主文 原判決を破棄する。 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人廣田稔の上告理由について手形が満期及びその他の手形要件を白地として振り出された場合であっても、その後満期が補充されたときは、右手形は満期の記載された手形となるから、右手形のその他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限りこれを行使することができるものと解すべきである(最高裁昭和四三年(オ)第七五三号同四五年一一月一一日大法廷判決・民集二四巻一二号一八七六頁参照)。 これを本件についてみるのに、原審の認定したところによれば、被上告人は昭和五九年七月二〇日ころ、満期を同年九月二〇日と記載し、振出日欄及び受取人欄を白地として本件各手形を振り出したが、上告人と被上告人は右満期日のころ、本件各手形の満期の記載を抹消して満期を白地の手形とすることに合意したところ、上告人は、満期の白地補充権の消滅時効期間内である平成元年六月初めころ、本件各手形の満期欄の白地部分を平成元年九月一日と補充し、更にその後同年九月五日ころ(右振出日から五年を経過後)、本件各手形の振出日欄の白地部分を昭和五九年七月二〇日と、受取人欄の白地部分を上告人と補充した、というのである。したがって、本件各手形は、当初満期が白地であったが後に右白地部分が適法に補充されたことにより満期の記載された手形となったものであるから、上告人は、その記載された満期の日から三年間すなわち手形上の権利の消滅時効期間内は本件各手形の振出日欄及び受取人欄の各白地部分を補充することができるものというべきである(なお、本件各手形は当初、満期を記載して振り出され、その後上告人と被上告人- 1 -との合意により、その は本件各手形の振出日欄及び受取人欄の各白地部分を補充することができるものというべきである(なお、本件各手形は当初、満期を記載して振り出され、その後上告人と被上告人- 1 -との合意により、その記載を抹消して満期を白地としたものであるが、満期が白地の手形であったという意味においては、前記説示したところにいう満期を白地として振り出された手形の場合と異なるところはない。ただし、本件各手形の場合、満期の白地補充権の消滅時効は、被上告人がその補充権を授与した時、すなわち上告人と被上告人との前記合意の日から進行するものと解すべきである。)。しかるに、原審が、本件各手形の満期欄の白地部分は白地補充権の時効消滅前に補充されたが、振出日欄及び受取人欄の各白地部分の補充は本件各手形の振出交付日から五年の消滅時効期間経過後にされたことを理由にその効力を生じないものと解したのは、白地補充権の消滅時効の法理の解釈適用を誤った違法があるものというべきである。 この趣旨をいう論旨は理由があり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れない。 以上によれば、被上告人の抗弁2は理由のないことが明らかであるが、原審は被上告人のその余の抗弁について判断していないから、更に審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官貞家克己裁判官園部逸夫裁判官佐藤庄市郎裁判官可部恒雄裁判官 園部逸夫裁判官佐藤庄市郎裁判官可部恒雄裁判官大野正男- 2 -
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