昭和48(う)748 業務上過失傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和49年5月29日 福岡高等裁判所
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判決文本文6,722 文字)

主文 原判決を破棄する。被告人を罰金八万円に処する。右罰金を完納することができないときは、金一〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。原審における訴訟費用のすべては、被告人の負担とする。理由 本件控訴の趣意は、弁護人田島昭彦が差し出した控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これを引用し、これに対し次のとおり判断する。控訴趣意第一点について。所論は、原判決において、被告人は普通貨物自動車を運転し、時速約五〇キロメートルで進行中、進路前方の横断歩道を左側から右側に小児用自転車を押して横断していたAと小児用自転車にまたがり、同人に追従してまさに右横断歩道を横断しようとし、その手前に佇立していた同人の弟B(当時九歳)を進路前方約四五メートルの地点に発見したのであるから、横断歩道の直前で一時停止し、または徐行してその通過を待つて進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、前記速度で進行した過失により、右横断歩道上を自転車に乗つて進行していたBに自車を接触転倒させて、その結果同人に対し傷害を負わせたと認定し、業務上過失傷害罪に問擬したけれども、Bが乗つていた自転車は「小児用の車」ではないから、道路交通法二条一項一一号にいう「軽車両」にあたるところ、同人の進行した横断道路に対し、被告人の進行した道路は優先道路にあたるから、被告人には一時停止義務も徐行義務もなく、従つて過失はないので、業務上過失傷害罪が成立するはずはなく、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。そこで、原判決挙示の関係証拠に当審における事実取調の結果を合わせて検討すると、次のような事実を肯認することができる。被告人は、昭和四八年四月三日 の明らかな事実の誤認がある、というのである。そこで、原判決挙示の関係証拠に当審における事実取調の結果を合わせて検討すると、次のような事実を肯認することができる。 立するはずはなく、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。そこで、原判決挙示の関係証拠に当審における事実取調の結果を合わせて検討すると、次のような事実を肯認することができる。被告人は、昭和四八年四月三日 の明らかな事実の誤認がある、というのである。そこで、原判決挙示の関係証拠に当審における事実取調の結果を合わせて検討すると、次のような事実を肯認することができる。被告人は、昭和四八年四月三日午後四時一〇分ごろ、普通貨物自動車を運転し、原判示の幅員約一一・八メートルの国道を矢上方面(南方)から諌早市方面(北方)に向かい時速約五〇キロメートルで進行し、西方から右国道に接する幅員の明らかに狭い道路が右国道とほぼ直角に交差する、交通整理の行なわれていない三差路の北側に設置された横断歩道の約四五メートル手前に差しかかつた。そして被害者の実兄A(当時一一歳九か月で小学校六年生)が右横断歩道の左側端から約五メートル右方の地点を左側から右側に二輪自転車を押して横断中であり、かつ右横断歩道のすぐ左側において、屡々小学校中学年(三、四年)の児童が使用し、機械式ブレーキの作動をもち、タイヤ直径二二インチの、側車(道路運送車両法施行令一条参照)のつかない二輪自転車(長さ一・五メートル、幅〇・四八メートル、高さ〇・八六メートル、車名ヨコタ)にまたがり、佇立していた同人の弟B(当時九歳八か月。小学校四年生)を発見したのである。以上の状況にかんがみると、児童たるBがAに追従し自転車に乗つて横断歩道上を左側から右側に横断進行するおそれのあることも予見されるべきであつたのに、被告人はBにおいて自車の通過を待つてくれるものと軽信し、徐行もせず、また横断歩道の手前で一時停止することもなく、前記速度のまま進行したため、右横断歩道を自転車に乗つて横断進行中のBを約三五・七メートル手前に接近して発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上において、自車左側ガソリンタンク付近を同人の自転車に衝突させて、同人を路上に転倒させ、よ ル手前に接近して発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上において、自車左側ガソリンタンク付近を同人の自転車に衝突させて、同人を路上に転倒させ、よつて同人に対し加療約二か月間を要する頭蓋骨々折、右脛骨折の傷害を負わせた。 衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上において、自車左側ガソリンタンク付近を同人の自転車に衝突させて、同人を路上に転倒させ、よ ル手前に接近して発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上において、自車左側ガソリンタンク付近を同人の自転車に衝突させて、同人を路上に転倒させ、よつて同人に対し加療約二か月間を要する頭蓋骨々折、右脛骨折の傷害を負わせた。右認定の事実については原記録の各証拠を精査し、かつ当審における事実取調の結果を検討してみても、これが誤認であることを疑わしめるにたるものを発見することはできない。