠くといわざるを得ない について合理的説明がされておらず、Eの証言は全体としての整合性に疑問がある。また、Eが説明したとする本件コードの危険性及び本件クリップの使用の必要性等に関する内容は具体性を欠くといわざるを得ない。 (4) 以上述べたところによれば、第1審原告夫妻の供述等は十分に信用することができ、同夫妻がEらから本件製品に付属する本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等について説明を受けたことはなかったものと認めるのが相当である。 3 争点(1)(第1審被告YKKの製造物責任の有無)について 以下のとおり、本件製品に付属する本件コードは子供の生命・身体に対する高度の危険性を有しており、その危険性に対して本件クリップの使用による安全対策が取られていたところ、この安全対策は本件製品の使用者によって日常的かつ継続的に確実に実行されれば、子供の縊頸事故を防止する効果を有していたから、本件製品に欠陥(設計上の欠陥)があったとは直ちにいえない。しかしながら、 本件製品については、この安全対策が本件製品の使用者によって日常的かつ継続的に確実に実行されるのに十分といえるだけの指示・警告がされていたとは認められないから、通常有すべき安全性を欠いていたものとして欠陥(指示・警告上の欠陥)があったというべきであり、第1審被告YKKは製造物責任を負う。 (1) 本件事故の発生機序等について 本件事故の発生機序については、目撃者や録画等が存在しないため、これを確定することは困難であるものの、子供の一般的な行動特性とDの従前の行動、本件製品の設置状況、Dが床に立った場合の本件窓との位置関係、本件事故後の本件窓周辺の状況及び本件椅子の配置状況等(認定事実(3)オ、(6)ア、甲78、96)からすると、本件事故は、Dが本件コードに興味を持 の設置状況、Dが床に立った場合の本件窓との位置関係、本件事故後の本件窓周辺の状況及び本件椅子の配置状況等(認定事実(3)オ、(6)ア、甲78、96)からすると、本件事故は、Dが本件コードに興味を持ち、本件椅子 の上に立って本件コードに手を触れるなどしていた際、バランスを崩すなどし て本件コードにより形成されたループに首が引っ掛かり、自らの体重が加わって縊頸したことにより発生した可能性が高いものと考えられる。 また、仮に本件コードが本件クリップによってまとめられた状態で本件窓の上部に位置していれば、Dの身長及び本件椅子の座面の高さ等(認定事実(3)オ)からすると、Dは本件コードに手が届かず又は少なくとも本件コードに首 が通らず、本件コードにより縊頸することはなかったものと認めるのが相当である。 (2) 設計上の欠陥の有無についてア本件製品の危険性等について本件製品には、網戸を昇降させるための本件コードが付属しており、本件 製品が窓に設置されると、別紙6の図面のように本件コードが下部に垂れ下がり、子供の頭が容易に通過する大きさのループを形成することになった(認定事実(3)イ)。本件製品は、一般住宅に設置することを目的として製造・販売されたものであり(認定事実(3)ア)、子供が日常的にこれに接触することが想定されるところ、子供の一般的な行動特性等(認定事実(6)ア)からす れば、子供が保護者の目の届かないところで本件コードに触れたり遊んだりすることも通常予見可能であったといえる。また、本件製品と同様にループを形成するコードが付属しているブラインド等について、床から100cm 以上の高さにあったコードでも子供の縊頸事故が発生していたこと(認定事実(6)イ)からすれば、本件製品が床から90c 様にループを形成するコードが付属しているブラインド等について、床から100cm 以上の高さにあったコードでも子供の縊頸事故が発生していたこと(認定事実(6)イ)からすれば、本件製品が床から90cm 程度の高さを有する腰高窓に 設置された場合であっても、子供が本件コードに触れるなどすることは通常予見可能であったといえる。そうすると、本件製品の通常予見される使用形態には、子供による上記のような誤使用も含まれるというべきである。 そして、上記の誤使用によって、本件コードにより形成されるループに子供の首が引っ掛かって体重が加わった場合、本件コードが破壊されずに縊頸 が生じて、2~3分で子供が死亡に至る可能性があったから(認定事実(6) ア、(8)ア)、本件製品に付属する本件コードは子供の生命・身体に対して高度の危険性を有していたといえる。 したがって、本件製品については、本件コードが有する子供の生命・身体に対する高度の危険性が現実化するのを防止するための安全対策が不可欠であって、その安全対策が不十分であった場合には、通常有すべき安全性を 欠くものとして欠陥があったというべきである。 イ抜本的な安全対策について(ア) 東京都報告書、本件実施基準、本件JIS規格、諸外国の規制及び各企業による安全対策等(認定事実(6)イ、ウ、オ、(7)、(9))に照らすと、本件製品が引き渡された令和元年9月の時点において、本件コードによる子 供の縊頸事故を防止するための抜本的な安全対策として、①コードがループを形成しないよう、一本ひも仕様等のループレスとすること、②ループを形成するとしても、子供の頭が通らないようコードの周長を40cm 程度以下とすること、③ループを形成するとしても、ループに子供の体重が加わった場合にルー ひも仕様等のループレスとすること、②ループを形成するとしても、子供の頭が通らないようコードの周長を40cm 程度以下とすること、③ループを形成するとしても、ループに子供の体重が加わった場合にループが解消する解除装置(セーフティジョイント)を備え ること、④コード以外の方法で網戸を操作することが選択肢となり得たものと認められる。 (イ) しかしながら、上記①~③の対策を取ることには技術的な課題があり、④の対策は本件製品に代替できない場面があったり本件製品の効用を損なったりするなどの課題があり、いずれも有効な安全対策であったとは認 め難い。 すなわち、①(ループレス化)については、第1審被告YKKは、平成29年3月頃から高窓用オペレーターについて、平成30年8月頃からは本件製品を含む収納式網戸について、それぞれループレス化に向けた共同開発に着手し、令和3年4月には一本ひも仕様のループレスにした本件製 品を販売するに至っているが(認定事実(8)イ、ウ)、一般的な製品開発と 比較して時間を要したり、漫然と製品開発を先送りしたりしたという事情をうかがわせる証拠はない。そうすると、本件製品の引渡時点において、ループレス化した本件製品を販売することが技術的に可能であったとまでは認められない。 また、②(コードの短縮)については、本件コードを短縮した場合には 網戸の逆巻き等により昇降操作に支障が生じる可能性があるところ(弁論の全趣旨)、本件製品の引渡時点において、当該支障を解消した上で本件製品を販売することが技術的に可能であったとまでは認められない。 次に、③(解除装置の装着)については、本件製品の引渡時点において、本件コードによる網戸の昇降の際に生じる最大73Nの荷重では分離し ない解除装置も存在した 能であったとまでは認められない。 次に、③(解除装置の装着)については、本件製品の引渡時点において、本件コードによる網戸の昇降の際に生じる最大73Nの荷重では分離し ない解除装置も存在したものと認められる(認定事実(8)ア、立川ブラインドに対する調査嘱託の結果)。しかしながら、そのような解除装置では、ブラインド等のコードによる縊頸事故の多くを占める3歳以下の子供の安全を確保することはできないから(認定事実(6)イ、(8)ア、弁論の全趣旨)、そのような不十分な安全対策であっても採用すべきであったとまで はいい難い。 さらに、④(コード以外の方法による操作)については、本件製品の引渡時点において、アコーディオン式網戸、横引きロール網戸及びスプリング式ロールアップ網戸といった、ループを形成するコードの付属していない網戸が製造・販売されていたことが認められる(認定事実(9)イ)。しか しながら、上記のアコーディオン式網戸等は、設置可能な窓の形状等が本件製品と異なったり、防虫効果に劣ったりし(認定事実(3)ア、甲34~36、弁論の全趣旨)、上記のアコーディオン式網戸等を製造・販売している事業者も、ループを形成するコードを有する上げ下げロール網戸を同時に製造・販売していること(認定事実(9)イ)に照らすと、本件製品の製造・ 販売を中止して上記のアコーディオン式網戸等に置き換えるべきであっ たとまではいえない。 ウ本件クリップの使用による安全対策について(ア) 第1審被告YKKは、東京都報告書を踏まえ、平成26年8月頃、本件製品の安全対策について検討した結果、ループレス化及び解除装置の装着による安全対策は採用できないとして、本件クリップの使用を安全対策と して採用することを決めたことが認められ 26年8月頃、本件製品の安全対策について検討した結果、ループレス化及び解除装置の装着による安全対策は採用できないとして、本件クリップの使用を安全対策と して採用することを決めたことが認められる(認定事実(8)ア)から、この安全対策が取られたことにより、本件製品が引き渡された令和元年9月の時点において、本件製品が通常有すべき安全性を有していたといえるかが問題となる。 そこで検討するに、本件クリップの使用による安全対策は、本件製品の 使用者が本件クリップを使用して本件コードを窓の上部にまとめることによって、本件コードによるループの形成を防ぐものであるところ、一般の使用者であっても、適切な指示があれば、本件クリップを適切に使用して本件コードをまとめることができたものと認められるから(甲86、117、乙7、8)、上記安全対策は、これが確実に実行されれば、本件コー ドによる子供の縊頸事故を防止する効果を有していたものと認められる。 そして、上記(1)で述べたとおり、本件クリップが適切に使用されていれば本件事故は発生しなかったものといえる。 また、本件製品の引渡時点において、①本件実施基準及び本件JIS規格のいずれもが、ブラインドのコードに対する安全対策の一つとしてクリ ップの使用を定めていたこと(認定事実(6)ウ、オ)、②米国安全基準は、カスタム品について、安全器具を使用することにより、ループを形成するコードを有するブラインド等を販売することも許容しており、カナダでも、ループを形成するコードに対する規制は発効していなかったこと(認定事実(7))、③第1審被告YKK以外の網戸やブラインド等の製造業者も、ル ープを形成するコードを有する網戸やブラインド等を販売しており、これ に対する安全対策と なかったこと(認定事実(7))、③第1審被告YKK以外の網戸やブラインド等の製造業者も、ル ープを形成するコードを有する網戸やブラインド等を販売しており、これ に対する安全対策としてコードをまとめるクリップの使用を採用していたこと(認定事実(9))が認められる。 そうすると、本件クリップの使用による安全対策は、これが確実に実行されれば、本件コードによる子供の縊頸事故を防止する効果を有しており、本件製品の引渡時点では社会的にも許容されていたものといえる。 (イ) ところで、本件製品のような上げ下げロール網戸やブラインド等に付属するコードの危険性は、刃物やストーブのような製品の危険性とは異なり、一般の使用者が容易に認識できるようなものではないものと考えられる。すなわち、子供の首にひもが引っ掛かった場合には窒息死の危険性があること自体は常識に属するといえるが、本件製品のような上げ下げロー ル網戸やブラインド等は、どの家庭にも設置されているようなものではないから、その危険性を含む特性について広く認知されているとはいえないし、一般住宅内という日常空間に、他の住宅設備や家具等に交じって目立つことなく存在した場合、一般の使用者にとって、本件製品のコードが子供を死亡に至らせる危険性を有するとは感じられなかったとしても何ら おかしくないといえる。 