- 1 -主文 原判決主文第2項を次のとおり変更する。 一審被告が平成10年3月31日付けでした一審原告の平成6年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 一審原告のその余の控訴を棄却する。 一審被告の控訴を棄却する。 訴訟費用は一,二審を通じ,すべて一審被告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判一審原告 原判決を次のとおり変更する。 一審被告が平成10年3月30日付けでした一審原告の平成6年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定を取り消す。 一審被告が平成10年3月31日付けでした一審原告の平成6年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 一審被告の本件控訴を棄却する。 一審被告 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 一審原告の請求をいずれも棄却する。 一審原告の本件控訴を棄却する。 第2事案の概要本件は,一審原告の平成6年分の所得税について,いずれも一審被告が行った,平成10年3月30日付け過少申告加算税賦課決定及び重加算税賦課決定(以下「第一次決定処分」という)並びに同月31日付け更正処分(以下「本件更正処分」とい。 う)及び重加算税賦課決定(以下「第二次決定処分」という)に対し,一審原告。 。 が,自らは確定申告手続を委任した税理士及び当時現役の税務署職員が行った犯罪行為の被害者であると主張し,上記各処分はいずれも違法であるとして,その取消しを求めたものであるが,これに対し,一審被告が,第一次決定処分については,異議申立て及び審査請求を経ていない不適法な訴えであると主張したほか,さらに,上記各処分がいずれも関係法令に適合する適法なもの 求めたものであるが,これに対し,一審被告が,第一次決定処分については,異議申立て及び審査請求を経ていない不適法な訴えであると主張したほか,さらに,上記各処分がいずれも関係法令に適合する適法なものであると主張して争っている事案である本件事案の概要は次のとおり付加するほか原判決の 事実及び理由 中の第。 ,,「」「 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (一審原告の当審における主張) 租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。以下「措置法」という)36条の2第5項所定の確定申告書に買換特例の適用を受けようとする旨。 の記載及び添付書類の添付がなかったことについての「やむを得ない事情」の存在法は,通常人・平均人を対象とするものである。そして,通常人は,国家から資格を付与された税理士を信用する。措置法36条の2第5項所定の「やむを得ない- 2 -事情」とは,買換特例の申告を期限内にすることが平均的な納税者に期待しがたい,,,事情すなわち一般の納税者として通常要求される程度の注意を払ったとしてもなお,確定申告書に本件買換特例の適用を受けようとする旨を記載し,かつ,本件添付書類を添付することが不可能であった事情を指すというべきである。税理士に,,より納税資金を詐取された場合は納税者に通常要求される程度の注意を払っても確定申告書への上記記載及び添付書類を添付することは不可能であったというべきである。 仮に,原判決のように「措置法36条の2第5項にいう『やむを得ない事情』とは,天災その他本人の責めに帰すことのできない事由により,確定申告書に本件買換特例の適用を受けようとする旨の記載をし,かつ,そのための必要資料を添付することが不可能であったと認められるような客観的事情を指し,納税者の の責めに帰すことのできない事由により,確定申告書に本件買換特例の適用を受けようとする旨の記載をし,かつ,そのための必要資料を添付することが不可能であったと認められるような客観的事情を指し,納税者の主観的な」,,意思あるいは個人的な事情はこれに該当しないと解するとしても原審の判断は殊更に一審原告の過失のみに注目し,現職の統括国税調査官が不正に関与していた事実を軽視している。本件においては,正当な納税申告ができなかったのは,徴収する行政側の者が不正に関与したからであることを重視すべきであり,一審原告が利得しているわけではないこと,一審原告にとっては,国税を賦課徴収する統括国税調査官が賄賂を収受し,税理士と共謀して不正申告を受理することまで予想するのは不可能であったことを総合的に考慮すると,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情の域を超えており「やむを得ない事情」があったとすべきである。 , 禁反言の法理A査察官は,国税局の職員であり,買換特例の適用を認める旨述べたのは,個人的見解を述べたものではなく,国税局の見解を述べたものである。東京国税局が特例が適用される旨の見解を述べた以上,東京国税局は一審被告の上級官庁であるから,行政の一体性から,禁反言の原則違反として,一審原告に特例の適用を認めるべきである。 除斥期間について一審原告は,平成10年1月6日に自ら修正申告をしている。修正申告は,申告後に申告内容の誤りに気付き,納税者自らが,適正な内容に修正すべく,自主的に正当税額に正す行為である。原判決は,客観的に「偽りその他不正の行為」によって税額を免れた事実が存する場合に,国税通則法70条5項の適用があると判断しているが,一審原告は,上記のとおり,修正申告をしているのであるから,同項の「偽りその他不正の行為」によって税額を免 によって税額を免れた事実が存する場合に,国税通則法70条5項の適用があると判断しているが,一審原告は,上記のとおり,修正申告をしているのであるから,同項の「偽りその他不正の行為」によって税額を免れたことにはならない。したがって,一審原告には,国税通則法70条5項の適用はない。 (一審被告の当審における主張) 措置法36条の2第5項所定の「やむを得ない事情」について一審原告が主張する措置法36条の2第5項所定の「やむを得ない事情」についての解釈論は,独自の見解であるから,採用されるべきではない。 禁反言の法理A査察官が,一審原告に対して,本件買換特例の適用を認める旨の発言をした事実はない。したがって,禁反言の法理に係る一審原告の主張は,理由がなく失当で- 3 -ある。 ,,,,なお公の見解の表示は必ずしも文書でなされる必要はないが口頭の表示はその存在と内容を立証することが困難であり,また信頼が形成される程度が低いと考えられる。すなわち,何が「信頼の対象となる公的見解の表示」であるかについても,租税法律主義における合理性の要請と法的安定性の要請の見地から,慎重に決せられるべきである。一審原告は,国税局の査察官の査察調査に当たっての口頭の発言が「信頼の対象となる公的見解の表示」に当たる旨主張しているが,一審,原告は,所得税法違反の嫌疑を受けて,東京国税局の査察調査を受け,捜索や事情聴取をされていたのであるから,査察官が所得税法違反の告発に向けた調査をしていることを十分認識していたのであって,その査察官に,更正決定を行う決定権限などないことも十分認識していたはずである。したがって,査察官が査察調査に際し,口頭で行った買換特例に関する見解の表示が,信義則の適用において「信頼,の対象となる公的見解の表示」に当たらないことは などないことも十分認識していたはずである。したがって,査察官が査察調査に際し,口頭で行った買換特例に関する見解の表示が,信義則の適用において「信頼,の対象となる公的見解の表示」に当たらないことは,明らかである。 除斥期間について(1)「偽りその他不正の行為」の意義と更正の範囲判例は「国税通則法70条2項4号は『偽りその他不正の行為』によっ,,て国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合,これに対して適正な課税を行うことができるよう,同条1項各号掲記の更正又は賦課決定の除斥期間を同項の規定にかかわらず5年(同判決は,昭和56年改正前の国税通則法の適用例)とすることを定めたものであって『偽りその他不正の行為』によって免,れた税額に相当する部分のみにその適用範囲が限られるものではないと解するのが相当である」と判示している(最高裁昭和51年11月30日第三小法。 廷判決・判例時報833号57頁。 )これは「偽りその他不正の行為」があった場合には,その税額全体につい,て,7年間の更正処分をなしうる権限を留保することによって,国税通則法70条5項の制度趣旨である適正な課税の実現を図ったものと解せられる。 これを本件についてみると「偽りその他不正の行為」によって免れた国税,について,修正申告によって,特例適用の可否を除いて課税所得の計算の基礎となる金額をすべて是正したとしても,なお,課税庁において適正な課税を行うべく,更正を行う権限は留保されているといわなければならず,7年間の更正の期間制限は,税額の全体に適用され,期間内は,特例の適用の是非についてだけでも更正が可能ということとなる。 (2)「偽りその他不正の行為」と税務調査の困難さ「偽りその他不正の行為」は,偽計等によって隠されていることが多く,その不正行為が巧妙であればあ 是非についてだけでも更正が可能ということとなる。 (2)「偽りその他不正の行為」と税務調査の困難さ「偽りその他不正の行為」は,偽計等によって隠されていることが多く,その不正行為が巧妙であればあるほど,発見することは困難であり,当該納税者の関係者等の税務調査・脱税事件等から発覚するなど,法定申告期限から長期間を経て発覚する場合もあるほか,発覚後も,証拠が隠滅されていたり,関係者が刑事訴追されているなど解明には困難が多く,正確な所得の把握に長時間を要することが通常である。 本件においても,法定申告期限は平成7年3月15日であったが,平成9年- 4 -ごろ,一審原告に委任されて当初申告をしたB税理士の脱税行為が発覚し,これを端緒にして,同年10月14日に一審原告に対する税務調査に着手するに至ったものであって,不正の発覚および調査の着手まで長期間を要し,当初申告期限から3年の期間では,調査着手後半年もないという事態であった。 (3)更正の除斥期間に関する国税通則法70条5項について①国税通則法70条5項の規定の趣旨は,不正の行為に対し本来の適正な課,,税を実現することにあり行為者がだれであるかに着目しているものではなく②不正の行為があった場合に,3年間の除斥期間内の更正により適正な課税を行うことが困難となることは,当該行為を行う者が納税者自身であるか第三者であるかによって異ならず,③除斥期間が7年間とされたからといって,既に成立している抽象的納税義務を適正に具体化することという以上に何ら新しい,,,義務を課することになるわけではなく④条文上も国税通則法68条1項は明確に「納税者」を主体として規定しているのに対して,同法70条5項は,主体を何ら限定していない。 従って,国税通則法70条5項においては,行為主体が納税義務者であるか 条文上も国税通則法68条1項は明確に「納税者」を主体として規定しているのに対して,同法70条5項は,主体を何ら限定していない。 従って,国税通則法70条5項においては,行為主体が納税義務者であるかどうかを問わず,不正の行為によってほ脱の結果が生じた場合を広く含むと解するのが相当であり,不正の行為の主体を納税者に限定しなければならない積極的な根拠は見当たらず,また,行為主体が「偽りその他の不正行為」をした以上,納税者本人の認識は必要ないと解すべきである。 (4)修正申告の効力(国税通則法20条)修正申告がなされた場合,当初申告にどのような影響を及ぼすか。これについて,国税通則法20条は「修正申告書で既に確定した納付すべき税額を増加させるものの提出は,既に確定した納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない」と規定し,納付すべき税額の増加を伴う修。 正申告が,前の申告等に及ぼす影響について,立法的解決を図った。 すなわち,既に確定した納付すべき税額の増加を目的とする修正申告書が提出された場合,その提出前に申告,更正又は決定により確定している納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務は,何らの影響も受けないこととしたのである。 同条によって,修正申告の効力は,追加的に確定される納付すべき税額すなわち増差税額についてのみ生ずるものであって,それにより前にされた申告,更正又は決定はなかったことにはならず,したがって,これらに基づいてされた納付や徴収処分が無効であるということにはならない,ということが明らかにされたのである(DHC国税通則法コンメンタール1334頁。 )(5)修正申告と更正処分の除斥期間以上のように,増額修正の場合,修正申告は,当初申告とは別個独立の行為であり,修正申告によって追加的に確定される納 DHC国税通則法コンメンタール1334頁。 )(5)修正申告と更正処分の除斥期間以上のように,増額修正の場合,修正申告は,当初申告とは別個独立の行為であり,修正申告によって追加的に確定される納付すべき税額すなわち増差税額についてのみその効力を生じるもので,修正申告によって当初申告が行為時に遡って覆されるわけではない。 したがって,当初申告に国税通則法70条5項の「偽りその他不正の行為」- 5 -,,,があれば7年間の除斥期間内に修正申告がなされたとしてもそれによって当初申告の「偽りその他不正の行為」が遡って治癒されるわけではなく,修正,(),申告は当初確定申告に対する更正処分の期間国税通則法70条5項には何ら影響を与えないことは明らかである。 (6) 結論 本件における「偽りその他不正の行為」とは,当初申告における,B税理士による,内容虚偽の必要経費等を記載して税額を零とする確定申告書の提出であり,当初の申告期限から7年間は更正可能な除斥期間である(国税通則法70条5項。 )一審原告は,法定申告期限である平成7年3月15日から3年が経過する直前の平成10年1月6日に,平成6年分の所得税について更正されることを予知して,あえて買換特例を適用して修正申告を行った。 そのため,一審被告は,同年3月31日に特例の適用を認めない更正を行ったものである。 