平成30(行ウ)233 公文書部分公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年12月20日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-89352.txt

判決文本文26,958 文字)

平成30年12月20日判決言渡平成30年(行ウ)第233号公文書部分公開決定処分取消請求事件主文 1 板橋区長が平成29年12月11日付けで原告に対してした別紙1文書目録記載1(1)及び(2)の公文書の部分公開決定のうち,同目録記載2(5)の部分を非 公開とした部分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,1万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負 担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が1万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実 及び理由第1 請求 1 板橋区長(以下「処分行政庁」という。)が平成29年12月11日付けで原告に対してした別紙1文書目録記載1(1)及び(2)の公文書の部分公開決定のうち,非公開とされた部分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,10万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,東京都板橋区情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき,処分行政庁に対し,別紙1文書目録記載1(1)及び(2)の公文書(以下,併せて「本件請求対象文書」という。)の公開請求をしたところ(以下「本件公開請求」という。),平成29年12月11日付けで,同目録記載2 (1)ないし(5)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を非公開とし,その 余の部分を公開する旨の部分公開決定(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件処分のうち本件非公開部分を非公開 (1)ないし(5)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を非公開とし,その 余の部分を公開する旨の部分公開決定(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であると主張して,同部分の取消しを求めるとともに,被告に対し,本件非公開部分を非公開とされたことにより精神的苦痛を受けたと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金10万円及びこれに対する違法行為の日である同日から支 払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 本件条例の定め(1) 1条この条例は,区民の知る権利を尊重し,区民の公文書の公開を求める権利 を保障するとともに,公文書の公開手続等に関し必要な事項を定めることにより,区が区政に関し区民に説明する責務を全うし,区民の区政への参加を促進し,一層公正で開かれた区政の実現を図り,もって区民と区政との信頼関係を深め,地方自治の本旨に即した区政を推進することを目的とする。 (2) 3条 実施機関(裁判所注:区長,教育委員会,選挙管理委員会,監査委員,農業委員会及び議会のこと(2条1号)。以下同じ。)は,区政に関し区民に説明する責務を十分に果たすようこの条例を解釈し,運用するものとする。 この場合において,実施機関は,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない。 (3) 5条何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対して公文書の公開を請求することができる。 (4) 6条ア 1項 実施機関は,公開請求があったときは,次の各号のいずれかに該当する 情報(裁判所注:以下「非公開情報」と の公開を請求することができる。 (4) 6条ア 1項 実施機関は,公開請求があったときは,次の各号のいずれかに該当する 情報(裁判所注:以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない。 (ア) 2号個人に関する情報(〔括弧内略〕)で特定の個人が識別され得るもの(裁判所注:以下「個人識別情報」ということがある。)。ただし,次 に掲げる情報を除く。 ・ア法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報〔以下略〕(イ) 6号実施機関又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関す る情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるもの〔以下略〕イ 2項実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報とそれ以外の部分とを容易に,かつ,公文書 の公開を求めるものの請求の趣旨を失わない程度に合理的に分離できるときは,当該非公開情報に係る以外の部分を公開しなければならない。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告は,平成28年9月7日付けで,本件条例に基づき,同条例上の実施機関である処分行政庁に対し,別紙1文書目録記載1(1)及び(2)の公文書 (本件請求対象文書)の公開を請求した(本件公開請求)(甲2)。 なお,本件請求対象文書は,第三者(以下「別件訴訟原告」という。)が原告・控訴人となり,板橋区が被告・被控訴人となった訴訟事件(以下「別件訴訟」という。)の第一審 た(本件公開請求)(甲2)。 なお,本件請求対象文書は,第三者(以下「別件訴訟原告」という。)が原告・控訴人となり,板橋区が被告・被控訴人となった訴訟事件(以下「別件訴訟」という。)の第一審及び控訴審の各判決書正本である(甲4の1,2,弁論の全趣旨)。 (2) 処分行政庁は,平成28年10月6日付けで,原告に対し,本件請求対象 文書のうち一部を公開し,その余を非公開とする部分公開決定(以下「第1次処分」という。)を行った。 原告は,第1次処分の取消しを求める訴えを提起し,東京地方裁判所は,平成29年9月1日,理由の提示に不備があるとして,第1次処分を取り消すとの判決をした(東京地方裁判所平成29年(行ウ)第94号)。 被告が同判決を不服として控訴したところ,処分行政庁が,控訴審(東京高等裁判所平成29年(行コ)第284号)の弁論終結後である同年12月11日付けで,第1次処分を取り消し,本件公開請求につき,改めて理由を付して本件処分を行ったことから(甲5,6),東京高等裁判所は,弁論を再開した上,平成30年2月28日,原判決を取り消し,原告の訴えを却下 するとの判決を言い渡し,同判決は確定した。(以下,第1次処分に関する一連の上記訴訟のことを,「前件訴訟」という。)(3) 本件請求対象文書には,別紙1文書目録記載2(1)ないし(3)のとおり,別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)が別紙2の各aの部分に,別件訴訟原告の住所が同各bの部分に,別件訴訟原告の氏名が同cの部分に,それ ぞれ記録されている。また,本件請求対象文書のうち同目録記載1(1)の文書の別紙1には,別件訴訟原告の所有不動産に関する情報(名称,構造,所在,地積,家屋番号,床面積等の情報)が記録されている(別紙1文書目録記載 る。また,本件請求対象文書のうち同目録記載1(1)の文書の別紙1には,別件訴訟原告の所有不動産に関する情報(名称,構造,所在,地積,家屋番号,床面積等の情報)が記録されている(別紙1文書目録記載2(4))(甲4の1,乙20,弁論の全趣旨)。 なお,第1次処分と本件処分とで,非公開部分に違いはない。 (4) 処分行政庁は,原告に対し,平成29年12月12日,本件処分に係る通知をした(弁論の全趣旨)。 (5) 原告は,平成30年6月11日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 本件条例6条1項2号該当性及び同号ただし書アの除外事由該当性 (2) 本件条例6条1項6号該当性 (3) 本件条例6条2項に基づく部分公開の義務の有無(4) 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の可否 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件条例6条1項2号該当性及び同号ただし書アの除外事由該当性)について (被告の主張)ア(ア) 本件請求対象文書は,別件訴訟原告を当事者とする別件訴訟の判決書であり,別件訴訟原告の住所氏名,所有不動産,経歴等のほか,被告と別件訴訟原告との間にいかなる法律関係が存在していたかといった情報が記録されているから,本件条例6条1項2号にいう「個人に関する 情報」が記録されたものに当たる。 そして,本件条例3条後段が個人に関する情報の保護に最大限の配慮をするよう実施機関に求めていること,本件条例5条が何人も公文書の公開を請求することができるとして請求を実施する者の間口を広げていること,本件条例6条1項2号は個人識別可能性について公開対象とな る公文書上の記載のみを判断材料とする等の限定文言を記載していないことなどからすれば,同号の「特定の個人が 者の間口を広げていること,本件条例6条1項2号は個人識別可能性について公開対象とな る公文書上の記載のみを判断材料とする等の限定文言を記載していないことなどからすれば,同号の「特定の個人が識別され得る」とは,一般人が有する他の情報のみならず,特殊な立場の者のみが有する他の情報との照合によって,特定の個人が識別される場合を含むと解するのが相当であるところ,本件非公開部分に記録された情報と,上記特殊な立場 の者が有する情報を照合すれば,別件訴訟原告を識別することができる。 以下,詳述する。 (イ) ある事件について,開廷表を見て,当事者名,事件番号及び事件名を記憶し,これを基に当該事件の訴訟記録を閲覧し,訴訟記録中に編綴されている判決書を閲覧する。他方,当該訴訟の一方当事者である自治 体に対し,当該訴訟の判決書を自ら情報公開請求するか,あるいは,自 分以外の者が当該訴訟の判決書につき情報公開請求をするのを待つ。その上で,閲覧した判決書と,情報公開された判決書の任意の部分の文字列を比較する。任意の場所の文字列が全く同一の判決書が複数あることは,確率的にあり得ないから,情報公開された判決書の事件番号や当事者の住所氏名が非公開とされていても,判決書の文字列が一部でも公開 されれば,公開された部分の文字列を用いて,この方法により,閲覧した判決書と情報公開された判決書の同一性を容易に確認することができる。 以上のとおり,開廷表と民訴法上の閲覧制度を利用する方法により,公開請求を実施した者はもちろん,別件訴訟の判決書の任意の部分の文 字列についての情報を有している者であれば,本件請求対象文書に記録された別件訴訟原告の住所氏名を知ることができる。 以上によれば,本件非公開部分に記録された情報は,その 任意の部分の文 字列についての情報を有している者であれば,本件請求対象文書に記録された別件訴訟原告の住所氏名を知ることができる。 以上によれば,本件非公開部分に記録された情報は,その全体が,本件条例6条1項2号にいう「特定の個人が識別され得るもの」に当たる。 (ウ) また,本件公開請求を実施した者は,既に判決書を閲覧しており, 別件訴訟原告の住所氏名を知っているか,あるいは,開廷表から別件訴訟の事件番号を知っているから,民訴法上の閲覧制度を利用して,別件訴訟原告の住所氏名を知ることができる。実際,原告は,別件訴訟の訴訟記録を閲覧している。 すなわち,本件公開請求を実施した者やその者から情報提供を受けた 者は,任意の文字列を比較するという方法を用いるまでもなく,その有する情報と照合し,別件訴訟原告を識別することができる。したがって,本件非公開部分に記録された情報は,その全体が,「特定の個人が識別され得るもの」に当たる。 (エ) ところで,「特定の個人が識別され得る」か否かの判断に当たって, 仮に,照合対象とすべき他の情報の範囲を一般人が通常知り得る情報に 限ると解したとしても,訴訟記録は,民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧することが可能であることからすれば,訴訟記録中の情報は,一般人が通常知り得る情報に当たるといえる。 したがって,仮に上記解釈を採ったとしても,本件非公開部分に記録された情報が「特定の個人が識別され得るもの」か否かの判断に当たっ ては,別件訴訟の判決書に記録された別件訴訟原告の住所氏名や同判決書の任意の部分の文字列についての情報を照合対象とすることができるから,本件非公開部分に記録された情報が,「特定の個人が識別され得るもの」に当たることに変わりはない。 イ 原告の住所氏名や同判決書の任意の部分の文字列についての情報を照合対象とすることができるから,本件非公開部分に記録された情報が,「特定の個人が識別され得るもの」に当たることに変わりはない。 イ前記のとおり,本件非公開部分に記録された情報は,その全体を非公開 とすべきであるが,本件非公開部分には以下の情報が記録されており,これらは,別件訴訟原告を識別し得る情報に当たるから,これらの情報に係る部分は,非公開とされるべきである。 (ア) 別件訴訟原告の住所氏名及び別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分) (イ) 所有不動産情報前提事実(3)のとおり,本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載1(1)の文書の別紙1には,別件訴訟原告が所有する不動産に関する情報(名称,構造,所在,地積,家屋番号,床面積等)が記録されている。 (ウ) 別件訴訟原告の経歴等 本件非公開部分には,別件訴訟原告の被告に対する請求権の存否及び範囲の判断に当たり,別件訴訟原告の経歴,別件訴訟原告と被告との間で発生した事実,被告が別件訴訟原告について,又は別件訴訟原告に対してした行為の内容,別件訴訟原告が体験した事実に関する情報が記録されている(より具体的な内容については,例えば,「病歴に関する情 報が記録されている」との主張をすることで,「判決書に特記されるほ ど深刻な病気に罹患したことがある」という事実を推認させることとなるなど,別件訴訟原告に関する具体的な情報を得る基礎を公開することとなってしまうため,主張することができない。)。 これらは,別件訴訟原告を知る者等別件訴訟原告と特定の関係にある者の有する情報と照合することにより,別件訴訟原告を識別し得る情報 というべきである。 ウ本件条例6条1 できない。)。 これらは,別件訴訟原告を知る者等別件訴訟原告と特定の関係にある者の有する情報と照合することにより,別件訴訟原告を識別し得る情報 というべきである。 ウ本件条例6条1項2号ただし書アに該当しないこと本件条例6条1項2号ただし書アにいう「法令等の規定により・・・公にされ」といえるためには,法令等の規定により何人でも実際に容易に入手可能であって,公にされる方法が閲覧に限定される場合には,法令が改廃さ れるまでは確実に閲覧が可能であり続けることを要すると解するのが相当である。 そうしたところ,民訴法上の閲覧制度を利用して訴訟記録を閲覧するためには,当該訴訟の事件番号により当該訴訟を特定して閲覧請求をする必要があるが,事件番号は,開廷日に開廷表を見るということを実施しよう と思わなかった者にとっては,知ることができないものである。そうすると,訴訟記録は,何人でも実際に容易に入手可能な情報とはいえない。 また,民訴法91条2項は,公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧を当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り,同法92条は,いわゆる閲覧制限の決定があった事件の訴訟記録については,秘密記載部分の 閲覧等の請求ができる者を当事者に限ると定めている。このように,民訴法上の閲覧制度は,事情によって制限されることがあり,確実に閲覧が可能であり続けるものではない。 以上によれば,民訴法上の閲覧制度があることを根拠に,判決書が「法令等の規定により・・・公にされ,又は公にすることが予定されている情報」 に当たるということはできない。 