そうすると、本件製品の引渡時点において、一般の使用者は、必ずしも本件コードの危険性を認識していたとはいえず、ひいてはこれに対する安全対策である本件クリップの使用の重要性に関する認識も十分ではなかったものと考えられる。 このことは、東京都商品等安全対策協議会が平成25年に実施したアンケート調査において、子供のいる家庭の半数以上が、所有している 使用の重要性に関する認識も十分ではなかったものと考えられる。 このことは、東京都商品等安全対策協議会が平成25年に実施したアンケート調査において、子供のいる家庭の半数以上が、所有しているブラインド等のコードの危険性についての認識を有していなかったことや、ブラインド等のひもを高い位置でまとめるクリップを毎回使用するという回答が約6割にとどまっていたこと(認定事実(6)イ)が裏付けているとい える。そして、現在もブラインド等のコードによる子供の死亡事故が発生 し続けていること(認定事実(6)カ)からすると、本件製品の引渡時までに一般の使用者の認識が大きく変化していたとは考え難い。 (ウ) また、本件クリップの使用による安全対策を採用した場合、使用者は、網戸を昇降するたびに、本件クリップを外して本件コードを使用し、終了後に再度本件クリップで本件コードをまとめる作業をする必要があるだ けでなく(乙7、8)、本件製品が一般住宅に設置されると、数年単位で使用される可能性が高く(認定事実(6)イ)、その間に使用者が代わる可能性もあるから、長期にわたる使用期間中、設置当初からの使用者でない者も含め、使用者は上記作業を繰り返し続ける必要があり、そのうち安全対策が実行されなくなるおそれがあったといえる。 そうすると、本件クリップの使用による安全対策は、本件クリップを本件コードでまとめるという使用者の作業に依存することに伴う脆弱性を有していたといえる。 (エ) さらに、一般の使用者は、本件クリップを渡されただけでは、本件クリップを適切に使用し、ほどけることのないよう確実に本件コードをまとめ ることができるとは限らないから(甲117~119、乙7、8、弁論の全趣旨)、本件クリップの使用方法についても適切に指示 リップを適切に使用し、ほどけることのないよう確実に本件コードをまとめ ることができるとは限らないから(甲117~119、乙7、8、弁論の全趣旨)、本件クリップの使用方法についても適切に指示がされる必要があったといえる。 (オ) 以上で述べたところによれば、本件クリップの使用による安全対策については、これが確実に実行されれば子供の縊頸事故を防止することがで きるものであったものの、必ずしも本件コードの危険性や本件クリップの使用の重要性を認識しているとは限らない使用者にその実行を依存せざるを得ないという脆弱性を有していただけでなく、本件製品は日常的かつ長期間にわたり使用されるから、その間に使用者がその実行を怠った場合には子供の生命・身体に対する高度の危険性が現実化するおそれがあった ものと認められる。 そうすると、本件製品については、このような高度の危険性が現実化することのないよう、本件クリップの使用による安全対策が本件製品の使用者によって日常的かつ継続的に確実に実行されるために十分といえるだけの指示・警告がされる必要があったといえるし、また、そのような指示・警告がされれば、通常有すべき安全性を欠くものであったとはいえない。 したがって、本件製品に設計上の欠陥があったとは直ちにいえない。 (3) 指示・警告上の欠陥の有無についてア上記(2)ウで述べたところを踏まえて検討するに、令和元年9月の引渡時点において、本件製品については、①本件コードに本件クリップ及び本件タグが装着された状態で出荷されていなかったこと、②使用者向けの取扱説明 書が同梱されていなかったこと、③本件タグ及び本件取扱説明書に警告表示がされていなかったことを総合すると、本件クリップの使用によ 着された状態で出荷されていなかったこと、②使用者向けの取扱説明 書が同梱されていなかったこと、③本件タグ及び本件取扱説明書に警告表示がされていなかったことを総合すると、本件クリップの使用による安全対策が本件製品の使用者によって日常的かつ継続的に確実に実行されるために十分といえるだけの指示・警告がされていたとはいえず、他方で第1審被告YKKがこれらの対策をとることも十分に可能であったから、本件製品は通 常有すべき安全性を欠いていたものとして欠陥(指示・警告上の欠陥)があったというべきである。その理由は以下のとおりである。 イ上記①(本件コードへの本件クリップ及び本件タグの装着)について(ア) 本件製品が設置される時点で、本件クリップ及びこれに関する注意表示が記載された本件タグが本件リングにより本件コードに装着されてい ることは、本件クリップ及び本件タグの存在が使用者の目に留まるようにし、本件クリップの使用を促す効果を有するものと考えられる。また、本件JIS規格が、コードを使用する上での禁止事項及び注意事項を室内ブラインド本体又はそれに付属したタグに表示することとしていること(認定事実(6)オ)に照らすと、本件製品本体に注意表示をしない場合には、本 件タグが本件製品と一体となり、本件製品本体に注意表示をしたのと同様 な状態が確保されるような対策が必要であったといえる。加えて、上記(2)ウで述べたとおり、一般の使用者は本件コードの危険性及び本件クリップの使用の重要性を認識しているとは限らないことも考慮すると、本件クリップの使用の必要性を記載した本件タグとともに本件クリップが本件コードに装着されていることは重要であったといえる。 また、上記(2)ウで述べたとおり、本件製品は数年 ると、本件クリップの使用の必要性を記載した本件タグとともに本件クリップが本件コードに装着されていることは重要であったといえる。 また、上記(2)ウで述べたとおり、本件製品は数年単位で使用される可能性が高く、その間に使用者が代わる可能性もあることも踏まえると、使用期間中に本件クリップ及び本件タグが本件製品から分離され、ひいては紛失等される事態を防ぐためにも、本件クリップ及び本件タグが本件リングにより本件コードに装着されていることは重要であったといえる。なお、 第1審被告YKKは、本件クリップを全国のショールームで無償配布していたものの(弁論の全趣旨)、本件クリップを紛失等した使用者が上記無償配布の事実を知っていて、わざわざ本件クリップを受領しにいく可能性が高いとは考え難い。 そうすると、本件クリップの使用による安全対策を実効的なものにする ためには、本件製品が設置された時点で本件クリップ及び本件タグが本件リングにより本件コードに装着されていることが重要であったといえる。 そして、日本ブラインド工業会は、本件実施基準において、平成27年6月末までに、ブラインドのコードをまとめるクリップをコードに装着した状態で出荷することとし、それに先立ち、同工業会の構成員である立川ブ ラインドは平成26年4月から同様の対応をしていた(認定事実(6)ウ、(9)ア)。 (イ) 他方で、第1審被告YKKは、本件施工説明書において、施工業者に対して「ボールチェーンにクリップを取付けてください。」との指示をしていたものの、本件クリップ及び本件タグの装着は施工業者に任せていた (認定事実(3)ウ)。一般住宅の建築工事には下請業者も含め多数の業者が 関与し、その規模も質も様々であって、本件施 いたものの、本件クリップ及び本件タグの装着は施工業者に任せていた (認定事実(3)ウ)。一般住宅の建築工事には下請業者も含め多数の業者が 関与し、その規模も質も様々であって、本件施工説明書における上記指示が遵守されるとは限らないと考えられるところ、現に、本件窓に本件製品を取り付けた第1審被告土屋ホームの下請業者はこれを遵守せず、本件クリップ及び本件タグを本件リングにより本件コードに取り付けなかった(認定事実(4)コ)。 この点に関し、第1審被告YKKは、本件クリップを本件コードに装着した状態で出荷した場合、輸送中に本件クリップが破損するリスクが考えられたことや、本件クリップを独立した部品としても販売することを想定していたことに加え、使用者が本件クリップを装着して適切に使用することが期待できるので、本件クリップを装着しておかなくとも安全性に問題 がないと判断していたことから、本件クリップを本件コードに装着しない状態で出荷していた旨主張する。 しかしながら、輸送中の振動等によりプラスチック製の本件クリップが破損するリスクがどの程度存在したのかは不明であるし、第1審被告YKKは、本件事故後の令和元年12月から本件クリップを本件コードに取り 付けて出荷するようになったが(認定事実(8)ウ)、これにより輸送中の本件クリップの破損が大きく増加したという事情をうかがわせる証拠はない。また、本件クリップを独立して販売することは、出荷時に本件クリップを本件コードに装着することとの関連性が薄いし、使用者が本件クリップを装着して適切に使用するとは限らないことは、上記(2)ウで述べたと おりである。 そうすると、第1審被告YKKが本件クリップ及び本件タグを本件リングにより本件コードに装着した状態で出 ップを装着して適切に使用するとは限らないことは、上記(2)ウで述べたと おりである。 そうすると、第1審被告YKKが本件クリップ及び本件タグを本件リングにより本件コードに装着した状態で出荷しなかったことについて、合理的な理由があったとはいえない。そして、上記のとおり、第1審被告YKKは、本件事故後、本件クリップ及び本件タグを本件コードに取り付けて 出荷するようになったことからすれば、本件事故までにそのような対応を することも可能であったものと認めるのが相当である。 (ウ) したがって、本件製品について、令和元年9月の引渡時点において、本件コードに本件クリップ及び本件タグが装着された状態で出荷されていなかったことは、本件クリップの使用による安全対策を実効的なものにするための対応として不十分であったといわざるを得ない。 ウ上記②(使用者向けの取扱説明書の同梱)について(ア) 上記(2)ウで述べたとおり、一般の使用者は本件コードの危険性及び本件クリップの使用の重要性を認識しているとは限らないし、適切な指示がなければ本件クリップを適切に使用できない可能性もあるから、使用者向けの取扱説明書において、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方 法等について指示・警告することが重要であったといえる。本件JIS規格も、ブラインドに付属するコードの安全性について、コードを子供の手の届かない高さに保持する手順並びにコードを子供の手の届かない高さに保持しないことによるリスクに関する注意表示及びその説明を取扱説明書に記載することを要求事項としている(認定事実(6)オ)。 (イ) そして、取扱説明書が使用者に対する指示・警告として機能するためには、使用者が当該取扱説明書の内容を確認できることが 明書に記載することを要求事項としている(認定事実(6)オ)。 (イ) そして、取扱説明書が使用者に対する指示・警告として機能するためには、使用者が当該取扱説明書の内容を確認できることが当然の前提となるところ、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等を記載した本件取扱説明書は本件製品に同梱されておらず、その結果、本件事故に至るまでの間、使用者である第1審原告夫妻に本件取扱説明書が交付される ことはなかった(認定事実(3)エ、(4)シ)。 この点に関し、第1審被告YKKは、本件取扱説明書の表紙に、販売店や建築会社から使用者に対して本件取扱説明書を渡すことを求める記載をするとともに、自社製品販売店を対象とする研修会において、本件取扱説明書を確実に使用者に渡すよう説明していたが、本件取扱説明書が大部 であることや1つの物件には20個程度の窓・ドア関連製品が設置される ので重複が生じることなどを理由に、本件製品には本件取扱説明書を同梱していなかった(認定事実(3)エ、乙22、64、弁論の全趣旨)。 