平成14(わ)551 業務上横領被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年12月8日 千葉地方裁判所
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判決文本文23,735 文字)

平成16年12月8日宣告平成14年(わ)第551号 主文 被告人A1を懲役3年に,同B1を懲役2年6月にそれぞれ処する。 被告人両名に対し,未決勾留日数中各100日をそれぞれその刑に算入する。 訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人A1は,本件犯行当時千葉県木更津市ab番地に事務所を置くC1漁業協同組合(以下「組合」という。)の代表理事組合長として,組合の業務全般を統括し,組合資産の売却に際し組合を代表して売買契約を締結し売買代金を収受する業務に従事していたもの,被告人B1は,不動産売買及び仲介等を目的とする株式会社D1の代表取締役であるが,被告人両名は,組合所有の同市cd番所在の雑種地(面積10万3514平方メートル。以下「本件土地」という。)を株式会社E1(以下「E1」という。)及び株式会社F1(以下「F1」という。)を共同買主として代金23億9569万円で売り渡すに当たり,売買代金のうち2億円を領得しようと企て,共謀の上,平成11年4月12日,同県勝浦市ef番地所在のE1事務所において,本件土地売買代金の一部として,E1から金額8000万円の小切手1通を,F1から金額1億2000万円の小切手1通をそれぞれ被告人B1が受け取り,これを同被告人を介して被告人A1が組合のため業務上預かり保管中,そのころ,同市内において,上記小切手2通を被告人らの用途に充てるため,ほしいままに着服して横領した。 (事実認定に関する補足説明)第1 争点被告人A1は,本件当時組合の代表理事組合長であり,被告人B1は,本件当時不動産売買及び仲介等を目的とする株式会社D1(以下「D1」 まに着服して横領した。 (事実認定に関する補足説明)第1 争点被告人A1は,本件当時組合の代表理事組合長であり,被告人B1は,本件当時不動産売買及び仲介等を目的とする株式会社D1(以下「D1」という。)の代表取締役であったところ,平成11年4月,被告人A1は,組合を代表して,被告人B1の仲介により,かつて千葉県から払下げを受けた本件土地をE1及びF1(以下,両社を総称して「G1」という。)に対し両社を共同買主として売り渡したこと,その際,組合が,共同買主E1及びF1に対し,本件土地を代金21億9569万円で売り渡す旨の同月8日付け土地売買契約書(仲介人D1)が作成されたほか,同月12日付けで,売主をH1株式会社(代表取締役I。以下「H1」という。),買主をE1及びF1とし,実際には本件土地の売買に伴って組合からG1に所有権が移転した本件土地上の建物,テニスコート等(以下,これらを「上物」ということがある。)を代金2億円で売り渡す旨の虚偽の売買契約書(立会人D1)が作成され,上物の売買代金とされた2億円は,G1から,金額8000万円(E1分)及び金額1億2000万円(F1分)の2通の小切手により被告人B1に交付されたが,上記2億円は組合に入金されることなく,その一部が後記Jセンター(以下「直売センター」という。)の建設に関連する未払工事代金等の清算等に充てられ,その余を被告人B1が取得したことは,関係証拠から明らかであり,弁護人ら及び被告人らもかかる外形的事実はおおむね争っていない。 本件の争点は,詰まるところ,本件土地の売買代金は,23億9569万円であるのか21億9569万円であるのか(以下,これらの金額をそれぞれ「約24億円」,「約22億円」ということがある。),換言すれば,上記2億円が本件土地の売買代金の一部であるのかどう 9569万円であるのか21億9569万円であるのか(以下,これらの金額をそれぞれ「約24億円」,「約22億円」ということがある。),換言すれば,上記2億円が本件土地の売買代金の一部であるのかどうか,という点に尽き,検察官の主張は,要するに,G1との間では本件土地の売買代金を約24億円とする旨の合意が成立したにもかかわらず,被告人A1及び同B1は,被告人A1がかかわって業者に建設させた直売センターに係る長年にわたる未払工事代金等の支払資金等を捻出するために,上記売買代金を分割し,そのうちの2億円について上物の売買契約書を作成してこれを隠匿したもので,本件土地の売買代金は約24億円であるというものであり,弁護人ら及び被告人らの主張は,要するに,本件土地の売買代金は約22億円であり,上記2億円は,被告人B1がG1から本件土地の開発に関連して受けた業務委託契約に係る報酬であって,本件土地の売買代金の一部ではないというものである。 そして,被告人A1については,直売センターに関連する未払工事代金等を清算するため,組合に対しては本件土地の売買代金を坪7万円で総額約22億円と発表しながら,売買契約書を二つに分けて本件土地の売買代金の一部である2億円を裏に回し,同金員で上記未払工事代金等を支払うなどした旨事実を認めた内容の検察官調書があり(乙2ないし乙8等),被告人B1についても,被告人A1から,上記未払工事代金等を清算するため,組合の理事たちに話さなくて済むように売買代金の中から2億円くらいを捻出してほしい旨依頼され,同被告人に教示されて本件土地の上物を対象物件として2億円の売買契約書を作成した旨事実を認めた内容の検察官調書がある(乙11,乙12,乙25)が,当公判廷においては,被告人両名とも,被告人A1が上記未払工事代金等の処理を被告人B1に を対象物件として2億円の売買契約書を作成した旨事実を認めた内容の検察官調書がある(乙11,乙12,乙25)が,当公判廷においては,被告人両名とも,被告人A1が上記未払工事代金等の処理を被告人B1に依頼し,同被告人がこれをG1側に依頼したことは認めつつも,本件土地の売買代金は坪7万円であり,2億円は本件土地の売買代金の一部ではない旨の供述をし,さらに,被告人A1は,上物の売買契約書の存在は知らなかったとも供述している。 第2 当裁判所が認定した事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 被告人A1の組合における地位及び被告人B1が本件土地の開発にかかわるようになった経緯等(1) 被告人A1は,昭和49年ころ組合の理事になり,昭和56年ころから平成13年3月本件を契機に辞任するまで組合の組合長(代表理事)の地位にあった。 (2) 平成元年3月23日,組合は,千葉県から合計6億円余りで本件土地を含む木更津市内の3筆の土地(埋立地)合計14万平方メートル余り(以下これら3筆の土地を「埋立地」と総称する。)の払下げを受けた。ただし,その際,払下げから10年間これらの土地について使用収益を目的とする権利を設定し又は移転してはならないものとされた。 (3) 被告人B1は,不動産取引仲介業等に従事していた平成三,四年ころ本件土地の開発の動きを知り,これにかかわるようになった(なお,同被告人は,平成五,六年ころD1を設立した。)。 2 K株式会社及び株式会社Oの本件土地開発参入並びに直売センターの建設とこれに関連する未払工事代金等の発生等(1) 直売センター建設に至る経緯等ア平成2年5月ころまでに,K株式会社L支社長の肩書きを持つ亡M及び元木更津海上保安署の職員で組合とも職務上の接触の多かった亡Nから埋立地の開発の申入れがあった(Nは,平成 ンター建設に至る経緯等ア平成2年5月ころまでに,K株式会社L支社長の肩書きを持つ亡M及び元木更津海上保安署の職員で組合とも職務上の接触の多かった亡Nから埋立地の開発の申入れがあった(Nは,平成2年5月30日株式会社O(代表取締役N,取締役M等。以下「O」という。)を設立した)。被告人A1は,組合との取引実績のないKやOに本件土地の開発をさせるためには,Kからのりの直売センターを組合に提供させるのがよいと考え,同月19日組合理事会(以下,単に「理事会」という。 なお,証拠上「役員会」とあるのは理事会である。)にその旨諮ったところ,同日の理事会において,Kの支援の下にNの紹介する土地に千葉県君津郡g町(当時)にあった組合ののり直売所を移転するとともに,同人に組合のいわゆる看板を有料で使用させて同所で鮮魚類の販売をさせることを可決し,ここに,直売センター(後に「Jセンター」の名称が付された。)の建設が決定した。 イ上記理事会の決定を受けて,同年6月29日,Kと組合は,Kが直売センターを建設して組合に賃貸する旨の合意書を作成し,その一方で,Mは,同年8月,被告人A1に対し,埋立地の開発の過程で設立する新会社の株主として同被告人を優遇するよう取り計らう旨及び埋立地に建設する予定のショッピングセンター内のテナントの出店について同被告人を最優先順位として特別待遇する旨の文書を差し入れた。 (2) 直売センターに関連する未払工事代金等の発生及びこれに対する被告人A1の対応ア直売センター建設工事の発注状況直売センターは,千葉県君津郡g町h(当時)のP夫妻の所有地上に建設されることになり,平成3年4月ころ完成したが,被告人A1は,いずれも発注者を明確にしないまま,平成2年秋ころ,以前から組合の工事を受注していたQ株式会社(以下「Q」という。)に 妻の所有地上に建設されることになり,平成3年4月ころ完成したが,被告人A1は,いずれも発注者を明確にしないまま,平成2年秋ころ,以前から組合の工事を受注していたQ株式会社(以下「Q」という。)に対し直売センターの看板の基礎工事を依頼するとともに,Qの当時の千葉営業所g作業所工事主任Rに上記看板の製作を担当する業者の紹介を依頼し,平成3年春ころ,S株式会社(以下「S」という。)に直売センターの緑化工事を依頼した。また,直売センターの建物については,平成2年10月ころ,KがT株式会社(以下「T」という。)にその建設を発注した。なお,上記看板の製作はU等が担当することになった。 イ Qに対する組合による保証の経緯Qにおいては,上記のような受注経緯から,発注者は組合であると理解していたところ,平成3年初めころ,工事請負業者に対する説明会の席上で,被告人A1が発注者はOになる旨告げたため,Oによる工事代金の支払に不安を抱いて,同被告人に組合が保証人となることを求め,同被告人は,理事会に諮ることなく,その場でこれを承諾し,その旨の契約書を作成した。そして,同年7月10日付けで,OとQとの間で前記看板の基礎補強工事の契約書が作成されたが,その際にも,被告人A1は,理事会に諮ることなく組合がOの保証人となることを承諾した。 ウ直売センターに関連する工事代金等の支払状況直売センターに係る各工事代金は,T分が追加工事等を含めて4350万7148円,Q分が7725万円,S分が938万8450円,U分が349万5800円であったが,直売センターの建設工事中にKが事実上倒産し,Kによる本件土地の開発事業を引き継いだOにも資力がなかったため,これらの工事代金については,その一部が支払われたのみで,そのほとんどが支払われず,関係業者から,上記受注経緯から組 が事実上倒産し,Kによる本件土地の開発事業を引き継いだOにも資力がなかったため,これらの工事代金については,その一部が支払われたのみで,そのほとんどが支払われず,関係業者から,上記受注経緯から組合が支払ってくれるよう強く求められたため,被告人A1は,理事会に諮ることなく,組合からOの口座に,平成3年3月11日に500万円,同月28日に3000万円(合計3500万円)をそれぞれ振り込ませたほか,同月11日ころから平成4年4月ころまでの間に,K及びこれを引き継いだOが支払うべき工事代金,資材代金,直売センターオープン行事費用等合計7826万7949円を組合から各業者に支払わせた(これらの立替払の中には,Uに対する看板工事代金349万5800円,Tに対する直売センターの追加工事代金1063万7148円も含まれていた。)。 なお,Mは,組合あてに,平成3年3月25日付けで,直売センターに関する施設,その他の費用を負担することを確約する旨の確約書を提出し,被告人A1は,平成3年4月1日開催の理事会において,直売センターの建設費はK及びO側が全額負担することが決定している旨説明して理事会の了承を得たが,そのころには前記のとおり既にOに対する送金や立替払が発生していた。 エ直売センターの契約関係直売センターの建物は平成3年4月に完成したところ(保存登記は平成4年3月25日),直売センターは,当初はP夫妻からOが土地を賃借し,その上にKが建物を建設する計画であったが,Oにおいて土地賃借に伴う保証金3000万円を準備できなかったため,これに換えて,直売センターの建物をP夫妻の共有名義で登記し,OがこれをP夫妻から賃借することとなった。そして,平成3年5月11日付けで,賃貸人をP夫妻,賃借人をO,賃借人の連帯保証人を組合とする建物賃貸借契約書が作 ンターの建物をP夫妻の共有名義で登記し,OがこれをP夫妻から賃借することとなった。そして,平成3年5月11日付けで,賃貸人をP夫妻,賃借人をO,賃借人の連帯保証人を組合とする建物賃貸借契約書が作成されたが,被告人A1は,組合が連帯保証人となることを理事会に諮ることはしなかった。また,同契約書には,OはP夫妻に対し保証金として3000万円(ただし,11年目から毎年10パーセントを償却する。)を差し入れるものと記載されたが,建物をP夫妻の共有名義で登記したことにより,上記保証金は現実にはP夫妻に交付されていなかった。なお,その後,Oは賃料の支払を滞りがちであったことから,P夫妻の依頼を受けた不動産業者V(経営者V´)の要請により,平成6年2月1日組合が上記建物の賃借人となり,被告人A1がその連帯保証人となった。 (3) 常例検査を契機とする組合による保証等の発覚とその後の対応ア常例検査を契機とする組合による保証等の発覚平成4年4月ころまでに,組合がOに送金した金額及びOのために(Kが発注し,Oが引き継いだ工事代金等を含む。)直売センターの工事関係業者等に立替払した金額は,合計7826万7949円に上っていたところ,同年行われた千葉県の組合に対する常例検査により,直売センターの利用関係に関する契約書がないことのほか,Oに対する未収金の早急回収等を指摘され,さらに,平成5年10月15日に実施された同県の組合に対する常例検査の結果,K及びOと組合との間で締結した直売センターに係る合意書及び確約書について,理事会に諮るよう指摘されたことから,同年11月27日に開催された理事会において,各種契約書,合意書等が理事らに示され,直売センターの建物の賃料の支払債務及び看板基礎工事代金の支払債務について組合が保証人となっていることが明るみに出た。そし 1月27日に開催された理事会において,各種契約書,合意書等が理事らに示され,直売センターの建物の賃料の支払債務及び看板基礎工事代金の支払債務について組合が保証人となっていることが明るみに出た。そして,理事会に諮ることなくそのような重要な契約の締結等を行っていた被告人A1に対する批判が噴出し,同被告人は,組合に損失を負わせないようにこれらを適切に解決しなければならない立場に置かれることとなった(なお,同年の常例検査結果に基づく正式な指導は,同年12月22日付け書面でなされているが,同年11月11日ころ組合において事実上検査結果を聴取しており,上記理事会の検討はこれに基づいてなされたものである。)。 イ Oに対する未収金の回収等そこで,組合とK及びOとの間の契約関係,合意書等の整理が行われるとともに,以下のとおり,上記未収金の回収等がなされた。 ① 平成5年5月13日 Oから1500万円入金資金:本件土地の開発に参入しようとしていた業者の一つである有限会社W(以下「W」という)が,同年3月30日に組合に入金していた5000万円のうち1500万円が払い出されて,同年5月13日,これがNからOの口座に入金され,組合に返済された。なお,同年8月ころWとの間で紛議が生じ,その後同月27日,有限会社X(代表取締役Y。以下「X」という)からOに2000万円が送金されているところ,その後もWとの間で紛議が続いていた様子はうかがわれないことなどから,上記2000万円はWに対する上記1500万円の返済等に充てられたものと推測される。 ② 同年12月22日 Oから2100万円入金資金:同月21日,XからOの口座に2100万円が送金され,これによりOから組合に返済された。 ③ 平成6年1月26日 Oから1226万7949円入金資金:被告人A1の依頼によ ら2100万円入金資金:同月21日,XからOの口座に2100万円が送金され,これによりOから組合に返済された。 ③ 平成6年1月26日 Oから1226万7949円入金資金:被告人A1の依頼により同月25日Zが組合から1400万円の融資を受け,同日そのうち1386万7949円が同人からOの口座に送金されて,これによりOから組合に1226万7949円が返済された。 ④ 同年2月1日ころ Oから直売センターの建物賃借保証金3000万円を取得前記(2)エ記載のとおりOに替わって組合が直売センターの建物の賃借人となり,OがP夫妻に預けたとされている保証金を組合がOから譲り受け,これを組合の資産として計上したものであるが,前記(2)エ記載のとおり保証金は現実には差し入れられておらず,上記保証金3000万円は架空の資産である(保証金が差し入れられていなかったことは,平成12年末ころ,組合が保証金の返還請求をしたことから明らかになった。)。 以上により,組合との関係においては,帳簿上は,組合のOに対する未収金は全部回収した形になったが,いずれもO自身の資金によるものではないため,これらは,上記保証金を除き,他の者に対する債務として存続することとなった。 ウ Qに対する工事代金の一部支払被告人A1が組合の理事会に諮ることなくQに対し看板基礎工事代金の支払債務について組合を保証人としていた問題については,平成7年3月31日ころ,組合がOから直売センターの看板を看板基礎補強工事代金を含む工事代金の半額4171万5000円で購入し,その代金をOからQに支払う形を取って,保証債務を免除された。これによって,OのQに対する残債務は4171万5000円になった。なお,これについては,組合においてその回収に全面的に協力することとなった。 エ O関係の残債 う形を取って,保証債務を免除された。これによって,OのQに対する残債務は4171万5000円になった。なお,これについては,組合においてその回収に全面的に協力することとなった。 エ O関係の残債務このようにして,千葉県から指摘された事項は,すべて組合としては解決した形となったが,上記ウ記載のとおりQに対して支払われた工事代金の半額を除けば,Oの債務は,一部について債権者が変更になったのみで依然として返済されておらず,この時点で,直売センターに関連するO関係の債務は以下のとおり,総額1億0610万3450円となった。このうちZに対する借入金については,これは実質的に同人に対する被告人A1自身の債務であるとともに,Zに組合に対する多額の債務を負担させたものであり,また,その余のO関係の債務については,直売センターの建設に自らかかわり,業者に対し発注者が組合であるかのように思わせたことなどの経緯から,依然としていずれも同被告人において解決しなければならないことに変わりはなかった。 ① Qに対する工事残代金 4171万5000円② Sに対する工事残代金  938万8450円③ Xに対する借入金  4100万円(前記イ①,②の合計)④ Zに対する借入金 1400万円 3 G1への売却以前の本件土地の開発に関するその他の動向(1) O,K及びW以外にも,株式会社A2(平成5年4月30日商号変更以前は,株式会社A2´。代表取締役B2。以下「A2」という),C2株式会社(以下「C2」という。),Q,X,D2株式会社等の業者が開発に名乗りを上げ,組合は,平成8年7月ころ,「埋立地有効利用推進会議」を設けて,業者から開発計画を聴取するなどするとともに,同年11月に組合員に対し埋立地の利用方法についてアンケート調査をし,平成9年3月には,売却 合は,平成8年7月ころ,「埋立地有効利用推進会議」を設けて,業者から開発計画を聴取するなどするとともに,同年11月に組合員に対し埋立地の利用方法についてアンケート調査をし,平成9年3月には,売却又は賃貸によりその活用を進める旨埋立地の利用について組合の方針を確定した。 (2) そのような中で,組合は,同年7月本件土地について鑑定を依頼し,更地価格26億9136万4000円との評価を得て,被告人A1もそのころこれを了知した。 