エよって,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は,適法である。 (原告の主張)ア本件非公開部分に記録された情報全体が本件条 情報」 に当たるということはできない。 エよって,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は,適法である。 (原告の主張)ア本件非公開部分に記録された情報全体が本件条例6条1項2号に該当するとの被告の主張は争う。 訴訟記録の閲覧により別件訴訟原告の住所氏名等を知ることができるとの理由で,本件請求対象文書のほぼ全部を非公開とすることは,本件条例の理念並びに本件条例1条及び3条前段の趣旨・目的に反し,許されない。 イ被告は,民訴法上の閲覧制度によって閲覧が可能であるなどと主張するが,そうであれば,判決書は,本件条例6条1項2号ただし書アに該当す ることとなる。 (2) 争点(2)(本件条例6条1項6号該当性)について(被告の主張)本件非公開部分のうち別紙2の各f部分には,別件訴訟原告と被告との間にいかなる事情が発生したかが記録されているため,当該部分を公開す ると,「いかなる事情が発生すると,板橋区との間で,いかなる法律関係が設定されるのか」を推測することが可能となる。その結果,当該法律関係の設定を望まない者において,当該法律関係が設定される量的ないし質的な限界点を推測し,当該限界点を量的ないし質的に下回る行動を実施することで,当該法律関係の設定を回避することが可能となる。 以上からすれば,板橋区の事務又は事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるから,本件非公開部分のうち別紙2の各f部分に記録された情報は,本件条例6条1項6号に該当する。 (原告の主張)争う。被告は,本件条例6条1項6号該当性につき,何ら具体的な主張 立証をしていない。 (3) 争点(3)(本件条例6条2項に基づく部分公開の義務の有無)について(被告の主張)ア う。被告は,本件条例6条1項6号該当性につき,何ら具体的な主張 立証をしていない。 (3) 争点(3)(本件条例6条2項に基づく部分公開の義務の有無)について(被告の主張)ア本件条例6条2項は,部分公開について規定しているが,同条項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに,同条1項各号のいずれかに該当する情報 (非公開情報)があるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開することを実施機関に義務付けているにすぎない。すなわち,同条項は,非公開情報に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務 付けているものと解することはできない。したがって,実施機関において,独立した一体的な情報を細分化することなく一体として非公開決定をした場合において,情報公開請求者は,実施機関に対し,同条項を根拠として,公開することに問題のある箇所のみを除外してその余の部分を公開するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該非公開決定の取消訴訟におい て,実施機関がこのような態様の部分公開をすべきであることを理由として,当該非公開決定の一部を取り消すことはできないと解するのが相当である。 また,仮に,同条項が,独立した一体的な情報についてもこれを更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分だけを公開することを実施 機関に義務付けることを許容していると解したとしても,それは飽くまで,実施機関の判断で非公開情報が記録されている部分とその余の部分とを容易に区分することができる場合に限られると解される。 イそう 機関に義務付けることを許容していると解したとしても,それは飽くまで,実施機関の判断で非公開情報が記録されている部分とその余の部分とを容易に区分することができる場合に限られると解される。 イそうしたところ,本件請求対象文書のような判決書に含まれる情報は,究極的には,その全てが当事者間の法律関係の存否,範囲という訴訟のテ ーマに関する攻撃防御に向けられたものであるから,一部をその余の部分 と切り離して取り上げた場合,訴訟のテーマとの関係では意味を持たないか,あるいは,一部のみ取り上げたことで,文脈が不明となるか,本来の文脈とは異なるものとなり,その結果,本来の意味とは異なるものになってしまう。そうすると,判決書に含まれる情報は,これ全体が一つの独立した一体的な情報を成すものとみるべきであるから,処分行政庁には,こ れを更に細分化し,別件訴訟原告の識別部分等の一部のみを非公開とし,その余の部分を公開する義務はないし,裁判所が本件処分のうちその余の部分を非公開とした部分のみを取り消すということもできない。 また,判決書の文脈が不明になったり,本来の文脈と異なるものになったりしないような部分公開も,理論上は不可能ではないかもしれないが, このような分離を行うことは,多くの時間と費用がかかることとなるから,仮に,本件条例6条2項が,独立した一体的な情報についてもこれを更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分だけを公開することを実施機関に義務付けることを許容していると解したとしても,実施機関の判断で非公開情報が記録されている部分とその余の部分とを容易に区分する ことができる場合に当たらないし,判決書全体が独立した一体的な情報に当たらないとしても,同条項にいう「容易に・・・分離できるとき」に当たらない。 れている部分とその余の部分とを容易に区分する ことができる場合に当たらないし,判決書全体が独立した一体的な情報に当たらないとしても,同条項にいう「容易に・・・分離できるとき」に当たらない。 したがって,いずれにしても,本件非公開部分につき,本件条例6条2項に基づく部分公開をすべきであったということはできない。 ウ前記のとおり,本件請求対象文書である別件訴訟の判決書には,別件訴訟原告の経歴,被告と別件訴訟原告との間に発生した事実,被告が別件訴訟原告について,又は別件訴訟原告に対して実施した行為の内容,別件訴訟原告の体験した事実等,特定の個人である別件訴訟原告を識別することのできる情報が記録されており,これは本件条例6条1項2号所定の非公 開情報に当たる。そして,これらの情報については,住所氏名のように個 人識別情報に当たるか否かを形式的に判断することが可能なものではなく,判決書の内容や判決書を読む者の有しているであろう情報を推測しつつ,それらの組み合わせにより特定の個人である別件訴訟原告を識別し得るか否かを慎重に検討しなければならない。このように,本件請求対象文書につき,どの部分の記載から個人が識別されるおそれがあるかは,記載全体 や一般に周知されている情報等を総合して検討し,実質的に見ていかなければならず,住所氏名といった端的な個人識別情報を除外するという作業だけでは不十分であって,個人を特定する部分とそれ以外の部分とを区分することは容易ではないというべきである。 そうすると,仮に同条2項が,非公開情報に該当する独立した一体的な 情報についてもこれを更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分だけを公開することを実施機関に義務付けることを許容していると解したとしても,実施機関の 開情報に該当する独立した一体的な 情報についてもこれを更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分だけを公開することを実施機関に義務付けることを許容していると解したとしても,実施機関の判断で非公開情報が記録されている部分とその余の部分とを容易に区分することができる場合に当たらない。また,独立した一体的な情報に当たらないとしても,同条項にいう「容易に・・・分離でき るとき」に当たらない。 したがって,この点でも,本件非公開部分につき,同条項を根拠に部分公開すべきであったとはいうことはできない。 エなお,被告は,原告の心情に配慮し,可及的に公開をするべく,容易な作業ではなかったが,全体を非公開として扱うべき本件請求対象文書につ き,個人識別情報等の非公開情報に該当しないと解釈し得る部分を選抜し,裁量的に,本件処分において部分公開を実施したものである。 (原告の主張)争う。 一般に,公文書としての判決書正本は,個人識別情報等を容易に区分して 取り除くことができ,これを取り除けば,残余の公開は可能である。本件請 求対象文書につき,これが困難であることの特殊事情がある場合には,当該事情を被告が主張立証すべきであるが,被告はこれをしていない。 独立した一体的な情報に何が記録されているかは,被告において主張立証すべきであるが,被告はこれをしていないのであるから,本件非公開部分に非公開情報は何も記録されていないものと推定するほかない。 (4) 争点(4)(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の可否)について(原告の主張)ア前記(1)ないし(3)のとおり,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法である。 そして,処分行政庁は,遅くとも本件処分時までに,少なくとも一 否)について(原告の主張)ア前記(1)ないし(3)のとおり,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法である。 そして,処分行政庁は,遅くとも本件処分時までに,少なくとも一部を 除いて最大限の公開が可能であることを理解できたといえる。ところが,処分行政庁は,前件訴訟の一審判決で敗訴した後も,判示事項から学ぶことも処分の内容を反省することもなく,終始一貫して原告に対して不誠実な態度をとり続けたものであり,職務上の義務に違反したといえる。 イ原告は,本件非公開部分を非公開とされたことにより,知る権利や情報 公開請求権を侵害され,1年半以上の長きにわたって別件訴訟の判決書の内容を精査する機会を奪われ,また,この違法を是正するために二度にわたり訴訟提起を余儀なくされ,さらに,本件処分の通知書において,原告が別件訴訟の訴訟記録中の判決書を閲覧している旨の記載をされ,東京都板橋区個人情報保護条例(以下「本件個人情報保護条例」という。)に違 反し,訴訟に関する事務により入手した個人情報を原告の同意を得ることなく目的外利用されたことによりプライバシーを侵害されるなど,多大な精神的苦痛を被った。 原告の精神的苦痛を慰謝するための金額としては,10万円を下らない。 (被告の主張) ア本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は,前記(1)ないし (3)のとおり適法である。 イ民訴法上の閲覧制度によって既に公表されている情報が,非公開情報に当たらないとする最高裁判所の判例はない上,民訴法上の閲覧制度によって既に公表されているとしても,非公開情報に当たらないとはいえないとする裁判例が存在し,さらに,被告作成の情報公開・個人情報保護制度の 手引きの「氏名等を除いても,それ以外の部 の閲覧制度によって既に公表されているとしても,非公開情報に当たらないとはいえないとする裁判例が存在し,さらに,被告作成の情報公開・個人情報保護制度の 手引きの「氏名等を除いても,それ以外の部分の情報から特定の個人が推測できるものであれば,全体として非公開として扱う」との記載や,個人識別情報に関する多数の裁判例に従う限り,本件非公開部分を非公開とすべきという解釈が十分成り立ち得る状況において,別件訴訟原告の権利利益を侵害する可能性のある情報公開を実施することは不適切である。 したがって,処分行政庁に職務上の義務違反があるとはいえないから,本件非公開部分を非公開としたことにつき,国家賠償法1条1項にいう違法はないし,あったとしても過失がない。 ウ原告は,別件訴訟の訴訟記録を民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧している。したがって,原告は,別件訴訟記録中の判決書の内容を精査するこ とができるのであるから,損害を観念することができない。なお,原告は,本件処分の通知書に原告が別件訴訟記録中の判決書を閲覧している旨記載したことを本件個人情報保護条例に反する個人情報の目的外利用であると主張するものの,目的外利用には当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件条例6条1項2号該当性及び同号ただし書アの除外事由該当性)について(1)ア本件条例は,区民の公文書の公開を求める権利を保障することなどにより,区民と区政との信頼関係を深め,地方自治の本旨に即した区政を推進することを目的とし(1条),実施機関に対し,区政に関し区民に説明す る責務を十分に果たすよう本件条例を解釈し,運用するものとし(3条前 段),また,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを義務付け に関し区民に説明す る責務を十分に果たすよう本件条例を解釈し,運用するものとし(3条前 段),また,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを義務付けている(3条後段)。その上で,本件条例は,実施機関は,公開請求があったときは,非公開情報が記録されている場合を除き,当該公文書を公開しなければならない旨定め(6条),6条1項2号において,個人識別情報については,除外事由に当たらない限り, 非公開とするものとしている。その趣旨は,公文書の公開請求権と個人情報保護の権利利益は抵触する場合があり得ることから,情報公開によって得られる利益と公開されることにより私人が被る不利益との調整を図ろうとしたところにあると解される。 イ以上を前提に,本件条例6条1項2号についてみるに,同号が,特にい わゆるプライバシーに関する情報に限定することなく,個人に関する情報で特定の個人を識別し得るものについては,除外事由に当たらない限り非公開とするものと定めていること,3条後段が,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを実施機関に義務付けていることに鑑みれば,「個人に関する情報」とは,氏名,住所,生 年月日等の情報に限られず,心身の状況,親族関係,職歴,所得,財産の状況その他当該個人と関連性を有する一切の情報をいうと解するのが相当である。また,上記のように,3条後段が,実施機関は個人に関する情報がみだりに公にされないよう最大限の配慮をしなければならないとし,6条1項2号が,特定の個人が識別され得るか否かについて,当該公文書の 記載のみから判断する等の限定文言を付していないことからすれば,同号にいう「特定の個人が識別され得る」情報とは,当該情報単独で特定の個 が,特定の個人が識別され得るか否かについて,当該公文書の 記載のみから判断する等の限定文言を付していないことからすれば,同号にいう「特定の個人が識別され得る」情報とは,当該情報単独で特定の個人を識別することができるものに限られず,他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含むと解するのが相当である。 そして,本件条例に基づく公文書の公開請求は何人でもできるとされて いること(5条)からすると,当該個人と特定の関係にある者等ある特定の範疇に属する者からの公開請求が行われる可能性もあるから,個人情報の保護のためには,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とするだけでは足りず,ある特定の範疇に属する者が通常入手し得る情報についても照合対象とすべき場合があることは否定できない。もっとも,前記 のとおり,本件条例6条1項2号は,公文書の公開請求権と個人情報保護の権利利益の調整を図る規定であり,非公開情報が記録されていない限り実施機関は当該公文書を公開しなければならないとされていることからすると,照合対象とすべき他の情報が無限定に広がることは相当でない(被告作成の情報公開・個人情報保護制度の手引きにおいて,非公開情報につ き,「これを極めて限定的なものとして捉え,「原則公開」の精神に即して解釈・運用されなければならない」とされている(甲7)のも,これと同趣旨のことをいうものと解される。)。 したがって,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とすることにより,当該個人が識別される具体的可能性がある場合に加え,公開請 求に係る当該情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性 人が識別される具体的可能性がある場合に加え,公開請 求に係る当該情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性がある場合にも,当該情報は,本件条例6条1項2号にいう「特定の個人が識別され得るもの」に当たると解するのが相当である。 (2) 以下,本件について検討する。 ア別件訴訟原告の住所氏名について前提事実のとおり,本件非公開部分のうち別紙2の各b部分には別件訴訟原告の住所が,同各c部分には別件訴訟原告の氏名が記録されているところ,住所及び氏名が,「個人に関する情報」に当たることは明らかであるし,当該情報のみから別件訴訟原告という特定の個人を識別することが できることもまた明らかである。 したがって,別件訴訟原告の住所氏名は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たる。 イ別件訴訟原告の所有不動産に関する情報について前提事実のとおり,本件非公開部分のうち別紙1文書目録記載1(1)の文書の別紙1には,別件訴訟原告の所有不動産に関する情報(名称,構造, 所在,地積,家屋番号,床面積等の情報)が記録されているところ,これらの所有不動産に関する情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 また,不動産登記事項証明書は何人でも取得可能であるから(不動産登記法119条),上記情報については,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とすることにより,別件訴訟原告が識別される具体的可能 性があるといえる。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たる。 ウ事件番号(ただし,号数字部分)について前提事実のとおり,本件非公開部分のうち別紙2 あるといえる。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たる。 ウ事件番号(ただし,号数字部分)について前提事実のとおり,本件非公開部分のうち別紙2の各a部分には,別件 訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)が記録されている。 ここで,事件番号は,各裁判所において事件を受理した場合に,当該事件を受理した日の属する年の元号及び年数,当該事件の種類ごとに付される記録符号並びに記録符号ごとに付される一連番号によって表示される識別番号であり,一つの裁判所において同一の事件番号が重複して付される ことはないから,当該事件が係属する裁判所名が判明している場合,その事件番号が判明すれば,当該事件を特定することが可能である。そして,別件訴訟は,個人である別件訴訟原告と被告との間の訴訟であるところ,個人を当事者とする裁判所で受理する事件においては,個人又は法人の紛争につき,当事者又は関係者等の個人の様々な活動の内容や状況等の内容 が主張書面や書証又は人証としての供述等により訴訟記録に記録されるこ ととなるから,事件番号は,このような事件を識別するための番号として,個人と関連性を有する情報といえる。そうすると,事件番号は,「個人に関する情報」といえる。 そして,本件処分により,別件訴訟の第一審及び控訴審の係属する各裁判所名,元号及び年数並びに事件種類を示す記録符号は明らかとされてい るから,非公開とされた号数字が判明すれば,別件訴訟を特定することができる。そうすると,何人も,裁判所書記官に対して,訴訟記録の閲覧を請求することができる(民訴法91条1項)ことからすれば,別件訴訟の特定が可能となり,訴訟記録の閲覧が現実的に可能となり得るという点で,別紙2の各a部分に記 ,裁判所書記官に対して,訴訟記録の閲覧を請求することができる(民訴法91条1項)ことからすれば,別件訴訟の特定が可能となり,訴訟記録の閲覧が現実的に可能となり得るという点で,別紙2の各a部分に記録された事件番号(ただし,号数字部分)について は,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とすることにより,別件訴訟原告が識別される具体的可能性があるといえる。 したがって,本件非公開部分のうち,別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たる。 エ本件非公開部分のうち,別紙文書目録記載2(5)の部分(以下「本件非公 開部分のその余の部分」という。)に記録された情報について(ア) 本件非公開部分のその余の部分には,少なくとも,別件訴訟において争われた,別件訴訟原告と被告との間の法的紛争に関する情報が記録されているものと認められるから,「個人に関する情報」に当たるといえる。 もっとも,別件訴訟原告の住所氏名及び所有不動産に関する情報並びに別件訴訟の事件番号を非公開とすれば,別件訴訟の法的紛争の内容,これに関する両当事者の主張,裁判所の認定事実及び判断内容等,通常判決書に記録されていると認められる情報が公開されたとしても,特段の事情のない限り,当該情報自体から,特定の個人を識別することはで きないと考えられる。 この点,被告は,別件訴訟原告の経歴等(別件訴訟原告の経歴,別件訴訟原告と被告との間で発生した事実,被告が別件訴訟原告について,又は別件訴訟原告に対してした行為の内容,別件訴訟原告が体験した事実)に関する情報が記録されていると主張するが,被告主張の情報が記録されているとしても,これらの情報が,これ自体から別件訴訟原告を 又は別件訴訟原告に対してした行為の内容,別件訴訟原告が体験した事実)に関する情報が記録されていると主張するが,被告主張の情報が記録されているとしても,これらの情報が,これ自体から別件訴訟原告を 識別し得るほどに別件訴訟原告特有のものであることについては,何ら具体的な主張立証がない。そうすると,本件非公開部分のその余の部分に上記別件訴訟原告の経歴等の情報が記録されているとしても,当該情報単独で,別件訴訟原告を識別することができる特段の事情があるものとは認められない。 以上のとおり,本件非公開部分のその余の部分については,当該情報単独で特定の個人を識別することができる情報が記録されていると認めることはできない。そこで,本件非公開部分のその余の部分について,他の情報と照合することによって別件訴訟原告を識別することが可能な情報が記録されているかについて,更に検討する。 (イ) まず,本件非公開部分を含む本件請求対象文書の公開経過から判明するのは,別件訴訟が,第一審は東京地方裁判所に,控訴審は東京高等裁判所に係属し,第一審は平成28年1月26日に,控訴審は平成28年9月1日に,それぞれ判決の言渡しがなされ,第一審は「行ウ」,控訴審は「行コ」の記録符号の付された,被告を当事者(被告ないし被控 訴人)とする「損害賠償請求事件」ないし「損害賠償請求控訴事件」との事件名の付された事件であること,提訴日が平成26年に,控訴審係属日が平成28年に,それぞれ属すること,別件訴訟原告と被告との間で争われた法的紛争の内容,これに関する両当事者の主張,裁判所の認定事実及び判断内容等であると認められる。 そして,本件において,被告との間で当該法的紛争を抱えていたのが, 別件訴訟原告のみ,あるいは別件 に関する両当事者の主張,裁判所の認定事実及び判断内容等であると認められる。 そして,本件において,被告との間で当該法的紛争を抱えていたのが, 別件訴訟原告のみ,あるいは別件訴訟原告を含む極少数の者のみであるといった特殊性を示す事情は証拠上認められない。また,東京地方裁判所及び東京高等裁判所に係属した事件であること,判決日,事件名,提訴時期,控訴審係属時期,被告が一方当事者となっていること等の情報についても,これらを手掛かりとして別件訴訟そのものを特定し得るほ どに別件訴訟に特有の情報とはいえないし,そうであれば,これらの情報と一般人が知り得る他の情報とを照合することによって別件訴訟原告が識別され得るともいい難い。以上からすると,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報は,一般人が知り,あるいは知り得る情報と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得るものということはできな い。 