しかしながら、上記イ(イ)で述べたように一般住宅の建築工事に関与する業者の規模や質は様々であって、本件取扱説明書の交付に関する上記指示が遵守されるとは限らないと考えられ、現に、第1審被告土屋ホーム及 びその下請業者はこれを遵守せず、本件取扱説明書を第1審原告夫妻に交付しなかったこと(認定事実(4)シ)からすれば、第1審被告YKKは、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等が使用者に確実に伝わるよう、本件取扱説明書又はその一部である本件製品に関する部分を本件製品に同梱すべきであったというべきである。なお、本件製品に付属する 本件タグには本件クリップの使用方法等が記載されていたが、本件JIS規 扱説明書又はその一部である本件製品に関する部分を本件製品に同梱すべきであったというべきである。なお、本件製品に付属する 本件タグには本件クリップの使用方法等が記載されていたが、本件JIS規格が取扱説明書及びタグの両者に禁止事項及び注意事項等を表示するとしていること(認定事実(6)オ)からすれば、本件タグのみを同梱することで十分であったとはいえない。 また、第1審被告YKKは自社ウェブサイトに本件取扱説明書を掲載し ていたものの(乙65)、そもそも一般の使用者がそのことを認識していたとは直ちに考え難いし、その点を措くとしても、故障等が生じた場合にインターネット上で本件取扱説明書を検索して閲覧することはあり得るとしても、そのような事態が生じていない段階で、一般の使用者が上記ウェブサイトに掲載された本件取扱説明書を閲覧することを期待するのは 現実的とはいえない。 さらに、本件取扱説明書が大部であることや重複が生じることについては、そもそも一般の使用者にとって、本件製品と関係のない記載がほとんどを占めている約300頁もの分量の本件取扱説明書を交付され、その中から本件製品に関する記載を確認すること自体が利便性に欠けるし、LI XILと同じように、本件製品のみに関する取扱説明書を作成すれば、2 ~3頁程度の分量にとどまると考えられるところ(認定事実(3)エ、(9)ウ)、本件施工説明書は本件製品に同梱されていることからすれば、上記分量の取扱説明書を追加して同梱することに支障があったとは考え難い。 (ウ) したがって、本件製品について、令和元年9月の引渡時点において、取扱説明書が同梱されずに出荷されていたことは、本件クリップの使用によ る安全対策を実効的なものにするための対応として不十分であったとい がって、本件製品について、令和元年9月の引渡時点において、取扱説明書が同梱されずに出荷されていたことは、本件クリップの使用によ る安全対策を実効的なものにするための対応として不十分であったといわざるを得ない。 (エ) これに対し、第1審被告YKKは、本件JIS規格は取扱説明書を製品と同梱することを求めておらず、製品事故判定委員会及びNITEも本件製品が本件JIS規格を満たしていることを認めている旨主張する。 確かに、本件JIS規格には取扱説明書の同梱が必要である旨明記されておらず、製品事故判定委員会及びNITEは本件製品が本件JIS規格の要求事項を満たしていると判断している(認定事実(5)ア、(6)オ、乙1)。 しかしながら、本件JIS規格は、取扱説明書に使用者が理解しやすいイラスト等を記載するよう求めており、当該取扱説明書が使用者に交付さ れることを当然の前提としているところ(認定事実(6)オ、甲126)、上記(イ)のとおり、実際には、本件取扱説明書は本件製品の使用者である第1審原告夫妻に交付されていなかった。また、第1審被告YKKは、製品事故判定委員会及びNITEに対し、本件取扱説明書が第1審原告夫妻に交付されていなかったこと又は少なくとも交付されていなかった可能性 があることについて何ら報告していない(甲133、乙34、35、39)。 そうすると、上記のような重要な情報を前提としていない製品事故判定委員会及びNITEの判断を重視することはできないし、本件製品の取扱説明書が使用者に交付されない又は少なくとも交付されない可能性がある状況で本件製品が出荷されていたにもかかわらず、本件製品が本件JI S規格の要求事項を満たしているといえるかについては疑義があるとい に交付されない又は少なくとも交付されない可能性がある状況で本件製品が出荷されていたにもかかわらず、本件製品が本件JI S規格の要求事項を満たしているといえるかについては疑義があるとい わざるを得ない。 したがって、本件JIS規格の存在は、取扱説明書が同梱されずに本件製品が出荷されていたことを正当化するものとはいえない。 エ上記③(本件タグ及び本件取扱説明書の警告表示)について(ア) 上記(2)ア及びウで述べたとおり、本件製品に付属する本件コードは子 供の生命・身体に対する高度の危険性を有している一方、一般の使用者は本件コードの危険性及び本件クリップの使用の重要性を認識しているとは限らないことからすれば、本件タグ及び本件取扱説明書における指示・警告は、上記のような一般の使用者に対して、本件コードの危険性及び本件クリップの使用の重要性を認識させるのに十分なものである必要があ ったといえる。そして、本件JIS規格は、要求事項を構成しない例示としてではあるものの、禁止事項及び注意事項等に「警告」との文言を使用しており、日本ブラインド工業会は平成17年から「警告」の文言を含む事故防止表示をし、本件製品の引渡時点において、LIXILは本件製品と同様の上げ下げロール網戸について、タグ及び取扱説明書に「警告」と の表示をしていた(認定事実(6)ウ、オ、(9)ウ)。 (イ) 一方で、第1審被告YKKは、本件タグ及び本件取扱説明書に「ご使用上の注意」又は「注意」という表示をしていたところ(認定事実(3)ウ、エ)、本件取扱説明書において、「注意」とは、取扱いを誤った場合に使用者が通院加療の必要な傷害を負うことが想定される危害の程度を意味し、 取扱いを誤った場合に使用者が死亡又は重傷を負うことが想定され 本件取扱説明書において、「注意」とは、取扱いを誤った場合に使用者が通院加療の必要な傷害を負うことが想定される危害の程度を意味し、 取扱いを誤った場合に使用者が死亡又は重傷を負うことが想定される危害の程度を意味する「警告」より一段階低い危険性を示すものであった(認定事実(3)エ)。そして、第1審被告YKKは、ブラインド等のコードによる子供の死亡事故が発生していることを認識していた(認定事実(8)ア)にもかかわらず、「警告」ではなく、「注意」としたことについて、何ら合 理的な説明をしていない。 また、本件事故後、第1審被告YKKが、本件タグ及び本件取扱説明書の「ご使用上の注意」又は「注意」という表示を「警告」という表示に変更したことからすれば、本件事故までにそのような対応をすることも可能であったものと認めるのが相当である。 (ウ) したがって、本件製品について、令和元年9月の引渡時点において、本 件タグ及び本件取扱説明書に「ご使用上の注意」又は「注意」という表示がされていたことは、本件クリップの使用による安全対策を実効的なものにするための対応として不十分であったといわざるを得ない。 オ上記イ~エを総合すると、本件製品には指示・警告上の欠陥があったというべきである。 なお、第1審被告YKKは、第1審原告夫妻において、本件クリップ及び本件タグの存在を認識しつつ、あえてこれを使用しない判断をしていたものであるから、本件事故は通常予見される使用形態で生じたものではない旨主張する。しかしながら、上記2で述べたところによれば、第1審原告夫妻が本件クリップ及び本件タグの存在を認識しつつ、本件クリップを使用しない 判断をしていたとは認められないから、第1審被告YKKの上 る。しかしながら、上記2で述べたところによれば、第1審原告夫妻が本件クリップ及び本件タグの存在を認識しつつ、本件クリップを使用しない 判断をしていたとは認められないから、第1審被告YKKの上記主張は前提を欠くものであって採用できない。 4 争点(2)(第1審被告土屋ホームの使用者責任又は不法行為責任の有無)について以下のとおり、第1審被告土屋ホームの従業員であるEらには、本件製品を設 置して第1審原告Aに引き渡す際、本件コードに本件クリップ及び本件タグを正しく装着しなかったという注意義務違反、及び同夫妻に対して本件取扱説明書を交付せず、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等について説明しなかったという注意義務違反があったものと認められるから、その余の点(本件製品の選定に関する注意義務違反の有無)について判断するまでもなく、第1審被 告土屋ホームは使用者責任を負う。 (1) Eらの注意義務について第1審被告土屋ホームは、本件リフォーム工事について締結した本件各契約に基づく信義則上の義務として、第1審原告Aに対し、同工事によって同A及びその家族の生命・身体等の安全に危険が生じないよう配慮すべき義務を負っていたというべきところ、当該義務は不法行為における注意義務をも構成する ものと解される。そして、Eらは、第1審被告土屋ホームの従業員(履行補助者)として本件リフォーム工事の計画作成及び施工等を担当したものであるから(認定事実(4)イ、ク)、Eらも同様に、同工事によって同A及びその家族の生命・身体等の安全に危険が生じないよう配慮すべき注意義務を負っていたものと解される。 そして、上記3(2)アで述べたとおり、本件製品に付属する本件コードは子供の生命・身体に対する高度の危険 身体等の安全に危険が生じないよう配慮すべき注意義務を負っていたものと解される。 そして、上記3(2)アで述べたとおり、本件製品に付属する本件コードは子供の生命・身体に対する高度の危険性を有していたところ、Eは、本件リフォーム工事後の本件建物2階において9歳の息子と6歳(幼稚園児)の娘が生活すること及び本件コードには子供の縊頸事故の危険性があることを認識しつつ、本件窓に本件製品を設置することを決めたものであり、Fについても、E の作成したリフォーム計画に基づき、本件製品の設置を含む本件リフォーム工事の施工を担当していたから、Eと同様の認識を有しており又は容易にこれを有し得たといえる(認定事実(4)イ、オ、ク、弁論の全趣旨)。そうすると、Eらは、本件リフォーム工事において本件製品を設置し、これを引き渡すに当たり、本件コードが有する上記危険性が現実化し、第1審原告家族、特に子供で ある同C及びDの生命・身体に危険が生じないよう配慮すべき注意義務を負っていたものと解される。 (2) 本件クリップ及び本件タグの装着に関する注意義務についてア上記3(2)ウ及び(3)イで述べたとおり、本件クリップの使用による安全対策を実効的なものにして、本件製品に付属する本件コードの上記危険性を現 実化させないためには、本件製品が設置された時点で本件クリップ及び本件 タグが本件コードに装着されていることが重要であったといえる。そして、本件施工説明書は、施工業者に対し、本件リングを本件コードに通す方法で本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着するよう指示していた(認定事実(3)ウ)。そうすると、Eらは、第1審原告家族の生命・身体に危険が生じないよう配慮すべき注意義務の内容として、本件施工説明書に指示された 方 グを本件コードに装着するよう指示していた(認定事実(3)ウ)。そうすると、Eらは、第1審原告家族の生命・身体に危険が生じないよう配慮すべき注意義務の内容として、本件施工説明書に指示された 方法で本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着すべき注意義務を負っていたというべきである。 