4 G1への本件土地の売却経緯等(1) G1への売却決定経緯E1及びF1の各代表取締役であるE2は,平成10年春ころ被告人B1から本件土地購入の打診を受けたが,ホテル用地としては広すぎると考えて断り,その話は一旦立ち消えになっていたところ,同年8月ころ,再度同被告人から本件土地を坪8万円で購入しないかと勧められ,同被告人の案内で現地を見た上,組合が売主であるのでホテルの排水について組合の同意を改めて得る必要がないことも考慮して,温浴施設(スパ)及びホテルの用地として,同金額で購入することを社内で決定した。しかし,その後もE2は同金額での買受意思を同被告人に明示することなく,売買代金等の減額を図り,同被告人に対し,同被告人の手数料を通常の半分以下の3000万円に減額させた上,購入に向けて手続を進めるよう依頼した。その後,E2は,組合事務所に被告人A1を訪問して本件土地を購入する旨を伝える一方,被告人B1を介して売買代金の減額を求めた。被告人A1は,地元の一流企業による本件土地の購入を喜び,売買代金減額の要求を受け入れて,表向きは坪7万円とした上,O関係の債務の清算等の資金2億円を加えた合計約24億円で売却することとし,被告人B1において,E2に対し,坪7万円でよいが2億円を加えてほしい旨求めて,その了解を得た。 表向きは坪7万円とした上,O関係の債務の清算等の資金2億円を加えた合計約24億円で売却することとし,被告人B1において,E2に対し,坪7万円でよいが2億円を加えてほしい旨求めて,その了解を得た。そこで,同年9月12日,組合の役員総代長会議でF1総支配人であったF2が本件土地の利用計画を説明するとともに,坪7万円で購入したい旨を表明し,同年10月17日,組合の臨時総会で本件土地を坪7万円でG1に売却することが決定された。 なお,被告人B1や組合側がG1側に対し売買代金とは別にリベートや協力金として2億円を要求したことはなかった。 (2) H1名義の契約書が作成された経緯その後,被告人両名は,上記2億円の受領方法について相談し,売主をH1,売買の対象物件を本件土地の上物とした上,2億円の売買契約書を別途作成することとし,被告人B1において,E2に対し「本件土地の代金は坪7万円に2億円足してもらった24億円弱で間違いないが,形の上で契約書を二つにして,坪7万円の土地売買契約書と代金2億円の上物の売買契約書に分けてほしいということである」旨説明して,同人の了解を得た。 そして,平成11年4月8日ころ,本件土地に関する同日付の前記土地売買契約書が作成され,当日G1から組合に対し21億9569万円が支払われ,その際,組合からG1に対し,本件土地上に存在する建物,樹木及び全施設が本件土地の購入者に帰属することを確認する旨の確認書が差し入れられた。 次いで,同月12日ころ,同日付で上物に関する前記売買契約書が作成され,当日,G1から被告人B1に金額1億2000万円及び同8000万円の2通の小切手が交付され,これについては,H1名で領収証がG1側に交付された。 なお,Iは被告人B1の知人であり,H1は当時事実上倒産して実働していなかったが,同被 2000万円及び同8000万円の2通の小切手が交付され,これについては,H1名で領収証がG1側に交付された。 なお,Iは被告人B1の知人であり,H1は当時事実上倒産して実働していなかったが,同被告人がH1の実印等を保管していた。 5 2億円によるO関係の債務の清算等G1から上物の売買代金という名目で振り出された合計2億円の小切手2通を受領した被告人B1は,同年4月12日,そのうち1億1784万0630円を4通の銀行振出の自己あて小切手にした上,そのころ,以下のとおり小切手を交付し,あるいは組合の被告人A1及びZ名義の各普通預金口座に入金した。 ① Qへの支払 4171万5000円② Sへの支払 938万円③ Xへの支払 5016万3800円前記4100万円のほか,その利息及び後日用立てた50万円を含む金額である(ただし,若干計算間違いがある。)。 ④ 被告人A1の口座への入金  235万2000円⑤ Zの口座への入金 1422万9830円被告人A1分とZ分は,合計金額1658万1830円の小切手により入金されている。 なお,A2のB2は,捜査段階において,被告人A1がA2に本件土地の開発をゆだねる旨約束していたにもかかわらず本件土地をG1に売却することになったことに憤慨してそれまで投下した多額の資本の穴埋めを要求したところ,同被告人から被告人B1を紹介され,同被告人から2600万円を受け取った旨供述し,被告人A1も捜査段階においてこれとよく符合する供述をしていたところ,いずれも当公判廷において,被告人B1は,B2に2600万円の架空の領収証を作成してもらったもので,同人に上記金員を交付してはいない旨供述し,被告人A1もB2に対する上記金員の交付を否定する供述をしているほか,B2も被告人B1の上記 1は,B2に2600万円の架空の領収証を作成してもらったもので,同人に上記金員を交付してはいない旨供述し,被告人A1もB2に対する上記金員の交付を否定する供述をしているほか,B2も被告人B1の上記供述と同旨の証言をしている。しかし,B2が受け取ってもいない多額の金員を受け取ったなどと事実と異なる供述をすべき理由はなく,被告人A1が捜査段階において2600万円を支払うに至った経緯を含めてB2の捜査段階における供述とよく符合する供述をしていたことをも考えると,B2の捜査段階における上記供述は信用性が高いということができ,B2に2600万円が支払われたと認められるが,上記2億円の使途に関する捜査結果に照らすと,これが上記2億円から支払われたかどうかは明らかでない。 第3 説明及び当裁判所の判断 1 被告人両名の各検察官調書の任意性等(1) 被告人A1の各検察官調書の任意性被告人A1の各検察官調書は,いずれもG2検察官の取調べに係るものであるところ,弁護人らは,同被告人は,腰痛があるにもかかわらず,取調べ中10時間以上にわたって不動の着座姿勢を取らされ,身動き一つできない身体の拘束を強いられ,服用していた薬の副作用で口が渇くため口を動かしただけでも「口を動かすな」と怒鳴り付けられて威迫されたほか,検察官の言うことに「はい」と言うよう強要されたなどととし,逮捕前に作成された同被告人の各検察官調書(乙2ないし乙8)には任意性がない旨主張し(平成15年5月13日付け意見書),同被告人においてこれに沿う供述もしている。 しかしながら,同被告人は,任意捜査による取調べの後,平成14年3月4日に逮捕され,同月6日に勾留されたところ,弁護人らが任意性を争っているのは平成13年3月22日付け供述調書1通(乙8)及び平成14年2月6日付け供述調書6通(乙 による取調べの後,平成14年3月4日に逮捕され,同月6日に勾留されたところ,弁護人らが任意性を争っているのは平成13年3月22日付け供述調書1通(乙8)及び平成14年2月6日付け供述調書6通(乙2ないし乙7)であって,いずれも任意捜査の段階のものである上,平成13年3月22日の取調べは,午後3時ころから午後6時ころまでの3時間くらいであったというのであり(G2検察官の証言によれば,午後2時30分ころから午後4時ころ),そのような短時間の初めての取調べにおいて任意性に影響を及ぼすような取調べが行われたとは考えにくい。