ところで、原判決は被害者Bが乗つていた二輪自転車を道路交通法二条一項一一号および同条三項一号にいう「小児用の車」にあたると解したのに対して、所論は、同車を「小児用の車」と目すべきではなくて、右は軽車両にあたると主張するので、原判決の判断が正しいかどうかについて考えてみよう。道路交通法一四条三項において、「児童(六歳以上十三歳未満の者をいう。以下同じ。)……幼児(六歳未満の者をいう。以下同じ。)……」と規定し、「児童」および「幼児」について定義をしているけれども、同法二条一項一一号および同条三項一号にいう「小児用の車」、またその「小児」については何らの定義を与えていないのである。もつとも「小児用の車」または「小児」という用語が社会的に熟した言葉であるかというに、当審で取り調べた、自転車商Cの検察官に対する供述調書および当審証人D(長崎県警察本部交通指導課長)の供述によると、自転車メーカーは通例直径一六インチ以下の自転車を「幼児用自転車」、直径一六インチをこえ、二四インチ以下のものを「子供用自転車」と称しているが、「小児用の車」ないし「小児用の自転車」という呼称は使用されていないことが認められ、他方、一般に「小児」という言葉も極めて多義的ないし限界が不明確であることは公知の事実である。従つて、「小児 が、「小児用の車」ないし「小児用の自転車」という呼称は使用されていないことが認められ、他方、一般に「小児」という言葉も極めて多義的ないし限界が不明確であることは公知の事実である。従つて、「小児用の車」または「小児」という文言自体からその内容を明らかにすることはできない。そこで、翻つて、道路交通法二条一項一一号が「小児用の車」を軽車両から除外し、同条三項一号が「小児用の車を通行させている者」を歩行者とした所以を考えるのに、同じく自転車の類型に入るものであつても、「小児用の車」にあたれば、これに乗つて進行している者は歩行者とされ、従つて、歩道等(同法一〇条一項参照)と車道の区別のある道路においては歩道等を通行しなければならず、右区別のない道路においては道路の右側端に寄つて通行しなければならない(同法一〇条一、二項)のに対し、「小児用の車」にあたらなければ、軽車両とされ、従つて、歩道等と車道の区別のある道路においては車道を通行しなければならず、かつ道路(右区別のある道路においては、車道)の中央から左の部分を通行しなければならないのである(同法一七条一、三項、二条一項八号)。 ある道路においては歩道等を通行しなければならず、右区別のない道路においては道路の右側端に寄つて通行しなければならない(同法一〇条一、二項)のに対し、「小児用の車」にあたらなければ、軽車両とされ、従つて、歩道等と車道の区別のある道路においては車道を通行しなければならず、かつ道路(右区別のある道路においては、車道)の中央から左の部分を通行しなければならないのである(同法一七条一、三項、二条一項八号)。ところで、道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ることを目的としているから(同法一条)、同法二条一項一一号および同条三項一号の定める「小児用の車」ないしこれにいう「小児」の意味づけは右目的に即して、すなわち当該種類の自転車自体のもつ機能効用および他に与える危険性と右自転車を使用する年令の者の安全性および他に与える危害性との双方から定められなければならない。<要旨>側車のつかない、直径二二インチの本件二輪自転車は、大人用の直径二六インチの自転車に近い速度をも</要旨>ち、かつ惰力行進をするから、同車が人車等に衝突すると一般の歩行者が ればならない。<要旨>側車のつかない、直径二二インチの本件二輪自転車は、大人用の直径二六インチの自転車に近い速度をも</要旨>ち、かつ惰力行進をするから、同車が人車等に衝突すると一般の歩行者が危害を受け、また当該自転車の運転者自身にもたらされる危険も大きいので、これを防止するために機械式ブレーキが設置されているし、そのような性質、機能に徴し一般の歩行者の安全と交通の円滑を図るため歩道等と車道の区別のある道路においては車道を通行させ、かつ道路(右区別のある道路においては、車道)の中央から左の部分を通行させるのを相当とするのである。もつとも、右の二輪自転車が道路交通法にいう軽車両、従つて車両として扱われることになると、歩行者として扱われる場合に比し、一般歩行者が受ける危険は減少する反面、その運転者自身の受ける危険が増すことになるわけであるけれども、この種の自転車は小学校中学年(三、四年)の児童が使用し、本件でも現実に当時九歳八か月の小学校四年の児童が使用していたのであるから、同人らは、通常有する健康な体力と学校および家庭で受けた交通の危険に関する訓戒、訓練とにより、道路の状況により同車を押して歩行者として進むか、これに乗つて車道で運転するかどうかを判断する能力はあり、またこれを車道で運転する際に伴う危険発生を避けるに必要な注意をするだけの弁識能力も備えていると解されるのである。 )の児童が使用し、本件でも現実に当時九歳八か月の小学校四年の児童が使用していたのであるから、同人らは、通常有する健康な体力と学校および家庭で受けた交通の危険に関する訓戒、訓練とにより、道路の状況により同車を押して歩行者として進むか、これに乗つて車道で運転するかどうかを判断する能力はあり、またこれを車道で運転する際に伴う危険発生を避けるに必要な注意をするだけの弁識能力も備えていると解されるのである。以上の理由から本件二輪自転車は、道路交通法二条一項一一号および同条三項一号にいう「小児用の車」にはあたらず、同法にいう「軽車両」にあたると解するのが相当である。従つて、本件自転車を同法にいう「小児用の車」と解した原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認したものであり、かつ被害者が歩行者であつたか、あるいは車両の運転者であつたかは、犯情として影響す 従つて、本件自転車を同法にいう「小児用の車」と解した原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認したものであり、かつ被害者が歩行者であつたか、あるいは車両の運転者であつたかは、犯情として影響するところも大きいから、論旨は理由がある。