イそこで、Eらが上記注意義務を履行したといえるかについて見るに、第1審被告土屋ホームの下請業者(履行補助者)は、本件施工説明書の指示に従った施工を行わず、本件クリップと本件タグを本件リングでつないだものが 入った透明なビニール製小袋を一部破り、破れ目から出した本件クリップの先端部で、ループを形成している本件コードを挟んだだけで、本件リングを本件コードに通さなかったため、上記小袋は本件リングで本件コードとつながっておらず、容易に本件コードから分離する状態となっていた(認定事実(4)コ)。 そして、Eは上記状態の本件製品を写真撮影していたから(認定事実(4)コ)、Eらは、本件リングを本件コードに通す方法で本件クリップ及び本件タグが本件コードに装着されていないことを認識しており又は容易にこれを認識し得たものと認められる。また、Eらにおいて、自ら又は下請業者に指示して、本件施工説明書に指示された方法で本件クリップ及び本件タグを 本件コードに装着することも容易であったと考えられる。それにもかかわらず、Eらは、本件施工説明書に指示された方法で本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着することなく、本件リフォーム工事完成後の引渡しをしたものである(Eらが引渡しまでに上記方法で本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着したことをうかがわせる証拠はない。)。 したがって、Eらは、本件施工説明書に指示された方法で本件クリップ及 (Eらが引渡しまでに上記方法で本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着したことをうかがわせる証拠はない。)。 したがって、Eらは、本件施工説明書に指示された方法で本件クリップ及 び本件タグを本件コードに装着すべき注意義務を怠ったというべきである。 なお、上記3(2)ウで述べたとおり、一般の使用者であっても、適切な指示があれば、本件クリップを適切に使用して本件コードをまとめることができたものと認められるから、仮に上記方法で本件クリップ及び本件タグが本件コードに装着されていなかったとしても、これを装着する必要性及び本件ク リップの使用方法等に関する適切な説明が使用者に対してされた場合には、注意義務違反を構成しないという余地はあるが、下記(3)で述べるとおり、第1審原告夫妻に対してそのような説明がされたとは認められない。 (3) 本件クリップの使用方法等の説明に関する注意義務についてア上記3(3)ウで述べたとおり、本件クリップの使用による安全対策を実効 的なものにして、本件製品に付属する本件コードの上記危険性を現実化させないためには、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等を記載した本件取扱説明書が使用者に交付されることが重要であったといえる。そして、本件取扱説明書及び本件施工説明書には、施工業者等から本件製品の使用者に対して本件取扱説明書を交付するよう求める記載があった(認定事実 (3)ウ、エ)。 また、上記3(2)ア、ウで述べたとおり、本件製品に付属する本件コードは、子供の生命・身体に対する高度の危険性を有するものであった反面、一般の使用者はその危険性及び本件クリップの使用の重要性に関する認識を十分に有していなかった。第1審原告夫妻についても、上記2で述べたとお り 体に対する高度の危険性を有するものであった反面、一般の使用者はその危険性及び本件クリップの使用の重要性に関する認識を十分に有していなかった。第1審原告夫妻についても、上記2で述べたとお り、本件製品及び同種製品の存在を知らず、Eから本件製品を設置することやその危険性について説明を受けていなかったことからすれば、本件コードの危険性及び本件クリップの使用の重要性を認識していなかったものと認められる。他方で、上記(1)で述べたとおり、Eらは、本件製品の選定及び設置を行っただけでなく、本件コードによる子供の縊頸事故の危険性及び第1 審原告夫妻に幼稚園児の娘がいることを認識し又は容易にこれを認識し得 た。 そうすると、Eらは、第1審原告家族の生命・身体に危険が生じないよう配慮すべき注意義務の内容として、同夫妻に対して本件取扱説明書を交付するとともに、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等について説明すべき注意義務を負っていたというべきである。 イそこで、Eらが上記注意義務を履行したといえるかについて見るに、Eらは、第1審原告夫妻に対して、本件取扱説明書を交付せず、本件コードの危険性及び本件クリップの使用方法等についても説明しなかったものと認められるし(認定事実(4)サ、シ、甲79、80、第1審原告A・同B各本人)、Eらが本件取扱説明書を交付したり、上記の説明をしたりすることに支障が あったとは考え難い。 したがって、Eらは、第1審原告夫妻に対して本件取扱説明書を交付し、本件コードの危険性や本件クリップの使用方法等について説明すべき注意義務を怠ったというべきである。 5 争点(3)(過失相殺の可否)について 以下のとおり、本件事故の発生について過失相殺をすべき事情が存在すると リップの使用方法等について説明すべき注意義務を怠ったというべきである。 5 争点(3)(過失相殺の可否)について 以下のとおり、本件事故の発生について過失相殺をすべき事情が存在するとはいえない。 (1) Dの過失についてDは本件事故当時6歳(幼稚園年長)であり、因果関係を理解できる年齢には達していなかっただけでなく、大人であっても、必ずしもブラインド等のコ ードの危険性に対する認識を有しているとはいえないこと(認定事実(1)ア、(6)ア、イ)からすると、本件コードに縊頸の危険性があることを認識できたとはいえず、事理弁識能力を有していたとは認められない。 したがって、Dの行動を理由として過失相殺をすることはできない。 (2) 第1審原告夫妻の過失について 第1審被告らは、第1審原告夫妻には、①本件事故と同種の危険並びに本件 クリップ及び本件タグを認識していたにもかかわらず、本件クリップを用いなかったこと、②不安定な座面を備えた本件椅子を本件窓の付近に配置したこと、③Dが本件コードに触れるなどの危険な行動をしないようにするための監督行為をしなかったこと、④外出に際して、同Bの両親に対して危険を回避するための留意事項を伝えたり、本件椅子をDの手の届かないところに移動したり するなどの危険回避の措置を講じなかったことなどの過失があった旨主張する。 しかしながら、①(本件クリップを用いなかったこと)については、上記2で述べたとおり、本件事故当時、第1審原告夫妻が本件クリップ及び本件タグを認識していたとは認められない。 次に、②(本件椅子の配置)については、一般住宅のリビングに本件テーブル及び本件椅子のようなダイニングセットを配置するのはごく一般的であるところ、本件建物2階の広さや家 とは認められない。 次に、②(本件椅子の配置)については、一般住宅のリビングに本件テーブル及び本件椅子のようなダイニングセットを配置するのはごく一般的であるところ、本件建物2階の広さや家具等の配置状況からすると(甲78)、ダイニングセットの配置場所が特殊であったとも、本件椅子が殊更に本件窓の近くに配置されていたともいえないし、本件椅子の大きさや形状(甲78、128) からすると、そもそも6歳のDが本件椅子を押して移動させることもできたと考えられることからすると、第1審原告夫妻による本件椅子の配置をもって過失相殺の対象とすべきとはいえない。 また、③(Dに対する監督行為)については、本件事故以前に、Dが本件コードに触れようとするなどの危険な行動をしていたといった事情はうかがえ ないから、第1審被告らが主張する監督行為をすべき状況が存在したとはいえない。 さらに、④(危険回避の措置等)については、上記③で述べたところと同様、本件事故前にDが危険な行動をしていたといった事情はうかがえないから、外出中にDが危険な行動をしないよう第1審原告Bの両親に伝えるなどの措置 をすべき状況が存在したとはいえない。 したがって、第1審被告らの上記主張は採用できず、そのほか本件事故の発生について過失相殺をすべき事情が第1審原告夫妻に存在したとは認められない。 (3) 第1審原告Bの両親の過失について第1審被告らは、第1審原告Bの両親には、Dが危険な行動をとらないよう にするための監督行為をせず、本件椅子をDの手の届かないところに移動するなどの危険回避の措置も講じることなく、Dを1人で放置してその安全状況の確認をしなかったなどの過失があった旨主張する。 しかしながら、上記(2)で述べたところと同様、本件事 かないところに移動するなどの危険回避の措置も講じることなく、Dを1人で放置してその安全状況の確認をしなかったなどの過失があった旨主張する。 しかしながら、上記(2)で述べたところと同様、本件事故前にDが危険な行動をしていたといった事情はうかがえないし、第1審原告Bの両親が、自らは 本件建物1階に在宅しつつ、6歳のDに本件建物2階において1人で過ごすことを許すことによって、Dに危険が生じることが想定されるような状況であったとも認められないから、第1審被告らの上記主張は採用できず、そのほか本件事故の発生について過失相殺すべき事情が第1審原告Bの両親に存在したとは認められない。 6 争点(4)(因果関係及び損害)について(1) 因果関係についてア証拠(甲79、80、第1審原告A・同B各本人)及び弁論の全趣旨によれば、上記3及び4で述べた本件製品の欠陥及びEらの注意義務違反がなければ、第1審原告夫妻において、同C及びDの生命・身体に対する危険を避 けるため、本件クリップにより本件コードを確実にまとめるなどすることによって、本件事故は発生しなかった高度の蓋然性があったものと認めるのが相当である。また、本件事故は、本件製品の欠陥及びEらの注意義務違反が重畳的に競合して発生したものというべきである。 したがって、上記欠陥及び注意義務違反とDの死亡との間には相当因果関 係が認められる。 イこれに対し、第1審被告らは、第1審原告夫妻において本件事故と同種の危険並びに本件クリップ及び本件タグを認識するなどしていたから、更なる指示・警告によってその行動が変わったとはいえない旨主張する。 しかしながら、上記2で述べたとおり、第1審原告夫妻が本件クリップ及び本件タグを認識していたとは認められないか などしていたから、更なる指示・警告によってその行動が変わったとはいえない旨主張する。 しかしながら、上記2で述べたとおり、第1審原告夫妻が本件クリップ及び本件タグを認識していたとは認められないから、第1審被告らの上記主張 は前提が欠けるものであって採用できない。 ウまた、第1審被告らは、本件窓付近に本件椅子が配置され、Dが本件椅子を動かして不安定な座面の上に立つという危険な行動をしたことは、いずれも社会通念に照らして予見不可能な特別事情であった旨主張する。 しかしながら、上記3(2)アで述べたところによれば、第1審被告らが主 張する事実が存在したとしても、本件製品の欠陥及びEらの注意義務違反と本件事故との間の因果関係は否定されないものというべきであるから、第1審被告らの上記主張は採用できない。 (2) 損害額について本件事故によってD及び第1審原告らに生じた損害及びその理由は、別紙8 「損害額計算表」の「当審認容額」欄及び「理由」欄記載のとおりであり、Dから相続した分を含む第1審原告らの損害は、第1審原告Aについて2874万2422円、同Bについて2853万0072円、同Cについて110万円と認められる。 