また,同被告人は,逮捕後は事件に関する供述調書への署名を拒否する一方で,事件と関係がないと思った供述調書にのみ署名をし,逮捕後の検察官調書の内容についても大体納得できる旨当公判廷で供述しているのであって,そうすると,同被告人は,逮捕後は取調べに対し自己の意思を通すことができていたことは明らかであり,それにもかかわらず任意捜査の段階では任意性に影響を及ぼすような取調べが行われたとも考えにくい。加えて,同被告人は,平成13年3月22日の取調べの後被告人B1に紹介された弁護士に相談をした際,同弁護士から真実でないものに署名をしてはならない旨厳しく注意されており,平成14年2月6日の取調べの際には,供述調書に署名することの意味を十分認識していたことをも考えると,同日付けの検察官調書はもとより,これと同旨の平成13年3月22日付けの検察官調書についても,その任意性に疑いを差し挟む余地はない。 なお,取調べの際,G2検察官において,同被告人の尊大な言動を注意し,質問に対し直接答えるように注意し,長時間にわたり説諭したことなどは認められるものの,いずれも任意性に疑いを生じさせるものとはいえない。 (2) 被告人B1の検察官調書の任意性等 尊大な言動を注意し,質問に対し直接答えるように注意し,長時間にわたり説諭したことなどは認められるものの,いずれも任意性に疑いを生じさせるものとはいえない。 (2) 被告人B1の検察官調書の任意性等被告人B1が署名した検察官調書は,身上関係の供述調書を除くと,いずれも任意捜査の段階に作成された平成14年1月28日付け供述調書1通(乙25)及び同年2月4日付け供述調書3通(乙11,乙12,乙26)のみである(同年3月4日逮捕)ところ,弁護人らは,検察官は,同被告人の供述が自己の意に反すると怒鳴りまくり,机をたたき,署名に際しては,ワープロの画面を見ながら聞き取れないほどの速度で読み聞けをし,同被告人において内容を確認できないまま最終丁のみを同被告人に示して署名させたほか,同被告人には,乙11,乙12及び乙25の各検察官調書について署名をした記憶がないなどと主張している。 しかしながら,供述調書の署名に関する同被告人の供述は,署名したページに数行にわたって同被告人の言った内容が書いてあったのを確認して署名したにもかかわらず,乙11,乙12及び乙25の各供述調書の最終丁は別の機会に署名しあるいは署名しろと言われたものと同じ内容であるとか,署名したときには空白になっていた部分に書き加えられているなどというものであり,それ自体甚だ合理性を欠き,その供述内容も不合理な変遷が多い上,同被告人は,同年2月4日に複数の調書に署名した記憶はないなど署名の数自体に照らして明らかに事実に反する供述もしている。このような明らかに不合理な供述を基礎とする取調べ状況に関する同被告人の供述は到底信用できず,他に,同被告人の前記供述調書の任意性ないし証拠能力に疑いを抱かせる事情はうかがわれない。 2 本件土地の売買代金額(1) 各関係者の供述ア E2は,捜査段階に る同被告人の供述は到底信用できず,他に,同被告人の前記供述調書の任意性ないし証拠能力に疑いを抱かせる事情はうかがわれない。 2 本件土地の売買代金額(1) 各関係者の供述ア E2は,捜査段階において,「被告人B1から坪8万円で買わないかとの話があり,社内で購入を決定した後減額交渉をした結果,坪7万円プラス2億円ということになり,平成11年になってからと思うが,被告人B1が,代金のうち2億円分を上物の代金ということにして契約書を二つにしてほしいと言い出し,同被告人は,さらに,「漁協の債務を整理するのに2億円を使う。漁協の債権者をH1にまとめて,形の上でH1が売ることにしているだけですから。あの土地の代金は坪7万円に2億円足してもらった24億円弱で間違いないが,形の上で契約書を二つにして,坪7万円の土地売買契約書と代金2億円の上物の売買契約書に分けてほしいということなんです」などと説明した」旨,また,「G1としては,組合所有の約3万坪の埋立地を約24億円で購入しただけのことです。組合側から,いろいろ債務がらみで問題があるということで,24億円のうちの2億円を組合に直接入金しないで支払ってもらいたいという申し出であったことから,G1が好意としてそのような取り計らいに応じただけのことであり,2億円は,約3万坪の埋立地の売買代金約24億円の中の2億円に間違いない」旨,本件土地の売買代金は約24億円である旨明確に供述している。もっとも,E2は,当公判廷においては,自己の直接の関与を後退させるとともに,事実経過についてはおおむね同様の供述をしながら,「2億円が土地代かどうかは微妙かなと思う」旨供述している。 イ被告人B1は,捜査段階においては,「E2に坪8万円で本件土地の購入を持ち掛け,E2に値切られて被告人A1と相談した結果,組合には表向き坪 2億円が土地代かどうかは微妙かなと思う」旨供述している。 イ被告人B1は,捜査段階においては,「E2に坪8万円で本件土地の購入を持ち掛け,E2に値切られて被告人A1と相談した結果,組合には表向き坪7万円と発表し,売買代金は,これにO等の債務の支払資金2億円を加えた約24億円とすることになり,E2もこれを了承した。そして,被告人A1と相談した結果,総額約24億円の売買代金のうち2億円を裏に回すために,組合向けの坪7万円の売買契約書と2億円の売買代金の売買契約書に分けることに決めた」旨供述していた(乙11)が,当公判廷においては,「平成10年9月12日にG1のF2が組合の役員総代長会議で坪単価を発表するまでは,購入価格が坪7万円ということは知らなかった。平成11年初めころ,被告人A1から,「業者が支払をしてなくて組合が使っている施設があるので,これを何とかしたい」という話があったが,この話は,本件土地の購入とセットの話ではなく,いつまでにということも言われていない。E2の性格から契約までにいろんな条件を付けると商談が破談になる可能性が大きいと思い,このことはG1の方には話さず,同年3月初めころ,再度被告人A1から3億円強の半分くらいの残債務の整理の話があったときに,G1の本件土地の購入は動かないと判断し,そのことをG1の専務(以下,単に「専務」という。)に伝えた」旨,2億円は,本件土地の売買代金が決定した後に,これとは別に支払われることになったものであるとの趣旨の供述をしている。 ウ被告人A1も,捜査段階においては,「当初坪8万円で購入を持ち掛けたが,値切られ,早く債務を片付けてしまいたかったので,被告人B1と相談して,坪7万円に裏に回す2億円を加えた総額約24億円でE2に持ち掛けることにした。実際には総額約24億円で売却したのに,表向 たが,値切られ,早く債務を片付けてしまいたかったので,被告人B1と相談して,坪7万円に裏に回す2億円を加えた総額約24億円でE2に持ち掛けることにした。