この点,被告は,開廷表の情報は何人でも取得することができること,民訴法上,何人でも訴訟記録の閲覧を請求することができると規定されていることを根拠に,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報は,一般人が知り得る情報に当たると主張する。しかしながら,開廷表は,一 般に,当該事件の口頭弁論等の期日が開かれる当日に,裁判所庁舎の受付付近及び法廷付近等一定の場所に限って閲覧の用に供されるものにすぎず,開廷表の情報が一般人の入手可能な情報であるとはいえない。また,訴訟記録を民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧するためには,通常は当事者名や事件番号等により当該事件を特定して閲覧請求をする必要 があり,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報は,訴訟記録の閲覧請求において,事件を特定するために用いられているものではな 事者名や事件番号等により当該事件を特定して閲覧請求をする必要 があり,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報は,訴訟記録の閲覧請求において,事件を特定するために用いられているものではなく,そして,このような特定のための情報を別件訴訟につき一般人が有していることをうかがわせる事情も認められないことからすると,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報が,一般人の知り得る情報に当た るとの被告の主張は採用できない。 (ウ) そこで次に,公開請求に係る当該情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性があるといえるか否かについて検討する。 この点,別件訴訟原告の同僚や近隣住民等別件訴訟原告と特定の関係 にある者を想定してみても,別件訴訟原告から別件訴訟に関する情報を知らされない限り,通常は別件訴訟のことを知ることはできないのであるし,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報は,別件訴訟原告と被告との間の法的紛争の内容を含むものではあるものの,前記のとおりこれが別件訴訟原告に特有のものであることを認めるに足りる証拠 もないことからすれば,上記特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な一定の情報(例えば,別件訴訟原告の住所地,経歴等の情報)と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 被告は,本件非公開部分の文字列と,ある者が別件訴訟の訴訟記録を 閲覧して得た別件訴訟の判決書の文字列を比較することにより,別件訴訟原告を識別することができるから,本件非公開部分のその余の部分を含む本件非公開部分に記録された情報全体が,個人識別情報に当たる旨主張する。 得た別件訴訟の判決書の文字列を比較することにより,別件訴訟原告を識別することができるから,本件非公開部分のその余の部分を含む本件非公開部分に記録された情報全体が,個人識別情報に当たる旨主張する。しかしながら,別件訴訟の訴訟記録の情報を得た特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分のその余の部分に記録された別 件訴訟原告に係る情報が特定の個人に係る情報であることを識別することができるとしても,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報からは,別件訴訟原告を識別することはできないのであって,既に別件訴訟につきより詳細な情報を知る又は知り得る立場にある上記のような特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分のその余の部分に記 録された情報により,特定の個人が識別され得る新規の有意な情報が付 加されるものではない。そうであるとすると,前記(1)アで述べた本件条例の趣旨に照らし,上記のような特定の範疇に属する者の有する情報を,公文書に記録された個人に関する情報が特定の個人が識別されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではないというべきである。 被告は,本件公開請求を実施した者やその者から情報提供を受けた者は,判決書中の文字列を比較するという方法を用いるまでもなく,その有する情報と照合し,別件訴訟原告を識別することができるとも主張する。しかしながら,その前提とするところは,これらの者が,既に別件訴訟の判決書を閲覧しており,別件訴訟原告の住所氏名を知っているか, あるいは,開廷表から別件訴訟の事件番号を知っており,判決書の閲覧が可能であるというところにある。そうすると,上記説示したところと同様の理由から,これらの者の有する情報を,公文書に記録された個人に関する情報が特定 から別件訴訟の事件番号を知っており,判決書の閲覧が可能であるというところにある。そうすると,上記説示したところと同様の理由から,これらの者の有する情報を,公文書に記録された個人に関する情報が特定の個人が識別されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではないから,被告の主張は失当で ある。 その他,本件非公開部分のその余の部分につき,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性のある情報が記録されていることを認めるに足りる主張立証はない。 (エ) したがって,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報は,本件条例6条1項2号にいう「個人に関する情報」には当たるものの,当該情報単独で特定の個人を識別することはできず,また,他の情報と照合したとしても,特定の個人である別件訴訟原告を識別し得るものとはいえないから,「特定の個人が識別され得るもの」に当たらない。 (オ) なお,処分行政庁は,原告が別件訴訟の訴訟記録を閲覧しており, それにより得た情報と照合し,別件訴訟原告を識別することができるから,本件非公開部分に記録された情報は本件条例6条1項2号に該当する旨を予備的に本件処分の根拠としており(甲6),被告は,本件訴訟において同様の主張をしている。 しかしながら,前記(ウ)で検討したとおり,別件訴訟の訴訟記録の情 報を得た特定の範疇に属する者の有する情報を,公文書に記録された個人に関する情報が特定の個人が識別されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではなく,これに加え,本件条例に基づく公文書の公開請求は何人でもすることが可能であり(5条),非公開情報に当たるか否かの判断は, されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではなく,これに加え,本件条例に基づく公文書の公開請求は何人でもすることが可能であり(5条),非公開情報に当たるか否かの判断は,当該情報の内容や性質等に照らし て客観的に判断されるものであって,開示請求者固有の事情によって左右されることはないから,同主張は採用できない。 (3) 本件条例6条1項2号ただし書ア該当性についてア本件条例6条1項2号ただし書アは,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報を非公開情報から除外 している。これは,法令の規定により公にされている情報や,慣行として公にされている情報は,一般に公表されている情報であり,これを公開することにより,場合により個人のプライバシーと抵触することがあり得るとしても,受忍すべき範囲にとどまると考えられることから,これを例外的に公開することとしたものと解される。 そうすると,本件条例6条1項2号ただし書アにいう「法令の規定」とは,何人に対しても等しく情報を公開することを定めている法令のことをいい,「慣行」とは,公にすることが慣習として行われていることをいい,「公にされ…ている情報」とは,現に一般人が知り得る状態に置かれている情報をいうものと解するのが相当である。 イ前記のとおり,別件訴訟原告の住所氏名及びその所有不動産に関する情 報並びに別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に該当するところ,これらの情報は,民訴法上の閲覧制度を利用すれば,別件訴訟の訴訟記録に編綴された判決書を閲覧することで,入手可能である。