したがって、第1審被告らは、第1審原告らに対し、上記各損害賠償金及び これらに対する令和元年11月18日(本件事故日)から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払義務を負うというべきである。なお、第1審被告らの損害賠償債務はいわゆる不真正連帯債務であると解される。 7 争点(5)(本件クーリングオフの有効性)について 以下のとおり、本件クーリングオフは有効であるから、第1審原告Aは、第1 審被告土屋ホームに対し、本件各契約に基づく代金支払義務 点(5)(本件クーリングオフの有効性)について 以下のとおり、本件クーリングオフは有効であるから、第1審原告Aは、第1 審被告土屋ホームに対し、本件各契約に基づく代金支払義務を負わない一方で、特商法9条6項に基づき本件申込金10万円の返還及びこれに対する令和2年5月1日(本件クーリングオフから相当期間経過後の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。これにより、争点(6)(本件各契約に基づく代金額及び支払期日の到来の有無)については判 断を要さないことになる。 なお、本件建築申込書の記載内容等(認定事実(4)ウ)に照らすと、本件申込金は本件契約1に基づく代金の一部として第1審被告土屋ホームに対して支払われたものと認めるのが相当であるから、第1審原告Aは、本件契約1についての本件クーリングオフにより、その返還を求めることができる。 (1) 法定書面の交付についてア第1審被告土屋ホームは、本件各契約締結の際、第1審原告Bを通じて同Aに対して本件各契約書等を交付しているところ(丙1~5、弁論の全趣旨)、本件契約書1~3にはクーリングオフに関する記載が存在するものの、本件注文書4及び5にはクーリングオフに関する記載が存在しない(丙1~5)。 また、本件契約書1~3のクーリングオフに関する記載についても、赤字で記載されていない(特商法施行規則6条6項違反)だけでなく、クーリングオフによる解除があった場合には、既に当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、役務提供事業者は、役務の提供を受ける者に対し、当該役務提供契約に係る役務対価その他の金銭の支払を受けることができ ないことの記載(同規則6条1項の表の上欄3号の下欄ホ)や、 たときにおいても、役務提供事業者は、役務の提供を受ける者に対し、当該役務提供契約に係る役務対価その他の金銭の支払を受けることができ ないことの記載(同規則6条1項の表の上欄3号の下欄ホ)や、当該役務提供契約に係る役務の提供に伴い役務の提供を受ける者の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、役務の提供を受ける者は、当該役務提供事業者に対してその原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができることの記載(同規則6条1項の表の上欄3号の下欄ト)が 欠落している(同項違反)から、不備がある。そうすると、その余の法定記 載事項について検討するまでもなく、本件契約書等は法定書面に該当しないというべきである。 したがって、第1審被告土屋ホームは本件各契約について法定書面を交付していないから、クーリングオフ行使期間(特商法9条1項ただし書)は進行せず、第1審原告Aによる本件クーリングオフは行使期間を徒過した無効 なものとはいえない。 イこれに対し、第1審被告土屋ホームは、本件契約書1及び2には法定記載事項どおりの記載がされていない部分があったが、クーリングオフが可能であること及びその効果という重要な事項が記載されていたから、法定書面を交付したといえる旨主張する。 しかしながら、特商法は、訪問販売を行う役務提供事業者等に対して契約内容を明確にさせることによって紛争を防止するとともに、役務の提供を受ける者等に対して契約について再考してクーリングオフをする機会を与えることを目的として、法定書面の交付義務を定めたものであり、法定書面における法定記載事項の中でも、クーリングオフに関する事項は特に重要なも のと解され、特商法施行規則においても記載事項が具体的かつ詳細に規定されている。 交付義務を定めたものであり、法定書面における法定記載事項の中でも、クーリングオフに関する事項は特に重要なも のと解され、特商法施行規則においても記載事項が具体的かつ詳細に規定されている。 このような観点からすると、重要な事項の記載があれば法定書面といえると解したとしても、上記アで述べたとおり、本件契約書1及び2には、特商法施行規則に明示的に定められたクーリングオフに関する事項に複数の不 備があるから、重要な事項の記載がされていたとは認められない。 したがって、第1審被告土屋ホームの上記主張は採用できない。 (2) 請求訪問販売該当性についてア特商法26条6項1号該当性(ア) 第1審被告土屋ホームは、Eにおいて、第1審原告Bを通じて同A から、令和元年6月21日の打合せの際、本件契約1及び2の締結のた め同月29日に本件建物を訪問するよう求められ、同年8月22日の打合せの際、本件契約3及び4の締結のため同月24日に本件建物を訪問するよう求められ、同年10月5日の打合せの際、本件契約5の締結のため同月19日に本件建物を訪問するよう求められた旨主張する。 しかしながら、本件契約3~5の締結に関する訪問の請求については、 Eの証言及び陳述書(丙14、証人E)においてすら言及されておらず、同請求があったことを示す証拠は存在しない。 また、本件契約1及び2の締結に関する訪問の請求については、Eの証言及び陳述書(丙14、証人E)において言及があるものの、その内容が具体性を欠くだけでなく、これを裏付ける証拠も存在しないから、 上記訪問の請求をしたことを否定する旨の第1審原告Bの供述及び陳述書(甲80、第1審原告B本人)も考慮すると、Eの上記証言等を直ちに信用することは困難 、これを裏付ける証拠も存在しないから、 上記訪問の請求をしたことを否定する旨の第1審原告Bの供述及び陳述書(甲80、第1審原告B本人)も考慮すると、Eの上記証言等を直ちに信用することは困難である。加えて、上記請求があったとする令和元年6月21日の時点では、外構工事を含む本件リフォーム工事の総額が第1審原告Bの希望する1800万円程度に収まるか否かが明らか でなかっただけでなく、銀行に対する住宅ローンの正式申込みもできていなかったところ(認定事実(4)イ)、そのような状況で、第1審原告Bが、同日、外構工事を除く部分についてのみ先行して契約を締結することを積極的に希望し、契約の締結のために本件建物を訪問するようEに請求したとは考え難いし、そのような請求をする合理的理由があったこ とをうかがわせる証拠もない。さらに、第1審原告Bは、同月29日に本件建物に赴いた際に印鑑を持参しておらず、自宅に印鑑を取りに戻った上で本件契約書1及び2に署名押印したこと(認定事実(4)エ)からすれば、同日の時点で、同Bが本件契約1及び2を締結する意思をあらかじめ有していたとは認め難い。 したがって、第1審被告土屋ホームの上記主張は採用できず、その他 の要件について判断するまでもなく、本件各契約が請求訪問販売(特商法26条6項1号)に該当するとはいえないから、クーリングオフに関する規定(同法9条1項)の適用は除外されない。 (イ) これに対し、第1審被告土屋ホームは、第1審原告夫妻に対して不意打ち的な勧誘をしておらず、同夫妻は複数回の打合せを実施して資料 も受領し、本件リフォーム工事の内容を理解した上で、第1審被告土屋ホームとの間で契約を締結することを決めて、ホームプロに対して成約の連絡をしていたし、子供がいる第1審 回の打合せを実施して資料 も受領し、本件リフォーム工事の内容を理解した上で、第1審被告土屋ホームとの間で契約を締結することを決めて、ホームプロに対して成約の連絡をしていたし、子供がいる第1審原告夫妻には本件建物で契約を締結したいと考える理由があった旨主張する。 しかしながら、第1審被告土屋ホームが主張する上記各事情は、第1 審原告夫妻において、Eに対して、本件リフォーム工事に関する契約を締結するために本件建物を訪問するよう請求したとしてもおかしくない事情であるとはいえても、それを超えて、上記請求があったものと直ちに推認させるとはいえない。むしろ、上記(ア)で述べたとおり、第1審原告夫妻が上記請求をしたとは考え難い事情が存在することからすれ ば、上記推認をすることは困難といわざるを得ない。 したがって、第1審被告土屋ホームの上記主張は採用できない。 イ特商法26条6項1号の類推適用第1審被告土屋ホームは、本件各契約の締結に至る経緯等からすれば、特商法26条6項1号が類推適用されるべきである旨主張する。 しかしながら、特商法26条6項1号は、訪問販売における書面交付義務(同法4条、5条)やクーリングオフ(同法9条)等という、特定商取引の公正化及び消費者保護という目的(同法1条)のために特商法が設けた重要な規制及び権利に対する例外を認める規定であるから、仮にその類推適用の可能性を認めるとしても、明文の根拠に基づかずに例外を拡大す ることによって消費者に不測の損害を与えることのないよう慎重に検討 する必要があるものと解される。 これを前提に検討するに、特商法が請求訪問販売の場合にクーリングオフに関する規定を適用しないこととしたのは、請求訪問販売においては、役務の提供を受ける者等の側に する必要があるものと解される。 これを前提に検討するに、特商法が請求訪問販売の場合にクーリングオフに関する規定を適用しないこととしたのは、請求訪問販売においては、役務の提供を受ける者等の側に訪問販売の方法によって役務の提供等を受ける意思があらかじめあったり、役務の提供を受ける者等と役務提供事 業者等との間に取引関係があったりすることが通例であることから、いわゆる押し付け販売的要素がなく、クーリングオフに関する規定を適用することでかえって日常生活において支障なく行われている取引に無用の混乱を生じさせるおそれがあったことが理由であると解される。 そして、本件各契約について見ると、令和元年6月29日に本件契約1 及び2を締結した際、第1審原告Bは、いずれは第1審被告土屋ホームとの間で契約を締結するものと考えていたとはいえ、外構工事を含む本件リフォーム工事の総額や住宅ローンの可否も明らかでない状況で、一旦持ち帰って第1審原告Aと相談することを希望したが、Eから重ねて署名押印を求められたため、本件契約書1及び2に署名押印したものであり(認定 事実(4)イ~エ)、Eによる働き掛けがある前に、同Bに明確な契約締結意思があったとは認められないし、押し付け販売的要素がなかったともいえない。また、第1審原告夫妻と第1審被告土屋ホームとの間に、本件各契約以前に取引関係があったという事情も存在しない。そうすると、本件各契約について特商法26条6項1号の類推適用を認めるべき事情がある とはいえない。 したがって、第1審被告土屋ホームの上記主張は採用できない。 (3) 権利濫用該当性について第1審被告土屋ホームは、第1審原告Aにおいて、十分に検討した上で自ら希望して本件各契約を締結し、同契約が不当なものとは考えていなかった 記主張は採用できない。 (3) 権利濫用該当性について第1審被告土屋ホームは、第1審原告Aにおいて、十分に検討した上で自ら希望して本件各契約を締結し、同契約が不当なものとは考えていなかったにも かかわらず、本件事故の発生を理由に本件クーリングオフをしており、消費者 保護という特商法の趣旨にそぐわないし、代金回収に関する第1審被告土屋ホームの期待を裏切りながら、約2000万円の費用を要する本件リフォーム工事が実施された本件建物で居住する利益を得ることは、著しく社会正義と公正に反する旨主張する。 