実際には総額約24億円で売却したのに,表向きは総額約22億円で売却したことにし,売却代金の一部である2億円を裏でもらい,それで私やOの債務を支払ったりした」旨供述していた(乙6)が,当公判廷においては,「平成10年9月ころ,業者に来てもらって事業概要,坪単価等を用紙に記載してもらった際,初めてG1の坪単価が7万円であることを知った。話が壊れたらG1のような優秀な企業はもう出てこないだろうという思いが強かったので,私から売却希望価格を被告人B1に伝えたことはない。平成11年1月にG1から5億円の内金の入金があり,もう売買をキャンセルされることはないだろうと考えて,同年の一,二月ころ,Nが支払うべき債務の処理を被告人B1に頼んだ。同年3月初めころ,再度被告人B1に頼み,その際,金額を聞かれて,1億5000万円程度だと言った。被告人B1は,専務と相談してみると言った。そのとき,上物を土地と別に売却するという話はしていない。上物の売買契約書があることは知らなかった」などと供述している。 (2) 検討ア被告人A1にとって,自ら直接関与して建設させた直売センターに関連する多額の未払工事代金の存在等が,組合及び組合長である同被告人自身の信用を失いかねない大きな問題であったことは明らかであり,Oにおいて工事代金の支払を滞らせ,組合によるその立替払等が始まっていた平成4年1月24日の理事会において,既に,同被告人が,本件土地の開発については,直売センターの建設費3億円の出費を条件としている旨説明し,同年12月8日の理事会において,同被告人が,業者の一つであるC2がOの未収金を肩代わりすることもある 同被告人が,本件土地の開発については,直売センターの建設費3億円の出費を条件としている旨説明し,同年12月8日の理事会において,同被告人が,業者の一つであるC2がOの未収金を肩代わりすることもあると説明していることからすれば,同被告人が本件土地の開発の機会に直売センター絡みのO関係の債務を清算しようと考えていたことは明らかである。しかも,同年の千葉県の常例検査でOに対する未収金の早期回収等を指摘され,これを受けて平成5年2月19日に組合においてOに対し同月28日までに組合による立替金を返済するよう請求し,さらに,同年度末までにこれを支払う旨の同年5月11日付け念書を組合に差し入れさせるなどしたものの,もともと資金のないOから回収することなどできず,結局,前記のようにXやZに依頼して得た資金により組合の立替金としてはこれを解消させたが,これは,単に組合の経理上の解決にすぎず,清算を要するOの債務としては依然として存続していたのであり,第三者に不良債権を押し付け,あるいは債務を負担させたことにより,同被告人において解決すべき必要性は一層強くなったとさえいうことができる。同被告人自身,当公判廷で,本件土地を処分する機会に整理しなければならないということだったと供述しているように,本件土地の売却の機会をおいて他にこれを清算する方法はなかったのであるから,本件土地のG1への売却に際し,それと未払債務の清算がセットではなかったとか,被告人A1が売買代金が決定した後2か月くらいしてから初めて上記未払債務の清算を持ち出したなどということは,到底考えられない。加えて,文書の性質及び記載されている発言者の言葉に照らし極めて信用性が高いと認められる平成12年度第6回理事会議事録によれば,平成13年3月21日開催の同理事会において,被告人A1は,「21億で 加えて,文書の性質及び記載されている発言者の言葉に照らし極めて信用性が高いと認められる平成12年度第6回理事会議事録によれば,平成13年3月21日開催の同理事会において,被告人A1は,「21億で売買しようよ。その代わり,その裏で売店なんかの債務が滞っているからそのものを解消してもらいたいと社長に言ったんだよ。そしたら都合7万円ではなく8万円になるよと話したことがある。」旨説明したことが明らかである(被告人A1は,当公判廷において,発言の趣旨が異なるかのような供述をしているが,同議事録の記載の正確性に疑いはない。)。売買代金は約24億円であったが,O関係の債務の清算等に充てるため,被告人両名で相談の上,表向きは売買代金は約22億円として,実際の売買代金のうちの2億円を裏に回すことにし,被告人B1においてその旨E2に話して了解を得た旨の被告人両名の捜査段階における供述は,被告人両名の間でその供述内容が一致しているだけでなく,売買交渉の相手方であるE2が捜査,公判を通じて供述するところともほぼ一致している上,上記議事録の記載ともよく符合しているのであって,極めて信用性が高いということができる。 これに対し,被告人B1は,当公判廷において,前記のほか,弁護人の質問に対し,「被告人A1から債務整理の話を聞いて専務に伝えた」と供述しつつ,「専務には,近隣対策費を捻出するに当たって協力してもらいたいと言った」とも供述し,さらに,検察官の質問に対し,「専務には組合が借りて使っている直売センターの工事代金だということを伝えた」旨供述しており,同被告人の公判供述は,そもそも同被告人が専務に対しどのように言ったのか甚だあいまいである。また,同被告人の公判供述によれば,G1側は,坪7万円,総額約22億円で本件土地を購入できると思っていたところ,契約直前に 述は,そもそも同被告人が専務に対しどのように言ったのか甚だあいまいである。また,同被告人の公判供述によれば,G1側は,坪7万円,総額約22億円で本件土地を購入できると思っていたところ,契約直前になって,急きょ1億5000万円くらいもの予定外の多額の支出を要請されながら,特段の異を唱えることなくこれを了承し,その上,求められてもいないのに,自発的に5000万円を上乗せして2億円を提供することを申し出たというのであって,これは余りに不合理であるというほかない。しかも,同被告人は,G1側が5000万円を上乗せした理由として,専務から「小湊の方で大分損失が出ているのは知っているからこれで帳尻を合わせるように」と言われた旨供述するが,同被告人は,他方において,G1からの本件土地売買の仲介料が3000万円になった経緯について,「一般的には仲介手数料は3パーセントだが,E2から「先にあげるからこの金額で手を打ちなさいよ」と言われてこれに同意した」旨供述しているから,通常の半額以下の報酬額を提示したG1側が,要求もされないのに合計すれば通常の報酬額を超えることになる多額の報酬を支払うことにしたというのも不合理極まりない。そのほかにも,同被告人の公判供述には,2億円分の売買契約書の売主名義人にD1以外の会社,更にはH1を使うことになった経緯や上物の売買という方法を採った経緯等についても不合理な点が多い。 被告人A1も,当公判廷において,前記のほか,平成11年4月12日付けの上物の売買契約書について,第31回公判期日においては,「事件後弁護士同席の場で被告人B1から見せてもらった。