本件修正申告によって,買換特例以外の部分は是正されたが「偽りその他,不正の行為」が一部について存する場合において,7年間は全体について更正が可能であることから,本件修正申告によって一部の税額が是正されたとしても,7年間の除斥期間内であれば更正できると解される(前述した最高裁昭和51年11月30日判決。 )また,修正申告の効力は,これにより追加的に確定される納付すべき税額す 部の税額が是正されたとしても,7年間の除斥期間内であれば更正できると解される(前述した最高裁昭和51年11月30日判決。 )また,修正申告の効力は,これにより追加的に確定される納付すべき税額すなわち増差税額についてのみ生じ,当初申告に影響を及ぼさず「偽りその他,」()。 不正の行為が遡ってなかったことにはならないのである国税通則法20条したがって,更正処分前に修正申告があったとしても「偽りその他不正の,行為」の存否は当初申告について判断されるべきであり,修正申告によって,「偽りその他不正の行為」が遡って治癒されることはなく,法定申告期限後7年間の除斥期間内は,税額全体について更正処分が可能であり,本件更正は適法である。 第3当裁判所の判断 争点1(第一次決定処分取消しを求める訴えは,不服申立前置を欠く不適法なものであるか否か)について。 当裁判所も,第一次決定処分の取消しを求める訴えは,国税通則法115条1項の定める不服申立前置の要件を欠くものというべきであるが,第一次決定処分につき異議申立て及び審査請求を経ないで取消訴訟を提起することについて,国税通則法115条1項3号にいう正当な理由があると判断するが,その理由は,原判決中の「第3当裁判所の判断」の「1争点1について」欄(原判決34頁7行目から35頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点2(一審原告が「隠ぺい又は仮装」の行為によって,本件譲渡資産の譲渡に,係る所得税を免れた事実があるか否か)について。 当裁判所も,納税者以外の者が国税通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為を行った場合であっても,その行為が納税者本人の行為と同視できる場合には,- 6 -納税者に対して重加算税を課することができるものと解すべきであるが,本件にお 8条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為を行った場合であっても,その行為が納税者本人の行為と同視できる場合には,- 6 -納税者に対して重加算税を課することができるものと解すべきであるが,本件においては,税理士Bが行った隠ぺい又は仮装の行為を,納税者である一審原告の行為と同視することは相当でないと判断する。その理由は,原判決中の「第3当裁判所の判断」の「2争点2について」欄(原判決35頁14行目から42頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点3(本件修正申告書の提出は,更正を予知して行われたものであるか否か)。 について当裁判所も,本件修正申告書の提出が,国税通則法65条5項所定の「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるものとはいえないと判断するが,その理由は,原判決中の「第3当裁判所の判断」の「3争点3について」欄(原判決42頁11行目から43頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点4(一審原告が所得金額を過少に申告したことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるか否か)について。 当裁判所も,本件修正申告書の税額の計算の基礎となった事実について,本件確定申告書において税額の計算の基礎とされていなかったことに国税通則法65条4項所定の正当な理由があったとはいえないと判断するがその理由は原判決中の第「」,,「 当裁判所の判断」の「4争点4について」欄(原判決43頁5行目から44頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点5(一審原告が国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」によって,税額を免れた事実があるか否か)につ 3頁5行目から44頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点5(一審原告が国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」によって,税額を免れた事実があるか否か)について。 (1)一審被告のこの点についての主張は,要約すると次のとおりである。法定申告期限のある国税についての更正は,国税通則法の規定により,通常の場合には,更正に係る国税の法定納期限(本件の場合には,平成7年3月15日)から3年を経過した日以後においてはすることができない(国税通則法70条1項1号)が,「偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れ」た国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む)についての更正は,法定申告期限から7年を経。 (),,過する日まですることができる国税通則法70条5項1号ところ一審原告が,,税理士Bを介して提出した本件確定申告書には架空の経費を計上することにより本件譲渡所得金額を零とした「偽りその他不正の行為」があり,本件更正は,これにより免れた国税についてされたものであるから,適法であると主張するものである。当裁判所は,一審被告の同主張は,失当であると判断するものであるが,その理由は,以下に述べるとおりである。 (2)更正は,一般に,確定申告,修正申告,決定,更正等,先行する納税者又は課税庁の何らかの税額確定行為が存在する場合に,これを前提とし,これが,課税庁の認定する課税標準又は税額等と異なる場合にすることができるとされている。 本件において,一審原告は,平成7年3月14日に,税理士Bを介して本件確定申告書を提出しており,そこには架空経費を計上する等の「偽りその他不正の行為」が存在したが,この事実を知った一審原告は,国税局査察官の勧めもあって,平成10年1月6日に,本件修正申告書を提出し 確定申告書を提出しており,そこには架空経費を計上する等の「偽りその他不正の行為」が存在したが,この事実を知った一審原告は,国税局査察官の勧めもあって,平成10年1月6日に,本件修正申告書を提出した。そして,本件修正申告書には「偽- 7 -りその他不正の行為」に基づく記載はなかった(なお,同修正申告は,本件買換特例の適用を前提とするものであったが,この点が「偽りその他不正の行為」に該当しないことは,一審被告も認めるところである。課税庁は,更正する前に修正。)申告がされたときは,もはや確定申告を前提としてこれに対する更正をすることは許されず,修正申告を前提としてこれに対して更正をすることができるにすぎないから,本件更正処分は,本件修正申告を前提としてこれに対してされたものと解さざるを得ない。ところが,本件修正申告には「偽りその他不正の行為」は存在し,ないから「偽りその他不正の行為」により免れた税額も存在しないことが明らか,である。それにもかかわらず,本件更正処分は,当該税額を免れた国税が存在することを前提としてされたものであるから,国税通則法70条5項の適用はないというべきである。 一審被告は,当初の確定申告に「偽りその他不正の行為」があれば,7年の除斥期間が適用されるべきであり,このように解さなければ,本件のように,3年の除斥期間のわずか2か月前に修正申告がされた場合には,是正の機会が不当に失われるかのように主張するが,同主張は採用できない。すなわち,課税庁に与えられた更正の機会は一回に限られないのであり,本件の場合でいえば,一審被告の見解では,本件買換特例の適用を受けるためには,確定申告書において,本件買換特例の適用を受けようとする旨を記載しない限り,その適用を受けることができないというのであるから,本件修正申告書を見れば の見解では,本件買換特例の適用を受けるためには,確定申告書において,本件買換特例の適用を受けようとする旨を記載しない限り,その適用を受けることができないというのであるから,本件修正申告書を見れば,直ちにこの見解に反するものであることが判明するのであり,3年の期限内に,まずこの点の更正をし,なお「偽りその他不正の行為」により免れた税額がある場合には,7年の期間内に再度更正することができる(この場合の更正においては「偽りその他不正の行為」により免れた,税額とともにする限り,正当な税額との差額全部について更正し得ることは,当然である)のであるから,更正の機会が不当に失われるということにはならない。 。 なお,一審被告の上記主張は,更正の期間制限が,修正申告のときから起算されないことに根ざす問題であると解されるが,更正の期間は,中断の観念のない除斥期間に服させるのが適正であるとする立法政策に由来するものであるから,致し方のないところである。 (3)また,一審被告は「偽りその他不正の行為」の主体が納税者自身である場,,,合に限らず第三者の場合でも国税通則法70条5項が適用されると主張するのでこの点についても検討する。