しかしながら、特商法は、訪問販売により契約を締結した消費者を保護する ため、契約締結及びその解除の動機並びに契約内容の相当性等を問わず、無理由・無条件での契約解除を可能とするクーリングオフ制度を設けたものであるから、第1審被告土屋ホームの上記主張のうち、第1審原告Aが十分に検討した上で本件各契約を締結したことや同契約を不当なものと考えていなかったにもかかわらず本件クーリングオフをしたことなどは、特商法がクーリングオ フ制度を設けた趣旨に照らすと、いずれも権利濫用という評価を基礎付けるものとはいえない。 また、本件クーリングオフにより、第1審被告土屋ホームは本件リフォーム工事の対価を請求することができず、第1審原告Aは不当利得返還義務を負わないことになるが(特商法9条5項)、これは特商法が消費者保護のためにそ のような特則を定めたことによる効果そのものであるから、このことも権利濫用という評価を基礎付けるものとはいえない。特商法は、上記効果をもたらす特則を定めることによって、役務提供事業者による法定書面の交付義務をより実効的なものとしているものであって、第1審被告土屋ホームが法定書面を交付しなかった以上 いえない。特商法は、上記効果をもたらす特則を定めることによって、役務提供事業者による法定書面の交付義務をより実効的なものとしているものであって、第1審被告土屋ホームが法定書面を交付しなかった以上、上記効果が生じてもやむを得ないものである。第1審原告 Aの側を見ても、本件リフォーム工事による利益を享受しているというより、むしろ同B及び同Cのためには本件事故が発生した本件建物から転居して環境を変えたいと望んでいるにもかかわらず、第1審被告土屋ホームによる反訴が決着していないため転居できていないのであって(甲99、弁論の全趣旨)、その心情も十分理解できるところであり、第1審原告Aが不当な利益を得てい るとは評価できない。 そのほか、第1審原告Aにおいて、本件各契約について法定書面の交付がされておらず、いつでもクーリングオフが可能であることを知りつつ、あえて本件リフォーム工事を完成させた上で本件クーリングオフをするなど、クーリングオフ制度を悪用したというべき事情は認められない。 したがって、第1審被告土屋ホームの上記主張は採用できず、第1審原告A による本件クーリングオフが権利濫用に該当するとはいえない。 8 結論以上によれば、本訴については、第1審原告らの損害賠償請求は、第1審被告らに対し、第1審原告Aについて2874万2422円、同Bについて2853万0072円及び同Cについて110万円の各損害賠償金並びに遅延損害金の 連帯支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきところ、これと異なり同請求を全部棄却した原判決は失当であり、また、第1審原告Aの本件申込金返還請求は全部理由があるから、同請求を認容した原判決は相当である。反訴については、第1審被告土屋ホームの本件各契約に れと異なり同請求を全部棄却した原判決は失当であり、また、第1審原告Aの本件申込金返還請求は全部理由があるから、同請求を認容した原判決は相当である。反訴については、第1審被告土屋ホームの本件各契約に基づく代金請求は理由がないから、同請求を棄却した原判決は相当である。 よって、第1審原告らの本件各控訴に基づき原判決主文2項を上記のとおり変更するとともに、第1審被告土屋ホームの本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第13民事部 裁判長裁判官黒野功久 裁判官馬場俊宏 裁判官田 辺 麻里子 (別紙1、3~6、8は省略) 別紙2略語一覧表略語意味第1審原告A控訴人兼被控訴人A第1審原告B控訴人B第1審原告C控訴人C第1審原告ら第1審原告A、同B及び同C第1審原告夫妻第1審原告A及び同BD第1審原告夫妻の子で、同Cの妹であるD第1審原告家族第1審原告A、同B、同C及びD第1審被告土屋ホーム被控訴人兼控訴人株式会社土屋ホームトピア第1審被告YKK被控訴人YKKAP株式会社第1審被告ら第1審被告土屋ホーム及び同YKKE第1審被告土屋ホームの従業員であるEF第1審被告土屋ホームの 社土屋ホームトピア第1審被告YKK被控訴人YKKAP株式会社第1審被告ら第1審被告土屋ホーム及び同YKKE第1審被告土屋ホームの従業員であるEF第1審被告土屋ホームの従業員であるFEらE及びF本件事故令和元年11月18日、本件窓に設置された本件製品の本件コードが首に絡まってDが縊死した事故本件製品第1審被告YKKが製造した上げ下げロール網戸(商品名「上げ下げロール網戸XMW」。別紙3の写真)本件コード網戸を昇降させるために本件製品に付属していた操作コード(別紙4の写真)本件クリップ本件コードをまとめるために本件製品に付属していたプラスチック製のクリップ(別紙5の写真)本件タグ本件クリップに付属していたタグ(別紙5の写真) 本件リング本件タグと本件クリップをつないでいたプラスチック製の開閉式リング(別紙5の写真)本件取扱説明書本件製品を含む窓・ドア関連製品について第1審被告YKKが作成した使用者向け取扱説明書(甲86)本件施工説明書本件製品について第1審被告YKKが作成した施工業者向け組立・施工説明書(甲15、乙6)本件建物第1審原告らの肩書住所地に所在する木造2階建て建物本件リフォーム工事第1審原告Aが第1審被告土屋ホームに発注した本件建物のリフォーム工事本件窓本件リフォーム工事後の本件建物2階のリビング南側に設置されていた腰高窓(別紙6の図面)本件テーブル本件リフォーム工事後の本件建物2階のリビングに配置されていたダイニングテーブル(甲14の1)本件椅子本件テーブルにセットされていた座面回転式のダイニングチェア(甲128の1~4)LIXIL窓及びサッシを含む建築材料の製造・販売等を行ってい いたダイニングテーブル(甲14の1)本件椅子本件テーブルにセットされていた座面回転式のダイニングチェア(甲128の1~4)LIXIL窓及びサッシを含む建築材料の製造・販売等を行っている株式会社LIXIL立川ブラインドブラインドの製造・販売等を行っている立川ブラインド工業株式会社セイキ網戸の製造・販売等を行っているセイキ販売株式会社製品事故判定委員会経済産業省消費経済審議会製品安全部会の製品事故判定第三者委員会NITE独立行政法人製品評価技術基盤機構東京都報告書平成26年2月に東京都商品等安全対策協議会が作成・公表した「ブラインド等のひもの安全対策」と題する報告書 (甲10)JIS規格産業標準化法に基づく日本産業規格(令和元年7月の法改正以前の名称は日本工業規格)本件JIS規格家庭用室内ブラインドに付属するコードに関する子供の安全性について平成29年12月20日に制定されたJIS規格である「JISA 4811」(乙1)本件実施基準ブラインド等のコードの安全対策について日本ブラインド工業会が平成26年7月に制定した「日本ブラインド工業会の実施基準」(甲32)米国安全基準米国規格協会が2018年(平成30年)1月に承認した「窓カバー製品の安全のための基準」(甲130、乙54の1・2)本件建築申込み第1審原告Bが令和元年6月10日に第1審被告土屋ホームに対して行い、第1審原告Aが追認した本件リフォーム工事に係る建築申込み本件建築申込書本件建築申込みに係る建築申込書(甲20)本件申込金第1審原告Aが令和元年6月19日に本件建築申込みに基づいて第1審被告土屋ホームに対して支払った10万円の申込金本件契約1第1審原告Bが令和 申込みに係る建築申込書(甲20)本件申込金第1審原告Aが令和元年6月19日に本件建築申込みに基づいて第1審被告土屋ホームに対して支払った10万円の申込金本件契約1第1審原告Bが令和元年6月29日に本件建物において第1審被告土屋ホームとの間で締結し、第1審原告Aが追認した本件建物の内外部改修工事に係る代金額1418万3704円(消費税込み)の請負契約本件契約書1本件契約1に係る契約書(丙1の1)本件契約2第1審原告Bが令和元年6月29日に本件建物において 第1審被告土屋ホームとの間で締結し、第1審原告Aが追認した本件建物の塗装工事に係る代金額129万8000円(消費税込み)の請負契約本件契約書2本件契約2に係る契約書(丙2)本件契約3第1審原告Bが令和元年8月24日に本件建物において第1審被告土屋ホームとの間で締結し、第1審原告Aが追認した本件建物のエクステリア工事に係る代金額362万4500円(消費税込み)の請負契約本件契約書3本件契約3に係る契約書(丙3の1)本件契約4第1審原告Bが令和元年8月24日に本件建物において第1審被告土屋ホームとの間で締結し、第1審原告Aが追認した本件建物のカップボード(食器棚)工事に係る代金額24万6510円(消費税込み)の請負契約本件注文書4本件契約4に係る工事注文書(丙4)本件契約5第1審原告Aが令和元年10月19日に本件建物において第1審被告土屋ホームとの間で締結した本件建物の照明器具に係る代金額22万2200円(消費税込み)の請負契約又は売買契約本件注文書5本件契約5に係る工事注文書(丙5)本件各契約本件契約1~5(代金合計1957万4914円〔消費税込み〕)本件各契約書等本件契約書1~ 込み)の請負契約又は売買契約本件注文書5本件契約5に係る工事注文書(丙5)本件各契約本件契約1~5(代金合計1957万4914円〔消費税込み〕)本件各契約書等本件契約書1~3及び本件注文書4、5本件クーリングオフ第1審原告Aが令和2年4月15日に発出した内容証明郵便により第1審被告土屋ホームに対してした本件建築申込みに係る契約及び本件各契約を特商法9条1項に基 づき解除(クーリングオフ)する旨の意思表示(甲21の1・2)法定書面特商法5条1項所定の書面請求訪問販売特商法26条6項1号所定の訪問販売(その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売)特商法令和3年法律第72号による改正前の特定商取引に関する法律特商法施行規則令和4年内閣府・経済産業省令第1号による改正前の特定商取引に関する法律施行規則改正前民法平成29年法律第44号による改正前の民法 別紙7当事者の主張 1 争点(1)(第1審被告YKKの製造物責任の有無)について【第1審原告らの主張】以下のとおり、本件製品には設計上の欠陥又は少なくとも指示・警告上の欠陥が あったから、第1審被告YKKは本件事故について製造物責任を負う。 (1) 設計上の欠陥(主位的主張)ループを形成する本件コードが付属する本件製品は、その通常予見される使用形態によれば、子供の縊頸事故が生じる高度の危険性を有していたが、使用者(本件製品による事故の被害者)は安全な製品であると期待しており、この期待は正 当なものであった。 そして、本件製品には、上記危険性を排除できる代替設計(一本ひも仕様のル 有していたが、使用者(本件製品による事故の被害者)は安全な製品であると期待しており、この期待は正 当なものであった。 そして、本件製品には、上記危険性を排除できる代替設計(一本ひも仕様のループレスとすること、ループが小さくなるようコードの長さを短くすること、一定の荷重でコードが分離する解除装置を装着すること、スプリング式ロールアップ網戸等とすること)が複数存在し、これらを採用することによって上記危険を 容易に取り除くことができた。本件製品が出荷された時点で実施されていた米国安全基準においても、ストック品(既製品)について、コードレス等の本質的安全設計を不可欠のものとして要求していた。 そうすると、本件製品は、子供の縊頸事故が生じる高度の危険性を有するにもかかわらず、ループを形成する本件コードが付属する設計となっており、上記危 険性を排除できる代替設計を採用していなかったから、通常有すべき安全性を欠いていた。 また、本件製品は網戸が不要な時期に網戸を収納できる機能を有することに特徴があるが、ループを形成するコードを有しない製品(スプリング式ロールアップ網戸等)も同様の機能を有しており、本件製品独自の効用は存在しない又はご くわずかであった。