その際同被告人に「こういうものがあれば役員会でも話ができた」と言った」旨供述しつつ,第32回公判期日においては,「同契約書を見て何も感じなかった」旨明らかに矛盾する供述をし B1から見せてもらった。その際同被告人に「こういうものがあれば役員会でも話ができた」と言った」旨供述しつつ,第32回公判期日においては,「同契約書を見て何も感じなかった」旨明らかに矛盾する供述をしている上,後者については,いかに被告人A1の言うように既にG1が買い受けたものであったとしても,何のためにこのようなことをするのかという疑問すら抱かなかったというのは,甚だ不自然というほかない。 また,弁護人らは,2億円は被告人B1がG1から本件土地の開発に関連して受けた業務委託契約に係る報酬である旨主張するが,本件土地は,地元の漁業協同組合が売主であることから,ホテル経営に通常伴う排水等に関連する漁業補償等の問題は,その点についての利害を有する当該組合自体から売買交渉の過程で出てくる筋合いのものであって,これを土地の売買と別途に解決する必要性は考えられない(当時F1総支配人であったF2も,当公判廷において,ホテルの建設に対する組合からの反対は考えられなかった旨供述している。)。そして,本件土地売買交渉の過程で特別にそのような漁業補償等の問題が出ていた形跡はなく,G1において,2億円もの多額の報酬を支払って被告人B1に解決を依頼しなければならないような問題があったことは全くうかがわれない。また,同被告人は,上記2億円から少なくとも1億2000万円近い金額をO関係の債務の支払に充てており,上記2億円が同被告人がG1から受けた業務の報酬であるとすれば,このような同被告人の行動は不可解というほかない。弁護人らの主張に沿うかのような土地売買仲介等に伴う業務委託に関する同被告人の供述も一般論の域を出ず,本件土地の売買に関しては具体性を欠いており,弁護人らの上記主張の論拠となるものではない。弁護人らの上記主張は採用の限りではない。 以上のほか,QのH 委託に関する同被告人の供述も一般論の域を出ず,本件土地の売買に関しては具体性を欠いており,弁護人らの上記主張の論拠となるものではない。弁護人らの上記主張は採用の限りではない。 以上のほか,QのH2が,捜査段階において,看板工事代金の残金の支払に関し,被告人両名から本件土地をG1に売却した代金の一部で支払うと聞いた旨供述していることなどをも総合すると,前記4(1)記載のとおり,被告人B1からG1のE2に坪8万円の売買代金の提示があり,E2において減額を求めた結果,被告人両名において表向きの売買代金は坪7万円(約22億円)とした上,O関係の債務の清算等のため2億円を上乗せさせることとし,その旨被告人B1を介してE2に提示してその承諾を得たこと,契約書については,被告人両名において,本件土地を対象物件とする売買代金約22億円の売買契約書のほか,上物を対象物件とする売買代金2億円の架空の売買契約書の2通の売買契約書を作成することとし,その旨E2の承諾を得た上,約22億円の売買契約書を作成した数日後に2億円の売買契約書を作成したことが認められ,これに反する被告人両名の当公判廷における各供述はいずれも不合理であって信用できない。 イそこで,上記売買代金決定経緯に照らし,前記2億円が本件土地の売買代金の一部であるのか,本件土地を取得するための売買代金とは別の負担であるのかを検討する。 この点については,売買契約書の記載内容のほか,①G1において2億円を支払うこととなった経緯及びそこに表れた当事者の意思,②売主である組合の意思決定内容,③本件土地の客観的価格等を総合して判断すべきものと考えられる。 組合は,平成10年10月17日の臨時総会において本件土地をG1に対し坪7万円(総額約22億円)で売却する旨の決定をしているから,組合における本件土地 価格等を総合して判断すべきものと考えられる。 組合は,平成10年10月17日の臨時総会において本件土地をG1に対し坪7万円(総額約22億円)で売却する旨の決定をしているから,組合における本件土地売却の意思決定が代金坪7万円(総額約22億円)として行われたことは明らかであるが,組合による上記決定は,被告人A1においてG1から別途2億円が支払われることを秘匿した上でなされた,いわばかしのあるものであり,他の事情を考慮することなく,売買契約書の記載内容と上記臨時総会の決定のみから形式的に判断して,本件土地の売買代金が約22億円であったということはできない。 上記売買交渉経緯によれば,もともと本件土地の売買に当たり,売主側においてリベート等の付加的な金員の支払を求めたという事情はなく,むしろ,2億円の支払は売買代金そのものの決定過程で出てきたものである上,組合の代表者である被告人A1の意識は,売買代金の一部を裏に回す,すなわち実質的に売買代金の一部であるものを正規の売買契約書上には出さず,組合には入金しないというものであり,同被告人は,被告人B1を介して買主であるG1側にも売買代金としては約24億円に変わりはない旨説明していたところであって,売買契約当事者双方の代表者の意思は,売買代金は約24億円であるというものであったと認められる。また,鑑定による本件土地の客観的価格が平成9年7月時点で26億9000万円余りであったことは当時被告人A1においてもこれを認識しており,当初G1側に提示した売買代金が坪8万円(総額約25億円)であったことは,同鑑定結果を踏まえたものと考えられる。 そうすると,実質的に見て,本件土地の売買代金は売買契約書記載の約22億円に前記2億円を加えた約24億円であったと解するのが相当である。 3 業務上横領罪の成否以上 踏まえたものと考えられる。 そうすると,実質的に見て,本件土地の売買代金は売買契約書記載の約22億円に前記2億円を加えた約24億円であったと解するのが相当である。 3 業務上横領罪の成否以上検討したところによれば,被告人両名は,本件土地の売買代金の一部として被告人B1が受領し,被告人A1が同B1を介して保管していた合計2億円の小切手2通を,組合において支払うべき義務のないOの債務の支払等に充てるため,組合に入金せず着服したもので,これが業務上横領罪に該当することは明らかである。 (法令の適用)罰条(被告人両名)刑法60条,253条(ただし,被告人B1については,「業務上」の身分がないので,同法65条2項により通常の刑である刑法252条の刑を科す。)未決勾留日数の本刑算入(被告人両名)刑法21条訴訟費用の処理(被告人両名)刑事訴訟法181条1項本文,182条(連帯負担)(量刑の理由)本件は,漁業協同組合の組合長と不動産業者が共謀の上,組合所有の不動産の売却に際し,売買代金の一部である額面合計2億円の小切手2通を自己らの用途に充てるため着服して横領したという業務上横領の事案である。 横領額は,2億円と巨額であり,これが健全であるべき組合の財政を大きく害するものであることは明らかである。また,被告人らは,買主側関係者らと結託して組合の理事及び組合員らに対し上記2億円の授受を隠匿し,実際には約24億円で売却しながら,約22億円で売却したように装って犯行の発覚を免れようとしたもので,犯行の態様は巧妙かつ悪質である。 