一審被告は,同項に「偽りその他不正の行為」の主体が「納税者」と記載されていないことをよりどころとして主張するが,同項は「偽りその他不正の行為により……税額を免れ……た国税についての更正」と規定しているところ,税額を免れた主体が納税者であることことは明らかであるから「偽,りその他不正の行為」の主体も納税者と解するのが相当である。もっとも「偽り,その他不正の行為」の手段,態様は限定されていないのであるから,申告書の作成,「」や提出に限られるわけではなく代理人その他の第三者が偽りその他不正の行為によって申告書を作成し提 とも「偽り,その他不正の行為」の手段,態様は限定されていないのであるから,申告書の作成,「」や提出に限られるわけではなく代理人その他の第三者が偽りその他不正の行為によって申告書を作成し提出することを,納税者が認識しながら,これを認容して制止しない場合や,申告書の提出時には認識がなかったとしても,後にこれを認識し,修正申告を提出するなどの行為が可能であるのに,あえてこれをしない場合に- 8 -あっては,そのような認識,認容ないしは不作成をもって,納税者の「偽りその他不正の行為」としてとらえることが可能である。 これを本件についてみるに,一審原告は,自ら確定申告書の作成,提出にかかわっていないし,税理士Bが架空経費を計上して確定申告書を提出するとの認識はなかったのであり,後に査察によってこの事実を知り,本件修正申告に及んだのであるから,一審原告に「偽りその他不正の行為」があったとすることはできない。 (4)さらに,一審被告の本件更正処分は,本件買換特例を適用しない場合と,こ,,れを適用した場合との増差税額のみを更正したものであるところこの増差税額が国税通則法70条5項の「税額を免れた国税」に該当するのかという問題がある。 すなわち「税額を免れた国税」とは,一般に,正当な税額との差額であると説明,されているところ,本件買換特例適用の有無は,納税者の選択にゆだねられているため,正当な税額とは,同特例を適用した場合の税額を指すのか,適用しない場合の税額を指すのかが問題となる。一審被告の主張は,本則(特例の適用なし)と例外(特例の適用あり)の関係にあるから,本則に従って正当な税額を決すべきであるとするものと考えられるが,本件買換特例の要件が備わっているときは,納税者(,はその適用を選択する場合が圧倒的多数であると考えられること本 の関係にあるから,本則に従って正当な税額を決すべきであるとするものと考えられるが,本件買換特例の要件が備わっているときは,納税者(,はその適用を選択する場合が圧倒的多数であると考えられること本件においても一審原告は,適用を選択することを前提としていた,立法過程においても,本。)件買換特例は,減税政策の一環として位置付けられていることを考慮すると,この場合の正当な税額は,本件買換特例適用後のそれであると解することも十分可能であると考えられる。この点をおくとしても,国税通則法70条5項は「偽りその,他不正の行為により……税額を免れ……た国税」について更正する場合に適用されるものであるところ,一審被告の主張する「偽りその他不正の行為」は,B税理士においてした架空経費の計上であって,これによって本件買換特例適用の有無による増差税額が生じたものでないことからすると,本件更正処分の内容は「偽りそ,の他不正の行為」により免れた税額に対してされたものではないといわざるを得ない。また,本件更正処分は,本件買換特例適用の有無による増差税額のみを対象とするものであるから,他の「偽りその他不正の行為」により免れた税額に対する更正とともに,これに伴ってされたものでもない。 (5)以上検討したところによれば,本件更正処分には,国税通則法70条5項の適用要件はなく,同条1項の3年の期間制限を超えてされたものであるから,違法というべきである。そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件更正処分は取り消されるべきであり,また,本件更正処分を前提としてされた第二次決定処分も違法であることが明らかである。 第4 結論 以上の認定,説示によれば,一審原告の本件控訴のうち,第一次決定処分に係る部,,,分は理由がないが本件更正処分及び第二次決定処分に た第二次決定処分も違法であることが明らかである。 第4 結論 以上の認定,説示によれば,一審原告の本件控訴のうち,第一次決定処分に係る部,,,分は理由がないが本件更正処分及び第二次決定処分に係る部分は理由があるから原判決の主文第2項を変更して,本件更正処分のうち修正申告額である708万8300円を超える部分及び第二次決定処分の全部を取り消すこととし,一審被告の本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 - 9 -東京高等裁判所第2民事部裁判長裁判官森脇勝裁判官中野信也裁判官綿引穣
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