このような効用を維持するために上記危険性を残存させる必 要はなく、仮に代替設計が技術的に不可能であったとすれば、そもそも製造・販売が中止されてもやむを得なかった。 したがって、本件製品には設計上の欠陥があった。 (2) 指示・警告上の欠陥(予備的主張)仮に、本件製品について、本件クリップという安全器具を使用すれば通常有す べき安全性を欠いていなかったといえるとしても、本件クリップに頼る安全対策は極めて脆弱であり、国際的にも同様の対策は見当たらないから、指 について、本件クリップという安全器具を使用すれば通常有す べき安全性を欠いていなかったといえるとしても、本件クリップに頼る安全対策は極めて脆弱であり、国際的にも同様の対策は見当たらないから、指示・警告を徹底する必要があった。 しかしながら、本件施工説明書は、施工業者に対し、本件コードをまとめて本件クリップで挟んだ状態とするよう求めていなかったから、施工時点では子供が 縊頸し得るループが形成されることになるし、本件クリップの装着不備に対する警告や注意等の表示も存在しなかった。 また、本件製品の出荷時に本件リングによって本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着することは、①本件製品設置時に本件クリップ及び本件タグが装着された状態にあることを確保し、安全器具としての本件クリップの存在の周知 を図る、②設置後に本件クリップが安易に除去され、散逸するのを防止する、③出荷時に本件コードをまとめて本件クリップで挟んだ状態になっていれば、設置時点でコードがループを形成していない状態を確保できるという重要な意義を有するが、本件製品についてはそのような措置が実施されていなかった。 さらに、本件タグ及び本件取扱説明書には、他社が同種製品に付していた指示・ 警告に比べて、死亡事故の可能性に対する注意喚起力が明らかに劣る指示・警告しか記載されていなかったし、本件製品には、指示・警告を記載した使用者向け取扱説明書が同梱されていなかった。JIS規格等の安全規制に適合すれば製品に欠陥がないといえるわけではないが、本件タグの表示不備及び使用者向け取扱説明書の不存在は、本件JIS規格及び本件実施基準に適合しないものであった。 加えて、米国安全基準は、カスタム品(オーダーメイド品)について本質的安 全設計を不可欠としない代わり 説明書の不存在は、本件JIS規格及び本件実施基準に適合しないものであった。 加えて、米国安全基準は、カスタム品(オーダーメイド品)について本質的安 全設計を不可欠としない代わりに、具体的で明確な内容の指示・警告を恒久的かつ視覚的に目立つ態様で行うことを要求するなどしており、この水準に照らすと、本件製品の指示・警告は不十分であった。 したがって、本件製品には指示・警告上の欠陥があった。 【第1審被告YKKの主張】 以下のとおり、本件製品は通常有すべき安全性を欠いておらず、設計上の欠陥も指示・警告上の欠陥もなかった。 (1) 設計上の欠陥について本件製品の安全対策は、本件JIS規格を満たしていたこと(製品事故判定委員会及びNITEはそのことを認めている。)に加え、他社の状況、諸外国の規制 及び日本の消費者一般の認識に照らすと、社会的に許容されていたから、本件製品は十分な安全対策が取られていた。また、第1審原告らが主張する代替設計は、いずれも代替設計となり得るものではなかった。 米国やカナダは、コード付き窓カバー製品(ブラインド等)に関する規制の強化について特に先駆的な国であったが、本件製品の出荷時は、これらの国でも規 制の過渡期にあり、新たに発効した基準に適合しない製品を社会から完全に排除する施策は実施されていなかった。 したがって、本件製品には設計上の欠陥はなかった。 (2) 指示・警告上の欠陥について子供の首にコードが絡まれば窒息の危険があることは常識であるところ、本件 製品は、本件クリップの使用により、あらゆる年齢の子供が本件コードにより縊頸することのない状態とすることができた。本件クリップの使用方法に何ら難しいところはなく容易に実施可能であったし、本件タグの内容は、本件製品の ップの使用により、あらゆる年齢の子供が本件コードにより縊頸することのない状態とすることができた。本件クリップの使用方法に何ら難しいところはなく容易に実施可能であったし、本件タグの内容は、本件製品の使用者が本件コードの危険性や本件クリップの使用方法を十分に理解できるものであった。そして、第1審被告YKKは、本件製品の危険の内容及びその回避方法 を記載した本件取扱説明書について、販売店に対する継続的な研修を行って使用 者への配布を徹底するとともに、インターネット上でも閲覧可能としていたほか、本件クリップを全国のショールームで無償配布するなどして、本件事故と同種の事故を防止するための注意喚起を行っていた。 また、本件製品には出荷時に本件クリップ及び本件タグが同梱され、本件施工説明書には本件コードに本件クリップ及び本件タグを取り付ける指示が記載さ れていたから、本件製品が使用者に引き渡される時点では、本件コードに本件クリップ及び本件タグが装着された状態になる。そして、使用者は、施工業者からの説明や自ら確認することを通じて、本件クリップの存在及び本件タグの内容を当然に認識することになる。そうすると、本件施工説明書の記載、本件製品の出荷時における本件クリップの同梱方法、本件製品に取扱説明書が同梱されていな いことなどは、いずれも欠陥には当たらない。なお、本件実施基準は、ブラインド製造企業4社から成る日本ブラインド工業会が本件JIS規格より保守的な基準として自主的に定めたものであるから、別の業界団体に属する第1審被告YKKがこれを遵守すべきであったとはいえない。 第1審原告夫妻は、本件クリップ及び本件タグの存在を認識しつつ、あえてこ れを使用しない判断をしていたものであり、本件事故は通常予見される使用形態で生じた を遵守すべきであったとはいえない。 第1審原告夫妻は、本件クリップ及び本件タグの存在を認識しつつ、あえてこ れを使用しない判断をしていたものであり、本件事故は通常予見される使用形態で生じたものではなく、本件製品に指示・警告上の欠陥はなかった。 2 争点(2)(第1審被告土屋ホームの使用者責任又は不法行為責任の有無)について【第1審原告らの主張】 以下のとおり、第1審被告土屋ホームの従業員であったEらは、第1審原告家族が本件リフォーム工事によって危険にさらされないように配慮すべき注意義務を怠ったから、第1審被告土屋ホームは、本件事故について使用者責任又は不法行為責任を負う。 (1) 第1審被告土屋ホームは、第1審原告家族が本件リフォーム工事によって危 険にさらされないように配慮すべき注意義務を負っていた。そして、第1審被告 土屋ホームは、専門業者として、本件製品には子供の縊頸事故につながる重大な危険があることを認識しており、本件リフォーム工事を担当したEは、本件建物2階に幼稚園児が入居予定であることを具体的に認識していた。そうすると、Eらは、①本件リフォーム工事の内容の提案の際、本件製品の設置を推奨せず、又は少なくとも本件製品による子供の縊頸事故の危険性及び本件製品以外の網戸 の設置可能性について説明した上で、第1審原告夫妻の了解を得ない限り本件製品を選定しない義務、②本件製品の設置に際し、本件クリップ及び本件タグを本件コードに正しく装着すべき義務、③本件リフォーム工事完成後の引渡しに際し、本件クリップ及び本件タグが本件コードに装着されていることを確認するとともに、同夫妻に対し、本件製品の取扱説明書を交付して本件コードの危険性及び 本件クリップの使用方法等を説明すべき義務を負っていた。 プ及び本件タグが本件コードに装着されていることを確認するとともに、同夫妻に対し、本件製品の取扱説明書を交付して本件コードの危険性及び 本件クリップの使用方法等を説明すべき義務を負っていた。 (2) それにもかかわらず、Eらは、①第1審原告夫妻に対して本件製品の危険性及び他の網戸の設置可能性について説明せず、独断で本件製品を設置することを決定し、②本件製品を設置する際に、本件コードに本件クリップ及び本件タグを正しく装着せず、③本件コードに本件クリップ及び本件タグが装着されていない 状態のまま引渡しをした上、同夫妻に対して本件製品の取扱説明書を交付せず、本件製品に付属する本件コードの危険性や本件クリップの使用方法等について説明しなかったから、上記注意義務を怠ったというべきである。 第1審原告夫妻が令和元年11月2日にEらから本件製品に付属する本件コードの危険性等について説明を受けた事実はなく、同夫妻は、本件事故に至るま で本件クリップ及び本件タグの存在を認識していなかった。 【第1審被告土屋ホームの主張】以下のとおり、Eらは、第1審原告家族が本件コードによって危険にさらされないように配慮すべき注意義務を果たしていた。 (1) 本件コードが子供の首に絡まるような事態は通常予見できるものではないし、 本件製品の設置場所や第1審原告夫妻にはDよりも年少の乳幼児がいなかった ことなどからすると、本件製品を選定すること自体は一般的に許容される範囲内のものであった。 したがって、Eらにおいて、本件製品の危険性等について第1審原告夫妻に対し説明した上で、その承諾を得ない限り本件製品を選定しない義務を負っていたとはいえない。 (2) Eらは、令和元年11月2日午後7時頃、本件建物2階において、第1審 について第1審原告夫妻に対し説明した上で、その承諾を得ない限り本件製品を選定しない義務を負っていたとはいえない。 (2) Eらは、令和元年11月2日午後7時頃、本件建物2階において、第1審原告夫妻に対して本件リフォーム工事の内容や設置した設備等の説明を行った際、同Bに対し、本件コードの操作方法を説明するとともに、本件クリップに付属した本件タグを指し示しながら、本件コードが子供の首等に巻き付く危険性やそのような事故発生を防止するために本件クリップが存在することを説明した。その際、 第1審原告Bが「わー危ない。」と発言するなど、同夫妻は本件コードの危険性を十分認識していたから、Eらにおいて、本件クリップ及び本件タグを本件コードに装着したり、本件取扱説明書を交付したりする注意義務は負っていなかった。 3 争点(3)(過失相殺の可否)について【第1審被告らの主張】 D、第1審原告夫妻及び同Bの両親には本件事故の発生について過失があったから、過失相殺がされるべきである。 (1) Dの過失についてDは、ループ状のコードに頸部を挿入すれば窒息の危険があることや、そのような危険は不安定な椅子の上に立つなどの行為をしないことによって防止でき ることを十分に理解できる年齢に達していたから、事理弁識能力を備えていた。 Dは、本件製品の危険やその回避方法を理解できたにもかかわらず、本件椅子を動かして不安定な座面の上に立つなどの極めて危険な方法で本件製品の本件コードを使用したから、重大な過失があった。 (2) 第1審原告夫妻の過失について 第1審原告夫妻には、①本件事故と同種の危険並びに本件クリップ及び本件タ グを認識していたにもかかわらず、本件クリップを用いなかったこと、②不安定な座面を備えた本件椅子 について 第1審原告夫妻には、①本件事故と同種の危険並びに本件クリップ及び本件タ グを認識していたにもかかわらず、本件クリップを用いなかったこと、②不安定な座面を備えた本件椅子を本件窓の付近に配置し、危険性を著しく高めたこと、③Dが本件コードに触れたり、本件椅子を動かして不安定な座面の上に立ったりするなどの危険な行動をしないようにするための監督行為をしなかったこと、④Dが本件建物2階で保護者の目の届かない状態で少なくとも2時間程度を過ご す可能性を認識しながら、外出に際して、同Bの両親に対して本件事故と同種の危険を回避するための留意事項を伝えたり、本件椅子をDの手の届かないところに移動したりするなどの危険回避の措置を講じなかったことなどの過失があった。 (3) 第1審原告Bの両親の過失について 第1審原告Bの両親は、本件建物で同居しておりDと身分上又は生活関係上一体を成す関係にあった。そして、第1審原告Bの両親は、同夫妻が外出中のDの世話を引き受けた以上、本件事故と同種の危険を回避するための安全配慮義務及び監督義務を負っていた。それにもかかわらず、第1審原告Bの両親は、Dが本件コードに触れたり、本件椅子の座面の上に立ったりするなどの危険な行動をと らないようにするための監督行為をせず、本件椅子をDの手の届かないところに移動するなどの危険回避の措置も講じることなく、約2時間もの間、Dを本件建物2階に1人で放置し、その安全状況の確認をしなかったなどの過失があった。 【第1審原告らの主張】以下のとおり、本件事故の発生について過失相殺をすべきではない。 (1) Dの過失についてDは、本件製品には本件コードに縊頸して窒息死する危険性があることを認識できなかったから、事理弁識能力は認められず 件事故の発生について過失相殺をすべきではない。 (1) Dの過失についてDは、本件製品には本件コードに縊頸して窒息死する危険性があることを認識できなかったから、事理弁識能力は認められず、Dの行為を過失相殺の対象とすることはできない。 (2) 第1審原告夫妻の過失について 第1審原告夫妻は、本件事故に至るまで本件クリップ及び本件タグの存在を認 識していなかった。仮に第1審原告夫妻が本件クリップの存在を認識していたとしても、それを使用しなかったのは、本件製品の指示・警告上の欠陥及びEらの注意義務違反により、本件コードにより子供の命を危険にさらす状況が現出しているという事実を正しく認識できなかったからであるから、第1審被告らには過失相殺を主張する正当な利益がない。 また、本件椅子の座面が回転式であることが本件事故の発生に寄与した事実は立証されていないし、本件窓付近に本件椅子を配置したのみをもって過失と評価するのは不相当である。 さらに、第1審原告夫妻には本件コードの危険性について認識がなかったし、Dが椅子やソファの上に立つことがあれば注意してきており、本件事故の直前に Dに本件椅子の上に立たないよう指示すべき状況はなかった。親が子供を残して外出するに当たり、あらゆる危険について注意を与えたり、あらゆる危険を排除したりすることは非現実的であるし、まして子供を1人で留守番させることを禁止するような行為規範を設定するのは不相当である。 (3) 第1審原告Bの両親の過失について 本件事故は第1審原告家族が本件建物に居住し始めてから3日目に発生したものであったし、本件建物の2階と1階は独立した住居として利用できたから、同Bの両親は、Dと身分上又は生活関係上一体を成す関係にはなかった。また、 告家族が本件建物に居住し始めてから3日目に発生したものであったし、本件建物の2階と1階は独立した住居として利用できたから、同Bの両親は、Dと身分上又は生活関係上一体を成す関係にはなかった。また、第1審原告夫妻と同様の理由で、同Bの両親に過失があったとはいえない。 4 争点(4)(因果関係及び損害)について 【第1審原告らの主張】本件製品の欠陥及びEらの注意義務違反がなければ、第1審原告夫妻は本件製品を選定しないか、少なくとも本件クリップを適切に使用することにより本件事故を回避することができた。本件事故によるDの死亡は、本件製品の欠陥及びEらの注意義務違反の通常の経過として生じたものであり、予見不可能な特別事情は存在し なかったから、相当因果関係が認められる。そして、Dの死亡による損害は、別紙 8「損害額計算表」の「第1審原告らの請求」欄記載のとおりである。 【第1審被告らの主張】第1審原告夫妻は、本件事故と同種の危険並びに本件クリップ及び本件タグを認識しており、危険の内容及び回避方法を理解し又は少なくとも理解するのに十分な情報を入手していたから、更なる指示・警告によってその行動が変わったとはいえ ない。そうすると、仮に本件製品に指示・警告上の欠陥が存在したり、Eらに注意義務違反があったりしたとしても、本件事故との間に相当因果関係は認められない。 また、第1審原告夫妻が本件クリップを認識していたにもかかわらずこれを使用しなかったことや、本件窓付近に本件椅子が配置され、Dが本件椅子を動かして不安定な座面の上に立つという危険な行動をしたことは、いずれも社会通念に照らし て予見不可能な特別事情であったから、この点からも本件事故との間に相当因果関係は認められない。 5 争点(5)(本件クーリン の上に立つという危険な行動をしたことは、いずれも社会通念に照らし て予見不可能な特別事情であったから、この点からも本件事故との間に相当因果関係は認められない。 5 争点(5)(本件クーリングオフの有効性)について【第1審被告土屋ホームの主張】以下のとおり、本件クーリングオフは無効であるから、第1審原告Aは、第1審 被告土屋ホームに対し、本件各契約に基づく残代金支払義務を負う。 (1) 法定書面(特商法5条1項)の交付について第1審被告土屋ホームが第1審原告Aに交付した本件契約書1及び2には、法定記載事項どおりの記載がされていない部分があったが、クーリングオフが可能であること及びその効果という重要な事項が記載されていた。また、本件契約3 ~5は本件契約1及び2に付随して締結された契約であるから、本件契約1及び2と別に特商法の規制が及ぶとはいえない。 したがって、第1審被告土屋ホームは第1審原告Aに対して法定書面を交付したといえるところ、本件クーリングオフは法定書面の交付から8日が経過した後にされているので無効である。 (2) 請求訪問販売(特商法26条6項1号)該当性について 第1審被告土屋ホームは、第1審原告Bを通じて同Aから、本件各契約を締結するために同Aの住居である本件建物を訪問することを求められ、本件各契約を締結したものであるから、本件各契約に基づく役務の提供及び商品の販売は請求訪問販売に該当し、クーリングオフに関する特商法9条の規定が適用されない。 具体的には、Eは、第1審原告Bを通じて同Aから、令和元年6月21日の打合 せの際、本件契約1及び2の締結のため同月29日に本件建物を訪問するよう求められ、同年8月22日の打合せの際、本件契約3及び4の締結のため同月24日に本件 て同Aから、令和元年6月21日の打合 せの際、本件契約1及び2の締結のため同月29日に本件建物を訪問するよう求められ、同年8月22日の打合せの際、本件契約3及び4の締結のため同月24日に本件建物を訪問するよう求められ、同年10月5日の打合せの際、本件契約5の締結のため同月19日に本件建物を訪問するよう求められた。 仮に請求訪問販売に該当しないとしても、本件各契約の締結に至る経緯等から すれば、第1審被告土屋ホームは不意打ち的な勧誘を行っておらず、第1審原告Aは、十分な情報に基づき検討を重ねた上で自ら希望して本件各契約を締結したものであるから、特商法26条6項1号の類推適用によりクーリングオフの規定は適用されない。 (3) 権利濫用該当性について 第1審原告Aは、十分に検討した上で自ら希望して本件各契約を締結し、同契約が不当なものとは考えていなかったにもかかわらず、本件事故の発生を理由に本件クーリングオフをしており、消費者保護という特商法の趣旨にそぐわない。 また、第1審原告Aは、本件クーリングオフにより、代金回収に対する第1審被告土屋ホームの期待を裏切りながら、約2000万円の費用を要する本件リフォ ーム工事が実施された本件建物で居住する利益を得ることになるが、これは著しく社会正義と公正に反する。 したがって、第1審原告Aによる本件クーリングオフは権利の濫用に該当する。 【第1審原告Aの主張】以下のとおり、本件建築申込みに係る契約及び本件各契約は本件クーリングオフ により解除されたから、第1審原告Aは、第1審被告土屋ホームに対し、本件各契 約に基づく代金支払義務を負わず、特商法9条6項に基づき本件申込金10万円の返還を求めることができる。同項に基づく金銭の返還は速やかに行わなければなら 1審被告土屋ホームに対し、本件各契 約に基づく代金支払義務を負わず、特商法9条6項に基づき本件申込金10万円の返還を求めることができる。同項に基づく金銭の返還は速やかに行わなければならないから、遅くとも本件クーリングオフから15日後の日である令和2年4月30日には支払期日が到来した。 なお、本件申込金は、本件建築申込みに係る契約(本件建物の調査や建築プラン 作成等を内容とする役務提供契約)に基づき支払われたものであるが、仮に本件契約1に係る預り金だとしても、本件契約1のクーリングオフによりその返還を求めることができる。 (1) 法定書面の交付について本件契約書1~3は、クーリングオフによる解除に関する一部の事項、事業者 の連絡先及び担当者の氏名等の記載が欠けているほか、代金の支払方法が不明確で、役務の種類も具体的に記載されていないなどの不備があり、本件注文書4及び5にはクーリングオフに関する記載が一切ないから、本件各契約書等の交付によって法定書面の交付がされたとはいえない。 (2) 請求訪問販売該当性について 本件各契約は本件リフォーム工事に係る一連の契約であるから、特商法26条6項1号所定の請求の有無については、Eが最初に本件建物を訪問した平成31年2月9日又は本件建築申込みがされた令和元年6月10日を基準とすべきであるところ、両時点では上記請求はなかった。第1審原告Aが同Bを通じて、Eに対し、令和元年6月21日、同年8月22日及び同年10月5日に、本件各契 約の締結のために本件建物を訪問するよう求めた事実はない。また、本件各契約当時、本件建物は第1審原告Aの住居ではなかったから、この点でも請求訪問販売には該当しない。 特商法26条6項1号は、同号が規定する場合には、購入者等に訪問販売の方 めた事実はない。また、本件各契約当時、本件建物は第1審原告Aの住居ではなかったから、この点でも請求訪問販売には該当しない。 特商法26条6項1号は、同号が規定する場合には、購入者等に訪問販売の方法によって商品等を購入する意思があらかじめあること及び購入者等と販売業 者等との間に取引関係があることが通例であることを前提としているところ、第 1審原告Aと第1審被告土屋ホームには本件各契約以前には取引関係がなかったから、同号の類推適用の基礎を欠いている。 (3) 権利濫用該当性についてクーリングオフの制度趣旨からすれば、契約締結過程や給付内容に問題があるか、クーリングオフを行う動機が何であるか、クーリングオフの結果として事業 者がどのような損失を被るかといった事情によってクーリングオフの行使が制限されるとは解されないから、本件クーリングオフは権利濫用には該当しない。 6 争点(6)(本件各契約に基づく代金額及び支払期日の到来の有無)について【第1審被告土屋ホームの主張】第1審被告土屋ホームは、令和元年11月15日までに、第1審原告Aに対し、 本件契約1~4に基づく工事(同Aの求めにより一部未施工となっている本件契約3に基づくエクステリア工事を除く。)を完成させて引き渡すとともに、本件契約5に基づき照明器具を引き渡した。 本件各契約に基づく代金は合計1957万4914円であり、第1審原告Aは、同年10月31日、第1審被告土屋ホームとの間で、同代金から本件申込金10万 円を控除した残代金1947万4914円を同年11月30日までに支払う旨を合意した。 【第1審原告Aの主張】第1審被告土屋ホームと第1審原告Aとの間には、同Aが住宅ローンによる融資を受けられるまで代金の支払を猶予する旨の黙示の 円を同年11月30日までに支払う旨を合意した。 【第1審原告Aの主張】第1審被告土屋ホームと第1審原告Aとの間には、同Aが住宅ローンによる融資を受けられるまで代金の支払を猶予する旨の黙示の合意があったから、代金支払期 日は到来していない。

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