そこで,これらの情報については,本件条例6条1項ただし書アの該当性が問題と ,これらの情報は,民訴法上の閲覧制度を利用すれば,別件訴訟の訴訟記録に編綴された判決書を閲覧することで,入手可能である。そこで,これらの情報については,本件条例6条1項ただし書アの該当性が問題となり得る。 この点,民訴法は,91条1項において,原則として訴訟記録を公開し,何人も閲覧を請求できるとしているものの,他方において,個人のプライバシー等当事者の秘密保持の利益と裁判の公開原則との調整を図るため,一定の場合に,閲覧等の請求主体や請求対象に限定を付すことを予定している(91条2項,92条)。 また,通常,訴訟記録を民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧するためには,当事者名や事件番号等により当該事件を特定して閲覧請求をする必要があるところ,この特定のための情報は,前記のとおり,一般人が知り得るものということはできない。 以上の事情を考慮すると,訴訟記録は,「法令等の規定により又は慣行 として公にされ,又は公にすることが予定されている」ものということはできないというべきである。 したがって,別件訴訟原告の住所氏名及びその所有不動産に関する情報並びに別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)は,本件条例6条1項2号ただし書アの除外事由に該当しない。 (4) 小括以上によれば,本件非公開部分に記録された情報のうち,別件訴訟原告の住所氏名及びその所有不動産に関する情報並びに別件訴訟の事件番号(ただし,号数字部分)は,本件条例6条1項2号の「個人に関する情報(〔括弧内略〕)で特定の個人が識別され得るもの」に該当し,かつ,同号ただし書 アの除外事由に該当しないから,本件処分のうち,これらの情報に係る部分 (別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)部分)を非公開とした部分は,そ され得るもの」に該当し,かつ,同号ただし書 アの除外事由に該当しないから,本件処分のうち,これらの情報に係る部分 (別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)部分)を非公開とした部分は,その余の点について判断するまでもなく適法である。 一方,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報については,「特定の個人が識別され得るもの」に当たらないから,本件条例6条1項2号所定の非公開情報に当たらない。 2 争点(2)(本件条例6条1項6号該当性)について被告は,本件非公開部分のうち,別紙2の各f部分に記録された情報が,本件条例6条1項6号所定の非公開情報に当たると主張する。 しかしながら,前記の本件条例の目的(1条),本件条例が実施機関に対し,区政に関し区民に説明する責務を十分に果たすよう本件条例を解釈し,運用す るものとし(3条前段),何人も公文書の公開を請求することができると定め(5条),実施機関に対して,非公開情報が記録されている場合を除き,公文書を公開することを義務付けていること(6条1項)を考慮すれば,本件条例6条1項6号にいう「支障」とは,実質的なものである必要があり,「おそれ」の程度も,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が必 要というべきである。 そうしたところ,被告は,極めて抽象的な主張をするのみであり,実質的な支障の内容について,何ら具体的に主張立証をしないし,当該支障が生じる蓋然性についても,何ら具体的に主張立証しない。 以上に照らせば,本件非公開部分のうち,別紙2の各f部分に記録された情 報が,本件条例6条1項6号所定の非公開情報に当たるとの被告の主張は採用できない。 3 争点(3)(本件条例6条2項に基づく部分公開の義務の有無)について ,別紙2の各f部分に記録された情 報が,本件条例6条1項6号所定の非公開情報に当たるとの被告の主張は採用できない。 3 争点(3)(本件条例6条2項に基づく部分公開の義務の有無)について(1) 本件条例6条2項は,実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報が記録された部分とそれ 以外の部分とを容易に,かつ,公文書の公開を求めるものの請求の趣旨を失 わない程度に合理的に分離できるときは,当該非公開情報が記録された部分以外の部分を公開しなければならない旨を定めている。これは,公文書の一部に非公開情報が記録されている部分が含まれているとしても,当然に全体を非公開とするのではなく,部分公開ができる部分についてはこれを公開すべきものとしたものと解される。 そして,本件条例6条2項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報の中に非公開情報に該当するものがあるときは,当該情報を除いたその余の部分についてのみ,これを開示することを実施機関に義務付けているものであり,非公開情報に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を公開し,その余の 部分にはもはや非公開情報が記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。 また,上記独立した一体的な情報をどの範囲でとらえるのかについては,当該情報が記録された公文書の目的・性質,内容,取得原因,名義,形状等を総合的に考慮した上で,非公開情報を定める本件条例6条1項各号の規定 の趣旨に照らし,社会通念に従って個別具体的に判断するのが相当であると解される。 本件請求対象文書は,判決書正本であって 合的に考慮した上で,非公開情報を定める本件条例6条1項各号の規定 の趣旨に照らし,社会通念に従って個別具体的に判断するのが相当であると解される。 本件請求対象文書は,判決書正本であって,その記載内容は,①事件の特定に係る部分,②当事者の特定(氏名,住所等)に係る部分,③主文,④当事者の主張に係る部分,⑤事実認定に係る部分,⑥法的判断に係る部分等の それぞれ有意な部分に容易に区分できるものであり(民訴法253条参照),かつ,④ないし⑥の部分についても,一般論を述べる部分や具体的な対象を特定し具体的な事実や当てはめを述べる部分等のそれぞれ有意な部分に区分され,また,ひとまとまりの事実経過ごと,各争点ごとにもそれぞれ有意な部分に区分されるものであって,判決書正本に記録された全ての情報を独立 した一体的な情報であると解することは社会通念に照らしておよそ採用でき ないものである。そして,別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)の部分に記録された情報は個人識別情報に当たるものであるところ,上記のような判決書正本の内容や形状等に照らせば,同目録記載(5)の部分に記録された情報とは別に,それぞれが独立した一体的な情報であるということに何ら支障はないというべきである。被告の主張は,本件請求対象文書についての独立した一 体的な情報の範囲の捉え方を誤るものであるから,採用できない。 (2) 次に,前記のとおり,本件請求対象文書のうち別紙1記載2(1)ないし(4)部分には,本件条例6条1項2号所定の非公開情報が記録されているが,本件請求対象文書は書面であるから,上記情報が記録されている頁を複写して上記情報が記録されている部分にマスキングを施し,更にこれを複写すると いった方法等により,非公開情報とその余の部分を容易に分 請求対象文書は書面であるから,上記情報が記録されている頁を複写して上記情報が記録されている部分にマスキングを施し,更にこれを複写すると いった方法等により,非公開情報とその余の部分を容易に分離することができるといえる。 また,別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)部分の記載を除いても,本件請求対象文書には,有意な情報が記録されているから,本件請求対象文書の公開請求の趣旨が失われるとは考え難い。 