よつて、量刑不当の控訴趣意に対する判断は自判の際に譲ることとし、刑訴法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書の規定に従い、更に自ら次のように判決する。(罪となるべき事実)被告人は、貨物自動車の運転業務に従事していたものであるが、昭和四八年四月三日午後四時一〇分ごろ、普通貨物自動車を運転し、長崎市a町b番地先の、幅員約一一・八メートルの国道を矢上方面から諫早市方面に向かい時速約五〇キロメートルで進行した際、進路前方約四五メートルの横断歩道の左側端から約五メートル右方の地点を左側から右側に二輪自転車を押して歩行横断していたA(当時一一歳九か月)と右横断歩道のすぐ左側において小学校中学年(三、四年)の児童が使用する、タイヤ直径二二インチの二輪自転車にまたがり、佇立していた同人の弟B(当時九歳八か月)を発見したのであるが、右状況に照らし、児童たる同人が軽車両たる自転車に乗つたままAの後方から横断歩道を左側から右側に横断進行するおそれのあることが予見されたので、被告人としては徐行をするか、または横断歩道の手前で一時停止して、Bが横断歩道を通過するのを待ち、安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、前記速度のまま進行した過失により、横断歩道の約三五・七メートル手前に接近したころ、同人が横断歩道を自転車に乗つて横断進行しているのを発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上の左側端から約六・六メートル右方の地点 るか、または横断歩道の手前で一時停止して、Bが横断歩道を通過するのを待ち、安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、前記速度のまま進行した過失により、横断歩道の約三五・七メートル手前に接近したころ、同人が横断歩道を自転車に乗つて横断進行しているのを発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上の左側端から約六・六メートル右方の地点 接近したころ、同人が横断歩道を自転車に乗つて横断進行しているのを発見し、加速するとともにハンドルを右に切つて同人との衝突を避けようとしたが及ばず、横断歩道上の左側端から約六・六メートル右方の地点で同車に自車左側ガソリンタンク付近を衝突させて同人を路上に転倒させ、よつて同人に対し加療約二か月間を要する頭蓋骨々折、左脛骨々折の傷害を負わせたものである。(証拠の標目)(省略)(法令の適用)被告人の判示所為は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するので、所定刑中罰金刑を選択して処断すべきところ、被告人は、前示のように、普通貨物自動車を運転し、横断歩道の約四五メートル手前の地点に接近した際、九歳の児童たる被害者がタイヤ直径二二インチの自転車に乗つて横断歩道を横断するおそれのあることが予見されたにもかかわらず、徐行または一時停止することなく時速約五〇キロメートルで進行した過失により、同車に自車を衝突させて同人に加療約二か月間を要する頭蓋骨々折等の傷害を負わせたこと、被害者に対し慰藉の方法は講ぜられていないことなどに徴すると、被告人の刑責は軽視できないものがあるけれども、他方被害者にも「軽車両」の運転者として車道上の交通を注視せず、また被告人車の警笛にも気付かずに漫然と進行し、突嗟の場合にブレーキをかけて衝突を未然に防がなかつた落度があつたこと、被告人には五〇歳の今日に至るまで前科がないことなど所論が指摘する被告人に有利な情状を斟酌したうえ、所定金額の範囲内で被告人を罰金八万円に処するを相当とし、なお右罰金を完納することができないときは刑法一八条により金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、また訴訟費用のうち原審における分は刑訴法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとして、主文のとおり判決す いときは刑法一八条により金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、また訴訟費用のうち原審における分は刑訴法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとして、主文のとおり判決する。 ないときは刑法一八条により金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、また訴訟費用のうち原審における分は刑訴法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとして、主文のとおり判決す いときは刑法一八条により金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、また訴訟費用のうち原審における分は刑訴法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとして、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官藤野英一裁判官真庭春夫裁判官池田憲義)

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