被告人A1は,千葉県から払下げを受けた本件土地を含む埋立地を利用して地域の活性化,組合業務の拡充等を計画していたところ,その開発に名乗りを上げたK及びOに本件土地の開発を任せようと考え,従来組合との取引関係がなか 葉県から払下げを受けた本件土地を含む埋立地を利用して地域の活性化,組合業務の拡充等を計画していたところ,その開発に名乗りを上げたK及びOに本件土地の開発を任せようと考え,従来組合との取引関係がなかったKに組合への貢献の実績を作って組合の承認を取り付けるため,K及びOに組合ののりの直売センターを建設させてこれを組合に提供させることとし,自ら工事の発注等にかかわったが,工事途中でKが事実上倒産し,直売センターの建設を引き継いだOも工事代金を支払う資力がなかったため,理事会の承認を得ることなく,組合をOの保証人とし,組合の資金をOに送金し,あるいはOのため工事関係業者等に立替払をした。このようにして,同被告人は,自ら理事会の承認を経ない多額の組合の債務を発生させ,あるいは多額の組合資金を流出させたため,本件土地の開発の際に組合に損失を生じさせないようにこれを清算するほかなくなり,急きょ買い主として浮上したG1に本件土地を売却することが決定したことから,本件犯行に及んだものである。同被告人は,当初は組合のための本件土地の有効利用を図ったものと思われるが,その過程で,KのMとの間で,同被告人をMが将来設立する会社の株主として優遇するとともに,テナントの出店募集に際し同被告人を特別に優遇する旨の念書の差入れを受けたほか,Yの証言や同人が作成したメモによれば,同被告人は,Kが事実上倒産した後も本件土地の開発等に絡んで経済的利益を得ようともくろんでいたことが認められ,そのような利権を得たいとの利欲的心情や長年組合長を務めるうちに染みついたおごりなどが,理事会に諮ることなく,独断でK及びOに本件土地の開発をさせ,その後の対応をも誤ることにつながったものと考えられる。そして,直売センターに関連する未払工事代金等の発生が発覚すれば,自らの利権をももくろん に諮ることなく,独断でK及びOに本件土地の開発をさせ,その後の対応をも誤ることにつながったものと考えられる。そして,直売センターに関連する未払工事代金等の発生が発覚すれば,自らの利権をももくろんで独断で本件土地の利用を進めた結果であるとして,組合内でその責任を追及されるのは必至であり,場合によっては組合長の地位をも失いかねないことから,同被告人は,これを理事会に公表することなく内々にその解消を図ろうとしたもので,千葉県の常例検査によってこれが発覚し,組合の経理上は問題点を解消させた後も,関係業者との間では何ら問題が解決されていなかったため,これを放置すれば,従来から組合と取引のある業者の組合に対する信頼が大きく損なわれ,ひいては組合内における同被告人自身の立場も危うくなるであろうことは明白であった。このようにして,同被告人は,自らの責任において上記未払工事代金等の問題を解決せざるを得ない立場に追い込まれていたもので,本件犯行は,自らの独断と利権を得ようとしたもくろみの失敗により危うくなった同被告人自身の組合における地位や立場を守るという個人的利益を図ろうとしたものということができ,同被告人の犯行の動機に酌むべきものは乏しいといわざるを得ない。 また,被告人A1は,被告人B1に本件土地の開発に関する仲介を依頼するに際し,O関係の債務の清算等を依頼するとともに,同被告人とその方法を具体的に検討し,同被告人に指示して横領した小切手をもって各業者への支払をさせたもので,本件犯行の首謀者である上,実質的にはともかく,法的には自己の債務であったZからの1400万円の借入金を横領した金員で返済しており,その意味で多額の経済的利益も得たものである。しかるに,被告人A1は,いまだに全く組合に対する被害弁償をしていない。 加えて,被告人A1は,組合 の1400万円の借入金を横領した金員で返済しており,その意味で多額の経済的利益も得たものである。しかるに,被告人A1は,いまだに全く組合に対する被害弁償をしていない。 加えて,被告人A1は,組合長として,組合のために行動すべき立場にありながら,自己の保身のために,本来組合において支払うべき義務のない債務の支払のため組合財産を領得したものであって,本件犯行は,組合及び組合員に対する著しい背信行為である。しかるに,同被告人は,捜査段階においては,自らの責任を認めるとともに,増長していた旨反省の情を示していたものの,公判廷においては,自己の責任を免れることにのみ汲々とし,不合理な弁解を重ねており,甚だ遺憾というほかない。 以上の諸点に照らすと,同被告人の刑事責任は重く,同被告人が長年組合のために貢献してきたこと,本件土地の開発自体は地元及び組合の利益を図ろうとしたものであり,組合が直売センターの利用により現に利益を受けていることを考えると,道義的にその未払工事代金等を組合において清算しなければならないとの同被告人の考えも,全く理解できないわけではなく,実質的に個人的な経済的利得があったとはいい難いこと,70歳の今日に至るまで前科がないこと,組合長を辞任したほか,新聞報道されるなどして一定の社会的制裁を受けていることなど同被告人のため酌むべき事情を十分考慮しても,主文の実刑は免れない。 次に,被告人B1は,仲介業者として本件土地の売買による手数料のほか,本件犯行の工作等の報酬を目当てに本件犯行に加担したものと認められ,その利欲的動機に酌むべきものはない。 同被告人は,被告人A1の依頼によるものではあるが,本件土地売買代金の一部である2億円の隠匿工作を行った上,額面合計2億円の小切手を受け取り,これを領得して関係業者等に対する支払をしたも はない。 同被告人は,被告人A1の依頼によるものではあるが,本件土地売買代金の一部である2億円の隠匿工作を行った上,額面合計2億円の小切手を受け取り,これを領得して関係業者等に対する支払をしたもので,実行行為そのもの及び重要な準備工作を担当しており,果たした役割は重要である。また,被告人B1は,本件犯行により数千万円(A2に対する2600万円の交付がなければ約8000万円,これがあれば五千数百万円)もの極めて大きな利得を得ながら,いまだに全く組合に対する被害弁償をしていない。加えて,同被告人もまた,公判廷おいて甚だ不合理な弁解を弄しており,反省の情は全く認められない。 そうすると,同被告人の刑事責任も重く,同被告人に対しては,横領罪の刑が科されること,従的立場にあったこと,53歳の今日に至るまで前科がないことなど同被告人のため酌むべき事情を十分考慮しても,主文の実刑は免れない。 (求刑被告人A1につき懲役5年,同B1につき懲役4年)平成16年12月20日千葉地方裁判所刑事第1部裁判官金谷暁

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