そうすると,本件請求対象文書については,同条2項にいう「公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報とそれ以外の部分とを容易に,かつ,公文書の公開を求めるものの請求の趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に当たるといえる。 被告は,文脈が不明になったり,本来の文脈と異なるものになったりしな いように部分公開を行うことは容易でないなどと主張するが,本件請求対象文書において非公開情報が記録されていると認められるのは別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)部分のみであり,これらを非公開とし,その余の部分を公開したとしても,別件訴訟の判決書の文脈が不明になったり,本来の文脈と異なるものになったりするとはおよそ考え難いから,被告の主張は前提を 欠く。 以上によれば,処分行政庁は,同条項により,本件非公開部分のその余の部分について,公開すべきであったといえる。 4 小括以上によれば,本件処分のうち,別紙1文書目録記載2(1)ないし(4)の部分を非公開とした部分は適法であるが,本件非公開部分のその余の部分(同(5)部 分)を非公開とした部分は違法である。 5 争点(4)(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の可否)について(1) 前記1ないし3によれば,処分行政 件非公開部分のその余の部分(同(5)部 分)を非公開とした部分は違法である。 5 争点(4)(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の可否)について(1) 前記1ないし3によれば,処分行政庁は,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報についての本件条例6条1項2号該当性及び同条項6号該当性の判断並びに同条2項に基づく部分公開の義務の有無についての判断を 誤ったものといえるところ,条例に基づく公開請求を受けた実施機関やその職員が,公開請求に対して誤った判断をした場合,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではないが,当該職員等が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該判断をしたと認め得るような事情がある場合には,当該職員等の行為は,上記評価 を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号,第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁平成17年(受)第530号同18年4月20日第一小法廷判決・裁判集民事220号165頁参照)。 そこで検討するに,本件条例6条1項2号該当性については,被告の主張 する判断手法(処分行政庁も,この判断手法に則って本件処分を行ったものである(甲6)。)は,既に別件訴訟につきより詳細な情報を知る又は知り得る立場にある者にとって,非公開部分が公開されたとしても,特定の個人が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではないにもかかわらず,このような特定の範疇に属する者の有する情報を照合対象とする点で,本件 条例の趣旨目的に反するものであること,上記手法を是認する裁判例や学説 は見当たらないこと,他の自治体における判決書の情報公開の取扱いと比較しても,極めて広範囲の 対象とする点で,本件 条例の趣旨目的に反するものであること,上記手法を是認する裁判例や学説 は見当たらないこと,他の自治体における判決書の情報公開の取扱いと比較しても,極めて広範囲の部分を非公開とするものであること(甲8の1ないし8の3,9,17の2,17の3,18の1,18の2,19の1,20の2,20の3)などからすれば,処分行政庁は,通常尽くすべき注意義務を尽くせば,上記手法が不合理なものであることを知り得たというべきであ る。また,本件処分においては,予備的に,原告が別件訴訟の訴訟記録中の判決書を閲覧したという開示請求者である原告固有の事情をも,同号に該当することの根拠とされているが(甲6),前記のとおり,非公開情報該当性は,当該情報の内容や性質等に照らし客観的に判断されるべきであり,開示請求者固有の事情によって左右されるものでないことは明らかであり,この 点の処分行政庁の判断は,明らかな誤りである。 次に,同条項6号該当性については,被告は何ら具体的な主張立証をしておらず,処分行政庁がこれに該当すると判断したことについて,合理的な理由があったことはうかがわれない。 さらに,部分公開の義務については,これに関する最高裁判所判例や下級 審裁判例の中に,被告主張のような極めて広範囲の情報をひとまとまりとして独立した一体的な情報と捉えたものは見当たらず,処分行政庁は,最高裁判所判例等の事案を十分検討することなく,安易に本件にこれを適用したものと推認される。 以上の事情を総合すれば,処分行政庁は,職務上の注意義務を尽くすこと なく,漫然と上記誤った判断を行ったものと認められる。 したがって,処分行政庁の上記行為は,国家賠償法1条1項にいう違法なものというべきである。 (2) 職務上の注意義務を尽くすこと なく,漫然と上記誤った判断を行ったものと認められる。 したがって,処分行政庁の上記行為は,国家賠償法1条1項にいう違法なものというべきである。 (2) 原告は,上記違法行為により,理由なく公文書の公開を妨げられないという利益を侵害され,本件訴訟を提起せざるを得なくなり,これによって精神 的苦痛を受けたといえる。公文書公開請求権の性質に加え,本件処分の内容 や本件訴訟に至る経緯,処分行政庁が必要性もないのに,原告が別件訴訟記録中の判決書を閲覧したとの個人情報を使用したこと等,本件に現れた一切の諸事情を考慮すると,その精神的苦痛を慰謝するための金額としては,1万円が相当というべきである。 なお,被告は,原告が既に別件訴訟の訴訟記録中の判決書を閲覧している として,損害を観念できないと主張する。しかしながら,民訴法上の閲覧制度と本件条例に基づく情報公開請求は全く異なる制度であり,民訴法上の閲覧制度を利用して別件訴訟の訴訟記録中の判決書を閲覧していたとしても,理由なく公文書の公開を妨げられないという上記利益が失われるものと解することはできないし,精神的苦痛を被っていないということもできないから, 被告の主張は理由がない。 (3) よって,原告の被告に対する国家賠償請求は,1万円及びこれに対する違法行為の日である平成29年12月11日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 第4 結論 よって,原告の請求は,主文第1項及び第2項の限度で理由があるから,これらを認容し,その余はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法64条本文,61条を,仮執行宣言に 第1項及び第2項の限度で理由があるから,これらを認容し,その余はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法64条本文,61条を,仮執行宣言につき行政事件訴訟法7条,民訴法259条1項をそれぞれ適用し,仮執行免脱宣言につき同条3項を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官林 俊之 裁判官小川弘持 裁判官三貫納 有子(別紙2省略) (別紙1)文書目録 1(1) 東京地方裁判所平成28年1月26日判決(損害賠償請求事件)に係る判決文 (2) 東京高等裁判所平成28年9月1日判決(損害賠償請求控訴事件)に係る判決文 2 1(1),(2)のうち,以下に掲げる部分(1) 事件番号(ただし,号数字部分)が記録された部分(別紙2の各aの部 分)(2) 当該訴訟の原告(控訴人)の住所が記録された部分(別紙2の各bの部分)(3) 当該訴訟の原告(控訴人)の氏名が記録された部分(別紙2の各cの部分) (4) 別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有不動産に関する情報(名称,構造,所在,地積,家屋番号,床面積等の情報)が記録された部分(5) 別紙2のうち上記(1)ないし(4)部分を除く黒塗り部分 以上

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る